JP2016142204A - 可変圧縮比内燃機関 - Google Patents

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拓 瀬川
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Abstract

【課題】機関高負荷時におけるオイルの分離性能と機関低負荷時におけるブローバイガスの掃気性能とを両立させる。【解決手段】シリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動することにより機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関は、クランクケース1内のブローバイガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータ70を具備する。オイルセパレータは、クランクケース内のブローバイガスが流出する噴孔71を有する噴孔形成部材52cと、噴孔を通過したブローバイガスが衝突するように配置されたオイル分離板72と、噴孔を少なくとも部分的に塞ぐことができる調整板73とを具備する。調整板は、機械圧縮比が低下するようにシリンダブロックがクランクケースに対して相対移動したときに、噴孔の開口面積が小さくなるように相対移動に合わせて移動するように配置される。【選択図】図5

Description

本発明は、可変圧縮比内燃機関に関する。
近年、内燃機関の燃費向上や出力性能の向上等を目的として、内燃機関の圧縮比を変更する技術が提案されている。このような技術としては、例えば、シリンダブロックとクランクケースとを相対移動可能に連結すると共にその連結部分にカムシャフトを設け、このカムシャフトを回転させてシリンダブロックとクランクケースとを気筒の軸線方向に相対移動させることで燃焼室の容積を変更し、もって内燃機関の圧縮比を変更する技術が挙げられる(例えば、特許文献1、2)。
斯かる可変圧縮比内燃機関においても、シリンダ壁面とピストンとの間の隙間を通って燃焼室内の混合気の一部がクランクケース内に漏れてブローバイガスとなる。ブローバイガスはクランクケース内に貯留されるオイルを劣化させることから、例えば特許文献1に記載の内燃機関では、クランクケースと機関吸気通路との間に排気管及び流通管が設けられている。これら排気管や流通管を介してブローバイガスをクランクケース内から掃気することにより、クランクケース内のオイルの劣化等を抑制することができる。
また、ブローバイガス中にはオイルが微少粒子となって存在している(オイルミスト)ことから、ブローバイガスを機関吸気通路へ戻す際にブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータ用いることが知られている(例えば、特許文献3)。例えば、特許文献3に記載のオイルセパレータは、噴孔から噴出されたブローバイガスを分離面に衝突させて、そのガス中からオイルを分離するように構成されている。加えて、特許文献3に記載のオイルセパレータは、噴孔の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなるほど噴孔の開口量が大きくなるように構成されている。特許文献3によれば、これにより、噴孔から噴出されるブローバイガスの流速を一定に維持し、流速の低下に伴うオイルの分離効率の低下を抑制することができるとされている。
特開2013−238117号公報 特開2011−149290号公報 特開2011−163226号公報
ところで、機関高負荷運転時においては、燃焼室から漏れ出すブローバイガス中のオイルミストの粒径が小さくなる。このため、オイルセパレータの分離板へのブローバイガスの衝突速度が遅いと、オイルを分離することができなくなる。このため、機関高負荷運転時においては、噴孔を通って流出するブローバイガスの流速は速いことが好ましい。一方、機関低負荷運転時においては、燃焼室から漏れ出すブローバイガス中のオイルミストの粒径は比較的大きい。このため、オイルセパレータの噴孔を通って流出するブローバイガスの流速はそれほど速くなくてもよい。加えて、ブローバイガスの流速を速めるべく噴孔の開口面積を小さくすると圧力損失が増大することからブローバイガスが掃気されにくくなる。
しかしながら、例えば、特許文献3に記載のオイルセパレータのように、噴孔を通って流出するブローバイガスの流速が一定になるように噴孔の開口面積を制御する場合、機関高負荷運転時におけるオイルの分離性能を高めるべく高い流速で一定となるように噴孔の開口面積を制御すると、機関低負荷運転時においてブローバイガスの掃気を十分に行うことができない。一方、機関低負荷運転時においてブローバイガスの掃気を十分に行うために噴孔の開口面積を大きくしようとすると噴孔を通って流出するブローバイガスの流速は低い速度で一定に維持されることになる。このため、この場合には、機関高負荷運転におけるオイルの分離を十分に行うことができない。したがって、特許文献3に記載のオイルセパレータでは、機関高負荷運転時におけるオイルの分離性能と、機関低負荷運転時におけるブローバイガスの掃気性能とを両立することができない。
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、機関高負荷時におけるオイルの分離性能と機関低負荷時におけるブローバイガスの掃気性能とを両立することができる可変圧縮比内燃機関を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明では、シリンダブロックがクランクケースに対して相対移動することにより機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関において、前記クランクケース内のブローバイガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータを具備し、前記オイルセパレータは、前記クランクケース内のブローバイガスが流出する噴孔を有する噴孔形成部材と、前記噴孔を通過したブローバイガスが衝突するように配置されたオイル分離板と、前記噴孔を少なくとも部分的に塞ぐことができる調整板とを具備し、前記調整板は、機械圧縮比が低下するように前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して相対移動したときに前記噴孔の開口面積が小さくなるように前記相対移動に合わせて移動するように配置される、可変圧縮比内燃機関が提供される。
本発明によれば、機関高負荷時におけるオイルの分離性能と機関低負荷時におけるブローバイガスの掃気性能とを両立することができる可変圧縮比内燃機関が提供される。
図1は、本発明に係る火花点火式内燃機関を概略的に示す側面断面図である。 図2は、図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示している。 図3は、図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。 図4は、機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。 図5は、図1の領域Xを拡大して示す概略的な断面図である。 図6は、シリンダブロックがクランクケースに相対的に接近しているときのオイルセパレータの状態を示している。 図7は、シリンダブロックがクランクケースから相対的に離間されているときのオイルセパレータの状態を示している。 図8は、機械圧縮比と開口面積との関係を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<内燃機関の構成>
図1は、火花点火式内燃機関の側面断面図である。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火プラグ、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11にはそれぞれ対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付けられる代りに各燃焼室5内に配置されてもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いたエアフロメータ18とが配置される。吸気ポート8、吸気枝管11、サージタンク12、吸気ダクト14は機関吸気通路を形成する。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒コンバータ20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
一方、図1に示した実施形態ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2とのシリンダ軸線方向の相対距離を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられている。さらに、図1に示した実施形態では、吸気弁の閉弁時期を変更可能な可変バルブタイミング機構Bが設けられている。
また、本実施形態の内燃機関は、機関吸気通路からクランクケース1内に空気を供給し得る流通管22と、クランクケース1内のブローバイガスを機関吸気通路に戻す戻し管23とを具備する。流通管22は一方の端部においてクランクケース1に連通し、他方の端部においてエアクリーナ15に連通する。なお、流通管22は、スロットル弁17よりも上流側であればエアクリーナ15以外の場所に連通してもよい。一方、戻し管23は、一方の端部において可変圧縮比機構Aの外側に配置されたカバー80に連結され、他方の端部においてサージタンク12に連通する。なお、戻し管23は、スロットル弁17よりも下流側であればサージタンク以外の場所に連通してもよい。また、戻し管23内には、機関本体から機関吸気通路への流体の流れは許可するがその逆の流れは禁止する逆止弁が設けられてもよい。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。エアフロメータ18及び空燃比センサ21の出力信号はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。さらに入力ポート35にはクランクシャフトが所定角度だけ回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火プラグ6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構A及び可変バルブタイミング機構Bに接続される。
<可変圧縮比機構の構成>
次に、本実施形態の可変圧縮比機構Aの構成について図2及び図3を参照して説明する。図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個のブロック側突出部50が形成されている。各ブロック側突出部50は、内側部50aと外側部50bとから形成されている。各ブロック側突出部50内にはそれぞれ断面円形のブロック側カム挿入孔51が形成されている。これらブロック側カム挿入孔51はシリンダの配列方向に平行になるように同一軸線上に形成される。特に、ブロック側カム挿入孔51は、ブロック側突出部50の内側部50aと外側部50bとの間に形成される。ブロック側突出部50がこのように内側部50aと外側部50bとに分かれていることにより、ブロック側カム挿入孔51内に後述するカムシャフト54、55を取り付けることができる。
一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔ててそれぞれ対応するブロック側突出部50の間に嵌合せしめられる複数個のケース側突出部52が形成されている。各ケース側突出部52は、内側部52aと外側部52bとから形成されている。また、外側部52b同士は、連結板52cによって互いに連結されている。ケース側突出部52の複数の外側部52bと複数の連結板52cは一つの部材になるように一体的に形成される。これら各ケース側突出部52内にもそれぞれ断面円形のケース側カム挿入孔53が形成されている。これらケース側カム挿入孔53も、ブロック側カム挿入孔51と同様にシリンダの配列方向に平行になるように同一軸線上に形成される。また、ケース側カム挿入孔53も、ケース側突出部52の内側部52aと外側部52bとの間に形成される。ケース側突出部52がこのように内側部52aと外側部52bとに分かれていることにより、ケース側カム挿入孔53内に後述するカムシャフト54、55を取り付けることができる。
また、可変圧縮比機構Aは、図2に示したように作用軸として機能する一対のカムシャフト54、55を具備する。各カムシャフト54、55上には一つおきに各ケース側カム挿入孔53内に回転可能に挿入されるケース側円形カム58が固定されている。これらケース側円形カム58は各カムシャフト54、55の回転軸線と共軸をなす。一方、各ケース側円形カム58の両側には図3に示したように各カムシャフト54、55の回転軸線に対して偏心配置された偏心軸57が延びており、この偏心軸57上に別のブロック側円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示したようにこれらブロック側円形カム56は各ケース側円形カム58の両側に配置されており、これらブロック側円形カム56は対応する各ブロック側カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。
図2に示したように各カムシャフト54、55をそれぞれ反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸60にはそれぞれ螺旋方向が逆向きの一対のウォームギア61、62が取付けられており、これらウォームギア61、62と噛合するウォームホイール63、64がそれぞれ各カムシャフト54、55の端部に固定されている。この実施形態では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
<可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更方法>
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54、55上に固定されたケース側円形カム58を図3(A)において矢印で示したように互いに反対方向に回転させると偏心軸57が互いに離れる方向に移動する。このため、ブロック側円形カム56がブロック側カム挿入孔51内においてケース側円形カム58とは反対方向に回転し、図3(B)に示したように偏心軸57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更にケース側円形カム58を矢印で示した方向に回転させると図3(C)に示したように偏心軸57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には、それぞれの状態におけるケース側円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bとブロック側円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
図3(A)〜図3(C)を比較するとわかるように、クランクケース1とシリンダブロック2の相対距離はケース側円形カム58の中心aとブロック側円形カム56の中心cとの距離によって定まる。そして、ケース側円形カム58の中心aとブロック側円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。すなわち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2との間の相対距離を変化させていることになる。そして、シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大する。したがって、各カムシャフト54、55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積(以下、「燃焼室容積」という)を変更することができる。
特に、図3に示した例では、図3(A)に示した状態と図3(B)に示した状態との間でシリンダブロック2はクランクケース1に対してD1だけ相対移動せしめられ、図3(B)に示した状態と図3(C)に示した状態との間でシリンダブロック2はクランクケース1に対してD2だけ相対移動せしめられる。
このようにカムシャフト54、55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変化させたとしても、圧縮行程時のピストン4の行程容積(ピストン4が吸気下死点から圧縮上死点まで移動するときに変化する燃焼室5の容積)は変化しない。したがって、(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される機械圧縮比は、上述したように燃焼室容積を変化させることで、変化する。すなわち、本実施形態の可変圧縮比機構Aによれば、駆動モータ59によってカムシャフト54、55を回転させることによって、内燃機関の機械圧縮比を変更することができる。
<機関負荷に応じた制御>
次に図4を参照しつつ運転制御全般について説明する。
図4には機関負荷に応じた要求吸入空気量、吸気弁7の閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比及びスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、本実施形態では触媒コンバータ20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC、COおよびNOxを同時に低減しうるように、通常、燃焼室5内における平均空燃比は空燃比センサ21の出力信号に基づいて理論空燃比にフィードバック制御されている。
図4に示したように機関高負荷運転時には機械圧縮比は低くされる。このため、膨張比は低く、図4において実線で示したように吸気弁7の閉弁時期は早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開又はほぼ全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図4において実線で示したように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図4に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、したがって機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、したがって燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。このときにもポンピング損失は零となる。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。すなわち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。
機関負荷がさらに低くなると機械圧縮比はさらに増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる最大限界機械圧縮比に達する。機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に保持される。したがって低負荷側の機関中負荷運転時及び機関低負荷運転時には、すなわち機関低負荷運転側では、機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図4に示した実施形態では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図4に示した実施形態では、このとき、すなわち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
なお、図4において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。
<オイルセパレータの構成>
また、本実施形態の内燃機関は、クランクケース1内のブローバイガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータ70を具備する。以下では、図5を参照して、本実施形態のオイルセパレータ70について説明する。
図5は、図1の領域Xを拡大して示す概略的な断面図である。特に、図5は、ブロック側突出部50が設けられた位置でのカムシャフト54の軸線と垂直な断面における断面図である。図5からわかるように、ブロック側突出部50の外側には、ケース側突出部52の連結板52cが配置される。上述したように、カムシャフト54、55が回転することにより、シリンダブロック2がクランクケース1に対して図中の矢印の方向へ相対移動することから、ブロック側突出部50もケース側突出部52の連結板52cに対して図中の矢印の方向へ相対移動することになる。
図5からわかるように、クランクケース1に連結されたケース側突出部52に設けられた連結板52cは、連結板52cを貫通して延びる噴孔71を具備する。噴孔71は、シリンダブロック2とクランクケース1とが相対移動する方向に一定長さだけ延びると共に、カムシャフト54、55の軸線方向に複数個並んで配置される。噴孔71の内側はクランクケース1内と連通しており、よってクランクケース1内のブローバイガスは噴孔71を通ってクランクケース1内から連結板52cの外側に流出することができる。このように構成された連結板52cは、オイルセパレータ70の一部を構成する。
また、オイルセパレータ70は、噴孔71の外側(すなわち、ブローバイガスの流れ方向において下流側)に、連結板52cから僅かな距離を隔てて配置されたオイル分離板72を有する。オイル分離板72は、例えば、連結板52cに連結される。しかしながら、噴孔71に対して、すなわちクランクケース1に対して相対的に移動しなければ、如何なる部材に連結されてもよい。
オイル分離板72は、全ての噴孔71が覆われるように配置される。このため、クランクケース1内から噴孔71を介して流出したブローバイガスは、オイル分離板72に衝突することになる。このようにブローバイガスがオイル分離板72に衝突すると、ブローバイガス中の気体はその流れの向きを変えてオイル分離板72と連結板52cとの隙間から流出する。しかしながら、ブローバイガス中のオイルミストは、その慣性力によりオイル分離板72に衝突してオイル分離板72の表面に付着する。これにより、ブローバイガス中のオイルを気体から分離することができる。なお、オイル分離板72の表面には、衝突したオイルミストを効果的に保持することができるように、メッシュやガーゼが設けられてもよい。
加えて、オイルセパレータ70は、噴孔71の内側(すなわち、ブローバイガスの流れ方向において上流側)に、連結板52cに接するように配置された調整板73を具備する。ブロック側突出部50の連結板52cと対面する面には、溝50cが設けられており、調整板73はその溝50c内に配置される。また、溝50c内にはバネ74が設けられており、調整板73を連結板52cに向けて付勢する。このため、調整板73は、常に連結板52cの表面に接するように配置される。
上述したように、調整板73はブロック側突出部50に設けられた溝50c内に配置される。このため、調整板73は、シリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動したときには、ブロック側突出部50に合わせて、したがってシリンダブロック2に合わせてクランクケース1に対して相対的に移動する。したがって、調整板73は、連結板52cに接した状態で連結板52c上を摺動することになる。特に、調整板73は、噴孔71が設けられた領域において連結板52c上を摺動する。このため、調整板73は、少なくとも部分的に噴孔71を塞ぐことができる。
また、調整板73の外側には、クランクケース1に連結されたカバー80が設けられる。カバー80は、可変圧縮比機構Aを構成するカムシャフト54、55、ブロック側突出部50及びケース側突出部52が配置された開口を塞ぐように配置される。カバー80には開口部が設けられており、この開口部は戻し管23に接続される。カバー80と調整板73とによって画成された空間には噴孔71を通ってブローバイガスが流入し、この空間内に流入したブローバイガスは戻し管23を介して機関吸気通路へ戻される。
<オイルセパレータの動作>
次に、図6及び図7を参照して、オイルセパレータ70の動作について説明する。図6は、シリンダブロック2がクランクケース1に相対的に接近しているときのオイルセパレータ70の状態を示している。一方、図7は、シリンダブロック2がクランクケース1から相対的に離間されているときのオイルセパレータ70の状態を示している。なお、図6(A)及び図7(A)は、図5と同様な断面におけるオイルセパレータ70の状態を示しており、図6(B)及び図7(B)は図6(A)及び図7(A)の左側から見たオイルセパレータ70の状態を示している。また、図中の矢印は、ブローバイガスの流れを示している。
シリンダブロック2がクランクケース1に相対的に近づく場合、すなわち機械圧縮比が高くなる場合には、噴孔71に対して調整板73が下方に移動する。この結果、本実施形態では、機械圧縮比が高いときには、図6に示したように調整板73は噴孔71をほとんど塞がないように位置する。このため、噴孔71の開口面積は大きなものになる。この結果、クランクケース1内のブローバイガスは噴孔71を介して多量に流れると共にその流速は遅くなる。換言すると、本実施形態では、調整板73は、機械圧縮比が増大するようにシリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動したときに噴孔71の開口面積が大きくなるように、シリンダブロック2に合わせてクランクケース1に対して移動するように配置される。加えて、本実施形態では、調整板73は、機械圧縮比が高くなったときに、噴孔71を通って流れるブローバイガスの流速が相対的に遅くなるように構成される。
一方、シリンダブロック2がクランクケース1から相対的に離れていく場合、すなわち機械圧縮比が低くなる場合には、噴孔71に対して調整板73が上方に移動する。この結果、本実施形態では、機械圧縮比が低いときには、図7に示したように調整板73は噴孔71の大部分を塞ぐように位置する。このため、噴孔71の開口面積は小さなものになる。この結果、クランクケース1内のブローバイガスは噴孔71を介して少量が流れると共にその流速は速くなる。逆にいうと、本実施形態では、調整板73は、機械圧縮比が低下するようにシリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動したときに噴孔71の開口面積が小さくなるように、シリンダブロック2に合わせてクランクケース1に対して移動するように配置される。加えて、本実施形態では、調整板73は、機械圧縮比が低くなったときに、噴孔71を通って流れるブローバイガスの流速が相対的に遅くなるように構成される。
したがって、本実施形態では、シリンダブロック2とクランクケース1との相対位置に応じて、したがって機械圧縮比に応じて、噴孔71の開口面積が変化する。具体的には、図8に示したように、機械圧縮比が高くなるほど開口面積が増大せしめられる。
<オイルセパレータの効果>
次に、上述したように構成されたオイルセパレータ70の効果について説明する。
ところで、内燃機関の負荷が高い場合には、燃焼室5内での混合気の燃焼に伴って燃焼室5内の圧力(燃焼圧)が高くなる。このため、ピストン4に設けられたピストンリングの隙間からクランクケース1内に漏れ出すブローバイガスの流速が速くなる。これにより、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が小さくなる。オイルミストの粒径が小さいと、オイルセパレータ70の噴孔71からオイル分離板72に向けて噴出したブローバイガス中のオイルミストに作用する慣性力は小さい。このため、噴孔71を流通するブローバイガスの流れが遅いと、オイルミストはオイル分離板72に衝突せずにオイル分離板72を迂回するブローバイガスに乗って流れてしまう。この結果、ブローバイガスからオイルミストが分離されにくくなる。
また、内燃機関の負荷が高い場合には、燃焼圧が高いことからクランクケース1内に漏れ出すブローバイガスの流量も多くなる。このため、クランクケース1内のブローバイガスの圧力が高くなる。この結果、機関吸気通路との差圧が大きくなることから、一般に、ブローバイガスが機関吸気通路へ多量に戻されることになる。しかしながら、機関吸気通路へ多量のブローバイガスが戻されると、燃焼室5内にデポジットが付着し易くなると共に点火プラグ6によって点火する前に混合気が自己着火してしまう場合がある。
これに対して、上述したように構成された内燃機関では、内燃機関の負荷が高い場合には、図4に示したように機械圧縮比が低下せしめられる。この結果、図7に示したように、噴孔71の開口面積が小さくされる。これにより、オイルセパレータ70の噴孔71を通過するブローバイガスの流速が速くなる。このため、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が小さくても、オイルミストはオイル分離板72に衝突し、その結果、ブローバイガスからオイルを分離させることができる。加えて、噴孔71の開口面積が小さくされることにより、噴孔71による絞りが大きくなり、多量のブローバイガスが機関吸気通路に戻されるのが抑制される。
一方、内燃機関の負荷が低い場合には、燃焼圧は低くなり、よってブローバイガス中のオイルミストの粒径が大きくなる。このため、噴孔71を流通するブローバイガスの流れが遅くても、オイルミストはオイル分離板72に衝突し、よってブローバイガスからオイルを分離することができる。また、内燃機関の負荷が低い場合には、クランクケース1内に漏れ出すブローバイガスの流量が少ない。このため、クランクケース1内のブローバイガスの圧力はそれほど高くならず、よって噴孔71の開口面積を大きくしてもブローバイガスが機関吸気通路へ過剰に戻されてしまうことはない。一方で、噴孔71の開口面積を大きくすることにより、ブローバイガスが噴孔71を通ってクランクケース1から流出し易くなり、クランクケース1内のブローバイガスの掃気を十分に行うことができるようになる。したがって、本実施形態では、内燃機関の負荷が高いときのオイル分離性能と、内燃機関の負荷が低いときのブローバイガスの掃気性能とを両立させることができる。
<変更例>
なお、図5〜図7に示した例では、噴孔71は、シリンダブロック2とクランクケース1とが相対移動する方向に一定長さだけ延びると共に、カムシャフト54、55の軸線方向に複数個並んで配置される。しかしながら、噴孔71は、カムシャフト54、55の軸線方向に一定長さだけ延びると共に、上記相対移動する方向に複数個並んで配置されてもよい。この場合、調整板が移動することにより閉じられる噴孔の数が変化し、その結果、噴孔の開口面積が変化する。
また、上述した実施形態では、クランクケース1内のブローバイガスが流出する噴孔を有する噴孔形成部材として、クランクケース1に取り付けられたケース側突出部52の連結板52cが用いられている。しかしながら、噴孔形成部材は、クランクケース1に連結された他の部材であってもよいしクランクケース1自体に設けられてもよい。
さらに、上述した実施形態では、オイルセパレータ70は、ブロック側突出部50及びケース側突出部52周りに設けられている。しかしながら、クランクケース1に対するシリンダブロック2の相対移動に伴って互いに摺動する部材同士の周りであれば、いかなる部材周りに設けられてもよい。したがって、例えば、噴孔形成部材はシリンダブロック2に設けられるか又はシリンダブロック2に連結された部材であってもよい。この場合には、調整板は、機械圧縮比が低下するようにシリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動したときに噴孔71の開口面積が小さくなるようにクランクケース1に対してシリンダブロック2に合わせて移動するように配置されることになる。
以上をまとめると、本発明では、調整板は、機械圧縮比が低下するようにシリンダブロック2がクランクケース1に対して相対移動したときに噴孔71の開口面積が小さくなるようにシリンダブロック2とクランクケース1との相対移動に合わせて移動するように配置されるといえる。
1 クランクケース
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
6 点火プラグ
13 燃料噴射弁
30 電子制御ユニット(ECU)
50 ブロック側突出部
52 ケース側突出部
54、55 カムシャフト
59 駆動モータ
60 回転軸
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構

Claims (1)

  1. シリンダブロックがクランクケースに対して相対移動することにより機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関において、
    前記クランクケース内のブローバイガスに含まれるオイルを分離するオイルセパレータを具備し、
    前記オイルセパレータは、前記クランクケース内のブローバイガスが流出する噴孔を有する噴孔形成部材と、前記噴孔を通過したブローバイガスが衝突するように配置されたオイル分離板と、前記噴孔を少なくとも部分的に塞ぐことができる調整板とを具備し、
    前記調整板は、機械圧縮比が低下するように前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して相対移動したときに前記噴孔の開口面積が小さくなるように前記相対移動に合わせて移動するように配置される、可変圧縮比内燃機関。
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