JP2016157750A - 圧電素子及びその製造方法並びに圧電素子応用デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を防止できる新規な圧電素子を提供する。【解決手段】流路形成基板10上に形成される第1電極60と、第1電極60上に形成され、ABO3型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層70と、圧電体層70上に形成される第2電極80と、を具備する圧電素子300である。第2電極80は、圧電体層70上の第1層81と、第1層81上の第2層82と、を有する。第2層82は、第1層81よりも圧電体層70に対する圧縮応力が大きく、第1層81と第2層82とは、同一材料から構成されており、第1層81は、第2層82よりも結晶性が良い。【選択図】図3

Description

本発明は、圧電素子及びその製造方法並びに圧電素子応用デバイスに関する。
圧電素子は、一般に、電気機械変換特性を有する圧電体層と、圧電体層を挟持する2つの電極と、を有している。このような圧電素子を駆動源として用いたデバイス(圧電素子応用デバイス)の開発が、近年、盛んに行われている。圧電素子応用デバイスの一つとして、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドがある。
例えば、変位量を向上させるとともに、圧電体層と上電極との剥離を抑制することを目的とした液体噴射ヘッドが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、圧電体層に接する第1上電極上に、該第1上電極よりも圧縮応力が小さい第2上電極を設け、これによって上電極全体の内部応力を緩和することで変位量の向上を図る技術が開示されている。
特開2012−76387号公報
しかしながら、特許文献1では、第1上電極の圧縮応力が大きいため、第1上電極と圧電体層間の応力差が大きくなりやすく、第1上電極の剥離が生じやすい可能性がある。また、近年、液体噴射ヘッドには、一層の高密度化及び高性能化とともに、構成の多様化も要求されている。このような状況下、上記の第2上電極の方が大きい圧縮応力を有する場合であっても、変位量の向上を図ることができ、かつ圧電体層と上電極との剥離をも抑制できる技術が待たれていた。かかる背景は、インクジェット式記録ヘッドに用いられる圧電素子だけでなく、インク以外の液滴を噴射させる他の液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子や、液体噴射ヘッド以外の圧電素子応用デバイスに用いられる圧電素子にも同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑み、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を防止できる新規な圧電素子及びその製造方法並びに圧電素子応用デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極上に形成され、ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、前記圧電体層上に形成される第2電極と、を具備する圧電素子であって、前記第2電極は、前記圧電体層上の第1層と、前記第1層上の第2層と、を有し、前記第2層は、前記第1層よりも前記圧電体層に対する圧縮応力が大きく、前記第1層と前記第2層とは、同一材料から構成されており、前記第1層は、前記第2層よりも結晶性が良いことを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様によれば、第2層の圧縮応力が大きい分、圧電体層を下方に変位させる力を低減できる。従って、圧電素子の変位の向上を図ることができる。そして、第1層の結晶性が良い分、膜質が良好な第1層となるため、圧電体層と良好な界面を形成できる。従って、圧電体層と上電極との剥離を防止できる。加えて、第1層と第2層とが同一材料から構成されているので、第1層と第2層とが異なる材料から構成されていることに起因する悪影響も抑制できる。よって、本態様によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を抑制できる新規な圧電素子を提供できる。
ここで、前記第1層は、前記第2層よりもシート抵抗値が小さいことが好ましい。これによれば、導電性に優れ、膜質が更に良好な第1層となる。このため、圧電体層と良好な界面を形成しやすくなり、圧電体層と上電極との剥離を更に抑制できる。それでいて、圧縮応力の大きな第2層によって、圧電素子の変位を十分に確保できる。よって、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を更に抑制できる。
また、前記第2層は、前記第1層よりもアルゴン(Ar)を多く含むことが好ましい。これによれば、第2層のヤング率を低下させることができ、ひいては圧電素子300全体の剛性を低下させることができる。従って、圧電素子の変位の向上を更に図ることができる。ここでのArは、例えば、第2電極をスパッタリング法で形成したときの不活性ガス(Arガス)に由来する。従って、後述のように、不活性ガスとしてArガスを用い、第2電極をスパッタリング法で形成することで、第2層にアルゴン(Ar)を多く含ませるのが容易になる。
また、基板温度が150〜350℃であり、所定のスパッタパワーが所定の第1密度(W1)である第1条件で前記第1層を形成し、基板温度が室温〜150℃であり、スパッタパワーが所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)である第2条件で前記第2層を形成したことが好ましい。第1条件のような高温条件で成膜することで、膜質が良好な第1層を得やすくなる。そして、第2条件のような低温条件で成膜することで、圧縮応力が大きい第2層を得やすくなる。しかも、不活性ガスとしてArガスを用い、第2パワー密度(W2)を第1パワー密度(W1)よりも大きくしてスパッターすれば、第1層よりもArを多く含む第2層を得やすくなる。以上より、上記の態様によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を更に抑制できる圧電素子を容易に得ることができる。
上記課題を解決する本発明の他の態様は、基板上に形成される第1電極と、前記第1電極上に形成され、ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、前記圧電体層上に形成される第2電極と、を具備する圧電素子の製造方法であって、前記圧電体層上の第1層が、該第1層上の第2層よりも結晶性が良く、前記第1層よりも前記圧電体層に対する圧縮応力が大きい第2層と該第1層とを同一材料から構成し、前記第2電極を形成することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる態様によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を抑制できる新規な圧電素子の製造方法を提供できる。
ここで、基板温度を150〜350℃とし、スパッタパワーを所定の第1パワー密度(W1)とする第1条件で前記第1層を形成し、基板温度を室温〜150℃とし、スパッタパワーを所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)とする第2条件で前記第2層を形成することが好ましい。第1条件のような高温条件で成膜することで、膜質が良好な第1層を得やすくなる。そして、第2条件のような低温条件で成膜することで、圧縮応力が大きい第2層を得やすくなる。しかも、不活性ガスとしてArガスを用い、第2パワー密度(W2)を第1パワー密度(W1)よりも大きくしてスパッターすれば、第1層よりもアルゴン(Ar)を多く含む第2層を得やすくなる。以上より、上記の態様によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を更に抑制できる圧電素子を容易に製造できる。
上記課題を解決する本発明の更に他の態様は、上記の何れか一つに記載の圧電素子を具備することを特徴とする圧電素子応用デバイスにある。かかる態様によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層と上電極との剥離を抑制できる新規な圧電素子を具備した圧電素子応用デバイスとなる。よって、各種特性に優れた圧電素子応用デバイスを提供できる。
記録装置の概略構成を示す図。 記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 記録ヘッドの概略構成の平面図及び断面図。 圧電素子の概略構成の断面図。 記録ヘッドの製造例を説明する図。 記録ヘッドの製造例を説明する図。 試験例1〜2(結晶性及び圧縮応力の評価)の結果を説明する図。 試験例3(圧電素子の変位の測定)の結果を説明する図。 試験例4(第2電極中のAr量の評価)の結果を説明する図。 試験例6(シート抵抗値の評価)の結果を説明する図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
図1は、インクジェット式記録装置(記録装置)の概略構成を示している。
インクジェット式記録装置Iにおいて、インクジェット式記録ヘッドユニット(ヘッドユニットII)が、カートリッジ2A及び2Bに着脱可能に設けられている。カートリッジ2A及び2Bは、インク供給手段を構成している。ヘッドユニットIIは、複数のインクジェット式記録ヘッド(記録ヘッド)を有しており、キャリッジ3に搭載されている。キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に、軸方向移動自在に設けられている。これらのヘッドユニットIIやキャリッジ3は、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出可能に構成されている。
駆動モーター6の駆動力は、図示しない複数の歯車及びタイミングベルト7を介し、キャリッジ3に伝達される。これにより、キャリッジ3が、キャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には、搬送手段としての搬送ローラー8が設けられている。搬送ローラー8により、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送される。尚、搬送手段は、搬送ローラーに限られず、ベルトやドラム等であってもよい。
上記のインクジェット式記録ヘッドには、駆動源(アクチュエーター)として、本実施形態に係る圧電素子が用いられている。このため、以下に詳述するように、インクジェット式記録ヘッド1やインクジェット式記録装置Iにおいて、噴射特性の向上を図ることができる上、圧電素子の破壊に起因した劣化も抑制できる。
図2は、インクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。図3(a)は、インクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す平面図(圧電素子側から流路形成基板を見た平面図)であり、図3(b)は、図3(a)のA−A′線に準ずる断面図である。
流路形成基板10には、複数の隔壁11が形成されている。隔壁11によって、複数の圧力発生室12が区画されている。すなわち、流路形成基板10には、所定方向(同じ色のインクを吐出するノズル開口21が並設される方向)に沿って圧力発生室12が並設されている。以降、この所定方向を「圧力発生室12の並設方向」又は「第1の方向X」と称し、第1の方向Xと直交する方向を「第2の方向Y」と称する。「第1の方向X」及び「第2の方向Y」は、圧電素子の厚さ方向とも直交している。このような流路形成基板10としては、例えば、シリコン単結晶基板を用いることができる。
流路形成基板10のうち、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側には、インク供給路13と連通路14とが形成されている。インク供給路13は、圧力発生室12の片側を第1の方向Xから絞ることで開口面積が小さく構成されている。また、連通路14は、第1の方向Xにおいて圧力発生室12と略同じ幅を有している。連通路14の外側(第2の方向Yの圧力発生室12とは反対側)には、連通部15が形成されている。連通部15は、マニホールド100の一部を構成する。マニホールド100は、各圧力発生室12の共通のインク室となる。このように、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が形成されている。
流路形成基板10の一方面側には、例えばSUS製のノズルプレート20が接合されている。ノズルプレート20には、第1の方向Xに沿ってノズル開口21が並設されている。ノズル開口21は、各圧力発生室12に連通している。ノズルプレート20は、接着剤や熱溶着フィルム等によって流路形成基板10に接合することができる。
流路形成基板10の他方面側(上記の一方面側に対向する面側)には、振動板50が形成されている。振動板50は、例えば、流路形成基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された絶縁体膜52と、により構成されている。弾性膜51は、例えば二酸化シリコン(SiO)からなり、絶縁体膜52は、例えば酸化ジルコニウム(ZrO)からなる。ただし、弾性膜51は、流路形成基板10とは別部材でなくてもよい。流路形成基板10の一部を薄く加工し、これを弾性膜として使用してもよい。
絶縁体膜52上には、密着層56を介して、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、を含む圧電素子300が形成されている。密着層56は、例えば、ジルコニウム(Zr)やチタン(Ti)からなり、圧電体層70と振動板50との密着性を向上させる機能を有する。ただし、密着層56は省略可能である。
本実施形態では、電気機械変換特性を有する圧電体層70の変位によって、振動板50及び第1電極60が変位する。すなわち、本実施形態では、振動板50及び第1電極60が、実質的に振動板としての機能を有している。ただし、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方、又は両方を設けずに、第1電極60のみが振動板として機能するようにしてもよい。流路形成基板10上に第1電極60を直接設ける場合には、第1電極60及びインクが導通しないように、第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護することが好ましい。
第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられている、つまり、第1電極60は、圧力発生室12毎に独立する個別電極として構成されている。第1電極60は、第1の方向Xにおいて、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。また、第1電極60は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12よりも広い幅で形成されている。すなわち、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、圧力発生室12に対向する領域より外側まで形成されている。第2の方向Yにおいて、第1電極60の一端部側(連通路14とは反対側)には、リード電極90が接続されている。
圧電体層70は、第1の方向Xに亘って、複数の個別電極(第1電極60)上に設けられている。また、圧電体層70は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の第2の方向Yの長さよりも広い幅で形成されている。圧電体層70のインク供給路13側の端部(図3(b)の右側端部)は、第2の方向Yにおいて、第1電極60の端部よりも外側まで形成されている。つまり、第2の方向Yにおいて、第1電極60の一端部側は、圧電体層70によって覆われている。一方、圧電体層70の他端部(図3(b)の左側端部)は、第2の方向Yにおいて、第1電極60の端部よりも内側にある。つまり、第2の方向Yにおいて、第1電極60の他端部側は、圧電体層70によって覆われていない。
第2電極80は、第1の方向Xに亘って、圧電体層70、第1電極60及び振動板50上に連続して設けられている。つまり、第2電極80は、複数の圧電体層70に共通する共通電極として構成されている。このような圧電体層70及び第2電極80により、凹部71が形成されている。凹部71は、第1電極60の間、すなわち、隔壁11に対向する領域にある。第1の方向Xにおいて、凹部71の幅は、隔壁11の幅と略同一、又はそれよりも広い。これにより、振動板50の圧力発生室12の第2の方向Yにおける端部に対向する部分(いわゆる振動板50の腕部)の剛性が抑えられるため、圧電素子300を良好に変位させることができる。尚、これらの態様はあくまで一例であり、かかる態様に本発明は限定されない。
このような圧電素子300では、一般的に、何れか一方の電極が共通電極として構成され、他方の電極が個別電極として構成される。上記のように、本実施形態では、第1電極60が個別電極として構成され、第2電極80が共通電極として構成されている。ただし、駆動回路や配線の都合で、第1電極を共通電極として構成し、第2電極を個別電極として構成しても支障はない。
圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、保護基板30が接着剤35により接合されている。保護基板30は、マニホールド部32を有している。マニホールド部32により、マニホールド100の少なくとも一部が構成されている。マニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向に貫通しており、更に圧力発生室12の幅方向に亘って形成されている。そして、マニホールド部32は、上記のように、流路形成基板10の連通部15と連通している。これらの構成により、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100が構成されている。
保護基板30には、圧電素子300を含む領域に、圧電素子保持部31が形成されている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有している。この空間は、密封されていても密封されていなくてもよい。保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。貫通孔33内には、リード電極90の端部が露出している。
保護基板30上には、信号処理部として機能する駆動回路120が固定されている。駆動回路120は、例えば回路基板や半導体集積回路(IC)を用いることができる。駆動回路120及びリード電極90は、接続配線121を介して電気的に接続されている。駆動回路120は、プリンターコントローラー200に電気的に接続可能である。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合されている。固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっている。従って、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
圧電素子300について、図4(a)〜(b)を用いてより詳細に説明する。図4(a)は、図3(b)の圧電素子をB−B′線に沿って切断したときの、圧電素子近傍の拡大断面図である。図4(b)は、図4(a)の圧電素子が圧力発生室12側に変位したときの様子を示す図である。
圧電素子300は、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む。第1電極60と第2電極80は、導電性を有する材料によって構成することができる。例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、その他の貴金属等が使用可能である。
圧電体層70は、厚さが約3.0μm以下、好ましくは厚さが約0.5〜1.5μmの薄膜状の圧電材料からなる。圧電体層70は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物は、Aサイトには酸素が12配位しており、Bサイトには酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。
本実施形態において、圧電材料として使用可能な複合酸化物としては、例えば、下記式(1)で表されるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)がある。
Pb(Zr,Ti)O ・・・ (1)
PZTでは、Aサイトに鉛(Pb)が位置し、Bサイトにジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)が位置している。PZTは、圧電特性が比較的高いため、圧電体層70の変位の向上を図るのに有利である。
また、圧電材料として使用可能な複合酸化物としては、例えば、下記式(2)〜(4)で表される化合物がある。
(K,Na)NbO ・・・ (2)
BiFeO ・・・ (3)
(Bi,Ba)(Fe,Ti)O ・・・ (4)
式(2)で表される複合酸化物(いわゆるKNN系の複合酸化物)では、Aサイトにカリウム(K)及びナトリウム(Na)が位置し、Bサイトにニオブ(Nb)が位置している。式(3)で表される複合酸化物(いわゆるBFO系の複合酸化物)では、Aサイトにビスマス(Bi)が位置し、Bサイトに鉄(Fe)が位置している。式(4)で表される複合酸化物(いわゆるBF−BT系の複合酸化物)では、Aサイトにビスマス(Bi)及びバリウム(Ba)が位置し、Bサイトに鉄(Fe)及びチタン(Ti)が位置している。
式(2)〜(4)で表される複合酸化物からなる圧電体層70は、Pbの含有量を抑えた材料、又はPbを使用しない材料(いわゆる非鉛系圧電材料)である。このため、主としてPbを含む圧電体層70に比べ、環境負荷を低減できる。
ただし、本実施形態において使用可能な圧電材料は、本発明の範囲で限定されない。式(1)〜(4)で表される複合酸化物において、AサイトやBサイトに、他の元素が含まれていても良い。Aサイトに含まれ得る元素としては、上記のPb、K、Na、Bi及びBaのほか、ランタン(La)、サマリウム(Sm)及びセリウム(Ce)等が挙げられる。Bサイトに含まれ得る元素としては、上記のZr、Ti、Nb及びFeのほか、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)及びコバルト(Co)等が挙げられる。すなわち、本発明の範囲であれば、圧電体層70には、式(1)〜(4)で表される複合酸化物以外のペロブスカイト材料が含まれていてよい。
圧電材料には、元素の一部欠損した組成を有する材料、元素の一部が過剰である組成を有する材料、及び元素の一部が他の元素に置換された組成を有する材料も含まれる。圧電体層70の基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれた材料や、元素の一部が他の元素に置換された材料も、本実施形態の圧電材料に含まれる。
第2電極80は、このような圧電体層70上に設けられている。第2電極80は、圧電体層70上の第1層81と、第1層81上の第2層82と、を有している。
第1層81は、上記のように、第2電極80を構成する他の電極(第2層82)に比べ、圧電体層70の上面に近い位置にある。特に、第1層81は、圧電体層70の上面に接している。このため、圧電体層70と第2電極80との剥離を抑制する観点からは、圧電体層70の上面に近い位置にある第1層81には、膜質が良好であることが求められる。
また、第2層82は、上記のように、第2電極80を構成する他の電極(第1層81)に比べ、圧電体層70を覆う位置(外側の位置)にある。特に、第2層82は、第1層81のみならず、圧電体層70の側面にも重なっている。このため、圧電体層70を覆う位置にある第2層82の特性向上が、圧電素子300の変位向上に寄与しやすい。
そこで、第2層82は、第1層81よりも圧電体層70に対する圧縮応力が大きい。これによれば、第2層82の圧縮応力が大きい分、圧電体層70を下方に変位させる力を低減させることができる(図4(b)参照)。従って、圧電素子300の変位の向上を図ることができる。
また、第1層81は、第2層82よりも結晶性が良い。これによれば、第1層81の結晶性が良い分、膜質が良好な第1層81となる。このため、圧電体層70と良好な界面を形成できる。従って、圧電体層70と第2電極80との剥離を防止できる。
しかも、圧電素子300では、第1層81と第2層82とが同一材料から構成されている。このため、第1層81と第2層82とが異なる材料から構成されていることに起因する悪影響(電極同士の剥離等)も抑制できる。よって、本実施形態によれば、変位の向上を図ることができ、圧電体層70と第2電極80との剥離を防止できる新規な圧電素子300を提供できる。
上記の圧縮応力の値は、実施例に記載の手法をはじめとして、各種手法で求めることができる。上記の結晶性の良し悪しについても、実施例に記載の手法をはじめとして、各種手法で判断できる。本明細書において「結晶性が良い」とは、例えば、結晶欠陥が少ないことや、単結晶に近いことを意味する。結晶性の評価手法としては、例えば、X線回折パターンのピーク幅や、TEM測定に基づいた手法が挙げられる。
また、本明細書において、第1層と第2層とが「同一材料から構成」とは、第1層と第2層との構成材料が完全に同一であることは勿論、構成材料が実質的に同一である場合も含む。すなわち、第1層と第2層との構成材料が厳密には相違するものの、かかる相違に基づく悪影響が過度に生じ得ない場合には、かかる場合も「同一材料から構成」に含まれる。
ここで、第1層81は、第2層82よりもシート抵抗値が小さいことが好ましい。これによれば、導電性に優れ、膜質が更に良好な第1層81となる。このため、圧電体層70と良好な界面を形成しやすくなる。それでいて、圧縮応力の大きな第2層82によって、圧電素子300の変位を十分に確保できる。
また、第2層82は、第1層81よりもアルゴン(Ar)を多く含むことが好ましい。これによれば、第2層82のヤング率を低下させることができ、ひいては圧電素子300全体の剛性を低下させることができる。ここでのArは、例えば、第2電極80をスパッタリング法で形成したときの不活性ガス(Arガス)に由来する。逆に言えば、第2電極80をスパッタリング法で形成することで、第2層82にArを多く含ませるのが容易になる。
第1層81は、基板温度が150〜350℃であり、スパッタパワーが所定の第1パワー密度(W1)である第1条件で形成されている。第1条件のような高温条件で成膜することで、膜質が良好な第1層81を得やすくなる。第1条件において、基板温度は、次の第1条件との相違を明確にするため、好ましくは約200℃以上であり、概ね約250℃である。また、第1パワー密度(W1)は、膜質が良好な第1層81を得るのに好適なパワー密度を選択でき、概ね6.0kW(cm)である。
第2層82は、基板温度が室温〜150℃であり、スパッタパワーが所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)である第2条件で形成されている。第2条件のような低温条件で成膜することで、圧縮応力が大きい第2層82を得やすくなる。第2条件において、基板温度は、好ましくは約100℃以下であり、より好ましくは50℃以下である。第2条件における「室温」は、例えば約20〜約40℃であるが、前記の例に限定されない。また、第2パワー密度(W2)は、本発明の範囲で第2層82を形成できるパワー密度を選択でき、第1パワー密度(W1)と同様でも構わない。
ただ、第2パワー密度(W2)を第1パワー密度(W1)よりも大きくすれば、不活性ガスとしてArガスを用いてスパッターしたとき、第1層81よりもArを多く含む第2層82を得やすくなる。第2層82にArが多く含まれることで、上記のように、第2層82のヤング率を低下させることができる。第2パワー密度(W2)を第1パワー密度(W1)よりも大きくする場合、第2パワー密度(W2)は、Arを多く含む第2層82を得るのに好適なパワー密度を選択できる。一例として、第2パワー密度(W2)は、第1パワー密度(W1)の2倍以上、3倍以上、4倍以上のパワー密度を選択できる。本実施形態では、第2パワー密度(W2)は、概ね30.0kW(cm)として第2層82を形成している。
このような手法により、例えば(111)面に配向した第2電極80(第1層81及び第2層82)となる。ただし、第2電極80の配向性は限定されない。
次に、圧電素子の製造方法の一例について、インクジェット式記録ヘッド1の製造方法とあわせて説明する。
まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に、振動板50を形成する。ここでは、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(SiO;弾性膜51)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(ZrO;絶縁体膜52)と、を積層して振動板50を形成した。ここでは、振動板50上に更に密着層56を形成している。ただし、密着層56は省略が可能である。
次いで、図5(a)に示すように、振動板50上の密着層56の全面に第1電極60を形成する。第1電極60は、例えば、スパッタリング法、PVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法等の気相成膜、スピンコート法等の液相成膜等により形成することができる。次に、第1電極60上に圧電体層70を形成する。圧電体層70の形成方法は限定されない。例えば、金属錯体を含む溶液を塗布乾燥し、更に高温で焼成することで金属酸化物を得るMOD(Metal−Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いることができる。その他、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法等、液相法でも固相法でも、圧電体層70を製造できる。
圧電体層70を化学溶液法で形成する場合の具体的順例は、以下のとおりである。まず、金属錯体を含むMOD溶液やゾルからなり、圧電体層70を形成するための前駆体溶液を作成する。そして、この前駆体溶液を、第1電極60上に、スピンコート法等を用いて塗布して前駆体膜を形成する(塗布工程)。この前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間乾燥させ(乾燥工程)、更に乾燥した前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。前駆体膜を所定温度に加熱して保持することによって結晶化させ、圧電体膜74を形成する(焼成工程)。
そして、上記の塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を複数回繰り返すことにより、図5(c)に示すように、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。圧電体層70を形成した後は、圧電体層70上に、イリジウム(Ir)等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成する。
第2電極80をスパッタリング法で形成する場合の具体的順例は、以下のとおりである。まず、圧電体層70上に、第1層81をスパッタリング法で形成する。例えば、基板温度が150〜350℃であり、スパッタパワーが所定の第1パワー密度(W1)である第1条件で第1層81を形成する。第1条件のような高温条件で成膜することで、膜質が良好な第1層81を得やすくなる。
そして、各圧力発生室12に対向するように、圧電体層70及び第1層81を同時にパターニングする。その後、圧電体層70及び第1層81に重なるように、第2層82をスパッタリング法で形成する。例えば、基板温度が室温〜150℃であり、スパッタパワーが所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)である第2条件で第2層82を形成する。第2条件のような低温条件で成膜することで、圧縮応力が大きい第2層82を得やすくなる。しかも、第2パワー密度(W2)を第1パワー密度(W1)よりも大きくすれば、第1層81よりもArを多く含む第2層82を得やすくなる。
このように、上記の第1条件に基づくスパッタリング法によって形成した第1層81と、上記の第2条件に基づくスパッタリング法によって形成した第2層82と、により第2電極80を形成する。以上のように、図5(d)に示すように、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、からなる圧電素子300を形成する。ここでは、振動板50上にも重なるように第2層82を形成しているが、圧電体層70及び第1層81にのみ第2層82が重なるようにしてもよい。圧電体層70の側面には重ならないように(第1層81にのみ重なるように)第2層82を形成してもよい。
後は、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、接着剤を介して保護基板用ウェハー130を接合し、その後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。次いで、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図6(c)に示すように、マスク膜53を介して、流路形成基板用ウェハー110をKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)する。これにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12等を形成する。
その後は、常法に従い、圧電素子300に対応する圧力発生室12や、図2に示すインク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。そして、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分をダイシング等により切断・除去する。更に、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面に、ノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合する。また、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合する。そして、流路形成基板用ウェハー110等を一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、インクジェット式記録ヘッド1とする。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
<基板の準備>
シリコン(Si)基板を酸化することで、基板の表面に酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜51を形成した。弾性膜51上に、ジルコニウム(Zr)膜をスパッターし、酸化炉にて酸化処理を施して、酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜52を形成した。その後、密着層56としてのZr膜を絶縁体膜52上に形成した。密着層56上に、イリジウム(Ir)膜からなる第1電極60を形成し、電極付き基板とした。
<圧電素子の作製>
所定の金属錯体を含む圧電体層用溶液を別途調製した。この圧電体層用溶液を適量マイクロピペットに取り、スピンコーターにセットした基板に滴下した。スピンコーターで塗布して成膜した後、ホットプレート上でベークし、アモルファス膜を形成した。そして、ランプアニール炉を用いて焼成し、1層目の圧電体膜74とした。同様に、塗布〜焼成工程を繰り返し、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成した。この圧電体層70上に、第1条件に基づくスパッタリング法によってIr膜を形成し、このIr膜を第1層81とした。
そして、圧電体層70及び第1層81を所定の形状にパターニングした。次いで、この圧電体層70及び第1層81上に、第2条件に基づくスパッタリング法によってIr膜を形成し、このIr膜を第2層82とした。これにより、第1層81及び第2層82からなる第2電極80を構成した。以上より、実施例1に係る圧電素子を作製した(図4の構成等を参照)。
実施例1における、第1層81及び第2層82をスパッターしたときの第1条件及び第2条件は、表1の通りである。
(実施例2)
第2層をスパッターしたときの第2条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に圧電素子を形成した。
(比較例1)
第2層をスパッターしたときの第2条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に圧電素子を形成した。すなわち、比較例1では、第2層を、低温条件で形成せず、第1層81形成時と同様の高温条件で形成した。
実施例1〜2及び比較例1での第1条件及び第2条件は、以下の表1の通りである。表1には、後述する試験例の結果も示してある。
(参考例1)
圧電体層70上に、下記の参考条件Aに基づくスパッタリング法によってイリジウムIr膜を形成し、このIr膜を第2電極とした以外は、実施例1と同様に、参考例1に係る圧電素子を作製した。参考例1に係る圧電素子では、上記の実施例と異なり、圧電体層70の上面及び側面に、参考条件Aに基づくスパッタリング法によって形成したIr膜が、第2電極として配されている。言い換えれば、参考例1は、製法的には若干相違するものの、実施例1における第1層及び第2層の両方が参考条件Aに基づいて形成された圧電素子に相当する。
圧電体層70上に、下記の参考条件Bに基づくスパッタリング法によってイリジウム(Ir)膜を形成し、このIr膜を第2電極とした以外は、実施例1と同様に、参考例2に係る圧電素子を作製した。参考例2に係る圧電素子でも、上記の実施例と異なり、圧電体層70の上面及び側面に、参考条件Bに基づくスパッタリング法によって形成したイリジウム(Ir)膜が、第2電極として配されている。言い換えれば、参考例2は、製法的には若干相違するものの、実施例1における第1層及び第2層の両方が参考条件Bに基づいて形成された圧電素子に相当する。
参考例1〜2での参考条件A及び参考条件Bは、以下の表2の通りである。表2には、後述する試験例の結果も示してある。
<試験例1>
(結晶性)
参考例1〜2及び比較例1の圧電素子について、第2電極の結晶性を評価した。ここでは、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、X線回折ピークの測定を行った。第2電極由来の(111)由来のピークが観測されたことから、参考例1〜2及び比較例1の第2電極は、(111)配向していることが分かった。そして、(111)由来のピーク幅Δ2θが小さいほど結晶性が良いと評価した。
その結果、比較例1の第2電極は、参考例1の第2電極よりも結晶性が良いことが確認された(図7(a)及び表2参照)。比較例1で第2電極を形成した基板加熱温度(250℃)は、参考例1で第2電極を形成した基板加熱温度(150℃)よりも高い。比較例1と参考例1とで、スパッタパワー密度は同一である。スパッタパワー密度が異なる参考例1と参考例2とで、ピーク幅Δ2θに大きな差異は見られない。これらから、スパッタリング時の基板加熱温度が高い方が、結晶性の良い第2電極が得られると推察される。
実施例1〜2でも、第1層81を形成した第1条件の基板加熱温度(250℃)は、第2層82を形成した第2条件の基板加熱温度(室温)よりも高い。従って、実施例1〜2において、第1層81は、第2層82よりも結晶性が良いと推察される。実際、試験例1と同様の手法により、実施例1〜2での第1層81及び第2層82の結晶性を評価したところ、実施例1〜2の何れも、第1層81は第2層82よりも結晶性が良いことが確かめられた(表1参照)。結晶性の良い第1層81は、圧電体層70と良好な界面を形成できるので、圧電体層70と第2電極80との剥離を防止できる。
<試験例2>
(圧縮応力)
参考例1〜2及び比較例1の圧電素子について、第2電極の圧縮応力を求めた。ここでは、第2電極を形成する前の基板のたわみ量(初期たわみ量)と、第2電極を形成した後の基板のたわみ量と、の差から、圧縮応力を算出した。
その結果、参考例1の第2電極は、比較例1の第2電極よりも圧縮応力が大きいことが確認された(図7(b)及び表2参照)。上記のように、比較例1で第2電極を形成した基板加熱温度(250℃)は、参考例1で第2電極を形成した基板加熱温度(150℃)よりも高い。比較例1と参考例1とで、スパッタパワー密度は同一である。スパッタパワー密度が異なる参考例1と参考例2とで、圧縮応力に大きな差異は見られない。これらから、スパッタリング時の基板加熱温度が低い方が、圧縮応力の大きい第2電極が得られると推察される。
実施例1〜2でも、第2層82を形成した第2条件の基板加熱温度(室温)は、第1層81を形成した第2条件の基板加熱温度(250℃)よりも低い。従って、実施例1〜2において、第2層82は、第1層81よりも圧縮応力が大きいと推察される。実際、上記の試験例と同様の手法により、実施例1〜2での第1層81及び第2層82の圧縮応力を評価したところ、実施例1〜2の何れも、第2層82は第1層81よりも圧縮応力が大きいことが確かめられた(表1参照)。
表1には記載していないものの、実施例2及び参考例2の結果を線形近似すると、第2パワー密度が29.6kW/cmであって、第2条件の基板加熱温度が150℃である場合、第2層82の圧縮応力は、約2.98Gpaとなる(図7(b)参照)。
<試験例3>
(変位量)
実施例1〜2及び比較例1の圧電素子について、電圧印加時の変位量を求めた。ここでは、変位測定装置(レーザードップラー変位計)を用い、室温(25℃)での変位量を求めた。
その結果、実施例1〜2の圧電素子は、比較例1の圧電素子よりも、大きな変位量が得られることが確認された(図8及び表1参照)。表1には記載していないものの、実施例2及び参考例2の結果を線形近似すると、第2パワー密度が29.6kW/cmであって、第2条件の基板加熱温度が150℃である場合、圧電素子の変位は、約383nmとなる(図8参照)。
以上より、第2層82が、第1層81よりも圧電体層70に対する圧縮応力が大きく、第1層81と第2層82とが同一材料から構成されており、第1層81が、第2層82よりも結晶性が良い圧電素子(実施例1〜2の圧電素子)は、従来の圧電素子(比較例1の圧電素子)に比べ、変位の向上を図ることができ、圧電体層70と第2電極80との剥離を抑制できることが分かった。
<試験例4>
(第2電極中のAr量)
参考例1〜2及び比較例1の第2電極について、第2電極中のAr量を評価した。ここでは、アルバック−ファイ社製「ADEPT−1010」を使用し、第2電極から圧電体層70方向に、厚さ方向に亘って二次イオン質量分析を行った。
その結果、参考例2の第2電極は、参考例1の第2電極や比較例1の第2電極に比べ、第2電極中にArを多く含むことが確認された(図9及び表2)。尚、図9の横軸が右に進むにつれて、第2電極から圧電体層70方向にArの分布が評価されている。上記のように、参考例2で第2電極を形成したスパッタパワー密度(29.6kW/cm)は、参考例1や比較例1で第2電極を形成したスパッタパワー密度(5.9kW/cm)よりも高い。比較例1と参考例1とは、基板加熱温度も同一であるが、第2電極中のAr量に大きな差異はない。これらから、スパッタリング時のスパッタパワー密度が高い方が、Ar量が多い第2電極が得られると推察される。
ここで、実施例2で第2層82を形成した第2条件の第2パワー密度(29.6kW/cm)は、実施例1で第1層81を形成した第2条件の第2パワー密度(5.9kW/cm)よりも高い。従って、実施例2の第2層82は、実施例1の第2層82よりもArを多く含むと推察される。実際、上記の試験例と同様の手法により、実施例1〜2での第2層82のAr量を評価したところ、実施例2の第2層82の方が、実施例1の第2層82よりもArを多く含むことが確かめられた。Arが多く存在する実施例2では、第2層82のヤング率を低下させることができる。
<試験例5>
(ヤング率)
実施例1〜2及び比較例1の第2電極について、ヤング率を求めた。ここでは、球状圧子を用いたナノインデンテーション法により行った。すなわち、先端が球状の圧子を第2電極の表面に押込んだときの、圧子にかかる荷重と、圧子の下の射影面積と、に基づいて、ヤング率を算出した。
その結果、実施例2の第2層82は、実施例1の第1層81よりもヤング率が低いことが確かめられた(表1)。ヤング率の低い第2層82を具備する実施例2では、圧電素子300全体の剛性を低下させることができるので、変位特性に更に有利となる。尚、実施例1〜2の何れも、比較例1よりも第2層82のヤング率が低いことも確かめられた。つまり、実施例1〜2の何れも、比較例1に比べて変位特性の向上に有利であることが、ヤング率の観点からも確認された。
<試験例6>
(シート抵抗値)
参考例1〜2及び比較例1の圧電素子について、第2電極のシート抵抗値を求めた。ここでは、ナプソン社製の「RT−70/RG−7S」を用いシート抵抗値を求めた。
その結果、比較例1の第2電極は、参考例1の第2電極よりもシート抵抗値が小さいことが確認された(図10及び表2参照)。比較例1で第2電極を形成した基板加熱温度(250℃)は、参考例1で第2電極を形成した基板加熱温度(150℃)よりも高い。比較例1と参考例1とで、スパッタパワー密度は同一である。スパッタパワー密度が異なる参考例1と参考例2とで、シート抵抗値に大きな差異は見られない。これらから、スパッタリング時の基板加熱温度が高い方が、シート抵抗値の小さい第2電極が得られると推察される。シート抵抗値の小さい第2電極は、導電性に優れ、膜質が更に良好である。
ここで、実施例1で第2層82を形成した第2条件の基板加熱温度(250℃)は、実施例2で第2層82を形成した第2条件の基板加熱温度(室温)よりも高い。従って、実施例1の第2層82は、実施例2の第2層82よりもシート抵抗値が小さいと推察される。実際、上記の試験例と同様の手法により、実施例1〜2での第2層82のシート抵抗値を求めたところ、実施例1の第2層82の方が、実施例2の第2層82よりもシート抵抗値が小さいことが確かめられた。シート抵抗値が小さい実施例1では、圧電体層70と良好な界面を形成しやすくなる。
<試験例7>
(初期たわみ量)
実施例1〜2の圧電素子について、振動板上に形成したときの初期たわみ(電圧を印加する前の状態における圧電素子側へのたわみ)を求めた。ここでは、上記の変位量を求める手法と同様の手法を用いた。
その結果、実施例2の圧電素子の方が、実施例1の圧電素子よりも、初期たわみが大きいことが分かった。かかる初期たわみの差は、実施例2の圧電素子は、ヤング率の低い第2層82を具備していることに起因すると思われる。すなわち、上記の初期たわみの差からも、実施例2の圧電素子の方が、実施例1の圧電素子よりも全体としての剛性が小さく、変位の向上に有利であることが分かった。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明した。しかし、本発明の基本的構成は上記の態様に限定されない。
上記の実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示した。しかし、流路形成基板10は前記の例に限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料であってもよい。
また、上記の実施形態では、圧電素子応用デバイスの一例として、インクジェット式記録ヘッドを挙げて説明した。しかし、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、他の圧電素子応用デバイスに搭載される圧電素子にも適用することができる。圧電素子応用デバイスの一例としては、超音波デバイス、モーター、圧力センサー、焦電素子、強誘電体素子などが挙げられる。また、これらの圧電デバイスを利用した完成体、例えば、上記の液体噴射ヘッドを利用した液体噴射装置、上記の超音波デバイスを利用した超音波センサー、上記のモーターを駆動源として利用したロボット、上記の焦電素子を利用したIRセンサー、上記の強誘電体素子を利用した強誘電体メモリー等も、圧電素子応用デバイスに含まれる。
図面において示す構成要素、すなわち層等の厚さ、幅、相対的な位置関係等は、本発明を説明する上で、誇張して示されている場合がある。また、本明細書の「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「圧電体層上の第1層」や「第1層上の第2層圧」という表現は、基板と第1電極との間や、第1電極と圧電体層との間に、他の構成要素を含むものを除外しない。
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 マニホールド部、 33 貫通孔、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 41 封止膜、 42 固定板、 43 開口部、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 絶縁体膜、 53 マスク膜、 56 密着層、 60 第1電極、 70 圧電体層、 71 凹部、 74 圧電体膜、 80 第2電極、 81 第1層、 82 第2層、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 121 接続配線、 200 プリンターコントローラー、 300 圧電素子

Claims (7)

  1. 基板上に形成される第1電極と、前記第1電極上に形成され、ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、前記圧電体層上に形成される第2電極と、を具備する圧電素子であって、
    前記第2電極は、前記圧電体層上の第1層と、前記第1層上の第2層と、を有し、
    前記第2層は、前記第1層よりも前記圧電体層に対する圧縮応力が大きく、
    前記第1層と前記第2層とは、同一材料から構成されており、
    前記第1層は、前記第2層よりも結晶性が良いこと
    を特徴とする圧電素子。
  2. 前記第1層は、前記第2層よりもシート抵抗値が小さいこと
    を特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 前記第2層は、前記第1層よりもアルゴン(Ar)を多く含むこと
    を特徴とする請求項1又は2に記載の圧電素子。
  4. 基板温度が150〜350℃であり、所定のスパッタパワーが所定の第1密度(W1)である第1条件で前記第1層を形成し、
    基板温度が室温〜150℃であり、スパッタパワーが所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)である第2条件で前記第2層を形成したこと
    を特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧電素子。
  5. 基板上に形成される第1電極と、前記第1電極上に形成され、ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、前記圧電体層上に形成される第2電極と、を具備する圧電素子の製造方法であって、
    前記圧電体層上の第1層が、該第1層上の第2層よりも結晶性が良く、
    前記第1層よりも前記圧電体層に対する圧縮応力が大きい第2層と該第1層とを同一材料から構成し、前記第2電極を形成すること
    を特徴とする圧電素子の製造方法。
  6. 基板温度を150〜350℃とし、スパッタパワーを所定の第1パワー密度(W1)とする第1条件で前記第1層を形成し、
    基板温度を室温〜150℃とし、スパッタパワーを所定の第2パワー密度(W2;W2≧W1)とする第2条件で前記第2層を形成すること
    を特徴とする請求項5に記載の圧電素子の製造方法。
  7. 請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電素子を具備することを特徴とする圧電素子応用デバイス。
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