JP2016127129A - 太陽電池用保護ガラスおよびその製造方法 - Google Patents

太陽電池用保護ガラスおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿度環境で用いるMW級の太陽光発電システムにおいて、PID不良の発生を防止できる太陽電池用保護ガラスおよびその製造方法を提供する。【解決手段】ガラス表面における少なくとも封止材側表面に金属元素およびシリコンを含有する酸化物層が配置された太陽電池用保護ガラスである。前記酸化物層は、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことが好ましい。前記酸化物層は、波長が587nmの入射光に対する屈折率が1.5以上、2.3以下であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池モジュールのPID(Potential Induced Degradation)に起因する性能劣化を抑制できる太陽電池用保護ガラスとその製造方法に関するものである。
太陽電池モジュールは、図4に示すように、太陽電池セルを複数配置し、その周囲を表面保護材(保護ガラス)、封止材、裏面材(バックシート)が積層されて、モジュール化したものである。
太陽電池セルの製造工程としては、例えば、pn接合構造を有する単結晶または多結晶シリコン半導体基板の受光面にアルカリ溶液でテクスチャー構造を形成した後、その上に化学気相成長法により窒化珪素からなる反射防止膜を形成し、その後、配線を形成して太陽電池セルが製造される。
太陽電池モジュールの製造工程としては、例えば、太陽電池セル表面のバス電極にタブ線をハンダ付けすることにより、複数のセルが結合したストリングを製造する。次いで、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)などの封止材で当該ストリングの両面を覆い、さらに、その上部の受光面側には保護ガラスを積層し、裏面側にはバックシートを積層する。この積層体を高温の真空雰囲気で減圧して封止材を溶融させることにより、保護ガラス、太陽電池セルおよびバックシートを接着一体化し、太陽電池モジュールが製造される。
また、半導体素子の受光面に、インジウム錫酸化物(ITO)、亜鉛酸化物(ZnO)等の透明導電膜が形成されて、上記と同様の製造工程を経て、モジュール化されることもある。
太陽電池モジュールは、アルミニウムなどの金属フレームに固定されてパネルになる。複数のパネルを電気的に連結し、架台に固定されて、屋外に設置される。多数のパネルを連結することによってメガワット(MW)級の電力を発電できるシステムが増加している。
このMW級の発電システムにおいて、PID(Potential Induced Degradation、電位誘起劣化)による不良が多発し、問題となっている。
PID不良が発生する条件は、多数のパネルを連結したことにより、連結部の両端の電位差が数百ボルト以上になることに加えて、高温高湿度環境に曝されることである。
PID不良が発生する原因は、未だ明らかではないが、太陽電池セルと保護ガラスとの間に大きな電位差が作用し、その電位差によって保護ガラスに含まれるナトリウムイオン(Na+)が保護ガラスから外部に拡散して、反射防止膜の表面または透明電極の表面に蓄積することに起因すると言われている。例えば、非特許文献1によれば、Na+イオンが蓄積した結果、電荷の中性条件を維持するために反射防止膜のシリコン基板側に電子を引き付け、反射防止膜下部にあるシリコン基板の表面が負に帯電し、n+層が局所的にp+層に反転してエミッタ層において漏れ電流を発生し、太陽電池特性が劣化するというモデルが提案されている。
PID不良を抑制するために、封止材を改良した方法、または保護ガラスを改良した方法が提案されている。
封止材を改良した例を以下に示す。
特許文献1は、封止材の厚さを厚くして、絶縁破壊電圧を最大システム電圧より大きく設計することにより、PID不良を抑制する方法を提案している。
特許文献2は、封止材の材料として、エチレン・極性モノマー共重合体及び架橋剤を含む組成物の架橋硬化膜を用い、封止材の体積抵抗率と厚さの積が5×1013Ωcm以上として絶縁性を高めることによってNa+イオンの拡散を抑制する方法を提案している。
特許文献3は、保護ガラスと封止材との間に、高湿度環境にあっても水蒸気透過量が少なく高電気抵抗を有するアイオノマ樹脂層と、両面に凹凸を有する透明樹脂層と、エチレン―酢酸共重合体樹脂層がこの順番に積層されることによって、Na+イオンの拡散を抑制する方法を提案している。
特許文献4は、エチレン酢酸ビニル共重合体からなる封止材に加えて、有機過酸化物からなる架橋剤と、オリゴマーからなる安定化剤を含むことによって、電気的絶縁性と水分遮蔽性を改善し、Na+イオンの拡散を抑制する方法を提案している。
保護ガラスを改良した例を以下に示す。
非特許文献2は、ソーダライムガラスの替わりにNa+イオンを含有しない石英ガラスを保護ガラスとして用いるか、またはソーダライムガラス表面にシリコン酸化物を形成してアルカリ金属の拡散を抑制する方法を提案している。
非特許文献3は、湿式法によって保護ガラス表面にチタン酸化物(TiO)膜を形成し、その膜厚が100nm以上であればNa+イオンの拡散が抑制できるとしている。しかし、2時間のPID試験を実施した後に太陽電池の特性劣化が見られており、PID抑制効果は不完全である。
非特許文献4は、スパッタ法によって保護ガラス表面に膜厚が1μmのTiO膜を形成したが、膜組織が柱状結晶組織を呈しており結晶粒界を通じてNa+イオンが拡散するためPID不良が抑制できなかったと報告している。
非特許文献5は、TiO膜に加えてSiO膜を重層化することによってNa+イオンの拡散を遅延できると報告している。
特許文献5は、保護ガラス表面に含有されるNa+イオン濃度をNaO換算にして0.01重量%以上、13重量%以下にし、体積抵抗率を1.0×108.3Ωcm以上とする方法を提案している。
特許文献6は、保護ガラス及びフレームの表面を疎水性の膜で被覆することで、Na+イオンの溶出を抑制する方法を提案している。
その他の方法としては、特許文献7のように、反射防止膜上に透明導電膜を形成し、透明導電膜と太陽電池セルの裏面とを電気的に短絡して接地することによって、反射防止膜の表面近傍に電荷が蓄積しないようにする方法などが提案されている。
特開2014−11270号公報 特開2014−27034号公報 特開2014−157874号公報 特開2014−212318号公報 国際公開第2014/057890号 米国特許出願公開第2014/0150850号明細書 米国特許第7,786,375号明細書
J.Bauer et al.,Physica Status Solidi RRL,Vol.6,pp.331−333(2012) P.Hacke et al.Proceeding 25th EUPVSEC,pp.3760−3765(2010) K. Hara et al., The Royal Society of Chemistry Advances, Vol.4, pp.44291−44295(2014) E. Aubry et al., Surface & Coatings Technology, Vol.206, pp.4999−5005(2012) J. Zita et al., Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry, Vol.216, pp.194−200(2010)
上記のとおり、MW級の太陽光発電システムにおいては、PID不良による発電特性の劣化を防止する必要がある。しかし、上記の従来方法は、PID不良の抑制にとって十分でなく、MWシステムの寿命を延命化させるため、さらにPID不良を抑制するための改善方法が希求されていた。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、高温高湿度環境で用いるMW級の太陽光発電システムにおいて、PID不良の発生を防止できる太陽電池用保護ガラスおよび太陽電池用保護ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、保護ガラスのガラス表面に特定組成の酸化物層を形成することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、ガラス表面における少なくとも封止材側表面に金属元素およびシリコンを含有する酸化物層が配置された太陽電池用保護ガラスである。
(2)本発明は、前記酸化物層が前記ガラス表面の両面に配置された、上記(1)に記載の太陽電池用保護ガラスである。
金属元素およびシリコンを含有する酸化物層は、保護ガラスから外部に拡散するNa+イオンの拡散に対して遮蔽効果を有する。前記酸化物層を保護ガラスのガラス表面に配置することにより、Na+イオンが保護ガラスから溶出して、基板上に設けた反射防止膜の表面または透明導電膜の表面に蓄積されることを防止できる。
保護ガラスは、一般に封止材を介して基板と対向して配されるので、Na+イオン拡散を遮蔽するには、ガラス表面の少なくとも封止材側表面に上記の酸化物層を配置することが好ましい。ガラス表面の両面に当該酸化物層を形成してもよい。
(3)本発明は、前記酸化物層は、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含む、上記(1)または(2)に記載の太陽電池用保護ガラスである。
これらの金属元素は、シリコンおよび酸素と強い化学結合力を有する元素であり、シリコンと結合してケイ素化合物を形成するとともに、安定な酸化物を形成する。これらの金属元素およびシリコンを含む酸化物は、緻密な構造を有している。そのため、本発明における酸化物層は、イオン半径が大きいNa+イオンの拡散に対して優れた遮蔽効果を有する。
(4)本発明は、前記酸化物層は、チタン、バナジウム、クロム、マンガンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含む、上記(1)または(2)に記載の太陽電池用保護ガラスである。
チタン、バナジウム、クロム、マンガンは、シリコンおよび酸素との化学結合力が特に強い金属元素である。これらの金属元素およびシリコンを含む酸化物層は、Na+イオンの拡散に対して一層優れた遮蔽効果を有する。太陽電池発電システムの端部に作用する電位が1000V程度になる場合は、チタン、バナジウム、クロム、マンガンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことがさらに好ましい。
(5)本発明は、前記酸化物層は、金属元素としてマンガンを含む、上記(1)または(2)に記載の太陽電池用保護ガラスである。
マンガンは、シリコンおよび酸素との化学結合力が特に強い金属元素である。そのため、マンガンおよびシリコンを含む酸化物層は、Na+イオンの拡散に対する優れた遮蔽効果を有する。太陽電池発電システムの端部に作用する電位が1000Vを超える場合は、金属元素としてマンガンを含むことがさらに好ましい。
(6)本発明は、前記酸化物層は、前記金属元素と前記シリコンの合算濃度が20原子%以上、70原子%以下である、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の太陽電池用保護ガラスである。
酸化物層に含まれる金属元素、シリコンの濃度は、原子%で表記する両者の濃度を総和した合算濃度が20at.%以上であり、70at.%以下の範囲であることが好ましい。この合算濃度が20at.%より少ないと、Na+イオンの拡散に対する遮蔽効果を発現しない。また、70at.%より多いと、酸素空孔が増加して酸化物の電子エネルギーバンドギャップ内に欠陥準位およびテール準位を形成して酸化物層内部で入射光を吸収し、素子基板へ到達する入射光の強度が減少するため、本発明の保護ガラスを適用した太陽電池モジュールの変換効率が減少する。また、テール準位の形成による見かけのバンドギャップの減少により、酸化物層の屈折率を1.5以上にすることができる。
(7)本発明は、前記酸化物層は、原子%で、前記金属元素の濃度が前記シリコンの濃度に対して等量以上、10倍以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の太陽電池用保護ガラスである。
酸化物層に含まれる金属元素の原子%濃度がシリコンの原子%濃度に対して等量以上であると好ましい。等量以上であると、極性をもったシリコンと酸素の結合手の数が減少して比誘電率が減少するので、酸化物層の屈折率を2.3以下にすることができる。また、金属元素の原子%濃度がシリコンの原子%濃度に対して10倍を超えると、シリコン原子の濃度が薄くなり過ぎて比誘電率が極端に小さくなるので、酸化物層の屈折率が1.5未満となり、入射光の吸収率が悪化するため好ましくない。
(8)本発明は、前記酸化物層は、波長が587nmの入射光に対する屈折率が1.5以上、2.3以下である、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
酸化物層は、波長が587nmの入射光に対する屈折率が1.5以上、2.3以下であることが好ましい。この範囲の屈折率を有する酸化物層を配置することにより、素子基板との良好な光学的マッチングを実現し、太陽電池に照射される光を効率的に素子基板に到達させることができる。当該屈折率が1.5未満であると、赤外光の反射率が増加し、屈折率が2.3を超えると、紫外光の反射率が増加するため、素子基板に到達する光の強度が弱くなり、好ましくない。
(9)本発明は、前記酸化物層は、その厚さが5nm以上、200nm以下である、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
酸化物層は、その厚さが5nm以上、200nm以下であることが好ましい。酸化物層の厚さは、5nm未満であると、Na+イオンの拡散に対する遮蔽効果が消失し、200nmより大きいと、入射光の吸収量が増加し、素子基板に到達する光の強度が弱くなる。
(10)本発明は、ガラス表面の片面または両面において金属元素およびシリコンを含有する酸化物層を形成する工程を含み、酸化物の屈折率が入射光波長587nmにおいて1.5以上、2.3以下であり、酸化物の厚さが5nm以上、200nm以下である、太陽電池用保護ガラスの製造方法である。
(11)本発明は、前記酸化物層を形成する工程は、前記ガラス表面に金属元素およびシリコンを含有する薄膜を形成する第一の工程と、酸素を含む雰囲気において200℃以上、500℃以下の温度で焼成する第二の工程を含む、上記(10)に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法である。
(12)本発明は、前記第一の工程は、金属元素およびシリコンを含む溶液を塗布して形成する工程を含む、上記(11)に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法である。
(13)本発明は、前記第一の工程は、金属元素およびシリコンを蒸着して形成する工程を含む、上記(11)に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法である。
本発明は、原料溶液を塗布する湿式法を用いて、前記酸化物層を形成することができる。金属元素およびシリコンを含有する溶液を塗布する第一の工程と、酸素を含む雰囲気において200℃以上、800℃以下の温度で焼成する第二の工程を含むことが好ましい。
塗布された膜は、酸素を含む雰囲気で焼成することによって酸化物層となる。このとき、200℃未満で焼成すると、溶液の揮発成分が十分に除去されず、酸化物中に残存する恐れがある。また、500℃より高い温度で焼成すると、ガラスが軟化して変形するため、好ましくない。そのため、Na+イオンの拡散に対する有効な遮蔽効果を有する酸化物層が得られない。
本発明は、酸化物層の形成に蒸着法を用いることができる。蒸着により金属元素およびシリコンを含む膜を形成する第一の工程と、酸素を含む雰囲気において200℃以上、800℃以下の温度で焼成する第二の工程を含むことが好ましい。蒸着法は、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長(CVD)法、ミストCVD法など公知の薄膜形成方法を使用できる。
金属元素およびシリコンを含む蒸着膜は、酸素を含む雰囲気で焼成することによって酸化物層となる。このとき、焼成温度が200℃未満であると、蒸着膜は、酸化の程度が不十分となり、Na+イオンの拡散に対して十分な遮蔽効果が得られない。焼成温度が500℃より高い温度であると、500℃より高い温度で焼成すると、ガラスが軟化して変形するため、好ましくない。そのため、Na+イオンの拡散に対する有効な遮蔽効果を有する酸化物層が得られない。
本発明によれば、保護ガラスからのNa+イオンの溶出拡散を防止し、基板上の反射防止膜または透明導電膜の表面にNa+イオンが蓄積することを防止できるので、PID不良の発生が抑制された良好な電池特性を有する太陽電池用保護ガラスを提供できる。
本発明の実施形態に関して、保護ガラスの表面に酸化物層を配置した形態を示す図である。 本発明の実施形態に関して、基板上に反射防止膜または透明導電膜、封止材、酸化物層、保護ガラスの順に積層された形態を示す図である。 実施例のPID試験結果に関して、(a)は、スパッタ法によって形成した酸化物層を有するモジュールのPID試験結果、(b)は、スピンコーティング法によって形成した酸化物層を有するモジュールのPID試験結果、(c)は、酸化物層を有しない従来のモジュールのPID試験結果を示す図である。 保護ガラスが適用される太陽電池モジュールの一般的な構造を示す図である。
以下、本発明の太陽電池用保護ガラスとその製造方法について詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
太陽電池モジュールとは、半導体を用いた太陽電池セルを複数配置し、周囲の環境に耐えられるように保護ガラス、封止材、裏面材(バックシート)を用いて封止した後、全体の強度をもたせるために外枠(フレーム)をはめて、シールしたものである。
(基板)
太陽電池モジュールの基板には、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、CIS(CuInSe)、CIGS(Cu(In,Ga)Se)、CdTe化合物等の半導体材料が用いられる。バンドギャップが0.6eV以上、2.2eV以下の半導体において不純物濃度分布を調整し、pn接合を形成したものであればよい。
(反射防止膜)
基板の表面には、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜としては、窒化珪素、マンガン酸化物等の薄膜、あるいはこれらの薄膜を重層化した膜が好ましい。例えば、単結晶シリコン及び多結晶シリコンからなる基板においては、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって基板の上に窒化珪素の薄膜を成膜し、反射防止膜とすることができる。
(透明導電膜)
基板の表面には、透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜としては、インジウム錫酸化物(ITO)、亜鉛酸化物(ZnO)等の電気抵抗率が50μΩcm以上、0.01Ωcm以下の薄膜が好ましい。例えば、非晶質シリコン、CIS、CIGS、CdTe等の化合物半導体からなる基板においては、スパッタ蒸着法によって基板の上にインジウム錫酸化物または亜鉛酸化物の薄膜を成膜し、反射防止機能を付与した透明導電膜とすることができる。
(酸化物層)
本発明における酸化物層は、金属元素およびシリコンを含む酸化物から構成されている。金属元素としては、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンからなる群より選択される少なくも一種の金属元素が好ましい。さらに好ましくは、チタン、バナジウム、クロム、マンガンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
前記酸化物層に含まれる金属元素、シリコンの濃度は、原子%で表記する両者の濃度を総和した合算濃度が20at.%以上、70at.%以下の範囲であることが好ましい。この合算濃度が20at.%より少ないと、Na+イオンの拡散に対する遮蔽効果を発現しない。また、70at.%より多いと、酸素空孔が増加して酸化物の電子エネルギーバンドギャップ内に欠陥準位およびテール準位を形成して酸化物層内部で入射光を吸収し、素子基板へ到達する入射光の強度が減少するため太陽電池モジュールの変換効率が減少する。また、テール準位の形成は、見かけのバンドギャップを減少させ、屈折率を徒に大きくする傾向があり、素子基板へ到達する入射光の強度が減少するため好ましくない。
さらに好ましくは、金属元素の濃度がシリコンの濃度に対して原子%において等量以上、10倍以下であるとよい。等量以上であると、極性をもったシリコンと酸素の結合手の数が減少して比誘電率が減少するので、酸化物層の屈折率を2.3以下にすることができる。また、金属元素の原子%濃度がシリコンの原子%濃度に対して10倍を超えると、シリコン原子の濃度が薄くなり過ぎて比誘電率が極端に小さくなるので、酸化物層の屈折率が1.5未満となり、入射光の吸収率が悪化するため好ましくない。
前記酸化物層は、湿式法または乾式法を用いて形成することができる。湿式法による場合は、金属元素とシリコンを含有する溶液を被形成面に塗布する。乾式法による場合は、金属元素とシリコンを被形成面に蒸着する。いずれも、その後、酸素を含む雰囲気において、200℃以上、500℃以下の温度で焼成することにより、酸化物層が得られる。
湿式法で用いる塗布溶液は、金属錯体及びシランカップリング剤を有機溶媒に溶解したものを用いることができる。例えば、チタン錯体としては、エテン−1,2−ジイルビス(tert−ブチルアミド)ジイソプロポキソチタン、エテン−1,2−ジイルビス(tert−ブチルアミド)ビス(tert−ペンチルオキソ)チタン、エテン−1,2−ジイルビス(tert−ペンチルアミド)ジイソプロポキソチタンなどを例示できる。バナジウム錯体としては、バナジウムアセチルアセトネート,バナジルアセチルアセトネート,バナジルステアレート,バナジウムナフテネート,バナジウムベンゾイルアセトネートなどがある。クロム錯体としては、ヘキサカルボニルクロム、などがある。マンガン錯体としては、マンガン(II)アセテート、マンガン(II)ブチレート、マンガン(II)オクトエート、マンガン(II)ヘキサノエート、マンガン(II)エチルヘキサノエート、マンガン(II)アセチルアセトネート、マンガン(II)オレエート、マンガン(II)カルボニル、シクロペンタディエニルマンガントリカルボニル、シクロペンタディエニルマンガンジカルボニル、シクロペンタディエニルイソシアノシクロヘキサンマンガンジカルボニルなどがある。
シランカップリング剤としては、例えばビニル系の官能基を有するものとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルメチルシメトキシシランなどがある。この他に、エポキシ系の官能基を有するもの、スチリル系の官能基を有するもの、メタクリル系の官能基を有するものなどを用いることができる。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状および環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類、水などを用いることができる。
これらの原料を適切な量に秤量して混合し、塗布溶液とする。塗布方法は、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、インクジェット法などの一般的な方法を用いて保護ガラスの表面に塗布して塗布膜を形成する。
乾式法には、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長(CVD)法、ミストCVD法などの蒸着法を用いることができる。例えば、スパッタ法を用いる場合は、金属元素とシリコンの各板状ターゲットを準備し、高周波マグネトロンスパッタ法により、保護ガラスの表面に、金属元素とシリコンの薄層を蒸着して蒸着膜を形成する。
その後、上記の塗布膜または蒸着膜は、酸素を含む雰囲気で焼成して酸化物に変化させる。雰囲気中の酸素濃度は、500ppm以上であればよく、通常の大気を雰囲気ガスとしてもよい。また、雰囲気中には、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含有してもよい。
焼成温度は、保護ガラス表面に酸化物層を形成する場合は、200℃以上、500℃以下であればよく、350℃以上、500℃以下が好ましい。焼成時間は、30秒〜10分が好ましい。
(保護ガラス)
保護ガラスは、太陽電池セルを風雨や埃などの外部環境から保護するために設けられる。ガラス素材としては、一般的なソーダライムガラス(青板ガラス)、青板ガラスから鉄分を少なくした白板ガラスなどを用いることができる。入射光の反射を抑制するために、保護ガラスの受光面側の表面に梨地状の凹凸が付与されることもある。この保護ガラスの表面に上記の酸化物層を形成することにより、PID対策が施される。
(封止材)
封止材は、加熱することで溶融して透明性と粘着性を発現し、太陽電池と保護ガラスの密着性を確保するために利用される。エチレンビニルアセテート(EVA)等の共重合体を用いることができる。
(太陽電池モジュールの製造)
本発明の保護ガラスを用いて太陽電池モジュールを製造できる。具体的には、ガラス表面に予め金属元素およびシリコンを含む酸化物層を形成し、PID防止手段が施された太陽電池用保護ガラスを作製する。また、pn接合を形成した素子基板の上にグリッド配線と反射防止膜または透明導電膜とを形成し、太陽電池セルを作製する。そして、タブ線のハンダ付けを行った後、太陽電池セルの両面をEVA封止材で覆い、最外部に上記の保護ガラスおよびバックシートを配置して、重層構造体を作製する。その後、高温真空ラミネート装置を用いて、前記重層構造体を減圧下で加熱することにより、封止されて太陽電池モジュールが得られる。
このようにして作製した太陽電池モジュールを用いて、以下のような試験と測定を行い、太陽電池用保護ガラスに関する特性を評価した。
(酸化物層の膜厚、組成、及び屈折率の測定)
酸化物層の光学特性を評価するために、酸化物層の膜厚と屈折率を測定した。
平坦かつ平滑な表面を有するソーダライムガラス基板に乾式法または湿式法により酸化物層を形成して試料を作製した。当該試料の断面を透過電子顕微鏡により観察し、酸化物層の膜厚を測定した。さらに、当該試料を用いて、分光エリプソメーターにより入射光の波長に依存した屈折率を測定した。また、酸化物層の組成はオージェ電子分光法により測定した。
(PID試験)
太陽電池用保護ガラスが適用された太陽電池モジュールのPID特性を評価するため、PID試験を実施した。試験体は次のようにして準備した。太陽電池モジュールにおいて、保護ガラスの外部表面にアルミ板を接着して第一の外部電極に接続した。さらに、太陽電池セルの受光面と裏面のバス電極上にハンダ付けされたそれぞれのタブ線を電気的に短絡して第二の外部電極に接続し、試験体とした。PID試験の実施においては、第一の外部電極を接地電位(0V)とし、第二の外部電極に−1000Vを印加した。試験体は、温度85℃、相対湿度85%RHの高温高湿雰囲気を提供する試験装置内に置かれて、所定時間で保持した。一般に、このような試験をPID試験という。PID試験の特徴は、太陽電池モジュールを85℃、85%RHの雰囲気に暴露する従来の高温高湿耐久性試験条件に加えて、保護ガラスと太陽電池セル間に大きい電圧を印加することにある。PID試験において所定時間が経過した後、その試験体を用いて漏れ電流と変換効率を測定した。
(漏れ電流の測定)
一定時間が経過した後、試験体が試験装置から取り出され、試験体からPID試験用の外部電極を外すとともに、受光面と裏面のタブ線を短絡状態から分離した後、光照射が無い状態で受光面と裏面のタブ線の相互間に電圧を印加して、電流変化を測定した。この電流変化により、太陽電池モジュール内のセルの整流特性を評価できる。半導体素子が健全である場合は、順方向バイアス条件下で大きい電流が流れる一方で、逆バイアス条件下では殆ど電流が流れない。それに対し、半導体素子にPID不良が生じると、逆バイアス条件下においても顕著な漏れ電流が観測される。
(変換効率の測定)
市販のソーラーシミュレーターを用いて太陽電池セルに光照射を行い、太陽電池セルの上下タブ線を端子として、電圧を印加して電流を測定した。この測定は、標準条件(入射光強度=1000W/m、測定温度25℃)で行った。得られた電圧−電流曲線から、電圧と電流の積が最大、即ち発電電力が最大となる値を、標準試験条件における入射光強度の1000W/mで除することにより変換効率を算出した。
(判定基準)
漏れ電流に関しては、PID試験54時間経過後の逆バイアス条件下における電圧が−5.0Vの時の漏れ電流値に基づいて評価した。以下、この値を「基準漏れ電流」という。また、変換効率に関しては、PID試験前の変換効率(A%)と、PID試験54時間経過後の変換効率(B%)との間で減少した割合((A−B)/A)に基づいて評価した。以下、この値を「基準減少率」という。判定基準として、基準漏れ電流が0.5A以下であって、かつ、基準減少率が3%以下であるものを良好と判定した。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
(実施例1)
単結晶シリコン半導体基板として、縦156mm×横156mm×厚さ0.2mmの単結晶のp型シリコンウェハーを用いた。p型不純物はホウ素(B)であった。このウェハーの上部表面をKOH溶液によってエッチングし、凹凸状のテクスチャー組織を形成した。次いで、ウェハーの上部表面にPOClを塗布した後、高温で熱処理を行い、シリコン中にリン(P)を拡散させてn+領域を形成し、pn接合を有する単結晶シリコン半導体素子を作製した。
次に、得られた基板を用いて、テクスチャー組織が形成された受光面側の基板表面に、プラズマ化学気相成長法により窒化珪素膜を60nmの厚さで成膜した。そして、電極形成のために銀ペーストとアルミニウムペーストを印刷し乾燥させた。その後、大気雰囲気中で800℃、3秒の加熱処理を施して、グリッド電極と反射防止膜を有する単結晶シリコン太陽電池セルを作製した。
次に、予め酸洗処理を施したソーダライムガラス板からなる保護ガラスを用意した。保護ガラス表面の酸化物層は、スパッタ法による乾式法と、スピンコーティング法による湿式法を用いて形成した。なお、比較のために酸化物層を有しない太陽電池用保護ガラスも作製した。
乾式法においては、保護ガラス表面の太陽電池セルに接する側の全面に、スパッタ法によってマンガン層を14nmの厚さに堆積した。その後、大気中において350℃で1分間の熱処理を行った。その結果、マンガン層とガラスが大気中で反応することでマンガンとシリコンを含む酸化物層が形成でき、その厚さは26nmであった。酸化物層の原子%濃度比は、Mn:Si:O=35:12:53であった。
また、湿式法においては、酸化物層を形成する原料溶液として、マンガン(II)アセテート2.0モル、およびビニルトリエトキシシラン1.0モルを1リットルのイソプロピルアルコールに溶解して調製した。この原料溶液をスピンコーティング法によって、保護ガラス表面の太陽電池セルに接する側の全面に塗布した。次いで、大気中において50℃、10分で乾燥した後、500℃で5分の熱処理を行って、厚さ54nmのマンガンとシリコンを含む酸化物層を形成し、酸化物層を有する太陽電池用保護ガラスを作製した。酸化物層の原子%濃度比は、Mn:Si:O=32:19:49であった。
なお、この酸化物層の光学特性を測定するために、上記と同様の条件を用いてスパッタ法、およびスピンコーティング法でガラス表面上に酸化物層を形成した。分光エリプソメーターにより酸化物層の屈折率を測定した。587nmの波長における屈折率は、スパッタ法の場合は2.15、スピンコーティング法の場合は2.02であった。この数値は、反射防止膜の窒化珪素と同等のレベルであった。
次に、上記の太陽電池セルのバス電極表面に、ハンダフラックスを塗布し、タブ線をハンダ付けした。その後、上記の酸化物層を有する保護ガラスを最上面に配置し、その下にEVA、太陽電池セル、EVA、バックシートの順番に積層した積層体を作製した。高温真空ラミネーターを用いて、当該積層体を封止し、太陽電池モジュールの試験体を作製した。
得られた太陽電池モジュールについて、(i)PID試験前、(ii)PID試験6時間経過後、(iii)PID試験54時間経過後、の3段階において、太陽電池モジュール内の太陽電池セルによる電流及び電圧を測定し、太陽電池セルの整流特性に関して評価した。その結果を図3に示す。
図3(a)は、保護ガラスにスパッタ法で酸化物層を形成してPID防止対策を施したモジュールである。PID試験54時間経過後は、負の電圧領域(逆バイアス条件下)の−5Vにおいて微弱な漏れ電流が観測される程度に留まり、基準漏れ電流は、0.028Aであった。この漏れ電流は、−1000Vの電圧を印加しなくても観測されたことから、PID試験の高電圧付加により生じたものではなく、温度85℃、相対湿度85%RHの高温高湿度環境に暴露したことに起因する特性変化であると考えられる。
よって、高電圧付加を原因とするPID不良に関しては、本発明に相当する酸化物層を形成することにより、太陽電池モジュールのPID不良を完全に防止することができた。また、太陽電池モジュールの変換効率はPID試験前と54時間後では、18.1%から変化が見られなかった。
図3(b)は、保護ガラスにスピンコーティング法で酸化物層を形成してPID防止対策を施したモジュールである。−5Vにおける基準漏れ電流は、0.33Aであり、図3(a)の場合と同様に、この漏れ電流は−1000Vの電圧を印加しなくても観測されたことから、高温高湿度環境における特性劣化であると考えられる。よって、酸化物層を形成することによってPID不良を完全に防止することができた。また、太陽電池モジュールの変換効率はPID試験前と54時間後では、18.0%から変化が見られなかった。
図3(c)は、保護ガラスに酸化物層を形成しなかったモジュールであり、従来のモジュールと同じ構造を有するものである。PID試験6時間経過後には−5Vにおける漏れ電流は2.4Aであり、顕著なPID不良が発生した。PID試験前後のモジュールとしての変換効率は18.0%から15.4%まで劣化した。PID試験54時間経過後の漏れ電流は、3.7Aであり、変換効率は、13.4%に劣化した。6時間および54時間経過後の変換効率の減少率は、それぞれ14.4%、25.6%であった。
(実施例2)
金属元素およびシリコンを含有する酸化物層の厚さによる影響を調べた。
酸化物層の形成方法としては、第一に、マンガンとシリコンのスパッタターゲットを用いて、それぞれのターゲットに対する投入電力を制御することによって、マンガンとシリコンの濃度比をおよそMn:Si=2:1となるように制御した合金膜を、保護ガラス表面上に形成した。このとき、スパッタ時間を変化させることで、厚さが異なる種々のマンガン−シリコン合金膜を得た。その後、熱処理を行って酸化物層を形成した。Mn:Si:Oの濃度比は38:20:42であった。これらの厚さが異なる酸化物層を有する保護ガラスを用いた太陽電池モジュールの試験体を作製した。これらの試験体についてPID試験を行って、太陽電池モジュールの漏れ電流および変換効率を測定した。
判定基準としては、良好(基準漏れ電流が0.5A以下であって、かつ、基準減少率が3%以下)に相当するものを「○」で示した。試験結果を表1に示す。
表1に示すように、酸化物層の厚さが5nm以上、200nm以下である太陽電池モジュールは、漏れ電流および変換効率の両面において、PID不良の発生を抑制する良好な効果が得られた。そのため、酸化物層の厚さは、5nm以上、200nm以下が好ましい。
Figure 2016127129
また、湿式法で酸化物層を形成した保護ガラスを有する太陽電池モジュールの試験体を作製した。マンガン錯体とシランカップリング剤の濃度を2:1に固定して原料液を調製し、原料液の塗布、乾燥工程を繰り返し、最後に焼成することによって、異なる厚さの酸化物層を有する試験体を作製し、所定の特性を測定した。湿式法で作製した酸化物層を有する試験体についても、表1において得られた結果と同様に、酸化物層の厚さが5nm以上、200nm以下では、漏れ電流および変換効率の両面において、PID不良の発生を抑制する良好な効果が得られた。
(実施例3)
スパッタ法によって形成されたマンガンとシリコンを含む酸化物層を有する保護ガラスを用いて太陽電池モジュールの試験体を作製し、金属元素とシリコンの濃度比の影響を調べた。
スパッタ成膜時のマンガンターゲットとシリコンターゲットの投入電力を変化することで、一定の膜厚(約20nm)を有し、異なる組成のマンガンおよびシリコンを含む酸化物層を保護ガラス表面に形成させて、試験体を得た。屈折率の測定用には、平坦なソーダライムガラス基板を用いた。PID試験用には、酸化物層を形成させた上記の保護ガラスと、テクスチャーを有するシリコン素子基板とを有する太陽電池モジュール試験体を用いた。その測定結果を表2に示す。
表2に示すように、原子%でのマンガン濃度がシリコン濃度より大きい、すなわちMn/Si濃度比が1.0より大きく、10.0より小さい場合は、波長が587nmにおける屈折率が1.5以上、2.3以下であり、かつ、PID試験後において変換効率が維持される良好な特性が得られた。よって、PID不良の抑制には、マンガン濃度がシリコン濃度より大きいことが好ましい。
Figure 2016127129
また、湿式法で酸化物層を形成した保護ガラスを用いた太陽電池モジュールの試験体により、マンガンとシリコンの濃度比に関する影響を調べた。マンガン錯体とシランカップリング剤の濃度を変化させた原料液を調製し、原料液を保護ガラス表面に、塗布、乾燥、焼成することによって、表2と同様の濃度比からなる酸化物層を有する試験体を作製し、所定の特性を測定した。湿式法で作製した酸化物層を有する試験体についても、マンガン濃度がシリコン濃度より大きく、10倍以下である場合は、1.5以上、2.3以下の屈折率であって、PID試験後において変換効率の基準減少率が3%以下に維持される良好な結果を得た。
(実施例4)
金属元素濃度とシリコン濃度の合算濃度に関する影響について調べた。
スパッタ法により保護ガラス表面上にマンガンとシリコンを含む酸化物層を有する太陽電池モジュールの試験体を作製した。スパッタ成膜時のマンガンターゲットとシリコンターゲットの入力電圧を変化することで、一定の膜厚(約20nm)と一定のマンガン:シリコン組成比(約2:1)を有し、異なる合算組成のマンガンとシリコンを含む酸化物層を所定の保護ガラス上に形成させて、試験体を得た。屈折率の測定用には平坦なソーダライムガラス基板を用いた。PID試験用には、酸化物層を形成させた上記の保護ガラスと、テクスチャーを有するシリコン素子基板とを有する太陽電池モジュール試験体を用いた。その測定結果を表3に示す。
表3に示すように、マンガン濃度とシリコン濃度の合算濃度(Mn+Si)が20at.%以上、70at.%以下の場合は、波長が587nmにおける屈折率が1.5以上2.3以下であり、PID試験後において変換効率が維持された。PID不良を抑制するためは、マンガン濃度とシリコン濃度の合算濃度が20at.%以上、70at.%以下であることが好ましい。
Figure 2016127129
また、湿式法で酸化物層を形成した太陽電池モジュールの試験体により、マンガン濃度とシリコン濃度の合算濃度に関する影響を調べた。マンガン錯体とシランカップリング剤の濃度を変化させてマンガン濃度とシリコン濃度の合算濃度が一定となるように原料液を調製し、原料液をシリコン基板に、塗布、乾燥、焼成することによって、表3と同様の濃度比からなる酸化物層を有する試験体を作製し、所定の特性を測定した。湿式法で作製した酸化物層を有する試験体についても、マンガン濃度がシリコン濃度より大きい場合は、2.3以下の屈折率であって、PID試験後において変換効率が維持される良好な結果を得た。
(実施例5)
保護ガラス表面の酸化物層に含まれる金属元素としてマンガン以外の金属元素(M)を選択し、シリコンと同時にスパッタ成膜してM−Si合金膜を得た。選択された金属元素は、シリサイド及び酸化物の形成エネルギーが共に大きい元素群(Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo)に加えて、シリサイドの形成エネルギーが小さいFe、Zn、及び酸化物の形成エネルギーが小さいCo、Niである。各金属とシリコンのスパッタターゲットへの投入電力を制御して、原子%濃度比がおよそM:Si=2:1となるようにした。また、スパッタガスにアルゴンと酸素の混合ガスを用いたことにより、成膜後の酸化熱処理をすることなく、酸化物層を形成することができた。いずれの合金膜も膜厚は約20nmとした。これらの酸化物層を有する保護ガラスを用いて、太陽電池モジュールの試験体を作製し、PID試験を実施した。使用した金属元素別にPID試験結果を表4に示す。
表4に示すように、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Moの各金属元素を用いた試験体は、いずれも良好なPID不良発生抑制効果を示した。中でも、Ti、V、Cr、Mnは、変換効率の基準減少率が小さく、より好ましい。
上記の各金属元素は、2種類以上を混合しても同様に良好なPID不良発生効果が得られる。また、酸化物層を湿式法で形成してもよい。
Figure 2016127129
(実施例6)
次に、単結晶シリコン半導体以外の半導体基板を選択したことを除いて、実施例1に記載した乾式法におけると同様の手順により、保護ガラス表面にマンガンとシリコンからなる酸化物層を形成して太陽電池モジュールを作製し、PID試験を実施した。半導体基板として、多結晶シリコン、非晶質シリコン、CIS、CIGS、CdTe化合物を用いた。これらの太陽電池モジュールのPID試験を実施したところ、いずれも基準漏れ電流及び基準減少率が良好な範囲を示した。
以上のように、本発明で見出した酸化物層は、高温高湿度環境下において高電圧が印加されている場合のNa+イオンの拡散を有効に防止できるため、半導体材料の種類に限られることなく、優れたPID防止効果を発現する。

Claims (13)

  1. ガラス表面における少なくとも封止材側表面に金属元素およびシリコンを含有する酸化物層が配置された太陽電池用保護ガラス。
  2. 前記酸化物層が前記ガラス表面の両面に配置された、請求項1に記載の太陽電池用保護ガラス。
  3. 前記酸化物層は、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含む、請求項1または2に記載の太陽電池用保護ガラス。
  4. 前記酸化物層は、チタン、バナジウム、クロム、マンガンからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含む、請求項1または2に記載の太陽電池用保護ガラス。
  5. 前記酸化物層は、金属元素としてマンガンを含む、請求項1または2に記載の太陽電池用保護ガラス。
  6. 前記酸化物層は、前記金属元素と前記シリコンの合算濃度が20原子%以上、70原子%以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池用保護ガラス。
  7. 前記酸化物層は、原子%で、前記金属元素の濃度が前記シリコンの濃度に対して等量以上、10倍以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池用保護ガラス。
  8. 前記酸化物層は、波長が587nmの入射光に対する屈折率が1.5以上、2.3以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の太陽電池用保護ガラス。
  9. 前記酸化物層は、その厚さが5nm以上、200nm以下である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の太陽電池用保護ガラス。
  10. ガラス表面の片面または両面において金属元素およびシリコンを含有する酸化物層を形成する工程を含み、酸化物の屈折率が入射光波長587nmにおいて1.5以上、2.3以下であり、酸化物の厚さが5nm以上、200nm以下である、太陽電池用保護ガラスの製造方法。
  11. 前記酸化物層を形成する工程は、前記ガラス表面に金属元素およびシリコンを含有する薄膜を形成する第一の工程と、酸素を含む雰囲気において200℃以上、500℃以下の温度で焼成する第二の工程を含む、請求項10に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法。
  12. 前記第一の工程は、金属元素およびシリコンを含む溶液を塗布して形成する工程を含む、請求項11に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法。
  13. 前記第一の工程は、金属元素およびシリコンを蒸着して形成する工程を含む、請求項11に記載の太陽電池用保護ガラスの製造方法。
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