JP2016127247A - 希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法 - Google Patents

希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる希土類−鉄−窒素系合金材を生産性良く製造する方法を提供する。【解決手段】希土類−鉄系合金からなる複数の合金粒子11で構成される少なくとも一つの成形体10を、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口101を有するケース100に収納する収納工程と、ケース100に収納された成形体10に、窒素元素含有ガス雰囲気中、成形体10の窒化温度以上窒素不均化温度以下の温度で熱処理を施して、この熱処理による成形体10の外方への体積膨張をケース100の内面の少なくとも一部で拘束した状態で、希土類−鉄−窒素系合金材20を形成する窒化工程と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、希土類磁石の素材に用いられる希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法に関する。特に、高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる希土類−鉄−窒素系合金材を生産性良く製造できる希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法に関する。
モータや発電機などの用途に、希土類元素(R)と鉄(Fe)とを含有する希土類−鉄(R−Fe)系化合物を主相とするR−Fe系合金を材料に用いた希土類磁石が広く利用されている。代表的な希土類磁石としては、NdFe14B化合物を主相とするNdFe14B合金を原料として使用したNdFe14B磁石(ネオジム磁石)が挙げられる。ネオジム磁石以外では、SmFe17化合物を主相とするSmFe17合金を原料とし、これを窒化したSmFe17化合物を主相とするSmFe17磁石が実用化されている。
希土類磁石の種類としては、R−Fe系合金の磁粉を圧縮成形し、これを焼結した焼結磁石や、R−Fe系合金の磁粉にバインダ樹脂を混合し、これを圧縮成形して固化したボンド磁石が主流である。また、最近では、R−Fe系合金の磁粉を圧縮成形した圧粉磁石が開発されている(特許文献1を参照)。
特許文献1には、R−Fe系合金粉末に水素不均化温度以上で水素化(HD:Hydrogenation−Disproportionation)処理⇒圧縮成形⇒再結合温度以上で脱水素(DR:Desorption−Recombination)処理⇒窒化温度以上窒素不均化温度以下で窒化処理、することが記載されている。
特開2012−241280号公報
窒化処理は、一般的に、窒素元素含有ガス雰囲気の熱処理炉内において、台座の上に複数の成形体を載置した状態で行う。窒化処理を行うと、各R−Fe系合金粒子は、窒化されると共に膨張する。そのため、台座の上に成形体を載置しただけでは、窒化された成形体の体積が増大し、相対密度が低下することがある。成形体の相対密度が低下すると、その成形体を用いた希土類磁石の磁気特性は低下する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる希土類−鉄−窒素系合金材を生産性良く製造できる希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法は、収納工程と、窒化工程と、を備える。収納工程は、希土類−鉄系合金からなる複数の合金粒子で構成される少なくとも一つの成形体を、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口を有するケースに収納する。窒化工程は、前記ケースに収納された成形体に、窒素元素含有ガス雰囲気中、当該成形体の窒化温度以上窒素不均化温度以下の温度で熱処理を施して、この熱処理による前記成形体の外方への体積膨張を前記ケースの内面の少なくとも一部で拘束した状態で、希土類−鉄−窒素系合金材を形成する。
上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法は、高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる希土類−鉄−窒素系合金材を生産性良く製造できる。
実施形態に係る希土類−鉄−窒素系合金材の製造工程の一例を模式的に示す説明図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)実施形態に係る希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法は、収納工程と、窒化工程と、を備える。収納工程は、希土類−鉄系合金からなる複数の合金粒子で構成される少なくとも一つの成形体を、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口を有するケースに収納する。窒化工程は、前記ケースに収納された成形体に、窒素元素含有ガス雰囲気中、当該成形体の窒化温度以上窒素不均化温度以下の温度で熱処理を施して、この熱処理による前記成形体の外方への体積膨張を前記ケースの内面の少なくとも一部で拘束した状態で、希土類−鉄−窒素系合金材を形成する。
上記構成によれば、成形体の外面がケースの内面の少なくとも一部で拘束されていることで、窒化処理によって成形体が膨張したとしても、成形体の外方への膨張が制限される。このとき、成形体の膨張は、成形体の内方に向かって行われる。つまり、各希土類−鉄系合金粒子で形成される空隙を埋めるように各希土類−鉄系合金粒子が膨張する。そのため、成形体の体積の増大を抑制すると共に、成形体の相対密度を向上することができる。よって、上記製造方法によって得られる希土類−鉄−窒素系合金材は、高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石の素材として好適に利用できる。
また、上記構成によれば、窒化工程の前に行うことは、成形体の外方への熱膨張を拘束できるケースに成形体を収納するだけであるため、簡便である。ケースに収納する成形体は、単数でも複数でもよい。ケースに収納する成形体が単数の場合、ケースはその成形体の大きさと実質的に同等とすればよい。このとき、成形体は通気口に面する箇所を除く全外面がケースの内面によって拘束されることになる。一方、ケースに収納する成形体が複数の場合、各成形体を平面部分で互いに拘束し合うように配置し、ケースはその配置した複数の成形体によって形作られる大きさと実質的に同等とすればよい。このとき、成形体は一部の外面がケースの内面によって拘束され、成形体の残部の外面が別の成形体によって拘束されることになる。ケースには、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口が形成されているため、ケース内の成形体への窒化を均一的に行うことができる。
さらに、上記構成によれば、窒化処理による成形体の外方への膨張を抑制でき、成形体の体積の増加を抑制できるため、成形体を所望の形状及び大きさとすれば、窒化処理後もその成形体の形状及び大きさを維持できる。よって、切削加工などの別加工を実質的に行うことなく、希土類磁石の素材として好適な希土類−鉄−窒素系合金材を得ることができる。また、切削加工などの別加工を不要とすると、原料の歩留りの向上、希土類磁石の生産性の向上に寄与することができる。
(2)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記成形体の外面と前記ケースの内面との間のクリアランスが、前記成形体の外寸の2%以下であることが挙げられる。
窒化処理による成形体の膨張率は、3〜5%程度である。よって、上記構成によれば、成形体の外方への膨張を2%以下に制限できるため、従来と比較して、相対密度を確実に向上できる。
(3)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記ケースは、熱膨張係数が30×10−6/℃以下であることが挙げられる。
成形体は、上述したように、窒化処理によって3〜5%程度膨張する。上記構成によれば、窒化処理による成形体の膨張率に比較して、窒化処理温度域でのケースの膨張率を小さくできる(例えば、膨張率を1%以下程度)。そのため、成形体の外面をケースの内面で確実に拘束できるため、相対密度を確実に向上できる。
(4)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記収納工程における前記成形体は、前記複数の合金粒子の各々で形成される空隙が、5体積%以上20体積%以下であることが挙げられる。
窒化処理の対象である成形体について、各合金粒子で形成される空隙(空隙率)が5体積%以上であることで、成形体の内部まで均一的に窒化し易い。また、空隙率が5体積%以上であることで、成形体が内方に向かって膨張する際に、各空隙を埋めるように膨張することができるため、相対密度を向上し易い。一方、空隙率が20体積%以下であることで、成形体の希土類−鉄系合金粒子の割合を確保することができ、高密度の希土類−鉄−窒素系合金材を得易い。
(5)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記希土類−鉄系合金は、希土類元素の含有量が10質量%以上30質量%未満であることが挙げられる。
希土類元素の含有量が10質量%以上であることで、磁気特性に優れる。一方、希土類元素の含有量が30質量%未満であることで、相対的に鉄系元素の含有量を確保できるため、成形性に優れる。
(6)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記複数の合金粒子の平均粒径は、35μm以上350μm以下であることが挙げられる。
合金粒子の平均粒径が35μm以上であることで、微粒子に比較して比表面積を小さくして粒子の酸化を抑制し易く、酸化雰囲気での取り扱いを容易にできる。また、複数の合金粒子を圧縮成形して成形体を形成し易い。一方、合金粒子の平均粒径が350μm以下であることで、窒化処理において、各合金粒子の内部まで窒素を拡散し易く、各合金粒子の全体に亘って実質的に均一に窒化を行い易い。
(7)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記各合金粒子の平均結晶粒径は、700nm以下であることが挙げられる。
合金粒子の平均結晶粒径が700nm以下であることで、窒化処理工程において、結晶粒内部まで窒素が拡散し易く、各合金粒子の全体に亘って実質的に均一に窒化を行い易い。
(8)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記窒素元素含有ガス雰囲気は、Nガス雰囲気、NHガス雰囲気、NHガスとHガスとの混合ガス雰囲気、及びNガスとHガスとの混合ガス雰囲気のいずれかの雰囲気であることが挙げられる。
窒素元素含有ガス雰囲気として、上記雰囲気を好適に用いることができる。
(9)上記希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の一例として、前記窒化工程における熱処理は、熱処理温度が、300℃以上550℃以下であり、保持時間が、10分以上2000分以下であることが挙げられる。
熱処理温度が300℃以上、保持時間が10分以上であることで、成形体の各合金粒子の内部まで窒素が拡散し易く、各合金粒子の全体に亘って実質的に均一に窒化できる。一方熱処理温度が550℃以下、保持時間が2000分以下であることで、各合金粒子の全体に亘って実質的に均一に窒化でき、かつ窒化処理の温度及び時間を適度とできる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<実施形態1>
〔希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法〕
実施形態の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法は、以下の収納工程と、窒化工程と、を備える。本実施形態の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法の主たる特徴は、複数の希土類−鉄系合金粒子で構成される成形体に窒化処理を施すにあたり、成形体をケースに収納し、窒化によって膨張した成形体の外面をケースの内面で拘束した状態とすることにある。以下、図1に基づいて、各工程について詳しく説明する。なお、図1では、説明の便宜上、各粒子の大きさや、成形体とケースとの間のクリアランスなどを誇張して図示している。
≪収納工程≫
収納工程は、複数の希土類−鉄系合金粒子11…で構成される成形体10をケース100に収納する工程である(図1の下段左図を参照)。
・成形体
成形体10は、複数の希土類−鉄系合金粒子11…で構成されている。希土類−鉄系合金粒子11は、所望の組成となるように、希土類−鉄系合金の構成元素を選択すればよい。添加元素として含有される希土類元素は、Sc、Y、ランタノイド及びアクチノイドから選択される1種以上の元素である。Sm、Nd、Pr、Ce、Dy、Tb及びYから選択される少なくとも1種の元素を含むと、磁気特性の点で好ましい。特に、原料コスト及び磁気特性の観点から、Sm又はNdを必須元素として含むことが好ましい。希土類元素は単一の元素であっても、複数の元素の組み合わせであってもよい。複数の元素の組み合わせとは、例えば、希土類元素の一部を別の希土類元素で置換することをいう。希土類元素の含有量は、10質量%以上30質量%以下、更には24質量%以上26.5質量%以下とすることが好適である。
添加元素として含有される鉄(Fe)は、Fe(純鉄)のみの形態や、Feの一部がAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,及びMoから選択される少なくとも一種の元素に置換され、Feと当該置換元素とからなる形態などが挙げられる。Feの一部が上記元素で置換されることで、希土類磁石の磁気特性や耐食性を改善することができる。鉄および上記置換元素の合計含有量は、70質量%以上とすることが挙げられる。含有量が70質量%以上であることで、希土類−鉄系合金粒子11内に硬質である希土類元素が相対的に少なくなり、複数の合金粒子11…を圧縮成形した成形体10を得易い。一方、鉄および上記置換元素の合計含有量は、90質量%以下であることで、磁気特性に優れる希土類元素が相対的に多くなり、磁気特性に優れる。鉄および上記置換元素の合計含有量は、より好ましくは73.5質量%以上76質量%以下が挙げられる。
希土類−鉄系合金粒子11の大きさは、平均粒径が35μm以上350μm以下であることが挙げられる。希土類−鉄系合金粒子11の平均粒径が35μm以上であることで、微粒子に比べて比表面積を小さくして粒子の酸化を抑制し易く、酸化雰囲気での取り扱いを容易にできる。また、複数の希土類−鉄系合金粒子11…を圧縮成形した成形体10を得易い。一方、希土類−鉄系合金粒子11の平均粒径が350μm以下であることで、後述する窒化工程において、各希土類−鉄系合金粒子11の内部まで窒素を拡散し易く、希土類−鉄系合金粒子11の全体に亘って実質的に均一に窒化を行い易い。希土類−鉄系合金粒子11の平均粒径は、より好ましくは平均粒径が50μm以上250μm以下であることが挙げられる。平均粒径は、レーザ回折法で測定された体積基準の粒度分布において、小径側から累積体積が50%になる粒子径(D50:50体積%粒径)のことである。また、希土類−鉄系合金粒子11の平均結晶粒径は、700nm以下、さらに650nm以下であることが挙げられる。
成形体10は、上述した複数の希土類−鉄系合金粒子11…で形成される空隙(空隙率)が5体積%以上30体積%以下であることが挙げられる。成形体10の空隙率が5体積%以上であることで、成形体10の内部まで均一的に窒化し易い。一方、空隙率が30体積%以下であることで、成形体10の希土類−鉄系合金粒子11…の割合を確保することができる。上記空隙率は、さらに8体積%以上25体積%以下、特に10体積%以上20体積%以下が挙げられる。
成形体10の形状及び大きさは、所望の形状及び大きさとすることができる。例えば、最終製品(希土類磁石)の形状及び大きさとすることができる。本実施形態では、後述する窒化工程を経て得られる希土類−鉄−窒素系合金材(希土類磁石の素材となる)は、成形体10の形状及び大きさと実質的に同じとできるためである。成形体10の形状は、直方体といった平面から構成される形状、円柱といった平面を有する形状などが挙げられる。
上記成形体10は、例えば、複数の希土類−鉄系合金粒子11…(粉末)の準備工程⇒水素化工程⇒成形工程⇒脱水素工程、によって得ることができる。
(準備工程)
準備工程では、上述した組成及び大きさの希土類−鉄系合金粒子11…(粉末)を準備する。複数の希土類−鉄系合金粒子11…からなる粉末は、急冷凝固法(ストリップキャスト法やメルトスパン法)、溶解鋳造法、ガスアトマイズ法、還元拡散法などにより作製した所望の希土類−鉄系合金(例えば、SmFe17,SmFe11Ti)の原料合金を必要に応じて粉砕装置により粉砕することで製造できる。粉砕装置は、例えばジェットミル、ハンマーミル、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジョークラッシャーなどが挙げられる。希土類-鉄系合金粒子11…からなる粉末の製造には、公知の製造方法を利用できる。粉砕条件や製造条件を適宜変更することで、希土類−鉄系合金粒子11の粒度分布や粒子の形状を調整することができる。
(水素化工程)
水素化工程では、上記準備工程で準備した希土類−鉄系合金粒子11…からなる粉末を、水素元素を含む雰囲気中、希土類−鉄系合金の水素不均化温度以上の温度で熱処理して、水素化粉末を形成する。水素化工程によって製造された水素化粉末を構成する各粒子は、FeやFe化合物といった鉄含有物の相と希土類元素の水素化合物の相との複数相から構成される。鉄含有物の相は、希土類−鉄系合金や上記希土類元素の水素化合物の相に比較して、柔らかく成形性に富む。よって、水素化粉末を圧縮成形したときに変形して成形性を高められる。
水素元素を含む雰囲気は、水素(H)のみの単一雰囲気や、水素(H)とArやNといった不活性ガスとの混合雰囲気が挙げられる。熱処理時の温度は、希土類−鉄系合金の不均化反応が進行する温度、即ち不均化温度以上とする。不均化反応とは、希土類元素の優先水素化により、希土類元素の水素化合物と、Fe(或いはFe及びFe化合物)とに分離する反応であり、この反応が生じる下限温度を不均化温度と呼ぶ。上記不均化温度は、上記希土類−鉄系合金の組成や希土類元素の種類により異なる。また、上記不均化温度は、雰囲気の水素分圧などによっても変化する。例えば、希土類−鉄系合金がSmFe17,SmFe11Tiの場合、600℃以上が挙げられる。熱処理時の温度を不均化温度近傍とすると、希土類元素の水素化合物の相と鉄含有物の相とが多層構造となっている層状形態が得られる。温度を不均化温度+100℃以上に高めると、鉄含有物の相を母相として、この母相中に粒状の希土類元素の水素化合物の相が分散して存在する分散形態が得られる。熱処理時の温度は、高めるほど鉄含有物の相のマトリックス化が進行して成形性に優れる粉末が得られるが、高過ぎると粉末の溶融固着などの不具合が発生する上、後の脱水素による再結合が困難となるため、1100℃以下が好ましい。希土類-鉄系合金がSmFe17,SmFe11Tiの場合、熱処理時の温度を700℃以上900℃以下の比較的低めにすると、結晶粒子が微細な組織の粉末となり、保磁力が高い希土類磁石が得られ易い。熱処理時の保持時間は、0.5時間以上5時間以下が挙げられる。この熱処理は、公知の不均化条件を適用することができる。熱処理には、一般的な加熱炉の他、ロータリーキルン炉といった揺動式炉を利用することができる。揺動式炉を利用すると、鋳造塊などの比較的大きな素材を利用しても、水素化の進行に伴って脆化により粉砕され、粉末になる。
上記熱処理により得られた水素化粉末を構成する各粒子は、主成分を鉄含有物とし、その含有量を60体積%以上とする。鉄含有物の含有量が60体積%以上であることで、硬質である希土類元素の水素化合物が相対的に少なくなり、圧縮成形時、鉄含有物を変形し易い。一方、鉄含有物の含有量は、90体積%以下であることで、希土類元素の水素化合物が相対的に多くなり、磁気特性に優れる。希土類元素の水素化合物の含有量は、10体積%以上が好ましく、40体積%未満とする。
(成形工程)
成形工程では、上記水素化工程により得られた水素化粉末を圧縮成形して、水素化粉末成形体を得る。水素化粉末を圧縮成形することにより、高密度の水素化粉末成形体が得られる。圧縮成形する際の成形圧力は、例えば294MPa(3ton/cm)以上1960MPa(20ton/cm)以下とすることが挙げられる。より好ましい成形圧力は、588MPa(6ton/cm)以上1470MPa(15ton/cm)以下である。その他、圧縮成形する際に成形用金型を適宜加熱することで、粉末の変形を促進することができ、高密度の水素化粉末成形体が得られ易い。
(脱水素工程)
脱水素工程では、上記成形工程により得られた水素化粉末成形体を、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、水素化粉末成形体の再結合温度以上の温度で熱処理して、脱水素粉末成形体を形成する。脱水素工程により、水素化粉末成形体を構成する各粒子中の希土類元素の水素化合物から水素を除去すると共に、鉄含有物の相と、水素が除去された希土類元素とを化合する。この際、結晶粒がサブミクロンサイズにまで微細化して、保磁力が高い希土類磁石を得ることができる。
脱水素処理する際の雰囲気は、再結合温度までの昇温過程では水素を含んでもよいが、再結合温度以上では水素を効率よく除去できるように非水素雰囲気とする。非水素雰囲気には、不活性雰囲気又は減圧雰囲気が挙げられる。例えば、ArやNなどの不活性ガス雰囲気、又は真空度が10Pa以下の真空雰囲気とすることが挙げられる。より好ましい真空雰囲気の真空度は、1Pa以下、更には0.1Pa以下である。特に、減圧雰囲気(真空雰囲気)中で脱水素処理した場合、再結合反応がより進行して、希土類元素の水素化合物が残存し難い。脱水素処理する際の熱処理の温度は、水素化粉末成形体の再結合温度(分離していた鉄含有物と希土類元素とが化合する温度)以上とする。再結合温度は、水素化粉末成形体を構成する粒子の組成により異なるものの、代表的には、600℃以上1000℃以下、より好ましくは650℃以上850℃以下、さらに700℃以上800℃以下とすることが挙げられる。脱水素処理する際の熱処理の時間は、例えば10分以上10時間以下、より好ましくは30分以上5時間以下、さらに1時間以上3時間以下とすることが挙げられる。
・ケース
ケース100は、上記成形体10の形状及び大きさと実質的に同等の形状及び大きさである。ケース100の形状は、成形体10の形状の相似形である。ケース100の大きさは、成形体10を内部に収納でき、かつ成形体10の外面とケース100の内面との間のクリアランスが非常に小さい。ケース100の大きさは、例えば、成形体10の外面とケース100の内面との間のクリアランスが、成形体10の外寸の2%以下であることが挙げられる。成形体10に窒化処理を施すと、成形体10は3〜5%程度膨張する(詳細は後の窒化工程で説明する)。よって、上記クリアランスが成形体10の外寸の2%以下であることで、成形体10が外方に膨張したとしても、その外方への膨張を2%以下に制限することができる。
ケース100は、成形体10を収納可能な開口部を有するケース本体部と、ケース本体部の開口部を塞ぐ蓋部と、を備える形態が挙げられる。ケース本体部と蓋部とは、例えば、ワイヤを巻き付けて固定したり、ネジ止めしたりして固定することが挙げられる。他に、ケース本体部をその開口部を上側にして載置台に載置した場合、ケース本体部に組み付けた蓋部の上部に重石などを載置して固定することが挙げられる。後述する窒化工程において、成形体10は膨張するため、ケース100の内部に収納された成形体10の膨張に伴いケース100の内面には外方に向かって力が加えられる。よって、その力によってケース本体部と蓋部とが外れないように、両者を強固に固定する必要がある。
ケース100は、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口101…を有する。ケース100に通気口101が形成されていることで、後述する窒化工程において、ケース100の内部に収納された成形体10(各希土類−鉄系合金粒子11…)の内部にまで窒素を拡散することができ、成形体10への窒化を均一的に行うことができる。
通気口101は、窒素元素含有ガスが流通できるように、少なくとも窒素元素含有ガスの流入口と排出口とを有することが挙げられる。窒化処理は、一般的に、窒素元素含有ガスのフロー雰囲気下で行われているため、通気口101は、このガスの流れに沿って設けることが好ましい。例えば、成形体10が直方体である場合、各面(6面)に一つずつ通気口101を設けることが挙げられる。他に、成形体10が円柱の場合、各端面(2面)に一つずつと、周方向に均等に複数設けることが挙げられる。このように通気口101…を各面や周方向に均等に設けることで、ガスの流れを緻密に計算する手間を省くことができる。一方、通気口101が多過ぎると、ケース100の強度が低下したり、膨張した成形体による圧力によって通気口101部分で成形体10の形状が崩れたりする虞がある。同様に、通気口101の大きさは、大き過ぎると、ケース100の強度低下や、成形体10の形状の崩れの虞があるため、ケース100の全表面積に対する通気口101…の合計面積を1%以上15%以下程度とすることが挙げられる。
ケース100は、後述する窒化工程における熱処理温度によって膨張し難く、ケース100内部の成形体10に伝熱できる材質で形成されていることが挙げられる。ケース100は、例えば、熱膨張係数が30×10−6/℃以下、さらに12×10−6/℃以下、8.0×10−6/℃以下、特に5.5×10−6/℃以下であることが挙げられる。また、ケース100は、例えば、熱伝導率が0.5W/m・K以上、さらに1W/m・K以上、特に5W/m・K以上であることが挙げられる。ケース100の材質として、例えばMo(モリブデン)や、ステンレス鋼(SUS403)、耐火煉瓦などが挙げられる。伝熱性を考慮すると、ケース100の材質は、煉瓦などのセラミックスよりも金属の方が好適である。
≪窒化工程≫
窒化工程は、ケース100に収納された成形体10に、窒素元素含有ガス雰囲気中、成形体10の窒化温度以上窒素不均化温度以下の温度で熱処理を施す工程である。この熱処理によって、成形体10は外方へ体積膨張する。本実施形態では、この成形体10の外方への体積膨張をケース100の内面の少なくとも一部で拘束した状態で窒化処理を進ませて、希土類−鉄−窒素系合金材20を形成する。ここでは、図1に示すように、一つのケース100に一つの成形体10を収納しているため、成形体10の外面は全てケース100の内面によって拘束された状態となる。
窒化処理を行う装置は、図1の上段に示すように、窒化反応を行う熱処理炉200と、成形体10を所定の温度に加熱するヒーター201と、熱処理炉200内に窒素元素含有ガスを供給するガス供給口202iと、熱処理炉200内の窒素元素含有ガスを排出するガス排出口202oと、を備える。窒素元素含有ガスは、ガス供給口202iからガス排出口202oに向かって流れができている。熱処理炉200内には、成形体10を収納したケース100を載置する載置台203が配設されている。この窒化処理装置は、従来と同様のものを利用できる。
本実施形態では、ケース100に収納された成形体10を複数個用意し、各ケース100(成形体10)を載置台に等間隔に並列している。この他に、各ケース100を接触した状態とすることもできるし、各ケース100を縦積みにすることもできる。
窒素元素含有ガス雰囲気は、窒素(N)のみの単一ガス雰囲気、アンモニア(NH)ガス雰囲気、NHガスと水素(H)ガスとの混合ガス雰囲気、及びNガスとHガスとの混合ガス雰囲気などが挙げられる。この窒素元素含有ガスは、上述したように、ガス供給口202iからガス排出口202oに向かって流れができている。ガスの流れがあることで、熱処理炉200内の窒素濃度を均一的にできる。ガスの流れは、熱処理炉200内にファン(図示せず)などを設けて撹拌することでも行える。
熱処理(窒化)の温度は、希土類-鉄系合金が窒素元素と反応する温度(窒化温度)以上、窒素不均化温度(鉄含有物と希土類元素とがそれぞれ分離・独立して、窒素元素と反応する温度)以下とする。上記窒化温度や窒素不均化温度は、上記希土類-鉄系合金の組成により異なる。例えば、希土類-鉄系合金がSmFe17,SmFe11Tiの場合、熱処理時の温度は、200℃以上550℃以下が挙げられる。この熱処理温度が高過ぎると、合金粒子の結晶粒が成長して粗粒化し易く、耐熱性が低減する虞がある。また、この熱処理温度が高過ぎると、窒素が過剰に希土類−鉄系化合物中に侵入し、磁気特性が低下する虞がある。熱処理温度が高過ぎる場合に、耐熱性や磁気特性を考慮すると、熱処理の保持時間が長時間となる虞がある。逆に、この熱処理温度が低過ぎると、希土類−鉄系化合物に侵入する窒素が不足し、磁気特性が低下する虞がある。よって、この熱処理温度は、より好ましくは250℃以上400℃以下、さらに300℃以上375℃以下が挙げられる。熱処理時の保持時間は、10分以上2000分以下、より好ましくは30分以上2000分以下、さらに60分以上1800分以下が挙げられる。
上記熱処理温度及び保持時間で窒化処理を行うと、成形体10を構成する各希土類−鉄系合金粒子11は、窒素を取り込んで体積膨張するため、成形体10も体積膨張する。この膨張率は、3〜5%程度である。本実施形態では、成形体10をケース100に収納しているため、成形体10の外方への体積膨張をケース100の内面で拘束することができる。よって、成形体10の体積膨張は、成形体10の内方に向かって行われることになる。つまり、各希土類−鉄系合金粒子11…は、各希土類−鉄系合金粒子11…で形成される空隙を埋めるように膨張しながら、希土類−鉄−窒素系合金粒子21となる(図1の下段右図を参照)。成形体10は、上述した成形体10の外面とケース100の内面との間に形成されたクリアランス分だけ外方に膨張するが、ケース100の内面で拘束されるため、それ以上には外方に膨張しない。その分、成形体10の内部に存在する空隙に向かって膨張する。よって、成形体10の体積の増大は抑制されると共に、成形体10の空隙率が減少するため、希土類−鉄−窒素系合金材20の相対密度が向上する。このとき、成形体10の膨張による力は、成形体10の外方にも働くが、成形体10の内方にも働くため、ケース100のケース本体部と蓋部とは上述した固定によって外れることはない。
上記窒化工程により得られた希土類−鉄−窒素系合金材20をケース100から取り出す際は、希土類−鉄−窒素系合金材20は室温(20℃程度)にまで冷却されることで若干収縮する。そのため、この収縮が抜き代となって、希土類−鉄−窒素系合金材20はケース100から容易に取り出すことができる。
≪効果≫
本実施形態の製造方法によれば、窒化処理によって体積膨張した成形体10の外面がケース100の内面によって拘束されるため、成形体10の外方への体積膨張が制限される。このとき、成形体10の体積膨張は、成形体10の内方に向かって行われるため、成形体10の体積の増大を抑制すると共に、成形体10の相対密度を向上することができる。本実施形態の製造方法によって得られる希土類−鉄−窒素系合金材は、高密度であり、磁気特性に優れる希土類磁石の素材として好適に利用できる。また、成形体10の大きさと実質的に同等の大きさのケース100に成形体10を収納するだけで、窒化処理による成形体10の外方への体積膨張を容易に抑制できるため、簡便である。
〔希土類−鉄−窒素系合金材〕
上述した希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法によって得られた希土類−鉄−窒素系合金材20は、(1)成形体10の外方への体積膨張の抑制、(2)成形体10の内方への体積膨張による空隙率の減少、によって、高密度である。希土類−鉄−窒素系合金材20の相対密度は、80%以上である。この希土類−鉄−窒素系合金材20の相対密度は、成形体10の外面とケース100の内面との間のクリアランスや、窒化工程における熱処理温度や保持時間などによって、例えば82%以上、さらには83%以上とすることができる。希土類−鉄−窒素系合金材20が高密度であることで、この希土類−鉄−窒素系合金材20を用いた希土類磁石は磁気特性(残留磁化)に優れる。
<実施形態2>
実施形態2では、複数の成形体を一つのケースに収納する形態を説明する。実施形態2では、ケース内に収納する成形体が複数である点のみが異なり、その他の基本的な構成は、実施形態1と同様である。複数の成形体を一つのケースに収納する場合、各成形体はそれぞれ平面部分で互いに拘束し合うように配置する。そして、ケースは、その配置した複数の成形体によって形作られる大きさと実質的に同等とすればよい。そうすることで、各成形体が互いに拘束していない残部の面が、ケースの内面によって拘束されることになる。実施形態2の製造方法によって得られた希土類−鉄−窒素系合金材も(1)成形体の外方への体積膨張の抑制、(2)成形体の内方への体積膨張による空隙率の減少、によって、高密度である。
<試験例>
以下の準備工程⇒水素化工程⇒成形工程⇒脱水素工程⇒収納工程⇒窒化工程という手順で希土類−鉄−窒素系合金材(試料No.1〜7)を作製し、得られた希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度、窒素量、及び磁気特性を調べた。また、比較例として、成形体をケースに収納せずに従来の窒化工程を行って希土類−鉄−窒素系合金材(試料No.8)を作製し、得られた希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度、窒素量、及び磁気特性を調べた。
まず、希土類−鉄系合金粒子からなる粉末を準備した。25質量%Sm、3.7質量%Mnを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる組成を有するSm−Fe−Mn合金薄片(粒度0.5〜30mm)を酸素濃度20000ppmのグローブBOX内にて、超硬合金製乳鉢にて平均粒径100μm(D50)程度に粉砕した。次に、希土類−鉄系合金粒子からなる粉末を、水素雰囲気中、850℃×3時間の熱処理を施して水素化処理することにより、水素化粉末を形成した。この水素化粉末を金型に充填し、圧縮成形することで水素化粉末成形体を形成した。この圧縮成形時の面圧は980MPa(10ton/cm)とした。続いて、水素化粉末成形体を、真空雰囲気中、850℃×3時間の熱処理を施して脱水素処理をすることにより、脱水素粉末成形体(以下、単に成形体と呼ぶ)を形成した。成形体のサイズは、外径10mmφ×高さ10mmの円柱状とした。得られた成形体の相対密度を表1に示す。成形体の相対密度は、以下のようにして求めた。
・相対密度の求め方
まず、成形体の体積を実際の寸法から算出する(この値をAとする)。成形体の組成から真密度を算出する(この値をBとする)。また、成形体の重量を算出する(この値をCとする)。上記各値より、式:(C/B)/A×100から算出された値が相対密度である。
得られた成形体を、表1に示す種々のケースに収納し、NHガス:Hガス=1:4(NHガス20体積%、Hガス80体積%)の混合ガス雰囲気中、400℃×1時間の熱処理を施してSm−Fe−Mn−N合金材を形成した。ここでは、一つの成形体を一つのケースに収納し、このケースを熱処理炉内に配設された載置台の上に、ケースの平面部分を下面として載置した(実施形態1及び図1を参照)。表1に示すケースの内寸は、成形体を軸方向に沿った方向もしくは軸方向と直交する方向に切断したときの成形体の両側面と、ケースとの間に形成されるクリアランスの合計値である。例えば試料No.1では、成形体を軸方向に沿った方向に切断したときの切断面を見たとき、ケースを載置台に載置することで成形体の下面はケースと接するためクリアランスは形成されず、成形体の上面とケースとの間のクリアランスが0.01mmとなる。そして、成形体を軸方向と直交する方向に切断したときの切断面を見たとき、成形体の両側面とケースとの間のクリアランスの合計が0.01mmとなる(つまり、成形体の各側面とケースとの間の各クリアランスは0.005mmとなる)。また、表1に示すケースの通気口は、ケースの上面の略中央部分に一つ、下面の略中央部分に一つ、ケースの周方向のうち窒素ガスの流れに沿った対向箇所に一つずつ、の計4ヶ所に形成されている。この4ヶ所の通気口のそれぞれの大きさが、1.0mm角である。
作製した試料No.1〜8の希土類−鉄−窒素系合金材について、相対密度を求めた。この相対密度の求め方は、上述した成形体の相対密度の求め方と同様である。その結果を表1に併せて示す。
また、作製した試料No.1〜8の希土類−鉄−窒素系合金材について、窒素量を求めた。この窒素量は、不活性ガス溶融−熱伝導度法(TCD)により測定した。その結果を表1に併せて示す。
また、作製した試料No.1〜8の希土類−鉄−窒素系合金材について、磁気特性(残留磁化)を評価した。具体的には、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いて測定した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 2016127247
表1に示すように、成形体をケース(通気口を有し、成形体の外面とケースの内面との間のクリアランスが成形体の外寸の1%以下である)に収納した試料No.1〜5は、希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度が成形体の相対密度に対して1.5%以上向上した。これは、窒化処理による成形体の外方への熱膨張が、ケースの内面によって拘束されたことで、成形体の内方へと膨張が行われたことによると考えられる。このとき、成形体の空隙率(100−成形体の相対密度)は、約19%程度であり、成形体の内方への膨張は十分に行われたと思われる。また、成形体の空隙率が約19%程度であることで、成形体の内部まで均一的に窒化されており、窒素量は3.5質量%程度であり、残留磁化が0.57T以上であった。
特に、ケースの内面と成形体の外面とのクリアランスが成形体の外寸の10−3%程度であるケースに成形体を収納した試料No.1,3〜5は、希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度が成形体の相対密度に対して約3.0%以上向上した。このことから、成形体の外面とケースの内面とのクリアランスは、小さいほど成形体の外方への膨張が抑制されて、希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度が向上することがわかる。また、ケースの熱膨張係数が8.0×10−6/℃以下である試料No.1,3,4は、希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度が成形体の相対密度に対して約3.5%以上向上した。これは、窒化処理温度下でのケースの膨張をより抑制でき、成形体の外方への膨張を確実に拘束できたことによると考えられる。
一方、成形体をケースに収納しなかった試料No.8や、ケースの大きさが大きい(成形体の外面とケースの内面との間のクリアランスが成形体の外寸の約3%程度)試料No.6は、成形体の外方への膨張を拘束できず、希土類−鉄−窒素系合金材の相対密度は成形体の相対密度に対して全く向上しなかった。そのため、試料No.8,6は、残留磁化は0.56T以下であった。また、ケースに流入口が形成されていない試料No.7は、成形体内に窒素を流入させることができず、成形体の窒化を行うことができないため、残留磁化が0.18Tと非常に低かった。
本発明の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法は、各種モータ、特に、ハイブリッド車(HEV)やハードディスクドライブ(HDD)などに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材の製造に好適に利用することができる。
10 成形体 11 希土類−鉄系合金粒子
20 希土類−鉄−窒素系合金材 21 希土類−鉄−窒素系合金粒子
100 ケース 101 通気口
200 熱処理炉 201 ヒーター
202i ガス供給口 202o ガス排出口
203 載置台

Claims (9)

  1. 希土類−鉄系合金からなる複数の合金粒子で構成される少なくとも一つの成形体を、窒素元素含有ガスが流通可能な複数の通気口を有するケースに収納する収納工程と、
    前記ケースに収納された成形体に、窒素元素含有ガス雰囲気中、当該成形体の窒化温度以上窒素不均化温度以下の温度で熱処理を施して、この熱処理による前記成形体の外方への体積膨張を前記ケースの内面の少なくとも一部で拘束した状態で、希土類−鉄−窒素系合金材を形成する窒化工程と、を備える希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  2. 前記成形体の外面と前記ケースの内面との間のクリアランスが、前記成形体の外寸の2%以下である請求項1に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  3. 前記ケースは、熱膨張係数が30×10−6/℃以下である請求項1又は請求項2に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  4. 前記収納工程における前記成形体は、前記複数の合金粒子の各々で形成される空隙が、5体積%以上30体積%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  5. 前記希土類−鉄系合金は、希土類元素の含有量が10質量%以上30質量%未満である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  6. 前記複数の合金粒子の平均粒径は、35μm以上350μm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  7. 前記各合金粒子の平均結晶粒径は、700nm以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  8. 前記窒素元素含有ガス雰囲気は、Nガス雰囲気、NHガス雰囲気、NHガスとHガスとの混合ガス雰囲気、及びNガスとHガスとの混合ガス雰囲気のいずれかの雰囲気である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
  9. 前記窒化工程における熱処理は、
    熱処理温度が、300℃以上550℃以下であり、
    保持時間が、10分以上2000分以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の希土類−鉄−窒素系合金材の製造方法。
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