JP2016138873A - 電磁鋼板の物性評価装置、その評価方法、並びに電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

電磁鋼板の物性評価装置、その評価方法、並びに電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電磁鋼板の物性を、非破壊、非接触、かつ高空間分解能に評価し得る物性評価装置及び物性評価方法を提供するとともに、該評価結果に基づく電磁鋼板の製造方法及び電磁鋼板の製造システムを提供する。【解決手段】本発明の1つの物性評価装置100は、電磁鋼板90に音波を照射する音波発生部20と、電磁鋼板90に対して、ゼロより大きく電磁鋼板90が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、その磁場において、前述の音波によって電磁鋼板90から発生する電磁波を受信する受信部40を備えている。さらにこの物性評価装置100においては、音波発生部20が、音波発生部20と電磁鋼板90との間に、前述の音波を電磁鋼板90に伝播させるための流れる液体32を介在させた状態で、音波発生部20と受信部40との相対位置が一定になるように配置される。【選択図】図4

Description

本発明は、電磁鋼板の物性評価装置、その評価方法、並びに電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法に関する。
電磁鋼板の物性は、加工後の製品における性能を左右する重要な特性の一つである。その特性を評価するための尺度には、鉄損、最大透磁率、及び磁歪が含まれる。例えば、鉄損と呼ばれる特性は、電磁鋼板に交流の磁場を与えた場合に、B−H曲線から得られる磁気ヒステリシスと、渦電流によって、電力が熱として消費されるためにエネルギーの損失が生じる性質をいう。従って、鉄損が低い電磁鋼板は、トランスなどに用いられた際の変換効率がより高くなるため、鉄損が高い電磁鋼板に比べて有利である。
上述の特性を測定する装置として、特許文献1にはB−H曲線を測定する方法が開示されている。特許文献1に開示された発明においては、B−H曲線を測定することによってヒステリシスが求められている。また、該発明は、励磁の際、高周波成分を含ませることによって微分透磁率を求めている。
また、特許文献2に開示された磁気特性を評価する装置は、電磁鋼板を磁化容易軸方向に直流磁化し、磁化容易軸と垂直方向に交流磁化を掛けることによって、その交流磁化の影響度合いから磁気特性を評価する。
また、特許文献3においては、超音波の板波を板表面の複数方向に伝播させ、その伝播時間を測定することによって鉄損値を推定する装置が開示されている。
また、特許文献4においては、超音波の周波数を調整することによって板厚方向に多重干渉を起こさせた後、その多重干渉波形の減衰の様子を評価することによって、結晶方位を計測する装置が開示されている。
また、特許文献5では、音響誘起電磁波を利用した測定方法及び装置について示されている。
特開2011−226840号公報 特開2010−54254号公報 特許第2988326号公報 特公平7−1255号公報 WO2007/055057
浅井邦夫ら、「強磁性体の磁気ひずみ、磁化曲線の応力依存性」、日本機械学会論文集(A編)、64巻624号(1998−8)、pp165−172
特許文献1に開示された装置を利用するためには、B−H曲線を求めなければならないため、鋼板を飽和磁化の状態にする必要がある。従って、B−H曲線の一ループを描くための時間を要するため、評価に時間がかかるという問題がある。また、特許文献1には、試料を測定する手段が明示されていない。従って、特許文献1は、サブミリメートルのオーダーという微小領域を測定するという技術思想に対する示唆がない。なお、光学的な磁歪測定についての記述があるが、特許文献1に開示された方法を利用すると、試料表面に対して垂直な方向の歪しか測定できないため、測定対象の歪の自由度が得られないという問題がある。
特許文献2に開示された装置は、鋼板からの漏洩磁場を測定するという漏洩磁束法を測定手段として採用している。従って、該手段を採用するためには、鋼板への印加外部磁場を磁気飽和レベルに近づける必要がある。そのため、残留磁場(外部磁場ゼロ)又は弱い磁場などの印加磁場レベルが異なる場合に、詳細な磁気特性を測定することができないという問題がある。
特許文献3に開示された装置は、超音波の板波モードの音速異方性を利用している。しかしながら、該装置を利用するためには、音速を計測するための十分な伝播距離が必要であるため、測定値がその距離間の平均値に基づく値となる。従って、該装置を用いてサブミリメートルのオーダーの領域を区別して測定することは出来ない。また、該装置を利用しても、鉄損以外のパラメータ(透磁率又は磁歪)を評価することが困難である。
特許文献4に開示された装置は、結晶粒を測定する方法である。しかしながら、該装置は磁気特性を直接的に評価することが出来ないため、電磁鋼板の特性を評価する装置とはいえない。
特許文献5においては、一般的な誘電体及び磁性体に関する測定方法及び装置が開示されている。しかしながら、電磁鋼板に特有の性質を踏まえて工夫された評価装置及びその評価方法、あるいは電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法についての開示ないし示唆はされていない。
本発明は、上述した各種の課題の少なくとも一部を解決し、非破壊、非接触、かつ高空間分解能の電磁鋼板の特性を評価する評価装置、その評価方法、並びに電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法の実現に大きく貢献し得る。
本発明者らは、特許文献5において開示された測定方法又は装置を電磁鋼板の各種特性を測定する測定方法又は装置として確度高く活用するためには、電磁鋼板が備える特徴的な物性又は挙動に合わせた特別な工夫が必要であるとの知見に基づき、鋭意研究と分析を重ねた。その結果、ある特定の環境下において、外部磁場が印加された状態の、又はそのような外部磁場が印加された後の電磁鋼板に対して音波を照射することが、評価対象(又は測定対象)である電磁鋼板の物性を、非破壊、非接触、かつ高空間分解能に評価し得ることを確認した。また、本発明者らは、前述の知見に基づいて、より物性の安定した電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法を創出した。本発明は、上述の視点に基づいて創出された。
本発明において特筆すべきは、主として次の(1)〜(4)に示す4つの技術的効果を実現していることである。
(1)評価対象(又は測定対象)となる領域の範囲が、非常に微小な領域(例えば、ミリメートル又はサブミリメートルのオーダー)であること
(2)印加する磁場がゼロから飽和レベル未満までの広範囲であること(特に、飽和レベルに対して相当低い値であっても、本願発明の効果が奏され得ること)
(3)評価可能なパラメータとして、ヒステリシス、磁歪定数(及び、磁歪定数に基づいて近似的に算出される圧磁定数)、及び/又は最大磁束密度が含まれること
(4)上述の(1)〜(3)の知見に基づいて、より物性の安定した電磁鋼板の製造システム及び電磁鋼板の製造方法を実現すること
次に、本発明における電磁鋼板の物性評価又は電磁鋼板の製造を行うための原理、又は電磁鋼板の製造を行うための過程について、図1乃至図3を利用して説明する。
図1は、本発明を活用した電磁鋼板90の物性評価又は電磁鋼板90の製造を実現するための基本的な評価システム1の構成の一例を示す概要側面図である。また、図2の(a)は、図1におけるS領域における電磁鋼板90の一部の断面を拡大した図面であって、特に弾性変形を強調した概念図である。また、図2の(b)は、図1におけるS領域における電磁鋼板90の一部の平面を拡大した図面であって、特に弾性変形を強調した概念図である。なお、図2(a)及び(b)においては、理解を助けるために、磁歪方向が示されている。
この評価システム1は、音波発生源である音波発生部20から照射される音波を、その音波の伝播媒体30(本願においては、「流れる液体32」)を経由して、評価対象となる電磁鋼板90に到達する構成が採用される。換言すれば、本願においては、音波発生部20と電磁鋼板90との間に伝播媒体30が介在することになるため、いわば、伝播媒体30が音波発生部20と電磁鋼板90とによって挟み込まれた状態となる。
この評価システム1においては、電磁鋼板90の表面に対して略直交する方向から、特に好ましくは直交する方向から音波が照射される。なお、公知の手段により、音波発生部20から発生する音波を調整することによって、電磁鋼板90の表面に到達したときの照射領域(焦点の径)を変更することが可能である。従って、当業者であれば、電磁鋼板90の評価対象項目の種類に応じて、又はその他の必要に応じて音波を集束させた上で、電磁鋼板90の評価を行うことができる。例えば、周波数10MHzの音波(いわゆる、超音波)を用いれば、焦点の径を約1mm(φ約1mm)に絞ることができる。
微視的に見れば、音波が照射された領域の少なくとも一部の電磁鋼板90には、音波の圧力によって、微少な歪(弾性変形)が生じることになる。図2の(a)及び(b)に示すように、一般的な弾性体の場合、一方向から圧力が加わると、他の方向(例えば、その圧力が加わった方向に対して直交する方向)にも歪が生じる。従って、電磁鋼板90は、音波が照射されることにより、様々な方向の成分を持つ歪が生じることになる。この歪を利用することにより、電磁鋼板90の物性評価、例えば、ヒステリシス、磁歪定数(及び、磁歪定数に基づいて近似的に算出される圧磁定数)、及び/又は最大磁束密度を評価することが可能となる。
例えば、電磁鋼板90の一部又は全部に歪が生じると、電磁鋼板90の磁気特性が変化する。特許文献1に示す磁気特性の変化の一例においては、磁化曲線が変化することによって、磁化曲線に影響を受ける特性が変化することが示唆されている。
歪が形成されることによって生じる磁化曲線の変化は、電磁鋼板90内の磁束量に変化を与える。図3は、歪が形成されることによって生じる磁化曲線の変化の例を示すグラフである。図3(a)は、変化する前(実線)の磁化曲線(B−H曲線)のグラフの例である。また、図3(b)は、図3(a)の磁化曲線(実線)と、外部から圧力を受けることによって歪が生じたときの磁化曲線(点線)とを表示したグラフの例である。また、図3(c)は、図3(a)の磁化曲線(実線)と、予めバイアス磁化としてHbの磁化力を加えた状態で、外部からの圧力によって歪が生じたときの磁化曲線(点線)と、バイアス磁化とを表示したグラフである。図3(c)に示すように、予めバイアス磁化としてHbの磁化力を加えておけば、磁束量ΔBが、そのバイアス磁化による変化量として表れることになる。
ここで、仮に、音波発生部20から周波数が10MHzの音波を電磁鋼板90に対して照射すれば、ΔBが10MHzの周波数に応じて変化することになる。その結果、電磁鋼板90の表層に磁束が存在している場合、周波数が10MHzの電磁波が、いわゆる磁場源の電波となって電磁鋼板90の表面から発信される。この電波をアンテナ又はコイル、もしくは磁気センサ等(評価システム1におけるコイル40x)を用いて受信することによって、図3(c)に示すようなΔBの値を計測することができる。
一つの基準(換言すれば、参照情報)となる磁化曲線を仮定すれば、Hbを変化させた上でΔBの値を計測することにより、歪が与えられた場合の磁化曲線を推定することが可能となる。その磁化曲線の電磁鋼板90内の分布を調べることにより、電磁鋼板90の物性を評価することが可能となる。
ところで、産業界において要望されている電磁鋼板90は、代表的には次の(A)〜(C)の特性の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を備えている。
(A)低鉄損
(B)高い最大磁束密度
(C)低磁歪
ここで、上述の(A)の鉄損は、「渦電流損」と「ヒステリシス損」とに分類される。「ヒステリシス損」とは、磁化曲線のヒステリシスから求める値であるため、本願発明によって少なくとも「ヒステリシス損」を評価することが可能である。また、上述の(B)の「最大磁束密度」は透磁率と相関があるため、磁化曲線に基づいて「最大磁束密度」を評価することが可能である。また、飽和磁化領域においては、ΔBが小さくなることから、飽和磁化レベルを評価することが可能である。上述の(C)の「磁歪」は、磁化による歪である。歪による磁化は、その逆現象(歪磁)との関係においては、「可逆」現象である。従って、ΔBが小さいということは、歪磁が小さいということに他ならない。つまり、本願発明によって「磁歪」を評価することが可能であるといえる。
上述の原理、又は想定される理論に基づいて、本願発明の物性評価装置及び物性評価方法は、非破壊、非接触、かつ高空間分解能の、電磁鋼板の特性の測定を実現することができる。
上述の技術的効果の少なくとも1つを奏させるための本発明の1つの物性評価装置は、電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、その電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、その磁場において、前述の音波によってその電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部を備えている。さらにこの物性評価装置においては、前述の音波発生部は、前述の音波発生部と前述の電磁鋼板との間に、前述の音波をその電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、前述の音波発生部と前述の受信部との相対位置が一定になるように配置される。
また、本発明のもう1つの物性評価装置は、電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、その電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、その磁場において、前述の音波によってその電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部を備えている。さらにこの物性評価装置は、前述の音波発生部と前述の電磁鋼板との間に、前述の音波をその電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、前述の音波発生部と前述の受信部との相対位置が一定であるその音波発生部に対して前述の電磁鋼板を相対的に移動させる移動機構を備える。
上述の各物性評価装置によれば、評価対象(又は測定対象)となる領域の範囲として非常に微小な領域を実現することができる。また、この物性評価装置によれば、印加する磁場として、ゼロから飽和レベル未満までの広範囲の磁場を利用することが可能である。なお、飽和レベルの磁場強度に対して相当低い値であっても、電磁鋼板の特性を適切に評価することが可能である点は特筆に価する。
なお、上述の音波発生部から上述の電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、その音波発生部から発生するノイズがその音波発生部から上述の受信部までの距離を伝播する時間が短いことは、より確度高く、電磁鋼板の特性の適切な評価の実現に貢献し得る。
また、上述の技術的効果の少なくとも1つを奏させるための本発明の1つの物性評価方法は、電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、その電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、その音波発生源からの音波を前述の電磁鋼板に伝播させることによって、前述の磁場においてその電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、を含む。
また、本発明の1つの物性評価方法は、電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、その電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、その音波発生源からの音波を前述の電磁鋼板に伝播させることによって、前述の磁場においてその電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、前述の音波発生源と前述の受信部との相対位置が一定であるその音波発生源に対して前述の電磁鋼板を相対的に移動させる移動工程と、を含む。
上述の各物性評価方法によれば、評価対象(又は測定対象)となる領域の範囲として非常に微小な領域を実現することができる。また、この物性評価方法によれば、印加する磁場として、ゼロから飽和レベル未満までの広範囲の磁場を利用することが可能である。なお、飽和レベルの磁場強度に対して相当低い値であっても、電磁鋼板の特性を適切に評価することが可能である点は特筆に価する。
なお、上述の音波発生源から上述の電磁鋼板までの距離を上述の音波が伝播する時間よりも、その音波発生源から発生するノイズがその音波発生源から上述の受信部までの距離を伝播する時間が短いことは、より確度高く、電磁鋼板の特性の適切な評価の実現に貢献し得る。
また、上述の技術的効果の少なくとも1つを奏させるための本発明の1つの電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、その電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、前述の音波発生源からの音波をその電磁鋼板に伝播させることによって、前述の磁場においてその電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、その音波発生源とその受信部との相対位置が一定であるその音波発生源に対して前述の電磁鋼板を相対的に移動させる移動工程と、前述の受信工程によって受信された信号を提供する提供工程と、その提供工程によって提供された前述の信号に基づいて、その電磁鋼板及び/又はその電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱する加熱工程と、を含む。
この電磁鋼板の製造方法によれば、電磁鋼板における評価対象(又は測定対象)となる領域の範囲として非常に微小な領域を実現することができる。従って、受信工程によって受信された信号を評価した結果に基づいて、例えば、加熱工程において、その評価した電磁鋼板自身及び/又はその評価した電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱することができる。その結果、従来よりも確度高く物性値のバラつきが小さい電磁鋼板を製造することが可能となる。この製造方法を採用することにより、電磁鋼板の生産性を向上させることができる。なお、この製造方法によれば、印加する磁場として、ゼロから飽和レベル未満までの広範囲の磁場を利用することが可能である。また、飽和レベルの磁場強度に対して相当低い値であっても、電磁鋼板の特性を適切に評価することが可能である点は特筆に価する。
なお、上述の音波発生源から上述の電磁鋼板までの距離を上述の音波が伝播する時間よりも、その音波発生源から発生するノイズがその音波発生源から上述の受信部までの距離を伝播する時間が短いことは、より確度高く、高品質な、換言すれば、より物性値が安定した、又は特性の優れた電磁鋼板の製造の実現に貢献し得る。
また、上述の技術的効果の少なくとも1つを奏させるための本発明の1つの電磁鋼板の製造システムは、電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、その電磁鋼板に対して、ゼロより大きくその電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、その磁場において、前述の音波によってその電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部と、その音波発生部とその電磁鋼板との間に、前述の音波をその電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、その音波発生部とその受信部との相対位置が一定であるその音波発生部に対してその電磁鋼板を相対的に移動させる移動機構と、前述の受信部によって受信された信号を提供する提供手段と、その提供手段によって提供された前述の信号に基づいて、その電磁鋼板及び/又はその電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱する加熱部と、を備える。
この電磁鋼板の製造システムによれば、電磁鋼板における評価対象(又は測定対象)となる領域の範囲として非常に微小な領域を実現することができる。従って、受信部によって受信された信号を評価した結果に基づいて、例えば、加熱部において、その評価した電磁鋼板自身及び/又はその評価した電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱することができる。その結果、従来よりも確度高く物性値のバラつきが小さい、又は特性の優れた電磁鋼板を製造することが可能となる。また、別の視点から言えば、その評価に基づいた評価対象物の選別により、使用用途に合わせて最適化させた電磁鋼板を製造する、又は選別された評価対象物(電磁鋼板)を最適な使用用途に分別することができる。加えて、この製造方法を採用することにより、電磁鋼板の生産性を向上させることができる。なお、この製造システムによれば、印加する磁場として、ゼロから飽和レベル未満までの広範囲の磁場を利用することが可能である。また、飽和レベルの磁場強度に対して相当低い値であっても、電磁鋼板の特性を適切に評価することが可能である点は特筆に価する。
なお、上述の音波発生部から上述の電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、その音波発生部から発生するノイズがその音波発生部から上述の受信部までの距離を伝播する時間が短いことは、より確度高く、高品質な、換言すれば、より物性値が安定した、又は特性の優れた電磁鋼板の製造の実現に貢献し得る。
また、本願における「物性」は、例えば、(1)磁気特性、(2)磁気機械特性、あるいは、(3)磁気特性及び/又は磁気機械特性と相関性を有する結晶粒径及び/又は結晶方位等の結晶の特性(crystalline property)を含む概念である。
本発明の1つの物性評価装置及び物性評価方法によれば、非破壊、非接触、かつ高空間分解能による、電磁鋼板の物性評価をすることができる。また、本発明の1つの電磁鋼板の製造方法及び電磁鋼板の製造システムによれば、非破壊、非接触、かつ高空間分解能による、電磁鋼板の物性評価結果に基づいた物性値のバラつきが小さい、又は特性の優れた電磁鋼板を製造することができる。
本発明の電磁鋼板の物性評価又は電磁鋼板の製造を実現するための基本的な評価システムの構成の一例を示す概要側面図である。 (a)図1におけるS領域における電磁鋼板90の一部の断面を拡大した図面であって、特に弾性変形を強調した概念図。(b)図1におけるS領域における電磁鋼板90の一部の平面を拡大した図面であって、特に弾性変形を強調した概念図。 (a)変化する前(実線)の磁化曲線(B−H曲線)のグラフの例。(b)図3(a)の磁化曲線(実線)と、外部から圧力を受けることによって歪が生じたときの磁化曲線(点線)とを表示したグラフの例。(c)(a)の磁化曲線(実線)と、予めバイアス磁化としてHbの磁化力を加えた状態で、外部からの圧力によって歪が生じたときの磁化曲線(点線)と、バイアス磁化とを表示したグラフの例。 第1の実施形態の、(a)電磁鋼板の物性評価装置の構成を示す概要側面図(一部の断面図を含む)と、(b)物性評価装置の構成の一部を抜粋した平面図である。 第1の実施形態の物性評価装置における各構成間の配線図(一部回路図)である。 第1の実施形態の物性評価装置及び物性評価方法によって観測された信号の例である。 第1の実施形態の物性評価装置によって電磁鋼板から得られた測定対象信号の強度に基づく二次元マップの例である。 第1の実施形態における、電磁鋼板の結晶方位を、X線を用いて分析した結果の二次元マップ(参照データ)と、本実施形態の評価結果とを比較する図である。 第1の実施形態における、磁場印加部によって印加する磁場の強さ(電流値)を変化させたときの、電磁鋼板から得られる測定対象信号の強度(電圧値)の変化を示すグラフである。 第2の実施形態の電磁鋼板の製造システムの構成を示す概要側面図(一部の断面図を含む)である。 その他の実施形態における、X軸、Y軸、及びZ軸の成分に分解した電磁波信号を取得するように配置された3つの受信部を備える物性評価装置又は製造システムの構成の一部を抜粋した側面図(一部の断面図を含む)((a),(b))と、該物性評価装置又は製造システムの構成の一部を抜粋した平面図(c)である。 その他の実施形態における、空気又は窒素を電磁鋼板及び流れる液体に向けて吹き付けている状態を示す、物性評価装置又は製造システムの構成の一部を抜粋した平面図である。 移動機構を備えない一例である物性評価システムの、図11(c)に相当する平面図である。 移動機構を備えない他の一例である物性評価システムの、図11(c)に相当する平面図である。
本発明の実施形態として、物性評価装置及び物性評価方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
<第1の実施形態>
本実施形態の電磁鋼板の物性評価装置100について説明する。図4は、第1の実施形態の、(a)電磁鋼板の物性評価装置100の構成を示す概要側面図(一部の断面図を含む)と、(b)物性評価装置100の構成の一部を抜粋した平面図である。なお、本実施形態においては、物性評価装置100及び物性評価装置100を用いた評価方法態様及び効果を、電磁鋼板の試料(以下、単に「電磁鋼板」という)90を用いて説明する。
本実施形態の電磁鋼板の物性評価装置100は、電磁鋼板90に音波を照射する音波発生源としての音波発生部20と、電磁鋼板90に対して、ゼロより大きく電磁鋼板90が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部70と、前述の磁場において、その音波によって電磁鋼板90から発生する電磁波を受信する受信部(例えば、コイル)40とを備える。
加えて、物性評価装置100は、音波発生部20と電磁鋼板90との間に、前述の音波を電磁鋼板90に伝播させるための流れる液体32を介在させた状態で、音波発生部20に対して電磁鋼板90を相対的に移動(最も代表的には平行移動,図4における(q)の方向)させる移動機構80を備えている。なお、本実施形態においては、少なくとも電磁鋼板90の物性を評価している間は、音波発生部20と受信部40との相対位置が一定に保たれている。また、本実施形態の1つの変形例として、相対位置が一定に保たれている音波発生部20及び受信部40が、電磁鋼板90に対して相対的に移動(最も代表的には平行移動,図4における(p)の方向)する移動機構80も採用することができる。
また、本実施形態においては、磁場印加部70も、少なくとも電磁鋼板90の物性を評価している間は、音波発生部20及び受信部40と、相対的な位置関係を保つように移動(最も代表的には平行移動,図4における(p)の方向)し得る。但し、磁場印加部70が印加する磁場が十分に広範囲であれば、磁場印加部70が必ずしも移動する必要はない。また、本実施形態においては受信部40が1つだけであるが、受信部40が2個以上設けられることも採用し得る他の一態様である。加えて、本実施形態においては、受信部40は、水平面に対して約5°〜約15°に傾けて配置されている。従って、受信部40が受ける評価ないし測定対象の信号(例えば、電磁鋼板90からの電磁波信号を含む)が、前述の角度によって影響を受ける可能性があるが、この角度の範囲は、測定対象の信号強度又は外乱(ノイズ)等の事情によって適宜変更され得る。但し、できる限り3軸(X軸、Y軸、及びZ軸)に沿った測定対象信号を受信することを実現する観点から言えば、水平面又は垂直面に対して、約5°〜約15°に傾けて配置されてあることが好ましい。
ここで、本実施形態の音波発生部20は集束型である音波発生器を採用することができる。例えば、10MHzの周波数を採用すれば、電磁鋼板90上において直径が約1mmの音波照射領域を形成することが可能である。本実施形態においては、音波を効率よく伝播させるために、音波発生部20と電磁鋼板90との間に音波の伝播媒体を介在させることは好適な一態様である。本実施形態における伝播媒体の例は、流れる液体32である。より具体的には、流れる液体32は水である。しかしながら、本実施形態において採用される液体は、水に限定されない。音波を伝播させることができる媒体であれば、例えば、公知の液体樹脂であっても、本実施形態の効果の少なくとも一部の効果を奏し得る。しかしながら、取り扱いの容易性又は作業における安全性を考慮すれば、流れる液体32として水を採用することは、好適な一態様である。
また、より詳しく見れば、流れる液体32は、液体の供給源52からホース54を介して比較的小型の収容部50内に送られる。音波発生部20は、収容部50内に配置される。また、収容部50内は、供給源52から継続的に送給される液体(代表的には、水)32によって満たされることになる。図4に示すように、収容部50の下方は開放されているため、流れる液体32が下方に流れ出ることになる。その結果、評価対象である電磁鋼板90と音波発生部20との間に、流れる液体32が介在することになる。
本実施形態においては、評価対象となる移動式の台60上の電磁鋼板90は、台60の下方に配置された磁場印加部(磁化器)70によって磁化され得る。また、電磁鋼板90を挟んで磁場印加部70と反対側の電磁鋼板90面の上方であって、かつ磁場印加部70の磁極中心線に沿って、音波発生源である音波発生部20が配置される。
なお、磁場印加部70の磁場強度の上限は、電磁鋼板90が磁気的飽和となる磁場強度未満であることが好ましい。特に、本実施形態の物性評価装置100においては、磁気的飽和となる磁場強度の4分の3以下、さらに言えば、半分以下であっても、本実施形態の効果が奏される点は特筆に価する。
ところで、音波発生部20から発生するノイズとしての電磁波が受信部40へ伝播することを確度高く防ぐために、収容部50の一部を金属製にすることは好適な一態様である。例えば、電磁鋼板90の上面から音波発生部20までの距離が20mmである場合、電磁鋼板90の上面近くから約10mmまでの高さに至るまで下方が開放されたアクリル製の筐体とし、そのアクリル製の筐体よりも上方には、金属製の筐体が採用されることは、好適な一態様である。なお、金属部分は、そのノイズの遮蔽効果を得るために接地されることが好ましい。
本実施形態においては、音波発生部20によって音波が照射された箇所の電磁鋼板90から発生する電磁波の性質から、電磁波が流れる液体32(本実施形態においては、水)の中を通過すると減衰することになる。そのため、電磁鋼板90における電磁波の発生箇所又は領域から受信部40に至るまでには、流れる液体32の量を出来るだけ少なくすることが好ましい。従って、収容部50の下端側、すなわち電磁鋼板90側の開口部は、照射される音波の集束を妨げない程度に小さく絞ることは好適な一態様である。
また、本実施形態の収容部50は、流れる液体32のための流路を形成している。ここで、収容部50のうち、少なくとも流路を形成する部分は、音波発生部20から生じる電磁波ノイズを遮蔽し受信部40にて受信されにくくするため、金属面を備えることが好ましい。
また、本実施形態においては、受信部40は、流れる液体32との接触を確度高く避けるために、カバー44内に収容されている。カバー44の材質は、電磁鋼板90から発生した電磁波を、受信部40に到達するまでに減衰させないようにする観点、又は該電磁波の減衰を抑制する観点から、非金属かつ非磁性であることが好ましい。また、防水性を有し、かつ電波を透過する材質が、カバー44の材質として好ましい。カバー44の好適な材質の具体的な例は、樹脂又はセラミックである。但し、カバー44が設けられていない場合であっても、例えば流れる液体32の流速を抑えることによって、流れる液体32と受信部40との接触を避けることができるように配慮することができる。
上述のように、本実施形態の物性評価装置100は音波を用いるため、音波を効率的に電磁鋼板90に伝える工夫と、評価対象(電磁鋼板90)から発生した電磁波が減衰しないような工夫を施すことは、本実施形態の効果を確度高く奏させる観点から好ましい。
また、本実施形態の物性評価装置100は、移動機構80と、移動機構80の移動速度及び移動位置の制御、並びに流れる液体32の流量及び流速の制御を含む各種の制御を行う制御部180を備えている。なお、移動機構80は、例えば、磁場印加部70、音波発生部20、及び受信部40の相対関係を維持しつつ、それらを移動させ得る移動機構、及び/又は台60を移動させ得る移動機構である。移動機構80として、公知の機構(例えば、ベルトコンベア又は公知の移動ロボットを活用した移動機構)を採用することができる。また、公知の流量制御機器を、流れる液体32の流量及び流速の制御のために採用することができる。
次に、物性評価装置100における音波発生部20及び受信部40に関する各構成間の電気配線について説明する。図5は、物性評価装置における音波発生部20及び受信部40に関する各構成間の配線図(一部回路図)である。図5に示すように、音波信号処理装置21は、音波発生部20に向けての信号の送出と、音波発生部20が受信した音波信号の信号受信、及びその増幅、並びに検波を含む各種の処理を行う。また、音波信号処理装置21から記録装置Sに対してトリガ信号(代表的には、A/D変換装置を開始させる信号)を送信する。なお、音波の受信信号は、音波が電磁鋼板90に対して正常に照射されているか否か、及び電磁鋼板90が微少歪を生じているか否かの確認に用いられ得る。
また、受信部40が受けた信号は、音波信号周波数(例えば、超音波である10MHz)に対して感度が良くなるように、コンデンサ(図5のC1,C2)等を適宜介在させた状態で増幅器41(例えば、40dB低ノイズ増幅器)に入力される。増幅器41の出力信号は、バンドパスフィルタ42によって前述の音波周波数を含む該周波数近傍が選別されることになる。バンドパスフィルタ42の出力信号は、増幅器43(例えば、46dB低ノイズ増幅器:NF回路設計ブロック社製、型式SA−230F5)によって増幅された後、記録装置S(例えば、A/D変換機能又はソフトウェアを備えるコンピュータ)に送られる。本実施形態においては、記録装置Sにおいてデジタルデータとして記録され得る。なお、制御部180が、図5に示す音波発生部20及び受信部40の上述の各動作(音波の周波数及び受信部の感度を含む)を制御することも、採用し得る本実施形態の一態様である。
ここで、より好適な一態様として、例えば、記録装置Sに向けて送られる入力信号の一部が並列に分岐されることにより、公知のオシロスコープを用いて観察される、又は公知のデータロガーによって記録されることができる。また、他の好適な一態様として、測定者が予め設定した閾値を、受信された電磁波強度が越えた場合に、即時に、スピーカーによる警告音の発生又はディスプレーによる警告画面の表示をすることができる。これらの警告は、評価対象となっている電磁鋼板90が異常な状態である可能性を、例えば電磁鋼板の製造作業者に知らせることができるため極めて有益である。その他にも、例えば、測定者が予め設定した閾値を、受信された電磁波強度が越えた場合に、電磁鋼板90の表面上に、何らかのマーキング(例えば、塗料の塗布等)を施す機構を備えることも、好適な一態様である。
(本実施形態における評価結果の例)
上述の物性評価装置100を採用すれば、電磁鋼板90に対して音波を照射することによって、電磁鋼板90の各種特性を評価するための信号(電磁波信号)を得ることができる。
[1.観測された信号の分析]
図6は、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法によって観測された信号の例である。図6(a)は、音波発生源である音波発生部20から照射された音波信号を示す。また、図6(b)は、受信部40が受けた信号(測定対象となる、電磁鋼板90からの電磁波信号を含む)を示す。加えて、図6(c)は、図6(b)の一部の拡大図である。
図6(a)に示すように、照射された音波信号は、その照射されたタイミングと、電磁鋼板90によって反射された音波を受けたタイミングとの2箇所に、大きな信号が記録される。また、後者の信号は、音波発生源と電磁鋼板90との間の距離の2倍の距離に音波が届く時間(すなわち、照射された音波の電磁鋼板90までの往復移動時間)に相当するタイミングに観察されている。一方、図6(b)及び(c)に示すように、前述の音波の往復時間に対して約半分となる時刻に測定対象信号が観察されるのは、この測定対象信号が電磁鋼板90から発生する電磁波であるためである。従って、測定対象信号は電磁波(すなわち光)の速度で電磁鋼板90から受信部20にまで送られるため、実質的に、音波発生源からの音波が電磁鋼板90に到達した時刻に測定対象信号が観測されることになる。
本実施形態においては、図6(b)及び(c)に示すように、音波発生部20から電磁鋼板90までの距離を音波が伝播する時間よりも、音波発生部20から発生するノイズが音波発生部20から受信部40までの距離を伝播する時間(音波発生直後から約10μ秒間)が短くなっている。そのため、微小な信号といえる測定対象信号(電磁鋼板90からの電磁波信号)がノイズに対して時間的に分離されているため、より確度高く、該測定対象信号の取得が可能となる。特に、本実施形態においては、音波発生部20から電磁鋼板90までの距離を音波が伝播する時間よりも、音波発生部20から発生するノイズが音波発生部20から受信部40までの距離を伝播する時間を確度高く短くさせるために、音波発生部20からパルス状の音波を照射している。より具体的には、本実施形態において採用された、1つのパルス状音波の好適な照射時間の例は、0.1μ秒〜0.5μ秒である。
ここで、音波発生部20に対して電磁鋼板90を相対的に移動させる好適な例は、微小な信号といえる測定対象信号が上述のノイズに対して時間的に分離されるように、音波発生部20に対して電磁鋼板90を相対的に移動させることである。さらに好適には、該測定対象信号が上述のノイズに対して時間的に分離されるように、音波発生部20(より具体的には、音波発生源)と電磁鋼板90(より具体的には、測定対象領域であり、最表面に限定されない)との距離を略一定に保ちつつ、音波発生部20に対して電磁鋼板90を相対的に移動させることである。なお、最も代表的には、音波発生部20に対して電磁鋼板90を、相対的に平行移動させる態様が採用される。
なお、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法の主たる特徴の一つは、その音波の照射領域、換言すれば、電磁鋼板90における評価可能領域の小ささにある。例えば、集束型の音波発生器を音波発生部20として採用する場合、サブミリオーダの電磁鋼板の特性分布を測定及び評価することが可能となる。さらに、磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加した場合であっても、ヒステリシス及び/または透磁率を測定及び評価することが可能であることも、他の公知の測定手段又は測定方法に対して有利である。なお、他の公知の測定手段又は測定方法においては、磁化レベルが小さい場合、電磁鋼板90内に磁束がほぼ閉じ込められてしまうため、信号を電磁鋼板90の外部に発信させるためには電磁鋼板90全体にコイルを巻くなどの工夫が必要である。しかしながら、上述のとおり、本実施形態の物性評価装置100においては、非破壊かつ非接触の測定及び評価が可能であるとともに、磁気的飽和となる磁場強度の4分の3以下、さらに言えば、半分以下であっても、本実施形態の効果が奏される。
さらに、本実施形態の物性評価装置100の好適な変形例の1つとして、照射された音波による電磁鋼板90の歪が3次元であることを考慮すれば、電磁鋼板90から発信される電磁波の偏波方向に合わせた位置に受信部40を配置する構成を採用することができる。前述の構成により、磁気特性の異方性を評価することも可能となる。
[2.1.の測定対象信号を活用した二次元マップの例]
図7は、本実施形態の物性評価装置100によって、電磁鋼板90から得られた測定対象信号の強度に基づく二次元マップの例である。図7に示す二次元マップは、電磁鋼板90の表面における、縦50mm、横50mmからなる正方形の領域の測定対象信号(すなわち、電磁波信号)の強度分布を示している。なお、本実施形態においては、測定対象である電磁波の強度を所定の時間積算した値を採用する。その結果、図7におけるグレースケールの濃淡の分布は、照射された音波によって形成された歪による、磁性変化の大きさを二次元的に示している。
[3.電磁鋼板の結晶方位と、本実施形態の評価結果との相関性]
本発明者らは、さらに、評価対象である電磁鋼板90の結晶方位と、上述の2.において得られた本実施形態の評価結果との相関性について調べた。
図8は、X線を用いて電磁鋼板90の結晶方位を分析した結果の二次元マップ(参照データ)と、上述した本実施形態の評価結果(図7から引用)とを比較する図である。なお、結晶方位に関する参照データを取得した装置は、株式会社リガク製、ラウエ法自動単結晶方位測定装置(型式:RASCO−L)である。
図8に示すように、本実施形態の評価結果と電磁鋼板90の結晶方位とは、かなり高い相関性を有していることが明らかとなった。ここで、「鉄損」は、電磁鋼板90の結晶方位の分布及びヒステリシス損と相関があると言われている(例えば、掲載誌「金属」,Vol.65,No.3,pp75−77「鉄鋼材料 電磁鋼板」,江見俊彦 著)ため、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法によって「鉄損」を評価することが可能であることが示されたことは大変興味深い。
なお、参照データを取得するために用いられたX線による評価装置及び評価方法には、(1)該装置自身が大きい、(2)測定するための試料を電磁鋼板から切り出し、管理された該装置内に配置する必要がある、及び(3)X線を用いるために電磁鋼板の極めて表面のみしか測定することができない、という問題点がある。しかしながら、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法によれば、上述の(1)〜(3)の問題を解消し得る。特に、わざわざ測定するための試料を電磁鋼板から切り出す必要がない点は、特筆に値する。加えて、電磁鋼板90の特性は、極表面のみならず、磁束が生じ得る厚み方向の情報を取得しなければ確度の高い評価ができないため、X線による評価に比べてより深部の情報を取得し得る、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法は非常に有利である。
[4.印加する磁場の強度変化と測定対象信号の強度変化との相関性]
本発明者らは、磁場印加部70によって印加する磁化の強さを変化させたときに、電磁鋼板90から得られる測定対象信号の強度が変化するか否かについて調べた。
図9は、磁場印加部70によって印加する磁場の強さ(電流値)を変化させたときの、電磁鋼板90から得られる測定対象信号の強度(電圧値)の変化を示すグラフである。なお、この調査においては、磁場印加部70として電磁石を採用した上で、電流値を変化させることにより磁場の強さを変化させている。また、図9における丸、四角、及び三角は、それぞれ、図7の(X,Y)座標における測定箇所(座標)を示している。
図9に示すように、測定対象信号は、電流値が0A超0.20A以下、より特定すれば、0.02A超0.15A以下、さらに特定すれば、0.02A超0.14A以下という、非常に小さい電流値にもかかわらず、測定対象信号の大きな変化が確認された。この調査により、測定対象信号である電磁波の強度は、電磁鋼板90のB−H曲線の変化に対応することが明らかとなった。なお、図9に示す結果から、本実施形態における電磁鋼板90を磁気的飽和にするための磁場強度、すなわち電流値は、0.28A以上であるといえる。従って、上述のとおり、本実施形態の物性評価装置及び物性評価方法を用いれば、いわゆる弱磁場(磁気的飽和となる磁場強度の半分以下又は半分未満)の印加であっても、電磁鋼板の特性を評価することが可能であることが確認された。
上述の各調査、各評価の結果を踏まえれば、本実施形態の物性評価装置100及び物性評価方法を採用すれば、二次元の、厚み方向の一部を含めれば三次元の電磁鋼板90の物性評価を、非破壊、非接触、かつ高空間分解能に実現することができる。その結果、後述する第2の実施形態のように、電磁鋼板90の各種の測定結果又は評価結果に対して一定の閾値を予め設けることにより、安定した特性を備える、換言すれば特性のバラつきの少ない電磁鋼板90の製造を実現することができる。
<第2の実施形態>
本実施形態においては、電磁鋼板の製造システム200及び電磁鋼板の製造方法について説明する。本実施形態においては、第1の実施形態の移動式の台60がヒーターを備えた移動式の台260に変更されたこと、及び電磁鋼板90とは異なる電磁鋼板290に対する加熱処理装置又は加熱処理方法が示されること、及び第1の実施形態の制御部180が制御部280に変更されたこと以外は、第1の実施形態の物性評価装置100と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
図10は、本実施形態の電磁鋼板の製造システム200の構成を示す概要側面図(一部の断面図を含む)である。電磁鋼板の製造システム200の台260は、第1の実施形態の台60の機能に加えて、電磁鋼板90及び/又は電磁鋼板290の加熱手段(例えば、公知のヒーター)を備えている。また、電磁鋼板290は、台260とともに、又は台260とは別の加熱処理装置(例えば、公知のランプアニール装置)262によって加熱することも可能である。また、その他の加熱処理装置として、公知のアニール用加熱炉を前述の加熱処理装置の代用、又は前述の加熱処理装置と併用することも可能である。
また、本実施形態の制御部280は、公知のコンピュータを利用して、第1の実施形態の制御部180の機能に加えて、製造システム200の音波発生部20、伝播媒体30、磁場印加部70、及び受信部40を用いた電磁鋼板90の物性の測定結果を、記録し且つ評価することができる。加えて、本実施形態の制御部280は、上述の加熱手段及び加熱処理装置262の温度を制御する。なお、本実施形態においては、「評価」の対象となるパラメータには、ヒステリシス、磁歪定数(及び、磁歪定数に基づいて近似的に算出される圧磁定数)、及び/又は最大磁束密度が含まれる。
なお、受信部40によって受信された信号を制御部280に提供する提供手段として、公知の有線の又は公知の無線の通信手段(ローカルエリアネットワーク又はインターネット回線に代表される公知の技術を含む)を採用することができる。加えて、本実施形態における上述の信号の記録手段は、制御部280が備えるハードディスクドライブ又は光ディスクドライブ等に挿入される光ディスク等の公知の記録媒体に限定されない。例えば、公知の無線の通信手段を利用することにより、制御部280が配置される場所とは異なる、例えば遠隔地の公知の記録媒体を活用することも、採用し得る一態様である。同様に、電磁鋼板90の物性の測定結果に基づく評価を、制御部280が配置される場所とは異なる、例えば遠隔地の公知のコンピュータが行うことも、採用し得る他の一態様である。
具体的な評価及びその評価結果に基づく電磁鋼板の製造の一例は、次のとおりである。
本実施形態の電磁鋼板の製造システム200においては、測定者が予め設定し、制御部280内又は上述の他の記録媒体に記録させた数値範囲(換言すれば、製品として適切な特性であると認められる電磁鋼板の許容値の範囲)を、受信部40によって受信された電磁鋼板90の電磁波信号、より直接的には上述の提供手段によって提供された該信号の強度に基づいて評価された値が超えた場合、又は該数値範囲よりもその評価された値が小さい場合、制御部280は、次の(a)〜(d)の少なくとも1つを行うように指示する。
(a)評価(測定)対象である電磁鋼板90の加熱処理
(b)評価(測定)対象とは異なる電磁鋼板290の加熱処理
(c)加熱処理後の電磁鋼板90の再度の物性評価
(d)加熱処理後の電磁鋼板290の再度の物性評価
なお、電磁鋼板90及び/又は電磁鋼板90とは異なる電磁鋼板290の加熱処理は、台260とともに、又は台260とは別の加熱処理装置262によって行われる。
上述のとおり、本実施形態の電磁鋼板の製造システム200の特徴の一つは、製造システム200の一部の構成による電磁鋼板90の物性の測定結果に基づいて、その電磁鋼板90及び/又は電磁鋼板90とは異なる電磁鋼板290に対して加熱処理を施すことができることである。具体的には、例えば、ベルトコンベアによって連続的に複数の電磁鋼板が製造システム200に移送される態様においては、電磁鋼板の加熱処理は、製造システム200による物性評価の対象となった1つの電磁鋼板を対象とするだけではなく、その物性評価がされる電磁鋼板の前後の他の電磁鋼板に対して行うことができる。従って、本実施形態の電磁鋼板の製造システム200によれば、物性値のバラつきが小さい及び/又は優れた特性の電磁鋼板を確度高く製造することが可能となる。
なお、電磁鋼板90が製品ではなく参照試料として活用される場合は、上述の(b)及び(d)のみが実施され得る。また、より確度高く、物性値のバラつきが小さい及び/又は優れた特性の電磁鋼板を製造するためには、上述の(a)〜(d)のうち、少なくとも2つ、より好適には(a)〜(d)の全ての実施が採用される。
<その他の実施形態(1)>
上述の各実施形態において、受信部40を複数配置することによって、例えば、X軸、Y軸、及びZ軸の成分に分解した電磁鋼板90からの電磁波信号を取得することができる。図11(a)は、X軸、Y軸、及びZ軸の成分に分解した電磁波信号を取得するように配置された3つの受信部40a,40b,40cを備える物性評価装置又は電磁鋼板の製造システムの構成の一部を抜粋した側面図(一部の断面図を含む)である。また、図11(b)は、該物性評価装置又は該製造システムの構成の一部を抜粋した別の側面図(一部の断面図を含む)である。また、図11(c)は、該物性評価装置又は該製造システムの構成の一部を抜粋した平面図である。なお、図11(b)の受信部40cのカバーは、図面を見易くするために省略されている。また、破線によって囲まれたU1で示される領域は、後述する、その他の実施形態(5)における1つの単位評価領域測定部(U1)を便宜的に示している。
なお、受信部40a,40b,40cがコイルである場合、コイルの中心軸が、出来るだけ分解したい成分の向き、すなわちX軸、Y軸、及びZ軸の向きに平行になるように配置されることが好ましい。
図11に示す実施形態においては、図11に示す構成以外の構成について、第1又は第2の実施形態と同様の構成を採用することにより、より精密な又は信頼性の高い電磁鋼板の評価又は電磁鋼板の製造を行うことが可能となる。
<その他の実施形態(2)>
また、上述の各実施形態においては、磁場印加部70が移動式の台60,260の下方に設けられているが、磁場印加部70の位置はそのような位置に限定されない。例えば、磁場印加部70を、音波発生部20、伝播媒体30、及び受信部40と同様に、移動式の台60,260の上方に配置されることも、採用し得る他の一態様である。この態様の一例においては、磁場印加部70が、音波発生部20、伝播媒体30、及び受信部40を覆うように配置される。
<その他の実施形態(3)>
また、上述の各実施形態においては、磁場印加部70として電磁石が採用されているが、磁場印加部70は電磁石に限定されない。例えば、磁場印加部70が永久磁石であることは、採用し得る他の一態様である。
<その他の実施形態(4)>
また、物性評価装置100又は電磁鋼板の製造システム200において、例えば、その他の実施形態(1)が示す該物性評価装置又は該製造システムの構成に加えて、空気を電磁鋼板90及び流れる液体32に向けて吹き付ける構成を採用することができる。図12は、空気又は窒素を電磁鋼板90及び流れる液体32に向けて吹き付けている状態を示す、物性評価装置又は製造システムの構成の一部を抜粋した平面図である。図示しない第1の実施形態又は第2の実施形態の制御部180,280によって流速が制御された空気の供給源58から、ホース56,56を経由して、空気が電磁鋼板90及び流れる液体32に向けて吹き付けられる。図12に示すように、空気を電磁鋼板90及び流れる液体32に向けて吹き付けることによって、流れる液体32を受信部40a,40b,40cから逸らせることができる。なお、吹き付けられる気体は空気に限定されない。例えば、空気の代わりに、乾燥空気又は窒素が採用され得る。
上述の構成を採用すれば、受信部40,40a,40b,40cが流れる液体32との接触等することによって測定結果へ影響することを、確度高く抑える、又は防止することができる。また、この例においては、受信部40a,40b,40cが3つ用いられているが、受信部の数及び位置は限定されない。言うまでもなく、第1の実施形態においても、この例の構成を採用することができる。
<その他の実施形態(5)>
また、上述の各実施形態において、移動機構(第1及び第2の実施形態においては移動機構80)を備えずに、電磁鋼板における複数の箇所又は領域の物性評価を行うことによって電磁鋼板を効率的に評価又は製造することも、採用し得る他の一態様である。
図13は、移動機構を備えない物性評価システムの一例である物性評価システム300の、図11(c)に相当する平面図である。図13においては、図11において示すX軸、Y軸、及びZ軸の成分に分解した電磁鋼板90からの電磁波信号を取得するための受信部40a,40b,40c及び音波発生部20を1つの単位評価領域測定部(U1)として、その単位評価領域測定部(U1)を複数箇所設けた例が示されている。また、図13に示される例においては、一列に並べられた単位評価領域測定部(U1)が示されている。加えて、図面を見やすくするために、配線及び周辺部品は省略されている。
上述の構成を採用することにより、音波発生部と受信部との相対位置が移動しない状態、及び/又は磁場印加部が音波発生部及び受信部との関係で相対位置が変動しない状態であっても、電磁鋼板90における複数の箇所又は領域の物性評価を一時に、又は逐次に行うことによって電磁鋼板90を効率的に評価又は製造し得る。なお、前述のとおり、一時に測定するか、あるいは逐次に測定するかは、電磁鋼板の物性を評価する条件又は状況によって適宜選定される。
従って、この実施形態の物性評価方法においては、少なくとも、以下の(P1)と(P2)に示す印加工程と受信工程とが行われる。
(P1)電磁鋼板90に対して、ゼロより大きく電磁鋼板90が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程
(P2)電磁鋼板90と音波発生源の一例である音波発生部の間に流れる液体を介在させた状態で、その音波発生源からの音波を電磁鋼板90に伝播させることによって、前述の磁場において電磁鋼板90から発生する電磁波を受信部40a,40b,40cによって受信する受信工程
また、図13に示される例において、仮に電磁鋼板90の平面全体を評価するために、電磁鋼板90に対して相対的に移動する移動機構を設ける場合であっても、電磁鋼板90の平面における縦方向と横方向の両方に移動し得る移動機構を設けることを要しない。つまり、比較的簡易的な移動機構(代表的には、縦方向と横方向のいずれか一方向のみの相対的移動を可能にする移動機構)を採用するだけで電磁鋼板90の平面全体を効率的に評価し得るという利点がある。従って、単位評価領域測定部(U1)に代表される単位評価領域測定部が複数設けられることが、移動機構の有無を定めることにはならないことは当業者であれば理解できる。
ところで、図11における収容部50、カバー44、及び液体32は、物性評価システム30の要素の1つを構成するが、収容部50及び液体32が配置される態様は種々の状態が考えられるため、単位評価領域測定部(U1)に必ずしも収容部50、カバー44、及び液体32が含まれることを要しない。例えば、液体32を供給する1つの供給部が、図13に示されている複数の単位評価領域測定部(U1)の全てに対して液体32を一括して供給する構成も、採用され得る一態様である。なお、この実施形態において、単位評価領域測定部(U1)が収容部50、カバー44、及び液体32を含むことは許容される。
また、図示されていない磁場印加部70については、図13において示されているそれぞれの単位評価領域測定部(U1)に対応した数の磁場印加部70が設けられる場合や、全ての単位評価領域測定部(U1)に対応する1つ又は複数の磁場印加部70が設けられる場合がある。従って、磁場印加部70の数は適宜選択され得る。
加えて、この実施形態においては、図11に示された3つの受信部40a,40b,40cを備える物性評価装置の構成を採用しているが、この実施形態はそのような構成に限定されない。例えば、図11に示された物性評価装置の構成の代わりに、第1の実施形態の物性評価装置100又は電磁鋼板の製造システム200のように1つだけの受信部40を採用すること、又は物性評価装置100又は電磁鋼板の製造システム200に示される他の各構成を採用すること、あるいはその他の実施形態(4)において示された各構成を採用することも、好適な他の一態様である。
<その他の実施形態(6)>
図14は、移動機構を備えない物性評価システムの他の一例である物性評価システム400の、図11(c)に相当する平面図である。物性評価システム400が物性評価システム300と異なる点は、複数列に亘る単位評価領域測定部(U1)が設けられている点である。従って、物性評価システム300における説明と重複する説明は省略され得る。加えて、この実施形態の物性評価方法においても、その他の実施形態(5)において述べた、(P1)と(P2)に示す印加工程と受信工程とが少なくとも行われることになる。
この実施形態においては、図14に示すように、複数列に亘る単位評価領域測定部(U1)が設けられているため、電磁鋼板90の縦方向及び横方向の両方について、電磁鋼板90における複数の箇所又は領域の物性評価を一時に、又は逐次に行うことが可能となる。その結果、電磁鋼板90を効率的に評価又は製造し得る。
また、物性評価システム300と同様に、仮に電磁鋼板90の平面全体を評価するために、電磁鋼板90に対して相対的に移動する移動機構を設ける場合であっても、比較的簡易的な移動機構(代表的には、縦方向と横方向のいずれか一方向のみの相対的移動を可能にする移動機構)を採用するだけで電磁鋼板90の平面全体を効率的に評価し得る。
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の物性評価装置、物性評価方法、電磁鋼板の製造システム、及び電磁鋼板の製造方法は、現在及び将来の電磁鋼板を活用する各産業において極めて有用である。
1 評価システム
20 音波発生部
30 音波伝播媒体
32 流れる液体
40,40a,40b,40c 受信部
44 カバー
50 収容部
52 液体貯留部
54 ホース
60,260 台
70 磁場印加部
80 移動機構
90,290 電磁鋼板
100,300,400 物性評価装置
180,280 制御部
200 電磁鋼板の製造システム

Claims (18)

  1. 電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、
    前記電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、
    前記磁場において、前記音波によって前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部と、を備え、
    前記音波発生部は、前記音波発生部と前記電磁鋼板との間に、前記音波を前記電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生部と前記受信部との相対位置が一定になるように配置される、
    物性評価装置。
  2. 電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、
    前記電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、
    前記磁場において、前記音波によって前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部と、
    前記音波発生部と前記電磁鋼板との間に、前記音波を前記電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生部と前記受信部との相対位置が一定である前記音波発生部に対して前記電磁鋼板を相対的に移動させる移動機構と、を備える、
    物性評価装置。
  3. 前記音波発生部から前記電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、前記音波発生部から発生するノイズが前記音波発生部から前記受信部までの距離を伝播する時間が短い、
    請求項1又は請求項2に記載の物性評価装置。
  4. (新規)
    前記音波発生部及び前記受信部からなる単位評価領域測定部が、複数設けられた、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の物性評価装置。
  5. 前記液体が、金属面を備える流路内を流れる、
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の物性評価装置。
  6. 前記磁場印加部が、電磁石である、
    請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の物性評価装置。
  7. 前記受信部が、非金属かつ非磁性のカバーを用いて前記液体との接触を抑制する又は妨げるように配置される、
    請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の物性評価装置。
  8. 噴出部をさらに備え、かつ
    前記噴出部から噴出される気体が、前記受信部への前記液体の接触を抑制する又は妨げるように前記噴出部が配置される、
    請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の物性評価装置。
  9. 電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、
    前記電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生源からの音波を前記電磁鋼板に伝播させることによって、前記磁場において前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、を含む、
    物性評価方法。
  10. 電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、
    前記電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生源からの音波を前記電磁鋼板に伝播させることによって、前記磁場において前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、
    前記音波発生源と前記受信部との相対位置が一定である前記音波発生源に対して前記電磁鋼板を相対的に移動させる移動工程と、を含む、
    物性評価方法。
  11. 前記音波発生源から前記電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、前記音波発生源から発生するノイズが前記音波発生源から前記受信部までの距離を伝播する時間が短い、
    請求項9又は請求項10に記載の物性評価方法。
  12. 前記液体が、金属面を備える流路内を流れる、
    請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の物性評価方法。
  13. 前記受信工程において、非金属かつ非磁性のカバーによって前記受信部と前記液体との接触を抑制する又は妨げる、
    請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の物性評価方法。
  14. 前記受信工程において、噴出される気体によって前記受信部と前記液体との接触を抑制する又は妨げる、
    請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の物性評価方法。
  15. 電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する印加工程と、
    前記電磁鋼板と音波発生源との間に流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生源からの音波を前記電磁鋼板に伝播させることによって、前記磁場において前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信部によって受信する受信工程と、
    前記音波発生源と前記受信部との相対位置が一定である前記音波発生源に対して前記電磁鋼板を相対的に移動させる移動工程と、
    前記受信工程によって受信された信号を提供する提供工程と、
    前記提供工程によって提供された前記信号に基づいて、前記電磁鋼板及び/又は前記電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱する加熱工程と、を含む、
    電磁鋼板の製造方法。
  16. 前記音波発生源から前記電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、前記音波発生源から発生するノイズが前記音波発生源から前記受信部までの距離を伝播する時間が短い、
    請求項15に記載の電磁鋼板の製造方法。
  17. 電磁鋼板に音波を照射する音波発生部と、
    前記電磁鋼板に対して、ゼロより大きく前記電磁鋼板が磁気的飽和となる磁場強度未満の磁場を印加する磁場印加部と、
    前記磁場において、前記音波によって前記電磁鋼板から発生する電磁波を受信する受信部と、
    前記音波発生部と前記電磁鋼板との間に、前記音波を前記電磁鋼板に伝播させるための流れる液体を介在させた状態で、前記音波発生部と前記受信部との相対位置が一定である前記音波発生部に対して前記電磁鋼板を相対的に移動させる移動機構と、
    前記受信部によって受信された信号を提供する提供手段と、
    前記提供手段によって提供された前記信号に基づいて、前記電磁鋼板及び/又は前記電磁鋼板とは異なる電磁鋼板を加熱する加熱部と、を備える、
    電磁鋼板の製造システム。
  18. 前記音波発生部から前記電磁鋼板までの距離を前記音波が伝播する時間よりも、前記音波発生部から発生するノイズが前記音波発生部から前記受信部までの距離を伝播する時間が短い、
    請求項17に記載の電磁鋼板の製造システム。
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