JP2016158479A - 蓄電装置、電力供給システムの管理サーバー、及び電力供給方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力系統のピーク電力を抑制しつつ、拡張性を高めることのできる蓄電装置、電力供給システムの管理サーバー、及び電力供給方法を提供する。
【解決手段】電力系統2から電力が供給される複数の蓄電装置のうちの一つの蓄電装置40は、電力系統2から供給される電力を充電するとともに、充電された電力を放電する蓄電池401と、蓄電池401の充放電を制御するBMU404とを備える。電力系統から複数の蓄電装置に供給される総供給電力に基づき仮想電力価格の最新値が設定された時点から当該最新値をBMU404が受信するまでの時間差を遅延時間とするとき、BMU404は、最新値が受信された時点よりも遅延時間だけ前に設定された仮想電力価格の値である比較対象値と、蓄電池401の蓄電量とに基づいて蓄電池401の充電状態を制御する。
【選択図】図2
【解決手段】電力系統2から電力が供給される複数の蓄電装置のうちの一つの蓄電装置40は、電力系統2から供給される電力を充電するとともに、充電された電力を放電する蓄電池401と、蓄電池401の充放電を制御するBMU404とを備える。電力系統から複数の蓄電装置に供給される総供給電力に基づき仮想電力価格の最新値が設定された時点から当該最新値をBMU404が受信するまでの時間差を遅延時間とするとき、BMU404は、最新値が受信された時点よりも遅延時間だけ前に設定された仮想電力価格の値である比較対象値と、蓄電池401の蓄電量とに基づいて蓄電池401の充電状態を制御する。
【選択図】図2
Description
本発明は、電力系統から電力が供給される蓄電装置、電力供給システムの管理サーバー、及び蓄電装置への電力供給方法に関する。
人間の生活や企業の生産活動に伴い一日の電力需要には高低差が存在する。通常、電力会社は、電力需要の高低差に応じて、予備の発電機を稼働あるいは停止させることにより電力の需給バランスを維持している。こうした予備の発電機の確保はコストの増加につながるため、電力需要の高負荷部分を低減するピークカットや、需給の逼迫した時期から需給の緩慢な夜間や休日に電力負荷を移動させるピークシフト等、電力負荷の平準化を実現する手法が検討されている。従来、電力負荷の平準化を行う電力供給システムとしては、特許文献1に記載のシステムがある。
特許文献1に記載の電力供給システムは、電力系統から複数の蓄電装置に電力を供給するシステムである。特許文献1に記載の電力供給システムは、複数の蓄電装置を充電する際に、蓄電装置の蓄電量に応じて各蓄電装置の充電電流を決定している。充電電流は、充電のために深夜時間帯の開始時刻から充電を開始して、深夜時間帯の終了時刻に充電が完了する電流値に決定される。
ところで、特許文献1に記載の電力供給システムは、各蓄電装置の蓄電量の検知、及び各蓄電装置に対する充電電流を設定する集中管理装置(スーパバイザ)が必要な構成である。このような構成の場合、蓄電装置の数が変化すると、それに応じて各蓄電装置の充電電流の設定値を変更する必要があるため、集中管理装置のアルゴリズムを見直さなければならなくなる。これが、電力供給システムとしての拡張性の低下を招く要因となっている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統のピーク電力を抑制しつつ、拡張性を高めることのできる蓄電装置、電力供給システムの管理サーバー、及び電力供給方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、電力系統(2)から電力が供給される複数の蓄電装置のうちの一つの蓄電装置(40)は、電力系統から供給される電力を充電するとともに、充電された電力を放電する蓄電池(401)と、蓄電池の充放電を制御する制御部(404)と、を備える。蓄電池は、電力系統から複数の蓄電装置への供給電力の相数に基づき設定される充電性能を有する。電力系統から複数の蓄電装置に供給される電力の総量である総供給電力に基づき仮想電力価格の最新値が設定された時点から当該最新値を制御部が受信するまでの時間差を遅延時間とするとき、制御部は、最新値が受信された時点よりも遅延時間だけ前に設定された仮想電力価格の値である比較対象値と、蓄電池の蓄電量とに基づいて蓄電池の充電状態を制御する。
この構成によれば、複数の蓄電装置のそれぞれが仮想電力価格と蓄電池の蓄電量とに基づいて蓄電池の充電状態を制御する。すなわち、各蓄電池の充電制御が自律分散型の制御として行われるため、集中管理装置が不要となる。よって、拡張性を高めることができる。また、仮想電力価格の最新値が受信された時点よりも遅延時間だけ前に設定された仮想電力価格の値である比較対象値と蓄電池の蓄電量とに基づいて制御部が蓄電池の充電を行えば、電力系統から複数の蓄電装置への供給電力が多相同期となることが発明者により確認されている。電力系統から複数の蓄電装置への供給電力の相数が多相となることにより、電力系統のピーク電力を抑制することができる。
本発明によれば、電力系統のピーク電力を抑制しつつ、拡張性を高めることができる。
以下、電力供給システムの一実施形態について説明する。
図1に示されるように、本実施形態の電力供給システム1は、電力系統2と、センター3とを備えている。電力供給システム1は、複数の需要家4に電力を供給するシステムである。
図1に示されるように、本実施形態の電力供給システム1は、電力系統2と、センター3とを備えている。電力供給システム1は、複数の需要家4に電力を供給するシステムである。
電力系統2は、複数の需要家4と電力供給ラインLを介して接続されている。電力系統2は、電力供給ラインLを介して単相100Vの交流電力を複数の需要家4にそれぞれ供給する。
センター3は、複数の需要家4への電力供給を管理する管理サーバーである。センター3は、電力系統2の総供給電力utotal(t)を検出する電力センサ30を有している。総供給電力utotal(t)は、電力系統2から複数の需要家4に供給される電力の総量を示す。なお、「t」は時間を示す。センター3は、機能的な制御ブロックとして価格設定部31を有している。価格設定部31は、電力センサ30により検出される総供給電力utotal(t)に基づいて仮想電力価格p(t)を設定する部分である。仮想電力価格p(t)は、単位時間当たりの単位電力の価格を示す情報であり、センター3により随時更新される。センター3は仮想電力価格p(t)の情報を各需要家4に送信する。
センター3において、仮想電力価格p(t)は以下の式f1により算出される。式f1に示されるように、仮想電力価格p(t)は、総供給電力utotal(t)を蓄電装置40の総数Nで除することにより算出される。
図2に示されるように、需要家4は、蓄電装置40と、インバータ41と、負荷42とを備えている。負荷42は、例えば需要家4のコンセント等の各種電気機器を示す。
インバータ41は、蓄電装置40から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに、変換された交流電力を負荷42に供給するDC/AC変換動作を行う。また、インバータ41は、電力供給ラインLを介して電力系統2から供給される交流電力を負荷42に供給する。インバータ41は、蓄電装置40のみから負荷42への電力供給、電力系統2のみから負荷42への電力供給、並びに蓄電装置40及び電力系統2の両者から負荷42への電力供給を選択的に行う。また、インバータ41は、電力供給ラインLを介して電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換するとともに、変換された直流電力を蓄電装置40に供給するAC/DC変換動作を行うことも可能となっている。
蓄電装置40は、電力系統2からインバータ41を介して供給される直流電力を充電するとともに、充電された電力を負荷42にインバータ41を介して供給する。蓄電装置40は、充放電可能な蓄電池401と、コンバータ402と、蓄電量センサ403と、制御部としてのBMU(Battery Management Unit)404とを備えている。
コンバータ402は、蓄電池401から供給される直流電力を昇圧し、昇圧された直流電力をインバータ41に供給する昇圧動作を行うことが可能となっている。また、コンバータ402は、インバータ41から供給される直流電力を降圧し、降圧された直流電力を蓄電池401に供給する降圧動作を行うことが可能となっている。
蓄電量センサ403は、蓄電池401の蓄電量xi(t)を検出する。なお、添字「i」は、需要家4の蓄電装置40毎に「1,2,3,・・・」の順で割り当てられた値である。蓄電量センサ403は、検出した蓄電量xi(t)をBMU404に出力する。
BMU404は、蓄電量センサ403の出力に基づいて蓄電池401の蓄電量xi(t)の情報を取得する。また、BMU404は、センター3から送信される仮想電力価格p(t−T)の情報も取得する。
センター3からBMU404に仮想電力価格p(t)が送信される場合、BMU404が取得する仮想電力価格には、例えば通信状況等により遅延が生じる。すなわち、センター3が仮想電力価格p(t)を更新した場合、更新時刻から所定時間経過後に、更新された仮想電力価格をBMU404が取得することになる。この仮想電力価格p(t)の最新値が設定された時点から当該最新値をBMU404が受信するまでの時間差を遅延時間Tとすると、BMU404が取得する仮想電力価格は「p(t−T)」で表すことができる。本実施形態では、この仮想電力価格p(t−T)が比較対象値に相当する。
BMU404は、蓄電量xi(t)及び仮想電力価格p(t−T)に基づいてコンバータ402の駆動を制御することにより、蓄電池401の充電状態を制御する。なお、以下では、便宜上、蓄電量xi(t)を正規化された値で表す。当該正規化は、蓄電量を、蓄電池401の蓄電容量(蓄電量の最大値)で除することにより行われる。
すなわち、蓄電量xi(t)は「0≦xi(t)≦1」の範囲の値を取り得る無次元数である。蓄電量xi(t)が「0」である場合、蓄電池401が完全放電状態であることを示し、蓄電量xi(t)が「1」である場合、蓄電池401が満充電状態であることを示す。
次に、BMU404により実行される蓄電池401の充電制御について説明する。図3は、BMU404により実行される充電制御の手順を示したものである。なお、BMU404は、図3に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。また、本実施形態では、負荷42での電力消費が常時行われており、蓄電池401から負荷42への電力供給が常時行われている状況を想定している。蓄電池401は複数のセルを有しているので、充電中の期間においても負荷42への電力供給を継続的に行うことが可能となっている。
図3に示されるように、BMU404は、まず、蓄電量xi(t)が「1」であるか否かを判断する(ステップS1)。すなわち、BMU404は、蓄電池401が満充電状態であるか否かを判断する。BMU404は、蓄電量xi(t)が「1」である場合(ステップS1:YES)、蓄電池401の充電を停止する(ステップS2)。
BMU404は、蓄電量xi(t)が「1」でない場合(ステップS1:NO)、すなわち蓄電池401が満充電状態でない場合には、仮想電力価格p(t−T)が価格閾値pc以下であって、且つ蓄電量xi(t)が残量閾値xc以下であるか否かを判断する(ステップS3)。BMU404は、ステップS3の判断が否定である場合(ステップS3:NO)、蓄電量xi(t)が「0」であるか否かを判断する(ステップS5)。すなわち、BMU404は、蓄電池401が完全放電状態であるか否かを判断する。BMU404は、ステップS3の判断が肯定である場合(ステップS3:YES)、あるいはステップS5の判断が肯定である場合(ステップS5:YES)、蓄電池401を充電状態に移行させる(ステップS4)。
BMU404は、ステップS3及びステップS5の判断が共に否定である場合(ステップS3:NO,ステップS5:NO)、一連の処理をそのまま終了する。
次に、遅延時間T、残量閾値xc、及び価格閾値pcの設定方法について説明する。図4は、それらの設定方法をフローチャートで示したものである。図4に示されるフローチャートは、電力供給システム1の設計の際に設計者等により実行される。
図4に示されるように、電力供給システム1の設計の際には、まず、電力供給システム1が電力供給対象とする蓄電装置40の総数Nが決定される(ステップS10)。蓄電装置40の総数Nは、例えば電力供給システム1が電力の供給対象としている地域の需要家の数に基づいて決定される。
ステップS10に続いて、電力系統2から複数の蓄電装置40への供給電力の相数Mが決定される(ステップS11)。供給電力の相数Mとは、充放電電力パターンの数を示す。
ステップS11に続いて、各蓄電装置40の蓄電池401の仕様、具体的には蓄電池401の個別の充電性能uiが決定される(ステップS12)。なお、「充電性能」とは、蓄電池401の単位時間当たりの充電量(電力値)を数値化したものである。以下では、便宜上、充電性能uiを正規化された値で表す。当該正規化は、それぞれの充電性能を負荷42の消費電力(固定値)で除することにより行われる。充電性能uiは、その値が大きいほど、充電性能が大きいことを示す。ステップS12の処理では、具体的には、「ui>M」を満たすように充電性能uiが設定される。
すなわち、対象とする蓄電装置40の総数Nが増えるほど、「ε」は小さな値となる。このような微小なεを価格閾値pcに加算することで、多相同期現象が生じやすくなるという知見が得られている。
ステップS13に続いて、蓄電池401の残量閾値xcが決定される(ステップS14)。ここで、残量閾値xcが大きくなるほど、図3のステップS3で肯定判断される際の蓄電量xi(t)が大きくなる、すなわち蓄電池401のDOD(Depth of Discharge)が浅くなるため、充放電回数が増加する。一方、残量閾値xcが小さくなるほど、蓄電池401のDODが深くなるため、充放電回数が減少する。すなわち、蓄電池401のDODと充電回数とはトレードオフの関係にあるため、残量閾値xcに関しては、蓄電池401の充電性能等に応じて設定される。
発明者らは研究を重ねることにより、ステップS10〜S15の手順で遅延時間Tを設定することにより、電力系統2から複数の蓄電装置40への供給電力の相数を、ステップS11で決定される値Mに設定できることを見出した。つまり、複数の蓄電装置40において自律分散的に生じる多相同期現象の相数が、予めステップS11で決定されていた値Mに一致することを見出した。
ステップS15で遅延時間Tを決定した後、BMU404における仮想電力価格の受信時の実際の遅延時間が、設定された遅延時間Tとなるように電力供給システム1のネットワーク等が設計される。
次に、本実施形態の電力供給システム1及びBMU404の動作例について説明する。蓄電池401の個別の充電性能uiは、以下の式f5で表すことができる。なお、「充電性能」とは、蓄電池401の単位時間当たりの充電量(電力値)を数値化したものである。公称充電性能uは、蓄電池401の充電性能の公称値を示す。公称充電性能uは、複数の需要家4にそれぞれ設けられる蓄電池の充電性能の平均値に相当するものである。係数Eは、公称充電性能uに対する蓄電池401の個別の充電性能uiのばらつきを示すものであり、例えば「1.01」に設定される。
ここで、蓄電池401に充電される電力は、電力系統2から蓄電装置40に供給される電力に等しい。したがって、電力系統2から蓄電装置40への供給電力をui(t)とすると、供給電力ui(t)と充電性能uiとの間には、以下の(a1)及び(a2)の関係が成立する。なお、供給電力ui(t)及び充電性能uiは、正規化された値であるとする。
(a1)電力系統2から蓄電装置40に電力が供給されている場合。すなわち、蓄電池401が充電状態である場合。この場合には、「ui(t)=ui」となる。
(a2)電力系統2から蓄電装置40に電力が供給されていない場合。すなわち、蓄電池401の充電が停止されている場合。この場合には、「ui(t)=0」となる。
図5は、供給電力ui(t)に対する蓄電池401の蓄電量を水槽で表した制御モデルである。図5の制御モデルでは、電力の流れを水の流れで示している。また、蓄電池401から負荷42への供給電力は、正規化された値として「1」で定義されている。
図6(a),(b)は、蓄電装置40の蓄電量xi(t)を式f8に示されるように表した場合における総供給電力utotal(t)及び蓄電量xi(t)の推移をそれぞれ示したものである。なお、蓄電装置40の総数Nは「10」に、公称充電性能uは「5.4」に、供給電力の相数Mは「2」に、残量閾値xcは「xc1」にそれぞれ設定されている。
図6(b)に示されるように、式f4を満たすように遅延時間Tが設定されることにより、10個の蓄電装置40のうち、5つの蓄電装置40のそれぞれの蓄電量x1(t)〜x5(t)の推移が同期するとともに、残りの5つの蓄電装置40のそれぞれの蓄電量x6(t)〜x10(t)の推移が同期する。具体的には、蓄電量x1(t)〜x5(t)は次のように推移する。
例えば時刻t1で蓄電量x1(t)〜x5(t)が「1」に達すると、すなわち蓄電装置40が満充電状態になると、蓄電装置40の充電が停止される。したがって、時刻t1以降、蓄電装置40の放電に伴い蓄電量x1(t)〜x5(t)は減少していく。その後、時刻t2で蓄電量x1(t)〜x5(t)が残量閾値xc1以下になった後、時刻t3で仮想電力価格p(t−T)が価格閾値pc以下になると、蓄電装置40の充電が開始される。これにより、蓄電量x1(t)〜x5(t)が増加する。蓄電装置40の充電により時刻t4で蓄電量x1(t)〜x5(t)が再度「1」に達すると、蓄電装置40の充電が停止される。よって、時刻t4以降、蓄電装置40の放電に伴い蓄電量x1(t)〜x5(t)は減少していく。蓄電量x1(t)〜x5(t)は、このような増減を同期して繰り返す。また、蓄電量x6(t)〜x10(t)も同様の増減を同期して繰り返す。
図6(b)に示されるように蓄電量x1(t)〜x10(t)が推移することにより、電力系統2の供給電力の相数Mは「2」となる。この場合、図6(a)に示されるように、総供給電力utotal(t)は、蓄電量x1(t)〜x5(t)が増加する際に、すなわち5つの蓄電装置40が充電する際に所定値uaを示す。また、総供給電力utotal(t)は、蓄電量x6(t)〜x10(t)が増加する際に、すなわち残りの5つの蓄電装置40が充電する際にも同様に所定値uaを示す。さらに、総供給電力utotal(t)が所定値uaとなる時期が周期的に表れる。これにより、10個の蓄電装置40が同時に充電を行う場合と比較すると、電力系統2のピーク電力を抑制することができる。
図7(a),(b)は、蓄電装置40の総数Nが「10」に、公称充電性能uが「5.4」に、供給電力の相数Mが「5」に、残量閾値xcが「xc1」にそれぞれ設定されている場合の総供給電力utotal(t)及び蓄電量xi(t)の推移をそれぞれ示したものである。
図7(b)に示されるように、式f4を満たすように遅延時間Tが設定されることにより、蓄電装置40の蓄電量x1(t),x2(t)の推移、及び蓄電量x3(t),x4(t)の推移がそれぞれ同期する。また、蓄電量x5(t),x6(t)の推移、蓄電量x7(t),x8(t)の推移、及び蓄電量x9(t),x10(t)の推移がそれぞれ同期する。よって、電力系統2の供給電力の相数Mは「5」となる。この場合、図7(a)に示されるように、総供給電力utotal(t)は、蓄電量x1(t),x2(t)が増加する際に所定値ubを示す。同様に、総供給電力utotal(t)は、蓄電量x3(t)〜x10(t)が増加する際に所定値ubを示す。また、総供給電力utotal(t)が所定値ubとなる時期が周期的に表れる。これにより、10個の蓄電装置40が同時に充電を行う場合と比較すると、また電力系統2の供給電力の相数Mが「2」に設定されている場合と比較すると、電力系統2のピーク電力を抑制することができる。
ところで、蓄電装置40の蓄電量の推移がM相に分かれて同期する現象、すなわち多相同期現象は、蓄電装置40の数が一定である限りにおいては安定して継続される。しかしながら、例えば地域における需要家の数が変動する等によって蓄電装置40の総数が変化した際には、多相同期現象が一時的に不安定となることがある。場合によっては、多相同期現象が再開されなくなってしまうこともある。
本発明者らがシミュレーションを行うことによって確認したところによれば、当初における蓄電装置の総数Nが相数Mで割り切れる場合には、蓄電装置40の総数Nを増加又は減少させても、多相同期現象は不安定にはなりにくいという知見が得られている。また、総数Nが相数Mで割り切れない場合であって、且つ、蓄電装置40の総数Nを増加させる際においても、多相同期現象は不安定にはなりにくいという知見が得られている。
これに対し、総数Nが相数Mで割り切れない場合であって、且つ、蓄電装置40の総数Nを減少させる際には、多相同期現象が高い確率で不安定となり、長時間に亘って復帰しないことが判明している。
この理由は、以下のように考えられる。蓄電装置40の総数Nが減少すると、総供給電力utotal(t)の値が小さくなることに伴い、式f1で示される仮想電力価格p(t)の値が小さくなる。これにより、図3におけるステップS3の判断が肯定となりやすくなるので、それぞれの蓄電装置40が充電に移行するタイミングが変化してしまう。具体的には、蓄電状態に移行しやすくなる。その結果、多くの蓄電装置40において充電が一気に開始されることとなり、多相同期現象が崩れてしまう。
そこで、蓄電装置40の総数Nを減少させる際には、それに伴う仮想電力価格p(t)の減少が抑制されるように工夫することが望ましい。具体的には、以下に説明するような手順で蓄電装置40の総数Nを減少させれば、多相同期現象を維持することが可能である。
図8は、相数Mの多相同期現象が生じているときにおいて、蓄電装置40の総数Nを減少させる手順をフローチャートで示したものである。最初のステップS20では、削除される蓄電装置40の台数が決定される。以下では、当該台数を「削除台数d」と表記する。削除台数dは、以下の式f9を満たす範囲の数値として決定される。
式中のNCは、削除を行う前における蓄電装置40の総数である。以下、「総数NC」と表記する。式f9で示されるように、削除台数dは、総数NCを相数Mで除した値を超えないように決定される。これよりも多くの蓄電装置40を削除する場合には、一回当たりの削除台数dが式f9の範囲に収まるようにしながら、複数回に分けて削除する必要がある。
式f10の右辺は、式f1の右辺に対し、(d/NC)uで表される項を加算したものに等しい。当該項のことを、以下では「加算項」とも称する。式中のuは、既に述べた公称充電性能uである。すなわち、各蓄電池401の充電性能の平均値である。
式f10に示されるように、加算項は、削除台数dに比例する項となっている。また、削除が行われる前の時点における蓄電装置40の総数NCに反比例する項となっている。更に、複数の蓄電装置40における充電性能の平均値、である公称充電性能uに比例する項となっている。このような加算項が加えられるので、算出される仮想電力価格p(t)の値は、削除が行われる前の値よりも大きくなる。
ステップS21に続くステップS22では、蓄電装置40の削除が実施される。蓄電装置40の削除に伴い、総供給電力utotal(t)の値が小さくなり、式f10で示される仮想電力価格p(t)の値も小さくなる。ただし、仮想電力価格p(t)の値は加算項により予め大きな値となっていたのであるから、この時点の仮想電力価格p(t)の値は、ステップS21の処理が行われる前の時点の仮想電力価格p(t)の値に概ね一致する。つまり、多相同期現象が生じていたときの仮想電力価格p(t)に近づくこととなる。
従って、図3におけるステップS3の判断が肯定となりやすくなることはなく、それぞれの蓄電装置40が充電に移行するタイミングが変化してしまうこともない。多くの蓄電装置40において充電が一気に開始されることがなく、多相同期現象は蓄電装置40の削除後においても安定して維持される。状況によっては、多相同期現象が一時的に不安定になる可能性もあるが、その場合でも比較的短時間のうちに多相同期現象が再開される。
尚、仮想電力価格p(t)の算出方法を変更するための方法としては、作業者が手動で設定変更を行ってもよいのであるが、センター3が実行するプログラムによって自動的に変更されるような態様であってもよい。つまり、削除台数dを示す情報が予め入力されると、仮想電力価格p(t)を算出するための式が式f1から式f10へと自動的に切り換えられるような態様としてもよい。
以上説明した電力供給システム1、蓄電装置40、及び電力供給方法によれば、以下の(1)〜(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)各需要家4の蓄電装置40が仮想電力価格p(t−T)と蓄電池401の蓄電量xi(t)とに基づいて蓄電池401の充電状態を制御する。すなわち、各蓄電装置40の充電制御が自律分散型の制御として行われる。これにより、各蓄電装置40の充電を統括的に管理する集中管理装置が不要となる。よって、電力供給システム1及び蓄電装置40の拡張性を高めることができる。
(2)BMU404は、仮想電力価格p(t−T)と蓄電池401の蓄電量xi(t)とに基づいて蓄電池401の充電状態を制御することとした。具体的には、BMU404は、仮想電力価格p(t−T)が価格閾値pc以下であって、且つ蓄電量xi(t)が残量閾値xc以下であること、及び蓄電池401が完全放電状態であることのいずれか一方の条件が満たされた場合には、蓄電池401を充電状態に移行させることとした。また、BMU404は、蓄電池401が満充電状態である場合には、蓄電池401の充電を停止させることとした。これにより、電力系統2から複数の蓄電装置40への供給電力を多相同期させることができるため、電力系統2のピーク電力を抑制することができる。
(3)電力会社が予備力として発電機を購入する代わりに、各需要家4に蓄電装置40を配布することで、電力負荷の平滑化を実現することができる。電力供給システム1が電力の供給対象とする需要家4の数が増加した場合でも、本実施形態の自律分散型の蓄電装置40を各需要家4に設置すれば、システムの見直しを伴うことなく電力負荷の平滑化が可能となる。
(4)電力会社と企業等のアグリゲータとが契約を交わし、電力負荷平滑化を達成する見返りとしてアグリゲータが電力会社から報酬をもらうようにすれば、アグリゲータはこの報酬を原資に各需要家に蓄電装置40を配布することで、電力負荷の平滑化を実現し易くなる。アグリゲータの管理下の需要家の数が増加した場合でも、本実施形態の自律分散型の蓄電装置40を各需要家4に配置すれば、システムの見直しを伴うことなく電力負荷の平滑化が可能となる。
(5)需要家の数が変動し蓄電装置40の総数Nが変化する場合であっても、多相同期現象が崩れてしまうことが無く安定して維持される。このため、電力供給システム1は、電力系統2のピーク電力を抑制しながら、その構成を柔軟に変化させることができる。その際、複数の蓄電装置40で行われる処理は特に変更する必要が無く、センター3における仮想電力価格p(t)の算出方法を変更するだけでよいので、多相同期現象を維持するために必要な手間やコストを抑制することができる。
なお、本発明は上記の具体例に限定されるものではない。すなわち、上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置や条件等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1:電力供給システム
2:電力系統
3:センター
31:価格設定部
40:蓄電装置
401:蓄電池
404:BMU
2:電力系統
3:センター
31:価格設定部
40:蓄電装置
401:蓄電池
404:BMU
Claims (9)
- 電力系統(2)から電力が供給される複数の蓄電装置のうちの一つの蓄電装置(40)であって、
前記電力系統から供給される電力を充電するとともに、充電された電力を放電する蓄電池(401)と、
前記蓄電池の充放電を制御する制御部(404)と、を備え、
前記蓄電池は、前記電力系統から前記複数の蓄電装置への供給電力の相数に基づき設定される充電性能を有し、
前記電力系統から前記複数の蓄電装置に供給される電力の総量である総供給電力に基づき仮想電力価格の最新値が設定された時点から当該最新値を前記制御部が受信するまでの時間差を遅延時間とするとき、
前記制御部は、前記最新値が受信された時点よりも前記遅延時間だけ前に設定された前記仮想電力価格の値である比較対象値と、前記蓄電池の蓄電量とに基づいて前記蓄電池の充電状態を制御することを特徴とする蓄電装置。 - 前記制御部は、前記仮想電力価格の比較対象値が価格閾値以下であって、且つ前記蓄電池の蓄電量が残量閾値以下であること、及び前記蓄電池が完全放電状態であることの少なくとも一方の条件が満たされることをもって前記蓄電池の充電を行うことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
- 前記制御部は、前記蓄電池が満充電状態であることをもって前記蓄電池の充電を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
- 電力系統から複数の蓄電装置に電力が供給される電力供給システム(1)の管理サーバー(3)であって、
前記蓄電装置として、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電装置(40)が用いられ、
前記電力系統から前記複数の蓄電装置に供給される電力の総量である総供給電力に基づき仮想電力価格を設定するとともに、前記蓄電装置に前記仮想電力価格を送信する価格設定部(31)を備えることを特徴とする管理サーバー。 - 前記蓄電装置の数が減少する際には、前記仮想電力価格の値を予め大きくすることを特徴とする、請求項4に記載の管理サーバー。
- 前記蓄電装置の数が減少する際には、前記蓄電装置の減少数に比例する項である加算項を前記仮想電力価格に加えることにより、前記仮想電力価格の値を予め大きくすることを特徴とする、請求項5に記載の管理サーバー。
- 前記加算項は、減少前の時点における前記蓄電装置の数、に反比例する項であることを特徴とする、請求項6に記載の管理サーバー。
- 前記加算項は、前記複数の蓄電装置における充電性能の平均値、に比例する項であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の管理サーバー。
- 電力系統から複数の蓄電装置に電力を供給する電力供給方法であって、
前記複数の蓄電装置のうちの一つの蓄電装置(40)は、
前記電力系統から供給される電力を充電するとともに、充電された電力を放電する蓄電池(401)と、
前記蓄電池の充放電を制御する制御部(404)と、を備え、
前記電力系統から前記複数の蓄電装置に供給される電力の総量である総供給電力に基づき仮想電力価格の最新値が設定された時点から当該最新値を前記制御部が受信するまでの時間差を遅延時間とするとき、
前記電力系統から電力を供給する蓄電装置の数を決定する工程と、
前記蓄電池の数に基づいて前記電力系統から前記複数の蓄電装置への供給電力の相数を決定する工程と、
前記供給電力の相数に基づいて前記蓄電池の充電性能を決定する工程と、
前記蓄電池の充電性能、及び前記供給電力の相数に基づいて、前記仮想電力価格に対する価格閾値を設定する工程と、
前記蓄電池の蓄電量に対する残量閾値を設定する工程と、
前記供給電力の相数、前記蓄電池の充電性能、及び前記残量閾値に基づいて前記遅延時間を設定する工程と、を備えることを特徴とする電力供給方法。
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