JP2016135249A - 首枕及び首枕と楔部材との組み合わせ並びに首枕の使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リクライニング姿勢、椅子、車椅子、歯科治療椅子などに着座した臥位姿勢のときにS字カーブを積極的に維持できる首枕及び首枕システムを提供する。【解決手段】頚部11の背面の自然なカーブにほぼ沿った湾曲した表面形状に形作られた頚部支持部102と、頚部支持部102の両側に夫々位置し、頭部10の乳様突起1の下部、外後頭隆起2の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部104とを有し、頚部支持部102が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びている。【選択図】図6
Description
本発明は、一般的には枕に関し、より詳しくは、例えば車椅子、背上げした介護用ベッドに背中を預けた座位姿勢(「リクライニング姿勢」という)や臥位姿勢のときに人体の頭部の重さの一部を効果的に担い、頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至る、いわゆるS字カーブを保持するのに好適な首枕及び首枕システムに関する。
人体は、頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至る、いわゆるS字カーブを有している。このS字カーブは、頭や頚の可動性と安定性を高め、口腔機能、嚥下機能、呼吸機能、視界を広げるなど人間の持つ基本的な機能に大きな影響を持つことが知られている。
特許文献1、特許文献2は、共に就寝中のときに、仰臥位姿勢の頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至るS字カーブに沿った断面形状を形作ることのできる枕を開示している。具体的に説明すると、特許文献1の図1、図2を参照して、枕1は、頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至るS字カーブに沿った断面形状を有する。すなわち、枕1は、後頭部H4を受け入れる凹部3と、頸椎H3を支持する膨出部2と、肩部H2を支持する延出片部(ひれ片部)5とを有する。枕1は粘性ウレタン材料から作られている。
特許文献2の図4を参照して、枕Mは断面略長方形の形状を有する。そして、この枕Mは、特許文献2の図5に図示のように、仰臥位姿勢で就寝しているときに、頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至るS字カーブに沿った断面形状を形作ることができる。特許文献2の図5を参照して、枕Mは、後頭部から第5頸椎まで延びる低反発ポリウレタンフォーム1aを有する。
枕Mは、また、第6、第7頸椎及び第1胸椎に相当する部分が第1、第2のシート状弾性部材2、3で構成されている。第1のシート状弾性部材2は、厚みが8mmの軟質ポリウレタンフォームで構成されている。第2のシート状弾性部材3は、衝撃吸収材である、厚みが10mmのポリウレタンわた32で構成されている。
特許文献2の枕Mは、第6、第7頸椎に相当する部分に第1空隙K1を有し、また、第1胸椎の部分に第2の空隙K2を有する。ベッドに横になった者が枕Mの上に頭を載せると、第1、第2の空隙K1、K2によって第1、第2のシート状弾性部材2、3が弾性変形する。この第1、第2のシート状弾性部材2、3の弾性変形によって、第6、第7頸椎及び第1胸椎をソフトに支持することができる。
特許文献3は、睡眠中の仰臥位姿勢、側臥位姿勢のいずれであっても姿勢の変化に追従できる枕を提案している。この枕は、頭部を受け止める第1弾性体と、頚部を受け止める筒状の第2弾性体と、この第2弾性体から下方にリップ状に延びる第3弾性体と、第1、第2の弾性体の両側に位置し上下に延びる筒状の第4弾性体とを有している。
特許文献3の枕によれば、ベッドで仰臥位姿勢のときに後頭部と頸椎との間及び頸椎と胸椎との間を隙間無く支持することができる。また、特許文献3の枕によれば、ベッドで横臥姿勢のときに側頭部と頸椎との間及び頸椎と肩との間を隙間無く支持することができる。
特許文献4は細長い扁平な筒状の首枕を提案している。この首枕は長手方向両端部分が中央部分に比べて隆起した形状を有している。すなわち、首の下に位置決めされる中央部分は扁平な筒状の形状を有する。そして、この中央部分を挟む両側の隆起部は中央部分よりも若干高い凸形状を有している。
特許文献4の首枕は中央部分で人間の頚部を支える。そして、凸形状の一対の隆起部は、特許文献4に「枕が頭から外れにくくなる。」と明記して有るとおり、首枕が首の下から抜け出すのを防止する。特許文献4は、首枕の中身の材料は任意であると記載している。
特許文献5は、摂食嚥下障害者のための枕システムを開示している。嚥下障害者の誤嚥を防止するのに、患者の下顎の先端部と胸骨との間の隙間を3本の指の入る間隔、つまり医学用語の「三横指」の間隔にするのが良いと言われている。この姿勢となるように、患者の頚部を若干前に倒すことのできる枕が必要となる。この観点に立脚して、特許文献5は枕システムを提案している。
枕システムは、枕本体と、上下方向角度調整部材と、左右方向角度調整部材との組み合わせで構成されている。上下方向角度調整部材及び左右方向角度調整部材は断面三角形の楔形状を有する。枕本体の下に上下方向角度調整部材及び/又は左右方向角度調整部材を挿入することで、枕本体の上下方向角度及び/又は左右方向角度を調整することができる。
枕本体は後頭部から側頭部に延びる断面U字状の形状を有している。枕本体の下端部には、下顎の下を支えるアームが左右に設けられている。すなわち、この枕本体は、背もたれに背中を預けた座位姿勢の患者の顎を支える構成を採用している。
特許文献6は、上記特許文献5と同様に、摂食嚥下障害者のための枕を開示している。特許文献6の枕システムは、枕本体を球面支持する台座を有する。枕本体の背面は球面形状を有している。これにより、枕本体は上下左右に自在に向きを変えることができる。枕本体は、断面U字状の形状を有している。枕本体は、後頭部から側頭部を支持することができる。
本願発明者は、人体の頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至るS字カーブの重要性を鑑みて本発明を案出するに至ったものである。例えば、高齢者や障害者で首の抗重力筋が弱った者は頭部の重量を首で支えるのが難しくなる。その結果、例えば車椅子や介護用ベッドを背上げしたときに、背もたれ等に背中を預けた座位姿勢の患者は上記S字カーブを自力で維持するのが困難である。多くの場合、S字カーブが消失した姿勢になりがちである。
特許文献1、2は、前述したように、ベッドで仰臥位姿勢のときに上記S字カーブを維持する枕を提案している。換言すれば、特許文献1、2の枕は、就寝中の仰臥位姿勢をターゲットとした設計がなされている。このことは、枕が、前述したように「低反発ポリウレタンフォーム」「軟質ポリウレタンフォーム」「ポリエステルわた」などで構成されていることから明らかである。
「低反発ポリウレタンフォーム」「軟質ポリウレタンフォーム」「ポリエステルわた」などはクッション材として周知である。したがって、特許文献1、2の枕は、仰臥位姿勢の人体の頭部、頚部、肩部の全体をクッション材でソフトに受け止めることを基本思想としている。
したがって、特許文献1、2の枕を上述した座位姿勢つまり背もたれ等に背中を預けた姿勢の患者に適用した場合、患者の頭部の荷重を担い切れずに枕がずり落ちてしまう。
特許文献3は、睡眠中、仰臥位姿勢と側臥位姿勢との間の姿勢変化に対応できる枕を開示している。すなわち、この特許文献3も、特許文献1、2と同様に、就寝中の者をターゲットとした設計がなされている。
特許文献4は、首の下に置く首枕を開示している。特許文献4は、首枕の材料について何も記載していないが、首枕をクッション材で構成することを念頭に置いていると言うことができる。特許文献4で明記しているように、左右一対の隆起部は首枕が頚部から抜け出すのを防止する機能を有している。したがって、この首枕は基本的には頸椎の支持を目的としている。また、特許文献4の首枕を頚部の下に置いて仰臥したときに頸椎と胸骨との間に隙間ができる。
特許文献5、6は、共に嚥下障害者用の枕を開示しているが、この枕は、上記S字カーブに対する検討が加えられていない。例えば特許文献5は、前述したように、頭部の重量を下顎で支持する構成が採用されている。このことから、食事するときや嚥下するとき、あるいは口腔ケア(歯科治療)などの際に口開きを阻害してしまう可能性が高い。
特許文献5、6は、また、上述したように上記S字カーブに対する検討が加えられていない。特許文献5、6の枕は頚部から胸椎に亘るS字カーブの下部分の支持構造が欠落している。このことから頚部が後屈し、呼吸や嚥下に悪影響を及ぼす可能性を否定できない。
本発明は、上記S字カーブが人間の最も自然な姿勢であるとの観点に立脚している。そして、本発明者は、リクライニング姿勢や車椅子やベッドで仰臥姿勢の時でも、上記のS字カーブの維持は重要であるとの認識に立脚した設計が必要であるとの認識の下で本発明を提案するものである。
呼吸機能が弱った患者は、15°乃至30°に背上げした介護用ベッドに身体を預けた状態に置かれる。また、口腔機能や嚥下機能に問題のある患者がベッドで食事する時は、リクライニング姿勢で食事する。
上記S字カーブを積極的に維持することは、健康な者、高齢者、障害者に関係なく、全ての者に最もリラックスできる姿勢を取らせることを意味する。上記S字カーブの積極的な維持は、人間の頭や首の可動性や安定性を高め、口腔機能、嚥下機能、呼吸機能、視界を広げることにも効果的である。
典型的には、高齢者や障害者は、頚部の抗重力筋の筋力低下、麻痺、関節の変形などによって上記S字カーブを維持できなくなる。そして、このことに伴って多くの問題が発生する。その代表例は、摂食嚥下機能の低下、呼吸機能の低下や視界の制限である。
本発明の目的は、例えば介護用ベッドの背上げ姿勢、車椅子、歯科治療椅子等で臥位姿勢、車の例えば助手シートなどでリクライニング姿勢のときに、障害者に限らず健常者も上記S字カーブを積極的に維持できる首枕及び首枕と楔部材との組み合わせ並びに首枕の使用方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、口腔機能、呼吸機能、嚥下機能を維持する介護ツールとして、頚部の抗重力筋が弱った高齢者、障害者などに好適に適用できる首枕及び首枕と楔部材との組み合わせ並びに首枕の使用方法を提供することにある。
図1は人間の頭蓋骨の側面図である。人間が臥位姿勢やリクライニング姿勢を取ったときに、本発明に係る首枕が頭部の荷重を支える部位は乳様突起1(mastoid process)の下部乃至外後頭隆起2(external occipital protuberance)の下部である。図2は、人体の上部の後面図である。乳様突起1は耳3の直ぐ後ろに位置している。外後頭隆起2は後頭部4の出っ張っている部分である。
本発明に係る首枕が頭部の荷重を支える部位は、乳用突起1(図1、図2)の下部乃至外後頭隆起2(図1、図2)の下部から頸椎6(neckbones)の後面全体である。図3は、人体の首部の骨格構造の側面図である。図3を参照して、頸椎6は、上下に並んで位置する第1頸椎C1〜第7頸椎C7の7つの骨で構成されている。
図4は、人体の頭部から頸椎を経由して胸椎上部に至るS字カーブを説明するための図である。参照符号10は人体の頭部を示す。また、参照符号11は頚部(neck)を示し、12は胸椎(thoracic vertebrae)を示す。図4に付記したカーブ13が上記S字カーブである。
頚部11から胸椎12の上部には、生命維持に不可欠な気管や食道が位置している。当該部位のS字カーブ13を維持することで呼吸や摂食嚥下に必要な頚部の自由な動きや顎関節の適正な噛合せを確保することができる。また、最もリラックスすることができる。
本発明の基本思想は、図3に付記した矢印で示すように乳様突起1(図1、図2)の下部、外後頭隆起2(図1、図2)の下部及び頸椎6を積極的に支えてS字カーブ13を維持又は形成することにある。換言すれば、本発明は、頭部10の荷重の一部を首枕で担うことで頚部11の負担を軽減することを企図している。
本発明の付加的な思想は、図2に付記した矢印で示すように、側頭部を支えて頭部10の左右の安定性を確保することにある。
上記の技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
人体の頚部の背面に位置し、該頚部を支持する表面形状に形作られた頚部支持部と、
該頚部支持部上端の両側に夫々位置し、人体の頭部の乳様突起の下部乃至外後頭隆起の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部とを有し、
前記頚部支持部が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びていることを特徴とする首枕を提供することにある。
人体の頚部の背面に位置し、該頚部を支持する表面形状に形作られた頚部支持部と、
該頚部支持部上端の両側に夫々位置し、人体の頭部の乳様突起の下部乃至外後頭隆起の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部とを有し、
前記頚部支持部が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びていることを特徴とする首枕を提供することにある。
本発明の首枕によれば、頭部の荷重の一部を首枕で担って頚部の負担を軽減しながら上記S字カーブを積極的に維持することができる。本発明の首枕は、身障者や高齢者に限定されることなく、健常者にも適用可能である。健常者は、本発明の首枕を使うことで頭部の荷重を支える頚部の負担が軽減されるためリラックスできる。
本発明の首枕を、身障者や高齢者など頸部の抗重力筋が弱った者に適用したときに、臥位姿勢の患者の頚部の負担を軽減しながら上記S字カーブを積極的に維持することができる。これにより患者の口腔機能、嚥下機能、呼吸機能、視界を広げることを確保することができる。
本発明の好ましい実施形態では、前記首枕は前記頚部支持部の背面側及び前記隆起部の背面側に位置する一枚の支持ボードを有する。この支持ボードは若干の可撓性を有するのが好ましく、これにより頭部の重みによって若干撓み変形することで個人個人のフィット感を高めることができる。本発明の好ましい実施形態では、支持ボードの下方つまり前記頚部支持部の下端から胸椎の上部に延びる延長クッション部を更に有する。
上記の技術的課題は、本発明の他の観点によれば、
人体の頚部の下に位置し、該頚部の背面を支持する表面形状に形作られた頚部支持部と、該頚部支持部の上端の両側に夫々位置し、人体の頭部の乳様突起の下部乃至外後頭隆起の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部とを有し、前記頚部支持部が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びていることを特徴とする首枕と、
該首枕の下に配置される楔部材とを有し、
該楔部材を前記首枕の下に配置することで、人体の頚部の最大可動関節である第7頸椎と胸椎との間の可動点と、首枕の傾斜角度のピボット点とを一致させることを特徴とする首枕と楔部材との組み合わせを提供することにより達成される。
人体の頚部の下に位置し、該頚部の背面を支持する表面形状に形作られた頚部支持部と、該頚部支持部の上端の両側に夫々位置し、人体の頭部の乳様突起の下部乃至外後頭隆起の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部とを有し、前記頚部支持部が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びていることを特徴とする首枕と、
該首枕の下に配置される楔部材とを有し、
該楔部材を前記首枕の下に配置することで、人体の頚部の最大可動関節である第7頸椎と胸椎との間の可動点と、首枕の傾斜角度のピボット点とを一致させることを特徴とする首枕と楔部材との組み合わせを提供することにより達成される。
この首枕システムに含まれる首枕は、首枕の前記頚部支持部の下端から胸椎の上部に延びる延長クッション部を更に有する。この延長クッション部は、使用時に、頚部の下端から胸椎の上部に至る部位に位置し、この部分を支えることができる。換言すれば、頚椎の下端から胸椎の上部に至る部位の下の隙間を延長クッション部によって埋めることができる。
この首枕システムに含まれる首枕は、首枕の前記頚部支持部の下端から胸椎の上部に延びる延長クッション部を更に有し、また、この延長クッション部と前記頚部支持部との間に折れ線を有するのが好ましい。この延長クッション部によって、頚椎の下端から胸椎の上部に至る部位を支えることができる。換言すれば、頚椎の下端から胸椎の上部に至る部位の下に隙間ができるのを防止することができる。
本発明の首枕システムによれば、第7頸椎と胸椎との間の可動点を中心として頸部の屈伸運動を行うため、上記S字カーブを維持したままで頸部の屈曲や伸展を適正に行うことができる。すなわち、本発明の首枕システムによれば、上記S字カーブを維持したまま臥位姿勢やリクライニング姿勢に対応した適切な頸部角度を確保することができる。
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
第1実施例(図5〜図11):
図5〜図11を参照して第1実施例の首枕100を説明する。図5は首枕100の斜視図である。図6は首枕100の表面の高低を示す、図5に対応した図である。図7は首枕100の正面図である。図8は、図7に示す矢印VIIIの方向から見た首枕100の底面図である。
図5〜図11を参照して第1実施例の首枕100を説明する。図5は首枕100の斜視図である。図6は首枕100の表面の高低を示す、図5に対応した図である。図7は首枕100の正面図である。図8は、図7に示す矢印VIIIの方向から見た首枕100の底面図である。
図5〜図8を参照して、首枕100は、頚部支持部102と、その上端の両側に位置する一対の隆起部104とを有し、この頚部支持部102と一対の隆起部104とで本体106を構成している。隆起部104はなだらかな小山の形状を有する。隆起部104の上方面104a乃至内方面104bは、人体の頭部10の下部から頚部11に亘る形状に好ましくは一致させた形状に形作られている(図10)。
図1を参照して、具体的に隆起部104の上方面104a乃至内方面104bの形状を説明すると、上方面104a乃至内方面104bの側面は、頭蓋骨の乳様突起1の下部乃至外後頭隆起2(図1)の下部の外形輪郭にほぼ一致する形状に形作られている。これにより一対の隆起部104は、使用者が仰臥姿勢又はリクライニング姿勢のときに、乳様突起1の下部乃至外後頭隆起2の下部を支持して人体の頭部10の荷重の一部を担うことができる。
図9は、図7のIX―IX線に沿って切断した断面図であり、頚部支持部102の断面形状を示す図である。図9を参照して、頚部支持部102の表面は上方に向けて凸に湾曲した形状を有している。この断面形状は健常人の頚部11の背面に一致したカーブであるのが良く、頚部の背面の自然なカーブに沿った湾曲した表面形状であるのが良い。
頚部支持部102の下端は人体の第7頸椎C7(図10、図11)に位置するように設計されている。頚部支持部102の上端は、乳様突起1の下部乃至外後頭隆起2の下部に位置するように設計されている。
隆起部104の外方面104cは切り立った壁で構成してもよいが、図示のように外方面104c及び下方面104dをなだらかなスロープで構成することにより、首枕100の使用時に隆起部104が頭部10の荷重によって変形するのを阻止することができる。
首枕100は、一般的に使用される平面視矩形の枕の上又は車椅子の背もたれ又はヘッドレストあるいは歯科治療チェアのヘッドレストに設置して使用するように設計されている。首枕100の底面には面ファスナが設置されている。この面ファスナを例えば車椅子の背もたれの面ファスナに係止させることで、設置した首枕100の位置ズレを防止できる。首枕100の位置を固定できる手段であれば、面ファスナに限定されず、ベルトなどの任意の位置固定手段を採用することができる。
首枕100は、好ましくは、上述した本体106の左右上端つまり一対の隆起部104から上方に延びる一対の側頭部サポート部108を有する。図7から最も良く分かるように、一対の側頭部サポート部108の間は空所である。首枕100を使用するときには、この空所に人間の後頭部が入り込む。この空所に機能を維持できるのであれば、一対の側頭部サポート部108の間にクッションを配置してもよい。すなわち、一対の側頭部サポート部108の間をクッション材で連結してもよい。
使用時、一対の側頭部サポート部108は人間の側頭部に隣接して位置する。この一対の側頭部サポート部108によって頭部10の左右位置を安定化することができる。
臥位姿勢の患者が、右又は左に頭部を横倒しした姿勢が常時の姿勢であるとき、一対の側頭部サポート部108によって頭部10の姿勢を正すことができる。
図9から最も良く分かるように、首枕100は、外皮110と、外皮110で覆われた内容物112と、外皮110の底部に位置する平らな支持ボード114とで構成され、支持ボード114は一対の側頭部サポート部108にも設けるのが好ましい。支持ボード114は、外皮110の底部の形状に形作られている。支持ボード114は、外皮110の底面に添設してもよい。
外皮110は、図5に図示の立体的な形状に縫製された布で構成されている。外皮110を三次元形状に形作られた材料で構成することにより、首枕100の三次元形状を使用時にも保持することができる。
内容物112は、クッション性を有する材料、典型的には、例えば、熱圧成形、注入成形、チップモールド成型などのウレタンフォーム成型品であるのが良い。勿論、使用中に安定した形状を保持できる保形性を確保できるのであれば他の材料の成型品であってもよい。
内容物112の一部に、流動性のある材料を使ってもよい。例えば、乳様突起1(図1、図2)の下部、外後頭隆起2(図1、図2)の下部に当たる部位に局部的にゲル材料を使うことで、骨が突出した部位の圧迫や摩擦を防止することができる。
外皮110の材料として、三次元形状に縫製された布を採用するときには、通気性に優れた布地を選択するのがよい。上述した三次元形状に成形した外皮110を使用することによって、前記内容物112の保形性を確かなものにすることができる。勿論、外皮110の三次元形状を主体として、首枕100の上述した三次元形状の保形性を確保してもよい。外皮110は、特に、吸汗性、汗拡散性にすぐれた布地を選択するのが好ましい。三次元形状に縫製された布製の外皮110を使った首枕100は寝室で枕の上に載置した状態で使用するのに適している。
医療機関や施設での首枕100の使用や、介護保険のレンタル制度を利用して在宅で首枕100を使用するときには、外皮110の材料として、感染症防止に適した材料を選択するのがよい。清拭及び消毒が可能な防水生地として、ウレタンフィルムラミネート生地、人工皮革を例示することができる。勿論、これらの材料を採用した外皮110は三次元形状に形作られる。
内容物112は、上述したウレタンフォーム成形品であるのがよいが、例えば健常人やフィット感を重視する者に対して首枕100を提供するときには、流動性を備えた材料を採用してもよい。流動性材料の具体例は、ポリエステル綿チップ、PP(又はPE)ビーズ、カットストローである。この流動性材料からなる内容物112を採用するときには、外皮110の三次元形状によって首枕100の上述した三次元形状の保形性を確保すればよい。また、外皮110に複数のセルを形成することで、各セルの中に限定して流動性材料の流動性を許容するようにしてもよい。
内容物112は、ウレタンフォーム成型品と流動性材料との組み合わせであってもよい。内容物112は、上述したウレタンフォーム成型品と、人体の頭部10及び/又は頚部11を受け止める部分に局部的に配置した上述の流動性材料とで構成してもよい。
首枕100に携帯性の機能を付与するときには、内容物112として空気を採用してもよい。すなわち、首枕100を使うときには外皮110に空気を入れて上述した三次元形状にする。使用後は、外皮110から空気を抜いた状態で持ち運ぶことができる。携帯性を備えた首枕100は健常人が例えばリクライニング姿勢で休むときに好適に適用される。空気からなる内容物112を採用するときには、外皮110の三次元形状によって首枕100の上述した三次元形状の保形性を確保すればよい。また、エアマットで周知な構成である複数のセルからなる内部構造を採用することで、首枕100の三次元形状を維持しつつ各セルの中に限定して空気の流動性を許容するようにしてもよい。
支持ボード114は平坦な形状を保持できるのであれば、その材料は任意である。典型的には、支持ボード114は、厚みを有するプラスチック板で構成される。支持ボード114を首枕100の底部に配置することで、ベッドの枕の上に首枕100を置いて使用しても、首枕100の所与の三次元形状を保持することができる。
上述したように、実施例の首枕100は、寝室又は病室では、枕の上に載置して用いられる。寝具の枕はクッション材で構成されている。首枕100を寝具の枕と一体化した形状に形作ることで、首枕100を枕として市場に提供してもよい。
実施例の首枕100は、前述したように、車椅子や自動車のヘッドレストに載置して用いることができる。また、首枕100は、歯科診療用チェアのヘッドレストに載置して使用可能である。自動車のヘッドレスト等に首枕100を固定するための手段として、首枕100にベルトを設けるのがよいし、ベルトと面ファスナとを設けてもよい。また、車椅子に首枕100を支える支持構造を作ってもよい。
首枕100は、人体の頭部10の荷重の一部を、乳様突起1(図1、図2)の下部乃至外後頭隆起2(図1、図2)の下部に接する一対の隆起部104で担うことができる。また、頚部11のカーブは頚部支持部102によって維持される。これにより、頭部10の負荷を軽減しながら上記S字カーブ13(図4)を維持することができる。これにより使用者は、口腔機能、嚥下機能、呼吸機能を確保又は維持できると共にリラックスできる。
第2実施例(図12、図13):
第2実施例の首枕200は、前述した第1実施例の首枕100の変形例でもある。図12、図13を参照した第2実施例の首枕200の説明において、第1実施例の首枕100の要素と実質的に同じ要素には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
第2実施例の首枕200は、前述した第1実施例の首枕100の変形例でもある。図12、図13を参照した第2実施例の首枕200の説明において、第1実施例の首枕100の要素と実質的に同じ要素には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
図12を参照して、第2実施例の首枕200は、第1実施例の首枕100の下端つまり本体106から下方に延びる延長クッション部202を有する。なお、第2実施例の首枕200は前述した支持ボード114を有し、延長クッション部202は、支持ボード114の下端から延びている。
図13は、延長クッション部202を断面した首枕200の使用例を示す。図12、図13を参照して、第2実施例の首枕200は、外皮110(図9)の下端に付加した延長外皮204を有する。延長外皮204は、胸椎12の上部(図4)まで延びている。第1実施例の外皮110と延長外皮204とを文言上に区別するために、第1実施例で説明した外皮110(図9)を「主外皮」と呼ぶ。
主外皮110は前述したように複雑な三次元形状に形作られている。延長外皮204は袋の形状を有する。延長外皮204の中には、従来から知られているクッション材の中から任意のクッション材206が収容されている。
主外皮110の下端縁と延長外皮204の上端縁とは折れ線208を介して連結されている。折れ線208を具体的に説明すると、主外皮110と延長外皮208とが共に布地で構成されているときには、折れ線208は縫い目で構成される。主外皮110と延長外皮208は縫い目(折れ線208)で連結される。変形例として、主外皮110と延長外皮204とを一体的に作ってもよい。
図13は、枕18の上に第2実施例の首枕200を置いて使用している状態を示す。図13から分かるように、首枕200の延長クッション部202は、枕18と肩部との間の隙間210に位置して、この隙間210を埋める。
これにより、隙間210の無い状態で、頭部10から頚部11を経由して胸椎上部に至るS字カーブを確保することができる。勿論、臥位姿勢の患者や車椅子の背もたれに背中を預けた患者についても同様である。
首枕システム(図14〜図18):
図14は本発明に従う首枕システムを説明するための図である。図14では、本発明に従う首枕として第1実施例の首枕100が図示されているが、第2実施例の首枕200であってもよい。本発明に従う首枕システム300は第1実施例の首枕100又は第2実施例の首枕200と楔部材302とで構成される。図14は、首枕システム300を車椅子304に設置した例を示す。
図14は本発明に従う首枕システムを説明するための図である。図14では、本発明に従う首枕として第1実施例の首枕100が図示されているが、第2実施例の首枕200であってもよい。本発明に従う首枕システム300は第1実施例の首枕100又は第2実施例の首枕200と楔部材302とで構成される。図14は、首枕システム300を車椅子304に設置した例を示す。
なお、図14に図示の車椅子304の背もたれ306は、大きくリクライニングした状態で図示してある。車椅子304は、図14に図示の大きくリクライニングした状態から背もたれ306を立てた状態まで背もたれ306を角度調整することが可能である。
楔部材302は、断面三角形のクッション材と、これを包囲する布地で構成されている。適当な硬度を備えた樹脂材料(ポリエチレン(PE)フォーム)の成型品だけで楔部材302を構成してもよい。楔部材302を首枕100の下に介在させることで、首枕100の設置角度を調整することができる。
図15、図16は、首枕として第2実施例の首枕200が図示されているが、第1実施例の首枕100であってもよい。図15は、楔部材302の一部を首枕200の下に挿入した例を示す。図16は、楔部材302を首枕200の下に深く挿入した例を示す。このように楔部材302の挿入の程度を変えることで首枕200の設置角度を微調整することができる。
断面三角形のクッション材の傾斜角度の違う複数の楔部材302を複数種類用意するのが良い。首枕100(200)が所望の設置角度となるように、傾斜角度の異なる複数の楔部材302の中から適当な楔部材302を選択して、これを首枕100(200)の下に設置することができる。
図17は、楔部材302無しで首枕200を使用した例を示す。図18は楔部材302を使って首枕200の設置角度を調整した例を示す。楔部材302を使うことで頚部11の前傾角度を変えることができる。頚部11の前傾角度が変化しても首枕200は頭部10及び頚部11の姿勢つまりS字カーブを保持し続ける。この機能は、上述した支持ボード114によって効果的に担保することができる。このことは第1実施例の首枕100でも同じである。
すなわち、支持ボード114の下端縁が上記の可動点Pと整合する位置になるように首枕100、200を設置して、頭部の乳様突起1の下部及び外後頭隆起2の下部を首枕200で支えると共に、人体の頚部11の最大可動関節である第7頸椎C7と胸椎との間の可動点P(図17、図18)で頭部10全体を前屈させることができる。なお、第2実施例の首枕200を採用したときには、延長クッション部202によって、頸椎6と胸椎12との間の可動点Pを含めた部位を柔らかく支持することができる。
首枕の背面構造(図19、図20):
図19、図20は首枕200の背面の構造を説明するための図である。以下の説明は第1実施例の首枕100についても同様に適用できる。
図19、図20は首枕200の背面の構造を説明するための図である。以下の説明は第1実施例の首枕100についても同様に適用できる。
首枕200の背面には、横ベルト220及び面ファスナ222が取り付けられている。横ベルト220及び面ファスナ222は首枕200を横断して延びている。横ベルト220の左右両端が縫い付けられており、横ベルト220は伸縮性の無い材料で作られている。面ファスナ222は横ベルト220と重複した位置に配置されている。すなわち、図19に示すように、面ファスナ222は、横ベルト220によって隠れた状態となるように配置されている。面ファスナ222は、その下端が延長クッション部202の上端と整合する位置に縫い込まれている。換言すれば、面ファスナ222は、支持ボード114の下端縁に隣接した部分が縫い込まれている。
そして、面ファスナ222は、その下端縁だけが縫い込まれており、この下端縁を中心に面ファスナ222を外部に取り出すことが可能である。この状態を図20に図示してある。この状態では、面ファスナ222は横ベルト220の上に露出した状態になる。
首枕200を設置する部位(車椅子の背もたれ)に既に面ファスナが設置してあるときには、図20に図示の面ファスナ222を横ベルト220の上に露出させた状態にして、面ファスナ222を使って首枕200の設置位置に固定することができる。
他方、首枕200を設置する部位(車椅子の背もたれ)に面ファスナが設置されていない場合、例えば枕18(図13)の上に首枕200を設置する場合には、図19に図示の面ファスナ222を横ベルト220の下に収納した状態で首枕200を使用することができる。面ファスナ222が横ベルト220で隠れているため、面ファスナ222の存在によって枕18の表面生地を傷めてしまうことを防止できる。
また、面ファスナ222の縫い込みを面ファスナ222の下端縁に限定してあるため、この面ファスナ222と首枕200の底面との間に上記の楔部材302を挿入することで、楔部材302の最大の挿入深さを面ファスナ222の下端縁の縫い込みで規定することができる。これにより、楔部材302の挿入し過ぎを防止でき、楔部材302の適正な挿入深さを規定することができる。
1 乳様突起
2 外後頭隆起
3 耳
4 後頭部
6 頸椎
C1〜C7 第1乃至第7頸椎
10 頭部
11 頚部
12 胸椎
13 S字カーブ
100 第1実施例の首枕
102 頚部支持部
104 隆起部
106 本体(頚部支持部と一対の隆起部)
108 側頭部サポート部
110 外皮
112 内容物
114 支持ボード
200 第2実施例の首枕
202 延長クッション部
P 可動点
2 外後頭隆起
3 耳
4 後頭部
6 頸椎
C1〜C7 第1乃至第7頸椎
10 頭部
11 頚部
12 胸椎
13 S字カーブ
100 第1実施例の首枕
102 頚部支持部
104 隆起部
106 本体(頚部支持部と一対の隆起部)
108 側頭部サポート部
110 外皮
112 内容物
114 支持ボード
200 第2実施例の首枕
202 延長クッション部
P 可動点
Claims (10)
- 人体の頚部の背面に位置し、該頚部を支持する表面形状に形作られた頚部支持部と、
該頚部支持部の上端の両側に夫々位置し、人体の頭部の乳様突起の下部乃至外後頭隆起の下部に当接する形状に形作られた一対の隆起部とを有し、
前記頚部支持部が第1頸椎C1から第7頸椎C7まで延びていることを特徴とする首枕。 - 前記首枕が、外皮と、該外皮の中に充填されたクッション性の内容物とからなり、
前記外皮が前記頚部支持部と前記一対の隆起部とを備えた三次元形状を有する、請求項1に記載の首枕。 - 前記頚部支持部及び前記一対の隆起部の背面側に位置する支持ボードを更に有する、請求項2に記載の首枕。
- 前記一対の隆起部及び前記頚部支持部から下方に延びる延長クッション部を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の首枕。
- 前記首枕の背面に、該首枕を横断する方向に延びる横ベルト及び面ファスナを更に有し、
該面ファスナと横ベルトが重複した状態で配置され、
前記横ベルトの左右両端が前記外皮に縫い付けられ、
前記面ファスナは、その下端縁が前記支持ボードの下端縁の近傍で前記外皮に縫い付けられて、該下端縁を中心に該面ファスナを前記横ベルトの上に露出させることができる、請求項3又は4に記載の首枕。 - 前記内容物を受け入れる複数のセルを更に有する、請求項2に記載の首枕。
- 前記内容物が空気である、請求項6に記載の首枕。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の首枕と、
該首枕の下に配置される楔部材とを有し、
該楔部材を前記首枕の下に配置することで、人体の頭部の乳様突起の下部及び外後頭隆起の下部を支持しつつ頚部の最大可動関節である第7頸椎と胸椎との間の可動点と、首枕の傾斜角度のピボット点とを一致させることを特徴とする首枕と楔部材との組み合わせ。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の首枕と、該首枕の下に配置される楔部材とを用意し、
該楔部材を前記首枕の下に配置することで、人体の頭部の乳様突起の下部及び外後頭隆起の下部を支持しつつ頚部の最大可動関節である第7頸椎と胸椎との間の可動点と、首枕の傾斜角度のピボット点とを一致させることを特徴とする首枕の使用方法。 - 請求項5に記載の首枕と、該首枕の下に配置される楔部材とを用意し、
該楔部材を前記首枕の下に配置するときに、該楔部材の先端部を前記面ファスナと前記首枕の背面との間に挿入して、人体の頭部の乳様突起の下部及び外後頭隆起の下部を支持しつつ頚部の最大可動関節である第7頸椎と胸椎との間の可動点と、首枕の傾斜角度のピボット点とを一致させることを特徴とする首枕の使用方法。
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JP2015021603 | 2015-01-20 | ||
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CN109044680A (zh) * | 2018-08-30 | 2018-12-21 | 盐城市第人民医院 | 一种用于颈椎骨折和颈部术后的多功能医用枕 |
JP2021126212A (ja) * | 2020-02-12 | 2021-09-02 | 正子 尾黒 | 振動抑制具 |
KR102323982B1 (ko) * | 2021-01-19 | 2021-11-08 | 이현승 | 베개 |
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2016
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