JP2016144422A - 液滴形成用シャーレ及びそれを用いた電界撹拌方法 - Google Patents

液滴形成用シャーレ及びそれを用いた電界撹拌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、振盪をしなくともシャーレの内容液を効率よく撹拌することができる新たな方法、及びその方法を可能とするシャーレを開発することを目的とする。【解決手段】本発明は、底面と側壁とを有するシャーレにおいて、底面上に注ぎ入れた溶液が側壁と接することがないように、底面と側壁との内側境界部分に側壁よりも低い高さの台座を設け、溶液がドーム状の液滴を形成できるようにしたシャーレを提供する。このシャーレを用いることにより、シャーレ中に液滴を形成することができ、さらに、この液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させ、液滴を効率よく撹拌することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、ドーム形状の液滴(ドロップ)を形成することができ、細胞の培養その他試験研究に用いることができる、液滴形成用シャーレに関する。また、本発明は、当該液滴形成用シャーレ中に溶液、細胞培養液又は反応溶液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加して液滴を振動させることを特徴とする、電界撹拌方法、細胞培養方法、及び反応促進方法に関する。
シャーレとは、底面とその外周に配される側壁とを有する平皿状の容器である。もともとは、微生物の培養実験の目的で、平板な寒天培地を作成するために考案されたものであり、考案者の名前に由来してペトリ皿とも呼ばれる。シャーレは、現在では、微生物や細胞の培養用途に多量に消費される容器であるだけでなく、広く試験研究一般において用いられる容器となっている。通常、シャーレは、微生物などのコンタミネーションを防ぐために、蓋と一緒に組み合わせて用いられる。蓋には「ふち」が設けられており、その「ふち」が形成する開口部の口径が、シャーレの側壁が形成する開口部の口径よりも若干大きくなっているため、蓋の「ふち」がシャーレの側壁と接し、蓋をシャーレに被せた場合に適度にシールされるようになっている。このシールは完全なものではなく、蓋が振動した場合などに、シャーレ内にわずかな通気が行われるようになっている。
シャーレを用いて細胞培養を行う方法には、大きく分けて静置培養と浮遊培養とがある。静置培養は、主に接着性細胞の培養方法であり、浮遊培養は、主に浮遊性細胞の培養方法である。動物細胞では、血液細胞以外の細胞の大部分が接着性細胞となっている。静置培養では、シャーレに培養液を注入して、接着性細胞をその中に播くと、接着性細胞は培養液で浸されたシャーレの底面又は壁面に接着し、単層となって増殖・伸展する。そして、接着性細胞は、培養液で浸されたシャーレの底面又は壁面を覆い尽くす状態となるまで増殖する。
一方、浮遊培養では、シャーレ中に培養液を注入して、浮遊性細胞をその中に播き、シャーレを水平方向に反復して動かす「振盪」を機械的に行うことで、培養液を撹拌すると、浮遊性細胞が浮遊状態で増殖する。浮遊培養は、主に、血液細胞等の浮遊性細胞を増殖させるために用いられる。また、接着性細胞の中には、培養液を撹拌して強制的に細胞のシャーレへの接着を阻止することで、浮遊培養により増殖できる細胞も存在する。
しかし、シャーレを用いた静置培養は、培養液と細胞が入ったシャーレを一定温度で静置する方法であり、培養液が全く撹拌されない方法であるため、培養液の循環が生じにくいという問題があった。そこで、接着性細胞が浮遊しないようにしつつ、シャーレ中の培養液を効率的に撹拌できる、新しい方法の開発が望まれていた。
また、シャーレを用いた浮遊培養は、シャーレを振盪器などで振盪する方法であるが、シャーレは平皿であるので振盪すると培養液がこぼれ易く、また、振盪によりシャーレの蓋が激しく振動すると過大な通気となってしまうため、振盪によってコンタミネーションが生じやすいという問題があった。そこで、より穏やかに且つ効率的にシャーレ中の培養液を撹拌できる、新しい方法の開発が望まれていた。
シャーレは取扱いが容易な容器であるため、細胞培養や微生物培養以外にも、シャーレ中で化学反応実験を行い、あるいは、シャーレ中で生体組織の染色を行うなど、広く試験研究一般に用いられる容器となっている。
シャーレ中で化学反応や生体組織の染色等を行う際には、その化学反応や染色等の反応を促進するため、シャーレ中の内容液を撹拌することが好ましい。しかし、シャーレは平皿であり、内容液を撹拌することが難しく、振盪すると内容液がこぼれ易く、効率よく撹拌することができないという問題があった。そこで、振盪をしなくともシャーレの内容液を撹拌でき、かつ反応を促進することができる、新しい方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、以前に、変動電界を印加することにより、短時間で免疫染色を行うことを可能とする、迅速免疫染色法を開発している(特許文献1、非特許文献1)。
この迅速免疫染色法は、検出目的となるタンパク質を発現している組織に、抗体を含む溶液を滴下して微小液滴を形成し、変動電界によりこの液滴を振動させて撹拌し、抗原抗体反応を促進するものである。具体的には、スライドガラス上に生体組織を載置し、その生体組織の上に抗体を含む微小液滴を形成する。そして、スライドガラスの下部に電極を配し、その電極と対向する側にも微小液滴に接触しないように電極を配して、この2つの電極間に変動電界を発生させる。この変動電界により微小液滴が撹拌され、短時間で抗原抗体反応を行うことができる。
特殊な用途に用いる細胞培養の一つの方法として、マイクロドロップ法がある。このマイクロドロップ法は、体外受精を行うために、容器中に培養液の微小な液滴(マイクロドロップ)を作り、このマイクロドロップの中で精子と卵子とを培養して受精卵を作製する方法である。このマイクロドロップ法に用いるため、100μl程度の培養液の安定なドロップを形成するための容器が開発されている(特許文献2)。
特開2012−013598号公報 特開2014−207897号公報
戸田洋、外9名、アクタ・ヒストケミカ・エト・サイトケミカ(ActaHistochemica et Cytochemica、略号Acta Cytochem. Cytochem.)、日本組織細胞化学会、2011年6月3日発行、44巻、3号、p.133−139
従来のシャーレは、内容液の撹拌をするためにシャーレを振盪する必要があったが、シャーレは平皿であるので穏やかに効率よく撹拌することが難しく、振盪すると内容液がこぼれ易いという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、振盪をしなくともシャーレの内容液を効率よく撹拌することができる、新たな方法及びその方法を可能とするシャーレを開発することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究をした結果、シャーレに注ぎ入れた溶液がシャーレの側壁に接することがないように、シャーレの底面と側壁との内側境界部分に側壁よりも低い高さの台座を設けることにより、溶液を台座の高さを越えて注ぎ入れた場合に、溶液が側壁と接触してメニスカスを形成することなく、溶液の表面張力により液滴を形成することを見出した。そして、このシャーレにより形成された液滴に変動電界を印加すれば、シャーレを振盪することなく、シャーレの内容液を撹拌でき、細胞培養や化学反応等に用いることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、シャーレに係る下記の第1発明と、電界撹拌方法に係る下記の第2発明と、細胞培養方法に係る下記の第3発明と、反応促進方法に係る下記の第4発明と、電界撹拌システムに係る下記の第5発明と、細胞培養システムに係る下記の第6発明とを提供する。
第1発明は、底面と、その全外周に配される側壁と、側壁が形成する開口部を有するシャーレにおいて、シャーレの底面上に注ぎ入れた溶液がシャーレの側壁と接することがないように、底面と側壁との内側境界部分に側壁よりも高さの低い台座を設け、溶液を台座の高さを越えるまで注ぎ入れた場合にドーム形状の液滴を形成できるようにしたことを特徴とするシャーレに関する。
第1発明のシャーレは、液滴に変動電界を印加して撹拌を行う電界撹拌に用いる電界撹拌用シャーレであることが好ましい。
上記シャーレにおいては、シャーレの側壁が形成するシャーレの開口部を覆う蓋をさらに有することが好ましい。このように蓋を設けた場合には、無菌的ガス交換を可能とする通気口をシャーレに設けることもできる。
さらに、上記のシャーレにおいては、液滴に変動電界を印加するための電極を有することが好ましい。
ここで、その電極は蓋に設けられていることが好ましい。
そして、その電極は、凸部を有するリング状又は円板状の電極とすることが好ましい。
上記のシャーレにおいては、台座が撥水性の材料を用いて形成されていることが好ましい。
さらに、上記のシャーレにおいては、台座が、1mm以上で且つ底面の幅の30%以下の長さの幅を有するリング状の台座であることが好ましい。
さらに、上記のシャーレにおいては、液滴が、2ml〜1000mlの容量の液滴であることが好ましい。
そして、上記のシャーレにおいては、底面を円形とすることが好ましい。
第2発明は、第1発明のシャーレ中に液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させることを特徴とする電界撹拌方法に関する。
第3発明は、第1発明のシャーレ中に細胞培養液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させて撹拌することを特徴とする細胞培養方法に関する。
第4発明は、第1発明のシャーレ中に反応溶液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させて反応溶液の反応を促進することを特徴とする反応促進方法に関する。
第5発明は、第1発明のシャーレと、そのシャーレ中に形成した液滴に変動電界を印加する変動電界印加装置とを有することを特徴とする、電界撹拌システムに関する。
第6発明は、第1発明のシャーレと、そのシャーレ中に形成した細胞培養液の液滴に変動電界を印加する変動電界印加装置と、細胞培養液又は培養環境の温度を制御する温度制御装置とを有することを特徴とする、細胞培養システムに関する。
第1発明のシャーレは、シャーレの底面と側壁との内側境界部分に側壁よりも低い高さの台座が設けられているので、シャーレに注ぎ入れた溶液は側壁に接触することがなく、注ぎ入れられた溶液が台座の高さを越えると、台座を越えた部分においては溶液の分子が台座や側壁に引き付けられる力がなくなり、溶液の表面張力により液滴を形成できるので、シャーレ中に容量の大きな液滴を形成することができる。
第2発明の電界撹拌方法及び第5発明の電界撹拌システムは、第1発明のシャーレを用いてシャーレ中に液滴を形成し、変動電界を印加することにより、液滴表面及び内部の電荷に周期的に変動するクーロン力が働いて、液滴が振動するため、シャーレを振盪することなく効率よくシャーレ中の溶液を撹拌することができる。
第3発明の細胞培養方法及び第6発明の細胞培養システムは、第1発明のシャーレを用いてシャーレ中に細胞培養液の液滴を形成し、変動電界を印加することにより、液滴表面及び内部の電荷と変動電界との相互作用により液滴が振動するため、シャーレを振とうすることなく穏やかに液滴を撹拌することができる。このため、コンタミネーションのおそれを少なくし、適度な培養液の循環を行いつつ、シャーレ中で細胞を培養することができる。
第4発明の反応促進方法は、第1発明のシャーレを用いてシャーレ中で反応溶液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴表面及び内部の電荷と変動電界との相互作用により液滴が振動するため、シャーレを振とうすることなく効率よく液滴を撹拌することができる。このため、コンタミネーションのおそれを少なくしつつ、シャーレ中で溶液の反応を促進することができる。また、本発明の反応促進方法は、従来の方法では得られかった撹拌を可能とするため、変動電界の印加条件を設定することにより、従来の方法では得られなかった反応結果を得ることができる可能性がある。
本発明のシャーレの一実施形態を示す図である。図1(A)は、液滴を内部に形成したシャーレを示し、図1(B)はその断面図を示す。 蓋と蓋に備えられた電極とを有する本発明のシャーレの一実施形態を示す図である。図2(A)は、シャーレの断面図を示し、図2(B)は、シャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 液滴に変動電界を印加して液滴を振動させた状態の一例を示す図である。図3(A)は、電極に蓄積した電荷が最小となっている状態を示し、図3(B)は、電極に蓄積した電荷が最大となっている状態を示す。 リング状の電極を蓋に備えたシャーレを示す図である。図4(A)は、シャーレの断面図を示し、図4(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 リング状の電極にさらに2箇所の凸部を設けた電極を有するシャーレを示す図である。図5(A)は、シャーレの断面図を示し、図5(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 リング状の電極に1箇所だけ凸部を設けた電極を有するシャーレを示す図である。図6(A)は、シャーレの断面図を示し、図6(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 蓋に備えた二重リング電極と、底面に備えた平板電極とを有するシャーレを示す図である。図7(A)は、シャーレの断面図を示し、図7(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 蓋に備えた二重リング電極を有するシャーレを示す図である。図8(A)は、シャーレの断面図を示し、図8(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 蓋に二重リング電極と下皿に二重リング電極を有するシャーレを示す図である。図9(A)は、シャーレの断面図を示し、図9(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。 従来のシャーレの一例を示す図である。図10(A)は従来のシャーレを示し、図10(B)は、従来のシャーレの断面図を示す。
1.本発明のシャーレ
本発明のシャーレは、底面と、その外周に配される側壁と、側壁が形成する開口部とを有するシャーレにおいて、シャーレの底面上に注ぎ入れた溶液がシャーレの側壁と接することがないように、底面と側壁との内側境界部分に側壁よりも低い高さの台座を設けることにより、溶液を台座の高さを越えるまで注ぎ入れた場合にドーム形状の液滴を形成できるようになっている。
ここで、「シャーレ」とは、底面と側壁とを有し、広く試験研究一般に用いられる容器をいう。シャーレの材質は、例えば、ガラス、ポリエチレン、ポリスチレン等を用いることができ、これを成形することにより製造することができる。シャーレは、内部に収容する溶液や細胞の様子を観察できるように、通常は透明な材料を用いるが、用途によっては着色することもできる。
ここで、従来のシャーレの一例について、図10を用いて説明する。
図10(A)は従来のシャーレを示し、図10(B)は、シャーレの直径を通る鉛直面での断面図(以下、「断面図」という)を示したものである。従来のシャーレ(1)は、底面(2)とその外周に配される側壁(3)とからなる平皿状の容器である。シャーレに溶液(4)を注ぎ入れると、溶液(4)はシャーレの底面(2)と側壁(3)に接してシャーレ内部に保持されるが、側壁(3)が液体分子を引き付ける力により、側壁(3)の周辺で液面が屈曲してメニスカス(5)が生じる。
このように、従来のシャーレに溶液を注ぎ入れた場合には、表面張力により中央が盛り上がった液滴(ドロップ)を形成することができなかった。
本発明のシャーレの1つの実施形態を図1に示す。図1(A)は、液滴を内部に形成したシャーレを示し、図1(B)はその断面図を示したものである。図1において、シャーレ(1)は、底面(2)とその外周に配される側壁(3)とを有し、さらに底面(2)と側壁(3)の内側境界部分において、側壁(3)よりも低い高さの台座(6)が設けられている。
シャーレ(1)の底面(2)に溶液(4)を注ぎ入れると、溶液(4)は底面(2)と台座(6)に接触した状態で嵩が増してゆく。しかし、溶液(4)の液面が台座(6)の高さを越えると、台座(6)に接触することができなくなり、溶液(4)の液体分子が台座(6)に引きつけられる力がなくなって、溶液(4)の表面張力により、溶液(4)は中央が盛り上がり、平坦な液面から半球に近づいた形状の液面を有する液滴(ドロップ)を形成する。
本発明のシャーレは、このように液滴を形成することができるが、ここで「液滴」とは、表面張力により中央が盛り上がったドーム形状の溶液をいう。そして、「溶液」とは、溶媒又は溶媒に他の物質が混合したものであれば如何なるものでもよく、合成化合物、天然化合物、金属微粒子等の化学物質、核酸、タンパク質、脂質等の生体分子、細胞、微生物、ウイルス、生体組織等の生物試料などが溶媒に混合したものを含む。
本発明のシャーレの底面の形状は、液滴を保持できるものであればどのようなものでもよく、例えば、これらに限定されるわけではないが、円形、長方形、正方形などとすることができる。また、液滴を保持できるものであれば、凹凸がある形状であっても構わない。
底面の形状を円形とした場合には、半球状に近い液滴を形成し、大きな振動をさせても崩れにくい液滴を形成できるので好ましい。ここで、「円形」とは、真円のみならず楕円等も含む形状である。
シャーレの底面の大きさは、円形のものである場合、通常その直径が1cm〜50cm程度であり、シャーレの側壁の高さは、通常0.5cm〜20cm程度である。
本発明のシャーレは、シャーレの底面と側壁の内側境界部分に、側壁よりも低い高さの台座を設けたことを特徴としている。ここで、底面と側壁の「内側境界部分」とは、シャーレの内側において底面と側壁とが接続している部分に隣接した領域をいう。そして、「台座」とは、液滴が側壁と接触しないように存在する構造体であれば、どのようなものであってもよい。ただし、台座は、液滴が側壁と完全に接触しないように存在することを要するものではなく、液滴を形成することができれば、台座の一部が途切れることにより、液滴のごく一部が側壁と接触していてもよい。
しかしながら、液滴を形成するためには、液滴が側壁と完全に接触しないことが好ましく、台座の形状は、底面と側壁との内側境界部分に沿って途切れることがなく連続した、リング状の形状とすることが好ましい。ここで、リング状の形状とは、丸いリングのみならず、側壁の形状にあわせた四角のリング等の形状も含む。
台座をリング状とする場合、液滴が側壁と接触しないようにする観点から、台座の幅は1mm以上とするのが好ましく、また、シャーレ中で台座が占める面積を少なくする観点から、台座の幅は底面の幅の30%以下、より好ましくは10%以下とすることが好ましい。ここで、「底面の幅」とは、底面の形状のうち最も短い長さとなる幅をいう。例えば、底面の形状が楕円である場合には、「底面の幅」は楕円の短径を意味し、底面の形状が四角形の場合には、「底面の幅」は短い方の辺の長さを意味する。
台座の高さは、液滴が形成できるように少なくとも0.2mm以上とし、十分な液量とするためには、2mm以上とすることが好ましい。また、台座の高さは、形成する液滴の高さが側壁の高さを越えることがないように、側壁の高さの70%以下の高さとすることが好ましい。
台座が親水性の高い材料である場合、台座の高さを越えた部分の液滴が、台座の上辺に引き付けられて液滴が崩れてしまうおそれがあるため、台座は撥水性の材料を用いて形成することが好ましい。また、台座全体を撥水性の材料とすることなく、台座の上辺のみを撥水性の材料としてもよい。
このような撥水性の材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、オルガノポリシロキサン等のシリコン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン等を用いることができる。
また、台座の上辺は、底面に対して平行としてもよいが、底面に対して傾斜を持たせることもできる。台座の上辺を底面に対して平行としたシャーレは、製造が容易であるという点で好ましい。一方、台座の上辺を底面に対して傾斜させて、側壁に近づくほど台座の高さが大きくなるように成形したシャーレは、液滴が台座の上辺にはみ出してしまった場合でも、重力の作用により液滴が中央に集まる方向に力が働くため、液滴を形成しやすいという点で好ましい。台座を傾斜させる場合、好ましくは、台座の上辺を底面に対して20度以上傾斜させるのがよい。
台座が液滴と接触する部分である台座の側面は、底面に対して垂直とすることもでき、また、底面に垂直な面に対して傾斜を持たせることもできる。台座の側面を、底面に垂直な面に対して側壁側に20度以上傾斜させた場合には、メニスカスを生じにくくさせることができる。
台座は、シャーレの底面や側壁と一緒に一体成形で製造することもでき、また、台座の部分のみを別に成形して、底面と側壁からなるシャーレに嵌入することにより本発明のシャーレを製造することもできる。
まだ、台座は、側壁を階段状に折り曲げたような形状となるように成形することにより、台座部分ができるようにしてもよい。
液滴の容量は、効率的に撹拌できる液滴を形成するために、2ml以上とするのがよく、より好ましくは5ml以上とするのが好ましい。また、液滴の容量が大きすぎると液滴を振動させることが難しいため、液滴の容量は、1000ml以下とすることが好ましい。
本発明のシャーレは、側壁が形成する開口部を覆う蓋をさらに有することが好ましい。この蓋により、シャーレ内部を閉鎖系とすることができ、コンタミネーションを防ぐことができる。
シャーレに溶液を注入するなどの操作を可能とするため、シャーレの蓋は着脱可能又は開閉可能とすることが好ましい。蓋の形状は、側壁が形成する開口部を覆うことができるものであればどのようなものでもよく、シャーレ内部を完全に密閉するものに限らず、わずかな通気を可能とするものであってもよい。
本発明のシャーレは、シャーレの側壁が上部で屈曲して絞られた形状に成形することにより、瓶状の容器とすることもできる。この場合には、その開口部の口径は小さくなっており、螺旋状の溝により係合するキャップ状の蓋を設けることもできる。
図2は、蓋を有する本発明のシャーレの一実施形態を示す図である。図2(A)は、シャーレの断面図を示し、図2(B)は、シャーレの蓋を裏側から見た図を示す。図2(A)に示すように、底面(2)と側壁(3)と台座(6)からなるシャーレの下皿(7)に、蓋(8)を被せることにより、シャーレの内部を閉じた空間とすることができる。蓋(8)には、縁部(9)が設けられており、その縁部(9)が形成する開口部の口径が、側壁(3)が形成する下皿(7)の開口部の口径よりも若干大きくなっている。このため、蓋(8)を被せた場合に、蓋(8)の縁部(9)が側壁(3)に隣接し、適度にシールされるようになっている。そして、この蓋(8)は、シャーレの下皿(7)から取り外して分離することができる。
本発明のシャーレにおいて、台座は側壁よりも低い高さとなっているので、台座よりも高い位置まで盛り上がった液滴に接触することなく、蓋をすることが可能である。また、液滴が崩れてしまった場合でも、台座の外側に側壁があるので、シャーレの外に溶液がこぼれてしまうことはない。
本発明のシャーレには、液滴に変動電界を印加する電極を設けることが好ましい。電極は、液滴に変動電界を印加して液滴を振動させることができれば、どの位置に配置してもよいが、液滴に近い位置に電極を配置するのが効率的である。ただし、液滴と接触する位置に電極を配置すると、液滴と電極の間で電気化学的反応が生じてしまうため、液滴と電極とは非接触とする必要がある。このため、変動電界を印加する電極は蓋に設けることが好ましい。
蓋に設ける電極は、液滴に十分な変動電界を印加することができるように、蓋の内側(裏側)に設けることが好ましい。しかし、液滴に変動電界を印加することができれば、電極を蓋の外側(表側)に設けてもよい。
液滴に変動電界を印加する電極は、シャーレの底面又は側壁に設けることもできる。シャーレの底面に電極を設ける場合には、電極が液滴と接触しないように、電極は底面の外側に設けることが好ましい。
変動電界を印加するための電極は、シャーレに1つ備えていれば液滴を振動させることが可能である。しかし、陽極と陰極のセットを用いて変動電界を印加することもできる。例えば、これらに限定されるわけではないが、陽極を蓋に設け、陰極を底面に設けることにより、対となる電極で液滴に変動電界を印加することができる。
図2に示される実施形態においては、円形の平板電極(10)を蓋(8)に設けている。電極(10)は、リード線(11)を介して電圧アンプ等に連結することができる。電極(10)と液滴(4)の間には空隙があり、電極(10)は液滴(4)と接触せずに、変動電界を印加できるようになっている。変動電界の印加により、液滴(4)の電荷に加わるクーロン力が周期的に変化し、液滴(4)が振動する。図2において、電極(10)にプラスの電荷が蓄積しているときには、液滴表面のマイナスの電荷が矢印の方向に引き付けられる。
本発明のシャーレは、液滴を形成することができるため、液滴に変動電界を印可して撹拌を行う電界撹拌方法に好適に用いることができる。したがって、本発明は、電界撹拌用のシャーレを提供する。
電界撹拌方法の詳細については、以下に説明する。
2.本発明の電界撹拌方法
本発明の電界撹拌方法は、本発明のシャーレ中に液滴を形成し、液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させ、液滴を撹拌する方法である。
ここで、「変動電界」とは、周期的に強さが変動する電界を意味する。この変動電界により、液滴の表面又は内部の電荷にクーロン力が働くことによって、液滴が振動する。
図3は、液滴に変動電界を印加して液滴を振動させた状態の一例を示す図である。図3(A)は、電極に蓄積した電荷が最小となっている状態を示し、図3(B)は、電極に蓄積した電荷が最大となっている状態を示す。
図3(A)において、底面(2)と側壁(3)と台座(6)からなるシャーレ中に、液滴(4)が形成されている。液滴(4)は偏極するため、液滴(4)の表面はマイナス電荷(12)が存在している。また、液滴(4)の内部に溶解した分子にはマイナスにチャージする分子もある。
この液滴(4)に変動電界を印加するため、電極(10)と電極(17)と高圧アンプ(13)とファンクションジェネレータ(14)とこれらを電気的に接続するリード線(11)とを有する変動電界印加装置を用いる。この変動電界印加装置は、ファンクションジェネレータ(14)で発生させた信号を高圧アンプ(13)で昇圧させ、この電圧をシャーレの上部に設置した電極(10)とシャーレの下部に設置した電極(17)に、それぞれ対となる端子から供給する。電極(10)に正の電圧が供給されるときには、電極(17)にはこれとは符号が逆の負の電圧が供給されるため、電極(10)にプラス電荷(15)が蓄積される一方、電極(17)にはマイナス電荷(12)が蓄積される。信号は周期的に変化する信号であり、電極(10)に対してはプラス側に偏った信号であるので、電極(10)には常にプラス電荷(15)が蓄積し、その量は周期的に変動する。一方、電極(17)にはマイナス電荷(12)が常に蓄積し、その量が周期的に変化する。図3(A)は、電極(10)及び電極(17)に供給される電圧信号の絶対値が最小となっているときであり、両電極に蓄積した電荷が最小となっている状態である。
図3(A)においては、電極(10)に蓄積したプラス電荷(15)により電界が生じている。この電界の中で、液滴(4)に存在するマイナス電荷(12)には、電極(10)に蓄積したプラス電荷(15)に向かう方向にクーロン力が働く。そして、電極(17)に蓄積したマイナス電極(12)によっても電界が生じ、この電界の中で、液滴(4)に存在するマイナス電荷(12)には、電極(17)に蓄積したマイナス電荷(12)と反発する方向にクーロン力が働く。図3(A)では、電極(10)及び電極(17)に蓄積した電荷が少ないため、液滴(4)を上部に引き上げるクーロン力は小さい。
一方、図3(B)では、電極(10)及び電極(17)に供給される電圧信号の絶対値が最大となっているときであり、電極(10)に蓄積したプラス電荷(15)と、電極(17)に蓄積したマイナス電荷(12)が最大となっている。このため、電極(10)のプラス電荷(15)により生じる電界によって液滴(4)に働くクーロン力と、電極(17)のマイナス電荷(12)によって生じる電界によって液滴(4)に働くクーロン力も最大となっている。これにより、液滴(4)は、上部に大きく引き付けられ、中央部がより盛り上がった形状となる。
電極(10)に蓄積されるプラス電荷(15)は、電極に供給される電圧信号に応じて周期的に変化するため、図3(A)の状態と図3(B)の状態の間を周期的に往復することになる。このため、液滴(4)は、この周期に従って振動することとなる。
この液滴(4)の周期的な振動により、液滴内部の液体は撹拌される。液滴の振動の振幅は機械的な振盪と比較して小さいものであるが、液滴の振動の速度(周期)は機械的な振盪と比較して極めて大きいため、液滴(4)を効率よく撹拌することができる。
また、印加する変動電界の強度や、周波数、波形等を制御することによって、液滴の振動や液滴の撹拌の程度を適したものに調整することが可能である。
本発明の電界撹拌方法において、印加する変動電界は、液滴を振動させるものであればどのような電圧、周期、波形の条件であってもよい。印加する変動電界の電圧は、液滴の大きさにより異なるが、十分に撹拌効果を生じさせるためには、0.35〜2.5kv/mmとするのが好ましい。また、印加する変動電界を発生させるための信号は、0.1〜800Hzとするのが好ましい。印加する変動電界を発生させるための信号は、方形波、正弦波、三角波、ノコギリ波などを使用することができるが、撹拌効率を高めるためには、瞬間的な変化の大きい方形波を用いるのが好ましい。また、液滴に波を生じさせるような動きにより撹拌を行う場合には、正弦波を用いることが好ましい。変動電界を発生させるための信号は、図3の例のように、プラスに偏った波形を用いることもできるが、プラスとマイナスの間を反転する波形またはマイナスに偏った波形を用いることもできる。
3.電極のバリエーション
変動電界を印加する電極の形状は、どのようなものでもよく、これらに限定されるわけではないが、例えば、平板状の電極や、凸部を有する電極等を用いることができる。
液滴の上部を覆う平板状の電極の場合には、液滴全体に一様な変動電界を印加することができる。凸部を有する電極を用いた場合には、凸部に電荷が集中するため、集中した変動電界を液滴に印加することができる。
図2に示した円形の平板電極の他に、使用可能な電極の形状の一例を図4に示す。
図4(A)及び(B)は、リング状の電極を蓋に備えたシャーレの例を示す。図4(A)は、シャーレの断面図を示し、図4(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。円形の平板電極と比べて、リング状の電極(10´)は面積が小さくなっているため、より電荷密度が高くなり電界を集中させることができる。リング状の電極(10´)にプラスの電荷が蓄積しているときには、液滴表面のマイナスの電荷は矢印の方向に引き付けられる。
図5(A)及び(B)は、リング状の電極にさらに2箇所の凸部を設けた電極を有するシャーレの例を示す。図5(A)は、シャーレの断面図を示し、図5(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。リング状の電極(10´)に2箇所の凸部(16)を設けた電極を用いた場合には、電荷は凸部(16)に集中するため、2箇所の凸部(16)に引き付けられる形で液滴(4)が振動する。
本発明のシャーレにおいて電界撹拌を行うためには、リング状の電極又は円板状の電極に一箇所以上の凸部を設けた電極とすると、電界が集中するため好適に液滴を撹拌することができる。
図6(A)及び(B)は、リング状の電極に1箇所だけ凸部を設けた電極を有するシャーレの例を示す。図6(A)は、シャーレの断面図を示す、図6(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。この電極を用いた場合には、1箇所の凸部(16)にプラスの電荷が集中するため、その凸部(16)に引き付けられる形で液滴(4)が振動する。
図7は、蓋に備えた二重リング電極と、底面に備えた平板電極とを有するシャーレの例を示す図である。図7(A)は、シャーレの断面図を示し、図7(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。
図7(A)及び(B)に示すように、蓋に備えた電極は二つのリング電極(10´,10´´)からなる二重リング構造となっている。そして、二つのリング電極(10´,10´´)はリード線(11)により連結されている。そして、シャーレの底面(2)の外側には、平板電極(17)が設置されている。
図7(A)に示すように、蓋に備えた二重リング電極(10´,10´´)と、底面(2)に備えた平板電極(17)は、高圧アンプ(13)の正負の端子にリード線(11)を介して接続されている。そして、ファンクションジェネレータ(14)で発生させた信号を高圧アンプ(13)で昇圧させ、二重リング電極(10´,10´´)に供給すると、平板電極(17)には符合が逆の電圧信号が供給されることになる。したがって、二重リング電極(10´,10´´)にプラスの電荷が蓄積した時には、平板電極(17)にはマイナスの電荷が蓄積する。そして、この時には、液滴(4)の表面のマイナスの電荷は、二重リング電極(10´,10´´)のプラスの電荷に引き付けられるのと同時に、平板電極(17)のマイナスの電荷と反発する。このように液滴(4)には矢印方向のクーロン力がかかるが、電圧信号が反転すると、矢印とは逆向きのクーロン力が液滴(4)にかかることとなり、電圧信号の周期的な変動により、液滴(4)は振動する。
図8は、蓋に備えた二重リング電極を有するシャーレの例を示す図である。図8(A)は、シャーレの断面図を示し、図8(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。
図8(A)及び(B)に示すように、蓋に備えた電極は二つのリング電極(10´,10´´)からなる二重リングの構造となっている。
図8(A)に示すように、蓋に備えた二重リング電極のうち、リング電極(10´)とリング電極(10´´)とは、高圧アンプ(13)の正負の端子にリード線(11)を介して接続されている。そして、ファンクションジェネレータ(14)で発生させた信号を高圧アンプ(13)で昇圧させ、リング電極(10´)に供給すると、リング電極(10´´)には符合が逆の電圧信号が供給されることになる。したがって、二重リング電極(10´)にプラスの電荷が蓄積した時には、リング電極(10´´)にはマイナスの電荷が蓄積する。したがって、液滴(4)には、矢印に示すように、2方向のクーロン力がかかり、液滴(4)には二つの盛り上がったピークが形成されることとなる。次に、電圧信号が反転すると、矢印とは逆向きのクーロン力が液滴(4)にかかることとなり、液滴(4)の中央部に盛り上がったピークが形成されることとなる。そして、電圧信号の周期的な変動により、液滴(4)はピークの衝突・分離を繰り返す複雑な振動を行う。
尚、液滴に印加される電界が、左右方向にのみ電気力線が流れる電界とならないように、2つのリング電極(10´)と(10´´)の間の距離は、リング電極(10´)と底面(2)との間の距離よりも長くする。
図9は、蓋に備えた二重リング電極に加えて、下皿に二重リング電極を有するシャーレの例を示す図である。図9(A)は、シャーレの断面図を示し、図9(B)はシャーレの蓋を裏側から見た図を示す。
図9(A)に示すように、蓋(8)に備えた二重リング電極のうち、リング電極(10´)とリング電極(10´´)とは、高圧アンプ(13)の正負の端子にリード線(11)を介して接続されている。また、下皿(7)に備えた二重リング電極のうち、リング電極(17´)とリング電極(17´´)とは、高圧アンプ(13)の正負の端子にリード線(11)を介して接続されている。そして、ファンクションジェネレータ(14)で発生させた信号を高圧アンプ(13)で昇圧させてこれらの4つの電極に供給すると、リング電極(10´)とリング電極(17´´)には同じ電圧信号が供給される。そして、この電圧信号とは符号が逆の電圧信号が、リング電極(10´´)とリング電極(17´)とに供給される。したがって、液滴(4)には、矢印に示すように、2方向のクーロン力がかかり、液滴(4)には二つの盛り上がったピークが形成されることとなる。そして、電圧信号の周期的な変動により、液滴(4)はピークの衝突・分離を繰り返す複雑な振動を行う。
尚、左右方向のみの電界とならないように、2つのリング電極(10´)と(10´´)の間の距離は、上下の2つのリング電極(10´)と(17´)の間の距離よりも長くする。
このように、本発明のシャーレは、様々なパターニングの電極を施し、様々な波形の信号を用いることにより、液滴の振動を自在に制御することが可能である。
4.本発明の細胞培養方法
本発明の細胞培養方法は、本発明のシャーレ中に細胞培養液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させることを特徴とする方法である。
本発明の細胞培養方法では、シャーレに微生物等が混入するといったコンタミネーションを防ぐため、蓋を有するシャーレを使用することが好ましい。ただし、蓋を有するシャーレを用いて細胞培養を行うには、細胞の呼吸に必要なガス交換を行うため、シャーレの蓋や側壁等に無菌的ガス交換を可能とする通気口を設けることが好ましい。例えば、これらに限定されるわけではないが、微生物を通さないフィルターやメンブレンを用いた通気口を設けることができる。
また、本発明の細胞培養方法では、蓋を使用せず、無菌環境中にシャーレを載置し、変動電界印加装置により液滴に変動電界を印加して細胞培養を行うこともできる。
本発明の細胞培養方法で用いる「細胞培養液」とは、細胞と水と、細胞の増殖に必要な栄養素とを含むものである。
ここで、「細胞」とは、細胞株だけでなく、クローン化されていない細胞や、いろいろな細胞が集合した組織も含む。したがって、本発明の細胞培養方法では、本発明のシャーレ中に、生体組織を含む細胞培養液の液滴を形成し、組織培養を行うこともできる。
本発明の細胞培養方法は、本発明のシャーレを用いてシャーレ中に細胞培養液の液滴を形成し、変動電界を印加することにより、液滴表面及び内部の電荷と変動電界との相互作用により液滴が振動するため、シャーレを振とうすることなく穏やかに液滴を撹拌することができる。このため、コンタミネーションのおそれを少なくし、適度な培養液の循環を行いつつ、シャーレ中で細胞を培養することができる。
また、本発明の細胞培養方法は、従来の方法では得られかった撹拌を可能とし、様々なパターニングの電極をシャーレに施し、様々な波形の信号を用いることにより、液滴の振動を自在に制御することが可能である。したがって、再生医療の分野で、高品位かつ迅速な培養手法を確立できる可能性がある。
5.本発明の反応促進方法
本発明の反応促進方法は、本発明のシャーレ中に反応溶液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴を振動させて反応溶液の反応を促進することを特徴とする方法である。
本発明の反応促進方法に用いる「反応溶液」とは、水等の溶媒と化学物質、生体分子、生物試料などを含む溶液であって、反応を生じるものであれば如何なるものでもよい。「反応溶液」の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、化学反応又は化学分解を生じる1種類以上の化学物質を有する反応溶液、抗原と抗体とを有する反応溶液、生体組織とその組織中のタンパク質に反応する抗体とを有する反応溶液、生体組織とその生体組織を染色する色素とを有する反応溶液、DNAとプライマーとヌクレオチドとDNAポリメラーゼとを有する反応溶液、繊維とその繊維を染色する色素とを有する反応溶液等が挙げられる。
本発明の反応促進方法は、本発明のシャーレを用いてシャーレ中で反応溶液の液滴を形成し、その液滴に変動電界を印加することで、液滴表面及び内部の電荷と変動電界との相互作用により液滴が振動するため、シャーレを振とうすることなく効率よく液滴を撹拌することができる。このため、コンタミネーションのおそれを少なくしつつ、シャーレ中で反応溶液の反応を促進することができる。
また、本発明の反応促進方法は、従来の方法では得られかった撹拌を可能とし、様々なパターニングの電極をシャーレに施し、様々な波形の信号を用いることにより、液滴の振動を自在に制御することが可能である。したがって、従来の方法では得られなかった反応結果を得ることができる可能性がある。
6.本発明の電界撹拌システム及び細胞培養システム
本発明の電界撹拌システムは、本発明のシャーレと、シャーレ中に形成した液滴に変動電界印加する変動電界印加装置とを有することを特徴とする。
ここで、「変動電界印加装置」としては、変動する電界を特定の場所に印加することができる装置であれば、どのようなものを用いてもよく、複数の装置を組み合わせたものであったもよい。変動電界印加装置としては、例えば、電圧アンプと、電圧アンプに信号を供給するファンクションジェネレータと、電圧アンプにより発生した変動電圧を供給されて電界を発生させる電極とを有する装置を用いることが好ましい。
本発明の細胞培養システムは、本発明のシャーレと、シャーレ中に形成した液滴に変動電界を印加する変動電界印加装置と、細胞培養液又は培養環境の温度を制御する温度制御装置とを有することを特徴とする。
ここで、「変動電界装置」としては、上記と同じものを用いることが好ましく、「温度制御装置」としては、温度計測器と加熱器と場合によっては加湿器を有する装置構成をとることが好ましい。
本発明のシャーレ、方法及びシステムは、細胞培養、化学反応、その他試験研究一般に使用できる器具、方法及びシステムとして有用である。特に、再生医療の分野において、高品位かつ迅速な培養手法を確立できる可能性がある。
1 シャーレ
2 底面
3 側壁
4 溶液、液滴
5 メニスカス
6 台座
7 下皿
8 蓋
9 縁部
10,10´,10´´ 上部の電極
11 リード線
12 マイナス電荷
13 高圧アンプ
14 ファンクションジェネレータ
15 プラス電荷
16 凸部
17,17´,17´´ 下部の電極

Claims (16)

  1. 底面と、前記底面の全外周に配される側壁と、前記側壁が形成する開口部を有するシャーレにおいて、
    前記底面上に注ぎ入れた溶液が前記側壁と接することがないように、前記底面と前記側壁との内側境界部分に前記側壁よりも高さの低い台座を設けることにより、前記溶液を前記台座の高さを越えるまで注ぎ入れた場合にドーム形状の液滴を形成できるようにしたことを特徴とするシャーレ。
  2. 液滴に変動電界を印可して撹拌を行う電界撹拌に用いることを特徴とする、請求項1に記載のシャーレ。
  3. 前記開口部を覆う蓋をさらに有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシャーレ。
  4. 前記液滴に変動電界を印加するための電極をさらに有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシャーレ。
  5. 前記液滴に変動電界を印加するための電極が、前記蓋に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のシャーレ。
  6. 前記電極は凸部を有するリング状または円板状の電極であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のシャーレ。
  7. 前記台座は、撥水性の材料を用いて形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のシャーレ。
  8. 前記台座が、1mm以上で且つ底面の幅の30%以下の長さの幅を有するリング状の台座であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のシャーレ。
  9. 前記液滴が、2ml〜1000mlの容量の液滴であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のシャーレ。
  10. 前記底面は円形であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のシャーレ。
  11. 無菌的ガス交換を可能とする通気口を設けたことを特徴とする、請求項3に記載のシャーレ。
  12. 請求項1〜11のいずれかのシャーレ中に液滴を形成し、前記液滴に変動電界を印加することで、前記液滴を振動させることを特徴とする電界撹拌方法。
  13. 請求項1〜11のいずれかのシャーレ中に細胞培養液の液滴を形成し、前記液滴に変動電界を印加することで、前記液滴を振動させて撹拌することを特徴とする細胞培養方法。
  14. 請求項1〜11のいずれかのシャーレ中に反応溶液の液滴を形成し、前記液滴に変動電界を印加することで、前記液滴を振動させて反応溶液の反応を促進することを特徴とする、反応促進方法。
  15. 請求項1〜11のいずれかのシャーレと、前記シャーレ中に形成した液滴に変動電界印加する変動電界印加装置とを有することを特徴とする、電界撹拌システム。
  16. 請求項1〜11のいずれかのシャーレと、前記シャーレ中に形成した細胞培養液の液滴に変動電界を印加する変動電界印加装置と、前記細胞培養液又は培養環境の温度を制御する温度制御装置とを有することを特徴とする、細胞培養システム。
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