JP2016155200A - 被覆工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化アルミニウム層の耐チッピング性および耐摩耗性を改善した被覆工具を提供する。
【解決手段】基体5の表面に、少なくとも炭窒化チタン層8とα型結晶構造の酸化アルミニウム層10とを順に積層し、酸化アルミニウム層10についてのX線回折分析において、酸化アルミニウム層10の表面側からの測定で検出される表面側ピークの表面側の配向係数Tc(134)が0.7以上の切削工具1である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、基体の表面に被覆層を有する被覆工具に関する。
従来から、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体表面に、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層及び窒化チタンアルミニウム層等の被覆層が、単層または多層に形成された切削工具等の被覆工具が知られている。
このような切削工具は、最近の切削加工の高能率化に伴って、大きな衝撃が切刃にかかる重断続切削等に用いられる機会が増えている。このような過酷な切削条件においては、被覆層に大きな衝撃がかかり、被覆層のチッピングや剥離が発生しやすくなる。そのために、被覆層の耐欠損性を向上させて、被覆層のチッピングや剥離を抑制することが求められている。
上記切削工具において、耐欠損性を向上させる技術として、特許文献1では、酸化アルミニウム層の粒径と層厚を適正化するとともに、(012)面における組織化係数(Texture Coefficient:配向係数)を1.3以上とすることにより、緻密で耐欠損性の高い酸化アルミニウム層を形成することができる技術が開示されている。また、特許文献2では、酸化アルミニウム層の(012)面における組織化係数を2.5以上とすることにより、酸化アルミニウム層における残留応力が解放されやすくして、酸化アルミニウム層の耐欠損性を向上させることができる技術が開示されている。
特許文献3では、上記切削工具において、耐摩耗性を向上させる技術として、中間層の直上に位置する酸化アルミニウム層が、異なるX線回折パターンを示す2層以上の単位層を積層してなるように形成されることにより、被膜の強度及び靭性を向上させることができる技術が開示されている。
特許文献4では、酸化アルミニウム層の(006)面配向係数を1.8以上と高め、かつ(104)面と(110)面とのピーク強度比I(104)/I(110)と所定の範囲に制御した切削工具が開示されている。
さらに、特許文献5では、酸化アルミニウム層の(104)面と(012)面とのピーク強度比I(104)/I(012)を、酸化アルミニウム層の下側の第一面よりも第二面で大きくした切削工具が開示されている。
特開平6−316758号公報 特開2003−025114号公報 特開平10−204639号公報 特開2013−132717号公報 特開2009−202264号公報
被覆工具では、被覆層の耐摩耗性および耐欠損性をさらに改善することが求められている。特に、酸化アルミニウム層の耐チッピング性の更なる改善が求められていた。
本発明の被覆工具は、基体表面に、少なくとも炭窒化チタン層とα型結晶構造の酸化アルミニウム層とを順に積層した被覆工具であって、前記酸化アルミニウム層についてのX線回折分析において、前記酸化アルミニウム層の表面側からの測定で検出される表面側ピークの下記一般式Tc(hkl)で表される表面側の配向係数Tc(134)が0.7以上である。
配向係数Tc(hkl)={I(hkl)/I(hkl)}/〔(1/8)×Σ{I(HKL)/I(HKL)}〕
ここで、(HKL)は、(012)、(104)、(110)、(006)、(113)、(024)、(116)、(134)の結晶面
I(HKL)およびI(hkl)は、前記酸化アルミニウム層のX線回折分析において検出される各結晶面に帰属されるピークのピーク強度
(HKL)およびI(hkl)は、JCPDSカードNo.00−010−0173に記載された各結晶面の標準回折強度
本発明によれば、酸化アルミニウム層の(134)面の配向係数が0.7以上と高いことによって、酸化アルミニウム層のチッピングが抑制されて耐摩耗性が向上し、長期間使用可能な被覆工具となる。
本発明に係る被覆工具の一実施例である切削工具の概略斜視図である。 図1の切削工具の概略断面図である。
本発明の被覆工具の一実施態様を示す切削工具(以下、単に工具と略す)1は、図1に示すように、工具1の一方の主面がすくい面2を、側面が逃げ面3を、それぞれなしており、すくい面2と逃げ面3とのなす交差稜線部が切刃4をなしている。
また、図2に示すように、工具1は、基体5と、この基体5の表面に設けられた被覆層6を備えている。被覆層6は、基体5側から順に、下地層7、炭窒化チタン層8、中間層9、酸化アルミニウム層10、表層11が積層されたものからなる。なお、酸化アルミニウム層10はα型結晶構造からなる。
本実施態様において、酸化アルミニウム層10の表面から測定されるX線回折分析において、酸化アルミニウム層10の下記一般式Tc(hkl)((hkl)は、(012)、(104)、(110)、(006)、(113)、(024)、(116)、(134)のいずれかの結晶面)で表される表面側配向係数Tc(134)が0.7以上である。配向係数Tc(hkl)={I(hkl)/I(hkl)}/〔(1/8)×Σ{I(HKL)/I(HKL)}〕
ここで、(HKL)は、(012)、(104)、(110)、(006)、(113)、(024)、(116)、(134)の結晶面である。
I(HKL)およびI(hkl)は、酸化アルミニウム層10のX線回折分析において検出される各結晶面に帰属されるピークのピーク強度である。
(HKL)およびI(hkl)は、JCPDSカードNo.00−010−0173に記載された各結晶面の標準回折強度である。
これによって、酸化アルミニウム層10の耐摩耗性が向上する。その結果、工具1は、長期間にわたって使用可能な工具1となる。すなわち、配向係数Tc(134)が高くな
る、つまり、(134)面のピーク強度I(134)の比率が高くなると、酸化アルミニウム層10の表面側から成膜方向(表面に垂直な方向)にかかる衝撃に対して、酸化アルミニウム層10を構成する酸化アルミニウム結晶がしなり易くなり、破壊に対する耐性が高くなると思われる。そのため、酸化アルミニウム層10の表面側においては、配向係数Tc(134)を高くすることによって、酸化アルミニウム層10の表面に発生する微小チッピングが抑制されて、微小チッピングに起因する摩耗の進行を抑制することができるものと思われる。表面側Tc(134)の望ましい範囲は0.7〜3.0であり、特に望ましい範囲は0.8〜2.5であり、さらに望ましい範囲は0.9〜1.7である。
また、(134)面以外の他のピークについては、Tc(012)が0.2〜0.7、Tc(104)が0.5〜1.7、Tc(110)が0.3〜1.5、Tc(006)が2〜7、Tc(113)が0.05〜0.7、Tc(116)が0.3〜1.3である。
なお、本実施形態においては、Tc(006)が他の組織化係数に比べて高い。これによって、酸化アルミニウム層10の耐摩耗性を高めることができる。そして、Tc(006)とともにTc(134)を高めることによって、酸化アルミニウム層10の耐チッピング性を高めることができ、酸化アルミニウム層10の耐摩耗性がより改善される。
ここで、本実施態様によれば、酸化アルミニウム層10の一部を研磨して、酸化アルミニウム層10の基体側部分のみを残した状態での測定で検出される基体側ピークと、酸化アルミニウム層10の表面側からの測定で検出される表面側ピークを比較したとき、表面側ピークにおける表面側Tc(134)が、前記基体側ピークにおける基体側Tc(134)よりも大きくなっている。すなわち、基体側Tc(134)は表面側Tc(134)よりも小さくなっている。配向係数Tc(134)が高くなると、酸化アルミニウム層10の表面に平行な方向への熱膨張率が大きくなるので、酸化アルミニウム層10と、酸化アルミニウム層10よりも基体側の中間層9や炭窒化チタン層8の熱膨張率との差が大きくなり、酸化アルミニウム層10が剥離しやすくなる傾向にある。表面側Tc(134)が基体側Tc(134)よりも大きくなることに加えて、表面側Tc(134)が0.7以上であることによって、酸化アルミニウム層10の剥離が抑制される。
そこで、酸化アルミニウム層10の基体側の配向係数Tc(134)は小さくすることによって、酸化アルミニウム層10の剥離を抑制することができる。基体側Tc(134)の望ましい範囲は、0.1〜1.0、望ましくは0.3〜0.7である。
また、酸化アルミニウム層10の基体側Tc(134)と表面側Tc(134)の測定方法について説明する。酸化アルミニウム層10のX線回折分析は、一般的なCuKα線を用いたX線回折分析の装置を用いて測定する。測定は、面積の広い平坦面で測定するため、すくい面2にブレーカ等の凹凸が形成されている場合には、逃げ面3にて測定する。X線回折チャートから酸化アルミニウム層10の各結晶面のピーク強度を求めるにあたり、JCPDSカードのNo.00−101−0173に記載された各結晶面の回折角を確認して、検出されたピークの結晶面を同定し、そのピーク強度を測定する。
表面側Tc(134)を測定するには、酸化アルミニウム層10の表面側から酸化アルミニウム層10の基体側を含めて、酸化アルミニウム層10のピーク強度を測定する。具体的には、表層11を研磨除去した状態あるいは表層11を研磨しない状態で、被覆層6に対してX線回折分析を行う。得られた各ピークのピーク強度を測定して、配向係数Tc(hkl)を算出する。なお、表層11を研磨除去する際には、酸化アルミニウム層10の厚みの20%以下の厚みが除去されていてもよい。また、表層11に対して研磨しない状態でX線回折分析を行った場合であっても、酸化アルミニウムの9本のピークが測定できれば良い。なお、表面側ピークは、酸化アルミニウム層10の基体5側の配向状態も含
んで検出されるが、酸化アルミニウム層10のX線回折分析の測定面に近い位置の組織状態が、ピークにより大きく影響を及ぼすことから、表面側ピークに及ぼす基体5側の配向状態の影響は小さい。
基体側Tc(134)を測定するには、酸化アルミニウム層10の一部を研磨して、酸化アルミニウム層10の基体側部分のみを残した状態でピーク強度を測定する。具体的には、まず、被覆層6の酸化アルミニウム層10を酸化アルミニウム層10の研磨前の厚みに対して10〜40%の厚みとなるまで研磨する。研磨は、ダイヤモンド砥粒を用いたブラシ加工や弾性砥石による加工、又はブラスト加工等で行う。その後、酸化アルミニウム層10の研磨された部分に対して、酸化アルミニウム層10の表面側部分における測定と同条件でX線回折分析を行い、酸化アルミニウム層10のピークを測定し、配向係数Tc(hkl)を算出する。
以上の方法で測定した酸化アルミニウム層10の表面側ピークにおける表面側Tc(134)と、基体側Tc(134)を比較することができる。なお、配向係数TcはJCPDSカードで規定された無配向の標準データに対する比率で求められるので、各結晶面の配向度合いを表す指標である。
また、本実施態様によれば、酸化アルミニウム層10の表面側ピークにおいて、I(104)とI(116)が、一番目と二番目に高くなっている。すなわち、I(104)が一番目に高く、I(116)が二番目に高くものでもよく、I(116)が一番目に高く、I(134)が二番目に高くものでもよい。これによって、すくい面2側のクレータ摩耗が抑制される。かつ、逃げ面3側において微小チッピングに起因するフランク摩耗が抑制される傾向にある。
JCPDSカードにおいて、Io(006)は1、すなわち、最強ピークである(113)面のピーク強度Io(113)が100であるのに対して、その100分の1である。本実施形態においては、Tc(006)が2〜7であり、他のピークのTcに比べてTc(006)が非常に高いので、他のピークのTc同士が比較しにくい。そこで、本実施形態では、(006)面のピークを除いた下記一般式Tc’(hkl)で求められる修正配向係数にて他の結晶面の配向状態も評価する。
配向係数Tc(hkl)={I(hkl)/I(hkl)}/〔(1/7)×Σ{I(HKL)/I(HKL)}〕
ここで、(HKL)は、(012)、(104)、(110)、(113)、(024)、(116)、(134)の結晶面である。
I(HKL)およびI(hkl)は、酸化アルミニウム層10のX線回折分析において検出される各結晶面に帰属されるピークのピーク強度である。
(HKL)およびI(hkl)は、JCPDSカードNo.00−010−0173に記載された各結晶面の標準回折強度である。
本実施形態においては、Tc’(134)が1.1〜2.0である。すなわち、(134)面は無配向の酸化アルミニウムよりも配向している傾向にある。これによって、微小チッピングが抑制されて摩耗の進行を抑制できる。他のピークについては、Tc’(012)が0.4〜0.9、Tc’(104)が0.8〜2.0、Tc’(110)が0.6〜2.5、Tc’(113)が0.1〜0.5、Tc’(116)が0.7〜1.7である。
炭窒化チタン層8は、いわゆるMT−炭窒化チタン層8aと、HT−炭窒化チタン層8bとが、基体側から順に存在する積層体からなる。MT−炭窒化チタン層8aは、アセトニトリル(CHCN)ガスを原料として含み、成膜温度が780〜900℃と比較的低
温で成膜した柱状結晶からなる。HT−炭窒化チタン層8bは、成膜温度が950〜1100℃と高温で成膜した粒状結晶からなる。本実施態様によれば、HT−炭窒化チタン層8bの表面には酸化アルミニウム層10に向かって先細りする断面視で三角形形状の突起が形成され、これによって、酸化アルミニウム層10の密着力が高まり、被覆層6の剥離やチッピングを抑えることができる。
また、本実施態様によれば、中間層9は、HT−炭窒化チタン層8bの表面に設けられる。中間層9は、チタンと酸素とを含有し、例えばTiAlCNO、TiCNO等からなり、図2はこれらが積層された下部中間層9aと上部中間層9bとからなっている。これによって、酸化アルミニウム層10を構成する酸化アルミニウム粒子はα型結晶構造となる。α型結晶構造からなる酸化アルミニウム層10は、硬度が高く、被覆層6の耐摩耗性を高めることができる。中間層9が、TiAlCNOからなる下部中間層9aと、TiCNOからなる上部中間層9bとの積層構造からなることによって、切削工具1の耐欠損性を高める効果がある。なお、炭窒化チタン層8は6.0〜13.0μmの厚みで、また、中間層9は0.05〜0.5μmの厚みで、それぞれ設けられる。
さらに、下地層7及び表層11は、窒化チタンにより構成されている。なお、本発明の他の実施態様においては、下層7及び表層11は、窒化チタン以外の、炭窒化チタン、炭酸窒化チタン、窒化クロム等の他の材質であってもよい。また、下地層7および表層11の少なくとも一方を備えないものであっても良い。さらに、下地層7は0.1〜1.0μmの厚みで、表層11は0.1〜3.0μmの厚みで設けられる。
なお、各層の厚みおよび各層を構成する結晶の性状は、工具1の断面における電子顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡(SEM)写真または透過電子顕微鏡(TEM)写真)を観察することにより、測定することが可能である。また、本発明においては、被覆層6の各層を構成する結晶の結晶形態が柱状であるとは、各結晶の被覆層6の厚み方向の長さに対する前記平均結晶幅の比が平均で0.3以下の状態を指す。一方、この各結晶の被覆層の厚み方向の長さに対する前記平均結晶幅の比が平均で0.3を超えるものは、結晶形態が粒状であると定義する。
一方、工具1の基体5は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種と、からなる硬質相を、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金やTi基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスが挙げられる。中でも、工具1のような切削工具として用いる場合には、基体5は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点でよい。また、用途によっては、基体5は炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
さらに、上記切削工具は、すくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切刃を被切削物に当てて切削加工するものであり、上述した優れた効果を発揮することができる。また、本発明の被覆工具は、切削工具以外にも、摺動部品や金型等の耐摩部品、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種の用途へ応用可能であり、この場合にも優れた機械的信頼性を有するものである。
次に、本発明に係る被覆工具の製造方法について、工具1の製造方法の一例を参考にして説明する。
まず、基体5となる硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形
、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体5を作製する。そして、上記基体5の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
次に、その表面に化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層を成膜する。
まず、反応ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を800〜940℃、8〜50kPaとして、下地層7であるTiN層を成膜する。
その後、反応ガス組成として、体積%で四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜3.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を780〜880℃、5〜25kPaとして、MT−炭窒化チタン層を成膜する。このとき、アセトニトリル(CHCN)ガスの含有比率を成膜初期よりも成膜後期で増すことによって、炭窒化チタン層を構成する炭窒化チタン柱状結晶の平均結晶幅を基体側よりも表面側のほうが大きい構成とすることができる。
次に、炭窒化チタン層8の上側部分を構成するHT−炭窒化チタン層を成膜する。本実施態様によれば、HT−炭窒化チタン層の具体的な成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜4体積%、窒素(N)ガスを5〜20体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を900〜1050℃、5〜40kPaとして成膜する。
さらに、中間層9を作製する。本実施態様についての具体的な成膜条件は、第1段階として、四塩化チタン(TiCl)ガスを3〜30体積%、メタン(CH)ガスを3〜15体積%、窒素(N)ガスを5〜10体積%、一酸化炭素(CO)ガスを0.5〜1体積%、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜3体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整する。これらの混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を900〜1050℃、5〜40kPaとして成膜する。この工程によって、炭窒化チタン層8の表面に凹凸のある中間層9が成膜される。
続いて、中間層9の第2段階として、四塩化チタン(TiCl)ガスを3〜15体積%、メタン(CH)ガスを3〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜25体積%、一酸化炭素(CO)ガスを0.5〜2.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整する。これらの混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を900〜1050℃、5〜40kPaとして成膜する。なお、本工程は上記窒素(N)ガスをアルゴン(Ar)ガスに変更してもよい。この工程によって、中間層9の表面の凹凸が微細になり、次に成膜される酸化アルミニウム層10中の酸化アルミニウム結晶の成長状態を調整することができる。
そして、酸化アルミニウム層10を成膜する。まず、酸化アルミニウム結晶の核を形成する。三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを5〜10体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.1〜1.0体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.1〜5.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1100℃、5〜10kPaとする。この第1段階の成膜によって、成膜される酸化アルミニウム結晶の成長状態を変え、酸化アルミニウム層10のTc(134)を制御する。
次に、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜5.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを1.5〜5.0体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜1.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1100℃、5〜20kPaに変えて成膜する。この第2段階の成膜工程によって、酸化アルミニウム層10の中間層側に成膜される酸化アルミニウム結晶の成長状態を調整して、基体側Tc(134)を制御する。
続いて、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを5〜15体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜2.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0.0〜1.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1100℃、5〜20kPaに変更して酸化アルミニウム層10を成膜する。この第3段階の成膜工程によって、酸化アルミニウム層10の表面側に成膜される酸化アルミニウム結晶の成長状態を調整して、表面側Tc(134)を制御する。第2段階と第3段階は、独立した工程でなく、混合ガスの組成が連続的に変化するものでもよい。
そして、所望により、表層(TiN層)11を成膜する。具体的な成膜条件は、反応ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を960〜1100℃、10〜85kPaとして成膜する。
その後、所望により、成膜した被覆層6表面の少なくとも切刃部を研磨加工する。この研磨加工により、切刃部が平滑に加工され、被削材の溶着を抑制して、さらに耐欠損性に優れた工具となる。
まず、平均粒径1.2μmの金属コバルト粉末を6質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン粉末を0.5質量%、平均粒径2.0μmの炭化ニオブ粉末を5質量%、残部が平均粒径1.5μmのタングステンカーバイト粉末の割合で添加、混合し、プレス成形により工具形状(CNMG120408)に成形した。その後、脱バインダ処理を施し、1500℃、0.01Paの真空中において、1時間焼成して超硬合金からなる基体を作製した。その後、作製した基体にブラシ加工をし、切刃となる部分にRホーニングを施した。
次に、上記超硬合金の基体に対して、化学気相蒸着(CVD)法により、表1の成膜条件で被覆層を成膜して、切削工具を作製した。表1、2において、各化合物は化学記号で表記した。
上記試料について、まず、逃げ面の平坦面において、被覆層に対して研磨することなく、CuKα線によるX線回折分析を行い、任意3箇所で、酸化アルミニウム層の表面側から測定した表面側ピーク(表中、表面側または表面側ピークと記載)の同定と、各ピークのピーク強度を測定した。また、表面側ピークについて、最も強度の高いピークと2番目に強度の高いピークとを確認するとともに、JCPDSカードの各結晶面の配向係数Tcを算出した。
次に、酸化アルミニウム層の厚みの10〜40%の厚みとなるまで研磨し、同様にX線回折分析によって、酸化アルミニウム層の一部を研磨して基体側部分のみを残した状態で測定した基体側ピーク(表中、基体側と記載)の同定と、各ピークのピーク強度を測定した。得られた各ピークのピーク強度を用いて、各結晶面の配向係数Tcを算出した。また、上記工具の破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、各層の厚みを測定した。結果は表2、3に示した。
次に、得られた切削工具を用いて、下記の条件において、連続切削試験及び断続切削試験を行い、耐摩耗性及び耐欠損性を評価した。結果は表4に示した。
(連続切削条件)
被削材 :クロムモリブデン鋼材(SCM435)
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:1.5mm
切削時間:25分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:走査型電子顕微鏡にて刃先ホーニング部分を観察し、実際に摩耗している部分において、逃げ面におけるフランク摩耗幅と、すくい面におけるクレータ摩耗幅を測定。(断続切削条件)
被削材 :クロムモリブデン鋼 4本溝入り鋼材(SCM440)
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:1.5mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数を測定。
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表1〜5の結果によれば、酸化アルミニウム層の表面側ピークのTc(134)が0.7未満の試料No.6〜8は、いずれも、摩耗の進行が早く、かつ酸化アルミニウム層が衝撃によって剥離しやすく、衝撃回数が少ないものであった。
一方、酸化アルミニウム層の表面側ピークのTc(134)が0.7以上の試料No.1〜5においては、酸化アルミニウム層の微小チッピングが抑制されるとともに、剥離もほとんど発生せず、衝撃回数が多かった。試料No.1〜5のTc’(134)はいずれも1.1〜2.0であり、(134)面に配向する傾向にあることがわかった。
また、基体側Tc(134)が表面側Tc(134)よりも小さい試料No.1〜4は、試料No.5に比べてクレータ摩耗幅がより小さかった。さらに、酸化アルミニウム層の表面側ピークにおいて、(104)面と(116)面とが、1番目と2番目に高いピークからなる試料No.1〜3は、試料No.4、5に比べてクレータ摩耗幅がより小さかった。
1・・・切削工具
2・・・すくい面
3・・・逃げ面
4・・・切刃
5・・・基体
6・・・被覆層
7・・・下地層
8・・・炭窒化チタン層
8a・・・MT−炭窒化チタン層
8b・・・HT−炭窒化チタン層
9・・・中間層
9a・・・下部中間層
9b・・・上部中間層
10・・酸化アルミニウム層
11・・・表層

Claims (3)

  1. 基体表面に、少なくとも炭窒化チタン層とα型結晶構造の酸化アルミニウム層とを順に積層した被覆工具であって、前記酸化アルミニウム層についてのX線回折分析において、前記酸化アルミニウム層の表面側からの測定で検出される表面側ピークの下記一般式Tc(hkl)で表される表面側の配向係数Tc(134)が0.7以上である被覆工具。
    配向係数Tc(hkl)={I(hkl)/I(hkl)}/〔(1/8)×Σ{I(HKL)/I(HKL)}〕
    ここで、(HKL)は、(012)、(104)、(110)、(006)、(113)、(024)、(116)、(134)の結晶面
    I(HKL)およびI(hkl)は、前記酸化アルミニウム層のX線回折分析において検出される各結晶面に帰属されるピークのピーク強度
    (HKL)およびI(hkl)は、JCPDSカードNo.00−010−0173に記載された各結晶面の標準回折強度
  2. 前記酸化アルミニウム層の一部を研磨して、前記酸化アルミニウム層の基体側部分のみを残した状態での測定で検出される基体側ピークと、前記酸化アルミニウム層の表面側からの測定で検出される表面側ピークとを比較したとき、前記基体側ピークにおける基体側の配向係数Tc(134)が、前記表面側ピークにおける前記表面側の配向係数Tc(134)よりも小さい請求項1に記載の被覆工具。
  3. 前記表面側ピークにおいて、I(104)とI(116)とが、一番目と二番目に高い請求項1または2に記載の被覆工具。
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