JP2016152743A - 電動機の固定子、電動機 - Google Patents

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知子 従野
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憲司 近藤
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Yasushi Echizen
安司 越前
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浩勝 国友
誠治 黒住
Seiji Kurozumi
誠治 黒住
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Abstract

【課題】略整列状態に積層された高占積率な絶縁電線の巻装体を提供し、かつ、占積率の向上に伴って生じるセグメントコアのティース部の応力歪の低減を図ること。
【解決手段】セグメントコア1の周辺に巻回される絶縁電線5との絶縁性を更に高めるためのインシュレータ8で被覆されている。このインシュレータ8は、絶縁電線5との絶縁性を保つだけではなく、絶縁電線5の巻装体をプレスする際に、絶縁電線5の巻装体の最下層一層目と接するインシュレータ8の底部の内壁面側が凹み、インシュレータ8の底部の内壁面に接する絶縁電線5の巻装体の最下層一層目の下側の略半円部は変形しない構成を図っている。仮想境界面10の範囲内に絶縁電線5の巻装体を収容する。
【選択図】図5

Description

本発明は、電動機の固定子に関し、特に固定子の巻装体の高占積率化に関する。
電動機の固定子コアへ絶縁電線を巻装して巻装体である固定子巻線を構成し、この固定子巻線への交番電流の通電によって回転磁界を発生する。電動機の回転子は、この回転磁界に対しての吸引反発力によって回転運動を得ている。電動機は、技術開発の課題の一つとして高出力化・高効率化がある。例えば、電動機の固定子の体格を維持したままより多くの絶縁電線を電動機の固定子へ巻装することなど、様々な取り組みが従来から永続的に為されている。
周知のとおり、電動機の固定子に設ける絶縁電線の巻装部(以降、スロットと呼ぶ)においては、絶縁電線の巻装状態の疎密度の良否を、占積率と呼称する指標にて評価される。占積率とは、巻装された絶縁電線の導体部の総面積を、スロットの幅寸法と、この幅寸法の方向に略直交する方向の寸法等との積で示される略四角形状又は不等辺四角形状の面積(スロット面積、巻枠面積などとも呼称する)にて除した値を百分率にて表すことが多い。
ちなみに、上記の占積率は、いかなる場合でも100%には達しない。なぜならば、絶縁電線は絶縁性を要するため絶縁体にて被覆された絶縁層を具備するからである。例えば、正方形断面の導体を整列巻きとして巻装し、かつ、この巻装した絶縁電線によってスロット面積を全て満たしても占積率は100%を下回る。この場合の占積率の算出では、つぎのように絶縁電線の断面の絶縁層の影響を加味する。
絶縁層の断面の面積と、巻装した絶縁電線の巻数とを乗じて絶縁層の総面積を算出し、絶縁層を含む絶縁電線の断面積の総面積から絶縁層の総面積を減じて得られる絶縁電線の導体部の総面積を、スロット面積で除した値が占積率である。当然、その占積率は、100%を下回る。
さて、占積率を高めようとしても、その阻害要因は上記以外にも多々存在する。例えば、絶縁電線の断面形状に起因するものがある。円形断面の絶縁電線を整列巻きとしても、隣接する絶縁電線間には円弧の接触部以外では隙間空間が生じる。そのため絶縁電線の導体部の総面積を増すことが出来ず、占積率の向上には限界がある。
ちなみに、絶縁電線の絶縁層の厚みを、絶縁電線の導体部の直径に係らず一定とした場合には、絶縁電線の導体部の直径が小さいものほど、絶縁電線の絶縁層の総面積が全体に占める割合が大きく、占積率向上の妨げとなる。
また、絶縁電線の整列巻きは常に安定的に得られるものではない。巻装工程における絶縁電線の挙動の制御は難しく、整列巻きを得るべく絶縁電線の巻装工程の調整に注力しても意図しないカオス現象的挙動が絶縁電線の巻き回し動作に生じる。その結果、絶縁電線は非整列巻きに仕上がる。この非整列巻きは、現場的表現では、団子巻き、みだれ巻き、などと呼称されるもので、隣り合う絶縁電線の間に過剰なデッドスペースを有した巻装状態に仕上がる。このように、隣り合う絶縁電線との間に意図しないデッドスペースが生じるために絶縁電線の導体部の総面積を増すことが出来ず、占積率は低下することとなる。
さて、占積率を高める方法としては、正方形・長方形・正六角形等の断面の角型断面絶
縁電線によって整列巻きを得ようとするのが、従来から一般的なものである。しかし、この方法も、実現性は乏しく、限られた用途においてのみの実用化に止まる。
例えば、スピーカーのボイスコイルの巻装などは代表的事例である。スピーカーのボイスコイルなどのように、円筒状のソレノイドコイルでは、角型断面の絶縁電線に捩れを生じさせない工夫を巻装工程で採用することで、整列巻きは実現可能である。しかし、なお、スピーカーのボイスコイルにおける実例の多くは、角型断面の絶縁電線では無く、円形断面の汎用的な絶縁電線による整列巻きが大多数を占める。
上記のスピーカーのボイスコイルの実例から解るように、正方形・長方形・正六角形等の断面の角型断面の絶縁電線によって整列巻きを得ようとするには、角型断面の絶縁電線に捩れを起こさせないことが要点となる。絶縁電線の巻回し時に、絶縁電線に捩れが生じ無ければ、絶縁電線は整列状態に積層される。
しかし、例えば、一層目が整列状態に巻装された後、何らかの要因によって絶縁電線に45度程度の捩れが起きて、二層目が巻装されると角型断面の絶縁電線の鋭角部が、一層目の平坦面と接することとなりデッドスペースが生じる。また、二層目の角型断面の絶縁電線どうしでもデッドスペースが生じることとなる。実際には、円筒状のソレノイドコイル以外の異型状のソレノイドコイルの巻装工程において、絶縁電線に捩れ生じさせないように絶縁電線の巻き回し動作を行うことは難しく、角型断面の絶縁電線による整列巻きは容易ではない。
さて、絶縁電線を巻装する巻装体を含む構成としては、電動機もその代表的なものである。電動機の課題の一つには、上記の冒頭部でも述べたとおり、電動機の体格を維持したまま電動機の出力の更なる高出力化や、電動機の体格を小型化しつつ、電動機の出力は維持するといった取り組みが継続的に為されている。電動機の分野においても、上述の占積率の向上が有効であり、この占積率を高めるための研究開発は継続的に盛んである。
周知のとおり、電動機の性能は、電動機の固定子に絶縁電線が巻装された固定子の様態に影響される。固定子の性能向上の一つとしては、絶縁電線に通電させる電流値の大電流化と、電動機の固定子のスロット内に巻装する絶縁電線の占める割合を高めることが有効である。また、回転子に対向して配置される、電動機の固定子は、絶縁電線の巻装工法の生産性追求等の理由から、リング状の固定子コアを所定角度にて分割したセグメントコアに絶縁電線を巻装した後に、このセグメントコアを円環状に組み立てて構成した固定子を採用するケースが多い。
また、セグメントコアに絶縁電線を巻装する場合には、セグメントコアのスロット部を絶縁性樹脂の成型体によるインシュレータ又は絶縁紙などで被覆し、このインシュレータ又は絶縁紙の外周に絶縁電線を巻装する。
さて、特許文献1などには、占積率を高めることを課題とし、固定子のセグメントコアに絶縁電線を巻装することに関して、断面形状を六角形とする絶縁電線にて整列巻きを行い、整列巻きの絶縁電線の巻装断面のパターンを亀甲状とする様態と、断面形状を四角形とする絶縁電線にて整列巻きを行いこの整列巻きの絶縁電線の巻装断面のパターンを四半目地状とする様態との二つの事例に関しての記述がある。なお、特許文献1であるが、日本特許庁の審査最終処分種にてA09と示される。公知技術の一例として例示するものである。
例示の特許文献1の技術ついて、さらに考察する。特許文献1の記述及びその図面から、円形断面の絶縁電線をセグメントコアに巻装する直前の工程にて、円形断面の絶縁電線
を六角形又は四角形の断面形状に成型してその直後に、セグメントコアに絶縁電線を巻装することが読み取れる。
このようにすることで、正方形・正六角形などの断面の角型断面の絶縁電線に捩れを生じさせないうちに、セグメントコアに絶縁電線を巻装することが可能となり、ほぼ理想的な巻装状態の整列巻を得るという、格別な作用効果も伴っている。なお、特許文献1の記述には、絶縁電線の捩れに関する記述は一切無いが、当業者であれば自明のことであり、容易に考察し得る。
ちなみに、円形断面の絶縁電線においては、絶縁電線に多少の捩れが生じても外観の変化による判別は難しい。円形断面のロープやワイヤーなどに多少の捩れが生じても判らないことと同じ理由である。したがって、角型断面の絶縁電線に比べて、円形断面の絶縁電線の方が、巻装時の絶縁電線の捩れによるデッドスペースの発生は少ないものと推測される。
なお、円形断面の絶縁電線、角型断面の絶縁電線のいずれも過度な捩れが生じると、絶縁電線の途中部分に輪ができた状態が発生し、この輪ができた状態のまま絶縁電線に張力を与えて引っ張ると、ひもの結び目のようなものが出来上がる。この結び目を当業者ではキンク(kink of wire)と呼称している。そして、絶縁電線にキンクが生じると、このキンクの発生箇所にて絶縁電線の絶縁皮膜の剥離や、断線などの不具合が考察される。図7は、絶縁電線のキンクを示す概要図である。
なお、角型断面の絶縁電線の場合には、僅かな絶縁電線の捩れでも顕著に判別可能である。その理由は、角型断面の絶縁電線の角部の稜線が直線状の様態を示さず、蛇行や旋回を示すために絶縁電線の捩れが容易に判別し得るものであり、視認も可能である。
つぎに、公知技術の一例として、特許文献2を例示する。なお、特許文献2であるが、日本特許庁の審査最終処分種にてA02と示されるものである。特許文献2にも、占積率を高めることを課題の一つとして、円形断面の導体線及びその導体線を被覆する絶縁層を有する絶縁被覆電線を、セグメントコア上に巻回して巻装体を形成する巻回工程と、上記の巻装体をセグメントコア側に押圧変形させる押圧工程を有する分割ステータの製造方法に関して、上記の押圧工程が、円形断面の絶縁被覆電線を、160℃以上かつ絶縁層の融点未満の温度範囲に加熱した後、同範囲内に温度を保ちながら行われることが記されている。
そして、特許文献2及びその図面には、インシュレータにて覆った固定子のセグメントコアに円形断面の絶縁電線を整列状に巻装し、巻装を終えた後に絶縁電線の巻装体をフラットパンチにて押圧して、絶縁電線同士の間の隙間を埋めるように絶縁電線を押圧変形させる様態が記されている。
特許文献2に記載の図面からは、押圧変形された絶縁電線の巻装体の断面が、最上層の一層目及び最下層の一層目が略ホームベース型の不等辺五角形に成形され、最上層の一層目及び最下層の一層目を除く中間層が、略六角形に成形され亀甲状に積層された様態が見て取れる。また、最下層の一層目はインシュレータの底部の形状及びセグメントコアのティース部の形状をテラス状(段々畑状)にして、絶縁電線の巻装数の増加と、巻装体へのフラットパンチによる押圧変形を良好なものとする工夫が為されていることが見て取れる。
更に、公知技術の一例として、特許文献3を例示する。なお、特許文献3であるが、日本特許庁の審査最終処分種にてA04と示されるものである。特許文献3にも、占積率を
高めることを課題の一つとして、固定子のセグメントコアに円形断面の絶縁電線を整列状に巻装し、一旦、巻装を終えた後に絶縁電線の巻装体をポンチにて押圧して、絶縁電線同士の間の隙間を埋めるように絶縁電線を押圧変形させる様態が記されている。絶縁電線の断面形状は六角形に近い形状に塑性変形する旨のことが記されている。
そして、特許文献3には、第1段階の工程として、絶縁電線を平積み状態に巻装した後に、巻装体に対して平坦面を有するポンチにて押圧して、絶縁電線同士の間の隙間を埋めるように絶縁電線を押圧変形させる。この後の工程として、第2段階の工程として、巻装体の最上層に絶縁電線をテラス状(段々畑状)に巻装した後に、巻装体の最上層に絶縁電線を、テラス状(段々畑状)の押圧面を有するポンチにて押圧して、絶縁電線同士の間の隙間を埋めるように絶縁電線を押圧変形させる。このようにして、巻装体全体の絶縁電線のうち大部分の断面形状を六角形に近い形状に塑性変形させる。なお、巻装体の最上層及び最下層の絶縁電線の断面についての記述は見て取れないが、略ホームベース型の不等辺五角形に成形されるものと考察する。
上述のとおり、特許文献1〜3などに記された公知技術は、絶縁電線の断面形状を六角形等に変形させて巻装体の占積率を高めることであり、広く知られている。一方、これらの公知技術を凌駕する新規な工夫による高占積率化は、恒に希求されるところである。
特開2009−38905号公報 特開2008−306816号公報 特開2007−82268号公報
本発明の電動機の固定子においても、絶縁電線の巻装体のデッドスペースの主要部を絶縁電線の絶縁皮膜が殆どを占め、かつ、略整列状態に積層された絶縁電線の巻装体を提供することを課題とする。すなわち、絶縁電線の巻装体のデッドスペースの主要部には、空孔部や層状の隙間などによる空気層を含まない巻装部品の構成を意図するものである。なお、絶縁電線の巻装体を収容する巻枠のスペースにおいて、巻枠の内壁面と接する絶縁電線との間に不可避的に生じる微小な空孔部の除去は、意図しない。
また、本発明においては、上述の占積率の向上という課題解決に伴って生じるセグメントコアのティース部の応力歪の低減を図る。例えば、円断面の絶縁電線の巻装体に対して平坦面を有する金型等で押圧して、六角形断面の亀甲状に積層された様態とすると、セグメントコアのティース部にも金型等での加圧が伝播し、ティース部には応力歪が生じて、ティース部の電磁鋼板の磁気特性の劣化を招き、ティース部の電磁鋼板の鉄損の増加し、電動機の高効率化の妨げとなる。
上記課題を解決するための第一の発明は、複数のセグメントコアを含む固定子コアと、前記セグメントコアのティース部と前記ティース部の沿面を為す鍔部の内面と前記ティース部の基部側の沿面を為すヨーク部の内面とから構成される巻枠部を覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記巻枠に巻装される絶縁電線からなる巻装体とを含む電動機の固定子において、前記巻装体の最下層一層目の絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最
上層の各テラス状の表層部における絶縁電線の断面形状は、主にホームベース状の不等辺五角形であり、表層側にホームベース状の不等辺五角形の平坦部を配置し、下層側にホームベース状の不等辺五角形の鋭角部を配置する様態を具備する電動機の固定子である。
また、第二の発明は、複数のセグメントコアを含む固定子コアと、前記セグメントコアのティース部と前記ティース部の沿面を為す鍔部の内面と前記ティース部の基部側の沿面を為すヨーク部の内面とから構成される巻枠部を覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記巻枠に巻装される絶縁電線からなる巻装体とを含む電動機の固定子において、前記巻装体の最下層一層目の絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最上層の各テラス状の表層部における絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、表層側に円弧部を配置し、下層側に鋭角部を配置する様態を具備する電動機の固定子である。
また、第三の発明は、第一の発明及び第二の発明の電動機の固定子において、インシュレータの材質には、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーのいずれかを含む。
また、第四の発明は、第一の発明及び第二の発明の電動機の固定子において、インシュレータの材質には、ガラス繊維又は無機充填剤のいずれかを少なくとも含む。
また、第五の発明は、第一の発明及び第二の発明の電動機の固定子において、絶縁電線の絶縁層には、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドのいずれかを含む。
また、第六の発明は、第一の発明及び第二の発明の電動機の固定子を含む電動機である。
本発明の電動機の固定子及び電動機によって、電動機の小型化・高出力化を図ることが可能となる。また、本発明の電動機を搭載する機器も高性能化が促され産業的価値の大いなるものである。
セグメントコアの一例を示す斜視図 絶縁電線の一例を示す断面図 プレス成形の直前の巻層体の概要を示す図 本発明の概要を示す図 本発明の巻装体の押圧後の絶縁電線の断面を示す図 比較例としてのフラットパンチの概要を示す図 絶縁電線のキンクを示す概要図
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態又は実施例によって本発明が限定されるものではない。
図1には、本発明の巻装部品を構成するセグメントコア1の形状を示す。セグメントコア1は、ヨーク部2とティース部3と鍔部4とからなる。セグメントコア1には、電磁鋼板等の磁性体を積層したものを用いている。
また、図2には絶縁電線の断面の一例を示す。絶縁電線5は、導体6と、導体6を絶縁する被膜である絶縁被膜7とで構成されている。なお、絶縁電線5の導体6には、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金などを用いる。また、この銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金などには、微量な不可避不純物及び意図して添加された微量元素を含むものである。
そして、図3などに示すとおり、セグメントコア1は、セグメントコア1の周辺に巻回される絶縁電線5との絶縁性を更に高めるためのインシュレータ8で被覆されている。
このインシュレータ8は、図4に示すように、絶縁電線5との絶縁性を保つだけではなく、絶縁電線5の巻装体をプレスする際に、絶縁電線5の巻装体の最下層一層目と接するインシュレータ8の底部の内壁面側が凹み、インシュレータ8の底部の内壁面に接する絶縁電線5の巻装体の最下層一層目の下側の略半円部は変形しない構成を図っている。
そして、絶縁電線5の巻装体の最下層一層目の下側の略半円部は、インシュレータ8の底部の内壁面にて保持されるため、最下層一層目の絶縁電線の変形に作用する応力の一部を、上層の二層目以上へ分散させる効果を発揮する。
なお、このインシュレータ8の材料には、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマーで高強度とする他、これらの材料の剛性を上げるために、ガラス繊維や無機充填剤などのフィラーを加えた樹脂材料を用いる。
さて、絶縁電線5はティース部3を被覆するインシュレータ8上に巻回され、巻装体が形成される。図1に示されるように、ヨーク部2は鍔部4よりも寸法値の大きい仕様である。図4は、絶縁電線5が巻回され、巻装体が形成された後のセグメントコア1を、セグメントコアが配列される方向の面で切断した場合に見える断面の様態を示す図であり、中心軸面からの片側のみを表す仮想断面図である。
また、図4には、セグメントコア1のティース部3を被覆するインシュレータ8に巻回された絶縁電線5による巻装体を、塑性変形させるためにプレス成形に用いるパンチ9の様態を示す。
パンチ9の形状は、整列巻きを施した絶縁電線5による巻装体の最上層の外形の包絡面に沿う様態とする。絶縁電線5による巻装体は、整列巻きであり、この巻装体の最上層の外形の包絡面は、階段状のいわゆるテラス状(段々畑状)の様態に整えた外形である。パンチ9の形状も、同様にテラス状(段々畑状)の様態とする。なお、このテラス状(段々畑状)の様態については、特許文献3などにて公知の技術である。
なお、図示しないが、パンチ9のテラス状(段々畑状)の様態において、さらに加味する新規な様態として、整列巻きを施した絶縁電線5による巻装体の最上層の断面外形に沿うような凹曲面の溝部を複数列設した様態について説明する。
具体的には、パンチ9の各テラスの平坦面に、絶縁電線5の断面外形に沿うような凹曲面の溝部を複数列設することによって、パンチ9でプレスする際の絶縁電線5の位置のずれや絶縁電線5間のすべりを抑制する作用が得られる。
なお、この新規な様態において、もしも、絶縁電線5による巻装体の最上層の整列巻が不正確で、整列していない場合は、パンチ9の凹曲面溝部の複数列設との相対位置の不整合を生じて、パンチ9の凹曲面溝部の複数列設部の凸状稜線部にて、絶縁電線5を加圧し
、絶縁電線5の断線発生という課題を招くことから、高度な製造技術を要する。
つぎに、図3、図4に示す様態における製造方法の一例を説明する。まず、セグメントコア1のティース部3を被覆する、インシュレータ8による巻枠内に、絶縁電線5による整列巻を施す。整列巻された絶縁電線5の巻装体の最上層の外形は、隣接するセグメントコア1との仮想境界面10を若干超える範囲に留め、巻装体の最上層の外形は、階段状断面のいわゆるテラス状(段々畑)の様態に整えた外形とする。図4は、この巻装体を形成された様子を示す。
なお、仮想境界面10については、図5に明示する。図3及び図4においては、仮想境界面10は、描画せず、省略している。
巻装体が形成された後、この外周面が隣接するセグメントコア1との仮想境界面の内側に位置するまで、セグメントコア1のティース部3の方向であり、インシュレータ8の底部方向にプレスされる。図4は、パンチ9により、巻装体が図中の矢印の方向にプレスされる圧縮工程の様子を示している。
上述の実施例による圧縮工程の後の絶縁電線5の巻装体の様態を、図5を示して説明する。
巻装体の最下層一層目の絶縁電線5の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線5の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最上層の各テラス状の表層部における絶縁電線5の断面形状は、主にホームベース状の不等辺五角形であり、表層側にホームベース状の不等辺五角形の平坦部を配置し、下層側にホームベース状の不等辺五角形の鋭角部を配置する様態を具備する。
また、図示しないが、パンチ9の形状をテラス状(段々畑状)の様態において、各テラスの平坦面に加味する新規な様態の構成として、整列巻きを施した絶縁電線5による巻装体の最上層の絶縁電線5の断面外形に沿うような凹曲面の溝部を予め設けた様態でも良い。パンチ9の各テラスの平坦面に、絶縁電線5の断面外形に沿うような凹曲面の溝部を複数列設した、パンチ9によってプレスした絶縁電線5の巻装体の様態は、下記に記すものとなる。
巻装体の最下層一層目の絶縁電線5の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線5の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最上層の各テラス状の表層部における絶縁電線5の断面形状は、主に団扇形形状であり、表層側に円弧部を配置し、下層側に鋭角部を配置する様態を具備する。
なお、パンチ9によるプレスを過度に行うと、絶縁電線5の巻装体の最下層一層目の断面形状は、ホームベース状の不等辺五角形に似た形状に変形する。このような状態に至るとセグメントコア1のティース部3に応力歪を生じることとなり、セグメントコア1の電磁鋼板の磁気特性の劣化を招き、意図した電動機特性の向上は、得られない。
本発明の実施例においては、セグメントコア1の電磁鋼板の磁気特性の劣化を抑制するために、以下に記す製造工程における工夫を加味する。なお、この工夫は、特許文献2等に記された公知技術と同様のものである。
さて、製造工程における工夫は、上記のインシュレータ8へ絶縁電線5を巻回した後に、巻装体は銅の軟化開始点以上かつ絶縁電線5の絶縁被膜7の分解温度未満の温度で加熱する。加熱方法としては、巻装体を高周波で加熱する方法や絶縁電線5に通電して加熱するなどの方法を採用することができる。
また巻装体を加熱する為、絶縁被膜7にはポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドなど、より耐熱性の高い材料を用いることでより絶縁電線5の加熱温度を高めることができ、加熱温度を上げることでより導体6の銅を軟化しやすくできる。
パンチ9によるプレスは、この加熱中又は加熱後に行われプレスする際には銅の軟化開始点以上かつ絶縁電線5の絶縁被膜7の分解温度未満に保たれている。これにより絶縁電線5が柔らかくなり、小さいプレスの応力で絶縁電線5の断面を塑性変形させ、絶縁電線間の隙間を減少させ占積率を向上することができる。このような工夫の加味によって、プレスの力を小さくすることで、プレスの際に生じるセグメントコア1のティース部3の応力歪を軽減可能である。
図5は、前記のようにしてプレスされた後の様子を示す模式断面図である。隣接するセグメントコア1との仮想境界面10の内側に位置するため、巻装体は、隣接するセグメントコア側面に接しない位置となる。
(比較例)
図6は、比較例として、フラットパンチ11を用いた巻装体の成形の概要を示す。フラットパンチ11による巻装体の成形では、最初に、巻装体の表層の絶縁電線の特定の一部分のみが、フラットパンチ11の平坦な押圧面と接する。図6に示す、着色表示した絶縁電線の部分から押圧変形が生じる。このため、絶縁電線の断面変形が局部的に始まることから、巻装体の絶縁電線の全てが均等に成形されず、巻装体の絶縁電線の断面を全て均一な六角形の亀甲状配列とすることは難しい。
本発明においては、比較例のような巻装体の絶縁電線の不均一な局部的押圧変形は生じず、巻装体の絶縁電線を、より均一な押圧変形とすることが可能であり、品質を高めた電動機の固定子を提供可能とする。
本発明の電動機の固定子及び電動機によって、電動機の小型化・高出力化を図ることが可能となる。また、本発明の電動機を搭載する機器も高性能化が促され産業的価値の大いなるものである。
1 セグメントコア
2 ヨーク部
3 ティース部
4 鍔部
5 絶縁電線
6 導体
7 絶縁被膜
8 インシュレータ
9 パンチ
10 仮想境界面
11 フラットパンチ

Claims (6)

  1. 複数のセグメントコアを含む固定子コアと、前記セグメントコアのティース部と前記ティース部の沿面を為す鍔部の内面と前記ティース部の基部側の沿面を為すヨーク部の内面とから構成される巻枠部を覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記巻枠に巻装される絶縁電線からなる巻装体とを含む電動機の固定子において、
    前記巻装体の最下層一層目の絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最上層の各テラス状の表層部における絶縁電線の断面形状は、主にホームベース状の不等辺五角形であり、表層側にホームベース状の不等辺五角形の平坦部を配置し、下層側にホームベース状の不等辺五角形の鋭角部を配置する様態を具備する電動機の固定子。
  2. 複数のセグメントコアを含む固定子コアと、前記セグメントコアのティース部と前記ティース部の沿面を為す鍔部の内面と前記ティース部の基部側の沿面を為すヨーク部の内面とから構成される巻枠部を覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記巻枠に巻装される絶縁電線からなる巻装体とを含む電動機の固定子において、
    前記巻装体の最下層一層目の絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、下層側に円弧部を配置し、上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最下層二層目から最上層よりも下の層までの絶縁電線の断面形状は、主に六角形断面の亀甲状の配置であり、下層側及び上層側に鋭角部を配置する様態を具備し、巻装体の最上層の各テラス状の表層部における絶縁電線の断面形状は、主に団扇形形状であり、表層側に円弧部を配置し、下層側に鋭角部を配置する様態を具備する電動機の固定子。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動機の固定子において、インシュレータの材質には、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーのいずれかを含む電動機の固定子。
  4. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動機の固定子において、インシュレータの材質には、ガラス繊維又は無機充填剤のいずれかを少なくとも含む電動機の固定子。
  5. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動機の固定子において、絶縁電線の絶縁層には、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドのいずれかを含む電動機の固定子。
  6. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電動機の固定子を含む電動機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018101183A1 (ja) * 2016-12-02 2018-06-07 パナソニックIpマネジメント株式会社 電動機要素、電動機、装置
WO2018105452A1 (ja) * 2016-12-05 2018-06-14 パナソニックIpマネジメント株式会社 電動機要素、電動機、装置
WO2018110372A1 (ja) * 2016-12-15 2018-06-21 パナソニックIpマネジメント株式会社 電動機要素、電動機、装置

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