JP2016147966A - 多孔質フィルム - Google Patents

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俊介 小井土
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裕人 山田
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【課題】連通孔を有する多孔質フィルムであって、製造時の残留有機溶媒が細胞培養時に悪影響を及ぼすものではなく、かつ、比較的均一な孔分布を有する生体親和性ポリマーの多孔質フィルムを提供する。【解決手段】ジメチルスルホキシドに生体親和性ポリマーを溶解させた溶液を基材上に塗布後、溶媒の凍結と抽出によって製造された多孔質フィルム。凍結のみを短時間で行い、その後凍結溶媒を抽出除去することにより、多孔質フィルムの製造に要する時間を大幅に短縮することができる。しかも、抽出溶媒として水を用いることで、作業環境を良好にすると共に溶媒コストを下げ、また、抽出溶媒の多孔質フィルムへの残留の問題も解消することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、厚み方向に連続的な多孔構造を有し、かつ細胞に対して毒性の低い生体親和性ポリマーよりなる多孔質フィルムに関する。
近年、病気や事故によって機能不全に陥った生体組織や細胞の機能回復、新たな細胞の再構築など、生体組織や細胞を再生させるための新たな治療法として、再生医療と呼ばれる医療形態が活性化している。再生医療では、生体組織や細胞の再生のために細胞を培養し、組織を構築した後に、患者の体内へ埋め込むことによって、再生の遅い組織の回復の促進や再生不可能となった細胞の局所的な治療が可能となる。再生医療は、これまでの移植手術や人工臓器とは異なる新たな治療法として注目されている。また、増殖させた細胞は疑似的な臨床試験創薬の薬物動態を知るためのスクリーニング試験にも応用される。
細胞を培養する場合、細胞が安定して付着し、三次元的に増殖するためには、細胞培養のための足場となる材料が必要不可欠となる。この細胞培養のための足場材の要求特性としては、生体親和性、細胞接着性、多孔質性、力学強度などが挙げられる。
細胞培養足場材の要求特性を満たす材料として、コラーゲンやゼラチンなどの天然高分子、ポリ乳酸やポリグリコール酸などの合成高分子及び、ハイドロキシアパタイトやβ‐3リン酸カルシウムなどの無機材料が挙げられる。
細胞培養足場材料の必要特性として重要な事項の一つに、厚み方向に連続的な多孔質構造(以降、連通孔と表記する)を有することが挙げられる。連通孔は、細胞に対して十分量の酸素及び栄養を補給するため、また、二酸化炭素や老廃物を速やかに排出するために重要である。
生体親和性の高いポリ乳酸の多孔化に関して、1,4−ジオキサンにポリ乳酸を溶解させ、その溶液を固化させた後、水で1,4−ジオキサンを抽出することによってポリ乳酸多孔膜を得る方法がある(特許文献1)。また、孔径の微細均一化を目的として界面活性剤を含む1,4−ジオキサンにポリ乳酸を溶解させ、溶液の固化、水による1,4−ジオキサンの抽出による手法も開示されている(特許文献2)。
しかしながら、1,4−ジオキサンは、発癌性の問題があり、得られたポリ乳酸多孔膜中に残存した場合、細胞に対して悪影響を及ぼすことが懸念される。
また、特許文献3には、凍結乾燥法による足場材料の成形技術が開示されているが、やはり溶媒として1,4−ジオキサンを使用していることから、残留1,4−ジオキサンによる問題がある。また、凍結乾燥工程に数時間を要し、目的の構造体を短時間に得ることは難しいという問題もある。
特許文献4には、生体吸収性ポリマーをジメチルスルホキシドに溶解後、凍結乾燥法により空孔を形成させ、その上にさらに濃度の異なる溶液を流し込み、同様に凍結乾燥させることによって、一度目の凍結乾燥時に形成した空孔とは異なるサイズの孔を形成して空孔サイズ分布を制御する手法が開示されている。しかし、この方法は、凍結乾燥を何度も行わなければならず、手順が煩雑であり、また、特許文献3と同様、溶媒の乾燥のための凍結乾燥時間が長いことなど、容易に目的の多孔質構造体を得ることが難しい。
特開2012−120996号公報 特開2013−81910号公報 特開2001−49018号公報 特開2006−68080号公報
本発明の課題は、生体親和性の高いポリマーの多孔質フィルム、特に再生医療分野や創薬開発における薬物動態試験用の細胞培養足場材として適した多孔質フィルムを提供することにある。詳細には、連通孔を有する多孔質フィルムであって、製造時の残留有機溶媒が細胞培養時に悪影響を及ぼすものではなく、かつ、比較的均一な孔分布を有する生体親和性ポリマーの多孔質フィルムを簡便な手法により提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、生体親和性ポリマーのジメチルスルホキシド溶液を基材上に塗布した後、凍結と抽出によりジメチルスルホキシドを除去することにより、煩雑な手順を経ることなく、連通孔を有し、比較的均一な孔分布を有する生体親和性ポリマーの多孔質フィルムを短時間に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の発明によれば、ジメチルスルホキシドを溶媒とする生体親和性ポリマーの混合溶液を基材上に塗布後、該溶媒の凍結と抽出によって製造された多孔質フィルムが提供される。
また、第2の発明によれば、第1の発明において、前記溶媒の残留量が0.1重量%以下であり、かつ、連通孔を有することを特徴とする多孔質フィルムが提供される。
さらに、第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、前記生体親和性ポリマーが脂肪族ポリエステルであることを特徴とする多孔質フィルムが提供される。
また、第4の発明によれば、第3の発明において、前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする多孔質フィルムが提供される。
さらに、第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記溶媒凍結温度が−50〜+15℃であることを特徴とする多孔質フィルムが提供される。
また、第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記溶媒抽出温度が0〜10℃であることを特徴とする多孔質フィルムが提供される。
本発明によれば、煩雑な手順を経ることなく、短時間で、生体親和性ポリマーよりなる多孔質フィルムであって、連通孔を有し、比較的均一な孔分布を有する多孔質フィルムを提供することが可能となる。
即ち、本発明では、前述の特許文献4に記載されるジメチルスルホキシドの凍結乾燥に代えて、溶媒の凍結のみを短時間で行い、その後凍結溶媒を抽出除去することにより、溶媒を除去して多孔質フィルムを製造するに要する時間を大幅に短縮することができる。しかも、抽出溶媒として水を用いることで、作業環境を良好にすると共に溶媒コストを下げ、また、抽出溶媒の多孔質フィルムへの残留の問題も解消することができる。
本発明に係る溶媒の凍結と抽出は、特別な装置を使用することなく、また、煩雑な操作を必要とすることなく、簡便に低コストで実施することができ、従来法に比べて生産性、経済性が大幅に改善される。
このような本発明の多孔質フィルムは、細胞に対する毒性の影響の問題がなく、細胞培養の足場材料、特に再生医療分野や創薬開発における薬物動態試験用の細胞培養足場材として有用である。
実施例1で得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像である。 実施例2で得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像である。 実施例3で得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像である。 比較例1で得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像である。
1.生体親和性ポリマー
本発明の多孔質フィルムは生体親和性ポリマーからなり、好ましくは脂肪族ポリエステルを主成分とする。ここで主成分とは、ポリマー中の成分として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90〜100重量%以上含むことをいう。
脂肪族ポリエステルの代表的なものとして、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびこれらの共重合体などが挙げられる。これらのうち、脂肪族ポリエステルとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンおよびこれらの共重合体が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。特に、汎用かつ安価という理由により、ポリ乳酸であることが好ましい。
ポリ乳酸としては、構造単位がL乳酸であるポリ(L乳酸)、構造単位がD乳酸であるポリ(D乳酸)、構造単位がL乳酸及びD乳酸であるポリ(DL乳酸)、或いはこれらの混合樹脂を用いることができる。また、これらと、α−ヒドロキシカルボン酸やジオール及び/又はジカルボン酸との共重合体を用いることもできる。
ポリ乳酸がL−乳酸(L体)とD−乳酸(D体)との混合樹脂である場合、その比率(モル比)は、L体/D体=98.6/1.4〜88/12の範囲であることが、製膜性の観点から好ましい。
また、ポリ乳酸の重量平均分子量は、5万以上40万以下であるのが好ましく、特に10万以上25万以下であるのがより好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量がこの範囲の下限値以上であれば、好ましい実用物性を得ることができ、上限値以下であれば、溶媒への溶解性、製膜性が良好である。
また、ポリ乳酸のガラス転移温度は、0〜100℃であるのが好ましく、特に50〜70℃であるのがより好ましい。ポリ乳酸のガラス転移温度がこの範囲の下限値以上であれば好ましい実用物性を得ることが可能であり、上限値以下であれば、溶媒への溶解性、製膜性が良好である。
本発明で好ましく使用されるポリ乳酸の代表的なものとしては、Nature Works社製の「Nature Works」等が商業的に入手できるものとして挙げられる。
2.第2成分
本発明の多孔質フィルムは、生体親和性ポリマー以外の第2成分を1種類以上含有するものであっても良い。第2成分としては、生体に悪影響を及ぼすものでなければよく、特に制限はないが、例えばコラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、カゼイン、ケラチン、セリシン、トロンビンなどのタンパク質;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリアミノ酸;ポリガラクチュロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン、デキストラン硫酸、硫酸化セルロース、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルキチン、ガラクトマンナン、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、硫酸化ジェラン、カラヤガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、カードラン、プルラン、セルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、グルコマンナン、キチン、キトサン、キシログルカン、レンチナンなどの糖質;ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールなどのリン脂質;FGF(繊維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮増殖因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、TGF−β(β型形質転換増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、BMP(骨形成因子)などの細胞増殖因子;などが挙げられる。
3.溶媒
次に本発明で用いる溶媒について説明する。
生体親和性ポリマーを溶解させる溶媒として代表的なものとしては、ジメチルスルホキシドやスルホラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。なかでも得られる多孔質フィルムの孔径の観点から、融点が15〜30℃を示す溶媒が好ましく、このような溶媒としては、ジメチルスルホキシドやスルホラン等が該当する。融点が15℃未満の溶媒では得られる多孔質フィルムの孔径が小さく、細胞培養足場材としては好ましくない。特に、得られる多孔質フィルムの孔径、細胞への毒性を考慮するとジメチルスルホキシドが最も好ましいことから、本発明では、溶媒としてジメチルスルホキシドを用いる。
なお、溶媒としてジメチルスルホキシド以外のものを併用する場合、用いる全溶媒中のジメチルスルホキシドの割合は50重量%以上、特に80重量%以上、とりわけ90重量%以上であることが好ましく、溶媒としてジメチルスルホキシドのみを用いることが最も好ましい。
4.多孔質フィルムの製造
本発明における多孔質フィルムは、上記の溶媒を用いた生体親和性ポリマーの混合溶液を基材上に塗布した後、溶媒の凍結と抽出によって得られる。以下、各工程について説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
本発明の多孔質フィルムは好ましくは以下の(I)〜(V)の工程により製造される。
(I)生体親和性ポリマーと溶媒を混合して、混合溶液を調製する工程
(II)前記混合溶液を基材上に塗布し、前記混合溶液の塗布層を形成する塗布工程
(III)前記塗布層を冷却し、溶媒を凍結させる凍結工程
(IV)前記凍結塗布層を水に浸漬させつつ基材を剥離させ、溶媒を抽出除去する溶媒抽出工程
(V)得られた多孔質フィルム中の水分を除去する乾燥工程
<工程(I):混合溶液の調製>
工程(I)では、生体親和性ポリマーと溶媒を混合して混合溶液を調製する。
この混合溶液において、生体親和性ポリマーと溶媒との比率は特に限定はされないが、混合溶液における生体親和性ポリマーの濃度は、溶媒への溶解性、空孔率、空孔サイズの観点から、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。また、得られる多孔質フィルムの強度の観点から、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。
なお、溶媒への生体親和性ポリマーの混合溶解に際しては、必要に応じて加熱を行ってもよい。例えば30〜100℃程度に加熱して1〜5時間程度撹拌することにより、生体親和性ポリマーが十分に均一に溶解した混合溶液を得ることができる。
<工程(II):混合溶液の基材上への塗布>
工程(I)で調製した混合溶液を塗布する基材は、耐熱性及び平滑性に優れるものが好ましい。この観点から、基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリイミド等のフィルムが好ましい。基材フィルムの厚みには特に制限はないが、取り扱い性等の面から25〜500μm程度のものが好ましい。
基材には、混合溶液との親和性を高めるために、表面に親水化処理を施してもよい。親水化処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、親水性モノマーのグラフト処理等が挙げられる。
塗布層の厚みは、最終的に得ようとする多孔質フィルムの厚み、混合溶液の生体親和性ポリマー濃度により異なるが、多孔質フィルム形成後の厚みで1〜200μm程度となるような厚みで塗布することが好ましい。例えば、50〜500μm程度の厚みに塗布することで、厚み1〜200μm程度の多孔質フィルムを得ることができる。薄い多孔質フィルムを得ようとする場合には、塗布層の厚みを薄くすることが簡便な手段であるが、塗布層の厚みが極端に薄いと、均一な厚みの塗布層を得ることができなくなり、均一な厚みの多孔質フィルムを得ることが困難になる。一方、厚い多孔質フィルムを得ようとする場合、塗布層を厚くすることによって可能となるが、厚く塗布しすぎると、溶媒の凍結の際に塗布層の中心まで冷却温度の伝達が十分に行われず、溶媒の均一な結晶化が困難になる。また、溶媒抽出の際に塗布層の中心まで十分に溶媒の抽出が行われず、所望の孔径が得られなくなる場合や、連通孔が得られなくなる可能性がある。
塗布工程における塗布方式としては、必要とする塗布層厚みや塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、等が挙げられる。
<工程(III):溶媒の凍結>
溶媒の凍結は、基材上の塗布層を基材ごと冷却して溶媒を凍結固化することによって実施される(以下、溶媒を凍結させた塗布層を「凍結塗布層」と称す場合がある。)。冷却温度は用いる溶媒の種類によって異なるが、−50〜+15℃が好ましく、−30〜−5℃がより好ましい。
この凍結に要する時間は、通常30秒〜5分程度でよく、凍結乾燥を行う従来法に比べて凍結時間を大幅に短縮することができる。
<工程(IV):溶媒の抽出>
溶媒の抽出は、溶媒が凍結固化された塗布層を基材ごと塗布層が下面となるように水に浮かべ、基材を剥離させた後に、固化している塗布層を水に浸漬させることによって実施される。即ち、基材上の凍結塗布層は、水に接触すると塗布溶媒が一部水に溶解して抽出されることで基材から剥離する。基材から剥離した凍結塗布層は、水よりもわずかではあるが比重が重いことから水中に沈降してゆくため、そのまま水に浸漬させて溶媒の抽出を行うことができる。
溶媒の抽出に用いる水の温度は0〜10℃が好ましく、3〜7℃がより好ましい。水の温度が高すぎると、凍結した溶媒が抽出される前に液体になってしまい、多孔質構造が得られない可能性がある。
<工程(V):水分の除去>
上記の抽出工程(IV)で水中に浸漬させたことによって凍結塗布層の溶媒が抽出除去され、多孔質フィルムが得られる。得られた多孔質フィルムは抽出溶媒の水を含むものであるため、水分を除去するために、乾燥を行う。このときの乾燥温度は30〜90℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
5.多孔質フィルムの物性等
本発明の多孔質フィルムについて、後述の実施例の項に記載される方法で測定された溶媒(この溶媒とは、生体親和性ポリマー混合溶液の調製に用いた溶媒であり、溶媒としてジメチルスルホキシドのみを用いた場合はジメチルスルホキシドが該当する。)の残留量は好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.08重量%以下であり、更に好ましくは0.05重量%以下である。
多孔質フィルムの溶媒残留量が1重量%を超える場合、細胞の培養に悪影響を与える可能性がある。そのため、最終的に得られる多孔質フィルムにおける溶媒残留量は0.1重量%以下であることが好ましい。
多孔質フィルムの溶媒残留量を0.1重量%以下とするには、空孔率の増加、溶媒抽出時間の延長、または数回に分けて溶媒抽出を行えばよい。
また、本発明の多孔質フィルムは、厚み方向に連通孔を有していることが好ましい。この多孔質フィルムを細胞培養足場材と使用した場合、通連孔は細胞への十分な酸素及び栄養を補給に加えて、二酸化炭素や老廃物を速やかに排出するために重要である。通常、ジメチルスルホキシドを溶媒とする生体親和性ポリマーの混合溶液を用いて、前述の工程を経て製造された多孔質フィルムは、このような連通孔を有するものとなる。
本発明の多孔質フィルムに形成される連通孔の孔径、空孔率、及び透気度については特に制限はないが、孔径は10〜1000μm、空孔率は5〜95%で、透気度は1〜10000sec/dL程度であることが好ましい。このような、孔径、空孔率及び透気度の多孔質フィルムを製造するには、生体親和性ポリマーの混合溶液の生体親和性ポリマー濃度や種類、溶媒の種類、凍結温度、抽出温度、抽出溶媒の種類、基材上への塗布厚みを適宜調整すればよい。
即ち、例えば、凍結温度を低くすることにより、溶媒の微細結晶化で溶媒の凍結結晶を小さくし、この溶媒を抽出除去した後の細孔の孔径を小さくすることができ、逆に凍結温度を高くすることで、孔径を大きくすることができる。
また、混合溶媒の生体親和性ポリマー濃度を上げることにより空孔率を小さく、また、透気度を高くすることができ、逆に生体親和性ポリマー濃度を下げることにより空孔率を大きく、透気度を低くすることができる。
また、凍結温度を低くすることにより空孔率を小さく、また、透気度を高くすることができ、逆に凍結温度を高くすることにより空孔率を大きく、透気度を低くすることができる。
なお、孔径、空孔率及び透気度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の多孔質フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に示す測定値及び評価は次のように行った。
<厚み>
厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、多孔質フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
<空孔率>
空孔率は100mm×100mmのサイズに切断した多孔質フィルムのサンプルについて、次式にて算出した。
空孔率(%)=(1−見掛け密度/真比重)×100
<透気度(ガーレ値)>
透気度は、王研式透気度計を用いてJIS P8117(2009年)に準拠して測定した。なお、透気度が99999秒/100mLであるという結果は、王研式透気度計の測定上限に達しており、その値を示すサンプルについては、無多孔質構造であると定義する。透気度が小さいことは、多孔質フィルムの厚み方向に良好な連通孔が形成されていることを示す。
<多孔性評価>
走査型電子顕微鏡(SEM)にて多孔質フィルムの表面部及び断面部を観察した。
表面及び断面のSEM像から比較的均一に孔が形成されている場合は○、孔の形成がまばらであるような場合には×とし、評価を行った。
<孔径>
得られたSEM像から孔サイズを計測し、孔径とした。
<溶媒残留量>
溶媒残留量は多孔質フィルムを150℃にて30分加熱した後ヘッドスペース部をガスクロマトグラフィー分析して残留溶媒量を測定し、多孔質フィルムに対する含有量を算出した。
[実施例1]
ジメチルスルホキシド(ナカライテスク社製)90重量部に、ネイチャーワークス社製のポリ乳酸(商品名:「Nature Works 4060D」、L体/D体:88/12モル%、重量平均分子量(Mw):176000、ガラス転移温度:58℃)を10重量部加え、70℃にてスターラーで3時間程度撹拌し、均一な溶液を塗布液として得た。この溶液を100μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上に厚み300μm程度になるように塗布し、−5℃に設定した冷凍庫内に1分間静置した後、5℃の水に塗布層が水と接するようにして浮かべ、基材フィルムを剥離させた後に、固化している塗布層を水に浸漬させた。その後、水中からフィルムを取り出し、水分を拭き取り、50℃にて30分間乾燥させ、ポリ乳酸多孔質フィルムを得た。このポリ乳酸多孔質フィルムの各評価結果を表1に示す。また、得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像を図1に示した。なお、表1中ジメチルスルホキシドは「DMSO」と記載する。
[実施例2]
冷凍庫内の設定温度を−20℃とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸多孔質フィルムを作成した。このポリ乳酸多孔質フィルムの各評価結果を表1に示す。また、得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像を図2に示した。
[実施例3]
冷凍庫内の設定温度を−35℃とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸多孔質フィルムを作成した。このポリ乳酸多孔質フィルムの各評価結果を表1に示す。また、得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像を図3に示した。
[比較例1]
溶媒としてジメチルスルホキシドの代りに1,4−ジオキサンを用い、冷凍庫内の設定温度を−20℃とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸多孔質フィルムを作成した。このポリ乳酸多孔質フィルムの各評価結果を表1に示す。また、得られたポリ乳酸多孔質フィルムの表面と断面のSEM画像を図4に示した。表1中、1,4−ジオキサンは「1,4−DOX」と記載する。
Figure 2016147966
表1より次のことが明らかである。
実施例1〜3では、連通孔を有するポリ乳酸多孔質フィルムが得られた。加えて、溶媒残留量も1重量%以下の濃度であり、細胞に対する悪影響の懸念が少ない。また、SEM画像から、凍結温度が低いほど、多孔構造はより密な構造を形成しやすくなっていることが確認された。これは、過冷却度の大きい状態ほど溶媒が凍結(結晶化)する際に結晶核が増加し、最終的に形成される結晶サイズが小さくなることに起因していると考えられる。
比較例1において、表面SEM画像では空孔は空いているもののその分布はまばらである。また、断面SEM画像において片面のみ大きな空孔が形成されており、均一な多孔構造が得られなかった。これは1,4−ジオキサンの融点はジメチルスルホキシドよりも低いため、凍結工程から抽出工程へと移行する際、もしくは抽出工程の初期において、溶媒が凍結した状態から融解し、凝集した後に水によって抽出されたためと考えられる。
本発明の生体親和性ポリマーの多孔質フィルムは、特に再生医療分野や創薬開発における薬物動態試験用の細胞培養足場材として有用である。

Claims (6)

  1. ジメチルスルホキシドを溶媒とする生体親和性ポリマーの混合溶液を基材上に塗布後、該溶媒の凍結と抽出によって製造された多孔質フィルム。
  2. 前記溶媒の残留量が0.1重量%以下であり、かつ、連通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質フィルム。
  3. 前記生体親和性ポリマーが脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質フィルム。
  4. 前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であることを特徴とする請求項3に記載の多孔質フィルム。
  5. 前記溶媒凍結温度が−50〜+15℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質フィルム。
  6. 前記溶媒抽出温度が0〜10℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質フィルム。
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