JP2016147357A - 放電加工装置 - Google Patents

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Masanori Kunieda
正典 国枝
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耕三 阿部
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Abstract

【課題】加工屑の排出や加工液の導入を容易とすることによって、ワークを効率良くくり抜くことができる放電加工装置を提供する。【解決手段】電極部材21は、ワーク10からくり抜かれるべき加工領域11の少なくとも一部を囲む位置に配置される。加工液通路22は、放電加工用の加工液が電極部材の面方向又は厚さ方向に通過できるように、電極部材21の近傍に形成される。給電部30は、ワーク10と電極部材21との間に放電用の電圧を印加する。駆動部40は、放電加工の進行に応じて、電極部材21とワーク10との相対的な位置関係を調整する。【選択図】図1

Description

本発明は、放電加工を用いてワークの一部をくり抜く加工を行うための技術に関するものである。
パワー半導体の高性能化ならびに損失低減を進める上で、基板材料として用いられてきた単結晶シリコンウェハは、その材料特性のために限界に達しつつある。このような高度な要求に応えられる材料として、電気的に優れた特性を持つ単結晶SiC(Silicon Carbide)ウェハに高い期待が寄せられている。SiCウェハは、シリコンでは動作できないような高温や高放射線のような過酷な環境下でも動作しうる素材として期待されている(下記非特許文献1)。
しかしながら、SiCは高価であり、省エネの推進すなわちシリコンパワー半導体のSiCパワー半導体への置き換えには、SiCウェハの価格低下が必要とされている(下記非特許文献2)。
単結晶SiCのインゴット/ウェハ(以下両者を総合して単に単結晶SiCあるいはSiCと呼ぶことがある。)の製造プロセスにおいては、結晶成長後の状態の単結晶インゴットが最終的なウェハ形状に加工される。単結晶シリコンの場合と同様に、結晶成長直後のSiCインゴットは幾何学的に完全な円柱体ではなく、うねりやテーパーがあったり、表面には成長中に生じた凹凸も存在する。そのため、結晶成長工程においては製品ウェハの口径よりも大きな外径のインゴットを製造し、加工工程でオリエンテーションフラットなどが付与された円柱状の幾何学的形状のブロックに加工して、ウェハ状にスライスした後に平坦加工に供される。
結晶成長工程や切断工程においては、結晶欠陥やクラックのような部分的な損傷を生じることがある。結晶欠陥が無い場合においては、円柱状に加工する場合は外周側の加工量が概ね均等になるように設定することによって、加工時間が無用に長くなることを避けている。しかし結晶欠陥がある場合は、結晶欠陥の部分を避ける必要がある。つまり、偏心させた位置から所定の口径のインゴットやウェハを得る必要がある。また加工途中にクラックなどの損傷が生じた場合も、取得位置を偏心させる必要が生じる。このように偏心が必要になった場合、その偏心量だけ加工量が増えることになる。
さらに結晶欠陥や、加工途中での損傷が大きい場合は、口径の小さい単結晶SiCを取り出すこととなる。この場合も加工量は大幅に大きくなる。
これらに対応する方法として、例えば、ダイヤモンド砥粒のような硬質の砥粒を用いた研削加工により、欠陥部分を除去する方法が用いられてきている。しかしながら、この方法では、高価なダイヤモンド砥粒を大量に用いる必要があるばかりか、加工時間が長くなってしまうため、加工コストが高くなってしまうという問題がある。
一方、ワイヤ放電加工を用いて、単結晶SiCの外周側から内側に切り込むことによって、非欠陥部分をくり抜く方法も考えられる。
しかしながら、単結晶SiCの外周領域には、残留応力が存在する場合がある。外周側から切り込んで単結晶SiCをワイヤ放電加工により部分的に切断しようとすると、この残留応力の影響により、単結晶SiCに大きな割れを生じることがある。このため、ワイヤ放電加工を用いて単結晶SiCの一部をくり抜く場合には、加工に失敗するケースが多くなってしまい高価なSiCを破損させるという問題があった。
P. Friedrichs, T. Kimoto, L. Ley, G. Pensl, Silicon Carbide 1: Growth, Defects, and Novel Applications, Wiley-VCH Verlag GmbH&Co. KGaA, Weinheim, 2010. P. Friedrichs, T. Kimoto, L. Ley, G. Pensl, Silicon Carbide 2: Power Devices and Sensors, Wiley-VCH Verlag GmbH&Co. KGaA, Weinheim, 2010.
そこで、本発明者らは、放電加工用の薄板電極を円筒状に加工し、その端面をワークに接近させることにより、円柱状にワークをくり抜く技術について検討した。しかしながら、この技術では、加工の進行に伴い、加工屑の排出が難しくなり、放電点への加工液の導入も難しくなるため、加工速度が遅くなったり、短絡によって放電加工が成立しなくなると予想される。
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、加工屑の排出や加工液の導入を容易とすることによって、ワークを効率良くくり抜くことができる放電加工装置を提供することである。
前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。
(項目1)
放電加工を用いてワークの一部をくり抜く加工を行うための装置であって、工具電極部と、給電部と、駆動部とを備えており、
前記工具電極部は、電極部材と、加工液通路とを備えており、
前記電極部材は、前記ワークからくり抜かれるべき加工領域の少なくとも一部を囲む位置に配置されており、
前記加工液通路は、放電加工用の加工液が前記電極部材の面方向又は厚さ方向に通過できるように、前記電極部材の近傍に形成されており、
前記給電部は、前記ワークと前記電極部材との間に放電用の電圧を印加する構成とされており、
前記駆動部は、放電加工の進行に応じて、前記電極部材と前記ワークとの相対的な位置関係を調整する構成となっている
ことを特徴とする放電加工装置。
(項目2)
前記電極部材は、前記加工領域の少なくとも一部を囲む位置に配置された複数の電極片を備えており、
前記複数の電極片の間には、間隙が形成されており、
前記間隙は、前記加工液通路を構成している
項目1に記載の放電加工装置。
(項目3)
前記複数の電極片は、少なくともくり抜き方向に延長された棒状又は箔状に形成されている
項目2記載の放電加工装置。
(項目4)
さらに回転部を備えており、
前記回転部は、前記電極部材を、前記加工領域の周囲に沿って、前記ワークに対して相対的に回転させる構成となっている
項目1〜3のいずれか1項に記載の放電加工装置。
(項目5)
前記電極部材には、この電極部材の面方向に沿って延長されたスリットが形成されており、前記スリットにより、前記加工液通路が形成されている
項目1〜4のいずれか1項に記載の放電加工装置。
(項目6)
前記複数の電極片は、n本(ここでnは1≦nとなる整数)ごとの群に分割されており、前記給電部は、前記群ごとに給電を行う構成となっている
項目2又は3に記載の放電加工装置。
(項目7)
前記ワークは、半導体インゴット又は半導体ウェハである
項目1〜6のいずれか1項に記載の放電加工装置。
(項目8)
前記半導体はSiCである
項目7に記載の放電加工装置。
(項目9)
前記電極部材の表面には、絶縁コーティング層が形成されている
項目1〜8のいずれか1項に記載の放電加工装置。
(項目10)
前記絶縁コーティング層には、硬質粒子が含まれている
項目9に記載の放電加工装置。
本発明は、前記した構成を備えているので、加工液通路を介して、加工屑の排出や加工液の導入を容易とすることができる。このため、ワークを効率良く安定してくり抜くことができる放電加工装置を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態における放電加工装置の全体的な構成を説明するための概略的な説明図である。 図1の装置において用いられる工具電極部の拡大斜視図である。 図2における要部の拡大図である。 ワークにおける加工領域を説明するための説明図である。 給電部から工具電極部への給電回路において形成される給電容量を説明するための概略的な説明図である。 給電部を用いた給電回路の等価回路である。 本発明の第2実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 第2実施形態における電極部材の回転方向を示す説明図である。 本発明の第3実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 本発明の第4実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 本発明の第5実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図であり、図(a)は正面図、図(b)はA−A線に沿う要部拡大断面図である。また、図(c)及び図(d)は、それぞれ、電極部材の変形例を説明するための、図(b)に対応する断面図である。 本発明の第6実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 本発明の第7実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 本発明の第8実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図であり、図(a)は正面図、図(b)はB−B線に沿う要部拡大断面図である。 本発明の第9実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。 本発明の第10実施形態において用いられる電極部材を説明するための概略的な説明図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る放電加工装置(以下、「加工装置」と略称することがある)について説明する。この加工装置は、放電加工を用いてワーク10(図1参照)の一部をくり抜く加工を行うためのものである。
(第1実施形態の構成)
本実施形態の加工装置では、ワーク10として、SiC半導体インゴット又はSiC半導体ウェハを想定している。本実施形態の加工装置は、工具電極部20と、給電部30と、駆動部40とを主な構成として備えている(図1参照)。さらに、本実施形態の加工装置は、回転部50と加工液槽60とを追加的な構成として備えている。
(工具電極部)
工具電極部20は、電極部材21と、加工液通路22と、マンドレル23と、ガイド部24と、ホルダ部25とを備えている(図2及び図3参照)。
電極部材21は、ワーク10からくり抜かれるべき加工領域11(図4参照)の少なくとも一部を囲む位置に配置されている。すなわち、本例では、円柱状のワーク10の内側から、円柱状の領域をくり抜くことを想定している。なお、加工前には、電極部材21は、加工領域11の端面に対向している状態であるが、この状態を含めて、本明細書では、「電極部材が領域を囲んでいる」ものとする。
電極部材21は、加工領域11の少なくとも一部を囲む位置に配置された複数の電極片211を備えている。複数の電極片211どうしの間には、間隙が形成されており、これらの間隙は、加工液通路22を構成している(図2参照)。これにより、本例の加工液通路22は、放電加工用の加工液62(後述)が電極部材21の面方向又は厚さ方向に通過できるように、電極部材21の近傍に形成されたものとなっている。
本実施形態における各電極片211は、くり抜き方向(図1において下方)に延長された棒状(より具体的には細径の円柱状)に形成されている。棒状電極片211の材質としては、特に制約されないが、例えば超硬材料、銅タングステン、銀タングステンなどを用いることができる。本実施形態における電極片211は、複数本(図示例では7本)ごとの群に分割されており(図2参照)、後述するように、給電部30は、これらの群ごとに給電を行う構成となっている。
マンドレル23は、本例では、軸部231と、板状部232とから構成されている(図2参照)。軸部231は、回転部50のチャック54(後述)に取り付けられる部分である。板状部232は、軸部231に直交する面方向に延長された円板状に形成されており、板状部232の軸心上に軸部231が配置されている。本例の軸部231及び板状部232は、ともに導電性材料(例えば黄銅)により構成されており、給電部30による電極片211への給電回路の一部を形成するようになっている(後述)。
ガイド部24は、断面視して略V字形状の複数の溝部241(図3参照)を備えている。これらの溝部241の内部に、電極片211の側面が収納されており、これによって、電極片211の位置決めを行うことができるようになっている。
ホルダ部25は、ガイド部24とのあいだで電極片211を挟むことによって、電極片211を保持する構成となっている。ホルダ部25は、固定具26(例えば固定用のボルト)によってガイド部24に固定されている。
本実施形態では、マンドレル23の板状部232の外縁部とガイド部24との間に絶縁体27(図5参照)が介装されており、これによって、板状部232の外縁部とガイド部24とが電気的に個別に絶縁されている。
(給電部)
給電部30は、ワーク10と電極部材21との間に放電用の電圧を印加する構成とされている。具体的には、本例の給電部30は、電源31(図1参照)と、複数の給電容量(具体的にはコンデンサ)32(図5参照)とを備えている。
電源31は、本実施形態では、高周波のパルス電源が用いられている。ただし、電源31としては、直流成分の有無にかかわらず、所定の交流電圧を発生できるものであればよい。また、交流電圧の波形としては、矩形波に限らず、正弦波や三角波など、適宜の波形を用いることができる。
電源31の一方の極は、回転部50のチャック54(後述)、工具電極部20のマンドレル23、給電容量32(図5参照)、及びガイド部24を介して、電極部材21の電極片211に電気的に接続されている。本実施形態では、各ガイド部24に対応する給電容量(コンデンサ)32を介して、各群の電極片211に個別に給電する構成となっている。
電源31の他方の極は、加工液槽60のテーブル61(後述)を介して、ワーク10に電気的に接続されている。これにより、本実施形態の電源31は、電極片211とワーク10との間に所定の交番電圧を印加できるようになっている。
(駆動部)
駆動部40は、放電加工の進行に応じて、ジャンプ動作などのように電極部材21とワーク10との相対的な位置関係を調整する構成となっている。具体的には、本実施形態の駆動部40は、支持体41(図1参照)と、主軸42とを備えている。支持体41は、主軸42の外面に取り付けられている。主軸42は、上下動可能とされており、支持体41は、主軸42の上下動につれて上下動するようになっている。また、主軸42は、放電加工の加工量に応じて下降して、電極位置を制御するようになっている。加工量に応じた電極位置の制御は、従来の放電加工機と同様に構成できるので、これについての詳しい説明は省略する。
(回転部)
回転部50は、電極部材21を、加工領域11の周囲に沿って回転させる構成となっている。本実施形態の回転部50は、駆動モータ51と、伝動ベルト52と、プーリ53と、チャック54とから構成されている。
駆動モータ51は、駆動部40の支持体41に取り付けられており、支持体41と一緒に上下するようになっている。伝動ベルト52は、駆動モータ51の出力をプーリ53に伝達するようになっている。伝動ベルト52とプーリ53とは、この例では減速機構を構成している。もちろん伝動ベルト52に代えてビルトインモータによるダイレクトドライブなどの他の適宜な動力伝達手段を用いることは可能である。プーリ53は、主軸42の下端近傍に、主軸42の軸心を中心として自転可能なように取り付けられている。チャック54は、主軸42の下端に取り付けられて、プーリ53と同軸で回転するようになっている。また、チャック54は、その下端においてマンドレル23の軸部231を保持するようになっている。さらに、本実施形態のチャック54は、主軸42を介して、駆動部40により、軸方向に短いストロークで往復動可能なようになっている。
(加工液槽)
加工液槽60は、テーブル61と、加工液62と、液槽本体63とを備えている。テーブル61は、液槽本体63内において、ワーク10の底面を支持するようになっている。加工液62は、液槽本体63に収容されており、これによって、少なくとも電極部材21の電極片211とワーク10との間の空間を加工液62で満たすことができるようになっている。
(放電回路の等価回路)
前記した第1実施形態における放電回路の概略的な等価回路を、図6を参照しながら説明する。図6では、直列接続された一つの給電容量32から給電される一群の電極片(本例では7本の電極片から一つの群が構成されている)をGで表している(iは1以上の整数)。本例では、一群の電極片Gごとに放電を生じさせることができる。
(本実施形態の動作)
次に、本実施形態の加工装置の動作について説明する。
まず、駆動部40の主軸42を下降させることにより、工具電極部20の電極片211の先端をワーク10の加工領域11に接近させる(図1参照)。また、これに前後して、給電部30により、電極片211とワーク10との間に交番電圧を発生させる。ここで、給電部30は、給電容量32を介して電極片211に給電しているので、電源電圧における直流成分は無視できる。
すると、電極片211からなる群Gごとに、ワーク10との間で放電を生じる(図6の等価回路参照)。つまり、ある群に属するいずれかの電極片211において放電を生じると、当該群に属するすべての電極片211とワーク10との間の電位差が低下する。しかし、他の群に属する電極片211の電位は下がらないので、電源31から供給された一つの正のパルスにより、すべての群において放電を生じ得る。そして、パルスの正負が反転すると、給電容量32が反対の極性でチャージされ、一つの負のパルスの間に、すべての群において、その群に属するいずれかの電極片211とワーク10との間で放電を生じ、以降、パルスの正負の反転ごとに同じ動作が繰り返される。
電極部材21を、くり抜き形状に対応した大径の円筒状とし、これに対して給電した場合には、ワイヤを用いて外周部から内側に切り込む場合に生じる破損のリスクを大幅に下げることは可能であるが、同一時間における放電は円筒状電極の円周上の一箇所となり、ワーク10との間の電位差の低下は電極全体として生じることになる。これに対して、本実施形態の装置では、複数の群ごとに放電を生じさせることができるので、電極全体として、単位時間当たりの放電回数を増やすことができ、加工効率を向上させることができるという利点もある。
また、本実施形態では、主軸42を上下動させること(いわゆるジャンプ動作)により、加工初期段階における放電加工を安定的に行うことができるという利点もある。
さらに、本実施形態では、回転部50によって電極部材21を回転させているので、加工に伴って生じる加工屑を、電極片211の移動により、ワーク10の外部に効率的に排出することができる。このため、放電加工の効率を向上させることができるという利点がある。
また、本実施形態では、電極片211の移動に伴い、加工液62を放電点近傍に導入しやすくなるという利点がある。特に、本実施形態では、複数の電極片211の間の間隙によって、加工液通路22を形成しているので、この加工液通路22を介して、放電点への加工液の導入を効率的に行うことができる。これにより、加工効率をさらに向上させることができる。さらに、加工液通路22を介して加工屑の排出効率を向上させることもできる。
さらに、本実施形態では、電極片211を棒状としているので、放電加工用に広く用いられている安価な棒状電極を電極片211として用いることができる。
しかも、本実施形態では、一部の電極片211が損耗して短くなった場合、長尺状の電極片211を長さ方向に繰り出すことにより、容易に長さ調整を行うことができる。つまり、本実施形態では、電極片211の交換回数を減らすこともできる。これにより、本実施形態では、放電加工装置の運用コストを抑制することができる。
さらに、本実施形態において、電極片211を交換する場合には、ガイド部24の溝部241を用いて、新たな電極片211の位置決めを効率よく行うことができるという利点もある。
放電加工の進行に伴って、駆動部40により、電極部材21を下降させることができる。電極部材21がワーク10の下端に達すると、ワーク10から円柱状の加工領域11(図4参照)を取り出すことができる。ここで、本実施形態では、電極片211の回転軌跡に沿った形状で、加工領域11が切り出される。したがって、放電加工によって除去される加工量は、電極片211の径と加工領域11の円周との積に近似することができる。電極部材21として細径の電極片211を用いることにより、少ない加工量でくり抜き加工を行うことができ、ワーク10の利用効率を向上させることができる。
なお、前記した実施形態では、電極片211として細径の円筒状のものを用いたが、円柱状、角柱状など、適宜な棒状の形態を用いることが可能である。
また、前記した実施形態では、複数本ごとの群をなす電極片211の単位で、給電容量32を介して給電したが、1本ごとに給電容量を介して給電することは可能である。また、電極片211どうしの間隔も、加工液通路22を形成しうるものであれば、適宜に設定できる。また、一部の電極片どうしは密に配置し、他の電極片どうしを疎に配置することもできる。
さらに、前記した実施形態の回転部50は、電極片211を回転させるものとしたが、これとは逆に、例えばテーブル61を回転させることにより、電極片211に対してワーク10を回転させる構成であってもよい。要するに、ワークと電極片211とが相対的に回転移動可能であればよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る加工装置を、図7を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態の説明においては、前記した第1実施形態の構成要素と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
前記した第1実施形態では、電極部材21の電極片211として、棒状電極を用いていた。これに対して、第2実施形態では、電極片211として、箔状電極を用いている。
箔状の電極片211は、横断面が円弧状に形成されてガイド部24とホルダ部25(図7においては省略)に保持される。あるいは、箔状電極片211としては、ガイド部24とホルダ部25(図7においては省略)に挟まれることによって容易に円弧状に変形して保持されるような材質と厚さを持つ平板状のものを使用することもできる。なお、第2実施形態のガイド部24には、溝部241を形成する必要はない。また、図7においては、第1実施形態において説明したマンドレル23とガイド部24とを、煩雑を避けるため、全体として一体の円盤状として記載している。
第2実施形態では、箔状の電極片211の間に、加工液通路22を構成する間隙が形成されている。
また、第1実施形態では、棒状電極片211からなる群ごとに給電部30から給電していたが、第2実施形態では、各電極片211に対して個別に給電を行うことで高い加工能率を得ることが可能となる。なお、図8に、電極片211とワーク10との位置関係と、電極片211の回転方向(図中矢印方向)とを、模式的に示した。
第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、給電部30によって電極片211とワーク10との間に所定の電圧を印加することにより、ワーク10に対する放電加工を行うことができる。
箔状電極の厚さは、電極材料や形状の選択によっては、棒状電極の直径よりも狭くすることが可能と考えられる。このため、箔状電極を用いた場合は、第1実施形態で用いた棒状電極の場合よりも、加工幅を狭くすることが可能になるという利点もある。
第2実施形態における他の構成及び利点は、前記した第1実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る加工装置を、図9を参照しながら説明する。なお、この第3実施形態の説明においては、前記した第2実施形態の構成要素と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
前記した第2実施形態では、箔状の電極片211の間に、加工液通路22を構成する間隙を形成した。第3実施形態では、箔状の電極片211に、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔212を形成し、これによって、電極片211の厚さ方向に加工液を通過させることが可能な加工液通路22を追加的に形成している。
これらの貫通孔212は、加工屑の排出に必要な加工液の流動を促進することから、安定して放電加工を持続させることができる。また加工液の流動を促進することにより、電極の冷却を促進しうる。
第3実施形態における他の構成及び利点は、前記した第2実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
なお、図9における箔状電極片211の記載においては、図面記載の煩雑を避けるため、便宜的に、電極片を平板状として記載している。以降の実施形態においても基本的に同様である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る加工装置を、図10を参照しながら説明する。なお、この第4実施形態の説明においては、前記した第2実施形態の構成要素と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第4実施形態では、箔状の電極片211の下端に、上下方向に延長した複数のスリット213を形成し、これによって、電極片211の厚さ方向に加工液を通過させることが可能な加工液通路22を追加的に形成した。
これらのスリット213は、前記第3実施形態における貫通孔より大きな面積となるため、加工屑の排出に必要な加工液の流動をより促進し、より安定な放電加工を持続させることができる。また、加工液の流動の促進により電極の冷却をさらに促進することもできると考えられる。ただし、スリットを形成した場合に機械的な剛性が低下して安定な放電加工を継続できない材質や厚さの電極材料を用いた場合には、貫通孔のほうが好ましい場合もある。
第4実施形態における他の構成及び利点は、前記した第2実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る加工装置を、図11(a)及び(b)を参照しながら説明する。なお、この第5実施形態の説明においては、前記した第2実施形態の構成要素と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第5実施形態では、箔状の電極片211の表面に、波状部(あるいは表面溝)214を形成した。図11(b)に示す波状部214の場合は、例えばプレス加工により容易に形成できる。
本実施形態の波状部214の延長方向は、放電加工の切込み方向を図中下方、電極片211の回転方向を図中左方向としたときには、右上から左下の方向に延長されたものとなっている。つまり、波状部214の延長方向は、回転方向のベクトルと切込み方向のベクトルとの合成ベクトルの向きにほぼ沿うものとされている。これにより、本実施形態では、加工液及び加工屑を、ワーク10から離間する方向に流出させることができ、加工効率を向上させることが可能となる。したがって、本実施形態の波状部214は、加工液通路22の一例に相当する。
ここで、図11(b)に示す電極片厚さtと波状部214の深さgとの関係は、g/t=1/5〜1/10程度とすることが好ましい。
この第5実施形態では、加工液を加工点から図11(b)の波状部の凹部分に沿って安定的に一方向に流動させる効果があり、加工屑を安定的に外部に排出させることができることから、インゴットのように厚いSiC素材のくり抜き加工を安定的に行うことができる。したがって、加工屑が電極の側面と加工面との間に挟まれる確率を低減することが可能となり、加工屑の存在に起因する短絡を抑制する効果も期待できる。
図11(c)は、第5実施形態の電極片211の変形例を示す拡大断面図である。この例では、波状部214を、例えば切削加工などの適宜な加工手段で形成可能な溝により構成している。この変形例における波状部214の他の構成は、前記した図11(b)の例と同様とすることができる。
図11(d)は、第5実施形態の電極片211のさらに他の変形例を示す説明図である。この例では、波状部214を、電極片211の表裏両面に形成している。ここで、波状部214の溝部分の延長方向の傾斜を、表面と裏面との間で逆方向にすれば、一方で加工屑排出、他方で加工液導入の作用を図ることができる。
第5実施形態における他の構成及び利点は、前記した第2実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る加工装置を、図12を参照しながら説明する。なお、この第6実施形態の説明においては、前記した第3実施形態(図9)及び第5実施形態(図11)と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第6実施形態では、第3実施形態のような貫通孔212と、第5実施形態のような波状部214との両方を電極片211に形成した。
第6実施形態における他の構成及び利点は、前記した第3及び第5実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る加工装置を、図13を参照しながら説明する。なお、この第7実施形態の説明においては、前記した第4実施形態(図10)及び第5実施形態(図11)と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第7実施形態では、第4実施形態のようなスリット213と、第5実施形態のような波状部214との両方を電極片211に形成した。
第7実施形態における他の構成及び利点は、前記した第4及び第5実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係る加工装置を、図14を参照しながら説明する。なお、この第8実施形態の説明においては、前記した第5実施形態(図11)と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第8実施形態では、箔状の電極片211の下端側(ワーク10に対面すると予想される部分)に、絶縁コーティング215を形成した(図14(b)参照)。絶縁コーティングは、くり抜き加工に必要な切込み進行方向のみに放電を生じさせ、進行方向から見て側面となる領域での無駄な放電を防ぐためのものである。したがって、電極片211の下端(ワーク10との放電を生じる部分)には、絶縁コーティングを行わず、電極片211の下端を露出させた。これにより、電極の進行方向となる下端で放電加工を行いつつ、電極の進行方向に対し側面となる電極片211の表面とワーク10との間で不意の放電を生じる可能性を減らすことができる。このように電極の側面に絶縁コーティング層を形成することで加工方向以外の放電を抑制することが出来るため、給電エネルギーを加工点に集中させ加工能率のロスを低減できる。なお、同様の絶縁コーティングを図1に示す丸棒状の電極側面にも形成して、同様の効果を得ることもできる。
また、絶縁コーティング215に、ダイヤモンド、cBN(立方晶窒化ホウ素)、BC(炭化ホウ素)のような硬質砥粒(硬質粒子に相当)を含有させることも可能である(図示せず)。これにより、放電加工後のワーク10の表面(加工面)を研削して表面粗さを改善することができる。これは放電加工された表面が、放電エネルギーによってSiC表面が分解し、シリコンが抜け炭素リッチの表面状態となって軟質な表面状態に変質したことを利用するもので、後工程の加工量を低減することが可能となる。
第8実施形態における他の構成及び利点は、前記した第5実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態に係る加工装置を、図15を参照しながら説明する。なお、この第9実施形態の説明においては、前記した第6実施形態(図12)及び第8実施形態(図14)と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第9実施形態でも、第8実施形態と同様に、箔状の電極片211の下端側に絶縁コーティング215を形成した。
第9実施形態における他の構成及び利点は、前記した第6実施形態及び第8実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態に係る加工装置を、図16を参照しながら説明する。なお、この第10実施形態の説明においては、前記した第7実施形態(図13)及び第8実施形態(図14)と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の煩雑を避ける。
第10実施形態でも、第8実施形態と同様に、箔状の電極片211の下端側に絶縁コーティング215を形成した。
第10実施形態における他の構成及び利点は、前記した第7実施形態及び第8実施形態と基本的に同様なので、これ以上の説明を省略する。
なお、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得るものである。
例えば、前記した各実施形態では、電極部材21の電極片211を一方向に回転させることにより、その軌跡に沿ってワーク10をくり抜くこととした。しかしながら、電極片211を比較的に密に配置することにより、回転を省略してもくり抜き加工が可能になる。
あるいは、電極部材21を大径の筒状とし、電極部材21の下端から上方に向けて、切込み方向に対して傾斜する方向に延長された複数のスリットを形成する構成も可能である。このようにすると、これらのスリットにより加工液通路を形成することができる。しかも、スリットが傾斜しているために、放電加工の進行(つまり電極下端部の損耗)に伴って、ワーク10に対面する電極の位置が少しずつずれていく。このため、電極部材21を回転させなくとも、電極部材の形状に沿ってワーク10をくり抜くことができる。
また、前記各実施形態では、電極を一方向に継続的に回転させた。しかしながら、所定角度ごと(例えば90度ごと)に、時計回りと反時計回りを繰り返す(つまり往復動作させる)ことによっても、くり抜き加工を実施可能である。さらに、電極材料の移動速度を、加工状況などの条件に応じて、適宜に変動させることもできる。
10 ワーク
11 加工領域
20 工具電極部
21 電極部材
211 電極片
212 貫通孔
213 スリット
214 波状部
215 絶縁コーティング
22 加工液通路
23 マンドレル
231 軸部
232 板状部
24 ガイド部
241 溝部
25 ホルダ部
26 固定具
27 絶縁体
30 給電部
31 電源
32 給電容量
40 駆動部
41 支持体
42 主軸
50 回転部
51 駆動モータ
52 伝動ベルト
53 プーリ
54 チャック
60 加工液槽
61 テーブル
62 加工液
63 液槽本体
電極片で構成される群

Claims (10)

  1. 放電加工を用いてワークの一部をくり抜く加工を行うための装置であって、工具電極部と、給電部と、駆動部とを備えており、
    前記工具電極部は、電極部材と、加工液通路とを備えており、
    前記電極部材は、前記ワークからくり抜かれるべき加工領域の少なくとも一部を囲む位置に配置されており、
    前記加工液通路は、放電加工用の加工液が前記電極部材の面方向又は厚さ方向に通過できるように、前記電極部材の近傍に形成されており、
    前記給電部は、前記ワークと前記電極部材との間に放電用の電圧を印加する構成とされており、
    前記駆動部は、放電加工の進行に応じて、前記電極部材と前記ワークとの相対的な位置関係を調整する構成となっている
    ことを特徴とする放電加工装置。
  2. 前記電極部材は、前記加工領域の少なくとも一部を囲む位置に配置された複数の電極片を備えており、
    前記複数の電極片の間には、間隙が形成されており、
    前記間隙は、前記加工液通路を構成している
    請求項1に記載の放電加工装置。
  3. 前記複数の電極片は、少なくともくり抜き方向に延長された棒状又は箔状に形成されている
    請求項2記載の放電加工装置。
  4. さらに回転部を備えており、
    前記回転部は、前記電極部材を、前記加工領域の周囲に沿って、前記ワークに対して相対的に回転させる構成となっている
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の放電加工装置。
  5. 前記電極部材には、この電極部材の面方向に沿って延長されたスリットが形成されており、前記スリットにより、前記加工液通路が形成されている
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電加工装置。
  6. 前記複数の電極片は、n本(ここでnは1≦nとなる整数)ごとの群に分割されており、前記給電部は、前記群ごとに給電を行う構成となっている
    請求項2又は3に記載の放電加工装置。
  7. 前記ワークは、半導体インゴット又は半導体ウェハである
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の放電加工装置。
  8. 前記半導体はSiCである
    請求項7に記載の放電加工装置。
  9. 前記電極部材の表面には、絶縁コーティング層が形成されている
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の放電加工装置。
  10. 前記絶縁コーティング層には、硬質粒子が含まれている
    請求項9に記載の放電加工装置。
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