JP2016145154A - マラリア原虫感染症に対するワクチン製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
マラリア原虫感染に対して、効果的な免疫応答を誘導しうる、安全なワクチン製剤を提供し、マラリア原虫感染症の予防効果の向上を実現すること。
【解決手段】
マラリア原虫由来のCSP若しくはMSP1、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体、あるいはその免疫学的に活性な断片を、抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソームに封入してなることを特徴とする、マラリア原虫感染症のためのワクチン製剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マラリア原虫感染症に対するワクチン製剤に関する。より詳しくは、マラリア原虫由来の可溶性タンパク質を抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソームに封入してなるリポソーム製剤を含むワクチン製剤に関する。
マラリアは熱帯、亜熱帯地域の70ヶ国以上に分布している原虫感染症である。全世界で年間3〜5億人、累計で約8億人の患者がマラリア原虫に感染し、100〜150万人がマラリアで死亡すると報告されている。
マラリアの病原体は単細胞生物であるマラリア原虫で、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種が存在する。特に熱帯熱マラリア原虫によるマラリアは症状が重い。
マラリア原虫は、雌のAnopheles蚊に吸血されることにより伝染し、ヒト宿主に対してマラリア原虫のスポロゾイトを運ぶ。スポロゾイトは、血液により肝臓まで運ばれ、肝細胞中で増殖し、ライフサイクルの次の形態すなわちメロゾイトに変化する。感染肝細胞が破裂すると、メロゾイトは血流中に放出される。次にメロゾイトは赤血球に感染し、一部は、赤血球中で雄および雌の生殖母細胞になる。別の蚊が感染宿主を吸血すると、雄および雌の生殖母細胞を摂取し、雌の蚊の内部で融合しスポロゾイトになる。この蚊が次の宿主を吸血することで、スポロゾイトはさらに別の宿主に伝染する。
マラリア原虫に自然感染したヒト宿主では、抗マラリア原虫抗体が産生される。しかし、抗体が産生されるだけで、防御的免疫性としてのマラリア原虫を中和する能力(体液性免疫)は持せず、十分な記憶特性を有する細胞性免疫も惹起されない。その結果として感染が何度も起こることがあり、疾患治療と予防を複雑化させている。
マラリアワクチンとして最も高い防御効果が確認されているのは、感染型マラリア原虫であるスポロゾイトを放射線照射により不活化したワクチンである。しかし、生産に高度の施設が必要なため、開発途上地域においては普及に不向きである。そのため、強力且つ調製が簡易な新たなワクチンの開発が期待されている。しかし、ヒトマラリアは基本的には霊長類にしか感染しないため、ワクチンの有効性の確認は、サル・ヒトを用いた実験か、マウスマラリア原虫をマウスに感染させる模擬的実験によってしか行うことができない。従って、ヒトマラリアに対する新たなワクチンの開発は困難を極めている(非特許文献1、非特許文献2)。
従って、上記不活化スポロゾイトワクチンと同等の効果を有する抗原タンパクを精製し、サブユニットワクチン(ペプチド製剤)として生産するのがより実用的であると考えられている。これまで、いくつかのマラリアワクチン候補分子が発見され、一部は臨床治験が開始されているが、有効性が確認されたとの報告はなされていない(非特許文献3)。
また、生ワクチンと比較して、生産性や保存等の取り扱いが非常に簡便なワクチンとしてDNAワクチンが知られている。DNAワクチンは容易に製造することが可能であるので、変異が早いウイルスに対して、速やかに改良型ワクチンを提供することが可能である。しかしながら、熱帯熱マラリアに対して有効なDNAワクチンは未だ開発されていない(非特許文献4)。
このように、現時点でマラリア原虫に対して有効なワクチンは得られていない。マラリアワクチン開発の鍵は、免疫原性の強い抗原タンパクをいかに抗原提示細胞まで伝達し、十分な抗原特異的抗体産生と細胞性免疫を誘導するかにある。
抗原タンパクの送達については、オリゴマンノース糖鎖被覆リポソームのような、オリゴ糖を表面に有するリポソームに抗原を封入する方法が知られている(特許文献1、非特許文献5〜8)。発明者らは、オリゴ糖を表面に有するリポソームにネオスポラ原虫(Neospora caninum)由来の可溶性抗原を封入し、このリポソームでマウスを免疫することで、ネオスポラ原虫に対するTh1型免疫を有意に誘導し、原虫の垂直感染と体内伝播を制御できることを報告している(特許文献2、非特許文献9)。しかしながら、マラリア原虫抗原ついては、未だこうした製剤化の試みはなされていない。
特開平7−126185号公報(特許第2828391号公報) 国際公開第2010/32408号パンフレット
GoodらImmunity.2010.33:555-566. RichardsらImmunology and Cell Biology.2009.87:377-390. ButlerらTrends in Immunology.2012.33:247-254. HillらHuman Vaccines.2010.6:78-83. Shimizu et al., Parasite Immunol 2007, 29:229-239 横山直明ら、日本寄生虫学会大会プログラム・抄録集2006,67頁、I-D-04 Kuboki et al., J. Protozool Res., 2007, 17:9-15 Kuboki et al., J. Protozool Res., 2008, 18:1-10 Nishikawa et al., Clin Vaccine Immunol. 2009, 16:792-797.
本発明の課題は、マラリア原虫感染に対して、効果的な免疫応答を誘導しうる、安全なワクチン製剤を提供し、マラリア原虫感染症の予防効果の向上を実現することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、オリゴ糖を表面に有するリポソームに、従来公知のマラリア原虫ワクチン抗原のなかで、特にマラリア原虫由来可溶性タンパク質circumsporozoite protein (CSP)及びmerozoite surface protein 1 (MSP1)を封入することで、マラリア原虫に対する免疫反応を効果的に誘導できることを明らかとした。
本発明は、係る知見に基づくものであり、マラリア原虫由来のCSP若しくはMSP1、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体、あるいはその免疫学的に活性な断片を、抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソームに封入してなるリポソーム製剤に関する。
前記抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子としては、例えばマンノース・レセプターを挙げることができる。
免疫学的に活性な断片は、特に限定されないが、CSP若しくはMSP1、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体のC末端領域を含む断片が挙げられ、例えば、CSP又はMSP1のC末端100アミノ酸残基のうち、少なくとも連続した8〜50アミノ酸残基を含む断片を利用することができる。
1つの態様において、CSPあるいはその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体の免疫学的に活性な断片は、以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質である。
(a) 配列番号2の186位〜332位に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b) 配列番号2の186位〜332位に示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質、
(c) 配列番号2の186位〜332位に示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質
また、MSP1あるいはその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体の免疫学的に活性な断片は、以下の(d)〜(f)のいずれかのタンパク質である。
(d) 配列番号4の1608位〜1768位に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(e) 配列番号4の1608位〜1768位に示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質、
(f) 配列番号4の1608位〜1768位に示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質
用いられるオリゴ糖は、2〜11の糖残基であることが好ましく、3〜7の糖残基からなることがより好ましく、3〜5の糖残基からなることがもっとも好ましい。
好適なオリゴ糖としては、2以上のマンノースを含む糖鎖を挙げることができる。
本発明のリポソーム製剤は、製薬上許容しうる担体とともに製剤化され、マラリア原虫感染症に対するワクチン製剤として利用される。本発明のワクチン製剤は、例えば皮下、皮内、静脈内、経口又は経鼻投与される。
本発明で提供されるワクチン製剤は、高い予防効果を有すると同時に副作用の危険性が低減されている。本発明のワクチンは、免疫原性の強い抗原タンパクを患部の抗原提示細胞まで送達し、十分なTh1型免疫とTh2型免疫を誘導できる。
マラリア原虫のライフサイクルには、肝臓ステージと赤血球ステージがあり、肝臓ステージでは細胞性免疫、赤血球ステージでは液性免疫(抗体産生)を誘導する必要がある。しかしながら、これまでのアジュバントやワクチン抗原キャリアは、2つのステージに対して、それぞれ別々のものを使用する必要があった。本発明によれば、1種類のキャリアを使用して、赤血球及び肝臓という、マラリア原虫のライフサイクルの2つのステージで免疫を誘導し、感染を阻止できるワクチンが提供される。
ワクチン接種後から赤内型原虫感染後30日までの特異抗体産生を示した図である。上の2つのグラフは、左:MSP1封入リポソームによるIgG1産生(左)とIgG2a産生(右)を示す。下の2つのグラフは、左:TRAP封入リポソームによるIgG1産生(左)とIgG2a産生(右)を示す(-○-:MSP1封入リポソーム投与、-□-:TRAP封入リポソーム投与、-△-:MSP1+TRAP封入リポソーム投与、-▽-:リポソーム投与、-◆-:MSP1+TRAP投与、一番下の-○-:コントロール)。 赤内型原虫感染後30日間のマウスの生存率を示した図である(-○-:MSP1封入リポソーム接種、-□-:TRAP封入リポソーム接種、-△-:MSP1+TRAP封入リポソーム接種、-▼-:リポソーム接種、-◇-:MSP1+TRAP接種、一番下の-○-:コントロール)。 ワクチン接種後からスポロゾイト感染後30日までの特異抗体産生を示した図である上の2つのグラフは、左:CSP封入リポソームによるIgG1産生(左)とIgG2a産生(右)を示す。下の2つのグラフは、左:TRAP封入リポソームによるIgG1産生(左)とIgG2a産生(右)を示す(-○-:CSP封入リポソーム接種、-□-:TRAP封入リポソーム接種、-△-:CSP+TRAP封入リポソーム接種、-▽-:リポソーム接種、-◆-:CSP+TRAP接種)。 スポロゾイト感染後30日間のマウスの生存率を示した図である(-●-:CSP封入リポソーム接種、-■-:TRAP封入リポソーム接種、-▲-:CSP+TRAP封入リポソーム接種、上の-:リポソーム接種、下の-:CSP+TRAP接種、-□-:コントロール)。
本発明は、マラリア原虫由来のCSP又はMSP1あるいはその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体を、抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソームに封入してなるリポソーム製剤と前記リポソーム製剤を含むマラリア原虫感染症に対するワクチン製剤に関する。
以下、本発明について、詳細に説明する。
1.マラリア原虫
原虫(げんちゅう)とは真核単細胞微生物であって、運動能力や捕食能力を持つ動物的な単細胞生物である。単細胞の寄生虫と区別するため、寄生性で特に病原性のあるものを原虫と呼ぶことも多い。原虫には、ヒトにしか寄生できない宿主特異性の強い種類(マラリア原虫やイソスポーラなど)と、複数の動物種に寄生し、人畜共通の感染症を起す種類(赤痢アメーバやクリプトスポリジウムなど)がある。病原性は致死感染や重篤な症状を起すものから、無症状の非病原性のものまでさまざまである。消化管に寄生する原虫は、飲料水や食物を介して経口的に人体に侵入する。感染型は原虫の種類により異なるが、被嚢したシストやオーシスト、胞子(spore)などがある。赤痢アメーバやランブル鞭毛虫などはシストを、コクシジウム類はオーシストを、微胞子虫類は胞子を形成する。血液や組織に寄生する原虫の多くは特定の吸血昆虫やマダニの腸管で増殖し、これらを媒介者として人体に感染する。
マラリア原虫は、マラリアの病原体で、ハマダラカによって媒介される。マラリア原虫としては、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種のほか、サルマラリア原虫(P. knowlesi)が知られている。マラリア原虫は、ハマダラカ内で増殖し、スポロゾイト(殻の中で分裂した胞子が外に出たもの)としてその唾液腺に集まる。スポロゾイトは蚊の吸血に伴って宿主体内に送り込まれ、その肝細胞内で成熟増殖し、数千個のメロゾイト(分裂小体)となる。増殖したメロゾイトは肝細胞を破壊して赤血球に侵入し、分裂して赤血球を破壊して血液中に出る。このメロゾイトが赤血球破壊し血中に出るサイクルは繰り返される。この赤血球の破壊が、マラリアで見られる周期的な発熱の原因となっている。
2.マラリア原虫抗原
マラリア原虫抗原としては、TRAP、MSP1、MSP2、MSP4、MSP6、MSP7、MSP9、AMA1、CSP、LSA1、LSA3、SERAなど、種々のものが知られている。そのいくつかは、すでにワクチンとしての利用が試みられているが、前述のとおり、臨床における有効性は未だ確認されていない。
ワクチンに使用する抗原は、免疫原性が強く、宿主免疫系を回避しにくいものが望まれる。例えば、抗原遺伝子が多重遺伝子族を構成したり、遺伝子多型に冨み、抗原性を変化させて宿主免疫系を回避する抗原はワクチンには適さない。
本発明においては、様々なマラリア原虫の抗原のなかで、特にCSP及びMSP1を抗原として使用し、後述するリポソームに封入することで、それぞれ赤血球と肝臓というマラリア原虫のライフサイクルにおける2つの重要なステージにおいて、Th1型免疫とTh2型免疫の両方を誘導し、マラリアの感染・増殖を効果的に阻止できるワクチンが提供される。
Circumsporozoite protein (CSP)
Circumsporozoite protein (CSP)は、マラリア原虫のスポロゾイト表面タンパク質で、1980年にNussenzweigらのグループによりマウスマラリア原虫P. bergheiスポロゾイト特異的単クローン抗体を用いて同定・報告された。その後,赤外型の防御免疫の主要な標的であることや他のマラリア原虫に広く存在する分子であることが明らかになった。
Merozoite surface protein 1 (MSP1)
Merozoite surface protein 1 (MSP1)は、マラリア原虫のメロゾイト表面タンパク質で、分子量200Kの前駆体として合成され、メロゾイト表面で断片化され、メロゾイト表面で非共有結合的に会合しているが、メロゾイトが赤血球に侵入する際に放出される。MSP1は、メロゾイトの赤血球侵入に必要なタンパクであると考えられている。
本発明で用いられるMSP1又はCSPは、その開始コドンから終止コドン内のアミノ酸配列を使用すれば、アミノ酸の長さは限定されない。後述のとおり、免疫学的に活性である限り、MSP1又はCSPの断片を用いてもよい。
本発明で用いられるMSP1又はCSPの一例として、GenBankに登録されているPlasmodium berghei由来のCSPのアミノ酸配列(GenBank ID M43521, complete CDS)を配列番号2に示す。また、GenBankに登録されているPlasmodium berghei由来のMSP1のアミノ酸配列(GenBank ID M28887, complete CDS)を配列番号4に示す。各種マラリア原虫間での抗原アミノ酸配列の相同性は37〜84%の開きがある。よって、これらの配列に示されるアミノ酸配列に限定されることなく、他のマラリア原虫由来のCSPやMSP1も用いることができ、その配列はいずれもGenBank等の公共のデータベースから容易に得ることができる。
また、所望の免疫原性を有する限り、本来のアミノ酸配列(例えば、Plasmodium berghei由来のCSPやMSP1であれば、配列番号2あるいは配列番号4に表されるアミノ酸配列)において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換あるいは付加した配列であってもよい。なお、「数個」とは、好ましくは2〜7個、より好ましくは2〜5個、最も好ましくは2〜3個のアミノ酸を意味する。また、アミノ酸置換は、類似するアミノ酸残基間の保存的置換が好ましく、例えば、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、グリシンとアラニン(Ala)たはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、スレオニンとセリン(Ser)又はアラニン、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等のアミノ酸の間での置換を挙げることができる。
あるいはまた、それが所望の免疫原性を有する限り、本来のアミノ酸配列(例えば、Plasmodium berghei由来のCSPやMSP1であれば、配列番号2あるいは配列番号4に表されるアミノ酸配列)と、BLAST等を用いて計算したときに(例えば、BLASTのデフォルトすなわち初期条件のパラメーターを用いた場合に)、少なくとも約60%以上、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約97%、約98%若しくは約99%以上の相同性(同一性)を有しているタンパク質であってもよい。
すなわち、本発明にかかる「免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体」には、投与された生体内においてマラリア原虫に対する免疫応答活性を誘導しうる(例えば抗原性、受容体結合、MHCクラスI及びクラスII分子によるペプチドの結合による複合体の形成等)限りにおいて、わずかな改変や修飾を有するMSP1又はCSPタンパク質が含まれる。また、MSP1又はCSPと他のペプチドとの融合タンパク質も、本発明にかかる「免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体」に含まれる。
本発明では、免疫学的活性を有する限り、上記したCSP若しくはMSP1、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体の断片を使用することができる。使用する部位は特に限定されないが、CSPであれば、NANP repeat及びthrombospondin-like domainを含むC末端領域が好ましい(Cherif et al., Vaccine 2011; Ahlborg et al., Infection & immunity 2002; Hirunpetcharat et al., Immunity 1997; Wipasa et al., Infection & immunity 2009; Wan Omar et al., Tropical Biomedicine 2007.)。MSP1であれば、赤血球への侵入に不可欠なC末端領域が好ましい(Crompton et al., Science in medicine 2010; Schwartz et al., Malaria journal 2012.)。例えば、CSP又はMSP1のC末端100アミノ酸残基、好ましくはC末端80残基、より好ましくはC末端60残基、さらに好ましくはC末端50残基のうち、少なくとも連続した8〜50アミノ酸残基、好ましくは15〜50アミノ酸残基、より好ましくは20〜50アミノ酸残基、さらに好ましくは30〜50アミノ酸残基を含む断片を用いることができる。
一例として、前述したPlasmodium berghei由来のCSP断片として、配列番号2の186位〜332位を含む断片、MSP1断片として、配列番号4の1608位〜1768位を含む断片を後述する実施例では使用した。
CSPまたはMSP1断片は、所望の免疫原性を有する限り、本来のアミノ酸配列(例えば、上記の例であれば、配列番号2の186位〜332位あるいは配列番号4の1608位〜1768位に表されるアミノ酸配列)において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換あるいは付加した配列であってもよい。なお、「数個」とは、好ましくは2〜7個、より好ましくは2〜5個、最も好ましくは2〜3個のアミノ酸を意味する。また、アミノ酸置換は、類似するアミノ酸残基間の保存的置換が好ましく、例えば、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、グリシンとアラニン(Ala)たはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、スレオニンとセリン(Ser)又はアラニン、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等のアミノ酸の間での置換を挙げることができる。
あるいはまた、CSPまたはMSP1断片は、それが所望の免疫原性を有する限り、本来のアミノ酸配列(例えば、上記の例であれば、Plasmodium berghei由来のCSPであれば、配列番号2の186位〜332位あるいは配列番号4の1608位〜1768位に表されるアミノ酸配列)と、BLAST等を用いて計算したときに(例えば、BLASTのデフォルトすなわち初期条件のパラメーターを用いた場合に)、少なくとも約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約97%、約98%若しくは約99%以上の相同性(同一性)を有しているタンパク質であってもよい。
3.MSP1又はCSPの調製
3.1 マラリア原虫からの調製
本発明で用いられるMSP1又はCSPの調製は、マラリア原虫由来可溶性タンパク質を含む天然物、例えばマラリア原虫から一般的なカラムワークで精製を行う方法によることができ、さらに得られたマラリア原虫由来可溶性タンパク質の糖鎖除去部分分解、修飾等の工程を適宜追加して行ってもよい。
3.2 組換え生産
大腸菌などの微生物や動物細胞、植物を使用し、マラリア原虫のMSP1又はCSP遺伝子全体あるいは一部を導入・発現して組換えタンパク質を調製してもよい。
組換えタンパク質作製のためのベクターは、公知のベクターにMSP1又はCSPをコードする遺伝子、又はその一部を連結(挿入)して得ることができる。
MSP1又はCSPをコードする遺伝子は、前述したMSP1又はCSPのアミノ酸配列をコードするものであればよく、後述する宿主に応じて適宜最適化を行う。
一例として、配列番号1に、GenBankに登録されているPlasmodium berghei由来のCSP遺伝子の塩基配列(GenBank ID M28887)を示すが、配列番号1と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、さらに特に好ましくは約95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有する遺伝子も所望の免疫原性を有するMSP1をコードする限り使用することができる。
また、配列番号3に、GenBankに登録されているPlasmodium berghei由来のMSP1遺伝子の塩基配列(GenBank ID U43521)を示すが、配列番号3と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、さらに特に好ましくは約95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有する遺伝子も所望の免疫原性を有するMSP1をコードする限り使用することができる。
前記ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322, pBR325, pUC18, pUC119, pTrcHis, pBlueBacHis等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13, YEp24, YCp50, pYE52等)、植物細胞宿主用プラスミド(pBI221, pBI121)等が挙げられ、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用される。本発明の遺伝子は、その遺伝子が機能しうる態様で、宿主に応じたプロモーターに連結して導入される必要がある。ここで「機能しうる態様」とは、プロモーター活性によって、その下流に配置された本発明の遺伝子が宿主中で適切に発現され、その機能を発揮することをいう。使用されるプロモーターの種類は、宿主細胞によって適宜決定されるが、その詳細は次項で説明する。
本発明のベクターは、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、形質転換マーカー遺伝子(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、カルボキシン耐性遺伝子、フレオマイシン耐性遺伝子等)、リボソーム結合配列(SD配列)等を含んでいてもよい。
組換えタンパク質を生産するための形質転換体は、前記ベクターを適当な宿主に導入することにより得ることができる。宿主は、本発明のCSP又はMSP1遺伝子が発現できるものであれば特に限定されない。例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、麹菌(Aspergillus oryzae)、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞等が挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明のベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HMS174(DE3)、K12、DH1等が挙げられ、枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)MI 114、207-21等が挙げられる。プロモーターとしては、大腸菌等の上記宿主中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の、大腸菌やファージに由来するプロモーターが挙げられる。また、tacプロモーター等のように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌へのベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110-2114 (1972)]や、エレクトロポレーション法等が挙げることができる。
酵母を宿主とする場合は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ピヒア・パストリス等が用いられる。プロモーターとしては、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を挙げることができる。酵母へのベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182-187 (1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929-1933 (1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J. Bacteriol., 153:163-168 (1983)]等を挙げることができる。
麹菌を宿主とする場合、プロモーターとしては、例えば、GlaA プロモーター(Hata et al. Curr. Genet., Vol 22, 85-91, 1992)、AmyB プロモーター(Tuchiya et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., Vol 46, 1849-1853, 1992)、No. 8 プロモーター(Ozeki et al. Biosci. Biotech. Biochem., Vol 60, 383-389, 1996)が挙げられる。麹菌へのベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法、カルシウムイオン法等を用いることができる。
CSP又はMSP1タンパク質は、前述の形質転換体(宿主細胞)を適当な培地で培養し、その培養物から所望のタンパク質を採取することによって得ることができる。形質転換体の培養は、常法に従って行えばよい。例えば、大腸菌や酵母等の微生物を宿主とする形質転換体の場合は、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体を効率的に培養しうる天然培地、あるいは合成培地で培養すればよい。また、植物細胞を宿主として用いている場合には、チアミン、ピリドキシン等のビタミン類を添加した植物細胞用の培地で培養すればよい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培地中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いたベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いたベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いたベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下、30〜37℃位で6時間〜3日間程度行う。培養期間中、pHは7.0〜7.5程度に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより該タンパク質を抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、SDS-PAGE、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
上記した方法のほか、CSP又はMSP1の部分配列や、T細胞エピトープを含むペプチド断片をタンパク質工学的に、或いはペプチド合成により作製してもよい。
4.リポソーム
4.1 リポソーム構成脂質
本発明で用いられるリポソームを構成する脂質は、リポソームを構成することが知られている通常の脂質であればよく、例えば、卵黄、大豆、又はその他の動植物などの天然物由来の脂質やこれらを水素添加によって不飽和度を低下したもの、あるいは化学合成したものが挙げられ、これらを単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
後述するように、オリゴ糖導入では、リン脂質上のアミノ基とオリゴ糖の有するアルデヒド基を反応させるため、本発明で用いるリン脂質としてはアミノ基を有するものが好ましく、これらを単独で、又は二種以上組合せて使用できる。これらのリン脂質は1位、2位の2つの脂肪酸残基は任意に選択することができ、その脂肪酸残基は天然物由来又は合成品由来のいずれのものでもよく、混合脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、重合性脂肪酸などに由来する炭素数4〜30の脂肪酸残基を利用できる。飽和脂肪酸としては炭素数12〜24のものが好ましく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがあげられる。また不飽和脂肪酸としては炭素数14〜22、不飽和結合1〜6のものが好ましく、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などがあげられる。このようなアミノ基を有するリン脂質の中では、天然物由来のものとしては卵黄又は大豆由来のリン脂質が好ましい。好適な例としては、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン又はホスファチジルスレオニン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリンなどがあげられる。
リポソームの膜構成成分(膜形成成分)としては、糖鎖の導入が可能な限り、アミノ基を有するリン脂質の他にもリポソームを形成しうる他の化合物も使用でき、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、ホスファチジルグリセロール、その他のリン脂質類、コレステロール、脂肪酸、脂肪酸塩など、従来からリポソームの膜構成成分として用いられているものが使用できる。
具体的には、コレステロール(Chol)、3β-[N-(ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、N-(トリメチルアンモニオエチル)カルバモイルコレステロール(TC-Chol)などのステロール類;ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などのホスファチジルエタノールアミン類;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのホスファチジルコリン類;ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)などのホスファチジルセリン類;ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などのホスファチジン酸類等が挙げられる。
リポソームは、多層タイプであっても、単層タイプであってもよい。本発明において用いられるリポソームの粒径は特に限定されないが、0.1〜3μm、好ましくは0.2〜2.5μmである。リポソームの粒径が上記上限値を超えると、ゲル化してしまい、ワクチンとして使用できないからである。リポソームの粒径は、用いられる投与形態に応じて常法に従い、例えば所望の孔サイズのフィルターにより濾過することにより、調整することができる。
4.2 リポソーム表面のオリゴ糖
本発明で用いるリポソームは、その表面に抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合可能なオリゴ糖を有する。ここで、「抗原提示細胞」とは、マクロファージ、樹状細胞等を意味する。抗原提示細胞の表面には、Fcレセプターや補体レセプター、スカベンジャーレセプター、マンノース・レセプター、リポ多糖(LPS)レセプター、補体レセプターでもある CD11b/CD18(CR3)、Toll様レセプターなどが存在し、糖鎖を介する細菌などの貪食や、外来異物中の糖蛋白質の取り込みと抗原提示に直接的あるいは間接的に重要な役割を果たしている。本発明にかかる「抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子」とは、前述したような抗原提示細胞表面に存在する糖鎖結合性のレクチン様の性質を有する分子全般を意味しており、その好適な例としてマンノース・レセプターを挙げることができる。
リポソーム表面のオリゴ糖は、上述の抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子と結合可能なものであれば特に限定されず、構成する糖残基としては、D−マンノース(D-Man)、L−フコース(L-Fuc)、D−アセチルグルコサミン(D-GlcNAc)、D−グルコース(D-Glc)、D−ガラクトース(D-Gal)、D−アセチルガラクトサミン(D-GalNAc)、D−ラムノース(D-Rha)などが挙げられる。オリゴ糖は、D−マンノースを含む糖残基から成るハイマンノースタイプであることが好ましく、なかでもD−マンノースから成るものやD−マンノースとD−アセチルグルコサミンとからなるものが好ましく、特にD−マンノースのみから成るものが最も好ましい。D−マンノースから成るオリゴ糖としては、マンノビオース(Man2)、マンノトリオース(Man3)、マンノテトラオース(Man4)、マンノペンタオース(Man5)、マンノヘキサオース(Man6)、マンノヘプタオース(Man7)を挙げることができる。
オリゴ糖を構成する各糖残基の結合は特に限定されず、α1→2結合、α1→3結合、α1→4結合、α1→6結合、β1→4結合等を挙げることができる。また、各糖残基は1つずつ直鎖状に結合していてもよいし、枝分かれ構造であってもよい。
オリゴ糖を構成する糖残基の数は2〜11個が好ましく、特に3〜11個、なかでも3〜5個程度がもっとも好ましい。
リポソームの量に対するオリゴ糖の量はオリゴ糖の種類、封入しようとするマラリア原虫由来可溶性タンパク質の種類、リポソームの組合せ構造等により異なるが、一般に、リポソームを構成する脂質1mgに対して0.5μg〜500μgである。
リポソームへのオリゴ糖の導入は、上記オリゴ糖と脂質を結合して調製した人工糖脂質を用いて行うことができる。人工糖脂質は、オリゴ糖の有するアルデヒド基を、アミノ基を有するリン脂質と反応させてシッフ塩基を形成し、次にこのシッフ塩基を、常法に従い還元、好ましくは化学還元、例えばNaBH3CNにより還元することにより、オリゴ糖と脂質とを結合して調製できる(水落次男、糖質工学、224-232頁、1992)。次いで、この人工糖脂質を利用して、リポソームにオリゴ糖を導入する。人工糖脂質が水溶性で有機溶剤に十分溶解しない場合(例えば、人工糖脂質として前記のRNとDPPEとの結合物(RN-DPPE)を用いるとき)には、これら(RN-DPPE)の水性溶液を調製し、これをポソームと混合して、例えば4℃ないし80℃(好ましくは内封物質が変性しない温度)、室温もしくは相転移温度において0.5〜120時間、例えば約24時間インキュベーションする。人工糖脂質が有機溶剤に溶解する場合には、人工糖脂質をリポソーム構成用脂質と共に、リポソーム製造過程において有機溶剤に溶解し、常法に従いリポソームを形成すればよい。なお、リポソーム表面へのオリゴ糖の結合は、抗原提示細胞表面に存在する糖鎖認識分子あるいはその一部を添加してリポソームの凝集反応が生じるか否かで調べればよい。
4.3 リポソームの製剤化
本発明のリポソーム製剤は、上記リポソームに前述したCSP又はMSP1タンパク質を内封して製造される。内封されるCSP又はMSP1タンパク質の量は、特に限定されず、投与経路に応じて適宜調節可能であるが、一般的にリポソームに用いる脂質1mgに対して0.1μg〜500μgであることが望ましい。
前述のとおり、マラリア原虫のライフサイクルには、肝臓ステージと赤血球ステージがあり、肝臓ステージでは細胞性免疫、赤血球ステージでは液性免疫(抗体産生)を誘導する必要がある。しかしながら、これまでのアジュバントやワクチン抗原キャリアは、2つのステージに対して、それぞれ別々のものを使用する必要があった。本発明では、1種類のキャリア(抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソーム)で、肝臓ステージと赤血球ステージの2つのステージに有効なワクチンが提供される。
5.ワクチン製剤
本発明のワクチン製剤は、本発明のリポソーム製剤に製薬上許容しうる担体を適宜加えて、溶液又は懸濁液のいずれかの形態で、投与可能に調製される。本発明のワクチン製剤には、薬学的に受容可能であって、活性成分に適合した賦形剤がしばしば混合される。適切な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの混合物が挙げられる。さらに、所望に応じて、ワクチンは、少量の補助剤(例えば加湿剤又は乳化剤)、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの効能を高めるアジュバントを含有し得る。有効であり得るアジュバントの例は、限定されないが、例えば以下を包含する。水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr-MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、nor-MDPと称せられる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEと称せられる)、及びRIBI。RIBIは、バクテリアから抽出した3成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート、及び細胞壁骨格(HPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween(登録商標)80エマルジョン中に含有している。アジュバントの効能は、CSP又はMSP1から構成されるワクチンを投与することにより生じる、抗体の量を測定することにより決定され得る。
本発明のワクチン製剤は、通常皮下注射、静脈内注射又は筋内注射のような、注射により投与される。他の投与態様に適切な別の処方としては、坐薬、及びある場合には経口、経鼻処方薬が挙げられる。
所望により、アジュバント活性を有する1以上の化合物を加えることができる。アジュバントは、該免疫系の非特異的刺激因子である。それらは、ワクチンに対する宿主の免疫応答を増強する。当技術分野で公知のアジュバントの具体例としては、フロイント完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオンブロック重合体、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油及びCarbopolが挙げられる。粘膜適用に特に適したアジュバントとしては、例えば、大腸菌(E. coli)易熱性毒素(LT)又はコレラ(Cholera)毒素(CT)が挙げられる。他の適当なアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、油性乳剤(例えば、Bayol(登録商標)又はMarcol 52(登録商標)のもの)、サポニン又はビタミンEソリュビリゼートが挙げられる。したがって、好ましい形態においては、本発明のワクチンはアジュバントを含む。
例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内に投与する注射剤において、本発明のワクチンと製薬上許容される担体又は希釈剤の他の具体例には、安定化剤、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、グルコース、デキストラン)、アルブミン又はカゼインなどのタンパク質、ウシ血清又は脱脂乳などのタンパク質含有物質、及びバッファー(例えば、リン酸バッファー)などともに投与することができる。
投与されるべき量は、通常投与当たり抗原を0.01μgから100,000μgまでの範囲であり、これは、処置される対象(たとえばヒト、豚、羊、山羊、ネコなどの哺乳動物や鳥類)、その対象の免疫系での抗体合成能、及び所望の防御の程度に依存し、経口、皮下、経鼻、皮内、筋肉内、静脈内投与経路などの投与経路にも依存する。
本発明のワクチン製剤は、単独投与スケジュールで、又は好ましくは複合投与スケジュールで与えられ得る。複合投与スケジュールでは、接種の開始時期に1〜10の個別の投与を行い、続いて免疫応答を維持する及び又は強化するのに必要とされる時間間隔で、例えば2回目の投与として1〜4ヵ月後に、別の投与を行い得る。必要であれば、数ヶ月後に引続き投与を行い得る。投与のレジメもまた、少なくとも部分的には、個体の必要性により決定され、医師の判断に依存する。
さらに本発明のワクチンは、新たなマラリア原虫感染に対し、予防的に使用してもよい。さらにまた、マラリア原虫に感染した対象に投与し、生体内にマラリア原虫に対する強い免疫反応を誘導することにより、マラリア原虫を排除する治療的ワクチンとして使用してもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:マラリア原虫由来可溶性タンパク質の調製
Merozoite surface protein 1 (MSP1, GenBank ID U43521、クローニング部位1608-1768アミノ酸), Thrombospondin-related adhesive protein (TRAP, GenBank ID U67763、クローニング部位239-530アミノ酸), Circumsporozoite protein (CSP, GenBank ID M28887、クローニング部位186-332アミノ酸)遺伝子をネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA株)からクローニングし、その遺伝子を基に大腸菌にてglutathione S-transferase (GST)と融合した組換えタンパク質を発現させた。得られた組換えタンパク質は、Glutathione Sepharose 4B(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて精製し、thrombin protease (GE Healthcare社製)でGSTを除去した。さらに、Detoxi-GelTM Endotoxin Removing Gel(Pierce社製)を用いて、精製した組換えタンパク質からエンドトキシンを除去した。
TRAPは肝臓ステージと赤血球ステージの両方でワクチン効果を有する抗原として知られている。一方、MSP1は赤血球ステージでの免疫活性が期待される抗原であり、CSPは肝臓ステージでの免疫活性が期待される抗原である。
実施例2:人工糖脂質の調製
Manα1→6(Manα1→3)Manという構造を有するマンノトリオース(Man3)2.5〜5mgに600μlの蒸留水を加えて攪拌溶解してオリゴ糖溶液を調製した。他方、クロロホルム/メタノール(1:1体積比)混合液にDPPEを5mg/mlの濃度で溶解してDPPE溶液を調製した。また、メタノールに、NaBH3CNを10mg/mlの濃度に溶解してNaBH3CN溶液を調製した。前記オリゴ糖溶液600μlに前記DPPE溶液9.4 ml及び前記NaBH3CN溶液1 mlを加えて攪拌混合した。この反応混合液を60℃にて16時間インキュベートし、人工糖脂質を生成せしめた。この反応混合液をシリカゲルカラム及びC18逆相カラムにより精製することにより人工糖脂質M3-DPPEを得た。
実施例3:マラリア原虫タンパク質封入リポソームの調製
コレステロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、実施例2で作製したマンノトリオースジパルミトイルホスフファチジルエタノールアミン(M3-DPPE)をモル比で10:10:1、あるいは、コレステロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)をモル比1:1で混合し、クロロホルム2 mlに溶解し、10 mlのナシフラスコ内で脂質フィルムを作製した。次に脂質フィルムに3.75mg/mlの実施例1で得られたトキソプラズマ由来可溶性タンパク質(含量0.5mg/ml)を加え、40℃の水槽でVortexにて、リポソームを作製した。次にこのリポソームを整粒装置のエクストルーダーを用いて、1μmのフィルターに0.2〜1MPaの範囲で加圧しながら5回整粒を行った。次にリポソーム液を遠心法にて回収後、PBS(-)で3回懸濁、遠心、上清除去することでリポソームに封入されなかった抗原を除去した。得られたリポソームの分析は、コレステロール量、マラリア原虫由来可溶性タンパク質の測定をそれぞれ市販のキット、コレステロールEテストワコー(和光純薬、439-17501)、Modified Lowry Protein Assay Reagent Kit(Pierce、23240)を用いて行った。
実施例4:マラリア原虫由来可溶性タンパク質封入リポソームのワクチン効果の検証
以下の実施例で使用されているリポソーム封入体の略記について、「OML-PbMSP1CT」とは実施例1の様に作製したMSP1タンパク質を封入したオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「OML-PbTRAP」とは実施例1の様に作製したTRAPタンパク質を封入したオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「OML-PbMSP1CT-PbTRAP」とは実施例1の様に作製したMSP1タンパク質とTRAPタンパク質を封入したオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「OML」とはタンパク質を封入していないオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「PbMSP1CT-PbTRAP」とは実施例1の様に作製したMSP1タンパク質とTRAPタンパク質であることを示し、「Control」とはリン酸緩衝液であることを示し、「OML-PbCSP」とは実施例1の様に作製したCSPタンパク質を封入したオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「OML-PbCSP-PbTRAP」とは実施例1の様に作製したCSPタンパク質とTRAPタンパク質を封入したオリゴ糖(Man3)を表面に持つリポソームであることを示し、「PbCSP-PbTRAP」とは実施例1の様に作製したCSPタンパク質とTRAPタンパク質であることを示す。
作製したワクチンの赤血球内型マラリア原虫へのワクチン効果を検証するために、赤内型マラリア原虫で発現が認められる原虫由来可溶性タンパク質(MSP1、TRAP)封入リポソーム(タンパク量で3 μg)、タンパク封入無しリポソーム及びPBSをBALB/cマウス(8週齢、メス)に2週間間隔で3回皮下接種した。3回目の接種から2週後にネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA株)感染赤血球を100,000個、腹腔内接種した。感染後30日間マウスの生存率を計測した。
各実験群のマウスの抗体産生を測定したところ、OML-PbMSP1CT接種群と OML-MSP1CT-PbTRAP接種群においてワクチン接種期間で抗PbMSP1CT抗体の産生が認められ、OML-PbTRAP接種群とOML-MSP1CT-PbTRAP接種群においてワクチン接種期間で抗PbTRAP抗体の産生が認められた(図1)。
各実験群のマウスについて30日間の生存率を比較したところ、OML-PbMSP1CT接種群と OML-MSP1CT-PbTRAP接種群において、マウスの生存期間の延長が認められ、最終的な生存率はそれぞれ33.3%と50%であった(図2)。その他の実験群では、感染後30日以内にすべての個体が死亡した。
作製したワクチンについて肝臓ステージのマラリア原虫へのワクチン効果を検証するために、肝臓ステージのマラリア原虫で発現が認められる原虫由来可溶性タンパク質(CSP、TRAP)封入リポソーム(タンパク量で3μg)、タンパク封入無しリポソーム及びPBSをBALB/cマウス(8週齢、メス)に2週間間隔で3回皮下接種した。3回目の接種から2週後にネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA株)のスポロゾイトを2,000個、皮下接種した。感染後30日間マウスの生存率を計測した。
各実験群のマウスの抗体産生を測定したところ、OML-PbCSP接種群と OML-CSP-PbTRAP接種群においてワクチン接種期間で抗PbCSP抗体の産生が認められ、OML-PbTRAP接種群とOML-CSP-PbTRAP接種群においてワクチン接種期間で抗PbTRAP抗体の産生が認められた(図3)。
各実験群のマウスについて30日間の生存率を比較したところ、OML-PbCSP接種群と OML-CSP-PbTRAP接種群において、マウスの生存期間の延長が認められ、最終的な生存率はともに60%であった(図4)。生存が確認されたマウスにおいて、赤血球内に存在するマラリア原虫は確認されなかった。その他の実験群では、感染後30日以内にすべての個体が死亡した。
これらのことから、マラリア原虫由来可溶性タンパク質として、MSP1あるいはCSPを封入したオリゴ糖リポソームは、皮下投与によりマラリア原虫感染を防御できることが明らかとなった。本実施例の結果から明らかなように、従来公知のすべてのワクチン抗原が本発明のオリゴ糖リポソーム系に利用可能なものではなく、本実施例によって初めて有効な抗原が特定できた。
これまでのワクチン製剤では、肝臓と赤血球の2つのステージに対して、それぞれ別々のアジュバントやワクチン抗原キャリアを使用する必要があった。本発明では、オリゴ糖リポソームをキャリアにすることで、マラリア原虫のライフサイクルの2つのステージ(赤血球と肝臓)に対応できるワクチンの開発が可能となった。したがって、本発明のマラリア原虫由来可溶性タンパク質を封入したオリゴ糖リポソームは、マラリアに対する効果的なワクチンとして利用できる。
本発明にかかるリポソーム製剤は、安全で高い免疫誘導効果を有し、マラリア原虫感染症に対するワクチンとして有用である。

Claims (11)

  1. マラリア原虫由来の抗原たんぱく質circumsporozoite protein (CSP)若しくはmerozoite surface protein 1 (MSP1)、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体、あるいはその免疫学的に活性な断片を、抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子に結合しうるオリゴ糖を表面に有するリポソームに封入してなるリポソーム製剤。
  2. 免疫学的に活性な断片が、CSP若しくはMSP1、又はその免疫学的に活性な変異体若しくは誘導体のC末端領域を含む断片である、請求項1に記載のリポソーム製剤。
  3. 免疫学的に活性な断片が、CSP又はMSP1のC末端100アミノ酸残基のうち、少なくとも連続した8〜50アミノ酸残基を含む断片である、請求項1に記載のリポソーム製剤。
  4. 免疫学的に活性な断片が、以下の(a)〜(c)のいずれかである、請求項1に記載のリポソーム製剤。
    (a) 配列番号2の186〜332位に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (b) 配列番号2の186〜332位に示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質、
    (c) 配列番号2の186〜332位に示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質
  5. 免疫学的に活性な断片が、以下の(d)〜(f)のいずれかである、請求項1に記載のリポソーム製剤。
    (d) 配列番号4の1608〜1768位に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (e) 配列番号4の1608〜1768位に示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質、
    (f) 配列番号4の1608〜1768位に示されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、マラリア原虫に対する免疫応答を誘導しうるタンパク質
  6. 前記抗原提示細胞表面の糖鎖認識分子がマンノース・レセプターである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
  7. 前記オリゴ糖が2〜11の糖残基からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
  8. 前記オリゴ糖が3〜5の糖残基からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
  9. 前記オリゴ糖が2以上のマンノース糖残基を含むものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のリポソーム製剤と製薬上許容しうる担体を含む、マラリア原虫感染症に対するワクチン製剤。
  11. 皮下、皮内、経口、腹腔又は経鼻投与されるものである、請求項10に記載のワクチン製剤。
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