JP2016142199A - エンジン - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、近年、エンジンのコンパクト化や軽量化を優先するため、各気筒のクランクウェブ部に十分なカウンタウェイトを配置できない場合がある。
各気筒に十分なカウンタウェイトを設けることができない場合、慣性力によってクランクシャフトを支持する各軸受の隙間内において、クランク回転軸に対し直交するクランクピン方向に向け、クランクシャフトの両端部と中央部が逆方向に変位する、いわゆる弓なり変形が生じ、クランク打音の発生や、軸受への片当たりによる潤滑性能の低下が懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、クランクシャフトの弓なり変形を抑制するとともに応力増加を抑制したエンジンを提供することである。
請求項1に係る発明は、一方の端部側から第1のクランクピン、第2のクランクピン、第3のクランクピン、第4のクランクピンが順次配列されるとともに、前記第1のクランクピンと前記第4のクランクピンとが回転中心軸回りにおける同じ角度位置に配置され、前記第2のクランクピンと前記第3のクランクピンとが前記回転中心軸回りの角度位置において前記第1のクランクピン及び前記第4のクランクピンに対して180°オフセットした位置に配置されるクランクシャフトと、前記クランクシャフトの一方の端部及び他方の端部に固定された回転体にそれぞれ設けられ、重心位置が前記回転中心軸に対して前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンと実質的に同じ方向にオフセットされた第1のカウンタウェイト及び第2のカウンタウェイトとを備えるエンジンであって、前記第1のクランクピンと前記第4のクランクピンとの少なくとも一方に連結される部品の重量を、前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンに連結される部品の重量に対して軽量としたことを特徴とするエンジンである。
これによれば、第1のクランクピン、第4のクランクピンの少なくとも一方に連結される部品(ピストン、コネクティングロッド等)の重量を軽量とすることによって、当該クランクピンに入力される慣性力、遠心力を低減し、クランクシャフトのこれと隣接する側の端部に設けられるカウンタウェイトを軽減しても振動を抑制することができる。
また、これによって、クランクシャフトの端部に生じる応力が低減され、クランクシャフトの弓なり変形を抑制し、クランク打音の発生や潤滑性能の低下を防止することができる。
これによれば、クランクシャフトの両端部において上述した効果を得ることができる。
これによれば、ピストンの軽量化を行うことによって、これを支持するピストンピン、コネクティングロッド、クランクピン等の関連部品の軽量化も可能となり、上述した効果をより促進することができる。
実施例のエンジンは、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される4ストローク水平対向4気筒のガソリンエンジンである。
図1は、実施例のエンジンに設けられるクランクシャフトの構成を示す模式図である。
クランクシャフト1は、例えば鋼系の金属材料を鍛造等で加工して概形を形成後、所定の機械加工を施すことによって一体に形成された第1クランクピン10、第2クランクピン20、第3クランクピン30、第4クランクピン40、第1〜第5ジャーナル51〜55、前端部60、後端部70等を有する。
クランクシャフト1の両端部には、別部品であるクランクプーリ80、フライホイル90が固定されている。
第1気筒及び第3気筒は、クランクシャフト1に対して車幅方向右側となる右バンクに設けられ、第2気筒及び第4気筒は、車幅方向左側となる左バンクに設けられる。
第1気筒と第2気筒、第3気筒と第4気筒は、各気筒のクランクピンの軸方向オフセットに起因する若干のオフセットはあるものの、実質的に車幅方向に対向して配置されている。
第1クランクピン10、第2クランクピン20、第3クランクピン30、第4クランクピン40は、それぞれクランクシャフト1の回転中心軸に対して偏心して配置されている。
第2クランクピン20、及び、第3クランクピン30は、クランクシャフト1の回転中心軸方向から見たときに、第1クランクピン10及び第4クランクピン40に対して軸対称(回転中心軸回りにおける角度位置が180°オフセットされた位置)となるように配置されている。
このような構成によって、実施例のクランクシャフト1は、回転中心軸及び各クランクピン10,20,30,40の中心軸が、同一平面上に配置された、いわゆる平面クランクとなっている。
各クランクウェブ11,12,21,22,31,32,41,42は、隣接するジャーナル51,52,53,54,55とクランクピン10,20,30,40とを連結するクランクアーム、及び、クランクピンに入力される慣性力、遠心力の一部又は全部を打ち消す回転質量体であるカウンタウェイトを一体に形成したものである。
各クランクウェブ11,12,21,22,31,32,41,42は、実質的にクランクシャフト1の回転中心軸に対して直交する平面にほぼ沿って延在する平板状に形成されている。
第1ジャーナル51は、第1クランクピン10の前側クランクウェブ11から前方側へ突出している。
第2ジャーナル52は、第1クランクピン10の後側クランクウェブ12と、第2クランクピン20の前側クランクウェブ21との間に設けられている。
第3ジャーナル53は、第2クランクピン20の後側クランクウェブ22と、第3クランクピン30の前側クランクウェブ31との間に設けられている。
第4ジャーナル54は、第3クランクピン30の後側クランクウェブ32と、第4クランクピン40の前側クランクウェブ41との間に設けられている。
第5ジャーナル55は、第4クランクピン40の後側クランクウェブ42から後方側へ突出している。
後端部70は、第5ジャーナル55の後端部から後方側に突出した軸部である。
前端部60、後端部70には、クランクケースからのオイルの漏出を防止する図示しないオイルシール等も設けられる。
フライホイル90は、後端部70の後部に固定される円盤状の部材であって、エンジンのトルク変動を吸収するために設けられた回転質量体である。
また、第4気筒のピストン100、コネクティングロッド200、及び、第4クランクピン40等に起因する慣性力、遠心力を打ち消すためのカウンタウェイトの一部を、フライホイル90に付加している。
クランクプーリ80及びフライホイル90に設けられるカウンタウェイトは、その重心位置のクランクシャフト1の回転中心軸に対する角度位置(第1クランクピン10に対するオフセット)が、第2クランクピン20、第3クランクピン30と実質的に同じとなるように配置されている。
図2において、クランクプーリ80に作用する慣性力(遠心力)をaとする。
第1クランクピン10、及び、前側クランクウェブ11、後側クランクウェブ12に作用する慣性力をbとする。
第2クランクピン20、及び、前側クランクウェブ21、後側クランクウェブ22に作用する慣性力をcとする。
第3クランクピン30、及び、前側クランクウェブ31、後側クランクウェブ32に作用する慣性力をdとする。
第4クランクピン40、及び、後側クランクウェブ41、後側クランクウェブ42に作用する慣性力をeとする。
フライホイル90に作用する慣性力をfとする。
一方、慣性力b,eのクランクシャフト1の中心軸回りにおける作用方向は、慣性力a,c,d,fに対して反対側(180°オフセットされた位置)となっている。
また、慣性力によるモーメントバランスを確保するためには、各慣性力a,b,c,d,e,fと、エンジン中心からの距離を掛け合わせた値の和が0であることが必要である。
以下、その具体例について説明する。
図3(a)は、第2、第3気筒のピストンを示す図である。
図3(b)は、第1、第4気筒のピストンを示す図である。
図3(a)、図3(b)ともに、模式的断面図を示している。
冠面部110は、シリンダヘッドに形成される燃焼室と対向して配置された凹凸を含む円盤状の面部であって、燃焼行程において燃焼ガスの圧力を受ける部分である。
スカート部120は、冠面部110の外周縁部からクランクシャフト1側へ形成された外周面を有し、ピストン100の往復時にシリンダライナと摺接する部分である。
ボス部130は、ピストンピン140を支持する基部となる部分である。
ボス部130は、冠面部110のクランクシャフト1側の面部から突き出して形成されている。
ボス部130は、ピストンピン140が挿入される開口を有する。
ボス部130におけるピストンピン140軸方向における中間部には、コネクティングロッド200の小端部210が収容される空間部が形成されている。
ピストンピン140は、ボス部130の開口に挿入される円筒状の部材である。
ピストンピン140の中間部は、コネクティングロッド200の小端部210の内径側に挿入される。
このテーパ形状化は、後述するコネクティングロッド200の小端部210のテーパ形状化に伴うものである。
図4(a)は、第2、第3気筒のコネクティングロッドをクランクシャフトの回転中心軸方向から見た図である。
図4(b)は、図4(a)のb−b部矢視図である。
図4(c)は、図4(c)のc−c部矢視断面図である。
図4(d)は、第1、第4気筒のコネクティングロッドをクランクシャフトの回転中心軸方向から見た図である。
図4(e)は、図4(d)のe−e部矢視図である。
図4(f)は、図4(e)のf−f部矢視断面図である。
小端部210は、ピストンピン140が挿通される円環状の部分である。
大端部220は、クランクシャフト1の各クランクピン10,20,30,40が挿通される軸受部が形成された部分である。
大端部220は、図示しない分割線に沿って二分割して構成され、軸受部の内径側にクランクピンを収容した状態で、二分割された部材がボルト等によって締結される。
桿部230は、小端部210と大端部220とを連結する部分であって、H字状の断面形状を有する桿状に形成されている。
図5(a)は、第2気筒に設けられる第2クランクピン20の周辺部を示す。第3クランクピン30も実質的に同様の構成を有する。
図5(b)は、第1気筒に設けられる第1クランクピン10の周辺部を示す。第4クランクピン40も実質的に同様の構成を有する。
また、このような中空化に代えて、第1クランクピン10及び第4クランクピン40を、第2クランクピン20及び第3クランクピン30に対して小径化する構成、さらに、小径化しさらに中空化する構成としてもよい。
比較例1,2の説明において、上述した実施例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
このようなエンジンにおいては、カウンタウェイトの設置スペースが不足したり、軽量化を優先するために十分なカウンタウェイトを配置できない場合、クランクシャフト1が各ベアリングB1,B2,B3,B4,B5の隙間内において弓なりに変形する挙動を示す場合がある。
図6に示すように、比較例1のエンジンにおいては、実施例における慣性力a,fは実質的に発生しない。
その結果、クランクシャフト1は、図6に示すように、第2クランクピン20、第3クランクピン30側が凸となるように、第1ジャーナル51から第5ジャーナル55にかけての領域が全体的に一つの円弧状となるよう湾曲する変形モードを示す。
本明細書等において、このような変形モードを、「弓なり変形」と称する。
比較例2のエンジンは、比較例1のエンジンに対して第1クランクピン10の前側クランクウェブ11、後側クランクウェブ12、第4クランクピン40の前側クランクウェブ41、後側クランクウェブ42のカウンタウェイトの一部を軽減するとともに、これに相当するカウンタウェイトをクランクプーリ80、フライホイル90に付加したものである。
なお、比較例2のエンジンにおいては、ピストン100、コネクティングロッド200、及び、クランクピン10,20,30,40の仕様、重量は、全ての気筒において共通である。
図2に示す実施例、比較例2とも、第1クランクピン10、第4クランクピン40に作用する慣性力b,eは、第2クランクピン20、第3クランクピン30に作用する慣性力c、dより大きい。
比較例2においては、図2に示す実施例の場合に対して、第1クランクピン10、第4クランクピン40に作用する慣性力b,eが比較的大きいため、クランクプーリ80に作用する慣性力a及びフライホイル90に作用する慣性力fも、回転一次バランス及びモーメントのバランスを取るために、実施例に対して大きくする必要がある。
例えば、クランクシャフト1の前端部においては、クランクプーリ80に設けられたカウンタウェイトによる慣性力によって、第1ジャーナル51と第1クランクピン10の前側クランクウェブ11との接続部に設けられるフィレット部に作用する引張応力が大きくなり、歪増加によるクランクシャフト1の信頼性低下が懸念される。
これによって、クランクシャフト1の弓なり変形を抑制してベアリングの片当たりや潤滑不良を防止しつつ、クランクシャフト1に作用する応力の軽減も図ることが可能となっている。
図8において、縦軸は第1ジャーナル51と第1クランクピン10の前側クランクウェブ11との接合部に設けられたフィレット部の第1クランクピン10と同位相の箇所(図1におけるA点)の応力を示し、上方が引張側、下方が圧縮側を示している。
横軸は、クランク角度を示す。
図8において、実施例、比較例1、比較例2の応力推移を、それぞれ実線、点線、一点鎖線で図示する。
このような状態で長時間エンジンを運転し、繰り返し応力を受けた場合、クランクシャフト1の信頼性に懸念が生じる。
以上説明したように、本実施例によれば、第1クランクピン10、第4クランクピン40に連結されるピストン100、コネクティングロッド200及び各クランクピンの重量を軽量とすることによって、当該クランクピン10,40に入力される慣性力、遠心力を低減し、その結果クランクプーリ80及びフライホイル90に設けられるカウンタウェイトを軽減しても振動を抑制することができる。
また、これによって、クランクシャフト1の端部に生じる応力が低減され、クランクシャフト1の弓なり変形を抑制し、クランク打音の発生や潤滑性能の低下を防止することができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例のエンジンは、例えば、水平対向4気筒のものであるが、本発明はいわゆる平面クランクとなるエンジンであれば、他のシリンダレイアウトや気筒数のものにも適用が可能である。
例えば、本発明は、第1、第4気筒のクランクピン、及び、第2、第3気筒のクランクピンが実施例と同様に180°オフセットで配置されている直列4気筒エンジンにも適用することができる。
また、V型8気筒エンジンにおいて、各バンクに属する気筒のクランクピンに着目した場合に、いわゆる平面クランクとなる場合にも適用することが可能である。
(2)実施例のエンジンは例えばガソリンエンジンであるが、本発明は、ディーゼルエンジンやその他のレシプロエンジンにも適用することが可能である。
(3)実施例においては、第1気筒、第4気筒のピストン、コネクティングロッド、クランクピン等を、第2気筒、第3気筒に対して軽量化しているが、必ずしも第1、第4気筒の両方で第2気筒、第3気筒に対する軽量化を行う必要はなく、いずれか一方の気筒のピストン等のみ軽量化してもよい。この場合にも軽量化した気筒と隣接する側の端部の応力軽減を図ることが可能である。
また、ピストン、コネクティングロッド、クランクピンのうち一部の部品のみを軽量化してもよい。
さらに、軽量化の具体的手法は、実施例に限定されず適宜変更することができる。
(4)実施例においては、クランクシャフトの両端部に設けられたクランクプーリ及びフライホイルにカウンタウェイトを付加しているが、これに限らず、ドライブプレート、トルクコンバータ、クラッチカバー、各種スプロケット等、クランクシャフトの端部に固定される他の回転部品にカウンタウェイトを付加してもよい。
11 前側クランクウェブ 12 後側クランクウェブ
20 第2クランクピン 21 前側クランクウェブ
22 後側クランクウェブ 30 第3クランクピン
31 前側クランクウェブ 32 後側クランクウェブ
40 第4クランクピン 41 前側クランクウェブ
42 後側クランクウェブ 51 第1ジャーナル
52 第2ジャーナル 53 第3ジャーナル
54 第4ジャーナル 55 第5ジャーナル
60 前端部 70 後端部
80 クランクプーリ 90 フライホイル
100 ピストン 110 冠面部
120 スカート部 130 ボス部
140 ピストンピン 200 コネクティングロッド
210 小端部 220 大端部
230 桿部
Claims (3)
- 一方の端部側から第1のクランクピン、第2のクランクピン、第3のクランクピン、第4のクランクピンが順次配列されるとともに、前記第1のクランクピンと前記第4のクランクピンとが回転中心軸回りにおける同じ角度位置に配置され、前記第2のクランクピンと前記第3のクランクピンとが前記回転中心軸回りの角度位置において前記第1のクランクピン及び前記第4のクランクピンに対して180°オフセットした位置に配置されるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトの一方の端部及び他方の端部に固定された回転体にそれぞれ設けられ、重心位置が前記回転中心軸に対して前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンと実質的に同じ方向にオフセットされた第1のカウンタウェイト及び第2のカウンタウェイトと
を備えるエンジンであって、
前記第1のクランクピンと前記第4のクランクピンとの少なくとも一方に連結される部品の重量を、前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンに連結される部品の重量に対して軽量としたこと
を特徴とするエンジン。 - 前記第1のクランクピン及び前記第4のクランクピンにそれぞれ連結される部品の重量を、前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンに連結される部品の重量に対して軽量としたこと
を特徴とする請求項1に記載のエンジン。 - 前記第1のクランクピンと前記第4のクランクピンとの少なくとも一方にコネクティングロッドを介して連結されるピストンの重量を、前記第2のクランクピン及び前記第3のクランクピンにコネクティングロッドを介して連結されるピストンの重量に対して軽量としたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。
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