JP2016147960A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに電気自動車部品 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに電気自動車部品 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱によるガス発生量を抑制でき、樹脂組成物あるいはその成形品において優れた耐トラッキング性、機械的強度、金属密着性、キャビティーバランス特性を有する、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた成形品、及び該成形品を備える電気自動車部品の提供。【解決手段】ポリアリーレンスルフィド樹脂と、無機質充填剤、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂から選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を含有する、電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)と、脂肪族アミド化合物とを反応させ、ポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程を含む方法により得られたものであるポリアリレーンスルフィド樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに電気自動車部品に関する。
近年注目されている電気自動車は、高電圧で動作する部品を多く有しており、このような電気自動車部品には樹脂成形品が用いられている。樹脂成形品の用途としては、例えば、樹脂成形品をコイルケースとし、該コイルケース内でイグニッションコイルをエポキシ樹脂組成物等で封止した自動車用イグニッションコイルケース、あるいは、点火プラグとイグニッションコイルとが一体化したディストリビュータレスイグニッションシステム(以下「DLIシステム」と略すことがある。)におけるコイルケースが挙げられる。
このような電気自動車部品には、高電圧下でも発火しにくいように耐トラッキング性が要求されている。また、例えば上述のようなコイルケースについては、エポキシ樹脂又は金属との接着性に優れることが望ましい。
これに対して、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下「PPS樹脂」と略すことがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下「PAS樹脂」と略すことがある。)を含む樹脂組成物を成形加工し、上述のような自動車部品に用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、p−ジクロロベンゼンと、硫化ナトリウム、又は水硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムとを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させる溶液重合により製造することができる(例えば、特許文献2、3参照)。現在市販されているポリフェニレンスルフィド樹脂は、一般にこの方法により生産されている。
しかし、この方法で得られる重合生成物は、一般に、塩化ナトリウムやオリゴマー等の副生成物を含むため、これらを除去するための精製処理が必要とされる。精製処理の工夫によって副生成物を減らす試みが行われている(特許文献4)。
特開2000−103964号公報 米国特許第2,513,188号明細書 米国特許第2,583,941号明細書 特開2010−77347号公報
ところが、従来のポリアリーレンスルフィド樹脂を含む組成物では、成形加工の際などの加熱により発生するガスの量が比較的多い。このため、ガス成分である硫黄原子を含む低分子量化合物と銅などの金属材料とが接触した状態となると、高い電圧が繰り返し印加されることで両者が反応し、トリー(樹枝状の破壊痕跡)を発生させる可能性も高く、それに起因して耐トラッキング性が低下する恐れがあった。特に駆動力にモーターを用いる電気自動車では、発進時にガソリンエンジン並みの駆動エネルギーを必要とするため、リチウムイオン二次電池を備え、バッテリー電圧で100〜400V、さらに昇圧回路が搭載されたものでは650Vもの高電圧で駆動される。高い安全性が要求される自動車分野部品にあって、とりわけ電気自動車用部品では、高電圧、高電流下で作動する部品が多くあるため、鉛蓄電池を用いる従来型の自動車に比べ、さらに高いレベルで異常時の発火防止や、延焼防止性能が求められ、難燃性に優れるだけでなく、発火原因となるトラッキング現象をさらに抑制することが求められていた。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、自動車の電子制御部品のケース部分に使用されることが多く、ケース内の空隙をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などで封止するため、それら樹脂や金属との接着力が強いほど、破壊の起点となりやすい剥離箇所(空隙)が生じ難く、部品寿命の向上に直結するため、耐トラッキング性の向上のみならず、金属との密着性(以下、金属密着性という)や、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂との強い接着性(以下、エポキシ樹脂等接着性という)を兼備することが課題となっていた。
また、特許文献4のようにポリアリーレンスルフィド樹脂の精製工程を改良することでナトリウム量などを低減することによって機械特性は改良し得るものの、ナトリウムは上述のようなトリーの促進や高湿度・高温下での強度維持、エポキシ樹脂などとの反応阻害の観点から悪影響を及ぼす恐れがある為、特許文献4の樹脂組成物あるいはその成形品においては、耐トラッキング、機械的強度、エポキシ接着性、金属密着性、キャビティーバランス等の特性にも未だ改善の余地があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、加熱によるガス発生量を抑制でき、樹脂組成物あるいはその成形品において優れた耐トラッキング性、耐熱水性、機械的強度、エポキシ接着性、金属密着性、キャビティーバランス特性を有する、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた成形品、及び該成形品を備える電気自動車部品を提供することにある。
なお、キャビティーバランスは、複数のキャビティーを有する金型を用いた射出成形により、同時に複数の成形品を成形したときの、各キャビティーの充填度の均一性に関連する。成形材料のキャビティーバランスが十分でないと、一部のキャビティーが十分に充填されないといった成形不良が発生し易くなる傾向がある。
本発明者らは種々の検討を行った結果、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)と脂肪族アミド化合物とを反応させることで得られるポリアリーレンスルフィド樹脂と、無機質充填剤、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の他の成分(以下、単に「前記他の成分」ということがある)とを配合することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、無機質充填剤、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分(以下、単に「前記他の成分」ということがある)と、を含有し、ポリアリーレンスルフィド樹脂が、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリ(アリーレンスルホニウム塩)と、脂肪族アミド化合物とを反応させ、下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程を含む方法により得ることのできるものであり、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルにおいて、2910cm−1〜2930cm−1の範囲に吸収ピークを有するものであることを特徴とする電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
Figure 2016147960
(式中、Rは、直接結合、−Ar−、−Ar−S−又は−Ar−O−を表し、Ar及びArは、官能基を置換基として有してもよいアリーレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルキル基を有していてもよいアリール基を表し、Xは、アニオンを表す。)
Figure 2016147960
(式中、Rは、直接結合、−Ar−、−Ar−S−又は−Ar−O−を表し、Ar及びArは、官能基を置換基として有してもよいアリーレン基を表す。)
本発明によれば、耐トラッキング性、機械的強度、エポキシ接着性、金属密着性、キャビティーバランス、耐熱水性等の特性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品が得られる。また、上記電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を用いることで、加熱によるガス発生量を抑制できる。
また、上記ガスに関しては、発生するガスの量だけでなく質に関しても本発明は優れている。本発明によれば、ポリアリーレンスルフィドの主鎖の末端がアルキル基で封鎖されているため、従来の重合法のように末端がSH等になることはない。このため、重合のメカニズム上、チオフェノールやクロロ化合物等が発生せず、作業環境の改善につながる。
また、ポリアリーレンスルフィドの主鎖の末端がアルキル基であることにより、従来の重合法のようなSHである場合に比べて分極率が低いため、洗浄工程時にガス発生の要因となる成分が除去されやすい。このため、新たな設備導入などのコスト低減に寄与する。
さらに、本発明によれば、樹脂中のナトリウム含有量を顕著に抑制でき、エポキシ接着性や耐熱水性に優れた成形品を作製することができる。
実施例1のPPS樹脂を、FT−IR分光法で測定した赤外吸収スペクトルを表す図である。図中のピーク(矢印)は、メチルスルファニル基(−SMe)の伸縮振動に由来するものである。 比較例1のPPS樹脂を、FT−IR分光法で測定した赤外吸収スペクトルを表す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂は、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)と脂肪族アミド化合物とを反応させることを含む方法により得ることができる。このような方法によれば、フィリップス法をはじめとする従来法に比べ、比較的高分子量の重合体としてポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることができる。
本実施形態に用いられる脂肪族アミド化合物は、例えば、下記一般式(10)で表される化合物で表される。
Figure 2016147960
一般式(10)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、R11とR13は結合して環状構造を形成していてもよい。炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
一般式(10)で表される化合物は、例えば、下記反応式で表されるようにして、いわゆる脱アルキル化剤又は脱アリール化剤として機能すると考えられる。すなわち、前記化合物は、スルホニウム塩の硫黄原子と結合するアルキル基又アリール基を脱アルキル化又は脱アリール化してスルフィド化するように機能し得る。
Figure 2016147960
脂肪族アミド化合物は、芳香族アミド化合物に比べ水への混和性が高く、かつポリアリーレンスルフィド樹脂との相溶性が低いため、反応混合物の水洗によって容易に除去可能である。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂中の脱アルキル化剤又は脱アリール化剤の残存量を低減することができる。その結果、樹脂加工する際などのガス発生を抑制し、ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の品質向上や作業環境の改善、さらには金型のメンテナンス性を向上させることができる。また、脂肪族アミド化合物は、比較的低い分子量の有機化合物の溶解性にも優れることから、当該脂肪族アミド化合物の使用は、反応混合物からポリアリーレンスルフィドのオリゴマー成分を容易に除去することも可能にする。その結果、ガス発生の一因にもなり得る当該オリゴマー成分を当該脂肪族アミド化合物により除去することで、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の品質を相乗的に向上させ得ることができる。
このような脂肪族アミド化合物としては、例えば、ホルムアミド等の1級アミド化合物、β−ラクタム等の2級アミド化合物、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の3級アミド化合物等の前記一般式(10)で表される化合物のほか、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸等の尿素系化合物を用いることができる。脂肪族アミド化合物は、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の溶解性及び水への溶解性の観点から、R12及びR13が脂肪族基である脂肪族3級アミド化合物を含むことが好ましく、中でもN−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
脂肪族アミド化合物は、脱アルキル化剤又は脱アリール化剤として機能するほか、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)に対する溶解性に優れることから反応溶媒として用いることもできる。よって、脂肪族アミド化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の総量に対し、下限が1.00当量以上の範囲であることが好ましく、1.02当量以上の範囲であることがより好ましく、1.05当量以上の範囲であることがさらに好ましい。脂肪族アミド化合物の使用量が、1.00当量以上であれば、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の脱アルキル化又は脱アリール化を充分に行うことができる。一方、上限は100当量以下であることが好ましく、10当量以下であることがより好ましい。反応溶媒として脂肪族アミド化合物のみを用いてもよいし、これとトルエン等の他の溶媒を併用してもよい。
本実施形態に用いられるポリ(アリーレンスルホニウム塩)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有する。
Figure 2016147960
一般式(1)中、Rは、直接結合、−Ar−、−Ar−S−又は−Ar−O−を表し、Ar及びArは、官能基を置換基として有してもよいアリーレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルキル基を置換基として有していてもよいアリール基を表し、Xは、アニオンを表す。
ここで、Xとしては、例えば、スルホネート、カルボキシレート、ハロゲンイオン等のアニオンが挙げられる。Ar及びArは、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン等のアリーレン基であってもよい。Ar及びArは、同一であっても異なってもよいが、好ましくは、同一である。
Ar及びArの結合の態様は特に制限されるものではないが、アリーレン基中、遠い位置で結合するものであることが好ましい。例えば、Ar及びArがフェニレン基である場合、パラ位で結合する単位及びメタ位で結合する単位であることが好ましく、パラ位で結合する単位がより好ましい。パラ位で結合する単位で構成されることにより、樹脂の耐熱性及び結晶性の面で好ましい。
Ar又はArで表されるアリーレン基が官能基を置換基として有する場合、当該官能基は、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基又はスルホ基であることが好ましい。ただし、Ar又はArが置換基を有するアリーレン基である一般式(1)の構成単位の割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶化度及び耐熱性の低下を抑制する観点から、ポリ(アリーレンスルホニウム塩)全体の10質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基や、フェニル、ナフチル、ビフェニル等の構造を有するアリール基が挙げられ、さらに当該アリール基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基を置換基として芳香環上に1〜4個の範囲で有していてもよい。
一般式(1)で表される構成単位を有するポリ(アリーレンスルホニウム塩)は、例えば、芳香族スルホキシドを酸存在下で重合させる方法により得ることができる。
芳香族スルホキシドは、例えば、下記一般式(20)で表される化合物を含む。2つの置換基の置換位置は特に限定されないが、好ましくは2つの置換位置が分子内でできる限り遠い位置にあることが望ましい。好ましい置換位置は、パラ位である。
Figure 2016147960
一般式(20)中、R及びArは、一般式(1)で定義したものと同様であり、R
は、水素原子、Ar−、Ar−S−又はAr−O−を表し、Arは、官能基を
置換基を有してもよいアリール基を表す。
ここで、Arとしては、フェニル、ナフチル、ビフェニル等の構造を有するアリール基が挙げられ、当該アリール基は、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基及びスルホ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を置換基として有していてもよい。
一般式(20)で表される化合物としては、例えば、メチルフェニルスルホキシド、メチル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホキシド等を用いることができる。これらの化合物のうち、メチル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホキシドが好ましい。芳香族スルホキシドは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリ(アリーレンスルホニウム塩)を合成する際に使用する酸は、有機酸、無機酸のいずれも使用することができる。酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、青酸、テトラフルオロほう酸等の非酸素酸;硫酸、リン酸、過塩素酸、臭素鍛、硝酸、炭酸、ホウ酸、モリブデン酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸等の無機オキソ酸;硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロトン残留ヘテロポリ酸塩、モノメチル硫酸、トリフルオロメタン硫酸等の硫酸の部分塩もしくは部分エステル;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸等の1価もしくは多価のカルボン酸;モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン置換カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等の1価もしくは多価のスルホン酸;ベンゼンジスルホン酸ナトリウム等の多価のスルホン酸の部分金属塩;五塩化アンチモン、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛、塩化銅、塩化鉄等のルイス酸などを挙げることができる。これらの酸のうち、反応性の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸の使用が好ましい。これらの酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また本反応は脱水反応のため、脱水剤を併用してもよい。脱水剤としては、例えば、酸化リン、五酸化二リン等のリン酸無水物;ベンゼンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、パラトルエンスルホン酸無水物等のスルホン酸無水物;無水酢酸、無水フルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸等のカルボン酸無水物;無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウムなどを挙げることができる。これらの脱水剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリ(アリーレンスルホニウム塩)を合成する際には、適宜溶媒を使用することができる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、スルホラン、DMSOなどの含硫黄系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係るポリ(アリーレンスルホニウム塩)と脂肪族アミド化合物とを反応させる際の条件は、脱アルキル化又は脱アリール化が適切に進行するように、適宜調整することができる。反応温度は、40〜250℃の範囲であることが好ましく、70〜220℃の範囲であることがより好ましい。
本実施形態の製造方法によれば、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中の脱アルキル化剤又は脱アリール化剤の残存量を低減することが可能である。樹脂中の脱アルキル化剤又は脱アリール化剤の残存量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と脱アルキル化剤又は脱アリール化剤等の他の成分とを含む樹脂の質量を基準として、1000ppm以下の範囲であることが好ましく、700ppm以下の範囲がより好ましく、100ppm以下の範囲であることが更に好ましい。1000ppm以下とすることにより、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の品質に対する実質的な影響を低減できる。本実施形態の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、混在する脱アルキル化剤又は脱アリール化剤等の成分の種類及び含有量に基づいて、他の方法により製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂と区別され得る。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を水、水溶性溶媒又はこれらの混合溶媒で洗浄する工程を更に含んでもよい。このような洗浄工程を含むことにより、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂に含まれる脱アルキル化剤又は脱アリール化剤等の残存量をより確実に低減することができる。
かかる洗浄工程において使用する溶媒は、特に制限されるものではないが、未反応物を溶解させるものであることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、塩酸水溶液、酢酸水溶液、シュウ酸水溶液、硝酸水溶液等の酸性水溶液、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム等の含ハロゲン溶剤などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒のうち、反応試薬の除去及び樹脂のオリゴマー成分の除去の観点から、水、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
本実施形態に係る製造方法によれば、下記一般式(2)で表される構成単位を含み、スルフィド基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂が得られる。
Figure 2016147960
一般式(2)中、R及びArは、一般式(1)で定義したものと同様である。
本実施形態の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィド樹脂のガラス転移温度は、50〜250℃の範囲であることが好ましく、80〜180℃の範囲であることがより好ましい。樹脂のガラス転移温度は、DSC装置により測定される値のことを示す。
本実施形態の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は、100〜400℃の範囲であることが好ましく、150〜300℃の範囲であることがより好ましい。樹脂の融点は、DSC装置により測定される値のことを示す。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂のナトリウム含有量は、300ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。ナトリウム含有量がこのような範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることにより、高温高湿下の強度保持(耐熱水性)やエポキシ接着性等に優れた成形品を作製することができる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂のMtopは、5000〜100000であることが好ましく、10000以上80000以下の範囲であることがより好ましい。また、Mwも同様の範囲である。本明細書において、Mtopはゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるクロマトグラムの検出強度が最大となる点の平均分子量(ピーク分子量)を示し、Mwは重量平均分子量を示す。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の300℃における溶融粘度(V6)は、射出成形時の金型内への充填密度や表面外観の向上の観点から、好ましくは1〜2000[Pa・s]の範囲、より好ましくは5〜1700[Pa・s]の範囲である。ここで、溶融粘度(V6)は、フローテスターを用いて、温度300℃、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との比(オリフィス長/オリフィス径)が10/1であるオリフィスを使用して6分間保持した後の溶融粘度を意味する。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂は、FT−IR分光法で測定した場合のFT−IRスペクトル(赤外吸収スペクトル)において、2910cm−1〜2930cm−1の範囲に吸収ピークを有するものであり、これにより、低分子量体成分の溶剤に対する溶解性が良好である為、前述の洗浄プロセスで除かれやすく、発生ガス量が少ないポリマーとなる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の加熱時のガス発生量は、0.2質量%以下の範囲とすることができ、好ましくは0.15質量%以下の範囲とすることができる。加熱時のガス発生量を抑制することができることにより、作業環境の改善等に寄与することができる。さらに、成形時に金型の汚れを抑えることができ、生産性が向上する。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、1種又は2種以上の無機質充填剤を含有することができる。無機充填材が配合されることにより、高剛性、高耐熱安定性の組成物が得られる。無機充填材としては、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ及び酸化チタン等の粉末状充填材、タルク及びマイカ等の板状充填材、ガラスビーズ、シリカビーズ及びガラスバルーン等の粒状充填材、ガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイト繊維等の繊維状充填材、並びにガラスフレークが挙げられる。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブラック、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機質充填剤を含有することが特に好ましい。
無機充填材の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部の範囲であり、より好ましくは5〜200質量部の範囲であり、更に好ましくは15〜150質量部の範囲である。無機質充填剤の含有量がこれらの範囲にあることにより、成形品の機械的強度保持の点でより優れた効果が得られる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、エラストマー、及び架橋性樹脂から選ばれる、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の樹脂を含有することができる。これら樹脂は、無機質充填剤とともに樹脂組成物中に配合することもできる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、シリコーン樹脂、及び液晶ポリマー(液晶ポリエステル等)が挙げられる。
ポリアミドは、アミド結合(−NHCO−)を有するポリマーである。ポリアミド樹脂としては、例えば、(i)ジアミンとジカルボン酸の重縮合から得られるポリマー、(ii)アミノカルボン酸の重縮合から得られるポリマー、及び(iii)ラクタムの開環重合から得られるポリマー等が挙げられる。ポリアミドは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミドを得るためのジアミンの例としては、脂肪族系ジアミン、芳香族系ジアミン、及び脂環族系ジアミン類が挙げられる。脂肪族系ジアミンとしては、直鎖状又は側鎖を有する炭素数3〜18のジアミンが好ましい。好適な脂肪族系ジアミンの例としては、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカンメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカメチレンジアミン、1,14−テトラデカメチレンジアミン、1,15−ペンタデカメチレンジアミン、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,17−ヘプタデカメチレンジアミン、1,18−オクタデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族系ジアミンとしては、フェニレン基を有する炭素数6〜27のジアミンが好ましい。好適な芳香族系ジアミンの例としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジ(m−アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、4,4'−ジ(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、ベンジジン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、及び2,2'−ジメチルベンジジンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環族系ジアミンとしては、シクロヘキシレン基を有する炭素数4〜15のジアミンが好ましい。好適な脂環族系ジアミンの例としては、4,4'−ジアミノ−ジシクロヘキシレンメタン、4,4'−ジアミノ−ジシクロヘキシレンプロパン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジシクロヘキシレンメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、及びピペラジンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミドを得るためのジカルボン酸としては、脂肪族系ジカルボン酸、芳香族系ジカルボン酸、及び脂環族系ジカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族系ジカルボン酸としては、炭素原子数2〜18の飽和又は不飽和のジカルボン酸が好ましい。好適な脂肪族系ジカルボン酸の例としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、プラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、マレイン酸、及びフマル酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族系ジカルボン酸としては、フェニレン基を有する炭素数8〜15のジカルボン酸が好ましい。好適な芳香族系ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4'−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、及び1,4−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の多価カルボン酸を、溶融成形可能な範囲内で用いることもできる。
アミノカルボン酸としては、炭素数4〜18のアミノカルボン酸が好ましい。好適なアミノカルボン酸の例としては、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、及び18−アミノオクタデカン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミドを得るためのラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ζ−エナントラクタム、及びη−カプリルラクタムが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましいポリアミドの原料の組み合わせとしては、ε−カプロラクタム(ナイロン6)、1,6−ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン6,6)、1,4−テトラメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン4,6)、1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム、1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、1,9−ノナメチレンジアミン/テレフタル酸、1,9−ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム、1,9−ノナメチレンジアミン/1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、及びm−キシリレンジアミン/アジピン酸が挙げられる。これらの中でも、1,4−テトラメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン4,6)、1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム、1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、1,9−ノナメチレンジアミン/テレフタル酸、1,9−ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム、又は1,9−ノナメチレンジアミン/1,6−ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸から得られるリアミド樹脂が更に好ましい。
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部の範囲であり、より好ましくは3〜100質量部の範囲であり、更に好ましくは5〜45質量部の範囲である。ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量がこれらの範囲にあることにより、耐熱性及び機械的物性の更なる向上という効果が得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合されるエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーが用いられることが多い。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマー及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。なお、本明細書において、熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性樹脂ではなくエラストマーに分類される。
エラストマー(特に熱可塑性エラストマー)は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基と反応し得る官能基を有することが好ましい。これにより、接着性及び耐衝撃性等の点で特に優れ、また加熱によるガス発生量を抑制できる樹脂組成物を得ることができる。係る官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、オキサゾリン基、及び、式:R(CO)O(CO)−又はR(CO)O−(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)で表される基が挙げられる。係る官能基を有する熱可塑性エラストマーは、例えば、α−オレフィンと前記官能基を有するビニル重合性化合物との共重合により得ることができる。α−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン及びブテン−1等の炭素数2〜8のα−オレフィン類が挙げられる。前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等のα、β−不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその他の炭素数4〜10のα、β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体(モノ若しくはジエステル、及びその酸無水物等)、並びにグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基、カルボキシル基、及び、式:R(CO)O(CO)−又はR(CO)O−(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−ブテン共重合体が、靭性及び耐衝撃性の向上の点から好ましい。
エラストマーの含有量は、その種類、用途により異なるため一概に規定することはできないが、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して好ましくは1〜300質量部の範囲であり、より好ましくは3〜100質量部の範囲であり、更に好ましくは5〜45質量部の範囲である。エラストマーの含有量がこれらの範囲にあることにより、成形品の耐熱性、靭性の確保の点でより一層優れた効果が得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される架橋性樹脂は、2以上の架橋性官能基を有する。架橋性官能基としては、エポキシ基、フェノール性水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、及びイソシアネート基などが挙げられる。架橋性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。芳香族系エポキシ樹脂は、ハロゲン基又は水酸基等を有していてもよい。好適な芳香族系エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの芳香族系エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら芳香族系エポキシ樹脂の中でも特に、他の樹脂成分との相溶性に優れる点から、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
架橋性樹脂の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部の範囲であり、より好ましくは3〜100質量部の範囲であり、更に好ましくは5〜30質量部の範囲である。架橋性樹脂の含有量がこれら範囲にあることにより、成形品の剛性及び耐熱性の向上という効果が特に顕著に得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基と反応し得る官能基を有するシラン化合物を含有することができる。これにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂と他の成分との相溶性を向上し、また、加熱によるガス発生量を抑制できる樹脂組成物を得ることができる。係るシラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
シラン化合物の含有量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.1〜5質量部の範囲であることがより好ましい。シラン化合物の含有量がこれらの範囲にあることにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂と前記他の成分との相溶性向上という効果が得られる。
本実勢形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤及び滑剤等のその他の添加剤を含有してもよい。添加剤の含有量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、1〜10質量部の範囲であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記方法により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、前記他の成分とを溶融混練する方法により、例えば、ペレット状のコンパウンド等の形態で得ることができる。溶融混錬の温度は、例えば、250〜350℃の範囲であることが好ましく、さらに290〜330℃の範囲であることがより好ましい。溶融混錬は、2軸押出機等を用いて行うことができる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、単独で又は前記他の成分などの材料と組み合わせて、射出成形、押出成形、圧縮成形及びブロー成形のような各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形品に加工することができる。本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、加熱されたときのガス発生量が少ないことから、高品質の成形品の容易な製造を可能にする。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を電気自動車部品に用いると、加熱によるガス発生量を低減させることができる。このため、ガス成分である硫黄原子を含む低分子量化合物と銅などの金属材料との接触を低減でき、その結果、高い電圧が繰り返し印加された場合であっても両者の反応を抑制でき、トリー(樹枝状の破壊痕跡)の発生や進展を抑制して、耐トラッキング性を向上させることが可能となる。
このように、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、とりわけ高い安全性が要求される電気自動車分野、すなわち、リチウムイオン二次電池を備え、電気モーターを動力源とする、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)等に好適に用いることができる。したがって、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形して得られる電気自動車部品の具体例としては、例えば、パワーモジュール、コンバータ、コンデンサー、インシュレーター、モーター端子台、バッテリー、電動コンプレッサー、バッテリー電流センサー、ジャンクションブロック等を収納するケースが挙げられる。該成形品は、特にDLIシステムのイグニッションコイル用ケースとして好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に示す実施例では、下記の試薬を使用した。
メチルフェニルスルホキシド:東京化成工業(株)製、純度98%
チオアニソール:和光純薬工業(株)製、純度99%
メタンスルホン酸:和光純薬工業(株)製、和光特級
60%過塩素酸:和光純薬工業(株)製、和光一級
ピリジン:和光純薬工業(株)製、試薬特級
炭酸水素カリウム:和光純薬工業(株)製、試薬特級
臭素:和光純薬工業(株)製、試薬特級
トリフルオロメタンスルホン酸:和光純薬工業(株)製、和光特級
キノリン:和光純薬工業(株)製、試薬特級
N−メチルピロリドン:和光純薬工業(株)製、和光一級
1.モノマーの評価法
1−1.同定方法(H−NMR、13C−NMR)
BRUKER製DPX−400の装置にて、各種重溶剤に溶解させて測定した。
2.モノマーの合成
(過塩素酸メチルフェニル[4−(メチルチオ)フェニル]スルホニウムの合成)
Figure 2016147960
3Lの3つ口フラスコに、メチルフェニルスルホキシド70.0[g]とチオアニソール62.0[g]を入れて、窒素雰囲気下、氷浴で5℃以下に冷却した。メタンスルホン酸1[L]を10℃以下に保って、反応溶液に加えた。その後氷浴を外して、室温に温度を上げ、20時間攪拌した。次に、攪拌後の反応溶液を、60%過塩素酸水溶液2[L]に投入し、1時間攪拌した。水1[L]及びジクロロメタン1[L]加えて、抽出/分液操作により、有機層を回収した。さらに水層にジクロロメタン500[mL]を加えて、有機層を回収する操作を2回行った。回収した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。脱水後、ろ過によって硫酸マグネシウムをろ別し、ロータリーエバポレーターでろ液を濃縮し、溶媒を除去した。残った粘調性固体にエーテルを加えて結晶化させた。結晶物をろ過によってろ別し、得られた固体を20時間減圧乾燥させることで、過塩素酸メチルフェニル[4−(メチルチオ)フェニル]スルホニウム130.0[g](収率75%)を得た。H−NMR測定により、目的物が合成されたことを確認した。
H−NMR(溶媒CDCl):2.49,3.63,7.40,7.65,7.78.7.85[ppm]
(メチル−4−(フェニルチオ)フェニルスルフィドの合成)
Figure 2016147960
2Lの3つ口フラスコに、過塩素酸メチルフェニル[4−(メチルチオ)フェニル]スルホニウム100.0[g]を入れて、窒素雰囲気下、ピリジン500[mL]を添加して30分攪拌した。その後、100[℃]に昇温し、30分攪拌した。反応溶液を3[L]の10%HCl溶液に投入して、10分攪拌し、ジクロロメタンで抽出/分液操作により有機層を回収した。回収した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。ろ過によって硫酸マグネシウムをろ別し、ロータリーエバポレーターでろ液を濃縮し、溶媒を除去した。ヘキサン/クロロホルム=3/1(体積比)の展開溶媒を用いて、カラムクロマトグラフィーにより、目的成分を回収し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。
得られた液体を20時間減圧乾燥することで、メチル4−(フェニルチオ)フェニルスルフィド55.5[g](収率83%)を得た。H−NMR測定により、目的物が合成されたことを確認した。
H−NMR(溶媒CDCl):2.48,7.18〜7.23、7.28〜7.31[ppm]
(メチル4−(フェニルチオ)フェニルスルホキシドの合成)
Figure 2016147960
5Lの3つ口フラスコに、メチル4−(フェニルチオ)フェニルスルフィド50.0[g]と炭酸水素カリウム43.0[g]、水390[mL]、ジクロロメタン500[mL]、を入れて30分攪拌した。ジクロロメタン500[mL]に臭素34.5[g]溶解させた溶液を反応容器内に5分間で滴下し、30分攪拌した。反応溶液に塩化カリウム(KCl)飽和溶液1[L]とジロロメタン1[L]を投入し、抽出/分液操作により有機層を回収した。残った水層にジクロロメタン500[mL]を加えて、有機層を回収する操作を2回行った。回収した有機層を水洗し、分液操作により有機層を回収、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。脱水後、ろ過により硫酸マグネシウムをろ別し、ロータリーエバポレーターでろ液を濃縮し、溶媒を除去した。残った粘調性固体にエーテルを加えて結晶化させた。結晶物をろ過によってろ別し、得られた固体を20時間減圧乾燥させることで、メチル4−(フェニルチオ)フェニルスルホキシド30.5[g](収率57%)を得た。H−NMR、13C−NMR測定により、目的物が合成されていることを確認した。
H−NMR(溶媒CDCl):2.71,7.34,7.39,7.46,7.52[ppm]
13C−NMR(溶媒CDCl):46.0,124.5,128.5,129.7,133.0,133.5,141.5,144.3[ppm]
3.ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の合成
Figure 2016147960
500mLの3つ口フラスコに、メチル4−(フェニルチオ)フェニルスルホキシド2.0[g]を入れ、窒素雰囲気下、氷浴にて冷却した。その後、トリフルオロメタンスルホン酸10[mL]をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、20時間攪拌した。攪拌後の反応溶液に水を入れて、10分攪拌した後、ろ過した。その後、水洗及びろ過し、固体を回収した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、減圧乾燥することで、目的物であるポリ[トリフルオロメタンスルホン酸メチル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム]2.8[g](収率91%)を得た(表1においてPPS−1と表記)。
分析用に得られた目的物から少量を分取し、過剰のメタンスルホン酸によってイオン交換後、重DMSOに溶解させたものについてH−NMR測定を行うことにより、目的物が合成されていることを確認した。
H−NMR(重DMSO):3.27,3.83,7.66,8.08[ppm]
4.合成したポリアリーレンスルフィド樹脂の評価方法
4−1.ガラス転移温度及び融点
パーキンエルマー製DSC装置 Pyris Diamondを用いて、50mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温条件で40〜350℃まで測定を行い、ガラス転移温度及び融点を求めた。
4−2.赤外吸収スペクトル
得られたPPS樹脂を350℃でプレスしたのち、急冷することによって非晶性を示すフィルムを作製し、フーリエ変換赤外分光装置(以下「FT−IR装置」と略記する日本分光製FTIR―6100を用いた)で測定した。赤外吸収スペクトルのうち、2920cm−1の吸収の有無を測定した。
4−3.ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度
ポリアリーレンスルフィド樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT−500Cを用い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10/1にて、6分間保持した後に溶融粘度を測定した。
4−4.Mw及びMtop(分子量分布)
ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量及びピーク分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、下記の測定条件により測定した。得られたMw及びMtopからMw/Mtopを算出した。6種類の単分散ポリスチレンを校正に用いた。
装置:超高温ポリマー分子量分布測定装置(株式会社センシュー科学製「SSC−7000」)
カラム:UT−805L(昭和電工株式会社製)
カラム温度:210℃
溶媒:1−クロロナフタレン
測定方法:UV検出器(360nm)
4−5.発生ガス量
ガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所製、GC-2010)を用いて、ポリアリーレンスルフィド樹脂の所定量のサンプルを325℃で15分間加熱し、そのときの発生ガス量を質量%として定量した。
4−6.ナトリウム含有量
白金製のるつぼに、試料約0.5gを秤量し、これに97%濃硫酸約2mlを添加した後ヒーター上で加熱分解を行った。分解終了後、500℃の電気炉内で灰化した後に残渣を蒸留水に溶解させ、メスアップしたものをサンプルとして、パーキンエルマー製Optima 4300DVにて定量した。
5.ポリアリーレンスルフィド樹脂の合成(ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の脱アルキル化又は脱アリール化)
(合成例1:PPS−1)
Figure 2016147960
前記「ポリ(アリーレンスルホニウム塩)の合成」で得られたポリ[トリフルオロメタンスルホン酸メチル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム]2.0[g]を100mLナスフラスコに入れ、脱アルキル化剤又は脱アリール化剤として、N−メチル−2−ピロリドン5.5[mL](10当量)を加えて、室温で30分攪拌した後に、100℃に昇温し48時間攪拌した。攪拌後の反応溶液を室温まで冷却した後に、水に投入し、析出物をろ過にてろ別し、水80[mL]で3回洗浄した。得られた固体を熱風乾燥機を用いて120℃で一晩乾燥して、ポリフェニレンスルフィド0.83[g](収率73%)を得た。
得られた固体について熱分析を行った結果、ガラス転移温度(Tg)92℃、融点278℃であったことから、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)が生成していることを確認した。
赤外吸収スペクトルを測定したところ、図1のように、2917cm−1のピークの存在が認められた。
このポリマーの溶融粘度は370Pa・s、Mtopは52000、Mwは49000であった。
発生ガス量は0.1[wt%]と少なかった。
ナトリウム含有量は50ppm以下であった。
(合成例2:PPS−2)
圧力計、温度計、コンデンサ−、デカンタ−を連結した撹拌翼付きジルコニウムライニングの1リットルオートクレーブにp−ジクロロベンゼン(以下、「p−DCB」と略記する。)220.5g(1.5モル)、NMP29.7g(0.3モル)、47.43質量%NaSH水溶液177.29g(1.5モル)、及び48.71質量%NaOH水溶液123.18g(1.5モル)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで2時間掛けて昇温して、水177.98gを留出させた後、釜を密閉した。その際、共沸により留出したp−DCBはデカンタ−で分離して、随時釜内に戻した。脱水終了後、内温を160℃に冷却し、NMP267.65g(2.7モル)を仕込み、230℃まで昇温し、230℃で5時間撹拌した後、250℃まで40分で昇温し、250℃で1時間撹拌した。冷却後、得られたスラリーを3リットルの水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び3リットルの温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機を用いて120℃で一晩乾燥して白色の粉末状のPPS 154gを得た。
得られた固体について熱分析を行った結果、ガラス転移温度(Tg)92℃、融点277℃であったことから、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)が生成していることを確認した。
赤外吸収スペクトルを測定したところ、図2のように、2910cm−1〜2930cm−1の範囲に吸収ピークの存在は認めらなかった。
このポリマーの溶融粘度は220Pa・s、Mtopは45000、Mwは44000であった。
発生ガス量は0.5wt%であった。
ナトリウム含有量は600ppmであった。
6.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(PPSコンパウンド)
<原料>
PPS樹脂組成物を調製するため、以下の材料を準備した。
(熱可塑性エラストマー)
ELA:エチレン/グリシジルメタクリル酸(3質量%)/アクリル酸メチル(27質量%)の共重合体(住友化学工業社製、「ボンドファースト7L」)
(シランカップリング剤)
エポキシシラン:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
(無機質充填剤)
GF:ガラス繊維チョップドストランド(繊維径10μm、長さ3mm)
<評価法>
[曲げ特性]
・準拠試験方法…ASTM D−790
・試験片…3.2mm(厚)×12.7mm(幅)×127mm(長)
・試験結果…試験数n=10の平均値
[耐熱水性]
試験片を95℃の熱水に浸漬し、曲げ強さの経時変化を調べた。
・試験片…3.2mm(厚)×12.7mm(幅)×127mm(長)
・曲げ強さの試験方法…ASTM D−790
・評価項目…1000時間、3000時間後の曲げ強さの初期強さに対する保持率
・試験結果…試験数n=5の平均値
[金属密着強さ]
金型にセットした4×10×49mmの金属片(SUS304)に、同寸法分のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を射出、成形したものについて、チャック間20mm、引張速度1mm/minの条件で引張試験を実施し、金属密着強さを測定した。
[エポキシ接着強さ]
3mm(厚)×25mm(幅)×75mm(長さ)の試験片を成形し、試験片上に接着面積25mm×10mmとなるようにエポキシ樹脂(主剤:XNR−5002(ナガセケムテックス製)、硬化剤:XNH−5002(ナガセケムテックス製)、主剤/硬化剤=100/90(質量比))を厚さ40〜50μmで塗布した。これらをクリップで固定後、130℃で3時間加熱し、さらに徐冷させることによってエポキシ樹脂を硬化させた。その後、5mm/分の引張速度にて引張せん断強度を測定し、実荷重を記録した。
[キャビティーバランス]
40個分のキャビティーを有するワッシャー金型を用いて、一次スプルーに最も近い位置のキャビティー(C1)が完全に充填される限りで最低の成形条件でPPSコンパウンドを射出成形した。成形条件は75トン成形機、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、保圧無しとした。
成型後の、キャビティー(C1)と同じランナーにある一次スプルーから最も遠いキャビティー(C10)の充填度を比較した。充填度(質量%)は、キャビティー(C1)の成形品に対する、キャビティー(C10)の成形品の質量比から求めた。キャビティー(C10)の充填度が高いほど、キャビティーバランスが優れていると言える。充填度に基づいて、各組成物のキャビティーバランスを以下の基準で判定した。
AA:100〜90質量%の範囲
A:89〜80質量%の範囲
B:79〜70質量%の範囲
C:69〜60質量%の範囲
D:59%質量以下の範囲
[ガス発生量]
ガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所製、GC-2010)を用いて、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の所定量のサンプルを325℃で15分間加熱し、そのときのガス発生量を質量%として定量した。
[耐トラッキング性]
2mm(厚み)×50mm(幅)×100mm(長)の試験片を成形し、ASTM D3638に準拠した方法で、樹脂流動方向に沿って測定し、破壊電圧と滴下数をプロットし、50滴の電圧を読み取った。
<コンパウンドの作製と評価>
表1に示す配合組成で各原料をタンブラーによって均一に混合した後、2軸混練押出機(TEM−35B、東芝機械)を用いて300℃で溶融混練して、ペレット状のコンパウンドを得た。得られたコンパウンドをシリンダー温度300℃、金型温度140℃の条件で射出成形し、曲げ特性、金属密着強さ、キャビティーバランス及び耐熱水性試験に用いる試験片を作製し、各種評価を行った。また、コンパウンドについてガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2016147960
表1に示される結果から明らかなように、実施例は、機械特性(曲げ強さ、曲げ破断伸び)、金属密着強さ、エポキシ接着強さ、キャビティーバランス、耐熱水性、ガス発生量、耐トラッキング性の点で、比較例よりも優れていた。

Claims (4)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂と、
    無機質充填剤、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を含有する、電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリ(アリーレンスルホニウム塩)と、脂肪族アミド化合物とを反応させ、下記一般式(2)で表される構成単位を有するポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程を含む方法により得ることのできるものであり、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルにおいて、2910cm−1〜2930cm−1の範囲に吸収ピークを有するものである、電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
    Figure 2016147960
    (式中、Rは、直接結合、−Ar−、−Ar−S−又は−Ar−O−を表し、Ar及びArは、官能基を置換基として有してもよいアリーレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルキル基を有していてもよいアリール基を表し、Xは、アニオンを表す。)
    Figure 2016147960
    (式中、Rは、直接結合、−Ar−、−Ar−S−又は−Ar−O−を表し、Ar及びArは、官能基を置換基として有してもよいアリーレン基を表す。)
  2. 前記脂肪族アミド化合物が、脂肪族3級アミド化合物を含むものである、請求項1に記載の電気自動車部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形して得られる、電気自動車部品用成形品。
  4. 請求項3に記載の成形品を備える、電気自動車部品。
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