JP2016159240A - 被処理水の膜閉塞度評価方法 - Google Patents
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Description
膜汚染の原因物質として、有機物は最も重要な膜汚染原因物質である。この水質指標としては全有機炭素(TOC)が使用されるが、TOCの値が同じ原水でも膜のろ過抵抗の上昇速度が異なる場合が度々見受けられ、実際の運転と設計時の予想が大きく異なったため薬品洗浄の頻度が増えたりするなどのトラブルは少なくない。
また、運転管理においても同様であり、TOC濃度に変化がないのに膜汚染が急激に進行する場合もある。この原因としては、膜汚染を引き起こす原因となる有機物がTOC成分の極々一部であり、その濃度が低いため、その変化がTOCを測定しても検出できないことにある。
また、この方法は有機成分由来の汚染原因をフミン質に限定し、膜汚染の進行割合をDOCとE260の比率から単に計算しているため、フミン質以外の有機成分が膜汚染に関与する場合には、その影響を正しく評価できない。
近年の研究では、膜汚染に関与する有機物で重要なものは、E260発現物質であるフミン質よりも、多糖類であることが明らかになっており、その意味でも特許文献1に記載の方法は妥当性に欠けるものである。
本指標は、水道原水やそれについて前処理を行った膜供給水中の膜閉塞有機物、すなわち、多糖類の存在量や分子量に関する有益な情報を与える指標である。
このような膜閉塞度評価方法を、以下では「本発明の評価方法」ともいう。
このような膜閉塞度評価方法を、以下では「本発明の判断方法」ともいう。
本発明の評価方法について説明する。
本発明の評価方法は、従来の分離膜を用いた被処理水の膜閉塞度評価方法をベースとし、この方法の一部を、前記被処理水よりも塩類濃度および/またはpHが低い液体をさらにろ過する操作に変更したり、または、この方法に、さらに、前記被処理水よりも塩類濃度および/またはpHが低い液体をさらにろ過する操作を付け加えたりする方法であってよい。
初めに、分離膜として公称孔径0.22μmの疎水性PVDF膜を用意し、この分離膜を撹拌式加圧セルに装着して、セルの撹拌子の回転速度:1,450rpm、全量定速ろ過(膜透過流束20m/日)の条件で、前記被処理水について加圧ろ過を行い、膜差圧が上昇した後、前記分離膜をセルから取り外し、1%−シュウ酸洗浄(洗浄時間60分、洗浄温度20℃)を行い(好ましくはさらにスポンジを用いた膜面洗浄を行い)、その後、再度、前記シュウ酸洗浄後の前記分離膜を前記セルに装着した上で、上記の加圧ろ過によって生じたろ液を用いてろ過を行い、再び膜差圧を測定する。そして、この膜差圧とろ過開始時の膜差圧の差(m−Aq,at25℃)を総ろ過水量(m3/m2−膜)で除した値を被処理水のファウリングポテンシャル(FP)とする。
ここで純水とは、脱イオン水を意味する。従来公知の脱イオン処理(例えば陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を併用した処理)によって得られるものを意味する。
また、超純水とは、従来公知の浄化に関する要素技術を高度に組み合わせて得られる限りなくH2Oに近づいた高純度水をいい、例えば、比抵抗18MΩcm,粒子数20個/cm3(径0.1μm)以下,生菌数0.01個/cm3以下,TOC(全有機炭素)0.1mg/dm3の特性を有するものが挙げられる。
次に、本発明の判断方法について説明する。
本発明の判断方法は、従来の分離膜を用いた被処理水の膜閉塞度評価方法と、その方法の一部を変更等した本発明の評価方法とを組み合わせることで、前者から得られる第1膜閉塞度(IDF)と、後者から得られる第2膜閉塞度(IDS)との関係から、前記被処理水に含まれる膜汚染物質の態様を判断する方法である。
具体的には、被処理水に含まれる膜汚染物質の分子量の平均値が小さい(例えば分子量が100kDa以下)と、FPに対するFPSの値が大きくなる傾向がある(例えばFPS/FPの値が2〜6程度、より具体的には4程度となる)。そして、逆に、被処理水に含まれる膜汚染物質の分子量の平均値が大きい(例えば分子量が100kDa超)と、FPに対するFPSの値が小さくなる傾向がある(例えばFPS/FPの値が1.5〜5程度、より具体的には2程度となる)。
よって、このような傾向から、前記被処理水に含まれる膜汚染物質の態様(具体的には分子量)を判断することができる。
原海水(以下「原水」ともいう)を用意し、一部をUF膜(東レ社製、PVDF、公称分画分子量150KDa)を用いてろ過してろ過水(以下「UFろ過水」ともいう)を得た。
以下では原水およびUFろ過水を被処理水として用いて実験を行った。
原水およびUFろ過水の各々について、ファウリングポテンシャル(FP)を測定した。
ファウリングポテンシャル(FP)の測定方法について説明する。
初めに、公称孔径0.22μmの疎水性PVDF膜(ミリポア社製、GVHP、直径25mm)を使用し、これを撹拌式加圧セルに装着し、HPLC用送液ポンプで加圧ろ過を行った。ろ過は、セルの撹拌子を1,450rpmで回転させながら全量定速ろ過(膜透過流束20m/日)で行い、膜差圧がある程度以上上昇した後、膜をセルから取り外し、1%−シュウ酸洗浄(洗浄時間60分、洗浄温度20℃程度)と膜面のスポンジ洗浄を行った。洗浄後、膜をセルに装着し、供試水のGVHP膜ろ過水でろ過を行い、再び膜差圧を測定した。この膜差圧とろ過開始時の膜差圧の差(m−Aq,at25℃)を総ろ過水量(m3/m2−膜)で除した値を供試水のファウリングポテンシャル(FP)とした。
図1および図2に示すように、FPとFPSとは相関係数が高く、ほぼ比例関係を示した。
また、実測ベースの膜差圧が大きくなるためにFPよりもFPSの方が値は大きくなり、みかけ上はFPがFPSに増幅されたことになる。その増幅比、すなわち、FPS/FPは、原水とUFろ過水とでは異なり、原水では1.80〜4.55(平均2.56)であるが、UFろ過水では2.03〜5.69(平均4.03)であり、分子量100kDa程度以上の高分子物質、すなわち、バイオポリマーの存在量やその特性に影響される様子を示した。
バラツキはあるものの、全体傾向としては、FPが小さくなると、FPS/FPは大きくなる傾向にあり、逆に、FPが大きくなる、FPS/FPは2程度に収束していく様子が観察された。
この現象の詳細なメカニズムは不明であるが、本発明のFPSを用いることにより、比較的FPが低い領域(1程度未満)の測定ダイナミックレンジを向上させることができると共に、FPと併用することにより、膜汚染物質の特性(主に分子量分布と予想)を概略判断できる。
また、従来のFPと併用することにより、膜汚染物質の特性(主に分子量分布と予想)を概略判断できることがわかった。
Claims (5)
- 分離膜を用いて被処理水をろ過した後、前記被処理水よりも塩類濃度および/またはpHが低い液体をさらにろ過する工程を備える、被処理水の膜閉塞度評価方法。
- 前記塩類濃度および/またはpHが低い液体が純水である、請求項1に記載の被処理水の膜閉塞度評価方法。
- 前記被処理水が、海水、水道原水または生物処理水である、請求項1または2に記載の被処理水の膜閉塞度評価方法。
- 前記分離膜が公称孔径0.22μmの疎水性PVDF膜であり、この分離膜を撹拌式加圧セルに装着して、セルの撹拌子の回転速度:1,450rpm、全量定速ろ過(膜透過流束20m/日)の条件で、前記被処理水について加圧ろ過を行い、膜差圧が上昇した後、前記分離膜をセルから取り外し、1%−シュウ酸洗浄(洗浄時間60分、洗浄温度20℃)を行った後、再度、前記シュウ酸洗浄後の前記分離膜を前記セルに装着し、その後、前記被処理水よりも塩類濃度および/またはpHが低い液体をさらにろ過し、そのときの膜差圧を測定し、この膜差圧とろ過開始時の膜差圧の差(m−Aq,at25℃)を総ろ過水量(m3/m2−膜)で除して、前記被処理水の膜閉塞度評価指標であるセカンドファウリングポテンシャル(FPS)を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の被処理水の膜閉塞度評価方法。
- 分離膜を用いて被処理水をろ過した後、得られたろ過水をさらにろ過することで、被処理水の第1膜閉塞度(IDF)を得る工程と、
前記分離膜を用いて前記被処理水をろ過した後、前記被処理水よりも塩類濃度および/またはpHが低い液体をさらにろ過することで、被処理水の第2膜閉塞度(IDS)を得る工程と、
を備え、第1膜閉塞度(IDF)と第2膜閉塞度(IDS)との関係から、前記被処理水に含まれる膜汚染物質の態様を判断する、被処理水の膜汚染物質の態様判断方法。
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