以下、本発明の導電性基板、積層導電性基板、導電性基板の製造方法、及び積層導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属層と、金属層上に湿式法により形成された、ニッケルと硫黄とを含有する黒化層と、を有することができる。
なお、本実施形態における導電性基板とは、透明基材の表面に、パターン化する前の金属層や黒化層を有する導電性基板、及び透明基材の表面に、パターン化した銅層や黒化層を有する導電性基板、すなわち配線基板を含む。また、金属層、及び黒化層をパターン化した後の導電性基板は透明基材が金属層等により覆われていない領域を含むため光を透過することができ、透明導電性基板となっている。
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
可視光を透過する樹脂基板の材料としては例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する樹脂基板の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート等をより好ましく用いることができる。
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、透明基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、透明基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
透明基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。透明基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
なお透明基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
透明基材は第1の主平面と、第2の主平面とを有することができる。ここでいう主平面とは透明基材に含まれる面のうち最も面積の大きい平面部を指している。そして、第1の主平面と、第2の主平面とは1つの透明基材の中で対向して配置された面を意味する。
次に、金属層について説明する。
金属層を構成する材料は特に限定されず用途にあった電気伝導率を有する材料を選択できるが、例えば、金属層を構成する材料は、Cuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Mn,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含むことが好ましい。また、金属層は銅から構成される銅層とすることもできる。
透明基材上に金属層を形成する方法は特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、透明基材と金属層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち金属層は、透明基材の少なくとも一方の面上に直接形成されていることが好ましい。なお、後述のように透明基材と金属層との間に密着層を配置する場合、金属層は密着層の上面に直接形成されていることが好ましい。
透明基材の上面に金属層を直接形成するため、金属層は金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有していてもよい。
例えば透明基材上に、乾式めっき法により金属薄膜層を形成し該金属薄膜層を金属層とすることができる。これにより、透明基材上に接着剤を介さずに直接金属層を形成できる。なお、乾式めっき法としては後で詳述するが、例えばスパッタリング法や蒸着法、イオンプレーティング法等を好ましく用いることができる。
また、金属層の膜厚を厚くする場合には、金属薄膜層を給電層として湿式めっき法の一種である電気めっき法により金属めっき層を形成することにより、金属薄膜層と金属めっき層とを有する金属層とすることもできる。金属層が金属薄膜層と金属めっき層とを有することにより、この場合も透明基材上に接着剤を介さずに直接金属層を形成できる。
金属層の厚さは特に限定されるものではなく、金属層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
ただし、金属層が厚くなると、配線パターンを形成するためにエッチングを行う際のエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば金属層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
なお、金属層が上述のように金属薄膜層と、金属めっき層とを有する場合には、金属薄膜層の厚さと、金属めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
金属層が金属薄膜層により構成される場合、または金属薄膜層と金属めっき層とにより構成される場合のいずれも場合でも、金属薄膜層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば50nm以上500nm以下とすることが好ましい。
金属層は後述するように例えば所望の形状の配線パターンにパターン化することにより配線として用いることができる。そして、金属層は従来透明導電膜として用いられていたITOよりも電気抵抗値を低くすることができるから、金属層を設けることにより導電性基板の電気抵抗値を小さくできる。
次に黒化層について説明する。
黒化層は、金属層の上面に形成することができる。
黒化層は湿式法により形成することができ、ニッケルと硫黄とを含有することができる。
上述のように従来の導電性基板においては黒化層もすべて乾式めっき法により形成されていた。これに対して本実施形態の導電性基板においては、黒化層を湿式法で形成することにより乾式めっき法よりも短い時間で黒化層を成膜することができ、生産性を高めることができる。また、黒化層を設けることにより、金属層の上面における光の反射を抑制することができる。
黒化層を形成する方法は湿式法であればよく、特に限定されるものではないが、例えば金属層上に湿式めっき法により黒化層を新たに形成、積層する方法が挙げられる。この場合の湿式めっき法としては例えば無電解めっき法を好適に用いることができる。
黒化層に含まれるニッケルと硫黄との比率は特に限定されるものではないが、黒化層に含まれるニッケル及び硫黄のうち、ニッケルの占める割合が重量比で40wt%以上99wt%以下であることが好ましい。
なお、ここでいう黒化層に含まれるニッケル及び硫黄のうちニッケルの占める割合とは、黒化層に含まれるニッケルと硫黄との合計量を100wt%としたときのニッケルの割合を示しており、残部は硫黄の比率となる。このため上述の範囲を黒化層中のニッケル:硫黄の重量の比率で示した場合、40:60以上99:1以下であることが好ましいことを意味している。
黒化層に含まれるニッケル及び硫黄のうち、ニッケルの占める割合を40wt%以上とすることにより、黒化層表面の色のムラを抑制することができる。黒化層表面の色のムラを抑制することにより、例えば金属層及び黒化層をパターン化した導電性基板とした場合に、金属層及び黒化層をパターン化した配線部をより目立たなくすることができ、美観を高めることができるため好ましい。
また、黒化層はニッケル及び硫黄を含有することにより、比率によらず金属層による光の反射を抑制できる色になるが、黒化層に含まれるニッケル及び硫黄のうち、ニッケルの占める割合が99wt%以下の場合、特に金属層による光の反射を抑制でき、好ましい。
特に黒化層に含まれるニッケル及び硫黄のうち、ニッケルの占める割合は重量比で70wt%以上99wt%以下であることがより好ましく、75wt%以上99wt%以下であることがさらに好ましい。
黒化層は、ニッケル及び硫黄以外にも任意の成分を含むことができ、その組成は特に限定されるものではないが、ニッケル及び硫黄が主成分であることが好ましく、ニッケル及び硫黄から構成されていることがより好ましい。なお、ニッケル及び硫黄が主成分であるとは、黒化層中にニッケル及び硫黄が50wt%より多く含まれていることを意味している。黒化層がニッケル及び硫黄から構成されている場合においても不純物成分や、不可避成分が含まれていることを排除するものではなく、湿式めっき法により黒化層を成膜した場合に、ニッケル及び硫黄以外にもめっき液由来の成分が黒化層に含まれていてもよい。
また、導電性基板は上述の透明基材、金属層、黒化層以外に任意の層を設けることもできる。例えば密着層を設けることができる。
密着層の構成例について説明する。
上述のように金属層は透明基材上に形成することができるが、透明基材上に金属層を直接形成した場合に、透明基材と金属層との密着性が十分ではない場合がある。このため、透明基材の上面に直接金属層を形成した場合、製造過程、または、使用時に透明基材から金属層が剥離する場合がある。
そこで、本実施形態の導電性基板においては、透明基材と金属層との密着性を高めるため、透明基材上に密着層を配置することができる。
透明基材と金属層との間に密着層を配置することにより、透明基材と金属層との密着性を高め、透明基材から金属層が剥離することを抑制できる。
また、密着層は黒化層としても機能させることができる。このため、金属層の下面側、すなわち透明基材側からの光による金属層の光の反射も抑制することが可能になる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、透明基材及び金属層との密着力や、要求される金属層表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。
密着層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。また、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、密着層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金を含むことができる。この場合についても、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金等を好ましく用いることができる。
密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、窒素を添加する場合には窒素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、透明基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層との密着性も高い。このため、透明基材と金属層との間に密着層を配置することにより、金属層の剥離を抑制することができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、3nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
密着層についても黒化層として機能させる場合、すなわち金属層における光の反射を抑制する場合、密着層の厚さを上述のように3nm以上とすることが好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、密着層の厚さは上述のように50nm以下とすることが好ましく、35nm以下とすることがより好ましく、33nm以下とすることがさらに好ましい。
次に、導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、金属層と、黒化層と、を備え、例えば透明基材上に、金属層、黒化層、をその順で積層した構成とすることができる。
具体的な構成例について、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、金属層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
例えば、図1(A)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の第1の主平面11a側に金属層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層した構成とすることができる。また、図1(B)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の第1の主平面11a側と、第2の主平面11b側と、にそれぞれ金属層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することもできる。
本実施形態の導電性基板は例えばタッチパネル等の各種用途に用いることができる。そして、各種用途に用いる場合には、本実施形態の導電性基板に含まれる、金属層、及び黒化層がパターン化されていることが好ましい。金属層、及び黒化層は、例えば所望の配線パターンにあわせてパターン化することができ、金属層、及び黒化層は同じ形状にパターン化されていることが好ましい。
本実施形態の導電性基板においては上述のように、金属層12(12A、12B)の上面に黒化層13(13A、13B)を配置することができる。このため、金属層12(12A、12B)の上面側からの光の反射を抑制することができる。
また、既述のように例えば透明基材11と金属層12との間には図示しない密着層を設けることもできる。なお、図1(B)に示した導電性基板10Bの場合、透明基材11と金属層12Aとの間、および/または透明基材11と金属層12Bとの間に密着層を設けることができる。密着層を設けることにより、透明基材11と金属層12(12A、12B)との密着性を高めることができ、透明基材11から金属層12(12A、12B)が剥離することを特に抑制することができる。また、密着層を設けることにより、金属層12(12A、12B)の黒化層を設けていない面についても光の反射を抑制することが可能になり好ましい。
なお、金属層及び黒化層をパターン化する際、密着層についても例えば所望の配線パターンにあわせてパターン化することができ、密着層、金属層、及び黒化層を同じ形状にパターン化することが好ましい。
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば波長400nm以上700nm以下の光の反射率(正反射率)は35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。波長400nm以上700nm以下の光の反射率が35%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないため好ましい。
導電性基板の光の反射率の測定は、黒化層13(13A、13B)に光を照射するようにして測定を行うことができる。
具体的には例えば図1(A)のように透明基材11の第1の主平面11a側に金属層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13の積層方向上方から、黒化層13の表面13aに光を照射するようにして測定できる。そして、波長400nm以上700nm以下の範囲内で波長を所定の間隔で変化させ、各波長の光について反射率を測定し、その平均値を該導電性基板の波長400nm以上700nm以下の光の反射率とすることができる。測定に当たっては、上記波長範囲の光について例えば波長1nm間隔で波長を変化させて測定を行うことができる。
また、本実施形態の導電性基板の黒化層13(13A、13B)の表面については、L*a*b*表色系のうちの明度(L*)の数値が小さいことが好ましい。これは明度(L*)の数値が小さくなるほど黒化層13(13A、13B)及び金属層12(12A、12B)が目立たなくなるためであり、黒化層13(13A、13B)の表面の明度(L*)は60以下であることが好ましい。
そして、本実施形態の導電性基板においては上述のように金属層を設けていることから、導電性基板の表面抵抗を小さくすることができる。表面抵抗は、0.2Ω/□未満であることが好ましく、0.15Ω/□未満であることがより好ましく、0.06Ω/□未満であることがさらに好ましい。表面抵抗の測定方法は特に限定されないが、例えば、4探針法により測定することができ、導電性基板の黒化層に探針が接触するようにして測定を行うことが好ましい。
ここまで本実施形態の導電性基板について説明したが、本実施形態の導電性基板を複数枚積層した積層導電性基板とすることもできる。導電性基板を積層する場合、導電性基板に含まれる金属層、黒化層は上述のようにパターン化されていることが好ましい。また、密着層を設ける場合には、密着層についてもパターン化されていることが好ましい。
特にタッチパネルの用途に用いる場合、導電性基板、または、積層導電性基板は、後述のようにメッシュ状の配線を備えていることが好ましい。
ここで、2枚の導電性基板を積層してメッシュ状の配線を備えた積層導電性基板を形成する場合を例に、積層前の導電性基板に形成する金属層、及び金属層のパターンの形状の構成例について図2を用いて説明する。なお、パターン化された金属層が配線として機能するが、密着層および/または黒化層についてもその電気抵抗値によっては配線の一部を構成することができる。
図2(A)は、メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板を構成する2枚の導電性基板のうち、一方の導電性基板について、導電性基板20を上面側、すなわち、透明基材11の主平面と垂直な方向から見た図である。また、図2(B)は、図2(A)のA−A´線における断面図を示している。
図2(A)、図2(B)に示すように導電性基板20において、透明基材11の第1の主平面11a上のパターン化された金属層22、及び黒化層23は、同じ形状を有することができる。例えばパターン化された黒化層23は図2(A)中に示した直線形状の複数のパターン(黒化層パターン23A〜23G)を有し、係る複数の直線形状のパターンは図中Y軸に平行に、かつ、図中X軸方向に互いに離隔して配置できる。この際、図2(A)に示したように透明基材11が四角形状を有する場合、透明基材11の一辺と平行になるように、黒化層のパターン(黒化層パターン23A〜23G)は配置されることが好ましい。
なお、上述のように、パターン化された金属層22もパターン化された黒化層23と同様にパターン化されており、直線形状の複数のパターン(金属層パターン)を有し、係る複数のパターンは互いに平行に離隔して配置できる。また、図示しない密着層を設ける場合、密着層についても同様のパターンとすることができる。このため、パターン間では透明基材11の第1の主平面11aが露出することとなる。
図2(A)、図2(B)に示した、パターン化された金属層22、及び黒化層23のパターン形成方法は特に限定されない。例えば黒化層23を形成後、黒化層23上に、形成するパターンに対応した形状を有するマスクを配置し、エッチングすることによりパターン形成できる。用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、エッチングする層を構成する材料に応じて任意に選択することができる。例えば、層毎にエッチング液を変えることもでき、また、同じエッチング液により同時に金属層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層をエッチングすることもできる。
そして、金属層、及び黒化層がパターン化された2枚の導電性基板を積層することにより、積層導電性基板を形成することができる。積層導電性基板について、図3を用いて説明する。図3(A)は、積層導電性基板30を上面側、すなわち、2枚の導電性基板の積層方向に沿った上面側から見た図を示しており、図3(B)は、図3(A)のB−B´線における断面図を示している。
積層導電性基板30は、図3(B)に示すように導電性基板201と、導電性基板202と、を積層して得られたものである。なお、導電性基板201、202は共に、透明基材111(112)の第1の主平面111a(112a)上に、パターン化された金属層221(222)、及び黒化層231(232)が積層されている。導電性基板201、202のパターン化された金属層221(222)、及び黒化層231(232)は、いずれも上述した導電性基板20と同様に直線形状の複数のパターンを有するようにパターン化されている。
そして、一方の導電性基板201の透明基材111の第1の主平面111aと、他方の導電性基板202の透明基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層されている。
なお、一方の導電性基板201の上下を逆にして、一方の導電性基板201の透明基材111の第2の主平面111bと、他方の導電性基板202の透明基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層してもよい。この場合、後述する図4と同様の配置となる。
2枚の導電性基板を積層する際、図3(A)、図3(B)に示すように、一方の導電性基板201のパターン化された金属層221と、他方の導電性基板202のパターン化された金属層222と、が交差するように積層することができる。具体的には例えば、図3(A)において、一方の導電性基板201のパターン化された金属層221はそのパターンの長さ方向が図中のX軸方向と平行になるように配置できる。そして、他方の導電性基板202のパターン化された金属層222はそのパターンの長さ方向が図中のY軸方向と平行になるように配置することができる。
なお、図3(A)は上述のように積層導電性基板30の積層方向に沿って見た図のため、各導電性基板201、202の最上部に配置されたパターン化された黒化層231、232を示している。パターン化された金属層221、222もパターン化された黒化層231、232と同じパターンとなっているため、パターン化された金属層221、222もパターン化された黒化層231、232と同様にメッシュ状となる。また、密着層を設けた場合、パターン化された密着層についてもパターン化された黒化層231、232と同様のメッシュ状とすることができる。
積層した2枚の導電性基板の接着方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等により接着、固定することができる。
以上に説明したように一方の導電性基板201と、他方の導電性基板202と、を積層することにより、図3(A)に示したように、メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板30とすることができる。
なお、図3(A)、(B)においては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
ここでは、2枚の導電性基板を積層することによりメッシュ状の配線を備えた積層導電性基板とする例を用いて説明したが、メッシュ状の配線を備えた(積層)導電性基板とする方法は係る形態に限定されるものではない。例えば図1(B)に示した、透明基材11の第1の主平面11a、第2の主平面11bに金属層12A、12B、黒化層13A、13Bを積層した導電性基板10Bからもメッシュ状の配線を備えた導電性基板を形成できる。
この場合、透明基材11の第1の主平面11a側に積層した、金属層12A、及び黒化層13Aを、図1(B)中のY軸方向、すなわち、紙面と垂直な方向と平行な複数の直線形状のパターンにパターン化する。また、透明基材11の第2の主平面11b側に積層した、金属層12B、及び黒化層13Bを図1(B)中のX軸方向と平行な複数の直線形状のパターンにパターン化する。パターン化は上述のように例えばエッチングにより実施できる。これにより、図4に示したように、透明基材11を挟んで、透明基材の第1の主平面11a側に形成したパターン化された金属層42Aと、第2の主平面11b側に形成したパターン化された金属層42Bと、によりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。
なお、パターン化された金属層42A、及びパターン化された金属層42B上には図4に示したように、金属層42A(42B)と同様の形状にパターン化された黒化層43A、43Bが配置されることになる。
ここまで、透明基材の少なくとも一方の面上にパターン化された金属層、及び同様の形状にパターン化された黒化層を積層した(積層)導電性基板の例を説明したが係る形態に限定されるものではない。パターン化された金属層の上面だけではなく、側面にも黒化層を配置した(積層)導電性基板とすることもできる。
例えばまず、透明基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成した後、黒化層を形成する前に金属層を所望の形状にパターン化することができる。なお、既述のように透明基材と金属層との間に密着層を形成することもでき、密着層を形成した場合には、金属層をパターン化する際に、密着層もパターン化することができる。そして、金属層等のパターン化後に、パターン化された金属層の表面を覆うように黒化層を形成することができる。
金属層等をパターン化してから黒化層を形成することで、例えば図2(A)、(B)に示した場合と同様に金属層を直線形状にパターン化した場合、図2(B)の場合と同様にパターン化された金属層22の上面に黒化層を形成することができる。そしてこの際あわせて、パターン化された金属層22の側面、すなわちパターン化された金属層22のうち透明基材11と垂直な面の表面にも黒化層を形成することができる。
このように、例えば図2(A)、(B)に示した導電性基板20において、パターン化された金属層22の側面にも黒化層を形成した導電性基板とすることでパターン化された金属層22の側面での光の反射も抑制することが可能になる。このため、タッチパネル等の用途に用いた場合、特にディスプレイの視認性を高めることが可能になる。
なお、図2(A)、(B)に示した導電性基板20のパターン化された金属層22の側面にも黒化層を形成した導電性基板を例に説明したが、図4に示した導電性基板40において、パターン化された金属層42A、42Bの側面にも同様にして黒化層を配置することもできる。また、図3(A)、(B)に示した積層導電性基板30においても同様にパターン化された金属層221、222の側面にも黒化層を配置することもできる。
以上に説明した(積層)導電性基板によれば、パターン化された金属層はその上面にパターン化された黒化層が配置されている。このため、パターン化された金属層表面での光の反射を抑制できる。また、金属層を配置しているため、電気抵抗値を小さくすることができる。さらに、上述のように黒化層は湿式法により形成されるため生産性良く製造することができる。
(導電性基板の製造方法、積層導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法、及び積層導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、以下の工程を有することができる。
透明基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成する金属層形成工程。
金属層上に湿式法により、ニッケルと硫黄とを含有する黒化層を形成する黒化層形成工程。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法、及び積層導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板、積層導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため重複する部分については説明を一部省略する。
金属層形成工程に供する透明基材は予め準備しておくことができる。用いる透明基材の種類は特に限定されるものではないが、既述のように可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等を好ましく用いることができる。透明基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
そして、金属層は既述のように、金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有することもできる。このため、金属層形成工程は、例えば乾式めっき法により金属薄膜層を形成する工程を有することができる。また、金属層形成工程は、乾式めっき法により金属薄膜層を形成する工程と、該金属薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電気めっき法により金属めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
金属薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。金属薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
金属薄膜層をスパッタリング法により成膜する場合、例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いた場合を例に金属薄膜層の形成方法を説明する。
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
図5において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。
ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は10−3Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−4Pa以下まで減圧できることがより好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域のみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
筐体51内には、金属薄膜層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、前フィードロール55a、後フィードロール55b、テンションロール56a、56b、巻取ロール57を配置することができる。また、金属薄膜層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロール58a〜58hや、ヒーター61等を設けることもできる。
巻出ロール52、キャンロール53、前フィードロール55a、巻取ロール57にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール57は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって金属薄膜層を成膜する基材の張力バランスが保たれるように構成できる。
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
テンションロール56a、56bは例えば、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられていることが好ましい。
また、前フィードロール55aや、後フィードロール55b、ガイドロール58a〜58hについても表面が硬質クロムめっきで仕上げられていることが好ましい。
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの金属薄膜層を成膜する基材の巾方向の寸法は、金属薄膜層を成膜する基材の巾より広いことが好ましい。
金属薄膜層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで金属薄膜層が成膜される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて金属薄膜層を成膜する場合、所定のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、金属薄膜層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、スパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m以上20m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の金属薄膜層を連続成膜することができる。
次に金属めっき層を形成する工程について説明する。湿式めっき法により金属めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、金属めっき液を入れためっき槽に金属薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、金属めっき層を形成できる。
次に、黒化層形成工程について説明する。
黒化層形成工程においては、湿式法により黒化層を形成することができる。黒化層を湿式法で形成することにより、従来の乾式法のみで黒化層を形成していた場合と比較して、導電性基板を生産性良く製造できる。
また、従来のように乾式法により黒化層を成膜する場合、例えば湿式法で金属めっき層を成膜すると、金属めっき層の成膜後、湿式法の成膜装置から被成膜体を取り出し、被成膜体を乾燥させた上で乾式法の装置にセットする必要があり生産性が低下していた。これに対して本実施形態の導電性基板の製造方法においては、黒化層も湿式法で形成するため、湿式法の装置で金属めっき層を成膜した場合でも、金属めっき層と黒化層とを連続して形成でき、特に生産性を高めることができる。
黒化層を形成する方法は湿式法であればよく、特に限定されるものではないが、例えば金属層上に湿式めっき法により黒化層を新たに形成、積層する方法が挙げられる。この場合の湿式めっき法は例えば無電解めっき法を好ましく用いることができる。
また、黒化層を湿式法により形成する具体的な方法として、ニッケル及び硫黄を含有するめっき液を用いて、電気めっき法により黒化層を形成する方法が挙げられる。この際用いるめっき液の種類は特に限定されるものではなく、例えばニッケル及び硫黄を含有するめっき液を好ましく用いることができる。なお、予めめっき液の組成と、成膜される黒化層の組成との関係について予備試験を行い、所望の組成の黒化層が得られるようにめっき液の組成を選択しておくことが好ましい。
また、さらに任意の工程を実施することができる。例えば透明基材と金属層との間に密着層を形成する場合、透明基材の金属層を形成する面上に密着層を形成する密着層形成工程を実施することができる。密着層形成工程を実施する場合、金属層形成工程は、密着層形成工程の後に実施することができ、金属層形成工程で説明した金属薄膜層を成膜する基材とは、本工程で透明基材上に密着層を形成した基材となる。
密着層は例えば図1(A)において、透明基材11の一方の主平面である第1の主平面11a上に形成することができる。また、図1(B)に示した導電性基板10Bの場合、透明基材11の第1の主平面11a及び第2の主平面11bの両方に密着層を形成することもできる。透明基材11の第1の主平面11a及び第2の主平面11bの両方に密着層を形成する場合には、両主平面に同時に密着層を形成してもよい。また、いずれか一方の主平面に密着層を形成後に他方の主平面に密着層を形成してもよい。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、透明基材及び金属層との密着力や、金属層表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。密着層を構成する材料として好適に用いることができる材料については既述のため、ここでは説明を省略する。
密着層の成膜方法は特に限定されないが、例えば上述のように、乾式めっき法により成膜することができる。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
密着層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素も添加することができ、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
なお、密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
反応性スパッタリング法により密着層を成膜する場合、ターゲットとしては、密着層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。密着層が合金を含む場合には、密着層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、透明基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め密着層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
密着層は例えば図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて密着層を成膜する場合、密着層を構成する金属のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、密着層を形成する基材、例えば透明基材を巻出ロール52にセットする。そして、装置内、例えば筐体51内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴンガス等のスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5m以上10m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の密着層を連続成膜することができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、透明基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層との密着性も高い。このため、透明基材と金属層との間に密着層を配置することにより、金属層の剥離を抑制することができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、3nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態の導電性基板の製造方法で得られる導電性基板は例えばタッチパネル等の各種用途に用いることができる。そして、各種用途に用いる場合には、本実施形態の導電性基板に含まれる金属層、及び黒化層がパターン化されていることが好ましい。なお、密着層を設ける場合は、密着層についてもパターン化されていることが好ましい。金属層、及び黒化層、場合によってはさらに密着層は、例えば所望の配線パターンにあわせてパターン化することができ、金属層及び黒化層、場合によってはさらに密着層は同じ形状にパターン化されていることが好ましい。
このため、本実施形態の導電性基板の製造方法は、金属層及び黒化層をパターン化するパターニング工程を有することができる。なお、密着層を形成した場合には、パターニング工程は、密着層、金属層、及び黒化層をパターン化する工程とすることができる。
パターニング工程の具体的手順は特に限定されるものではなく、任意の手順により実施することができる。例えば図1(A)のように透明基材11上に金属層12、黒化層13が積層された導電性基板10Aの場合、まず黒化層13上に所望のパターンを有するマスクを配置するマスク配置工程を実施することができる。次いで、黒化層13の上面、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給するエッチング工程を実施できる。
エッチング工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、エッチングを行う層を構成する材料に応じて任意に選択することができる。例えば、層毎にエッチング液を変えることもでき、また、同じエッチング液により同時に金属層及び黒化層、場合によってはさらに密着層をエッチングすることもできる。
エッチング工程で形成するパターンは特に限定されない。例えば金属層及び黒化層を、直線形状の複数のパターンとなるようにパターン化することができる。直線形状の複数のパターンにパターン化した場合、図2(A)、図2(B)に示すように、パターン化された金属層22及び黒化層23は互いに平行に、かつ、離隔するようなパターンとすることができる。
また、図1(B)のように透明基材11の第1の主平面11a、第2の主平面11bに金属層12A、12B、黒化層13A、13Bを積層した導電性基板10Bについてもパターン化するパターニング工程を実施できる。この場合例えば黒化層13A、13B上に所望のパターンを有するマスクを配置するマスク配置工程を実施できる。次いで、黒化層13A、13Bの上面、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給するエッチング工程を実施できる。
エッチング工程において例えば、透明基材11の第1の主平面11a側に積層した金属層12A及び黒化層13Aを、図1(B)中のY軸方向、すなわち、紙面と垂直な方向と平行な複数の直線形状のパターンにパターン化できる。また、透明基材11の第2の主平面11b側に積層した金属層12B及び黒化層13Bを図1(B)中のX軸方向と平行な複数の直線形状のパターンにパターン化できる。これにより、図4に示したように、透明基材11を挟んで、透明基材の第1の主平面11a側に形成したパターン化された金属層42Aと、第2の主平面11b側に形成したパターン化された金属層42Bと、によりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。
なお、既述のようにパターニング工程は、金属層形成工程を実施後、黒化層形成工程の実施前に実施することもできる。この場合、パターニング工程では、金属層をパターン化することとなる。なお、密着層を形成した場合には、密着層、及び金属層をパターン化することとなる。
黒化層形成工程の前にパターニング工程を実施する場合、既述のマスク配置工程では金属層上に所望のパターンを有するマスクを配置することになる。また、エッチング工程では、金属層の上面、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給することとなる。
パターニング工程でパターン化する金属層等の形状は特に限定されるものではないが、例えば上述のように直線形状等の任意の形状にパターン化することができる。そして、パターニング工程後に黒化層形成工程を実施することで、パターン化された金属層の側面にも黒化層を形成することができ、金属層表面での光の反射を特に抑制することができる。
そして、ここまで説明した導電性基板を複数枚積層した積層導電性基板を製造することもできる。積層導電性基板の製造方法は、上述した導電性基板の製造方法により得られた導電性基板を複数枚積層する積層工程を有することができる。
積層工程では例えば、図2(A)、図2(B)に示したパターン化された導電性基板を複数枚積層することができる。具体的には、図3(A)、図3(B)に示したように、一方の導電性基板201の透明基材111の第1の主平面111aと、他方の導電性基板202の透明基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層することにより実施できる。
積層後、2枚の導電性基板201、202は例えば接着剤等により固定することができる。
なお、一方の導電性基板201の上下を逆にして、一方の導電性基板201の透明基材111の第2の主平面111bと、他方の導電性基板202の透明基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層してもよい。
メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板とする場合、積層工程では、図3(A)、図3(B)に示したように、一方の導電性基板201に予め形成したパターン化された金属層221と、他方の導電性基板202に予め形成したパターン化された金属層222と、が交差するように積層できる。
図3(A)、(B)においては、直線形状にパターン化された金属層を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。配線パターンを構成する配線、すなわちパターン化された金属層の形状は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。なお、既述のように、パターン化された金属層が配線として機能するが、密着層および/または黒化層についてもその電気抵抗値によっては配線の一部を構成することができる。
以上の本実施形態の導電性基板の製造方法、及び積層導電性基板の製造方法により得られる導電性基板及び積層導電性基板によれば、金属層を設けたため、電気抵抗値が小さくできる。また、金属層上に黒化層を配置したため、光の反射を抑制できる。さらに、黒化層を湿式法により形成できるため生産性良く製造することができる。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、得られた導電性基板の評価方法について説明する。
(黒化層の組成)
得られた導電性基板の表面に形成された黒化層の組成分析はEPMA(Electron Probe MicroAnalyser 日本電子株式会社製 型式:JXA−8900R)を用いて行った。測定結果から、黒化層に含まれるNi及びS(硫黄)の重量の和を100とした場合の、Ni及びSの重量%を算出した。
(表面抵抗)
低抵抗率計(株式会社ダイアインスツルメンツ製 型番:ロレスターEP MCP−T360)を用いて、以下の実施例、比較例で作製した導電性基板の表面抵抗を測定した。測定は4探針法により行い、黒化層に探針が接触するようにして測定を行った。
(外観評価)
黒化層の表面を視認し、外観の評価を行った。評価に当たっては黒化層の表面の色が均一でムラがない場合には〇、ムラが少しでも見られた場合には△、黒化層の表面全体に渡ってムラが見られた場合には×と評価した。
(正反射率)
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2600)に反射率測定ユニットを設置して行った。
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板の黒化層表面に対して、入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の光を波長1nm間隔で照射して各波長の光について正反射率を測定し、測定結果の平均値を該導電性基板の正反射率とした。
(明度)
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板の黒化層表面について、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2600)により波長400nm以上700nm以下の光を波長1nm間隔で照射して明度を測定した。
(試料の作製条件)
実施例、比較例として、以下に説明する条件で導電性基板を作製し、上述の評価方法により評価を行った。
[実施例1]
(密着層形成工程)
幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50にセットした。なお、透明基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の透明基材について、全光線透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
そして、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50により、透明基材の一方の主平面に密着層を成膜した。密着層としては酸素を含有するNi−Cr合金層を形成した。
密着層の成膜条件について説明する。
図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dにNi−17重量%Cr合金のターゲットを接続した。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター61を60℃に加熱し、透明基材を加熱し、透明基材中に含まれる水分を除去した。
続いて筐体51内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスと酸素ガスとを導入し、筐体51内の圧力が1.3Paになるように調整した。この際、筐体51内の雰囲気が体積比で30%酸素、残部がアルゴンになるようにアルゴンガスと酸素ガスの供給量を調整した。
そして、透明基材を巻出ロール52から搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、透明基材上に所望の密着層を連続成膜した。係る操作により透明基材の一方の主平面上に密着層を厚さ20nmになるように成膜した。
(金属層形成工程)
金属層形成工程では、金属薄膜層形成工程と、金属めっき層形成工程と、を実施した。
まず、金属薄膜層形成工程について説明する。
密着層上にロール・ツー・ロールスパッタリング装置50により金属薄膜層を成膜した。金属薄膜層としては銅薄膜層を形成した。
金属薄膜層形成工程では、図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dに銅のターゲットを接続して成膜し、基材としては、密着層形成工程で透明基材上に密着層を成膜したものを用いた。
金属薄膜層の成膜時の条件としては、以下の2点と上述のようにターゲットを変更した点以外は密着層形成工程と同様にして実施した。
筐体51内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスを導入し、筐体51内の圧力が1.3Paになるように調整した点。
金属薄膜層である銅薄膜層を膜厚が150nmになるように成膜した点。
次に、金属めっき層形成工程においては、金属めっき層として銅めっき層を形成した。電気めっき法により、銅めっき層を厚さが2.0μmになるように成膜した。
(黒化層形成工程)
めっき液中のNiと、Sとの重量比を90:10に調製しためっき液を用い、電気めっき法により、金属層表面に黒化層を厚さが0.4μmとなるように成膜した。
これにより、金属層の上面、すなわち、金属層の密着層と対向する面と反対側の面に黒化層を形成し、透明基材上に、密着層、金属層、黒化層がその順で積層された導電性基板が得られた。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の組成、表面抵抗、外観、正反射率、明度を評価した。結果を表1に示す。
なお、表1中「黒化層組成(Ni:S)」と記載しているものが作製した黒化層を上述のようにEPMAにより分析した値から算出した黒化層内のNiとSの重量比率を示している。そして、「黒化層形成時のめっき液組成(Ni:S)」と記載しているものが、黒化層を作製する際のめっき液中のNiとZnの重量比率を示している。
また、本実施例、及び以下の実施例、比較例における、表面抵抗についての測定値をグラフ化したものを図6に、正反射率についての測定値をグラフ化したものを図7に、明度についての測定値をグラフ化したものを図8にそれぞれ示す。
本実施例で得られた導電性基板については、黒化層表面に形成するパターンに対応したマスクを形成するマスク配置工程を実施後、エッチング工程を実施した。エッチング工程で密着層、金属層、及び黒化層をエッチング液(塩化第二銅水溶液)によりエッチングすることにより、密着層、金属層、及び黒化層を図2(A)、(B)に示したような直線形状の複数のパターンにパターン化した導電性基板が得られた。なお、図2(A)、(B)においては密着層が配置されていない例が示されているが、本実施例では、金属層、及び黒化層と同じ形状にパターン化された密着層が透明基材11と金属層12との間に配置されることになる。
また、ここまで説明した方法と同様の手順により、密着層、金属層、及び黒化層が上述の場合と同じ形状にパターン化された導電性基板をもう1枚作製した。
そして、作製した2枚の導電性基板を図3(A)、(B)に示したように積層し、両導電性基板を接着剤により固定することによって積層導電性基板を作製した。なお、図3(A)、図3(B)においても密着層が設けられていない例が示されているが、本実施例では透明基材111と金属層221との間、及び透明基材112と金属層222との間に、金属層221、金属層222と同じ形状にパターン化された密着層が配置されている。
[実施例2]
黒化層形成工程において、めっき液中のNiと、Sとの重量比が85:15となるように調製しためっき液を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の組成、表面抵抗、外観、正反射率、明度を評価した。結果を表1、図6〜図8に示す。
また、得られた導電性基板について、実施例1の場合と同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した。さらに、同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した導電性基板をもう1枚作製した。そして、2枚の導電性基板を実施例1の場合と同様にして積層、固定し、積層導電性基板を作製した。
[実施例3]
黒化層形成工程において、めっき液中のNiと、Sとの重量比が48:52となるように調製しためっき液を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の組成、表面抵抗、外観、正反射率、明度を評価した。結果を表1、図6〜図8に示す。
また、得られた導電性基板について、実施例1の場合と同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した。さらに、同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した導電性基板をもう1枚作製した。そして、2枚の導電性基板を実施例1の場合と同様にして積層、固定し、積層導電性基板を作製した。
[比較例1]
黒化層形成工程において、めっき液中のNiと、Sとの重量比が100:0となるように調製したニッケルめっき液(株式会社JCU製)を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の組成、表面抵抗、外観、正反射率、明度を評価した。結果を表1、図6〜図8に示す。
また、得られた導電性基板について、実施例1の場合と同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した。さらに、同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した導電性基板をもう1枚作製した。そして、2枚の導電性基板を実施例1の場合と同様にして積層、固定し、積層導電性基板を作製した。
[比較例2]
黒化層形成工程において、めっき液中のNiと、Sとの重量比が0:100となるように調製した硫黄めっき液(株式会社JCU製)を用いた点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の組成、表面抵抗、外観、正反射率、明度を評価した。結果を表1、図6〜図8に示す。
また、得られた導電性基板について、実施例1の場合と同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した。さらに、同様にして密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した導電性基板をもう1枚作製した。そして、2枚の導電性基板を実施例1の場合と同様にして積層、固定し、積層導電性基板を作製した。
表1、及び図6〜図8に示した結果から、ニッケルと硫黄とを含有する黒化層を有する実施例1〜実施例3の導電性基板については、黒化層表面での反射率が35%以下、表面抵抗が0.2Ω/□未満、明度(L
*)が60以下となっていることを確認できた。これらの結果から、実施例1〜実施例3では、金属層表面での反射を抑制しつつも、電気抵抗値が小さい導電性基板が得られていることを確認できた。また、明度も60以下になっていることから、密着層、金属層、及び黒化層をパターン化した場合に、パターン化した密着層、金属層、及び黒化層の積層体が目立たなくなることも確認できた。さらに、実施例1〜実施例3の導電性基板については外観評価が〇であり、黒化層表面での色ムラも十分に抑制できていることを確認できた。
これに対して、黒化層が硫黄を含まない比較例1と、黒化層がニッケルを含まない比較例2の導電性基板については、正反射率がそれぞれ35.10%、60.50%と高く、金属層表面での反射を十分に抑制できていないことを確認できた。また、特に比較例2については外観評価が×となっており、黒化層表面での色ムラがきつくなっていることが確認できた。
また、実施例1〜実施例3で作製した積層導電性基板についても、金属層表面での光の反射を抑制できており、密着層、金属層、及び黒化層の積層体が目立たなくなっていることを確認できた。
以上の結果から、透明基材上に、金属層と、湿式法により形成されたニッケルと硫黄とを含有する黒化層を備えた導電性基板においては、電気抵抗値が小さく、光の反射を十分に抑制できることを確認できた。また、湿式法により黒化層を形成できるため生産性良く製造できることを確認できた。