JP2021194586A - 被処理水の膜閉塞性評価方法および凝集膜ろ過システム - Google Patents

被処理水の膜閉塞性評価方法および凝集膜ろ過システム Download PDF

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Abstract

【課題】膜ろ過を用いた浄水処理において、被処理水の膜閉塞性をより正確に評価することができる方法を提供すること。【解決手段】分離膜を用いた膜ろ過処理に供される被処理水の膜閉塞性評価方法であって、被処理水を分離膜で膜ろ過し、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する分離膜のろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K1〜3)のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2を算出するろ過定数K2算出工程と、分離膜のろ過抵抗を、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、第1の上昇率測定工程と同様に、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出するろ過定数K2−ir算出工程と、ろ過定数K2およびK2−irに基づき被処理水の膜閉塞性を評価する評価工程と、を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、被処理水の膜閉塞性評価方法および凝集膜ろ過システムに関し、特に、分離膜を用いた膜ろ過処理に供される被処理水の膜閉塞性評価方法および凝集膜ろ過システムに関する。
従来、浄水処理では固液分離プロセスとして砂ろ過が主流であったが、近年では、より高度な固液分離が期待できるMF膜やUF膜を用いた低圧膜ろ過法の導入が進んでいる。
そして、昨今は、中大規模の浄水場の老朽化に伴う更新設備に膜ろ過を適用するケースが多くなっているが、その場合、水道原水として河川水などの表流水を利用しているため、色度成分などの溶解性物質除去の観点から膜前処理として凝集処理を組み合わせる場合が多い。
前処理としての凝集処理は、膜ろ過法の課題の一つである有機性膜汚染の原因物質であるバイオポリマーの低減にも有効であるが、一方で、残留凝集剤による膜汚染の問題が生じる。
浄水処理における凝集では、ポリ塩化アルミニウム(PACl)や硫酸バンド(Alm)などのアルミニウム系凝集剤が用いられるため、凝集処理水中に存在する残留アルミニウムが膜汚染の原因物質となる。
従来の砂ろ過法の場合、水質基準の観点から、濁度、色度、有機物指標などに着目してジャーテストにより最適な凝集剤注入率や凝集pHを決定するが、膜ろ過法の場合、膜汚染の観点からも凝集条件を選定する必要がある。
実際には、パイロット規模の実証実験を実施し、その実証実験において、様々な凝集条件で膜ろ過試験を長期間行うことで、試行錯誤的に最適条件が決定されているのが現状であり、ジャーテストに代わり、膜ろ過法における正確な凝集前処理の最適条件を決定する手法が求められている。
一般にラボレベルとして、いわゆる、マイクロモジュール、ミニモジュールと呼ばれる数〜数十cm程度の膜面積を有する膜モジュールで連続ろ過試験を行う報告が散見される。
特許文献1には、実際に使用する中空糸膜と同じ表面組成(材質、孔径など)の平膜を作成し、ラボスケールのろ過試験をする事を提案し、平膜のろ過試験時の物理洗浄に洗瓶を用いて純水を吹き付ける洗浄を行うことを開示する。
非特許文献1には、海水淡水化向けのRO膜のような膜ろ過プロセスの膜供給水を膜を用いたろ過試験により評価する手法がレビューされているが、その中にMFI(Modified Fouling Index)法とそのいくつかの改良法が紹介されている。MFIは、ケーキろ過理論に基づいている評価方法であり、その値は、ろ過水量基準のケーキ比抵抗を示している。
MFIの測定においては、ろ過水量の次第の増加に伴い、ろ過抵抗の形成モードが、i)膜細孔の閉塞→ii)ケーキろ過→iii)ケーキろ過とその細孔(空隙)閉塞と圧密の三段階に変化し、MFIはii)のケーキろ過モードで評価する。
特開2011−115705号公報
Chai Hoon Kooら著 「Use and Development of Fouling Index in Predicting Membrane Fouling, Separation & Purification Reviews」 42巻,269−339頁,2013
従来のラボレベルの膜モジュールを用いた連続ろ過試験による膜閉塞性の評価方法によれば、膜ろ過に用いる被処理水の膜閉塞性をある程度把握することができる。しかし、被処理水中の成分の違いが膜閉塞性に与える影響について示唆を得ることができない。
特許文献1によれば、市販されていない平膜をその都度ユーザーが製膜して使用する事は、非常に困難な作業であり、非現実的である。また、不可逆的ろ過抵抗上昇速度を得るための膜の洗浄が加圧水による洗浄や撹拌による洗浄であることから、膜表面に堆積する汚れ成分(ケーキ層)、特に、凝集処理水をろ過した時に形成される強固なケーキ層を完全に剥離することは困難である。
非特許文献1の手法では、ケーキろ過理論以外の因子が影響する場合があり、正確な評価とはならない可能性がある他、まだまだ課題が多く、改良法がいくつも提案されているのはそのためであるが、決定打に欠いている。
上記課題に鑑みた本願発明の目的は、膜ろ過を用いた浄水処理において、被処理水の膜閉塞性をより正確に評価することができる方法およびその方法により被処理水の凝集条件を決定するための凝集膜ろ過システムを提供することにある。
発明者らは、鋭意研究した結果、水道原水やその凝集処理水を回分方式で膜ろ過した場合、まず、第一段階として、有機物や凝集処理水中のアルミニウムナノ粒子による初期閉塞(初期吸着)が生じ、次いで、第二段階として、同様な物質群により、膜閉塞とケーキ形成が進行し、さらに、第三段階として、ケーキがろ過抵抗形成の主要因となる(膜閉塞も同時に生じているが影響はケーキ形成の方が大きい)、いわゆる、ケーキろ過期間の三段階でろ過モードが変化する事を確認した。
また、さらに発明者らが膜細孔の閉塞現象を詳細に検討した結果、水道原水やその凝集処理水の膜閉塞は、膜表層の凹凸の“谷”の部分に粒子が次第に不可逆的に堆積していき、次第に“谷”が無くなって平らになっていく現象である事を見出した。すなわち、微視的には、みかけケーキ層が形成されているとも言い換えられる現象である。
膜表層の上部に堆積したアルミニウムナノ粒子などは、以降に示すスポンジ洗浄などの物理的外力による物理的洗浄で除去できるので、従来の概念と同じケーキ層と表現でき、膜表層でも下部に強固に捕捉されたアルミニムナノ粒子などは、スポンジ洗浄のような洗浄では除去できないので膜閉塞と表現されるとも言える。
いずれにしろ、膜閉塞のような粒子堆積も従来のケーキ層も、数学的にもみかけ段階的なケーキろ過で表現できるので、みかけケーキろ過の概念で取り扱う事ができることがわかった。
これらの発見に基づき、本願発明はなされたものである。
すなわち、上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、分離膜を用いた膜ろ過処理に供される被処理水の膜閉塞性評価方法であって、
前記被処理水を前記分離膜で膜ろ過し、前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記分離膜のろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K1〜3)のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率Kを算出するろ過定数K算出工程と、前記分離膜のろ過抵抗を、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、前記ろ過定数K算出工程と同様に、前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出するろ過定数K2−ir算出工程と、前記ろ過定数KおよびK2−irに基づき前記被処理水の膜閉塞性を評価する評価工程と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、三段階のろ過モードを、初期閉塞期である第一段階目、膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期である第二段階目、およびケーキ形成期(但し、膜閉塞もわずかに進行する)である第三段階目として定義することができ、すると、第二段階目のろ過定数Kは、物理的外力によって除去できないろ過抵抗(膜閉塞によるろ過抵抗)の上昇率K2−irと物理的外力によって除去できるろ過抵抗(ケーキ形成によるろ過抵抗)の上昇率の合計を表すことから、ろ過定数Kとろ過定数K2−irを算出することで膜閉塞・ケーキ形成の双方の影響が考慮され、より正確に被処理水の膜閉塞性を評価することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法において、前記被処理水が、凝集剤が混和された凝集処理水であることを特徴とする。
この構成によれば、凝集剤、例えば、アルミニウム系凝集剤の添加により被処理水中に増加するアルミニウムナノ粒子の膜閉塞、および膜表層の上部への堆積がろ過抵抗の上昇に大きな影響を与える要因になるところ、この凝集剤の影響による被処理水の膜閉塞性をより正確に評価することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法において、前記物理的外力が、前記分離膜の膜面を物理的に擦る操作により付加されることを特徴とする。
この構成によれば、膜面に形成される強固なケーキ層をより確実に剥離させることができるので、被処理水の膜閉塞性をさらに正確に評価することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法において、前記ろ過抵抗の各上昇率KのおよびK2−irを、前記単位膜面積当たりのろ過水量が0.08 m/m以上から0.40 m/m以下となる範囲で算出することを特徴とする。
前述の三段階のろ過モードは、前記単位膜面積当たりのろ過水量が0.08 m/mまでが第一段階目(初期閉塞期)、前記単位膜面積当たりのろ過水量が0.08 m/mから0.32 m/m以下までが第二段階目(膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期)、0.32m/mから0.96 m/m以下までが第三段階目(ケーキ形成期)と分類できることから、この構成によれば、前記単位膜面積当たりのろ過水量が0.08 m/m以上から0.40 m/m以下となる範囲で前記二段階目のろ過抵抗の各上昇率KのおよびK2−irを測定することで、単位膜面積当たりのろ過水量に基づいて第二段階目のろ過定数KのおよびK2−irを容易に得ることが可能となり、より正確かつ容易に被処理水の膜閉塞性の評価を行うことが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法により前記凝集処理水の膜閉塞性を評価し、凝集条件を決定するための凝集膜ろ過システムであって、
前記凝集処理水を前記分離膜で膜ろ過する膜ろ過部と、前記膜ろ過時の前記分離膜の膜ろ過抵抗を測定可能な膜ろ過抵抗測定手段と、前記分離膜の膜面を物理的に擦るための膜摩擦手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、三段階のろ過モードを、初期閉塞期である第一段階目、膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期である第二段階目、およびケーキ形成期(但し、膜閉塞もわずかに進行する)である第三段階目として定義することができ、すると、第二段階目のろ過定数Kは物理的外力によって除去できないろ過抵抗(膜閉塞によるろ過抵抗)の上昇率K2−irと物理的外力によって除去できる過抵抗(ケーキ形成によるろ過抵抗)の上昇率の合計を表すことから、膜ろ過部において凝集処理水を前記分離膜で膜ろ過し、ろ過抵抗測定手段によってろ過抵抗を測定したのち、膜ろ過時の前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記分離膜のろ過抵抗の上昇率K1〜3のうち少なくとも二段階目ののろ過抵抗の上昇率Kを算出し、また、膜摩擦手段によって前記分離膜の膜面を物理的に擦ることで前記分離膜のろ過抵抗を物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出することが出来る。
第二段階目のろ過定数Kは物理的外力によって除去できないろ過抵抗(膜閉塞によるろ過抵抗)の上昇率K2−irと物理的外力によって除去できるろ過抵抗(ケーキ形成によるろ過抵抗)の上昇率の合計を表すことから、ろ過定数Kとろ過定数K2−irを算出することで膜閉塞・ケーキ形成の双方の影響が考慮され、より正確に被処理水の膜閉塞性を評価することが可能となる。
本発明によれば、三段階のろ過モードを、初期閉塞期である第一段階目、膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期である第二段階目、およびケーキ形成期(但し、膜閉塞もわずかに進行する)である第三段階目として定義することができ、すると、第二段階目のろ過定数Kは、物理的外力によって除去できないろ過抵抗(膜閉塞によるろ過抵抗)の上昇率K2−irと物理的外力によって除去できるろ過抵抗(ケーキ形成によるろ過抵抗)の上昇率の合計を表すことから、ろ過定数Kとろ過定数K2−irを算出することで膜閉塞・ケーキ形成の双方の影響が考慮され、より正確に被処理水の膜閉塞性を評価することが可能となる。
これにより、凝集剤を添加する場合には、その添加量の最適化を図ることが可能となる。
本発明の被処理水の膜閉塞性評価方法を説明するフローチャートである。 本発明の凝集膜ろ過システムを説明する模式図である。 単位膜差圧当たりに得られる流量Vs(単位:m/m)を横軸とし、フラックスの変化Q/Qを縦軸として実施例1で得られたデータをプロットしたグラフである。
<被処理水の膜閉塞性評価方法>
図1は本発明の被処理水の膜閉塞性評価方法を説明するフローチャートである。図示のように、本発明の被処理水の膜閉塞性評価方法は、ろ過定数K算出工程と、ろ過定数K2−ir算出工程と、評価工程と、を有する。
[ろ過定数K算出工程(S100)]
本工程では、被処理水を分離膜で膜ろ過し、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記分離膜のろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K1〜3)のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率Kを算出する。
被処理水は、例えば、河川水、地下水、ダム湖水、湖沼水、伏流水、地下水などの水道原水が挙げられる。中でも、膜ろ過を用いた浄水処理では、膜前処理として凝集処理を組み合わせる場合が多いことから、被処理水が、凝集剤が混和された凝集処理水であることが好ましい。
凝集剤が混和される場合、使用する凝集剤の種類に何ら制限されることはない。ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンドなどのアルミニウム系凝集剤のいずれを用いてもよく、塩基度50〜90%の範囲内でいずれの塩基度のものを用いてもよい。鉄系凝集剤、ポリシリカ系凝集剤、有機高分子系凝集剤を単独、または併用してもよい。
凝集剤の被処理水への混和条件は、どのようなものであってもよいが、凝集剤が添加された被処理水を急速撹拌し、急速撹拌後の被処理水を緩速撹拌する二つの撹拌処理の組み合わせで行われることが好ましい。
急速撹拌の撹拌強度は、G値で考えると、150 1/s以上が良く、さらに好ましくは、150〜250 1/s、最も望ましくは、250 1/s以上であり、緩速撹拌の撹拌強度は、G値が10〜75 1/sの範囲で行われる事が望ましい。
また、急速撹拌を複数の急速撹拌により行う場合には、緩速撹拌が行われる槽のすぐ前段に位置する急速撹拌槽の撹拌強度は、100〜150 1/s程度のG値の範囲で運転される事が好ましい。
膜ろ過について、本発明は、吸引ろ過、加圧ろ過のろ過方法に何ら制限される事はないが、後述する分離膜の膜面の物理的洗浄を容易に行うためには、吸引ろ過の方が好ましい。
加圧ろ過の場合、洗浄のたびに加圧ホルダーを分解・組み立てする必要が生じるが、吸引ろ過の場合、ファイルターホルダーのファンネルをはずすだけで容易に洗浄ができる。
本発明で使用するろ過方式は、定圧ろ過、定速ろ過のいずれでもよいが、定圧ろ過の方が吸引ろ過用のフィルターホルダーを使用すれば洗浄が容易で、10mL程度からの少量でのろ過水量の制御が可能となるので好ましい。
本発明で使用する膜ろ過流束の範囲は、ろ過開始からろ過終了まで、定圧ろ過の場合は膜閉塞により次第に低下し、定速ろ過の場合は一定となるが、2.5m/日以上となる事が好ましく、より好ましくは、5.0m/日以上がよい。
膜ろ過流束が低いと、膜表層での膜閉塞原因物質の濃度分極現象や集塊化現象が生じ難い傾向にあり、短時間での膜閉塞が起こり難くなる。
分離膜について、本発明において、平膜、中空糸膜の膜の形状に何ら制限される事はないが、それぞれ特徴がある。
平膜の場合、市販の吸引ろ過ホルダーを使用すれば、ファンネルをはずすだけで洗浄操作が可能であり、種々の市販されている膜があるので、目的に応じて膜の選定が可能となる。
中空糸膜の場合、試験用の膜モジュールを製作する必要があるが、膜本数、長さなどを調整する事で、前記したような膜面洗浄及び流水洗浄は十分可能である。
また、実際の浄水設備で使用する膜の多くは、外圧中空糸膜であるので、実際に使用する膜で試験をする事ができるので、平膜よりもより有益な情報が得られる可能性がある。
内圧膜の場合、内径が2〜3mm程度であれば、細い綿棒のような道具を用いて膜面洗浄を行う事ができるので、何ら問題はない。
本発明に使用する分離膜の材質は、高分子膜でも無機膜でも何ら制限される事はないが、何度も膜面洗浄を行うので、膜の物理的強度が強い方が望ましく、PTFE、PVDF、PES、セルロース混合エステル、酢酸セルロースなどの膜が使用できる。膜厚は100μm以上の方が取り扱い易いので好ましい。中でも、PVDFは膜強度も強いので好ましく、浄水設備で最も利用されている膜材質である点でも望ましい。
疎水性素材の膜を使用した場合、有機物の膜閉塞とアルミニウムナノ粒子による膜閉塞の両者を測定することができるが、親水性素材の膜を使用した場合は、有機物の膜閉塞の程度は低くなる。両方を評価できる事、膜強度の観点から考えると、疎水性PVDFが好ましい。
また、本発明に使用する膜の孔径は、何ら制限される事はないが、実設備に使用する膜の孔径が0.01〜0.1μmであること、一般に孔径が大きい方が高い透水性能が期待でき、より試験時間の短縮が望めるため、0.01〜0.1μmの範囲の膜孔径が好ましい。
すでに述べたとおり、被処理水を分離膜で膜ろ過すると、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って、
i)第一段階目:初期閉塞期、
ii)第二段階目:膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期
iii)第三段階目:ケーキ形成期(但し、膜閉塞も僅かに進行する)
の三段階のろ過モードが現れる。
なお、MFIに見られる従来の概念は、イ)膜細孔の閉塞⇒ロ)ケーキろ過⇒ハ)ケーキろ過とその細孔(空隙)閉塞と圧密の三段階であり、前者と後者とを比較すると、以下の表1のように表される。
Figure 2021194586
本発明では、このうち、二段階目のろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K)を算出する。
ろ過定数K(みかけのケーキろ過定数ともいう)は、ケーキろ過理論を用いて膜閉塞を表現するために導入された膜閉塞度の指標である。
この観点は、データ解析の際のグラフにおいて、横軸を単位膜面積当たりろ過水量、縦軸を任意の時点の膜の透水性能に対する初期の膜の透水性能との比、もしくは、膜ろ過抵抗(ろ過抵抗もしくは膜差圧)、膜の透水性能で表現できるので、実用上の観点から直観的に分かり易く非常に便利である。
念のため、断りおくが、膜の透水性能とは、単位膜差圧当たりに得られる流量(膜ろ過流束)、もしくは、単位流量(膜ろ過流束)当たりに必要な膜差圧の概念となる。
ろ過定数Kの算出にあたり、上記概念のグラフ作成もしくは数学的解析を行う必要があるが、グラフ作成を例に挙げて説明すると、その横軸及び縦軸の単位に何ら制限される事は無い。
横軸の単位は、m/mが好ましいが、L/m、mL/cm、cm/cmなどでもよい。
定圧ろ過の場合、膜差圧一定で、流量(膜ろ過流束)が次第に変化(減少)するので、縦軸は、流量基準、例えば、任意の時点の流量:Q、初期流量:Q(以後、初期を意味する際は、0を添字とする)とした場合は、Q/Qとなり、本発明では一番便利で好ましい表現である。
また、膜ろ過流束基準で表現するのであれば、任意の時点の膜ろ過流束:f、初期:fとした場合は、f/fとなる。
定速ろ過の場合は、流量(膜ろ過流束)は一定で、膜差圧が上昇するので、透水性能の変化は、任意の時点の膜差圧:P、初期:Pとした場合は、P/Pとなる(以上、ろ過定数K算出工程(S100))。
上記の何れかの横軸及び縦軸を選択して測定したろ過抵抗のデータをプロットしてグラフを作成し、そこから上記ii)第二段階目(膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期)のプロットを用いてろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K)を算出する。
ろ過定数Kは、例えば、最小二乗法により回帰直線(関係式)を作成することで算出することができる。回帰直線(関係式)については、後述する実施例の図3に例示がある。
[ろ過定数K2−ir算出工程(S110)]
本工程では、分離膜のろ過抵抗を、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、ろ過定数K算出工程(S100)と同様に、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出する。
物理的外力によって除去できるろ過抵抗は、被処理水を分離膜で膜ろ過する際に膜表面に形成されるケーキ層(膜表層の上部に堆積したアルミニウムナノ粒子なども含む)に起因するろ過抵抗である。このろ過抵抗は、ケーキ形成が生じる第二段階目、第三段階目に発生し、物理的外力によってこのケーキ層が膜面から除去されることで、このろ過抵抗は解消される。
物理的外力によって除去できないろ過抵抗は、被処理水を分離膜で膜ろ過する際に有機物や凝集処理水中のアルミニウムナノ粒子による初期閉塞、膜表層下部に強固に捕捉されたアルミニウムナノ粒子等に起因するろ過抵抗である。このろ過抵抗は、第一段階目、第二段階目に発生し、物理的外力によっても除去されない。
このうち、ケーキ層を物理的外力によって除去し、膜閉塞に起因するろ過抵抗の上昇率を、特に、膜閉塞・ケーキ形成の同時進行期である第二段階目の膜閉塞に起因するろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K2−ir)を本工程において算出する。
まず、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類するために、分離膜の被処理水流入側の膜面に物理的外力を付加して洗浄し、ケーキ層を膜面から除去する。
従来のラボスケールでしばしば使用される処理水などの清水を用いた逆洗では、比較的高い膜ろ過流束でろ過をした時に形成される強固なケーキ層の剥離は困難である。
また、この物理的外力は、分離膜の被処理水流入側の膜面を物理的に擦る操作により付加されることが好ましい。
膜面を物理的に擦る操作を伴う洗浄操作としては、例えば、清水を含ませたティッシュで膜面を擦る洗浄(以後、ティッシュスクラビング)、清水を含ませたスポンジで擦る洗浄(以後、スポンジスクラビング)、ウェットテッシュで擦る洗浄(以後、ウェットテッシュスクラビング)が好ましい。
もちろん、後述する実施例で示す、膜表面をスポンジで擦りながら水流で洗い流す“スポンジ洗浄”が最も好ましい。
他に、筆、刷毛、歯ブラシでも擦る強度や水流、水の含ませ方を工夫する事により利用できる。
また、膜面を洗浄した後、膜細孔付近、膜表層に存在する剥離仕掛かったケーキや粒子を完全に除去するために、清水、純水、超純水、試験ろ過水で流水洗浄する事、または、それらに浸漬する浸漬リンス洗浄をする方が好ましい。
分離膜の被処理水流入側の膜面に物理的外力を付加した洗浄は、ケーキ形成が始まる第二段階目に入る時から所定間隔で行い、洗浄直後にろ過抵抗を測定し(これにより、物理的外力によって除去できないろ過抵抗が測定される)、測定されたろ過抵抗の値を用いて少なくとも二段階目の物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K2−ir)を算出する。
ろ過定数K2−irの算出手法は、ろ過定数Kの算出手法と同じであり、ここではその記載を省略する。
分離膜の被処理水流入側の膜面に物理的外力を付加した洗浄は、例えば、単位膜面積当たりのろ過水量Vsが0.08m/m以降、0.04m/m毎に行うことができるし、最初から0.04m/m毎に行ってもよい(以上、ろ過定数K算出工程(S110))。
[評価工程(S120)]
本工程では、ろ過定数KおよびK2−irに基づき被処理水の膜閉塞性を評価する。
第一に、ろ過定数Kは、
可逆汚染分(すなわち、被処理水を分離膜で膜ろ過する際に膜表面に形成されるケーキ層(膜表層の上部に堆積したアルミニウムナノ粒子なども含む))と
不可逆汚染分(すなわち、被処理水を分離膜で膜ろ過する際に有機物や凝集処理水中のアルミニウムナノ粒子による初期閉塞、膜表層下部に強固に捕捉されたアルミニウムナノ粒子等)
を含めた全体のみかけのケーキろ過定数であり、複数の被処理水が存在する場合、ろ過定数Kが小さい被処理水の方が一般的に膜閉塞性が小さいと評価できる。
次に、ろ過定数K2−irは、不可逆汚染分のみかけのケーキろ過定数であるから、ろ過定数K2−irが小さい被処理水は不可逆汚染分が多いと評価できる。
したがって、凝集剤を添加し、不可逆汚染分が多く含まれるような系においては、上記ろ過定数KおよびK2−irを用いることで、可逆汚染分および不可逆汚染分の双方が考慮され、より正確に被処理水の膜閉塞性を評価することができる。
また、従来のラボレベルとして、いわゆる、マイクロモジュール、ミニモジュールと呼ばれる数〜数十cm程度の膜面積を有する膜モジュールでの連続ろ過試験では、最短でも半日から一日程度、長い場合では、一週間から一ヶ月程度が必要になり、ラボスケールとしても大量の原水を使用し、加えて、自動制御の高価な機器が必要となっていたが、本発明の方法によれば、上記三段階のろ過モードの第二段階目のろ過定数を得ることで被処理水の膜閉塞性の評価が可能であるため、ろ過試験の時間が短縮され、大量の水を使う必要もなく、高価な機器を購入する必要もない。
<凝集膜ろ過システム>
図2は、本発明の凝集膜ろ過システムを模式的に示す図である。本発明は、上記本発明の被処理水の膜閉塞性評価方法により被処理水としての凝集処理水の膜閉塞性を評価し、凝集条件を決定するための凝集膜ろ過システム10であって、図2に示すように、膜ろ過部20と、膜ろ過抵抗測定手段30と、膜摩擦手段40と、を有する。
膜ろ過部20は、凝集処理水1を分離膜で膜ろ過する。
凝集処理水1は、被処理水に凝集剤を混和して得られる。被処理水は、どのようなものであってもよいが、例えば、河川水、地下水、ダム湖水、湖沼水、伏流水、地下水などの水道原水が挙げられる。
凝集剤の種類について、何ら制限されることはない。ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンドなどのアルミニウム系凝集剤のいずれを用いてもよく、塩基度50〜90%の範囲内でいずれの塩基度のものを用いてもよい。鉄系凝集剤、ポリシリカ系凝集剤、有機高分子系凝集剤を単独、または併用してもよい。
膜ろ過部20で採用し得るろ過方法(吸引ろ過、加圧ろ過)、ろ過方式(定圧ろ過、定速ろ過)、分離膜およびその材質、並びに膜の孔径については、上記被処理水の膜閉塞性評価方法の項目で述べたとおりであり、ここではその説明を省略する。
膜ろ過抵抗測定手段30は、膜ろ過時の分離膜の膜ろ過抵抗を測定するために用いられる。
膜ろ過抵抗は、定圧ろ過の場合、任意の時点の流量Qに対する初期流量Qの割合(Q/Q)や、任意の時点の膜ろ過流束fに対する初期の膜ろ過流束fの割合(f/f)で表すことができる。したがって、定圧ろ過の場合、図2に示すように、膜前後に配置される圧力計32−1、32−2、膜を通過した膜ろ過水の容積測定器34を膜ろ過抵抗測定手段30として用いることができる。
膜ろ過抵抗の測定の際は、弁37を閉じ、弁36を開き、膜ろ過水を容積測定器34に導かれる。
一方、定速ろ過の場合、流量(膜ろ過流束)は一定で膜差圧が上昇するので、膜ろ過抵抗は、初期の膜差圧Pに対する任意の時点の膜差圧Pの割合(P/P)で表すことができるから、この場合にも、膜前後に配置される圧力計32−1、32−2、膜を通過した膜ろ過水の容積測定器34を膜ろ過抵抗測定手段30として用いることができる。
膜摩擦手段40は、分離膜の凝集処理水流入側の膜面に物理的外力を付加して洗浄し、ケーキ層を膜面から除去することで、分離膜のろ過抵抗を物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類するための手段であり、上記ろ過定数K2−ir算出工程(S110)で用いられる。
膜摩擦手段40としては、膜面を物理的に擦る操作を伴う洗浄操作がティッシュスクラビングの場合にはティッシュ(薄紙)を、スポンジスクラビングの場合にはスポンジを、ウェットテッシュスクラビングの場合には、ウェットテッシュ(湿らせた薄紙)を、それぞれ用いることができるが、好ましくはスポンジである。
そのほかに、膜摩擦手段40として、筆、刷毛、歯ブラシを、擦り強度や水流、水の含ませ方を工夫する事により利用できる。
膜摩擦手段40は、洗浄対象である分離膜を備える膜ろ過部20に取り付けておくことが好ましい。
次に、凝集膜ろ過システム10を用いた凝集条件の決定について述べる。
まず、凝集pH、凝集剤の種類、凝集剤注入率、攪拌条件等の凝集条件を変更させた複数の凝集処理水を膜ろ過部20の分離膜で膜ろ過し、その際、膜ろ過抵抗測定手段により膜ろ過抵抗を測定し、そこからろ過抵抗Kを算出する。
膜ろ過抵抗の測定およびろ過抵抗Kの算出については、被処理水の膜閉塞性評価方法の項目で述べたとおりである。
次に、同じ複数の凝集処理水について、分離膜のろ過抵抗を、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出する。
物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗の分類は、膜摩擦手段40で分離膜の被処理水流入側の膜面に物理的外力を付加して洗浄し、可逆汚染分を膜面から除去することにより行う。
この洗浄は、例えば、単位膜面積当たりのろ過水量Vsが0.08m/m以降、0.04m/m毎に行うことができるし、最初から0.04m/m毎に行ってもよい。
ろ過定数K及びK2−irの算出後は、複数の凝集処理水についてこれら二つのろ過定数を比較し、可逆汚染分と不可逆汚染分の寄与度を考慮した上で的確に凝集条件を決定することができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
(1)被処理水及び凝集処理条件
被処理水には、比較的清澄な河川水(濁度:0.7度、色度:3.3度、pH7.3、TOC:0.9mg/L)を使用した。
この被処理水に対し、ポリ塩化アルミニウム(PACl、塩基度50%)を注入率20mg/L、凝集pH7.0で添加し、凝集処理を行った。
撹拌条件は、急速撹拌処理(130rpm×3分)→緩速撹拌処理(30rpm×10分)→静置(5分)とした。
(2)分離膜及びフィルターホルダー
分離膜はメルク社製のVVHP膜(疎水性PVDF膜、孔径0.1μm)を使用し、直径25mmの平膜用ガラス製フィルターホルダーを使用した。
(3)膜ろ過試験
吸引ポンプを用いて全量定圧ろ過(吸引圧90kPa)で供試水を分離膜に通水し、ろ過水量の経時変化を測定することで行った。そして、上記(1)被処理水及び凝集処理条件で得られた凝集処理水を2区分に分け、1区分目について、単位膜差圧当たりに得られる流量Vs0.04m/m毎に、全体で0.96 m/mに至るまでQ/Qを連続的に測定した。
2区分目については、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.08、0.16、0.24、0.32、0.40、0.60、0.96 m/mに達した時点でスポンジによる分離膜の物理的洗浄を行い、洗浄後のQ/Qを測定した。
図3に、Vs(単位:m/m)を横軸とし、Q/Qを縦軸として実施例1で得られたデータをプロットしたグラフを示し、表2にろ過定数KおよびK2−irをそれぞれ示す。
なお、図3のように、単位膜差圧当たりに得られる流量Vs(単位:m/m)を横軸とし、Q/Qを縦軸としてデータをプロットした場合、その傾きがろ過閉塞モデルの一つであるケーキろ過モデルのケーキろ過定数となる。
同図の白抜き丸、白抜き三角、および白抜き四角の符号はそれぞれ、1区分目(物理的洗浄なし)の一段階目、二段階目および三段階目を示し、同図の黒三角、白抜き菱形の符号はそれぞれ、2区分目(物理的洗浄後)の二段階目、三段階目を示す。
Figure 2021194586
図3および表2に示すように、凝集処理水のろ過抵抗の上昇過程は、三段階のケーキろ過モデルで表現できた(図3の白抜き丸、白抜き三角、および白抜き四角の符号参照)。また、スポンジ洗浄のような物理洗浄で除去できない不可逆汚染、すなわち、膜閉塞も三段階の直線の傾きで表わせる事から(図3の白抜き丸、黒三角、白抜き菱形の符号参照)、不可逆汚染もみかけケーキろ過定数で整理できる事が分かった。なお、本実験では、一段階目の全体のみかけのケーキろ過定数と不可逆汚染のみかけのケーキろ過定数は同じあり、ろ過初期の単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.08m/mまではほぼ全部が不可逆汚染であった。
実施例1の結果が示すように、可逆汚染と不可逆汚染を合わせた全体のろ過抵抗の上昇過程は、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0〜0.08m/mまでの一段階目、0.08〜0.32m/mまでの二段階目、0.32〜0.96m/mまでの三段階目の三段階に分類できた。
また、不可逆汚染のろ過抵抗の上昇過程も、同じ単位膜差圧当たりに得られる流量Vsの区間で三段階に分類できた。
不可逆汚染のみかけのケーキろ過定数K2−irは、二段階目が一番大きく、三段階目になると著しく低下した。
不可逆汚染と可逆汚染(ケーキ形成)の両方を評価するには、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.4 m/mまで取ればほぼ評価できるが、0.32 m/m以下とすれば正確にみかけのケーキろ過定数Kを算出できるのでより好ましい事が分かった。
MFIとその変法などは、ケーキろ過理論に基づいた評価手法であり、膜汚染物質をすべて可逆的なケーキのろ過抵抗として間接的に評価しており、従来の測定手法は、本発明の中では、三段階目の部分に相当する。
一方、本発明は、上記実施例1に示すように、凝集処理水の膜汚染における可逆汚染と不可逆汚染の寄与度の直接評価を目指した発明であり、従来の方法とは、観点が大きく違う事が分かる。
<実施例2>
被処理水には、比較的清澄な時期の冬季の河川水(濁度:1.0度、色度:2.5度、pH7.8、TOC:0.4mg/L)を使用した。
この被処理水に対し、ポリ塩化アルミニウム(PACl、塩基度70%)を注入率0、10、20、30mg/Lの範囲で添加し、凝集処理を行った。
撹拌条件は、急速撹拌処理(130rpm×3分)→緩速撹拌処理(30rpm×10分)→静置(5分)とした。
得られた凝集処理水を2区分に分け、それぞれ膜ろ過試験に供した。分離膜は、メルク社製のVVHP膜(疎水性PVDF膜、孔径0.1μm)を使用し、直径25mmの平膜用ガラス製フィルターホルダーを使用した。
膜ろ過試験は、実施例1と同じ条件とした。すなわち、吸引ポンプを用いて全量定圧ろ過(吸引圧90kPa)で供試水を膜に通水し、ろ過水量の経時変化を測定することで行った。そして、1区分目については、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.04m/m毎に、全体で0.96 m/mに至るまでQ/Qを連続的に測定した。
2区分目については、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.08、0.16、0.24、0.32、0.40、0.60、0.96 m/mに達した時点でスポンジ洗浄を行い、洗浄後のQ/Qを測定した。
次に、1区分目について、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.08〜0.32m/mの範囲で、可逆汚染分と不可逆汚染分を含めた全体のみかけのケーキろ過定数K(KVVHP)を算出した。
また、2区分目について、単位膜差圧当たりに得られる流量Vsが0.08〜0.32m/mの範囲で、不可逆汚染分のみかけのケーキろ過定数K2−ir(KVVHP-ir)を求めた。
表2に各PACl注入率におけるみかけのケーキろ過定数を示す。
Figure 2021194586
(1区分目の)2段階目の全体のケーキろ過定数K(KVVHP)は、PACl注入率10mg/Lで一番大きく、膜閉塞性が最も高い事が分かる。
また、ケーキろ過定数K(KVVHP)に着目すれば、PACl注入率20mg/Lよりも30mg/Lにおいて小さい値を示したが、物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率であるケーキろ過定数K2-ir(KVVHP-ir)は、PACl注入率30mg/Lよりも20mg/Lの方が低く、ケーキろ過定数K(KVVHP)およびケーキろ過定数K2-ir(KVVHP-ir)の双方を考慮すると、PACl注入率20mg/Lの方が不可逆汚染が小さい最適注入率である事が分かった。
1 凝集処理水
10 凝集膜ろ過システム
20 膜ろ過部
30 膜ろ過抵抗測定手段
40 膜摩擦手段

Claims (5)

  1. 分離膜を用いた膜ろ過処理に供される被処理水の膜閉塞性評価方法であって、
    前記被処理水を前記分離膜で膜ろ過し、前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記分離膜のろ過抵抗の上昇率(ろ過定数K1〜3)のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率Kを算出するろ過定数K算出工程と、
    前記分離膜のろ過抵抗を、物理的外力によって除去できるろ過抵抗と除去できないろ過抵抗に分類し、前記ろ過定数K算出工程と同様に、前記分離膜の単位膜面積当たりのろ過水量の増大に伴って三段階に変化する前記物理的外力によって除去できないろ過抵抗の上昇率のうち少なくとも二段階目のろ過抵抗の上昇率K2−irを算出するろ過定数K2−ir算出工程と、
    前記ろ過定数KおよびK2−irに基づき前記被処理水の膜閉塞性を評価する評価工程と、
    を有することを特徴とする被処理水の膜閉塞性評価方法。
  2. 前記被処理水が、凝集剤が混和された凝集処理水であることを特徴とする請求項1に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法。
  3. 前記物理的外力が、前記分離膜の膜面を物理的に擦る操作により付加されることを特徴とする請求項1または2に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法。
  4. 前記ろ過抵抗の各上昇率KのおよびK2−irを、前記単位膜面積当たりのろ過水量が0.08 m/m以上から0.40 m/m以下となる範囲で算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法。
  5. 請求項2に記載の被処理水の膜閉塞性評価方法により前記凝集処理水の膜閉塞性を評価し、凝集条件を決定するための凝集膜ろ過システムであって、
    前記凝集処理水を前記分離膜で膜ろ過する膜ろ過部と、
    前記膜ろ過時の前記分離膜の膜ろ過抵抗を測定可能な膜ろ過抵抗測定手段と、
    前記分離膜の膜面を物理的に擦るための膜摩擦手段と、
    を有することを特徴とする凝集膜ろ過システム。
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