以下、本発明の実施の形態の半導体検査装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
図1及び図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは図1及び図2Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テーブル11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニット61の回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すればよいので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱500は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット61により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと第1の搬送ユニット61で保持できるように、第1の搬送ユニット61のアーム612を上下移動できるようになっている。
<ミニエンバイロメント装置>
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間21内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された第1の搬送ユニット61による搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間21内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、第1の搬送ユニット61のウエハ搬送面より下側の位置で第1の搬送ユニット61の下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、第1の搬送ユニット61の周囲を流れ下り、第1の搬送ユニット61により発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナ25は検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ25自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
<主ハウジング>
図1及び図2Aにおいて、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体32及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
<ローダハウジング>
図1、図2A及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけばよい。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ41及び42内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ31内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ41及び42を採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することで、検査の際に得られるウエハの回転位置やX、Y位置を示す信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図2Aで左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダ10に保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハをアームの上に載せ、或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2Aに示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアーム612が再び伸びてアーム612に保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アーム612は更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダ10に保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し、及び、ウエハのステージ装置50への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmや45cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
<ウエハの搬送>
次にカセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(図示せず)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセットc内及びミニエンバイロメント空間21内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM2の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アーム612と、カセットcから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブル11の上下動で行ってもよいし、或いはその両者を行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アーム612は縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アーム612は伸びて、先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、プリアライナ25によってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると第1の搬送ユニット61はアーム612の先端にプリアライナ25からウエハを受け取った後、アーム612を縮ませ、方向M4に向けてアーム612を伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット61周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジング22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ41の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット63のアーム632はワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2Aで上方に移動し、また、Xテーブル53は図2Aで最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アーム632が伸びてウエハを保持したアーム632の先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置50上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置50に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置50からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニット63でウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニット61でカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニット63のウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始し、(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アーム632によりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアーム632によりウエハラック47から抜き出し、プリアライナ25で位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同時処理することもできる。
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図7に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図7に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置50への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
「電子検査装置」
図8は、本発明を適用した電子線検査装置の構成を示した図である。上述においては、異物検査方法の原理的な部分について主に説明した。ここでは、上述の異物検査方法を実行するのに適用される異物検査装置について説明する。従って、上述のすべての異物検査方法は、下記の異物検査装置に適用することができる。
電子線検査装置の検査対象は試料20である。試料20は、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料20の表面上の異物10の存在を検出する。異物10は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物10の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この例では、写像投影式検査装置に本発明が適用される。
写像投影方式の電子線検査装置は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20と、試料を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡110と、レビュー用のSEM120とを備える。検出器70は、本発明では2次光学系60に含まれてよい。また、画像処理装置90は本発明の画像処理部に含まれてよい。
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
1次光学系40は、電子ビームを試料20へ照射する。前述したように、1次光学系40は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、異物10と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物10の上方の位置(検出器70により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。本発明は、このLE1とLE2との差異が望ましくは5〜20〔eV〕であることを見い出した。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
また、写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料20に対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
このように、異物10に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物10からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物10をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
ステージ30は、試料20を載置する手段であり、x−yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられていてもよい。
ステージ30上には試料20があり、試料20の上に異物10がある。1次系光学系40は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕で試料表面21に電子ビームを照射する。異物10がチャージアップされ、1次光学系40の入射電子が異物10に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系60により検出器70に導かれる。このとき、二次放出電子は、試料表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物10で形成される。したがって、異物10の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
例えば、異物10のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く手段である。2次光学系60は、レンズ61、63と、NAアパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、レンズ61、NAアパーチャ62、レンズ63を通過して電子が集められる。電子はアライナ64で整えられて、検出器70に検出される。
NAアパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物10からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物10からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ62が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する手段である。検出器70は、その表面に複数のピクセルを有する。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge Coupled Device)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
ここでは、検出器70にEB−TDIを適用した例について説明する。EB−TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物10の検出が不安定であった。これに対して、EB−TDIを用いると、小さい異物10の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。
図9は、本発明が適用された電子線検査装置を示す。ここでは、全体的なシステム構成の例について説明する。
図9において、異物検査装置は、試料キャリア190と、ミニエンバイロメント180と、ロードロック162と、トランスファーチャンバ161と、メインチャンバ160と、電子線コラム系100と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント180には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ161には、真空中の搬送ロボットが設けられる。常に真空状態のトランスファーチャンバ161にロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
メインチャンバ160には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するステージ30が設けられ、ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料20そのものが設置される。または、試料20は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
メインチャンバ160は、真空制御系150により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ160、トランスファーチャンバ161及びロードロック162は、除振台170上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ160には電子コラム100が設置されている。この電子コラム100は、1次光学系40及び2次光学系60のコラムと、試料20からの2次放出電子またはミラー電子等を検出する検出器70を備えている。検出器70からの信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置90で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ160には、光学顕微鏡110や、SEM式検査装置120が備えられていてもよい。
図10は、同一のメインチャンバ160に、写像光学式検査装置の電子コラム100と、SEM式検査装置120とを設置する場合の構成の一例を示している。図10に示すように、写像光学式検査装置と、SEM式検査装置120が同一のチャンバ160に設置されていると、大変有利である。同一のステージ30に試料20が搭載されており、試料20に対して、写像方式とSEM方式の両方での観察又は検査が可能となる。この構成の使用方法と利点は、以下の通りである。
まず、試料20が同一のステージ30に搭載されているので、試料20が写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まる。したがって、異物の検出箇所等を特定するときに、2つの検査装置が同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。
上記構成が適用されなかったとする。例えば、写像式光学検査装置とSEM式検査装置120が別々の装置として分離して構成される。そして、分離された別々の装置間で、試料20が移動される。この場合、別々のステージ30に試料20の設置を行う必要があるので、2つの装置が試料20のアライメントを別個に行う必要がある。また、試料20のアライメントが別々に行われる場合、同一位置の特定誤差は、5〜10〔μm〕となってしまう。特に、パターンのない試料20の場合には、位置基準が特定できないので、その誤差は更に大きくなる。
一方、本実施の形態では、図10に示すように、2種類の検査において、同一のチャンバ160のステージ30に試料20が設置される。写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間でステージ30が移動した場合でも、高精度で同一位置を特定可能である。よって、パターンのない試料20の場合でも、高精度で位置の特定が可能となる。例えば、1〔μm〕以下の精度での位置の特定が可能である。
このような高精度の特定は、以下の場合に大変有利である。まず、パターンの無い試料20の異物検査が写像方式で行われる。それから、検出した異物10の特定及び詳細観察(レビュー)が、SEM式検査装置120で行われる。正確な位置の特定ができるので、異物10の存在の有無(無ければ疑似検出)が判断できるだけでなく、異物10のサイズや形状の詳細観察を高速に行うことが可能となる。
前述したように、異物検出用の電子コラム100と、レビュー用のSEM式検査装置120が別々に設けられると、異物10の特定に多くの時間を費やしてしまう。また、パターンのない試料の場合は、その困難度合いが高まる。このような問題が本実施の形態により解決される。
以上に説明したように、本実施の形態では、写像光学方式による異物10のアパーチャ結像条件を用いて、超微小な異物10が高感度で検査される。さらに、写像光学方式の電子コラム100とSEM式検査装置120が同一チャンバ160に搭載される。これにより、特に、30〔nm〕以下の超微小な異物10の検査と、異物10の判定及び分類を、大変効率良く、高速に行うことができる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
次に、写像投影型検査装置とSEMの両方を用いる検査の別の例について説明する。
上述では、写像投影型検査装置が異物を検出し、SEMがレビュー検査を行う。しかし、本発明はこれに限定されない。2つの検査装置が別の検査方法に適用されてよい。それぞれの検査装置の特徴を組み合わせることにより、効果的な検査が可能となる。別の検査方法は、例えば、以下の通りである。
この検査方法では、写像投影型検査装置とSEMが、異なる領域の検査を行う。更に、写像投影型検査装置に「セルtoセル(cell to cell)」検査が適用され、SEMに「ダイtoダイ(die to die)」検査が適用され、全体として効率よく高精度の検査を実現される。
より詳細には、写像投影型検査装置が、ダイの中で繰返しパターンが多い領域に対して、「セルtoセル」の検査を行う。そして、SEMが、繰返しパターンが少ない領域に対して、「ダイtoダイ」の検査を行う。それら両方の検査結果が合成されて、1つの検査結果が得られる。「ダイtoダイ」は、順次得られる2つのダイの画像を比較する検査である。「セルtoセル」は、順次得られる2つのセルの画像を比較する検査であり、セルは、ダイの中の一部である。
上記の検査方法は、繰返しパターン部分では、写像投影方式を用いて高速な検査を実行し、一方、繰返しパターンが少ない領域では、高精度で疑似が少ないSEMで検査を実行する。SEMは高速な検査に向かない。しかし、繰返しパターンが少ない領域は比較的狭いので、SEMの検査時間が長くなりすぎずにすむ。したがって、全体の検査時間を少なく抑えられる。こうして、この検査方法は、2つの検査方式のメリットを最大に活かし、高精度な検査を短い検査時間で行うことができる。
ここで、図14を参照して、試料20の搬送機構について説明する。
ウエハ、マスクなどの試料20は、ロードポートより、ミニエンバイロメント180中に搬送され、その中でアライメント作業がおこなわれる。試料20は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック162に搬送される。ロードロック162は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ161に配置された真空中の搬送ロボットにより、ロードロック162からメインチャンバ160に、試料20が搬送される。そして、ステージ30上の静電チャック機構上に試料20が設置される。
ウエハ、マスクなどの試料20は、ロードポートより、ミニエンバイロメント180中に搬送され、その中でアライメント作業がおこなわれる。試料20は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック162に搬送される。ロードロック162は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ161に配置された真空中の搬送ロボットにより、ロードロック162からメインチャンバ160に、試料20が搬送される。そして、ステージ30上の静電チャック機構上に試料20が設置される。
図11は、メインチャンバ160内と、メインチャンバ160の上部に設置された電子コラム系100を示している。図8と同様の構成要素については、図8と同様の参照符号を付し、その説明を省略する。
試料20は、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ30に設置される。ステージ30と光学顕微鏡110により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料20の異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料20上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系60aにおいてフォーカス制御が行われる。試料20の2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度の良い安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
ここで、2次光学系60aが、NAアパーチャ62、検出器70に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ62の位置にEB−CCDが設置できるように構成れている。このような構成は大変有利であり、効率的である。図11では、NAアパーチャ62とEB−CCD65が、開口67、68を有する一体の保持部材66に設置されている。そして、NAアパーチャ62の電流吸収とEB−CCD65の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系60aが備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ62、EB−CCD65は、真空中で動作するX、Yステージ66に設置されている。したがって、NAアパーチャ62及びEB−CCD65についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ66には開口67、68が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ62又はEB−CCD65を通過可能である。
このような構成の2次光学系60aの動作を説明する。まず、EB−CCD65が、2次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ61、63及びアライナ64の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ62の孔中心を配置するように、NAアパーチャ62の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ62の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャの高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
また、異物10の検査では、異物10からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ62の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、試料表面から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ62の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料表面での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ62に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ62の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ62の中心位置を配置することが、大変有利であり、重要である。
このような適切な位置へのNAアパーチャ62の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ62が、電子コラム100の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ62を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ62の中心が設置される。
信号強度の計測には、EB−CCD65が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器70に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
あるいは、NAアパーチャ62の位置と検出器70の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、アパーチャと検出器の間にあるレンズ63の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ62の位置のビームの像を、検出器70の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ62の位置におけるビームプロファイルを、検出器70を用いて観察することができる。
また、NAアパーチャ62のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10〜100〔%〕大きいサイズである。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物10のコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物10の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物10のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
上述のように、ミラー電子は、NAサイズと形状に非常に敏感である。よって、NAサイズと形状と適切に選択することは、高いS/Nを得るために大変重要である。以下、そのような適切なNAサイズと形状の選択を行うための構成の例を説明する。ここでは、NAアパーチャ62のアパーチャ(孔)の形状についても説明する。
ここで、NAアパーチャ62は、孔(開口)を有する部材(部品)である。一般に、部材がアパーチャと呼ばれることもあり、孔(開口)がアパーチャと呼ばれることもある。以下のアパーチャ関連の説明において、部材(部品)とその孔を区別するため、部材をNAアパーチャと呼ぶ。そして、部材の孔を、アパーチャという。アパーチャ形状は、一般に、孔の形状を意味する。
つづいて、図12および図13を用いて、NA結像条件でのフォーカス調整について説明する。図12は、ミラー電子と二次放出電子のアパーチャでのクロスオーバーポイントの状態を横から見た図である。図12では、ミラー電子の軌道が破線で示されており、二次放出電子の軌道が実線で示されている。
図12に示すように、ミラー電子と二次放出電子では、ベストフォーカス位置に差(フォーカス値差:例えば、約0.5mm)がある。そして、フォーカスを変えていくと、二次放出電子の領域は、フォーカスがプラスになるに従って大きくなるのに対して、ミラー電子の領域は、あるフォーカス点て縦に長く横に細くなり、そのフォーカス点を境にして、フォーカスをプラス方向に変更すると、縦方向はつぶれて横方向は延びる、また、フォーカスをマイナス方向に変更すると、ピークが二つに分裂するように変化していく。
図13には、フォーカスを変更して異物を撮像した場合の見え方が示されている。図13(a)に示すように、フォーカスをマイナス方向にした場合、異物は黒く見える。一方、フォーカスをプラス方向にした場合、異物は白く見える。図13(b)では、試料表面からのミラー電子が破線で示されており、異物(欠陥)からのミラー電子が実線で示されている。図13(b)に示すように、フォーカスをマイナスからプラスに変更すると、アパーチャを透過する異物(欠陥)からのミラー電子の量が増える。
本実施の形態では、図14に示すように、一次ビームをE×Bを経由して照射している。すなわち、一次ビームはY軸方向の斜め上方からE×Bに入射している。この場合、X軸方向の入射角の調整は、一次系アライナのX軸方向の電極電圧を調整することにより行うことができる。また、Y軸方向の入射角の調整は、E×Bを用いて調整することができる。
<1次光学系における光電子発生装置の変形例>
1次光学系における光電子発生装置の他の例を示す。図15及び図16は、1次系の途中位置から、コラム内に設置されたミラーにより、光電子面に光またはレーザが導かれるときの例である。
図15は、1次光学系2000の基準電圧が高電圧、例えば、40kV時の例である。このとき基準電圧を形成するため高電圧が印加される管10071にV2=40kVの電圧が印加されている。管10071内は同一電圧空間である。よってこの例では、中心部に光電子の通る穴の開いたミラー、例えば三角ミラー2170を用いてDUV光または、UVレーザを、図示されない管100071に設けられた穴を通して導入し、この三角ミラー2170によって反射させて光電子面2121に照射する。そして、照射された面から光電子が発生し、この光電子がEXレンズ2120およびNA2125、そして、下流のアライナを通過して、試料面に照射される。このとき、発生した光電子が1次系の軌道を形成するために、光電子面2121には規定値の電圧が印加されている。LE=RTD電圧−V1で決まる。
一方、図16は、図15で示した例と同様に、三角ミラー2070によって光電子を発生させる光又はレーザを光電子面に照射するものであり、1次光学系2000の基準電圧がGNDの例である。このとき、例えば、V2、V4とV5がGNDで、その付近が基準電圧空間とする。そして、図15と同様のミラーを設置して、光・レーザを導入することが可能となる。このとき、発生する光電子の量は、光またはレーザの照射強度にて決まるので、照射する強度の制御が行われる。これは前述した強度の制御方法が用いられる。この時、ミラーはミラー表面と構造体全体が導体または、導体でコートされている。そして、その電位は基準電位と同じ電位になっている。空間電位を乱さないように同電位となっているのである。また、1次ビームがミラーの影響を受けずに通過できるように、ミラーの光軸中心部には穴が開いており、その穴を1次ビームが通過する。この穴内部においても基準電圧と同電位となるように、導体材料または導体がコートされ基準電圧部に接続されている。
また、光電子発生の形状については2つの方法を示す。図16を用いて説明する。1つは、コラム内にあるミラーの入射前に、ビーム系状を規定するFAアパーチャ2010を用いる。フィールドアパーチャ(FA)2010の形状のビーム形成を行い、そのビームを光電面に照射して、その形状の光電子を発生させる。このとき、フィールドアパーチャ(FA)2010の投影サイズは、フィールドアパーチャ(FA)2010上流にあるレンズ位置により制御される。
<1次光学系:ホモジナイザーによる均一化>
(実施の形態)
本実施の形態の検査装置の構成を、図面を参照して説明する。ここでは特に、一次光学系を中心に説明する。図17は、本実施の形態の検査装置の一次光学系を示す説明図である。図17に示すように、検査装置の一次光学系は、ガウス分布のレーザー光を発生するレーザー光源1701と、レーザー光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面1702を備えている。レーザー光源1701と光電面1702との間には、ガウス分布のレーザー光を均一分布のレーザー光に変換(強度分布変換)するホモジナイザー1703が設けられている。したがって、この場合、光電面1702には均一分布のレーザー光が照射される。
ホモジナイザー1703は、ガウス分布のビームが入射されると、均一分布のビームに変換(強度分布変換)して出射する機能を有する光学素子である。本実施の形態のホモジナイザー1703としては、公知のものを利用することができる。例えば、非球面レンズで構成されたホモジナイザー1703や、回折格子素子で構成されたホモジナイザー1703が用いられる。非球面レンズのホモジナイザー1703の場合、単一の非球面レンズを用いても良く、複数の非球面レンズを組み合わせて用いてもよい。
また、図17に示すように、一次光学系は、ホモジナイザー1703により均一分布に変換されたレーザー光を分割するビームスプリッター1704と、ビームスプリッター1704により分割されたレーザー光の強度分布を測定するビームプロファイラ1705を備えている。ビームプロファイラ1705は、例えば、CCD式のビームプロファイラを使用することができる。
さらに、一次光学系は、レーザー光の照射をオン/オフ制御するためのメカシャッター1706と、レーザー光の透過率(強度)を調整するバリアブルアッテネータ1707と、レーザー光源1701から発生したレーザー光のビーム径を調整するビーム径調整レンズ1708と、レーザー光の焦点距離を調整する非点補正レンズ1709を備えている。
この場合、光電面1702は、真空チャンバ1710の内部に配置され、レーザー光源1701およびホモジナイザー1703は、真空チャンバ1710の外部に配置されている。図17に示すように、レーザー光源1701から出射されたレーザー光は、ミラー1711で反射された後、メカシャッター1706を通って、バリアブルアッテネータ1707で強度が調整される。その後、ビーム径調整レンズ1708でビーム径が調整され、非点補正レンズ1709で焦点距離が調整された後、ホモジナイザー1703に入射される。
そして、ホモジナイザー1703でガウス分布から均一分布に強度分布が変換されたレーザー光は、ミラー1712で反射され、ビームスプリッター1704で2つに分割される。ビームスプリッター1704で分割された一方のレーザー光は、ビームプロファイラ1705で強度分布(ビームプロファイル)が測定される。もう一方のレーザー光は、ミラー1713で反射され、ビューポート1714から真空チャンバ1710内に導かれ、三角ミラー1715で反射された後、光電面1702に照射される。
このような本実施の形態の検査装置によれば、レーザー光源1701から発生したガウス分布のレーザー光が、ホモジナイザー1703によって均一分布のレーザー光に変換(強度分布変換)されて、光電面1702に照射される。均一分布のレーザー光が光電面1702に照射されると、光電面1702から均一分布の一次ビームが発生する。均一分布の一次ビームを用いることにより、試料の検査領域全面で均一な検査を行うことができる。
また、本実施の形態では、ホモジナイザー1703により強度分布変換されたレーザー光が、ビームスプリッター1704で分割されて、ビームプロファイラ1705で強度分布が測定される。ビームプロファイラ1705で強度分布を測定することにより、ホモジナイザー1703によって強度分布変換されたレーザー光が均一分布であるか否かを確認することができる。これにより、光電面1702に均一分布のレーザー光が照射されているか否かを確認することができる。
また、本実施の形態では、レーザー光源1701とホモジナイザー1703が真空チャンバ1710外に配置されるので、レーザー光源1701から発生したレーザー光に対するホモジナイザー1703の位置の調整(微調整)を容易に行うことができる。
また、本実施の形態では、レーザー光源1701から発生したレーザー光のビーム径と焦点距離を適切に調整することができ、ホモジナイザー1703によって均一分布のレーザー光を得ることができる。
<1次光学系:デフォーカスによる均一化、回転光電面>
(背景)
近年、検査装置の一次光学系として、レーザー光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面を用いた一次光学系の開発が進められている。従来、レーザー光を発生するレーザー光源としては、ガウス分布のレーザー光を発生するものが一般的である。
(課題)
しかしながら、ガウス分布のレーザー光を光電面に照射すると、光電面からもガウス分布の一次ビームが発生する。ガウス分布の一次ビームを用いると、試料の検査領域(ビーム照射領域)の中心部が明るく端部が暗くなり、試料の検査領域で均一な検査を行うことが困難であるという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、試料の検査領域でより均一な検査を行うとのできる検査装置を提供することを目的とする。
(解決手段)
本発明の検査装置は、試料を検査する検査装置であって、前記試料を載置するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、を備え、前記一次光学系は、レーザー光を発生するレーザー光源と、前記レーザー光が照射されることにより前記一次ビームを発生する光電面と、フォーカス位置からずらされたデフォーカス位置で前記一次ビームが前記試料に照射されるように、前記一次ビームの焦点位置を調整する焦点位置調整手段と、を備えている。
この構成により、レーザー光源からのレーザー光が光電面に照射されると光電面から一次ビームが発生し、光電面から発生した一次ビームがフォーカス位置からずらされたデフォーカス位置で試料に照射される。一次ビームをデフォーカス位置で試料に照射すると、一次ビームの均一性が向上する。均一分布の一次ビームを用いることにより、試料の検査領域でより均一な検査を行うことができる。
また、本発明の検査装置では、前記デフォーカス位置で、前記一次ビームの透過率が所定の基準透過率より高く、かつ、前記一次ビームの均一率が所定の基準均一率より低くてもよい。
この構成により、一次ビームをデフォーカス位置で試料に照射すると、一次ビームの透過率が所定の基準透過率(例えば8.0%)より高く、かつ、一次ビームの均一率が所定の基準均一率(例えば2.5%)より低くなる。これにより、一次ビームの均一性が向上し、試料の検査領域でより均一な検査を行うことができる。ここで、「均一率」は、一次ビームの強度のばらつき度合いを示す値であり、均一率の値が小さいほど均一性が高い。
また、本発明の検査装置では、前記一次光学系は、前記光電面上において前記レーザー光の照射位置が変わるように、前記光電面に沿った平面上で前記光電面を回転させる回転機構を備えてもよい。
この構成により、光電面に沿った平面上で光電面が回転して、光電面上においてレーザー光の照射位置が変わる。これにより、光電面上においてレーザー光が同じ位置に照射され続けるのを避けることができ、一次ビームのエミッションが安定化するとともに、光電面の寿命を延ばすことができる。
また、本発明の検査装置では、前記回転機構は、前記レーザー光の照射位置が前記光電面の全面にわたってらせん状の軌跡を描くように、前記光電面に沿った平面上で前記光電面をらせん状に回転させてもよい。
この構成により、光電面に沿った平面上で光電面がらせん状に回転し、光電面の全面にわたってらせん状の軌跡を描くように、レーザー光の照射位置が変わる。これにより、光電面上においてレーザー光が同じ位置に照射され続けるのを避けることができ、一次ビームのエミッションが安定化するとともに、光電面の寿命を延ばすことができる。
(実施の形態)
本実施の形態の検査装置の構成を、図面を参照して説明する。ここでは特に、一次光学系を中心に説明する。図18は、本実施の形態の検査装置の一次光学系を示す説明図である。図18に示すように、検査装置の一次光学系は、ガウス分布のレーザー光を発生するレーザー光源1801と、レーザー光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面1802を備えている。
本実施の形態で、光電面1802は、光電面1802に沿った平面上で回転可能とされている。この場合、一次光学系は、光電面1802に沿った平面上で光電面1802を回転させる回転機構1803と、光電面1802の回転を制御する回転制御部1804を備えている。なお、光電面1802の回転のさせ方については、図面を参照しながら後で詳しく説明する。
図18に示すように、一次光学系は、ガンレンズ(GL)1805と、E×Bフィルタ1806を備えている。光電面1802から発生した一次ビームは、フォーカス位置からずらされた位置で一次ビームが試料に照射されるように、ガンレンズ1805によって焦点位置が調整される。ガンレンズ1805の出力(磁場強度)は、GL制御部1807により制御されている。一次ビームの焦点位置の調整は、GL制御部1807でガンレンズ1805の出力を制御することによって行うことができる。また、E×Bフィルタ1806は、磁界と電界によるローレンツ力により、一次ビームの進む向きを変える機能を備えている。一次ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ1806に入射して、鉛直下方向に偏向され、ステージ1808上の試料1809に向けられる。
図19は、ガンレンズ1805の出力(GL出力)に対する一次ビームの透過率・均一率の説明図である。本実施の形態では、一次ビームの透過率が所定の基準透過率(例えば8.0%)より高く、かつ、一次ビームの均一率が所定の基準均一率(例えば2.5%)より低くなるように、一次ビームの焦点位置が調整される。このように調整された焦点位置を、本実施の形態では「デフォーカス位置」という。
図19の例では、GL出力が830AT、840ATのときが「デフォーカス位置」に該当する。なお、GL出力が850AT以上の場合には、一次ビームの透過率は向上するものの均一率が高くなってしまう(均一性が低くなってしまう)。一方、GL出力が820以下の場合には、一次ビームの均一率は低くなる(均一性は高くなる)ものの透過率が低下してしまう。
図20は、本実施の形態における光電面の回転の説明図である。図20に示すように、本実施の形態では、光電面2001が平面視で円形であり、レーザー光の照射領域2002も平面視で円形(光電面より小径の円形)である。回転機構(図20では図示せず)は、光電面2001に沿った平面上で光電面2001をらせん状に回転させる。これにより、レーザー光の照射位置2002は、光電面2001の全面にわたってらせん状の軌跡を描くようになる。回転機構は、例えば1回転/10時間の回転速度で、光電面2001を回転させる。
このような本実施の形態の検査装置によれば、レーザー光源1801からのレーザー光が光電面1802に照射されると光電面1802から一次ビームが発生し、光電面1802から発生した一次ビームがフォーカス位置からずらされたデフォーカス位置で試料に照射される。一次ビームをデフォーカス位置で試料に照射すると、一次ビームの均一性が向上する。均一分布の一次ビームを用いることにより、試料の検査領域でより均一な検査を行うことができる。
この場合、一次ビームをデフォーカス位置で試料に照射すると、一次ビームの透過率が所定の基準透過率(例えば8.0%)より高く、かつ、一次ビームの均一率が所定の基準均一率(例えば2.5%)より低くなる。これにより、一次ビームの均一性が向上し、試料の検査領域でより均一な検査を行うことができる。なお、「均一率」は、一次ビームの強度のばらつき度合いを示す値であり、均一率の値が小さいほど均一性が高い。
また、本実施の形態では、光電面1802に沿った平面上で光電面1802が回転して、光電面上においてレーザー光の照射位置が変わる。これにより、光電面上においてレーザー光が同じ位置に照射され続けるのを避けることができ、一次ビームのエミッションが安定化するとともに、光電面1802の寿命を延ばすことができる。
この場合、光電面1802に沿った平面上で光電面1802がらせん状に回転し、光電面1802の全面にわたってらせん状の軌跡を描くように、レーザー光の照射位置が変わる。これにより、光電面上においてレーザー光が同じ位置に照射され続けるのを避けることができ、一次ビームのエミッションが安定化するとともに、光電面1802の寿命を延ばすことができる。
<SEM:偏向補正>
(背景)
従来、写像投影式の検査装置が知られている。写像投影式の検査装置では、ステージ上の試料を検査することができる。検査の結果、試料に異物などの欠陥がみつかると、検査装置のステージ上から走査型電子顕微鏡(SEM)のステージに試料を移し、走査型電子顕微鏡を用いて試料の欠陥(異物)の画像を撮影する。走査型電子顕微鏡では、ステップアンドリピート方式が採用される。すなわち、ステージを目標位置まで移動させた後、ステージをブレーキで固定し(ナノ単位のステージ揺動も生じないように固定して)、試料表面を電子ビームで走査して試料の画像を撮影する。
(課題)
しかしながら、従来の走査型電子顕微鏡においては、試料の画像を撮影する都度、ステージを固定する必要があるため、試料の検査後から画像取得までに長時間を要するという問題があった。試料の検査後から画像取得までに長時間を要すると、試料の欠陥が変質するおそれがあり、画像による欠損確認の再現性が低下するという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、ステージを移動させながら試料の画像を撮影することができ、試料の検査後から短時間で試料の画像を取得することのできる検査装置を提供することを目的とする。
(解決手段)
本発明の検査装置は、試料を載置するステージと、前記ステージ上の前記試料を検査する写像投影式検査装置と、前記ステージを移動させながら前記試料の画像を撮影する走査型電子顕微鏡と、を備えた検査装置であって、前記写像投影式検査装置は、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、を備え、前記走査型電子顕微鏡は、前記ステージの移動を制御するステージ移動制御部と、前記ステージを移動させているときに、前記ステージの現在位置の目標位置からのずれを位置変動として検出する位置変動検出部と、前記画像を撮影するための電子ビームを前記位置変動を相殺する方向に偏向させて、前記ステージの位置のずれを補正する偏向制御を行う偏向制御部と、を備えている。
この構成により、写像投影式検査装置でステージ上の試料を検査することができるとともに、走査型電子顕微鏡で試料の画像を撮影することができる。この場合、ステージを移動させながら試料の画像を撮影することができるので、試料の検査後から短時間で試料の画像を取得することができる。したがって、試料の欠陥の変質を防ぐことができるとともに、撮影した画像による欠損確認の再現性が向上する。
しかも、単に、ステージを移動させながら試料の画像を撮影すると、ステージの位置変動(ステージの目標位置からのずれ)の影響によって、画像の分解能が低下してしまうが、本発明では、位置変動を相殺する方向に電子ビームを偏向させて、ステージの位置のずれを補正することができ、高分解能の画像を取得することができる。
本発明の制御方法は、試料を載置するステージと、前記ステージ上の前記試料を検査する写像投影式検査装置と、前記ステージを移動させながら前記試料の画像を撮影する走査型電子顕微鏡と、を備えた検査装置の制御方法であって、前記写像投影式検査装置は、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、を備え、前記制御方法は、前記ステージを移動させているときに、前記ステージの現在位置の目標位置からのずれを位置変動として検出し、前記画像を撮影するための電子ビームを前記位置変動を相殺する方向に偏向させて、前記ステージの位置のずれを補正する偏向制御を行う。
この方法によっても、上記と同様に、写像投影式検査装置でステージ上の試料を検査することができるとともに、走査型電子顕微鏡で試料の画像を撮影することができる。この場合、ステージを移動させながら試料の画像を撮影することができるので、試料の検査後から短時間で試料の画像を取得することができる。したがって、試料の欠陥の変質を防ぐことができるとともに、撮影した画像による欠損確認の再現性が向上する。
また、上記と同様に、単に、ステージを移動させながら試料の画像を撮影すると、ステージの位置変動(ステージの目標位置からのずれ)の影響によって、画像の分解能が低下してしまうが、本発明では、位置変動を相殺する方向に電子ビームを偏向させて、ステージの位置のずれを補正することができ、高分解能の画像を取得することができる。
(実施の形態)
本実施の形態の検査装置の構成を、図面を参照して説明する。図21は、本実施の形態の検査装置の説明図である。図21に示すように、本実施の形態の検査装置は、試料2101を載置するステージ2102と、ステージ上の試料2101を検査する写像投影式検査装置2103と、ステージ2102を移動させながら試料2101の画像を撮影する走査型電子顕微鏡(SEM)2104を備えている。この場合、写像投影式検査装置2104は、ステージ2102をXY方向に移動させながら試料2101の画像を撮影することができる。
図22は、検査装置に備えられる走査型電子顕微鏡の説明図である。図22に示すように、走査型電子顕微鏡は、電子ビームを発生する電子ビーム源2201と、試料表面を走査するように電子ビームを偏向する偏向電極2202と、試料2203が載置されるステージ2204の移動を制御するステージ移動制御部2205と、ステージ2204を移動させているときの位置変動を検出する位置変動検出部2206と、位置変動を相殺する方向に電子ビームを偏向させる偏向制御を行う偏向制御部2207を備えている。
位置変動検出部2206は、ステージ2204の現在位置を検出する位置センサ機能を備えている。また、位置変動検出部2206には、ステージ移動制御部2205からステージ2204を移動させるときの目標位置が入力される。位置変動検出部2206は、ステージ2204の現在位置の目標位置からのずれを位置変動として検出する。偏向制御部2207は、位置変動を相殺する方向に電子ビームを偏向させて、ステージ2204の位置のずれを補正する。
このような本実施の形態の検査装置によれば、写像投影式検査装置2103でステージ上の試料2101を検査することができるとともに、写像投影式検査装置2104で試料2101の画像を撮影することができる。この場合、ステージ2102を移動させながら試料2101の画像を撮影することができるので、試料2101の検査後から短時間で試料2101の画像を取得することができる。したがって、試料2101の欠陥の変質を防ぐことができるとともに、撮影した画像による欠損確認の再現性が向上する。
しかも、単に、ステージ2102を移動させながら試料2101の画像を撮影すると、ステージ2102の位置変動(ステージ2102の目標位置からのずれ)の影響によって、画像の分解能が低下してしまうが、本発明では、位置変動を相殺する方向に電子ビームを偏向させて、ステージ2102の位置のずれを補正することができ、高分解能の画像を取得することができる。
<複数極子電極によるクロスオーバー位置調整>
(背景)
ところで、近年、検査装置の一次光学系として、レーザー光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面を用いた一次光学系の開発が進められている。
(課題)
しかしながら、光電面を一次光学系に用いた検査装置では、シミュレーションで決定された光学条件(カメラサイズに適した光学条件)を用いると、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)がずれてしまうことがあるという問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、一次光学系の複数極子電極の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置を調整することのできる検査装置を提供することを目的とする。
(解決手段)
本発明の検査装置は、試料を検査する検査装置であって、前記試料を載置するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、を備え、前記一次光学系は、レーザー光が照射されることにより前記一次ビームを発生する光電面と、前記一次ビームの照射領域の縦横比を調整するための複数極子電極と、を備え、前記二次光学系は、前記二次ビームの光路上に配置されるアパーチャと、前記アパーチャを通過した前記二次ビームを前記二次元センサの像面に結像させるレンズと、を備え、前記一次光学系の前記複数極子電極の電圧を調整することにより、前記二次光学系のアパーチャ位置における前記二次ビームのクロスオーバー位置が調整される。
この構成により、光電面で一次ビームを発生させる一次光学系において複数極子電極(例えば4極子電極)の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)を調整することができる。これにより、例えばシミュレーションで決定された光学条件を用いた結果、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)がずれてしまう場合であっても、一次光学系の複数極子電極の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置を調整することができる。
また、本発明の検査装置では、前記二次ビームは、前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生したミラー電子であり、前記一次光学系の前記複数極子電極の電圧を調整することにより、前記二次光学系のアパーチャ位置における前記ミラー電子のクロスオーバー位置が調整されてもよい。
この構成により、一次ビームを試料に照射することによりミラー電子を発生させ、ミラー電子を用いて試料を検査する。その場合に、シミュレーションで決定された光学条件を用いた結果、アパーチャ位置におけるミラー電子のクロスオーバー位置(二次光学系のクロスオーバー位置)がずれても、一次光学系の複数極子電極の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置を調整することができる。
また、本発明の検査装置では、前記一次光学系は、前記一次ビームの照射領域の大きさを調整する静電レンズを備え、前記クロスオーバー位置の調整のために前記複数極子電極の電圧が調整されて前記一次ビームの照射領域のサイズが変更されたときに、前記静電レンズにより前記一次ビームの照射領域のサイズが調整されてもよい。
この構成により、クロスオーバー位置の調整のために複数極子電極の電圧が調整されて一次ビームの照射領域のサイズが変わって目標サイズでなくなってしまう場合であっても、静電レンズにより一次ビームの照射領域のサイズを調整して目標サイズにすることができる。
(実施の形態)
本実施の形態の検査装置の構成を、図面を参照して説明する。図23は、本実施の形態における検査装置の説明図である。図23に示すように、検査装置は、一次光学系の鏡筒2301と、二次光学系の鏡筒2302を備えている。一次光学系の鏡筒2301には、レーザー光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面2303と、一次ビームの照射領域の大きさを調整する静電レンズ2304と、一次ビームの光路上に配置される一次系アパーチャ2305およびアライナ電極2306と、一次ビームの照射領域の縦横比を調整するための4極子電極2307と、一次ビームの照射位置をXY方向に変更するための電極2308が備えられている。また、二次光学系の鏡筒2302には、二次元センサとしてのTDIカメラ2309と、二次ビームの光路上に配置される二次系アパーチャ2310と、二次系アパーチャ2310を通過した二次ビームをTDIカメラ2309の像面に結像させるレンズ2311が備えられている。なお、説明の便宜上、図23では、試料を載置したステージは図示が省略されている。
また、ここでは、複数極子電極として4極子電極2307を用いる例について説明するが、そのほかにも、2極子電極や8極子電極や12極子電極などを用いることができる。すなわち、複数極子電極としては、2n極子電極(n=1,2,4,・・・)を用いることができる。また、複数極子電極として、N極子電極(N=12以上の2n倍)を用いることができる。
ここで、図24を参照して、二次光学系のクロスオーバー位置のずれ(シフト)について説明する。図24に示すように、光電面2303を一次光学系に用いた検査装置では、シミュレーションで決定された光学条件(カメラサイズに適した光学条件)を用いると、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)がずれてしまうことがある。図24の例では、ステージ2401上の試料2402から発生した二次ビームが、対物レンズ2403と中間レンズ2404で屈折された後、二次系アパーチャ2405を通過し、投影レンズ2406で屈折されてTDIカメラ2407の像面に結像しているが、この場合に、二次光学系のクロスオーバー位置がTDIカメラ側(図24における上側)にシフトしている。
本実施の形態の検査装置では、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のアパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置が調整される。この場合、二次ビームは、一次ビームを試料に照射することにより試料から発生したミラー電子である。したがって、本実施の形態では、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のアパーチャ位置におけるミラー電子のクロスオーバー位置が調整される。
ここで、二次荷電粒子やミラー電子などの用語について説明しておく。「二次荷電粒子」には、2次放出電子、ミラー電子、光電子の一部または混在したものが含まれる。電磁波を照射したときは、試料表面からは光電子が発生する。試料表面に電子線などの荷電粒子を照射したときは、試料表面から「二次放出電子」が発生する、または、「ミラー電子」が形成される。試料表面に電子線が衝突して発生するのが「二次放出電子」である。つまり、「二次放出電子」とは、2次電子、反射電子、後方散乱電子の一部または混在したものを示す。また、照射した電子線が試料表面に衝突しないで表面近傍にて反射したものを「ミラー電子」という。
図25は、本実施の形態における4極子電極2307の電圧の変化に対するミラー電子のクロスオーバー位置(二次系アパーチャ2310との距離)の変化の説明図である。図25に示すように、4極子電極2307に印加する電圧を変化させると、ミラー電子のクロスオーバー位置(二次系アパーチャ2310との距離)が変化する。したがって、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のミラー電子のクロスオーバー位置が調整可能である。
また、上記のように、クロスオーバー位置の調整のために4極子電極2307の電圧を調整すると、それにともなって一次ビームの照射領域のサイズが変更されてしまう。その場合、静電レンズ2304の電圧を調整することにより、一次ビームの照射領域のサイズを調整することができる。
さらに、本実施の形態では、ミラー電子のクロスオーバー位置の微調整を行うことができる。ミラー電子のクロスオーバー位置の微調整は、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のミラー電子のクロスオーバー位置を調整(粗調整)した後に行われる。なお、ミラー電子のクロスオーバー位置の微調整は、必ずしも必要とされるものではない。
図26〜図28は、ミラー電子のクロスオーバー位置の微調整の一例を示す図である。図26の例では、対物レンズの光学条件を調整することにより、ミラー電子のクロスオーバー位置を二次系アパーチャ2601の位置にあわせることができる。また、図27(a)(b)の例では、二次系アパーチャ2701を光軸方向に移動させることにより、ミラー電子のクロスオーバー位置を二次系アパーチャ2701の位置にあわせることができる。また、図28の例では、対物レンズのフォーカス条件を調整することにより、ミラー電子のクロスオーバー位置を二次系アパーチャ2801の位置にあわせることができる。
このような本実施の形態の検査装置によれば、光電面2303で一次ビームを発生させる一次光学系において4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)を調整することができる。これにより、例えばシミュレーションで決定された光学条件を用いた結果、二次光学系のクロスオーバー位置(アパーチャ位置における二次ビームのクロスオーバー位置)がずれてしまう場合であっても、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置を調整することができる。
また、本実施の形態では、一次ビームを試料に照射することによりミラー電子を発生させ、ミラー電子を用いて試料を検査する。その場合に、シミュレーションで決定された光学条件を用いた結果、アパーチャ位置におけるミラー電子のクロスオーバー位置(二次光学系のクロスオーバー位置)がずれても、一次光学系の4極子電極2307の電圧を調整することにより、二次光学系のクロスオーバー位置を調整することができる。
また、本実施の形態では、クロスオーバー位置の調整のために4極子電極2307の電圧が調整されて一次ビームの照射領域のサイズが変わって目標サイズでなくなってしまう場合であっても、静電レンズ2304により一次ビームの照射領域のサイズを調整して目標サイズにすることができる。
<ソフトウェアによる再検査シミュレーション>
(背景)
試料に生じている欠陥を検査する検査システムにおいて、真の欠陥を確実に検出し、かつ、欠陥でない箇所(疑似欠陥)を検出しないようにするためには、検出閾値等の検査条件を変えながら何度も検査を繰り返し、最適な検査条件を決定する必要がある。
(課題)
しかしながら、検査を繰り返すと、検査条件の最適化に時間がかかるという問題がある。また、検査を繰り返すことで、試料にダメージが蓄積したり、試料が汚染されたりするといった問題も生じる。
そこで、本実施の形態は、試料に与えるダメージや試料の汚染を回避して少ない検査回数で検査条件を決定できる検査システムを提供する。
(解決手段)
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
上記の検査システムにおいて、前記検査装置は、前記二次ビーム像から所定の閾値以上の欠陥を検出して前記欠陥画像を生成し、前記シミュレーション装置は、さらに、前記閾値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力してよい。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な閾値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
(実施の形態)
図29は、本実施の形態の検査システムの構成を示す図である。検査システムは、検査装置100と、シミュレーション装置200とを備えている。検査装置100は、上記の実施の形態の任意の電子線検査装置であってよい。検査装置100は、主ハウジング30と、主ハウジング30の上に設置された電子光学装置70と、主ハウジング30内に設けられたステージ装置50と、電子光学装置70の上に設置された検出器761と、検出器761に接続された画像処理部763とを備えている。
電子光学装置70は、ステージ装置50に保持された試料であるウエハWに面ビームである一次ビームを照射して、それによってウエハWから発生した二次ビームを検出器761に導く。検出器761は、図示しない二次元センサによって二次ビームを捕捉して二次ビーム像の画像を生成し、画像処理部763に出力する。
画像処理部763は、検査処理装置として、検出器761から入力された二次ビーム像に対して、像処理フィルタ(平均値(Mean)フィルタ、ガウシアン(Gaussian)フィルタ、中央値(Median)フィルタ等)を用いて画像処理を施し、シェーディング補正をした上で、セル−セル比較、ダイ−ダイ比較、ダイ−データベース比較等の比較処理によって検査を行う。具体的には、画像処理部763は、比較処理において所定の閾値を超える部分を欠陥として検出して、欠陥画像を生成する。画像処理部763は、欠陥画像とそれを生成するのに用いた未処理画像(二次ビーム像)をシミュレーション装置200に出力する。
画像処理部763は、設定された検査条件パラメータに従って検査を行う。この検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報が含まれる。なお、この検出したくない欠陥の分類情報は、検査後にSEMでの撮像を行って分類した結果として得られる。
シミュレーション装置200は、シミュレーション処理部201と、入力部202と、モニタ203を備えており、例えば入力手段とモニタと演算処理ユニット、メモリ、記憶装置、入出力ポート等を備えた汎用のコンピュータによって構成される。シミュレーション処理部201は、本実施の形態の検査結果レビュープログラムが演算処理ユニットによって実行されることで実現される。この検査結果レビュープログラムは、ネットワークを通じてシミュレーション装置200に提供されてもよく、シミュレーション装置200が記憶媒体に記憶された検索結果レビュープログラムを読み出すことでシミュレーション装置200に提供されてもよい。このようにして提供された検索結果レビュープログラムは、シミュレーション装置200の記憶装置に記憶され、そこから読み出されて実行されることで、シミュレーション処理部201が構成される。
シミュレーション処理部201は、検査装置100から入力した二次ビーム像に対して、検査条件パラメータを変更しながら、再検査シミュレーションを行い、最適な検査条件パラメータを決定する。シミュレーション処理部201が再検査シミュレーションのために偏向する検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報等が含まれる。
図30は、セル−セル比較の場合のセル周期、及びダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値を説明する図である。いま、ウエハWの表面には、図30に示すように、複数のダイD1、D2が形成されており、それぞれのダイは、中央にセル領域Cを有し、かつセル領域の左下に「A」が形成されているとする。また、セル領域Cには、複数の「F」の繰り返しパターン(セル)が形成されているとする。
検査条件パラメータとしてのセル周期とは、検査装置100がセル−セル比較による検査を行う際の主走査方向(図30の例では下向き)の繰り返しパターンの周期pである。画像処理部763におけるセル−セル比較の際にこの周期が正しくなければ、セル−セル比較による検査結果は正しく得られない。そこで、シミュレーション処理部201は、検査装置100から得た未処理画像についてセル周期を変更しながらセル−セル比較をし直して、最適なセル周期を求める。
検査条件としてのエッジ許容値とは、検査装置100がダイ−ダイ比較による検査を行う際に、エッジ部分について欠陥を検出するための閾値である。図30に示すように、ダイ−ダイ比較において、比較対象である「A」のエッジ部分で差分dが生じやすい。よって、エッジ部分について、エッジ以外の部分と同じ閾値を用いて欠陥であるか否かの判断をすると、エッジ部分から疑似欠陥が生じやすくなる。そこで、エッジ部分については、欠陥として検出するための閾値を他の部分と比較して大きく設定する。このエッジ部分について大きく設定された閾値がエッジ許容値である。エッジ許容値を小さくしすぎるとエッジから疑似欠陥が検出されてしまい、エッジ許容値を大きくしすぎるとエッジに生じている真の欠陥を検出することができない。そこで、シミュレーション処理部201は、検査装置100から得た未処理画像についてエッジ許容値を変更しながらダイ−ダイ比較をし直して、最適なエッジ許容値を求める。
以下、上記のように構成された検査システムの動作を説明する。図31は、検査システムの動作を示すフロー図である。まず、検査装置100は検査を行い、画像処理部763は検査結果をシミュレーション装置200に出力する(ステップS331)。このとき、画像処理部763は、検査結果とともに、その検査結果を得るのに用いた未処理画像(二次ビーム像)、及び検出したくない欠陥の分類情報もシミュレーション装置200に出力する。シミュレーション装置200では、シミュレーション処理部201がこの検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に表示する(ステップS332)。
次に、シミュレーション処理部201は、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行し(ステップS333)、それによって得られた再検査結果を出力する(ステップS334)。この再検査シミュレーションでは、検査装置100における検査と同様に、検出したくない欠陥の分類情報にある欠陥については検出しないようにする。シミュレーション処理部201は、ステップS334で得られた再検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に出力する(ステップS335)。
次に、この再検査によって得られた欠陥画像を評価することで、検査条件が最適であるかが判断され(ステップS336)、検査条件が最適でなければ(ステップS336でNO)、ステップS333に戻って、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行する(ステップS333)。このように検査条件パラメータを変えながらの再検査シミュレーションを繰り返して、検査条件が最適になったときは(ステップS336でYES)、その最適になった検査条件を検査装置100で採用する検査条件として決定し(ステップS337)、処理を終了する。シミュレーション処理部201は、検索条件が最適であるか否かは、例えば、入力部202からの入力に基づいて判断してよい。
以上のように、本実施の形態の検査システムによれば、検査装置100において実際の検査を行ったうえで、シミュレーション装置200で検査装置100から出力された欠陥画像及び未処理画像を用いて、検査条件を変えながら検査結果レビューソフトウェアによって再検査シミュレーションを行うので、少ない検査回数で検査条件の最適化が可能となり、検査条件を最適化するための時間を短縮できる。また、検査装置100による実際の検査の回数を繰り返す必要がないので、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
<スキャン方法>
(背景)
光電面を用いた一次光学系による検査手法としては、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作(視野幅だけ横に移動)を繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返して検査を実施する、という検査手法が考えられる。
(課題)
しかしながら、このような検査手法では、検査領域の中の1つの小領域に着目した場合、プレチャージを実施してから検査を実施するまでの間に時間が空くため、検査を実施する時にプレチャージの効果が弱まっている可能性がある。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施できる検査装置のスキャン方法を提供することにある。
(解決手段)
本発明による検査装置のスキャン方法は、
試料を一方向に移動しながら、前記試料にプレチャージエネルギー条件で一次ビームを照射して、試料の帯状の検査領域に対して連続的にプレチャージを実施する工程と、
前記試料を前記一方向とは逆向きに移動しながら、前記試料に検査条件で一次ビームを照射して、試料の帯状の検査領域に対して連続的に検査を実施する工程と、
前記試料を視野幅だけ前記一方向に対して直角な向きに移動する工程と、
を順に繰り返して行う。
(実施の形態)
図32A〜図32Dを参照して、本実施の形態による検査装置のスキャン方法について説明する。
本実施の形態のスキャン方法では、まず、図32Aに示すように、プレチャージエネルギー条件を実現するようなリターディング電圧(プレチャージ電圧)が試料20に印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で移動(スキャン)され(矢印A1参照)、試料20の帯状の検査領域211に対して連続的にプレチャージが実施される。
次に、図32Bに示すように、検査条件を実現するようなリターディング電圧(検査電圧)が試料20に印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で逆向きに移動(スキャン)され(矢印A2参照)、試料20の同じ検査領域211に対して連続的に検査が実施される。
次に、図32Cに示すように、視野幅だけステージ30が横に移動(ステップ)された後(矢印A3参照)、試料にプレチャージ電圧が印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で移動(スキャン)され(矢印A4参照)、前回の検査領域211の隣の検査領域212に対して連続的にプレチャージが実施される。
次に、図32Dに示すように、試料20に検査電圧が印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で逆向きに移動(スキャン)され(矢印A5参照)、試料20の同じ検査領域212に対して連続的に検査が実施される。
その後、図32C及び図32Dに示す工程が交互に繰り返されることで、試料20全面に対してプレチャージと検査が交互に実施される。
以上のような本実施の形態によれば、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査領域の中の1つの小領域に着目した場合、プレチャージを実施してから検査を実施するまでの間の時間が短くなるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することが可能である。
<電子光学装置+SEM+EDX>
(背景)
試料の欠陥検査では、電子光学装置を用いて異物検出を行った後、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと呼ぶことがある)を用いて検出欠陥の再検査(レビュー)及び真偽判定を行い、次いで、エネルギー分散型X線分光器(以下、EDXと呼ぶことがある)を用いて真欠陥の材料分析を行うことが望ましい。ここで、SEM及びEDXを用いた検査では、電子光学装置により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射する必要がある。
(課題)
しかしながら、従来の検査装置では、電子光学装置、SEM及びEDXがそれぞれ別個の真空ハウジングに設けられており、真空ハウジング間での試料の移動および真空ハウジング間での座標合わせが必要であるため、SEM及びEDXを用いた検査では、電子光学装置により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射することが困難であった。そのため、特に薄い異物や小さい異物については、その材質を判定することができなかった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、試料面上の薄い異物や小さい異物の材質を判定できる検査装置を提供することにある。
(解決手段)
本発明による検査装置は、
試料を検査する検査装置であって、
試料を載置して連続的に移動するステージ装置と、
前記ステージ装置を収容する真空ハウジングと、
前記真空ハウジングに設けられた電子光学装置と、
前記真空ハウジングに互いに隣接して設けられた走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光器と、
を備え、
前記電子光学装置は、
前記ステージ装置上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、
前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、
前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、を有する。
本発明によれば、電子光学装置と走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光器とが、同一の真空ハウジングに設けられており、同一のステージ装置により試料が移動されるため、真空ハウジング間での試料の移動および真空ハウジング間での座標合わせが不要である。これにより、SEM及びEDXを用いた検査において、電子光学装置により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射することが可能であり、薄い異物や小さい異物であってもその材質を判定することができる。薄い異物や小さい異物の材質を判定できることにより、欠陥の発生プロセス及び部品等のより正確な特定が可能となり、これにより、プロセス改善、部品改善・装置改善を行うことができ、製造ラインの歩留まり向上に役立つ。
本発明による検査装置において、前記一次光学系は、レーザ光を発生するレーザ光源と、前記レーザ光が照射されることにより前記一次ビームを発生する光電面と、を有してもよい。
このような態様によれば、光電面から放出される電子のエネルギー分散が比較的小さいことから、リターディング電圧を変更することで、検査エネルギー条件とは独立に、的確なプレチャージエネルギー条件を選択することができる。これにより、電子光学装置における検出感度が向上し、より微細な異物を検出することが可能となる。
本発明による検査装置において、前記真空ハウジングには、前記ステージ装置上の前記試料に対する前記走査型電子顕微鏡の光軸の角度が調整されるように、前記走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光器を一緒に、前記ステージ装置に対して旋回させる旋回手段が設けられていてもよい。
このような態様によれば、走査型電子顕微鏡による欠陥のレビュー時には、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して直角に向け、試料表面に直角に電子ビームを照射させることで、試料表面のパターンにより電子ビームの陰が生じることを防止できる。一方、エネルギー分散型X線分光器による材料分析時には、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して傾斜させ、試料表面に斜めに電子ビームを照射させることで、電子ビームが薄い異物を通過して試料内部に到達してしまい、薄い異物以外からのシグナルが発生することを防止できる。
本発明による検査装置において、前記ステージ装置には、前記ステージ装置上の前記試料に対する前記走査型電子顕微鏡の光軸の角度が調整されるように、前記ステージ装置上の前記試料を傾斜させるチルト手段が設けられていてもよい。
このような態様によっても、走査型電子顕微鏡による欠陥の再検査では、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して直角に向け、試料表面に直角に電子ビームを照射させることで、試料表面のパターンに陰が生じることを防止できる。一方、エネルギー分散型X線分光器による材料分析では、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して傾斜させ、試料表面に斜めに電子ビームを照射させることで、電子ビームが薄い異物を通過して試料内部に到達してしまい、薄い異物以外からのシグナルが発生することを防止できる。
本発明による検査装置において、前記走査型電子顕微鏡と前記ステージ装置との間には、前記ステージ装置上の前記試料に対する前記走査型電子顕微鏡の光軸の角度が調整されるように、前記走査型電子顕微鏡から放出された電子ビームを偏向する偏向器が設けられていてもよい。
このような態様によっても、走査型電子顕微鏡による欠陥の再検査では、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して直角に向け、試料表面に直角に電子ビームを照射させることで、試料表面のパターンに陰が生じることを防止できる。一方、エネルギー分散型X線分光器による材料分析では、走査型電子顕微鏡の光軸を試料に対して傾斜させ、試料表面に斜めに電子ビームを照射させることで、電子ビームが薄い異物を通過して試料内部に到達してしまい、薄い異物以外からのシグナルが発生することを防止できる。
本発明による検査装置は、前記走査型電子顕微鏡のカソードにカソード電圧を印加するカソード電源と、前記ステージ上の前記試料にリターディング電圧を印加するリターディング電源と、前記走査型電子顕微鏡及び前記エネルギー分散型X線分光器の両方による撮像が可能な前記カソード電圧及び前記リターディング電圧の設定と、前記エネルギー分散型X線分光器による撮像のみが可能な前記カソード電圧及び前記リターディング電圧の設定と、を切り替えるモード切替部と、を更に備えてもよい。
このような態様によれば、走査型電子顕微鏡の条件によりカソードに高電圧を印加できない場合であっても、モード切替部が、走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光器の両方による撮像が可能な電圧設定から、エネルギー分散型X線分光器による撮像のみが可能な電圧設定へと切り替えることで、装置を停止することなく、少なくともエネルギー分散型X線分光器によるX線像の撮像を継続することができる。
本発明による検査装置において、
前記光電面は、少なくとも第1領域及び第2領域に分割された状態であり、
前記第1領域及び前記第2領域には互いに異なるカソード電圧が印加されるようになっており、
前記第1領域及び前記第2領域の境界にレーザ光が照射されるようになっていてもよい。
このような態様によれば、光電面の第1領域及び第2領域に互いに異なるカソード電圧が印加されているため、第1領域から発生した一次ビームと第2領域から発生した一次ビームのランディングエネルギーは互いに異なるものとなる。すなわち、試料の互いに隣り合う領域には互いに異なるエネルギーの一次ビームが同時に照射されることになる。これにより、様々な条件での検査が可能となる。
本発明による検査装置において、前記第1領域には、一次ビームのランディングエネルギーが検査エネルギー条件を実現するような電圧が印加され、前記第2領域には、一次ビームのランディングエネルギーがプレチャージエネルギー条件を実現するような電圧が印加されてもよい。
このような態様によれば、試料の互いに隣り合う領域のうち一方を検査しながら他方をプレチャージすることができる。
本発明による検査装置において、前記試料面上において、前記第1領域から発生した一次ビームが入射する領域と前記第2領域から発生した一次ビームが入射する領域とは、前記ステージ装置のステップ動作の方向に隣り合っていてもよい。
本発明による検査装置において、前記試料面上において、前記第1領域から発生した一次ビームが入射する領域と前記第2領域から発生した一次ビームが入射する領域とは、前記ステージ装置のスキャン動作の方向に隣り合っていてもよい。
本発明による検査装置において、前記カソード電源は、前記ステージ装置がスキャン動作の方向を逆転させるのに同期して、前記第1領域に印加する電圧と前記第2領域に印加する電圧とを逆転させてもよい。
本発明による検査装置において、前記光電面上には、当該光電面と同電位のアパーチャが配置されていてもよい。
このような態様によれば、ガウス分布のレーザ光の裾野の強度の弱い部分がアパーチャによりカットされるため、レーザ光の強度分布が均一化する。これにより、光電面から強度分布が均一な一次ビームが発生する。強度分布が均一な一次ビームを用いることにより、欠陥検査時のノイズを低減できる。また、アパーチャは光電面と同電位であるため、引き出し電界への影響を小さくできる。
本発明による検査装置において、前記光電面と前記アパーチャとの間の間隔は、0.1〜2.0mmであってもよい。
このような態様によれば、間隔が2.0mm以下であることから、レーザ光がアパーチャを通過してから光電面に到達するまでの間に回折が生じることを防止できる。
本発明による検査装置において、前記アパーチャは、CrまたはCで被覆されていてもよい。
このような態様によれば、CrまたはCの電子効率が低いことから、アパーチャから発生する電子を低減でき、これにより、欠陥検査時のノイズが減少する。
(実施の形態)
本発明の実施の形態の検査装置について、図面を参照しながら説明する。図35は、本実施の形態による検査装置の一例を示す図である。
図35に示すように、検査装置10は、試料20を載置して連続的に移動するステージ装置30と、ステージ装置30を収容する真空ハウジング11と、真空ハウジング11に設けられた電子光学装置100と、真空ハウジング11に互いに隣接して設けられた走査型電子顕微鏡(SEM)200及びエネルギー分散型X線分光器(EDX)300と、を備えている。
このうち電子光学装置100は、上述したように、ステージ装置30上の試料20に対して一次ビームを照射する一次光学系40と、一次ビームを試料20に照射することで試料20から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサ71を含む検出器70と、二次ビームを二次元センサ70に導く2次光学系60と、を有している。
本実施の形態では、一次光学系40は、レーザ光を発生するレーザ光源49(図39参照)と、レーザ光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面2011と、を有している。一次ビームのランディングエネルギーLEと、試料20に印加されるリターディング電圧RTDと、光電面2021に印加されるカソード電圧V1との間には、LE=RTD−V1の関係が成り立つ。
ところで、上述したように、試料20の欠陥検査では、電子光学装置10を用いて異物検出を行った後、SEM200を用いて検出欠陥の再検査(レビュー)及び真偽判定を行い、次いで、EDX300を用いて真欠陥の材料分析を行うことが望ましい。ここで、SEM200及びEDX300を用いた検査では、電子光学装置により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射する必要がある。
従来の検査装置では、電子光学装置、SEM及びEDXがそれぞれ別個の真空ハウジングに設けられており、真空ハウジング間での試料の移動および真空ハウジング間での座標合わせが必要であるため、SEM及びEDXを用いた検査では、電子光学装置により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射することが困難であった。そのため、特に薄い異物や小さい異物については、その材質を判定することができなかった。
一方、本実施の形態では、電子光学装置100とSEM200及びEDX300とは、同一の真空ハウジング11に設けられており、同一のステージ装置30により試料20が移動される。そのため、真空ハウジング間での試料の移動および真空ハウジング間での座標合わせが不要である。これにより、SEM200及びEDX300を用いた検査において、電子光学装置100により検出された欠陥位置に正確に電子ビームを照射することが可能であり、薄い異物や小さい異物であってもその材質を判定することができる。薄い異物や小さい異物の材質を判定できることにより、欠陥の発生プロセス及び部品等のより正確な特定が可能となり、これにより、プロセス改善、部品改善・装置改善を行うことができ、製造ラインの歩留まり向上に役立つ。
図34Aは、SEM200及びEDX300とステージ30上の試料20とを拡大して示す概略図である。
図34Aに示すように、本実施の形態では、真空ハウジング11には、ステージ装置30上の試料20に対するSEM200の光軸の角度が調整されるように、SEM299及びEDX300を一緒に、ステージ装置30に対して旋回させる旋回手段310が設けられている。
旋回手段310は、SEM200による欠陥のレビュー時には、SEM200の光軸を試料30に対して直角に向け、試料30表面に直角に電子ビームを照射させる(図34A参照)。これにより、試料30表面のパターンにより電子ビームの陰が生じることを防止できる。一方、EDX300による材料分析時には、旋回手段310は、EM200の光軸を試料に対して傾斜させ、試料30表面に斜めに電子ビームを照射させる(図34B参照)。これにより、電子ビームが薄い異物を通過して試料30内部に到達してしまい、薄い異物以外からのシグナルが発生することを防止できる。したがって、薄い異物の材質判定をより正確に行うことができるようになる。
なお、欠陥のレビュー時に試料30表面に直角に電子ビームを照射できるとともに、材料分析時に試料30表面に斜めに電子ビームを照射できるならば、真空ハウジング11に旋回手段310が設けられた態様に限定されない。たとえば、図34Cに示すように、ステージ装置30には、ステージ装置30上の試料20に対するSEM200の光軸の角度が調整されるように、ステージ装置30上の試料20を傾斜させるチルト手段320が設けられていてもよい。あるいは、図34Dに示すように、SEM200とステージ装置30との間には、ステージ装置30上の試料20に対するSEM200の光軸の角度が調整されるように、SEMから放出された電子ビームを偏向する偏向器210が設けられていてもよい。これらの態様であっても、欠陥のレビュー時に試料30表面に直角に電子ビームを照射できるとともに、材料分析時に試料30表面に斜めに電子ビームを照射できる。
図33に戻って、本実施の形態による検査装置10は、SEM200のカソードにカソード電圧を印加するカソード電源201と、ステージ30上の試料20にリターディング電圧を印加するリターディング電源82と、モード切替部202と、を有している。モード切替部202は、SEM200及びEDX300の両方による撮像が可能なカソード電圧及びリターディング電圧の設定と、EDX300による撮像のみが可能なカソード電圧及びリターディング電圧の設定と、を切り替え可能となっている。
これにより、SEM200の条件によりカソードに高電圧を印加できない場合であっても、モード切替部202が、SEM200及びEDX300の両方による撮像が可能な電圧設定から、EDX300による撮像のみが可能な電圧設定へと切り替えることで、装置を停止することなく、少なくともEDX300によるX線像の撮像を継続することができる。
具体的には、たとえば、EDX300は、試料20表面の電位が5kV以下であれば、試料20表面のX線像を撮像可能である。そのため、カソード電圧を−5kV、リターディング電圧を0Vに設定して、SEM200及びEDX300の両方による撮像を行っていたが、ある時点からSEM200のカソードに高電圧を印加できなくなった場合には、モード切替部202が、カソード電圧を−2.5kV、リターディング電圧を2.5Vに設定切り替えすることにより、少なくともEDX300によるX線像の撮像をその後も継続することができる。
「1次光学系:光電面の分割」
本実施の形態では、図35に示すように、電子光学装置100の1次光学系40の光電面2011は、少なくとも第1領域2011a及び第2領域2011bに分割された状態となっている。光電面2011は、3つ以上の領域に分割された状態となっていてもよい。図示された例では、第1領域2011aは、円形状を有し、光電面2011の中心に配置されている。一方、第2領域2011bは、円環形状を有し、第1領域2011aの周囲を取り囲むように配置されている。
第1領域2011a及び第2領域2011bには、不図示のカソード電源から互いに異なるカソード電圧が印加されるようになっている。また、レーザ光源49から発生したレーザ光は、図35に示すように、第1領域2011a及び第2領域2011bの境界に照射されるようになっている。光電面2011の第1領域2011a及び第2領域2011bに互いに異なるカソード電圧が印加されているため、第1領域2011aから発生した一次ビームと第2領域2011bから発生した一次ビームのランディングエネルギーは互いに異なるものとなる。すなわち、図36に示すように、試料20の互いに隣り合う領域25a、25bには互いに異なるエネルギーの一次ビームが同時に照射されることになる。たとえば、第1領域2011aに−4010Vが印加され、第2領域2011bに−4001Vが印加され、試料20に−4000Vが印加される場合には、第1領域2011aから発生した一次ビームのランディングエネルギーは10eVとなり、第2領域2011bから発生した一次ビームのランディングエネルギーは1eVとなる。これにより、様々な条件での検査が可能となる。
例えば、第1領域2011aには、一次ビームのランディングエネルギーが検査エネルギー条件を実現するような電圧が印加され、第2領域2011bには、プレチャージエネルギー条件を実現するような電圧が印加される。この場合、試料20の互いに隣り合う領域25a、25bのうち一方の領域25aを検査しながら他方の領域25bをプレチャージすることができる。
図37A及び図37Bを参照して、試料20の検査方法の第1例を説明する。図37A及び図37Bに示す例では、試料20面上において、第1領域2011aから発生した一次ビームが入射する領域25aと第2領域2011bから発生した一次ビームが入射する領域25bとは、ステージ装置30のステップ動作の方向に隣り合っている。
本実施の形態では、まず、図37Aに示すように、第1領域2011aから発生した一次ビームが入射する領域25aと第2領域2011bから発生した一次ビームが入射する領域25bとが、ステージ装置30のステップ動作の方向に隣り合うような向きで、試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で移動(スキャン)することにより(矢印A1参照)、試料20の帯状の検査領域212に対して連続的にプレチャージが実施される。
試料20の端まで移動すると、図37Bに示すように、視野幅の半分だけステージ30を横に移動(ステップ)させる(矢印A2参照)。次に、前回スキャン時と同じ向きで試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で前回スキャン時とは逆向きに移動(スキャン)する(矢印A3参照)。これにより、前回スキャン時にプレチャージされた帯状の検査領域212に対して連続的に検査が実施されるとともに、その隣の帯状の検査領域213に対して連続的にプレチャージが実施される(第2工程)。
その後、試料20の端まで移動すると、視野幅の半分だけステージ30を横に移動(ステップ)させ、次いで、前回スキャン時と同じ向きで試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で前回スキャン時とは逆向きに移動(スキャン)する、という工程を繰り返すことにより、試料20の全面が検査される。
次に、図38A及び図38Bを参照して、試料20の検査方法の第2例を説明する。図38A及び図38Bに示す例では、試料20面上において、第1領域2011aから発生した一次ビームが入射する領域25aと第2領域2011bから発生した一次ビームが入射する領域25bとは、ステージ装置30のスキャン動作の方向に隣り合っている。
本実施の形態では、まず、図38Aに示すように、第1領域2011aから発生した一次ビームが入射する領域25aと第2領域2011bから発生した一次ビームが入射する領域25bとが、ステージ装置30のスキャン動作の方向に隣り合うような向きで、試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で移動(スキャン)する(矢印A1参照)。これにより、試料20の帯状の検査領域211に対して連続的にプレチャージと検査の両方が実施される。
試料20の端まで移動すると、図38Bに示すように、視野幅だけステージ30を横に移動(ステップ)させる(矢印A2参照)。次に、光電面2011の第1領域2011aの印加電圧と第2領域2011bの印加電圧とを逆転させる。すなわち、第1領域2011aには、一次ビームのランディングエネルギーがプレチャージエネルギー条件を実現するような電圧を印加し、第2領域2011bには、検査エネルギー条件を実現するような電圧を印加する。この状態で、前回スキャン時と同じ向きで試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で前回スキャン時とは逆向きに移動(スキャン)する(矢印A3参照)。これにより、試料20の帯状の検査領域212に対して連続的にプレチャージと検査の両方が実施される。
その後、試料20の端まで移動すると、視野幅だけステージ30を横に移動(ステップ)させ、次いで、光電面2011の第1領域2011aの印加電圧と第2領域2011bの印加電圧とを逆転させ、この状態で、前回スキャン時と同じ向きで試料20に一次ビームを照射しながら、試料20を載置したステージ30を一定速度で前回スキャン時とは逆向きに移動(スキャン)する、という工程を繰り返すことにより、試料20の全面が検査される。
「1次光学系:光電面上のアパーチャ」
本実施の形態では、図39に示すように、光電面2011上には、当該光電面2011と同電位のアパーチャ2012が配置されている。例えば、レーザ光の直径が30μm〜200μmであるのに対し、アパーチャ2012の口径は10μm〜100μmである。
アパーチャ2012が光電面2011上に配置されていることにより、レーザ光源49から発生してミラー2070により反射されたレーザ光は、アパーチャ2012を通過してから光電面2011に照射される。アパーチャ2012を通過する際に、ガウス分布のレーザ光の裾野の強度の弱い部分が、アパーチャ2012によりカットされるため、光電面2011に照射されるレーザ光の強度分布は均一化される。これにより、光電面2011から強度分布が均一な一次ビームが発生する。強度分布が均一な一次ビームを用いることにより、欠陥検査時のノイズを低減できる。
なお、アパーチャ2012は光電面2011と同電位であるため、引き出し電界への影響は小さくなっている。
光電面2011とアパーチャ2012との間の間隔は、好ましくは0.1〜2.0mmである。本件発明者らの知見によれば、光電面2011とアパーチャ2012との間の間隔が2.0mm以下であれば、レーザ光がアパーチャ2012を通過してから光電面2011に到達するまでの間に、回折が生じて強度分布が不均一化することを防止できる。
本実施の形態では、アパーチャ2012は、CrまたはCで被覆されている。CrまたはCは電子効率が低いことから、レーザ光がアパーチャ2012を通過する際に、アパーチャ2012から発生する電子を低減できる。これにより、一次ビームが安定化し、欠陥検査時のノイズが減少する。
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。