JP2016140494A - 脂肪組織再建用部材 - Google Patents

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【課題】乳房の部分的切除後において、脂肪組織を再生することにより乳房を再建することができる生分解性(吸収性)の脂肪組織再建用部材を提供する。【解決手段】乳房再建用の脂肪組織再建用部材3であって、コラーゲンを含むスポンジ1及びポリ乳酸を含む多孔体2を含み、該多孔体が内部空間を有する袋形状を有し、その内部空間に該スポンジが収容されてなる部材に関する。【選択図】図2

Description

本発明は、脂肪組織再建用部材及びその製造方法に関する。具体的には、乳がんの病巣組織を切除した乳房欠損部に埋入して乳房(脂肪組織)の再建に用いられる脂肪組織再建用部材に関する。
乳がんの治療方法として、乳房にできたがんを手術により切除する方法(外科療法)が採用されている。近年、患者のQOLの観点から、乳房の病巣組織を部分的に切除する乳房温存手術が普及してきているが、部分的切除であっても必然として患部に陥没が生じてしまい、患者に精神的な負担を強いることに変わりはない。そのため、外科療法の後に乳房再建術を受ける患者が増加している。
乳房再建術としては、シリコン製のインプラントが主に用いられているが、生体非吸収性であるため感染を起こす可能性があり、また、接触によるアレルギー、発がん等の悪影響も懸念されている。
他の方法として、他部位から脂肪組織を採取し、それを陥没のある患部に移植する方法もあるが、移植後速やかに吸収されてしまい再度陥没することがある。また、組織を採取することで新たな創傷が生じQOLの観点から必ずしも好ましくない。
そこで、乳房組織の部分的切除により生じた窪みや変形を整えて乳房を再建するために、生体適合性の多孔質シートから形成される、内部空間を有する袋状部を備え、該袋状部に基づいて弾性復元力を有する乳房メッシュインプラントが報告されている(特許文献1及び2)。
しかし、当該乳房メッシュインプラントは袋状部により弾性復元力が付与されるものであるが、袋状部が生分解性(吸収性)の材料の場合には袋状部が経時的に消失してしまうため弾性復元力を長期間保持できないことになる。弾性復元力が付与され胸部の自然な乳房の膨らみを長期間保持するためには、袋状部は非生分解性(非吸収性)の材料で構成されている必要がある。特許文献1及び2の実施例では、袋状部の材料として非生分解性(非吸収性)のポリプロピレン製のメッシュシートが推奨されている。
このように、当該乳房メッシュインプラントは基本的に生体内で吸収されずに残るものであるため、生体にとっては異物であり、それに伴う感染やアレルギー等の問題が生じる可能性があった。
特開2004-130118号公報 特開2005-137398号公報
本発明は、乳房の部分的切除後において、脂肪組織を再生することにより乳房を再建することができる生分解性(吸収性)の脂肪組織再建用部材を提供することを課題とする。具体的には、脂肪組織が再生し乳房が再建されるまでの期間は強度を保持し、脂肪組織再生後に生体に吸収される乳房の脂肪組織再建用部材を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、周囲からの圧迫に対し強度を保持する生分解性材料(特に、ポリ乳酸)を含む多孔体と、乳房の脂肪組織を再生するための足場としてコラーゲンを含むスポンジとを組み合わせた部材が、上記課題を解決できることを見いだした。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の乳房の脂肪組織再建用部材を提供する。
項1 乳房再建用の脂肪組織再建用部材であって、コラーゲンを含むスポンジ及びポリ乳酸を含む多孔体を含み、該多孔体が内部空間を有する袋形状を有し、その内部空間に該スポンジが収容されてなる、部材。
項2 前記多孔体が、ポリ乳酸を含むメッシュシートを袋形状に固定した袋状物である、項1に記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
項3 前記多孔体が、ポリ乳酸を含む多孔性カプセルである、項1又は2に記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
項4 乳房の部分的切除によって生じた欠損部に埋設して用いられる、項1〜3のいずれかに記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
項5 前記多孔体の孔の大きさ及び個数が、袋形状の内部に脂肪組織が到達でき、かつ、コラーゲンを足場にして脂肪組織が十分に再生できる程度である、項1〜4のいずれかに記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
本発明の乳房の脂肪組織再建用部材は、乳房の脂肪組織を効果的に再生させて乳房を再建することができる。具体的には、乳がんの外科療法として乳房を部分的に切除した後、その患部に本発明の部材を埋入することにより、脂肪組織を効率的に再生させて乳房を再建することができる。
この部材は、ポリ乳酸を含む袋形状の多孔体の内部に、コラーゲンを含むスポンジを保持しているため、該多孔体により弾性復元力が付与され胸部の自然な乳房の膨らみを長期間保持することができ、同時に保持されたコラーゲンを含むスポンジが脂肪組織を再生できるため、乳房の再陥没を防ぐことができる。
特に、本発明の部材は、該多孔体の材料にポリ乳酸を用いているため、長期間の形状保持に必要な強度と生分解性速度を有している。該多孔体内に保持されたコラーゲンを含むスポンジが脂肪組織を再生する足場として働くとともに、該スポンジで脂肪組織が再生するまで、該多孔体が周囲の組織からの圧迫に対して強度を保持する働きを有する。
また、本発明の部材は、生分解性材料(ポリ乳酸及びコラーゲン)からなり乳房再建後は生体に吸収されるため、生体内に残留することで生じる不都合(炎症、感染症、アレルギー、発がん等)は生じない。
従来の非生分解性材料を用いた乳房再建材料は、基本的に生体内に残留することで乳房の形状を保持し弾力性を補完するものであるのに対し(例えば、特許文献1及び2)、本発明の部材は、乳房の欠損部に脂肪組織を再生させて乳房を再建し、その役割を終えた後は生体内に吸収され得るものである。これにより、患者のQOLが飛躍的に向上する。
コラーゲンスポンジをポリ乳酸のメッシュシートで被覆して得られた本発明の脂肪組織再建用部材の写真である。 コラーゲンスポンジ1をポリ乳酸のメッシュ2で被覆して脂肪組織再建用部材3を製造する工程を示す。 コラーゲンスポンジ1を、2つのドーム状のポリ乳酸の多孔性カプセル4ではさみ込み、これを固着して、脂肪組織再建用部材5を製造する工程を示す。 組織中のメッシュに相当する部分の断面を示し、断面における部材内部の面積7と、その部材内部の脂肪の面積8を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、用語「含む」には「必須として含む」及び「のみからなる」の両方の意味を包含する。
本発明の脂肪組織再建用部材は、乳がんの病巣組織を部分的に切除した乳房欠損部に埋入して乳房(脂肪組織)を再建するために用いられる部材である。当該部材は、コラーゲンを含むスポンジ及び生分解性材料(特に、ポリ乳酸)を含む多孔体を組み合わせたものであり、該多孔体が内部空間を有する袋形状を有し、その内部空間に該スポンジが収容されていることを特徴とする。
スポンジはコラーゲンを含み、コラーゲンを主成分として含むものが好ましく、スポンジ中にコラーゲンを50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、特に100質量%含むものが好ましい。
コラーゲンとしては特に限定はなく、牛、豚等の皮膚や腱等に由来するものを用いることができる。抗原性を排除してより安全性を高める観点から、コラーゲンをプロテアーゼやペプシン等の酵素で処理して、テロペプチドをできる限り除去したアテロコラーゲンが好ましい。
コラーゲンスポンジの具体例として、例えば、ペルナック(スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント株式会社)、テルダーミス(テルモ株式会社)等が挙げられる。
多孔体に含まれる生分解性材料としては、脂肪組織が再生し乳房が再建されるまで強度を保持し、その後、生体内に吸収される材料であり、好ましくは、ポリ乳酸(D−、L−、メソ体、それらの混合物)である。特にポリL−乳酸(PLLA)が好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量は、通常、4000〜200000程度である。重量平均分子量はGPCを用いて測定した値である。
多孔体中にポリ乳酸(特に、PLLA)を50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、特に100質量%含むものが好ましい。
多孔体は、内部空間を有する袋形状を有していれば特に限定はない。例えば、ポリ乳酸を含むメッシュシートを袋形状に固定した袋状物、ポリ乳酸を含む多孔性カプセル等の形態が例示される。コラーゲンを含むスポンジが、該多孔体の内部空間に収容されている。多孔体の孔は、脂肪組織がその孔を通り内部に存在する該スポンジに到達し得る程度の大きさであれば特に限定はない。
例えば、多孔体が上記のメッシュシートを袋形状に固定した袋状物である場合、メッシュシートは、モノフィラメント又はマルチフィラメントから形成される網目状物(ネット)、織物、編物等を挙げることができる。フィラメントの繊維の太さは特に限定はなく、通常、0.05〜0.5mm程度、好ましくは0.1〜0.4mm程度である。メッシュの伸縮性、弾性、保形性、脂肪組織の進入性等の観点から、モノフィラメントから形成される網目状又は編み状のメッシュシートが好ましい。メッシュ開口部の縦及び横のサイズが、それぞれ0.01mm〜6mm程度、好ましくは0.02mm〜5mm程度である。言い換えれば、縦及び横のサイズが、0.01mm×0.01〜6mm×6mm程度、好ましくは0.02mm×0.02mm〜5mm×5mm程度である。
通常、メッシュシートを加工して開口部を有する袋形状とし、これにスポンジを収容した後、当該開口部を縫合、結紮、融着、接着等の任意の手段で固着して製造することができる。具体的には、例えば、メッシュシートの筒状物にスポンジを収容した後、その両端を固着して製造することができる。或いは、メッシュシートの筒状物の一方の開口部を固着しこれにスポンジを収容した後、他方の開口部を固着して製造することができる。例えば、図1及び図2を参照。
多孔体がポリ乳酸を含む多孔性カプセルである場合、多数の孔を有するカプセルにスポンジを収容した後、カプセルを固着して製造することができる。具体的には、例えば、多数の孔を有するドーム状の2つのカプセルを用意し、この2つのカプセルでスポンジを収容した後、カプセル同士を融着、接着等の任意の手段で固着することで製造することができる。例えば、図3を参照。
多孔性カプセルの孔(開口部)のサイズは、脂肪組織の進入性等が確保されるものであれば特に限定はない。孔の径は、例えば、0.01〜6mm程度、好ましくは0.02〜5mm程度である。
本発明の脂肪組織再建用部材の大きさ及び形状は特に限定はなく、通常、乳房欠損部に埋入配置するのに適した大きさと形状に調製することができる。通常、多孔体の形状がこの部材の形状となる。例えば、部材の最長幅として、通常1〜15cm程度、好ましくは2〜10cm程度、より好ましくは2〜8cm程度を挙げることができる。また、最短幅として、通常1〜10cm程度、好ましくは2〜10cm程度、より好ましくは2〜8cm程度を挙げることができる。
本発明の脂肪組織再建用部材は、乳がんの病巣組織を切除した乳房欠損部に埋入することで、乳房(脂肪組織)を再建することができる。乳房切除手術と同時に該部材を埋入できるため、患者の肉体的及び精神的苦痛を大きく低減することができる。また、切除した欠損部の形状に応じて該部材の形状を調製することができる。
この部材は、埋入後、三次元的に脂肪組織を再生する足場となる。スポンジが多孔体内部に収容された構造を有しているため、当該孔を通して、周辺の脂肪組織が容易にスポンジに侵入することができ、スポンジに接着した脂肪組織へ充分な栄養を供給することが可能となる。また、多孔体により部材の保形性を維持しつつ、スポンジにて脂肪組織を再生することができる。さらに、全て生分解性材料で構成されているため乳房再建後に生体内に吸収されることから、感染、アレルギー、発がん等の問題を生じることはない。このように、脂肪組織を効率的に再生することができることから、乳房再建用インプラントとして極めて有用である。
本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
乳房にみたてたラットの鼠径部に種々の試料を導入して、一定期間後の脂肪組織の再生の程度を評価した。
(1)試料の調製
ポリ乳酸(PLLA)で作られたメッシュシート(0.2〜0.25mmの糸で作製、メッシュ開口部1×1mm〜2×2mm)でコラーゲンスポンジ(製品名:ペルナック、スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント社製)を被覆し、楕円状の部材Aを製造した。部材Aの最長幅は2cmであり、最短幅は1cmであった。一方、コラーゲンスポンジを用いないこと以外は、上記と同様にして、ポリ乳酸(PLLA)メッシュのみからなる楕円状の部材Bを製造した。
(2)実験手順
細胞、成長因子を使用せずに、上記で得られた部材A及びBをラットの鼠径部へ埋入し、脂肪組織の再生の程度を評価した。ラットの左右2カ所の鼠径部に部材Aを埋入し、別のラットの左右2カ所の鼠径部に部材Bを埋入して、それぞれ周囲(脂肪筋膜や筋)と軽くナイロンで固定した。脂肪筋膜と筋をナイロンで縫合した。
(3)評価方法及び結果
上記ラットの鼠径部に埋入した後、3ヶ月後及び6ヶ月後の各部材を含む脂肪組織を採取した。組織中のメッシュに相当する部分の断面を切り取り、断面における部材内部の面積と、その部材内部の脂肪の面積を測定した(図4を参照)。その結果を表1及び表2に示す。部材内部の面積及び部材内部の脂肪の面積は、画像統合ソフトウェアーNIS-Elements D (version 2,20:株式会社ニコン製)を用いて測定した。
表1より、埋入後3ヶ月後において、コラーゲンスポンジがポリ乳酸のメッシュで被覆されてなる部材Aは、ポリ乳酸のメッシュのみからなる部材Bに比べて、部材内部の面積が大きく、さらに6ヶ月経過後は更に面積が増大している。これは、部材Aのスポンジを収容したメッシュでは、埋入後でも形状が十分に保持されていることを示すものである。
また、表2より、埋入後3ヶ月後において、部材Aは部材Bに比べて、部材内部の脂肪の面積が顕著に大きくなり、しかも6ヶ月経過後は、3倍近く脂肪面積が増大していることが分かる。これは、部材Aの内部に収容されたコラーゲンスポンジが、部材Bと比べて、脂肪組織を効率的に再生出来ていることを示すものである。
これらの結果より、本発明の部材Aは、乳房の欠損部に脂肪組織を再生させて乳房を再建するための部材として有用であることが分かった。
本発明の乳房の脂肪組織再建用部材は、乳がんの外科療法として乳房を部分的に切除した後、その患部に本発明の部材を埋入することにより、脂肪組織を効率的に再生させて乳房を再建することができる。
1 コラーゲンスポンジ
2 ポリ乳酸のメッシュ
3 脂肪組織再建用部材
4 多孔性カプセル
5 脂肪組織再建用部材
6 脂肪組織再建用部材(メッシュ)内部の脂肪の面積
7 脂肪組織再建用部材(メッシュ)内部の面積
8 部材を構成するメッシュの糸の断面

Claims (5)

  1. 乳房再建用の脂肪組織再建用部材であって、コラーゲンを含むスポンジ及びポリ乳酸を含む多孔体を含み、該多孔体が内部空間を有する袋形状を有し、その内部空間に該スポンジが収容されてなる、部材。
  2. 前記多孔体が、ポリ乳酸を含むメッシュシートを袋形状に固定した袋状物である、請求項1に記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
  3. 前記多孔体が、ポリ乳酸を含む多孔性カプセルである、請求項1又は2に記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
  4. 乳房の部分的切除によって生じた欠損部に埋設して用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
  5. 前記多孔体の孔の大きさ及び個数が、袋形状の内部に脂肪組織が到達でき、かつ、コラーゲンを足場にして脂肪組織が十分に再生できる程度である、請求項1〜4のいずれかに記載の乳房の脂肪組織再建用部材。
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