JP2016135753A - ブタslaクラスiアリルを特異的に認識するモノクローナル抗体 - Google Patents

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志乃 大島
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【課題】ブタSLAクラスIアリルと特異的に反応するモノクローナル抗体を提供する。【解決手段】ブタ主要組織適合性抗原(MHC)SLAクラスIアリルと特異的に反応し、ヒトMHC、コモンマーモセットMHC、ブタの異なるSLAクラスIアリル及びSLA-6と交差反応せず、ブタの5種類のハプロタイプのそれぞれと異なる反応性を有し、細胞表面上のブタSLAクラスIアリルを認識することができるモノクローナル抗体。ブタSLAクラスIアリルの部分ペプチドとβ2マイクログロブリン(β2M)の部分ペプチドとを発現する細胞を免疫原として免疫動物を免疫し、前記免疫動物から取得した抗体産生細胞が産生する抗体であり、受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。【選択図】なし

Description

本発明は、ブタSLAクラスIアリルを特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。
近交系ブタは、ヒトと進化系統的に遠いマウス等の齧歯類に代わる「MHCを含む移植関連遺伝子が固定された唯一の中型実験動物」である。臓器移植や感染免疫の基本事項であるMHCに関連する研究としては、クラウンミニブタやデュロックブタについて、MHC固定近交系を新規に作成し、その産子数や体重などの経済形質が検討されている(非特許文献1から3)。一方、ブタは、インフルエンザなどヒト感染症の媒体となることが知られており、その血液学的・免疫学的性状がヒトとどのような共通性を持つのかについて明らかにすることが健全な家畜育成と食糧供給にとって重要である。
ブタは、高い繁殖効率や臓器サイズ、ヒトとの生理学的類似性からヒトへの異種移植ドナーとしても最適であるとみなされ、これまで中型動物としてはもっとも免疫系の研究結果が集積している。これまでに、MHC固定ブタや(非特許文献1から3)、α-1,3-Galactosyltransferaceノックアウトブタなどが開発されている(非特許文献4から6)。その結果、多くの点でブタ免疫系はヒトに類似であることが報告されている(非特許文献7)。
抗原特異的な免疫応答に必須である主要組織適合性抗原(major histocompatibility antigen; MHC)は非常に大きな多様性を持ち、それらの機能的役割が免疫系の調節に重要な役割を果たす事が指摘されている。そのため、多くの動物種において、タイピング法の確立とアロタイプの同定が行われてきており、ブタについても遺伝子構造やアロタイプが明らかにされてきた。しかしその主たる方法はシークエンサーを用いたゲノムおよびcDNA遺伝子配列解析およびタンパク質の一次構造解析であり、タンパク質の局在と機能解析については、動物種・遺伝子座特異性の低いモノクローナル抗体に依存している。MHCタンパク質の発現調節は様々な病態と関連しており、医学的、獣医学的、畜産学的見地から重要な機構と考えられている。そのため、特異性の高いモノクローナル抗体の作製は急務であると考えられる。これまでにブタ組織適合性抗原(MHC)クラス1抗体は幾つか報告があるが、何れも特異性が不十分であるか、特異性が不明であるものが多かった(非特許文献8から16)。
今枝紀明、吉岡豪、大谷健、大場恵典、北川均、安藤麻子:ブタ組織適合性抗原(SLA)タイプが固定された近交系実験動物用ブタの作出. 医学のあゆみ、213:775-6, 2005. Ando A, Ota M, Sada M, Katsuyama Y, Goto R, Shigenari A, Kawata H, Anzai T, Iwanaga T, Miyoshi Y, Fujimura N, Inoko H.: Rapid assignment of the swine major histocompatibility complex (SLA) class I and II genotypes in Clawn miniature swine using PCR-SSP and PCR-RFLP methods. Xenotransplantation 12: 121-6, 2005. Soe OK, Ohba Y, Imaeda N, Nishii N, Takasu M, Yoshioka G, Kawata H, Shigenari H, Uenishi H, Inoko H, Ando A, Kitagawa H: Assignment of the SLA alleles and reproductive potential of selective breeding Duroc pig lines. Xenotransplantation 15: 390-7, 2008. Lai L, Kolber-Simonds D, Park KW, Cheong HT, Greenstein JL, Im GS, Samuel M, Bonk A, Rieke A, Day BN, Murphy CN, Carter DB, Hawley RJ, Prather RS: Production of alpha-1,3-galactosyltransferase knockout pigs by nuclear transfer cloning. Science 295:1089-92, 2002. Fan N, Lai L: Genetically modified pig models for human diseases. J Genet Genomics 40:67-73, 2013. Petersen B, Carnwath JW, Nieman H: The perspectives for porcine-to-human xenografts. Comp Immunol. Microbiol Infect Dis 32:91-105, 2009. Lunney JK: Advances in swine biomedical model genomics. Int J BiolSci 3:179-184, 2007. Davis WC, Marusic S, Lewin HA, Splitter GA, Perryman L, McGuire TC, Gorham JR: The development and analysis of species specific and cross reactive monoclonal antibodies to leukocyte differentiation antigens and antigens of the major histocompatibility complex for use in the study of the immune system in cattle and other species. Vet Immunol Immunopathol 15: 337-376, 1987. Haverson K, Zuckermann F, Saalmuller A, Lipp J, Aasted B, Stokes CR: Summary of workshop findings for porcine adhesion molecule subgroup. Vet Immunol Immunopathol 60:351-365, 1998. Ivanoska D, Sun DC, Lunney JK: Production of monoclonal antibodies reactive with polymorphic and monomorphic determinants of SLA class I gene products. Immunogenetics 33:220-223, 1991. Letesson JJ, Coppe Ph, Lostrie N, Greimers R, Depelchin A: Production and characterization of monoclonal antibodies raised against BoLA class I antigens. Vet Immunol Immunopathol 13 (3): 213-226, 1986. Lunney JK and Pescovitz MD: in Comparative Aspects of Differentiation Antigens. (Trnka Z and Miyasaka M, Eds.) pp.421-454, Marcel Dekker, New York. 1988. Lunney JK: Current status of the swine leukocyte antigen complex. Vet Immunol Immunopathol 43:19-28, 1994. Pescovitz MD, Lunney JK, Sachs DH: Preparation and characterization of monoclonal antibodies reactive with porcine PBL. J Immunol 133:368-375, 1984. Piriou-Guzylack L, Salmon H: Membrane markers of the immune cells in swine: an update. Vet Res 39:54-81, 2008. Tang W-R, Kiyokawa N, Eguchi T, Matsui J, Takenouchi H, Honma D, Yasue H, Enosawa S, Mimori K, Itagaki M, Taguchi T, Katagiri YU, Okita H, Amemiya H, Fujimoto J: Development of novel monoclonal antibody 4G8 against swine leukocyte antigen class I achain. Hybridoma and Hybridomics 23: 187-192, 2004.
本発明は、ブタSLAクラスIアリルと特異的に反応するモノクローナル抗体を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ブタMHCクラスI分子の一つであるSLA-1分子のアロタイプに特異的なモノクローナル抗体の作製を行い、機能解析に適した安定なハイブリドーマの確立に成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ブタ主要組織適合性抗原(MHC) SLAクラスIアリルと特異的に反応し、ヒトMHC、コモンマーモセットMHC、ブタの異なるSLAクラス Iアリル及びSLA-6と交差反応しない、モノクローナル抗体。
(2)ブタの5種類のハプロタイプのそれぞれと異なる反応性を有する、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(3)細胞表面上のブタSLAクラス Iアリルを認識することができる、(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体。
(4)ブタSLAクラス Iアリルの部分ペプチドとβ2マイクログロブリン(β2M) の部分ペプチドとを発現する細胞を免疫原として免疫動物を免疫し、前記免疫動物から取得した抗体産生細胞が産生する抗体である、(1)から(3)の何れか一に記載のモノクローナル抗体。
(5)重鎖のアミノ酸配列として配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖のアミノ酸配列として配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む、(1)から(4)の何れか一に記載のモノクローナル抗体。
(6)受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。
(7)受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマ。
(8)(1)から(6)の何れか一に記載のモノクローナル抗体と、ブタSLAクラス I分子を含む試料又はブタSLAクラスI分子を発現する細胞とを接触させる工程を含む、ブタSLAクラスIアリルを検出する方法。
本発明のモノクローナル抗体は、SLAアリル特異的な抗体であり、SLAのタンパク質発現をフローサイトメトリー、免疫組織化学染色で解析するために有用である。また本発明のモノクローナル抗体は移植免疫、癌免疫、感染免疫に対する研究に有用である。さらに本発明のモノクローナル抗体は、マイクロミニピッグにおけるSLAタイピングの一部に用いることが可能である。
図1は、Array Scan VT1 (Thurmo Scientific)により選択したSLA-1*0401を認識するハイブリドーマクローン (X2F6) である。X2F6で染色したHEK293及びHEK293-SLA-1*0401トランスフェクタントをパネルに示す。Pan-MHC特異抗体PT-85Aを、陽性対照抗体として使用した。重ね合わせ画像を右側に示す。 図2は、X2F6と、古典的及び非古典的SLAクラスIトランスフェクタントとの反応性を示す。HEK293親細胞とSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) 細胞の FSC/SSCパターンを、左のパネルに示す。(長方形内の)ゲート内の細胞におけるmVenus及びSLAの発現についてさらに分析した。HEK293、SLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) 細胞及びSLA-6*0101/β2Mトランスフェクタント(HEK293)細胞を、X2F6又はPT-85Aで染色した。二重染色細胞の百分率を各パネルに示す。 図3は、X2F6で染色したPBMCを示す。PBMCのFSC/SSC パターンを左のパネルに示す。ゲート内の細胞におけるSLAの発現についてさらに解析した。ブタ、ヒト及びコモンマーモセット(非ヒト霊長類)細胞を、X2F6又はPT-85Aで染色した。右下の画分(APC陽性細胞)の百分率をパネルに示す。 図4は、X2F6と古典的 SLA クラスIトランスフェクタントとの反応性を示す。FSC/SSC でゲートをかけたトランスフェクタント細胞(図2に示す)をパネルに示す。ゲート内の細胞のmVenus及びSLAの発現について分析した。HEK293、SLA-1*0401/β2M、SLA-2*0901/β2M及びSLA-3*0602/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) 細胞を、X2F6又はPT-85Aで染色した。mVenus陰性細胞に対する抗体の反応性を、HEK293 パネルに示す。トランスフェクタントについては、mVenus 発現を有する細胞のうち、抗体と反応する細胞および非反応細胞の百分率を示す。 図5は、X2F6のアロタイプ特異的反応性を示す。FSC/SSC ゲートマイクロミニピグ単核球(MNC)のプロファイルをパネルに示す。抗体の反応性をゲート内の細胞について分析した。別個のブタの上部と下部は、同一のホモのSLA-1アロタイプを有する。Hp-35.23、Hp-16.16、Hp-17.17、Hp-43.37、Hp-10.11はクラスIとクラスIIハプロタイプを示す。 図6は、ブタ小腸切片の免疫組織化学分析を示す。各写真は、X2F6、PT-85A及び二次抗体のみで染色した切片を示す。 図7は、X2F6の可変領域のアミノ酸配列を示す。上段;重鎖、下段;軽鎖 図8は、抗体X2F6の CDR3領域(緑色:軽鎖、黄色:重鎖)を示す。 図9は、マイクロミニピッグの集団が保有するSLAクラスIアリル16 種類の配列のうち、交差性に相違があったハプロタイプが持つ配列を確認する為のアミノ酸アラインメントとそれにより同定された3アミノ酸が形成するエピトープのシミュレーションを示した図である。N102L,N103Y,N109LはSLAクラスIα鎖の外側に位置し、集中して一つのエピトープを形成する。一方、同様の部位のアミノ酸、N102D,N103V,N109Fは異なる形状を持ち、抗体との相互作用が困難になっている。この配列を持つSLAハプロタイプは、そのアリル数依存的に反応性が高くなる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
主要組織適合性抗原(major histocompatibility antigen; MHC)の発現調節は様々な病態と関連しており、医学的、獣医学的、畜産学的見地から重要な機構と考えられている。そのため、多くの動物種において、MHCタイピング法の確立とアロタイプの同定が行われてきた。しかしその主たる方法はシークエンサーを用いたゲノムおよびcDNA遺伝子配列解析であり、タンパク質の同定と機能解析については、動物種・遺伝子座特異性の低いモノクローナル抗体に依存している。本発明では、ブタ古典的クラスI MHCであるSLAクラスI分子のアリルを識別可能なモノクローナル抗体X2F6を作製した。モノクローナル抗体X2F6は、ヒト、マーモセットと交差せず、非古典的SLA分子であるSLA-6とも交差しない。また、モノクローナル抗体X2F6は、古典的クラスI分子であるSLA-2, SLA-3に対してもアリル依存的な反応をする。モノクローナル抗体X2F6は、フローサイトメトリーのみならず、組織染色にも適用可能である。上記の通り、モノクローナル抗体X2F6は、ブタ組織適合性抗原の発現解析に極めて有用である。
即ち、本発明のモノクローナル抗体は、ブタSLA(ブタ白血球抗原) クラスIアリルと特異的に反応し、ヒトMHC(主要組織適合性抗原)、コモンマーモセットMHC、ブタSLA-6と交差反応しないことを特徴とする。
ブタSLA、及びヒト又はコモンマーモセット等のMHCは、クラスI分子とクラスII分子の2種類がある。クラスI分子は細胞内の内因性抗原を結合し、クラスII分子はエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれて処理された外来性抗原を結合して提示する。クラスI分子は更に、古典的クラスI分子(クラスIa)と非古典的クラスI分子(クラスIb)に分けられる。
本発明のモノクローナル抗体は、古典的クラスI分子である特定のSLAアリルと特異的に反応し、同じ古典的クラスI分子であってもエピトープを持たないSLAとは交差反応しない。また本発明のモノクローナル抗体は、非古典的クラスI分子であるブタSLA-6と交差反応しない。
本明細書において、「交差反応しない」とは、実質的に交差反応しないことを意味し、必ずしも全く反応しないことのみを意味するわけではない。実質的に交差反応しないとは、ヒトMHC(主要組織適合性抗原)、コモンマーモセットMHC、及びブタSLA-6に対する本発明のモノクローナル抗体の結合親和性が、同一条件下におけるブタSLA-1に対する結合親和性よりも、少なくとも1/10、より好ましくは1/100、さらに好ましくは1/1000であることを意味する。
本発明のモノクローナル抗体は、好ましくは、ブタSLAクラスI 分子の2種のアリルの一方のみに反応性を有する抗体である。ブタSLAのアリルとしては、後記する実施例においては、5種類のハプロタイプのそれぞれに異なる数の反応性を有するアリルが存在し、それに対する反応性を調べたが、必ずしも実施例に記載した5種類のハプロタイプに限定されるわけではない。
本発明のモノクローナル抗体は、好ましくは、細胞表面上のブタSLAクラスI分子を認識することができる。即ち、本発明のモノクローナル抗体は、細胞表面上のnativeなブタSLAクラスI分子を認識することができることから、フローサイトメトリーにおいてブタSLAクラスI分子を検出することができる。
本発明の抗体は特に限定されず、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、ラクダ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等を適宜用いることができる。
モノクローナル抗体の作製は、当業者に既知の方法により行うことができる。
所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、通常の免疫方法にしたがって免疫動物を免疫する。免疫動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、サル、などの哺乳動物を用いることができる。免疫動物への抗原の投与は常法に従って行う。例えば完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントと抗原との懸濁液もしくは乳化液を調製し、これを動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化することができる。
本発明においては、好ましくは、ブタ末梢血より比重遠心分離により得た単核球粗画分より赤血球をRBC Lysis Bufferで溶解し、洗浄して単核球を精製する。これをmitomycin C(MMC,和光純薬)処理を行った後、免疫動物に投与した後に、ブタSLAクラスI 分子又はその部分ペプチドを免疫原として免疫動物を免疫することができる。さらに好ましくは、ブタ末梢血由来の単核球をRBC Lysis Bufferで溶解し、mitomycin C(MMC,和光純薬)処理を行った細胞を免疫動物に投与した後に、ブタSLAクラスI 分子とβ2Mとを発現する細胞を免疫原として免疫動物を免疫することができる。
次いで、上記の免疫動物から抗体産生細胞を取得する。抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用することができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。即ち、免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とを公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975)、Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46)により融合することにより、ハイブリドーマを作製することができる。
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングすることができる。
次いで、得られたハイブリドーマをスクリーニングすることによって、ブタSLAクラスIアリルと特異的に反応し、ヒトMHC、コモンマーモセットMHC、他のSLAクラスIアリル及びブタSLA-6と交差反応しない、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得することができる。
ハイブリドーマのスクリーニングは、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、SLAアリルを発現している細胞を用いたFACS等の当該技術分野において公知の方法を用いて、SLAアリルを認識する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択することができる。所望の抗体を分泌するハイブリドーマをクローニングし、適切な条件下で培養し、分泌された抗体を回収し、当該技術分野において公知の方法、例えばイオン交換カラム、アフィニティークロマトグラフィー等を用いて精製することができる。
本発明の抗体の一例としては、後記する実施例で取得された受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を挙げることができる。本モノクローナル抗体は、重鎖のアミノ酸配列として配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖のアミノ酸配列として配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む抗体である。受託番号:NITE P−01979を有するハイブリドーマも本発明の範囲内である。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用な方法(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)により容易に単離、配列決定できる。
抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成することができる。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
上記のように、抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (baby hamster kidney),HeLa,Vero,(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9, sf21, Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。
また、本発明のモノクローナル抗体は、SLAクラスIアリルを認識する特性を失わない限り、抗体断片(フラグメント)等の低分子化抗体 や抗体の修飾物などであってもよい。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Diabodyなどを挙げることができる。このような抗体断片を得るには、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい。抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。
上記の通り発現又は産生された抗体は、通常のタンパク質の精製で使用されている公知の方法により精製することができる。例えば、プロテインAカラムなどのアフィニティーカラム、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる。
本発明によれば、本発明のモノクローナル抗体と、ブタSLAクラスI分子を含む試料又はブタSLAクラスI分子を発現する細胞とを接触させることによって、ブタSLAクラスI分子を検出することができる。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体と、ブタSLAクラスI分子を発現する細胞とを接触させ、フローサイトメトリーアッセイによりブタSLAクラスI分子を検出することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(1)材料
実験はいずれも東海大学実験動物委員会および遺伝子組換え実験安全委員会の認可の元に行った。BALB/cマウスは、日本クレアから8週齢のメスを購入した。
新生仔ブタ組織は岐阜大学から、成体ブタ骨髄や血液は株式会社ジャパンファーム・クラウン研究所(当時)あるいは富士マイクラ株式会社から譲り受けた。スクリーニングにおいて二次抗体として用いたAnti-mouse IgG APC抗体はBioLegendのものを購入した。細胞融合に用いたPEG溶液はSIGMAのものを使用し、ミエローマ細胞株であるP3X63-U1は理化学研究所から購入した。ハイブリドーマ培養のための選択培地はSIGMAのHATサプリメントとGibco(登録商標)のHTサプリメントを用いた。モノクローナル抗体のアイソタイプはRoche Iso Strip マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを使用し決定した。
(2)方法
(2−1)トランスフェクション
HEK293細胞はD-MEM-10%FCS培地で、A20細胞はRPMI1640-10% FCS培地で培養し、Invitrogen Neon transfect systemを用いて、 1600V 10ms 3palsesの条件で遺伝子導入を行い、5% CO2濃度の37℃インキュベーター内で18時間〜20時間培養した。培養した細胞を回収し、mVenus の遺伝子発現量についてフローサイトメトリーにより、確認した。
SLA遺伝子は、Hp-16.16 ハプロタイプを持つSLA 固定クラウンミニブタとユカタンミニブタのSLA-1*0401のmRNA配列(AB185316, AF464002)よりプライマー(SLA1 N53: tagatatcGGTCTCaTATGGGGCCTGGAGCCCTCTT (配列番号5), SLA1 C35:taggatccTCACACTCTAGGgTCCTTGGTAAGGGACACATCGGA(配列番号6)) を設計し、クラウンミニブタのtotal RNA (Trizol, Invitrogen, Carlsbad,USA)を用いてcDNA合成 (High Capacity cDNA ReverseTranscription Kit, Life Technologies, CA)後、SLA1 N53とSLA1 C35プライマーを用いたPCR産物により、コンストラクトを作製した。SLA-1分子と細胞表面で会合するβ2-microglobulin (B2M)分子の mRNA配列 (L13854)より、SLA-1遺伝子と同様にプライマー (B2M PIG N53: tagatatcGGTCTCatATGGCTCCCCTCGTGGCCTT(配列番号7), B2M PIG C35: aggatccTTAGTGaTCTCGATCCCACTTAACTATCTT(配列番号8)) を設計し、cDNA合成後、B2M PIG N53とB2M PIG C35プライマーを用いたPCR産物により、コンストラクトを作製した。vectorとしては、modified S/MAR (scaffold/matrix attachment region) episomal vectorを用いた(Mizutani A, Kikkawa E, Matsuno A, Shigenari A, Okinaga H, Murakami M, Ishida H, Tanaka M, Inoko H: Modified S/MAR episomal vectors for stably expressing fluorescent protein-tagged transgenes with small cell-to-cell fluctuations. Anal Biochem. 443(1):113-6, 2013.)。
(2−2)免疫・マウス抗体価確認
ブタ末梢血よりリンフォセパールIIを用いて単核球粗画分を採取した。RBC Lysis Bufferで赤血球を溶解し、得た単核球精製画分についてmitomycin C(MMC,和光純薬)処理を37℃で40分間行った後、2.2x106個の細胞をBALB/cマウスへ腹腔内投与した。2週間後、上記の方法でSLA-1とβ2Mの両遺伝子を共導入したA20細胞 (SLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;A20)) をMMC処理した後、腹腔内投与を行った。この追加免疫を3回行った。マウスの抗体価はHEK293細胞とSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(A20) にマウスの血漿を添加し、二次抗体としてanti-mouse IgG APCを用いて染色し、マウス血漿中のポリクローナル抗体の産生を確認した。
(2−3)細胞融合
ハイブリドーマ作製法は、常法を用いた(Development of monoclonal antibodies for analyzing immune and hematopoietic systems of common marmoset.Kametani Y, Suzuki D, Kohu K, Satake M, Suemizu H, Sasaki E, Ito T, Tamaoki N, Mizushima T, Ozawa M, Tani K, Kito M, Arai H, Koyanagi A, Yagita H, Habu S. ExpHematol. 37(11):1318-29, 2009.)。免疫したBALB/cマウスをイソフルラン(和光純薬)を用いて麻酔し、心臓採血を行った後、頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を摘出した。RPMI1640-10%FCS培地中で脾臓をスライドグラスですりつぶし、メッシュを通した後、300 xg 5分間 4℃で遠心した。上清を除去し、沈殿をRBC Lysis Bufferに懸濁し、懸濁後すぐに300 x g 5分間 4℃で遠心分離を行なった。遠心後、上清を除去し、RPMI1640-10%FCS培地10mlに細胞を懸濁し、細胞数を測定した。P3X63-U1細胞と脾臓細胞が1:10の割合になるようにP3X63-U1細胞を用意し、脾臓細胞と混合し、300 xg 5分間 4℃で遠心分離を行った。上清を除去し、37℃に温めておいたPEG溶液1mlを1分間かけて添加し、37℃の恒温水槽で1分間静置した。その後2mlのRPMI1640-10%FCS培地を1分間かけて添加し、続いて10mlのRPMI1640-10%FCS培地を1分間かけて添加した。90 xg 5分間 4℃で遠心を行い、上清除去後5×106/mlになるようにRPMI1640-10% FCS培地とHATサプリメントが50:1になるように調製した培地に細胞を懸濁し、Corningの96wellプレートに100μL/well ずつ分注し、5% CO2 濃度の37℃インキュベーター内で培養を行った。7日後にハイブリドーマのコロニー数を計測し、HATサプリメントを加えたRPMI1640-10%FCS培地を100μL/wellずつ追加した。
(2−4)スクリーニング
HEK293細胞とこの細胞を親株としたSLA-1*0401/β2M導入細胞(SLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293))を用いてスクリーニングを行った。
スクリーニング前日にHEK293細胞とSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(HEK293) を1×104/wellずつ、NUNC の96wellプレートに分注し、5% CO2 濃度の37℃インキュベーター内で培養を行った。スクリーニング当日にハイブリドーマ培養上清を160μL 取り出した。
HEK293細胞、SLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) の培地を除き、取り出したハイブリドーマ培養上清を細胞が剥がれないように70μL/wellゆっくり添加し、15分間室温でインキュベートした。1%BSA/1×PBSを100μL/wellずつ加え、チップの先端がプレートの底に付かないように上清120μLを除去した。150μL/wellの1%BSA/1×PBSを添加した後、全ての上清を除去した。1%BSA/1×PBS で500倍希釈したBioRegendのanti-mouse IgG APCを70μL/wellずつ、ゆっくり添加し、15分間室温遮光でインキュベートした。1%BSA/1×PBSを100μL/wellずつ加え、300×g 5分間、4℃で遠心を行い、チップの先端がプレートの底に付かないように上清120μLを除去した。150μL/wellの1%BSA/1×PBSを添加した後、300×g 5分間、4℃で遠心を行い、チップの先端がプレートの底に付かないように上清150μLを除去し、1000倍希釈をしたヘキスト33342を100μL/wellずつ加え、室温で遮光1時間インキュベートした。
Thurmo ScientificのAray Scan VTIを用いてハイブリドーマ上清とSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) との反応性を解析した。Aray Scanによる解析後、フローサイトメトリ―を用いて、同様の解析を行った。HEK293細胞とSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) をそれぞれFisher チューブに入れ、ハイブリドーマ培養上清を50μL/チューブずつ添加し、15分間 4℃でインキュベートした。インキュベート後、1×PBS 1mlを添加し、900 xg 2分間(Fisher Scientific cat.4-978-59A)遠心分離を行い、50μLの上清を残して上清を除去した。100倍希釈したBioLegendのanti-mouse IgG APCを10μL/チューブずつ添加し、遮光15分間 4℃でインキュベートした。インキュベート後、1×PBS 1mlを添加し、900 xg 2分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1%BSA/1×PBSを200μL/wellずつ加え、メッシュを通してFALCONのラウンドボトムチューブに移し、FACScaliburを用いたフローサイトメトリーで解析を行った。蛍光強度3x101をカットオフ値とし、SLAトランスフェクタントの染色により、それ以上の蛍光を示す陽性細胞が20%以上存在し、親株ではカットオフ値以下が90%以上となるという条件を持つ抗体を産生するクローンを陽性クローンとした。
(2−5)種特異性およびアロタイプ特異性の解析
ヒトリンパ球、マイクロミニブタリンパ球、マウスリンパ球はそれぞれ末梢血からフィコール(ヒト)、あるいはリンフォセパール(マイクロミニブタ・マウス)を用いた比重分離により単核球粗画分を採取し、RBC Lysis bufferにて赤血球を除去した後、pan-specific MHC抗体(VMRD・PT85A)を用いて陽性コントロールとし、上記と同様に染色した後、FACSCalibur (Becton Dickinson)を用いたフローサイトメトリ―で解析を行った。
また、それぞれの細胞についてスクリーニングにより得られたX2F6クローンの培養上清を用いて染色を行い、フローサイトメトリーにより解析を行った。
(2−6)組織染色
ブタ組織は4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した後、包埋機にて24時間エタノール処理した後、キシレン処理を行い、パラフィン包埋した。これを、薄切して、組織切片のプレパラートを作製した。キシレン5分間3回で脱パラフィンを行った後、5分の水洗を行った。
DWで10倍希釈したDako Target Retrieval Solutionに切片を浸し121℃ 5分間反応させ、賦活化を行った。室温でゆっくり切片を冷ました後、1×PBSで5分 3回洗い、メタノール99mlと30%過酸化水素1mlを混ぜ合わせた溶液に10分間室温で浸し内在性ペルオキシターゼ処理を行った。山羊血清を1×PBSで100倍希釈し、50μlずつ切片に乗せ30分間室温でブロッキングを行った。一次抗体は陽性コントロールとしてMonoclonal antibody centerのクラスI抗体(PT-85A)を1%BSA/1×PBSで10μg/mlになるように希釈したものを50μlずつ、作製したモノクローナル抗体も同様に10μg/mlになるように希釈したものを50μlずつ、二次抗体のみの陰性コントロールには1%BSA/1×PBSを50μlずつ切片に乗せ4℃ over nightで反応させた。1×PBSで5分間 3回洗い、二次抗体として抗マウス Ig HRPを50μlずつ切片にのせ、室温1時間反応させた。1×PBSで5分 3回洗いDAB発色を10分間行った後、流水で3分間洗い、ヘマトキシリンで核染色を行った。エタノール2分間の脱水を4回行い、キシレン2分間の透徹を3回行った後、樹脂封入を行った。
(2−7)抗体の一次構造解析
ハイブリドーマより抽出したtotal RNA由来のcDNAを用いてPCRを行い、特定のバンドが増幅される事を確認した後、次世代シークエンサーにて遺伝子配列を解析した。cDNA代表配列に識別されたリードIDをソートし、長いもののみを抜粋してGenetyx等のソフトで全長配列を確定した。
(3)結果と考察
(3−1)X2F6の作製
ブタ末梢血およびSLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;A20) で免疫したBALB/cマウスのうち、抗血清中の力価がフローサイトメトリーで蛍光強度3x101以上のピークが観察されたものを選択し、これらマウス脾臓を用いてP3X63-U1と細胞融合を行った。ハイブリドーマ培養上清をArray Scanによりスクリーニングしたところ、SLA-1*0401/β2Mトランスフェクタント(親株;HEK293) を特異的に染色する(フローサイトメトリーにて平均蛍光強度(MFI) 3×103以上のピークを検出)クローンが2個得られた。これらについて限界希釈法によりモノクローナルなハイブリドーマをスクリーニングし、X2F6という安定クローンを得た (図1)。このクローンはmVenusの発現細胞を特異的に認識し、陽性コントロールであるPT-85A抗体による染色パターンと同様のパターンを示した。この細胞についてさらにフローサイトメトリーで特異性を確認した結果、PT-85A抗体と比較しても遜色なく、SLA-1*0401を発現する細胞を染色することが確認された(図2)。この抗体はIgG2aκであり、免疫学的手法に有用なアイソタイプであることが示された。
モノクローナル抗体X2F6を産生するハイブリドーマ細胞は、受託番号:NITE P−01979として、2014年12月9日に、独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
(3−2)X2F6の種特異性
本モノクローナル抗体は、フローサイトメトリーにより、ブタSLA-1*0401分子を発現するHEK293細胞を認識することが明らかとなったが、mVenus陰性細胞の一部がFL-4についてややシフトする傾向が示されている(図2)。HEK293はHLA(ヒトMHC)を発現するため、X2F6がHLAと交差する可能性も考えられた。そこでブタ、ヒト、コモンマーモセット末梢血単核球をX2F6で染色し、フローサイトメトリーによりX2F6の種特異性を解析した。その結果、ブタの末梢血単核球のみがこの抗体によって染色され、本抗体がブタに特異的である事が明らかとなった(図3)。
(3−3)X2F6の SLA遺伝子座特異性
X2F6のハプロタイプ Hp-16.16におけるSLA遺伝子座特異性を明らかにするために、古典的クラスI組織適合性抗原分子であるSLA-2*0901, SLA-3*0602および非古典的クラスI組織適合性抗原分子であるSLA-6*0101についてトランスフェクタントとの交差性をフローサイトメトリーにて解析した。その結果、X2F6はブタSLA-1*0401を発現するHEK293細胞を認識するが、SLA-2*0901, SLA-3*0602, SLA-6*0101を発現するHEK293細胞を認識しなかった(図2、図4)。これらの結果、X2F6はハプロタイプ Hp-16.16においてはブタSLA-1に特異的な抗体であることが示された。
(3−4)X2F6のハプロタイプ特異性
X2F6のハプロタイプ特異性を明らかにするために、5種類のSLAハプロタイプをホモに持つマイクロミニピッグを各2頭、合計10頭採血し、末梢血単核球を調製した。これらの単核球を市販のpan-MHC特異抗体とX2F6でそれぞれ蛍光染色し、フローサイトメトリーにより抗体の交差性を解析した。その結果、5種類のハプロタイプ全てで染色強度が異なることが明らかとなった(図5)。
(3−5)X2F6が適用される実験系
X2F6はArray Scan 、フローサイトメトリー等の生細胞の解析に有用であるのみならず、免疫組織染色においても、使用可能であることが示された。図6は、ブタ腸管を染色したものであるが、培養上清を精製した標品(x10)を用いて、陽性対照であるPT-85A抗体とほぼ同等の組織染色像が観察された。これらの結果から、本抗体は組織染色にも使用可能であることが示された。
(3−6)X2F6の遺伝子配列
X2F6の可変領域の配列については図7に示した通りである。
X2F6の重鎖の塩基配列とアミノ酸配列と、X2F6の軽鎖の塩基配列とアミノ酸配列とを以下に記載する。
重鎖:
塩基配列(配列番号1)1379bp(C領域:全長を補完、V領域:155番目のAを補完、L領域:読めたところまで)
TCCTGTCAGTAACTGCAGGTGTCCACTCCCAGGTTCAGCTGCAGCAGTCTGGAGCTGAACTGGTAAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACAAGCTATGATATAAACTGGGTGAGGCAGAGGCCTGAACAGGGACTTGAGTGGATTGGATGGATTTATCCTGGAGATGGTAGTACTAAGTACAATGAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACACTGACTACAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAGCTCAGCAGGCTGACATCTGAGGACTCTGCTGTCTATTTCTGTGCAAGTCCCTATTACTACGGTAGTAGCCCGTTTGCTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCAGCCAAAACAACAGCCCCATCGGTCTATCCACTGGCCCCTGTGTGTGGAGATACAACTGGCTCCTCGGTGACTCTAGGATGCCTGGTCAAGGGTTATTTCCCTGAGCCAGTGACCTTGACCTGGAACTCTGGATCCCTGTCCAGTGGTGTGCACACCTTCCCAGCTGTCCTGCAGTCTGACCTCTACACCCTCAGCAGCTCAGTGACTGTAACCTCGAGCACCTGGCCCAGCCAGTCCATCACCTGCAATGTGGCCCACCCGGCAAGCAGCACCAAGGTGGACAAGAAAATTGAGCCCAGAGGGCCCACAATCAAGCCCTGTCCTCCATGCAAATGCCCAGCACCTAACCTCTTGGGTGGACCATCCGTCTTCATCTTCCCTCCAAAGATCAAGGATGTACTCATGATCTCCCTGAGTCCCATGGTCACATGTGTGGTGGTGGATGTGAGCGAGGATGACCCAGATGTCCAGATCAGCTGGTTCGTGAACAACGTGGAAGTACTCACAGCTCAGACACAAACCCATAGAGAGGATTACAACAGTACTCTCCGGGTGGTCAGTGCCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGATGAGTGGCAAGGAGTTCAAATGCAAGGTCAACAACAAAGCCCTCCCAGCGCCCATCGAGAGAACCATCTCAAAACCCAAAGGGTCAGTAAGAGCTCCACAGGTATATGTCTTGCCTCCACCAGAAGAAGAGATGACTAAGAAACAGGTCACTCTGACCTGCATGGTCACAGACTTCATGCCTGAAGACATTTACGTGGAGTGGACCAACAACGGGAAAACAGAGCTAAACTACAAGAACACTGAACCAGTCCTGGACTCTGATGGTTCTTACTTCATGTACAGCAAGCTGAGAGTGGAAAAGAAGAACTGGGTGGAAAGAAATAGCTACTCCTGTTCAGTGGTCCACGAGGGTCTGCACAATCACCACACGACTAAGAGCTTCTCCCGGACTCCGGGTAAA
アミノ酸配列(配列番号2)459アミノ酸(C領域全長を補完、L領域は読めたところまで)
LSVTAGVHSQVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYDINWVRQRPEQGLEWIGWIYPGDGSTKYNEKFKGKATLTTDKSSSTAYMQLSRLTSEDSAVYFCASPYYYGSSPFAYWGQGTLVTVSAAKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPMVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVLTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKALPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
軽鎖:
塩基配列(配列番号3)702bp(L、V、J、C領域全長、補正済)
ATGAGTGTGCCCACTCAGGTCCTGGGGTTGCTGCTGCTGTGGCTTACAGGTGCCAGATGTGACATCCAGATGACTCAGTCTCCAGCCTCCCTATCTGCATCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCACATGTCGAGCAAGTGAGAATATTTACAGTTATTTAGCATGGTATCAGCAGAAACAGGGAAAATCTCCTCAGCTCCTGGTCTATAATGCAAAAACCTTAGCAGAAGGTGTGCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACACAGTTTTCTCTGAAGATCAACAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGGGAGTTATTACTGTCAACATCATTATGGTACTCCTCGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAACGGGCTGATGCTGCACCAACTGTATCCATCTTCCCACCATCCAGTGAGCAGTTAACATCTGGAGGTGCCTCAGTCGTGTGCTTCTTGAACAACTTCTACCCCAGAGACATCAATGTCAAGTGGAAGATTGATGGCAGTGAACGACAAAATGGTGTCCTGAACAGTTGGACTGATCAGGACAGCAAAGACAGCACCTACAGCATGAGCAGCACCCTCACATTGACCAAGGACGAGTATGAACGACATAACAGCTATACCTGTGAGGCCACTCACAAGACATCAACTTCACCCATCGTCAAGAGCTTCAACAGGAATGAGTGT
アミノ酸配列(配列番号4)234アミノ酸(L、V、J、C領域全長、補正済)
MSVPTQVLGLLLLWLTGARCDIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASENIYSYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHHYGTPRTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPRDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
以上の結果より、本抗体は、フローサイトメトリーや免疫組織染色などの広範な実験に用いることのできる、有用な抗体であることが示された。
(3−7)X2F6の構造モデルの構築
X2F6のアミノ酸配列に基づき、ホモロジー・モデリング法で、この抗体のFab部分の立体構造を構築した。テンプレート構造には、PDB ID=3V7Aの座標を用いた。X2F6の立体構造を図8に示す。CDR3領域の原子はball-and-stickで表示してある。C原子を緑色で表示した部分が軽鎖で、黄色で表示した部分が重鎖由来である。
(3−8)X2F6と各種のSLA-1アリルとの相互作用
実験に用いた6種類のSLA-1アリル(*0401、*0501、*0804、*1104、*1201および*1301)とX2F6の相互作用の強さに差があることから、X2F6によって認識される部位は、6種類のSLA-1アリル間でアミノ酸配列が異なり、かつMHC分子表面に露出している部分と考えられる。
2種類の異なる配列を持つSLA-1アリルの立体構造モデルのアミノ酸配列をalignmentし、該当箇所を検討した。その結果を図9に示す。上記の条件を満たす領域はアミノ酸の配列で102, 103番と109番のアミノ酸である。これらのアミノ酸は一局に集中し、図中で強調される形状の相違を呈する。緑は疎水性の高い側鎖、ピンクは親水性の高い側鎖を示す。この構造はSLAの外側エピトープとなり得る位置にある。

Claims (8)

  1. ブタ主要組織適合性抗原(MHC) SLAクラスIアリルと特異的に反応し、ヒトMHC、コモンマーモセットMHC、ブタの異なるSLAクラス Iアリル及びSLA-6と交差反応しない、モノクローナル抗体。
  2. ブタの5種類のハプロタイプのそれぞれと異なる反応性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  3. 細胞表面上のブタSLAクラス Iアリルを認識することができる、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
  4. ブタSLAクラス Iアリルの部分ペプチドとβ2マイクログロブリン(β2M)の部分ペプチドとを発現する細胞を免疫原として免疫動物を免疫し、前記免疫動物から取得した抗体産生細胞が産生する抗体である、請求項1から3の何れか一項に記載のモノクローナル抗体。
  5. 重鎖のアミノ酸配列として配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖のアミノ酸配列として配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1から4の何れか一項に記載のモノクローナル抗体。
  6. 受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。
  7. 受託番号NITE P−01979を有するハイブリドーマ。
  8. 請求項1から6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体と、ブタSLAクラス I分子を含む試料又はブタSLAクラスI分子を発現する細胞とを接触させる工程を含む、ブタSLAクラスIアリルを検出する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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