JP2016158059A - 画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム - Google Patents

画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】Retinex理論を応用した画像処理を実現するための回路の規模をより低減する。【解決手段】画像データを取得する取得部と、取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調する第1の変調部と、前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調する第2の変調部と、変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算する加算部と、を備えることを特徴とする、画像処理装置。【選択図】図5

Description

本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
近年では、デジタルスチルカメラのような撮像装置が広く普及している。このような撮像装置の中には、逆光補正やHDR(High Dynamic Range)等のような所謂ダイナミックレンジ圧縮技術を利用したものもある。このような撮像装置では、撮像素子のダイナミックレンジよりも、明るさのレンジがより広い被写体の画像を、例えば、暗部及び明部のいずれかまたは双方のレンジを縮退させることで撮像している。
また、上記に説明した一部のレンジが縮退された画像の視認性を向上させる技術として、当該画像に対して、Retinex理論を応用した画像処理を施すことで、局所的なダイナミックレンジ補正を行う技術がある。Retinex理論を応用した画像処理では、入力画像の明るさの成分を、照明光成分と反射率成分とに分離し、照明光成分に対して変調を施したうえで、変調後の照明光成分と反射率成分とを再合成することで局所的にダイナミックレンジが補正された出力画像を得る。
特開2008−244591号公報
また、Retinex理論を応用した画像処理装置の中には、反射率成分に対しても変調処理を施すことで、より画質を向上させるものもある。例えば、特許文献1には、Retinex理論を応用した画像処理を施すことで、局所的なダイナミックレンジ補正を行う技術の一例として、反射率成分に対しても変調処理を施すことで画質を向上させる技術の一例が開示されている。
一方で、Retinex理論を応用した画像処理装置は、回路規模が大きくなる傾向にあり、特に、反射率成分に対しても変調処理を施す場合については、その処理内容から、さらに回路規模が増大する傾向にある。
特に、近年では、所謂スマートフォンのように携行可能な比較的小型の端末に対して、Retinex理論を応用した画像処理技術の適用が望まれているが、このような端末では、組み込める回路の規模が制限されている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、Retinex理論を応用した画像処理を実現するための回路の規模をより低減することが可能な、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、画像データを取得する取得部と、取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調する第1の変調部と、前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調する第2の変調部と、変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算する加算部と、を備えることを特徴とする、画像処理装置が提供される。
前記照明光成分に基づき、前記第1の係数を算出する増幅率算出部を備えてもよい。
前記増幅率算出部は、前記照明光成分に基づく第1の値の累乗に対して、あらかじめ設定された第3の係数を乗算した第2の値に基づき、前記第1の係数を算出してもよい。
前記照明光成分をL、前記第1の値の累乗それぞれに対応する前記第3の係数をcr_slope1、cr_slope2、及びcr_slope3、あらかじめ設定されたゲインをcr_gain、あらかじめ設定されたオフセット値をcr_offsetとした場合に、前記第1の係数KCR−Gは、以下に示す計算式に基づき算出してもよい。
Figure 2016158059
前記第3の係数は、前記照明光成分と、変調後の当該照明光成分との関係を示した関数の近似値に基づき、あらかじめ設定されてもよい。
前記増幅率算出部は、前記第1の係数に基づき、前記第2の係数を算出してもよい。
前記照明光成分に基づき算出された第4の係数に基づき、前記反射吸光成分を変調する雑音抑制部を備え、前記第1の変調部は、前記第4の係数に基づき変調された前記反射吸光成分に対して、前記第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調してもよい。
前記雑音抑制部は、前記照明光成分が閾値以下の画素を対象として、前記反射吸光成分を、前記第4の係数に基づき変調してもよい。
前記照明光成分をL、前記閾値をsv_n_th、前記第4の係数の最大値をsv_n_max、当該照明光成分Lに応じた前記第4の係数の変化率をsv_n_grdとした場合に、当該第4の係数KSV−Nは、以下に示す計算式に基づき算出されてもよい。
Figure 2016158059
前記注目画素と、当該注目画素を基準とした所定の範囲に含まれる周辺画素とのそれぞれの画素値に基づく分散に応じて模様調強度を算出する模様調強度算出部を備え、前記第2の変調部は、前記照明光成分に対して、前記模様調強度に基づき制御された前記第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調してもよい。
前記模様調強度算出部は、前記分散と、前記周辺画素それぞれの画素値に基づく勾配との間の乖離度に応じたエッジ強度と、当該分散とに基づき、前記模様調強度を算出してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、画像データを取得することと、取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調することと、前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調することと、変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算することと、を含むことを特徴とする、画像処理方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、画像データを取得することと、取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調することと、前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調することと、変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算することと、を実行させることを特徴とする、プログラムが提供される。
以上説明したように本発明によれば、Retinex理論を応用した画像処理を実現するための回路の規模をより低減することが可能な、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムが提供される。
Retinex理論を応用した画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 Retinex理論を応用した画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 反射率成分と、変調後の反射率成分との間の関係の一例を示したグラフである。 照明光強調係数を利用することで、局所的なダイナミックレンジの補正を実現可能な画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 本開示の第1の実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 照明光成分と、補正後の照明光成分との間の関係の一例を示したグラフである。 照明光成分と照明光強調係数との間の関係の一例を示したグラフである。 照明光成分と照明光強調係数との間の関係の一例を示したグラフである。 本開示の第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 ノイズ抑制係数に基づく反射吸光成分の変調の概念について示した図である。 ノイズ抑制係数に基づく反射吸光成分の変調の概要について説明するための説明図である。 照明光成分とノイズ抑制係数との間の関係の一例を示したグラフである。 本開示の第3の実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。 模様調強度と過強調抑制係数との間の関係の一例を示したグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.概要>
[1.1.Retinex理論を応用した画像処理装置]
本発明の実施形態に係る画像処理装置の特徴をよりわかりやすくするために、まず、Retinex理論を応用した画像処理の概要について説明する。
一般的に、デジタルスチルカメラのような撮像装置により画像が撮像される場合に、撮像される自然界の光の明るさのレンジが、当該撮像装置に設けられた撮像素子のダイナミックレンジを超える場合がある。そのため、当該撮像装置の中には、逆光補正やHDR等のような所謂ダイナミックレンジ圧縮技術を利用して、撮像素子のダイナミックレンジよりも、明るさのレンジがより広い被写体の画像を撮像するものもある。このようなダイナミックレンジ圧縮技術を利用した撮像装置では、撮像される画像の暗部及び明部のいずれかまたは双方のレンジを縮退させることで、撮像素子のダイナミックレンジよりも、明るさのレンジがより広い被写体の画像の撮像を可能としている。
このようにして撮像された、所謂ダイナミックレンジが縮退された画像の視認性を向上させる技術として、Retinex理論を応用することで、画像処理として局所的なダイナミックレンジ補正を施す技術が知られている。
具体的には、Retinex理論では、画像中に撮像された光は、照明光成分と反射率成分とを掛けあわせたものとみなされる。即ち、照明光成分をL、反射率成分をRとした場合に、入力画像の明るさの成分Iは、以下に示す(式1)で示されることとなる。
Figure 2016158059
Retinex理論を応用した局所的なダイナミックレンジ補正を行う場合には、画像処理装置は、入力画像の明るさの成分Iから、照明光成分Lと反射率成分Rとを分離して処理する。なお、以降では、入力画像の明るさの成分Iを、単に「入力I」と記載する場合がある。
ここで、図1を参照して、Retinex理論を応用した局所的なダイナミックレンジ補正を行う画像処理装置(以降では、「Retinex理論を応用した画像処理装置」と記載する場合がある)の機能構成の一例について説明する。図1は、Retinex理論を応用した画像処理装置9aの機能構成の一例を示したブロック図である。
図1に示すように、画像処理装置9aは、照明光生成部11と、除算部12と、照明光変調部13と、乗算部14とを含む。
照明光生成部11は、入力Iに基づき照明光成分Lを生成するための構成である。具体的には、照明光生成部11は、入力Iに対して平滑化処理を施すことで(例えば、平滑化フィルタを適用することで)、当該入力Iから照明光成分Lを生成する。そして、照明光生成部11は、生成した照明光成分Lを示すデータを、除算部12と、照明光変調部13とに出力する。
除算部12は、入力Iに基づき反射率成分Rを生成するための構成である。具体的には、除算部12は、照明光生成部11から照明光成分Lを示すデータを取得し、前述した(式1)に基づき、入力Iを取得した照明光成分Lで除算することで、反射率成分Rを算出する。そして、除算部12は、算出した反射率成分Rを示すデータを、乗算部14に出力する。
照明光変調部13は、照明光生成部11から、入力Iに基づき生成された照明光成分Lのデータを取得する。照明光変調部13は、照明光成分Lに対して局所的な変調を施すことで、新たな照明光成分L’(即ち、照明光成分Lに対して局所的な変調が施された照明光成分L’)を生成する。
ここで、撮像装置により撮像された画像は、暗部のダイナミックレンジを縮退させることで、ダイナミックレンジを圧縮している場合が多い。そのため、照明光変調部13は、入力画像中の、特に、暗部に対してよりダイナミックレンジが伸長されるように、照明光成分Lに対して局所的な変調を施してもよい。この場合には、変調後の照明光成分L’は、ダイナミックレンジを伸長するための強調量をGとすると、以下に(式2)として示された関係式に基づき算出される。なお、以降では、照明光成分Lを変調するための強調量Gを、「照明光強調係数G」と記載する場合がある。
Figure 2016158059
そして、照明光変調部13は、生成した新たな照明光成分L’を示すデータを、乗算部14に出力する。
乗算部14は、除算部12から出力される反射率成分Rと、照明光変調部13から出力される照明光成分L’
(即ち、照明光成分Lに対して局所的な変調が施された照明光成分L’)とを乗算することで再合成する。そして、乗算部14は、反射率成分Rと照明光成分L’とが再合成されることで生成された明るさの成分I’に基づく画像を、出力画像として所定の出力先に出力する。
以上のようにして、画像処理装置9aは、入力画像に対して局所的にダイナミックレンジが補正された出力画像を生成して出力する。このように、入力画像に対して局所的にダイナミックレンジを補正することで、暗部や明部における縮退されたダイナミックレンジが伸長され、当該暗部や明部の視認性を向上させることが可能となる。以上、図1を参照して、Retinex理論を応用した画像処理装置9aの機能構成の一例について説明した。
[1.2.反射率成分を変調する場合の構成の一例]
図1を参照して説明したように、Retinex理論を応用した画像処理装置9aは、照明光成分Lに対してのみ変調を施すことで、局所的なダイナミックレンジの補正を行い、暗部や明部の視認性を向上させている。
一方で、図1を参照して前述した画像処理装置9aは、画像中の照明光が緩やかに変調していることを前提として、平滑化フィルタを適用することで照明光成分Lの抽出を行っているが、抽出された当該照明光成分Lは必ずしも忠実性が高いとは言えない場合がある。換言すると、図1を参照して前述した画像処理装置9aは、照明光成分Lと反射率成分Rの分離を完全には行えない場合がある。このような現象は、特に、照明光成分Lを抽出する際の参照画素範囲がより狭いほど、より顕著に表れる傾向にある。
このような問題を鑑みて、Retinex理論を応用した画像処理装置の中には、照明光成分Lに加えて、反射率成分Rに対しても変調を施すことで、画質を向上させるものがある。そこで、以下に、図2を参照して、Retinex理論を応用した画像処理装置の機能構成の一例として、特に、反射率成分Rに対しても変調を施すことで画質を向上させることが可能な画像処理装置の機能構成の一例について説明する。図2は、Retinex理論を応用した画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。
図2に示す画像処理装置9bは、反射率変調部15を含む点で、図1を参照して前述した画像処理装置9aと異なる。そこで、本説明では、画像処理装置9bの特徴について、特に、図1を参照して前述した画像処理装置9aと異なる部分に着目して説明する。
図2に示す画像処理装置9bにおいては、除算部12から出力される反射率成分Rは、反射率変調部15に入力される。反射率変調部15は、入力された反射率成分Rに対して変調を施すことで、新たな反射率成分R’(即ち、反射率成分Rに対して変調が施された反射率成分R’)を生成する。なお、変調後の反射率成分R’は、強調量をγとすると、以下に(式3)として示された関係式に基づき算出される。なお、以降では、反射率成分Rを変調するための強調量γを、「反射率強調係数γ」と記載する場合がある。
Figure 2016158059
そして、反射率変調部15は、生成した新たな反射率成分R’を示すデータを、乗算部14に出力する。
乗算部14は、反射率変調部15から出力される反射率成分R’と、照明光変調部13から出力される照明光成分L’とを乗算することで再合成する。そして、乗算部14は、反射率成分R’と照明光成分L’とが再合成されることで生成された明るさの成分I’に基づく画像を、出力画像として所定の出力先に出力する。
ここで、変調された反射率成分R’及び照明光成分L’を再合成することで明るさの成分I’(即ち、出力I’)を生成する場合に、出力I’は、前述した(式2)及び(式3)に基づき、以下に(式4)及び(式5)として示された関係式に基づき算出される。なお、(式4)におけるGは、前述した照明光強調係数であり、γは、前述した反射率強調係数である。また、(式5)におけるWLPFは、入力画像の明るさの成分Iから照明光成分Lを抽出するための平滑化フィルタのフィルタ係数である。
Figure 2016158059
上記に示した(式4)及び(式5)を参照するとわかるように、反射率成分R’及び照明光成分L’を再合成することで出力I’を生成する場合には、当該出力I’の計算式には、対数関数、指数関数、及び除算が含まれている。
ここで、対数関数、指数関数、及び除算を実現するための回路は、回路規模が比較的大きくなる傾向にある。特に、対数関数や指数関数の実現には、LUT(ルックアップテーブル)による数値変換を利用する場合があり、当該LUTを実現するために、メモリ等のリソースをより消費する傾向にある。そのため、Retinex理論を応用した画像処理装置は、回路規模が大きくなる傾向にあり、特に、図2に示す画像処理装置9bのように、反射率成分Rに対しても変調を施す場合には、さらに回路規模が増大する傾向にある。
特に、近年では、所謂スマートフォンのように携行可能な比較的小型の端末に対して、Retinex理論を応用した画像処理技術の適用が望まれているが、このような端末では、組み込める回路の規模が制限されている。
また、図2に示す画像処理装置9bのように、反射率成分Rに対して変調を施すことで反射率成分R’を生成する場合には、反射率成分Rの変調によりノイズ成分がより強調され、画質が低下する場合がある。
例えば、図3は、反射率成分Rに変調を施すことで顕在化し得るノイズ成分の一例について説明するための説明図であり、反射率成分Rと、変調後の反射率成分R’との間の関係の一例を示している。図3において、横軸は、反射率成分Rを示しており、縦軸は、変調後の反射率成分R’を示している。
(式1)及び(式3)を参照するとわかるように、反射率成分Rは、入力画像の明るさの成分Iを照明光成分Lで除算することで算出される。即ち、入力画像の明るさの成分Iが照明光成分Lよりも小さい場合(以降では、「吸収時」と称する場合がある)には、反射率成分Rは、1よりも小さい値となる。これに対して、入力画像の明るさの成分Iが照明光成分Lよりも大きい場合(以降では、「反射時」と称する場合がある)には、反射率成分Rは、1よりも大きい値となる。このとき、反射率成分は正の値のみを取り得る。ここで、入力画像の明るさの成分Iは、有限長であるため、反射率成分Rと、変調後の反射率成分R’との間の関係は、図3に示すようになる。
図3を参照するとわかるように、反射率成分Rに対して変調を施す場合には、反射時には、より反射の度合いが高められ、吸収時には、より吸収の度合いが高められるように反射率強調(換言すると、コントラスト強調)が施されることで、変調後の反射率成分R’が生成される。
しかしながら、図3に示すように、反射と吸収とでは、強調特性が非対象となる。また、画像の撮像時に含まれるノイズフロアのような小さいノイズ等の反射率成分Rは、1近傍の値をとる。ここで、図3を参照するとわかるように、反射率成分Rが1近傍の場合には、反射率成分Rと、変調後の反射率成分R’との間の関係を示すグラフは、反射率成分Rと、変調後の反射率成分R’とが等しい場合のグラフ(即ち、R=R’)よりも、傾きが急峻となる。即ち、1近傍の値をとる反射率成分Rは、強調の対象となるため、ノイズ成分も強調され、結果として、当該ノイズ成分が顕在化し画質の劣化を招く場合がある。
また、図1及び図2を参照して説明した画像処理装置9a及び9bは、入力画像中の局所的な特徴を加味しておらず、当該入力画像中の構成要素に関係なく、抽出した照明光成分Lに対する変調の度合いを確定する。そのため、被写体の模様により明暗(階調)が変化する部分(以降では、「模様調」と記載する場合がある)に着目した場合に、当該模様の粗密に関わらず、照明光成分Lに対して変調が施されることとなる。このような状況下において、例えば、密な模様調に対して、粗な模様調と同等の強調量で変調(強調)を施すと、模様が過度に強調されたような(即ち、過度にコントラストが強調されたような)不自然な画像となる場合がある。
本発明は、上記に示したような課題を鑑みてなされたものである。そこで、以降では、まず、第1の実施形態として、Retinex理論を応用した画像処理を実現するための回路の規模をより低減することが可能な画像処理装置の一例について説明する。次いで、第2の実施形態として、ノイズ成分の顕在化を抑制することが可能な画像処理装置の一例について説明する。また、第3の実施形態として、入力画像中の局所的な特徴に応じて強調量を制御することで、照明光成分Lの変調に伴う画質の劣化を抑制することが可能な画像処理装置の一例について説明する。
<2.第1の実施形態>
[2.1.概要]
まず、第1の実施形態として、Retinex理論を応用した画像処理を実現するための回路の規模をより低減することが可能な画像処理装置の一例について説明する。
本実施形態に係る画像処理装置では、変調前の照明光成分Lと変調後の照明光成分L’との間の比率を示す照明光強調係数KLGを利用することで、反射率成分Rの算出を伴わずに、局所的なダイナミックレンジの補正を実現する。そこで、本実施形態に係る画像処理装置の特徴をよりわかりやすくするために、まず、照明光強調係数KLGを利用した、局所的なダイナミックレンジの補正の原理について説明する。
まず、照明光成分Lに対してのみ変調を施す場合には、反射率成分Rと、変調後の照明光成分L’を再合成することで生成される出力I’は、前述した(式1)に基づき、以下(式6)として示すような、照明光強調係数KLGを利用した計算式に変換される。
Figure 2016158059
(式6)を参照するとわかるように、入力画像中の明るさの成分Iに対して、照明光強調係数KLGを乗ずることで、局所的なダイナミックレンジ補正が行われた出力I’を得られることとなる。
例えば、図4は、照明光強調係数KLGを利用することで、局所的なダイナミックレンジの補正を実現することが可能な画像処理装置9cの機能構成の一例を示したブロック図である。
図4に示す、画像処理装置9cは、照明光生成部11と、乗算部14aと、増幅率算出部16とを含む。なお、照明光生成部11は、図1及び図2に示した画像処理装置9a及び9bにおける照明光生成部11と同様である。照明光生成部11は、入力Iに基づき照明光成分Lを生成し、生成した照明光成分Lを示すデータを増幅率算出部16に出力する。
増幅率算出部16は、照明光生成部11から照明光成分Lを取得し、取得した照明光成分Lに基づき照明光強調係数KLGを算出する。なお、照明光成分Lに基づき照明光強調係数KLGを算出する方法の詳細については、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成とあわせて別途後述する。
そして、増幅率算出部16は、照明光成分Lに基づき算出した照明光強調係数KLGを乗算部14aに出力する。乗算部14aは、入力Iと、増幅率算出部16から出力される照明光強調係数KLGとを乗算し、乗算結果を出力I’として出力する。
以上のような構成により、照明光強調係数KLGを算出することが可能であれば、図1に示した画像処理装置9aと、図4に示した画像処理装置9cとは等価であるものとみなすことが可能となる。ここで、図4や前述した(式6)を参照するとわかるように、画像処理装置9cは、反射率成分Rの導出を伴わずに、局所的なダイナミックレンジの補正を可能としている。即ち、図4に示す画像処理装置9cに依れば、回路規模の増大要因となり得る除算を伴わずに、局所的なダイナミックレンジの補正が可能となり、図1に示す画像処理装置9aに比べて回路規模を低減することが可能となる。
ここで、入力Iと照明光成分Lとの差を反射吸光成分Lとすると、前述した(式6)は、以下に(式7)として示された関係式に変換される。
Figure 2016158059
上記に示した(式7)において、係数KBR−G及びKCR−Gは、照明光成分Lと反射吸光成分Lとを個別に制御可能とするために、照明光強調係数KLGを振り分けたものである。即ち、(式7)において、係数KBR−G及びKCR−GをKBR−G=KCR−Gとなるように制御した場合には、上記に示した(式7)は、前述した(式6)として作用することとなる。
ここで、係数KBR−Gは、照明光成分Lに対して乗ずることで当該照明光成分Lを変調し、変調後の照明光成分L’を生成するための係数である。照明光成分Lは、入力画像中の各画素を注目画素とした場合に、広義の意味では、当該注目画素の周辺に位置する周辺画素の明るさの成分の平均値であり、当該注目画素の明るさの成分IにおけるDC成分とみなすことが可能である。即ち、照明光成分Lを調整するということは、同様の照明光成分を共有する範囲において、明るさを調整していることとなる。なお、以降の説明では、照明光成分Lを変調するための係数KBR−Gを、ブライトネス強調係数KBR−Gと称する場合がある。
また、係数KCR−Gは、反射吸光成分Lに対して乗ずることで当該反射吸光成分Lを変調し、変調後の反射吸光成分L’を生成するための係数である。反射吸光成分Lは、照明光成分Lと注目画素の明るさの成分Iとの差分量であり、照明光成分LをDC成分とみなした場合には、当該反射吸光成分LはAC成分とみなすことが可能である。即ち、反射吸光成分Lは、コントラスト成分とみなすことも可能であり、反射吸光成分Lを調整することは、コントラストを調整することに相当する。なお、以降の説明では、反射吸光成分Lを変調するための係数KCR−Gを、コントラスト強調係数KCR−Gと称する場合がある。
このように、本実施形態に係る画像処理装置は、入力画像中の明るさの成分Iを、照明光成分Lと反射吸光成分Lとの和としてみなし、それぞれの成分を、ブライトネス強調係数KBR−G及びコントラスト強調係数KCR−Gにより変調する。そして、本実施形態に係る画像処理装置は、変調後の照明光成分L及び反射吸光成分Lを加算することで出力I’を得る。
このような構成に基づき、本実施形態に係る画像処理装置は、(式7)として前述した計算式に基づく局所的なダイナミックレンジ補正(即ち、図2に示した画像処理装置9bと同等の局所的なダイナミックレンジ補正)の実現を可能としている。
[2.2.機能構成]
次に、図5を参照して、本実施形態に係る画像処理装置1について、さらに詳しく説明する。図5は、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成の一例を示したブロック図である。
図5に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、照明光生成部11と、増幅率算出部21と、減算部22と、乗算部23及び24と、加算部25とを含む。
なお、照明光生成部11は、図1及び図2に示した画像処理装置9a及び9bにおける照明光生成部11と同様であるため詳細な説明は省略する。照明光生成部11は、入力Iに基づき照明光成分Lを生成し、生成した照明光成分Lを示すデータを、増幅率算出部16、減算部22、及び乗算部24に出力する。
減算部22は、入力Iに基づき反射吸光成分LR1を生成するための構成である。具体的には、減算部22は、入力画像中の各画素を逐次注目画素として、当該注目画素の明るさの成分Iに基づき生成された照明光成分Lを示すデータを、照明光生成部11から取得する。減算部22は、注目画素の明るさの成分Iから、取得した当該注目画素に対応する照明光成分Lを減算することで、反射吸光成分LR1を算出する。そして、減算部22は、算出した反射吸光成分LR1を示すデータを、注目画素ごとに乗算部23に出力する。
増幅率算出部21は、入力画像中の注目画素ごとに、当該注目画素の照明光成分Lに基づき、ブライトネス強調係数KBR−G及びコントラスト強調係数KCR−Gを算出するための構成である。なお、増幅率算出部21が、図4に示した画像処理装置9cにおける増幅率算出部16に相当する。
ここで、ブライトネス強調係数KBR−G及びコントラスト強調係数KCR−Gの算出方法について説明するにあたり、当該係数KBR−G及びKCR−Gの基となる照明光強調係数KLGについてより詳しく説明する。ここで、照明光成分Lを、補正後の照明光成分L’に変換するための変換関数をf(L)とした場合に、前述した照明光成分Lと、補正後の照明光成分L’との間の関係を示す(式2)に基づき、変換関数f(L)は、以下に示す(式8)で表される。
Figure 2016158059
例えば、図6は、上記に示した(式8)において、G=2及びG=5とした場合における、照明光成分Lと、補正後の照明光成分L’との間の関係の一例を示したグラフである。図6において、横軸は、照明光成分Lを示しており、縦軸は、補正後の照明光成分L’を示している。即ち、図6は、G=2及びG=5のそれぞれにおいて、照明光成分Lを、0から1の間で逐次変化させ、上記に示した(式8)に基づき、当該照明光成分Lごとに補正後の照明光成分L’を算出し、算出結果をプロットしたものである。なお、図6において、比較例1が、G=2の場合における照明光成分Lと補正後の照明光成分L’との関係の一例を示している。また、比較例2が、G=5の場合における照明光成分Lと補正後の照明光成分L’との関係の一例を示している。
なお、照明光強調係数KLGは、前述した(式6)に基づき、L’/Lで表される。そこで、KLG=L’/Lとして、図6に示す照明光成分Lと、補正後の照明光成分L’との間の関係の一例を示したグラフを、照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係を示したグラフに変換すると、図7のようになる。図7は、照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係の一例を示したグラフである。図7において、横軸は、照明光成分Lを示しており、縦軸は、照明光強調係数KLGを示している。また、図6に示す例と同様に、比較例1が、G=2の場合に相当し、比較例2が、G=5の場合に相当する。
ここで、撮像装置により撮像された画像のように、ダイナミックレンジが圧縮された画像に対して、当該ダイナミックレンジが伸長されるように局所的な変調を施す場合には、照明光成分Lと、補正後の照明光成分L’との間の関係は、L’≧Lとなる。このように、照明光成分Lと、補正後の照明光成分L’とがL’≧Lの関係にある場合には、照明光強調係数KLGは、1以上の値を示すこととなる。また、図7に示すように、照明光強調係数KLGは、照明光成分Lが増大するにつれて、指数関数的に減衰する特徴を示す。
一方で、前述した通り、指数関数の実現には、LUTによる数値変換を利用する等、回路規模の肥大化の要因となり得る。そこで、増幅率算出部21は、図7に示した照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係を近似式で表し、当該近似式に基づき照明光成分Lを照明光強調係数KLGに変換することで、当該変換を実現するための回路規模を低減する。例えば、以下に示す(式9)は、照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係を示した近似式の一例である。
Figure 2016158059
上記に(式9)として示した近似式において、gain(ゲイン値)、slope1〜slope3、及びoffset(オフセット値)は、近似式を調整するための係数であり、事前に算出された照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係に近似するように、あらかじめ設定される。
例えば、図8は、照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係の一例を示したグラフであり、上記に示した(式9)に基づき算出される照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係とをプロットしたものである。
図8において、実施例1として示したグラフは、上記に示した(式9)における各係数の値を、gain=0.8、slope1=0.5、slope2=0.2、slope3=0.3、及びoffset=1.0とした場合の一例に相当する。なお、実施例1が、前述した(式8)においてG=2とした場合(即ち、図7における比較例1)の近似式に相当する。
また、実施例2として示したグラフは、上記に示した(式9)における各係数の値を、gain=1.75、slope1=0.05、slope2=0.35、slope3=0.6、及びoffset=1.0とした場合の一例に相当する。なお、実施例2が、前述した(式8)においてG=5とした場合(即ち、図7における比較例2)の近似式に相当する。
また、図8中には、前述した(式8)に基づく照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係の一例として、G=2とした場合(即ち、図7における比較例1)のグラフと、G=5とした場合(即ち、図7における比較例2)のグラフとをあわせて提示している。
図8に示すように、実施例1及び2と、比較例1及び2とは、照明光成分Lがより大きい部分(即ち、明部)において特性に若干の誤差はあるものの、照明光成分Lがより小さい部分(即ち、暗部)においては良好に近似していることがわかる。ここで、前述したように、撮像装置により撮像された画像は、暗部のダイナミックレンジを縮退させることで、ダイナミックレンジを圧縮している場合が多い。このような画像に対する局所的なダイナミックレンジ補正では、主に暗部のダイナミックレンジを大きく伸長させ、明部については大きく伸長させない傾向にあり、このような場合には、上記に示した明部における若干の誤差に伴う画質劣化の影響はごくわずかである。
一方で、(式9)として前述した近似式は、累乗関数、乗算、及び加算のみで計算式が構成されており、(式8)のように対数関数、指数関数、及び除算を含む計算式を実現する場合に比べて、回路規模をより小さく抑えることが可能となる。
なお、(式9)として示した近似式は、あくまで一例であり、(式8)に基づく照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係(例えば、図7における比較例1及び2)を近似できれば、その内容は特に限定されない。具体的な一例として、図7に示した、照明光成分Lと照明光強調係数KLGとの間の関係を示すグラフを基に、テイラー展開等に基づき近似式を導出してもよい。
このように、(式9)として示した近似式に基づき、照明光成分Lを入力として照明光強調係数KLGを算出し、当該照明光強調係数KLGを前述した(式6)に適用することで、Retinex理論及び明るさの恒常性を応用した局所的なダイナミックレンジが可能となる。これにより、特に、暗部での視認性が向上する。
一方で、(式9)として示した近似式に基づく補正では、コントラスト成分と共にブライトネス成分が強調されるため、入力画像と補正後の画像とを比較すると、全体的に明度が高くなっているような印象を受ける場合がある。これに対して、照明光強調係数KLGを低く抑えることで、明度を調整することも可能ではあるが、その一方で、局所的なダイナミックレンジ補正の効果が低減することになる。
そこで、本実施形態に係る画像処理装置1では、前述した(式7)に示すように、照明光強調係数KLGを、ブライトネス強調係数KBR−Gとコントラスト強調係数KCR−Gとに振り分けることで、ブライトネス成分(即ち、照明光成分L)と、コントラスト成分(即ち、反射吸光成分L)とを個別に制御可能としている。
具体的には、増幅率算出部21は、前述した(式9)をコントラスト強調係数KCR−Gの算出に適用することで、当該コントラスト強調係数KCR−Gを算出する。即ち、コントラスト強調係数KCR−Gは、以下に(式10)として示された関係式に基づき算出される。なお、以下に示す(式10)における係数cr_gain、cr_slope1〜cr_slope3、及びcr_offsetは、前述した(式9)における係数gain、slope1〜slope3、及びoffsetに対応している。
Figure 2016158059
また、ブライトネス強調係数KBR−Gについては、コントラスト強調係数KCR−Gに基づき算出されればよい。具体的には、ブライトネス成分(即ち、照明光成分L)のゲインを調整するための係数をbr_gainとした場合に、ブライトネス強調係数KBR−Gは、以下に(式11)として示された関係式に基づき算出される。
Figure 2016158059
以上のようにして、増幅率算出部21は、ブライトネス強調係数KBR−Gとコントラスト強調係数KCR−Gとを、入力画像中の注目画素ごとに、当該注目画素の照明光成分Lに基づき算出する。そして、増幅率算出部21は、算出したコントラスト強調係数KCR−Gを、注目画素ごとに乗算部23に出力する。また、増幅率算出部21は、算出したブライトネス強調係数KBR−Gを、注目画素ごとに乗算部24に出力する。
乗算部23は、反射吸光成分LR1に対して変調を施すための構成である。なお、変調された反射吸光成分LR1を、以降では、「変調後の反射吸光成分LR2」と記載する場合がある。具体的には、乗算部23は、入力画像中の注目画素ごとに算出されたコントラスト強調係数KCR−Gを、増幅率算出部21から取得する。乗算部23は、減算部22から注目画素ごとに出力される反射吸光成分LR1に対して、取得した当該注目画素に対応するコントラスト強調係数KCR−Gを乗ずることで当該反射吸光成分LR1を変調し、変調後の反射吸光成分LR2を算出する。そして、乗算部23は、注目画素ごとに算出した変調後の反射吸光成分LR2を示すデータを、加算部25に出力する。なお、コントラスト強調係数KCR−Gが、「第1の係数」の一例に相当し、乗算部23が、「第1の乗算部」の一例に相当する。
乗算部24は、照明光成分Lに対して変調を施すための構成である。なお、変調された照明光成分Lを、以降では、「変調後の照明光成分L’」と記載する場合がある。具体的には、乗算部24は、入力画像中の注目画素ごとに算出されたブライトネス強調係数KBR−Gを、増幅率算出部21から取得する。乗算部24は、照明光生成部11から注目画素ごとに出力される照明光成分Lに対して、取得したブライトネス強調係数KBR−Gを乗ずることで当該照明光成分Lを変調し、変調後の照明光成分L’を算出する。そして、乗算部24は、注目画素ごとに算出した変調後の照明光成分L’を示すデータを、加算部25に出力する。なお、ブライトネス強調係数KBR−Gが、「第2の係数」の一例に相当し、乗算部24が、「第2の乗算部」の一例に相当する。
加算部25は、乗算部24から出力される変調後の照明光成分L’と、乗算部23から出力される変調後の反射吸光成分LR2とを加算する。そして、加算部25は、変調後の照明光成分L’と、変調後の反射吸光成分LR2とが加算されることで生成された明るさの成分I’に基づく画像を、出力画像として所定の出力先に出力する。
以上のようにして、前述した(式7)に示すように、照明光成分Lがブライトネス強調係数KBR−Gに基づき変調され、反射吸光成分LR1がコントラスト強調係数KCR−Gに基づき変調される。そして、変調後の照明光成分L’と、変調後の反射吸光成分LR2とが加算されることで、入力画像に対して局所的なダイナミックレンジ補正が施された出力画像が得られる。
なお、(式11)として前述したブライトネス強調係数KBR−Gを算出するための関係式において、係数br_gain=1とすることで、Retinex理論及び明るさの恒常性を応用した局所的なダイナミックレンジ補正が行える。また、係数br_gain<1とすることで、Retinex理論及び明るさの恒常性を応用した局所的なダイナミックレンジ補正に加えて、コントラスト強調効果が得られ、視認性及び鮮明性をより向上させた画像補正を実現することが可能となる。なお、(式11)における係数br_gainを調整する場合には、当該br_gainの調整とあわせて、(式10)における係数cr_gain及びcr_slope1〜cr_slope3の調整も同様に行うことが望ましい。
[2.3.まとめ]
以上、説明したように、本実施形態に係る画像処理装置1は、入力Iと照明光成分Lとの差分に基づき反射吸光成分Lを算出し、照明光成分Lと、当該反射吸光成分Lとを、照明光成分Lに基づき算出したブライトネス強調係数KBR−G及びコントラスト強調係数KCR−Gに基づき変調する。
また、このとき画像処理装置1は、前述した(式8)に基づく、照明光成分Lと照明光強調係数KLG(換言すると、ブライトネス強調係数KBR−G及びコントラスト強調係数KCR−G)との間の関係を、(式9)として前述した近似式に基づき近似することで、照明光成分Lに基づき照明光強調係数KLGを算出する。
以上のような構成により、本実施形態に係る画像処理装置1は、局所的なダイナミックレンジ補正を、対数関数、指数関数、及び除算等のような回路規模の肥大化の要因となり得る計算式を極力排除して実現することが可能となる。これにより、本実施形態に係る画像処理装置1は、入力Iと照明光成分Lとの除算により反射率成分Rを導出し、照明光成分Lと反射率成分Rとのそれぞれを変調する構成(例えば、図2に示す画像処理装置9b)に比べて、回路の規模をより低減することが可能となる。
<3.第2の実施形態>
[3.1.機能構成]
次に、第2の実施形態として、ノイズ成分(特に、ノイズフロアのような小さいノイズ)の顕在化を抑制することが可能な画像処理装置の一例について説明する。
まず、図9を参照して、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例について説明する。図9は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。なお、以降の説明では、本実施形態に係る画像処理装置を、前述した第1の実施形態に係る画像処理装置1と区別するために、「画像処理装置2」と記載する場合がある。
本実施形態に係る画像処理装置2は、コントラスト成分中に存在するノイズ成分を抑制する。そのため、本実施形態に係る画像処理装置2は、反射吸光成分Lに対してノイズ抑制のため処理を施す点で、前述した第1の実施形態に係る画像処理装置1と異なる。即ち、本実施形態に係る画像処理装置2は、図9に示すように、雑音抑制部31を含む点で、前述した第1の実施形態に係る画像処理装置1と異なる。そこで、本説明では、本実施形態に係る画像処理装置2の機能構成について、特に、前述した第1の実施形態に係る画像処理装置1(図5参照)と異なる部分に着目して説明し、その他の部分については、詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る照明光生成部11は、入力Iに基づき照明光成分Lを生成し、生成した照明光成分Lを示すデータを、増幅率算出部16、減算部22、乗算部24、及び雑音抑制部31に出力する。また、減算部22は、注目画素の明るさの成分Iから、取得した当該注目画素に対応する照明光成分Lを減算することで、反射吸光成分LR1を算出し、算出した反射吸光成分LR1を示すデータを、注目画素ごとに雑音抑制部31に出力する。
雑音抑制部31は、減算部22から出力される反射吸光成分LR1に対して、ノイズ抑制のための変調処理を施すための構成である。具体的には、雑音抑制部31は、入力画像中の注目画素ごとに算出された照明光成分Lを、照明光生成部11から取得する。雑音抑制部31は、減算部22から注目画素ごとに出力される反射吸光成分LR1に対して、取得した当該注目画素に対応する照明光成分Lに基づき、ノイズ抑制のための変調処理を施す。なお、ノイズ抑制のための変調処理の内容の詳細については、別途後述する。
そして、雑音抑制部31は、反射吸光成分LR1に対してノイズ抑制のための変調処理が施された反射吸光成分LR3を示すデータを、注目画素ごとに乗算部23に出力する。
乗算部23は、入力画像中の注目画素ごとに算出されたコントラスト強調係数KCR−Gを、増幅率算出部21から取得する。乗算部23は、雑音抑制部31から注目画素ごとに出力される変調後の反射吸光成分LR3に対して、取得した当該注目画素に対応するコントラスト強調係数KCR−Gを乗ずることで当該反射吸光成分LR3をさらに変調し、変調後の反射吸光成分LR4を算出する。そして、乗算部23は、注目画素ごとに算出した変調後の反射吸光成分LR4を示すデータを、加算部25に出力する。
加算部25は、乗算部24から出力される変調後の照明光成分L’と、乗算部23から出力される変調後の反射吸光成分LR4とを加算する。そして、加算部25は、変調後の照明光成分L’と、変調後の反射吸光成分LR4とが加算されることで生成された明るさの成分I’に基づく画像を、出力画像として所定の出力先に出力する。
即ち、本実施形態に係る画像処理装置2において、出力I’は、以下に(式12)として示された関係式に基づき算出されることとなる。
Figure 2016158059
(ノイズ抑制のための変調処理の詳細)
ここで、雑音抑制部31による、反射吸光成分LR1に対するノイズ抑制のための変調処理について、さらに詳しく説明する。雑音抑制部31は、反射吸光成分LR1に対して、ノイズ抑制のための係数KSV−N(以降では、「ノイズ抑制係数KSV−N」と記載する場合がある)に基づき変調処理を施すことで、変調後の反射吸光成分LR3を算出する。即ち、ノイズ抑制のための変調処理が施された反射吸光成分LR3は、以下に(式13)として示された関係式に基づき算出される。
Figure 2016158059
即ち、上記に(式13)として示したように、ノイズ抑制のための変調後の反射吸光成分LR3は、反射吸光成分LR1と、当該反射吸光成分LR1を自乗した値との混合によって算出され、このときの混合比は、ノイズ抑制係数KSV−Nによって制御される。
例えば、図10は、ノイズ抑制係数KSV−Nに基づく反射吸光成分LR1の変調の概念について示した図であり、変調前の反射吸光成分LR1と、変調後の反射吸光成分LR3との間の関係の一例を示している。図10において、横軸は、変調前の反射吸光成分LR1を示しており、縦軸は、変調後の反射吸光成分LR3を示している。また、図10において、参照符号|LR11.0は、反射吸光成分LR1の変化の一例を示しており、参照符号|LR12.0は、当該反射吸光成分LR1を自乗した値の変化の一例を示している。
また、図11は、ノイズ抑制係数KSV−Nに基づく反射吸光成分LR1の変調の概要について説明するための説明図であり、図10に示した、変調前の反射吸光成分LR1と、変調後の反射吸光成分LR3との間の関係を、正側と負側に分けて展開したグラフの一例を示している。なお、図11において、反射吸光成分LR1>0の領域が、反射光の成分に相当し、反射吸光成分LR1<0の領域が、吸光の成分に相当する。
前述した(式13)と、図10及び図11とに示すように、雑音抑制部31は、累乗関数の特性によって、反射吸光成分LR1を圧縮する。これにより、特に、ノイズ成分である可能性の高い反射吸光成分LR1(即ち、0近傍の値をとる反射吸光成分LR1)は、より小さい値となるように変調される。
ここで、ノイズ抑制係数KSV−Nの設定方法について、より詳しく説明する。雑音抑制部31は、照明光成分Lに応じて、反射吸光成分LR1に対して局所的な変調を施すように設定される。具体的には、ノイズ抑制係数KSV−Nは、以下に(式14)として示された関係式に基づき算出される。
Figure 2016158059
上記に示した(式14)において、係数sv_n_thは、閾値を示しており、係数sv_n_maxは、ノイズ抑制係数KSV−Nの最大値を示している。また、係数sv_n_grdは、照明光成分Lに応じたノイズ抑制係数KSV−Nの変化量に相当し、sv_n_grd=sv_n_max/sv_n_thで表される。
例えば、図12は、上記に(式14)として示した、照明光成分Lとノイズ抑制係数KSV−Nとの間の関係の一例を示したグラフである。図12において、横軸は、照明光成分Lを示しており、縦軸は、ノイズ抑制係数KSV−Nを示している。
前述した(式14)及び図11に示すように、ノイズ抑制係数KSV−Nは、照明光成分Lの値がより小さい部分(即ち、暗部)ほど、より高くなるように制御される。換言すると、コントラスト強調係数KCR−Gが高く、かつ、強調の度合い(増強度)が高い部分ほど、ノイズ抑制係数KSV−Nが高くなるように制御される。また、ノイズ抑制係数KSV−Nは、照明光成分Lの値がより大きい部分(即ち、明部)ほど、より低くなるように制御される。
このような構成により、コントラスト強調係数KCR−Gがより高いほど、ノイズ成分の抑制効果がより高くなり、コントラスト強調係数KCR−Gが低い場合には、ノイズ成分の抑制効果がより低くなる。ここで、コントラスト強調係数KCR−Gが低い場合には、ノイズ抑制処理を施さなかったとしても、強調の度合いが低いためノイズ成分が強調されず、結果として、当該ノイズ成分が顕在化しない傾向にある。
なお、上記に示す例では、ノイズ抑制係数KSV−Nの算出に照明光成分Lを用いていたが、当該照明光成分Lに替えて、コントラスト強調係数KCR−Gを用いて、ノイズ抑制係数KSV−Nを算出してもよい。
[3.2.まとめ]
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置2は、照明光成分Lに応じて調整されたノイズ抑制係数KSV−Nに基づき、反射吸光成分Lに対してノイズ抑制のための変調を、照明光成分Lに基づき局所的に施す。
このような構成により、本実施形態に係る画像処理装置2は、例えば、図3に示すように、反射と吸収との間で強調特性が非対象となるような場合においても、当該非対称の強調特性を解消することが可能となる。また、本実施系に係る画像処理装置2は、上記に示した構成により、ノイズフロアなどの小さいノイズ成分の強調を抑制し、当該ノイズ成分の顕在化に伴う画質の劣化を防止することが可能となる。
<4.第3の実施形態>
[4.1.機能構成]
次に、第3の実施形態に係る画像処理装置について説明する。前述したように、被写体の模様により明暗(階調)が変化する部分(即ち、模様調)には、所定の強調量で変調(強調)を施したとしても、模様の粗密に応じて変調後の画像の印象が異なる場合がある。具体的な一例として、密な模様調に対して、粗な模様調と同等の強調量で変調(強調)を施すと、模様が過度に強調されたような(即ち、過度にコントラストが強調されたような)不自然な画像となる場合がある。
そこで、第3の実施形態に係る画像処理装置として、入力画像中の局所的な特徴に応じて強調量を制御することで、照明光成分Lの変調に伴う画質の劣化を抑制することが可能な画像処理装置の一例について説明する。
まず、図13を参照して、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例について説明する。図13は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。なお、以降の説明では、本実施形態に係る画像処理装置を、前述した各実施形態に係る画像処理装置(即ち、画像処理装置1及び2)と区別するために、「画像処理装置3」と記載する場合がある。
本実施形態に係る画像処理装置3は、模様調強度算出部41と、過強調抑制部42と、乗算部43とを含む点で、前述した第2の実施形態に係る画像処理装置2と異なる。そこで、本説明では、本実施形態に係る画像処理装置3の機能構成について、特に、前述した第2の実施形態に係る画像処理装置2(図9参照)と異なる部分に着目して説明し、その他の部分については、詳細な説明は省略する。
模様調強度算出部41は、入力画像中の各画素を逐次注目画素として、当該注目画素の明るさの成分Iに基づき、模様調強度T(例えば、模様調の粗密を示す強度)を算出する。
具体的には、模様調が密な部分は、模様調が疎な部分に比べて、注目画素を基準とした所定の範囲(以降では、「参照画素範囲」と記載する場合がある)に含まれる周辺画素から得られる分散σが高い部分であると推測できる。そのため、模様調強度算出部41は、模様調強度Tを、注目画素と、当該注目画素の周辺画素それぞれとの明るさの強度に基づき分散σを算出し、当該分散σに基づき模様調強度Tを算出する。
ここで、注目画素(x,y)における模様調強度T(x,y)は、注目画素の明るさの強度Iと、参照画素範囲の参照画素距離n(即ち、注目画素を基点とした参照画素範囲の広さを示すオペレータ長n)と、あらかじめ設定された係数α(α≧1)とに基づき、以下に(式15)及び(式16)として示した関係式に基づき算出される。
Figure 2016158059
以上のようにして、模様調強度算出部41は、注目画素の明るさの強度Iに基づき模様調強度Tを算出し、算出した模様調強度Tを注目画素ごとに過強調抑制部42に出力する。
過強調抑制部42は、注目画素ごとに算出された模様調強度Tを、模様調強度算出部41から取得する。過強調抑制部42は、模様調強度T(換言すると、模様調の粗密)に応じた局所的な変調を実現するための過強調抑制係数KSV−Tを、当該模様調強度Tに基づき注目画素ごとに算出する。過強調抑制係数KSV−Tは、以下に(式17)として示された関係式に基づき算出される。
Figure 2016158059
上記に示した(式17)において、係数sv_t_th1及びsv_t_th2(sv_t_th1<sv_t_th2)は、閾値を示しており、係数sv_n_minは、過強調抑制係数KSV−Tの最小値を示している。また、係数sv_t_grdは、模様調強度Tに応じた過強調抑制係数KSV−Tの変化量に相当し、sv_t_grd=(1−sv_t_min)/(sv_t_th2−sv_t_th1)で表される。
例えば、図14は、上記に(式17)として示した、模様調強度Tと過強調抑制係数KSV−Tとの間の関係の一例を示したグラフである。図14において、横軸は、模様調強度Tを示しており、縦軸は、過強調抑制係数KSV−Tを示している。
以上のようにして、過強調抑制部42は、取得した模様調強度Tに基づき、過強調抑制係数KSV−Tを注目画素ごとに算出する。そして、過強調抑制部42は、算出した過強調抑制係数KSV−Tを注目画素ごとに乗算部43に出力する。
乗算部43は、コントラスト強調係数KCR−Gを過強調抑制係数KSV−Tに応じて補正するための構成である。乗算部43は、入力画像中の注目画素ごとに算出されたコントラスト強調係数KCR−Gを、増幅率算出部21から取得する。また、乗算部43は、過強調抑制部42から、注目画素ごとに算出された過強調抑制係数KSV−Tを取得する。
乗算部43は、注目画素ごとのコントラスト強調係数KCR−Gに対して、当該注目画素に対応する過強調抑制係数KSV−Tを乗ずることで、当該コントラスト強調係数KCR−Gを補正する。
そして、乗算部43は、過強調抑制係数KSV−Tに基づき補正されたコントラスト強調係数KCR−Gを乗算部23に出力する。
なお、以降の動作は前述した第2の実施形態に係る画像処理装置2と同様である。即ち、乗算部23は、雑音抑制部31から注目画素ごとに出力される反射吸光成分LR3に対して、乗算部43から出力される当該注目画素に対応する補正後のコントラスト強調係数KCR−Gを乗ずることで当該反射吸光成分LR3を変調し、変調後の反射吸光成分LR4を算出する。
加算部25は、乗算部24から出力される変調後の照明光成分L’と、乗算部23から出力される変調後の反射吸光成分LR4とを加算する。そして、加算部25は、変調後の照明光成分L’と、変調後の反射吸光成分LR4とが加算されることで生成された明るさの成分I’に基づく画像を、出力画像として所定の出力先に出力する。
即ち、本実施形態に係る画像処理装置3において、出力I’は、以下に(式18)として示された関係式に基づき算出されることとなる。
Figure 2016158059
ここで、前述した(式17)及び図14に示すように、過強調抑制係数KSV−Tは、模様調強度Tがより高い部分ほど(即ち、より密な模様調ほど)、コントラスト強調係数KCR−Gをより弱めるように作用する。また、過強調抑制係数KSV−Tは、模様調強度Tがより低い部分ほど(即ち、より粗な模様調ほど)、コントラスト強調係数KCR−Gの抑制効果がより弱まるように作用することとなる。このような構成により、本実施形態に係る画像処理装置3は、模様調の粗密に応じて強調量を制御することが可能となる。
なお、上記では、図13を参照しながら、前述した第2の実施形態に係る画像処理装置2(図9参照)に対して、模様調強度算出部41と、過強調抑制部42と、乗算部43とを加えた構成の一例について説明したが、必ずしも同構成に限定するものではない。具体的には、前述した第1の実施形態に係る画像処理装置1(図5参照)に対して、模様調強度算出部41と、過強調抑制部42と、乗算部43とを加えた構成としてもよい。なお、この場合には、出力I’は、以下に(式19)として示された関係式に基づき算出されることとなる。
Figure 2016158059
以上、図13及び図14を参照して、本実施形態に係る画像処理装置3の機能構成の一例について説明した。
[4.2.変形例]
次に、本実施形態の変形例に係る画像処理装置の一例について説明する。前述した、実施形態に係る画像処理装置3では、分散σを模様調強度Tとして利用し、当該模様調強度Tに応じた過強調抑制係数KSV−Tに基づきコントラスト強調係数KCR−Gを制御することで、模様調の粗密に応じて強調量を制御していた。
一方で、画像中の明部と暗部の境界には、背景と被写体との間の境界(以降では、「階段調のエッジ」と呼ぶ場合がある)と、被写体の模様により明暗(階調)が変化する境界(即ち、模様調のエッジ)とが存在する。
ここで、被写体の模様により明暗が変化している部分(即ち、模様調の部分)は、当該模様に依存せずに一様に照明されていると考えられる。そのため、例えば、階段調のエッジの部分については、コントラストをより強調し(即ち、コントラスト強調係数KCR−Gをより高く制御し)、模様調のエッジの部分については、コントラストの強調効果がより弱められるように制御する(即ち、コントラスト強調係数KCR−Gをより低く制御する)ことで、画質をより向上させることが可能となる。
そこで、以下に、本実施形態の変形例に係る画像処理装置として、階段調のエッジの部分と、模様調のエッジの部分とを識別して、コントラスト強調係数KCR−Gを制御することが可能な仕組みの一例について説明する。なお、以降の説明では、本実施形態の変形例に係る画像処理装置を、「画像処理装置3’」と記載する場合がある。
本実施形態の変形例に係る画像処理装置3’は、注目画素を基準とした勾配∇と、当該注目画素を基準とした分散σ(換言すると、標準偏差σ)との乖離度の特性を利用して、模様調強度Tを算出する。
具体的には、勾配∇は、注目画素の隣接もしくは近傍の画素間における差分を示している。また、標準偏差σは、参照画素範囲におけるばらつきを示している。理想的な状態では、階段調のエッジは、標準偏差σの最大値(頂点)と勾配∇の絶対値の最大値とは、略等しい値を示す傾向にある。これに対して、模様調のエッジは、勾配∇の絶対値よりも標準偏差σの方が大きい値を示す傾向にある。そこで、変形例に係る画像処理装置3’は、このような特性を利用することで、階段調のエッジと、模様調のエッジと判別し、判別結果に応じて模様調強度Tを制御する。
具体的には、勾配∇は、フィルタオペレータを利用した畳み込み積分により、以下に示す(式20)に基づき算出することが可能である。
Figure 2016158059
なお、上記に示した(式20)において、Wは、勾配∇を算出するためのオペレータ(以降では、「勾配オペレータ」と記載する場合がある)を示している。例えば、以下に示す(式21)は、オペレータ長n=1とした場合における、勾配オペレータWの一例を示している。
Figure 2016158059
また、他の一例として、以下に示す(式22)は、オペレータ長n=2とした場合における、勾配オペレータWの一例を示している。
Figure 2016158059
なお、(式21)及び(式22)に示した勾配オペレータは、あくまで一例であり、オペレータ長nや、オペレータの各係数は、適宜変更してもよい。
また、分散σの算出方法については、(式15)及び(式16)として前述したため、詳細な説明は省略する。
ここで、勾配∇と標準偏差σとの間の乖離度を階段調強度Kとすると、注目画素の座標を(x,y)とした場合に、当該注目画素における階段調強度K(x,y)は、当該注目画素における勾配∇(x,y)と標準偏差σ(x,y)とを基に、以下に示す(式23)に基づき算出される。
Figure 2016158059
なお、(式23)において、k及びkσは、勾配∇(x,y)の絶対値と、標準偏差σ(x,y)の最大値との比が1となるように設定された、勾配∇(x,y)及び標準偏差σ(x,y)それぞれに対する補正係数(換言すると、正規化のための係数)である。なお、補正係数kは、補正係数k及びkσをまとめたものに相当する。
なお、上記に示した階段調強度Kの算出式は、あくまで一例であり、勾配∇と、標準偏差σ(換言すると、分散σ)との間の乖離度を示していれば、階段調強度Kの算出方法は上記に示す例には限定されない。
具体的な一例として、階段調強度Kは、勾配∇の二乗と分散σとの乖離度に基づき算出されてもよい。この場合には、注目画素の座標を(x,y)とした場合に、当該注目画素における階段調強度K(x,y)は、当該注目画素における勾配∇(x,y)と分散σ(x,y)とを基に、以下に示す(式24)に基づき算出される。
Figure 2016158059
次いで、変形例に係る画像処理装置3’は、階段調強度Kと、勾配∇の絶対値とに基づき、エッジ強度Kを算出する。具体的には、エッジ強度Kは、以下に示す(式25)に基づき算出される。
Figure 2016158059
また、他の一例として、エッジ強度Kは、以下に(式26)として示すように、入力画像中の注目画素ごとに、当該画素における勾配∇に対して階段調強度Kを乗じることで算出されてもよい。
Figure 2016158059
以上のようにして算出されたエッジ強度Kは、模様調のエッジ部分で抑制され、階段調のエッジ部分でより強調される特性を有する。変形例に係る画像処理装置3’は、このようなエッジ強度Kの特性を利用することで、当該エッジ強度Kに基づき、模様調強度Tを算出する。具体的には、模様調強度Tは、以下に示す(式27)に基づき算出される。
Figure 2016158059
なお、以降の処理については、前述した第3の実施形態に係る画像処理装置3と同様である。即ち、模様調強度Tに応じて過強調抑制係数KSV−Tが導出され、当該過強調抑制係数KSV−Tに基づきコントラスト強調係数KCR−Gが補正される。
以上のような構成により、変形例に係る画像処理装置3’は、階段調のエッジ部分と模様調のエッジ部分とを判別して、局所的なコントラスト成分の強調を実現することが可能となる。即ち、変形例に係る画像処理装置3’によれば、階段調のエッジ及び粗な模様調の部分については、コントラストをより強調し、密な模様調のエッジの部分については、コントラストの強調効果がより弱められるように制御することで、画質をより向上させることが可能となる。
以上、本実施形態の変形例に係る画像処理装置3’の一例について説明した。
[4.3.まとめ]
以上、説明したように、本実施形態に係る画像処理装置3は、入力Iの分散σに基づく模様調強度Tに応じて過強調抑制係数KSV−Tを設定することで、当該過強調抑制係数KSV−Tによりコントラスト強調係数KCR−Gを補正する。即ち、本実施形態に係る画像処理装置3は、コントラスト強調係数KCR−Gに対する補正を、模様調強度Tに基づき局所的に施す。
このような構成により、本実施形態に係る画像処理装置3は、模様調強度Tがより高い部分ほど(即ち、より密な模様調ほど)、コントラスト強調係数KCR−Gをより弱めるように制御することが可能となる。なお、模様調強度Tがより低い部分(即ち、より粗な模様調)については、画像処理装置3は、コントラスト強調係数KCR−Gの抑制効果がより弱まるように制御する。即ち、本実施形態に係る画像処理装置3は、入力画像中における密な模様調の部分が過度に強調されるといった事態を防止し、より自然な出力画像を得ることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、上述した各実施形態に係る画像処理装置の一連の動作は、当該画像処理装置の各構成を動作させる装置のCPUを機能させるためのプログラムによって構成することができる。このプログラムは、その装置にインストールされたOS(Operating System)を介して実行されるように構成してもよい。また、このプログラムは、上述した処理を実行する構成が含まれる装置が読み出し可能であれば、記憶される位置は限定されない。例えば、装置の外部から接続される記録媒体にプログラムが格納されていてもよい。この場合には、プログラムが格納された記録媒体を装置に接続することによって、その装置のCPUに当該プログラムを実行させるように構成するとよい。
1、2、3 画像処理装置
11 照明光生成部
21 増幅率算出部
22 減算部
23 乗算部
24 乗算部
25 加算部
31 雑音抑制部
41 模様調強度算出部
42 過強調抑制部
43 乗算部

Claims (13)

  1. 画像データを取得する取得部と、
    取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調する第1の変調部と、
    前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調する第2の変調部と、
    変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算する加算部と、
    を備えることを特徴とする、画像処理装置。
  2. 前記照明光成分に基づき、前記第1の係数を算出する増幅率算出部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記増幅率算出部は、前記照明光成分に基づく第1の値の累乗に対して、あらかじめ設定された第3の係数を乗算した第2の値に基づき、前記第1の係数を算出することを特徴とする、請求項2に記載の画像処理装置。
  4. 前記照明光成分をL、前記第1の値の累乗それぞれに対応する前記第3の係数をcr_slope1、cr_slope2、及びcr_slope3、あらかじめ設定されたゲインをcr_gain、あらかじめ設定されたオフセット値をcr_offsetとした場合に、前記第1の係数KCR−Gは、以下に示す計算式に基づき算出されることを特徴とする、請求項3に記載の画像処理装置。
    Figure 2016158059
  5. 前記第3の係数は、前記照明光成分と、変調後の当該照明光成分との関係を示した関数の近似値に基づき、あらかじめ設定されることを特徴とする、請求項3または4に記載の画像処理装置。
  6. 前記増幅率算出部は、前記第1の係数に基づき、前記第2の係数を算出することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
  7. 前記照明光成分に基づき算出された第4の係数に基づき、前記反射吸光成分を変調する雑音抑制部を備え、
    前記第1の変調部は、前記第4の係数に基づき変調された前記反射吸光成分に対して、前記第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調する
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
  8. 前記雑音抑制部は、前記照明光成分が閾値以下の画素を対象として、前記反射吸光成分を、前記第4の係数に基づき変調することを特徴とする、請求項7に記載の画像処理装置。
  9. 前記照明光成分をL、前記閾値をsv_n_th、前記第4の係数の最大値をsv_n_max、当該照明光成分Lに応じた前記第4の係数の変化率をsv_n_grdとした場合に、当該第4の係数KSV−Nは、以下に示す計算式に基づき算出されることを特徴とする、請求項8に記載の画像処理装置。
    Figure 2016158059
  10. 前記注目画素と、当該注目画素を基準とした所定の範囲に含まれる周辺画素とのそれぞれの画素値に基づく分散に応じて模様調強度を算出する模様調強度算出部を備え、
    前記第2の変調部は、前記照明光成分に対して、前記模様調強度に基づき制御された前記第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調する
    ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
  11. 前記模様調強度算出部は、前記分散と、前記周辺画素それぞれの画素値に基づく勾配との間の乖離度に応じたエッジ強度と、当該分散とに基づき、前記模様調強度を算出することを特徴とする、請求項10に記載の画像処理装置。
  12. 画像データを取得することと、
    取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調することと、
    前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調することと、
    変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算することと、
    を含むことを特徴とする、画像処理方法。
  13. コンピュータに、
    画像データを取得することと、
    取得された前記画像データ中の注目画素の画素値と、当該注目画素の照明光成分との差に基づく反射吸光成分に対して、第1の係数を乗算することで、当該反射吸光成分を変調することと、
    前記照明光成分に対して、第2の係数を乗算することで、当該照明光成分を変調することと、
    変調後の前記反射吸光成分と、変調後の前記照明光成分とを加算することと、
    を実行させることを特徴とする、プログラム。

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