以下、本発明に係る偏光板について詳細に説明する。
(1)偏光板の構成
図1に示されるように本発明に係る偏光板は、第1保護フィルム10、第1接着剤層15、偏光フィルム30、第2接着剤層25、及び第2保護フィルム20をこの順に含んで構成される。すなわち、第1保護フィルム10は第1接着剤層15を介して偏光フィルム30の一方の面に積層され、第2保護フィルム20は第2接着剤層25を介して偏光フィルム30の他方の面に積層される。第1接着剤層15は、ラジカル重合性接着剤の硬化物層であり、第2接着剤層25は、カチオン重合性接着剤の硬化物層である。かかる構成を有する本発明の偏光板は、ある期間ロール形態で置かれたときでも、さらにはある期間高温環境下にてロール形態で置かれたときでも巻癖が残りにくく、耐巻癖性が良好である。
図1の例に限らず、本発明に係る偏光板は、上記以外の他の層を含むことができる。他の層の具体例を挙げれば、例えば、第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層される粘着剤層;当該粘着剤層の外面に積層されるセパレートフィルム(「剥離フィルム」とも呼ばれる。);第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層されるプロテクトフィルム(「表面保護フィルム」とも呼ばれる。);第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に接着剤層や粘着剤層を介して積層される光学機能性フィルム等である。
本発明に係る偏光板は、上記層構成を有する偏光板の長尺物やその巻回ロールであることができる。この場合において耐巻癖性とは、長尺物や巻回ロールから切り出された偏光板枚葉体についての耐巻癖性をいう。また本発明に係る偏光板は枚葉体であってもよく、この場合において耐巻癖性とは、当該枚葉体又はそれからさらに小サイズに切り出された枚葉体についての耐巻癖性をいう。
(2)偏光フィルム
偏光フィルム30は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するフィルムである。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料を吸着・配向させた染料系偏光フィルム、及びリオトロビック液晶状態の二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光フィルム等が挙げられる。これらの偏光フィルムは、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収するため吸収型偏光フィルムと呼ばれている。偏光フィルム30は、吸収型偏光フィルムに限定されず、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を反射する反射型偏光フィルム、又はもう一方向の直線偏光を散乱する散乱型偏光フィルムでも構わないが、視認性に優れる点から吸収型偏光フィルムが好ましい。中でも、偏光度及び透過率に優れるヨウ素系偏光フィルムがより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム30の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、例えば150μm以下であり、好ましくは100μm以下(例えば50μm以下)である。
偏光フィルム30は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理(架橋処理)する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度であることができる。また、この水溶液の温度は、20〜40℃程度であることができる。一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料を含有する水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、20〜80℃程度であることができる。
二色性色素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり2〜15重量部程度であることができる。この水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり0.1〜20重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、50℃以上であることができ、例えば50〜85℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5〜40℃程度である。水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルム30が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。この偏光フィルム30の両面に保護フィルムを接着剤を用いて貼合することにより、偏光板を得ることができる。
また、偏光フィルム30の製造方法の他の例として、例えば、特開2000−338329号公報や特開2012−159778号公報に記載の方法が挙げられる。この方法では、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する溶液を塗布して樹脂層を設けた後、基材フィルムと樹脂層からなる積層フィルムを延伸し、次いで染色処理、架橋処理等を施して、樹脂層から偏光子層(偏光フィルム層)を形成する。基材フィルムと偏光子層からなるこの偏光性積層フィルムは、偏光子層面に保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離除去し、さらに基材フィルムの剥離によって露出した偏光子層面にもう一方の保護フィルムを貼合することにより偏光板とすることができる。
偏光フィルム30の厚みは、40μm以下とすることができ、好ましくは30μm以下(例えば20μm以下)である。なお、特開2000−338329号公報や特開2012−159778号公報に記載の方法によれば、薄膜の偏光フィルム30をより容易に製造することができ、偏光フィルム30の厚みは、例えば20μm以下、さらには10μm以下とすることもできる。偏光フィルム30の厚みは通常、2μm以上である。偏光フィルム30の厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。偏光板が薄いほど耐巻癖性は低下する傾向にあるが、本発明によれば、偏光フィルム30の厚みが薄くても偏光板の耐巻癖性を効果的に向上させることができる。
(3)保護フィルム
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20はそれぞれ、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなる樹脂フィルムであることができる。なお、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及び/又はアクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」などというときの「(メタ)」も同様の意味である。中でも、第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20はそれぞれ、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びセルロースエステル系樹脂からなる群より選択される樹脂から構成されることが好ましい。
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20はそれぞれ、延伸されていないフィルム、又は一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20は、位相差フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。位相差フィルムは、画像表示素子である液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される光学機能性フィルムである。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名:ジメタノオクタヒドロナフタレン)又はそれらの誘導体を代表例とする環状オレフィンを重合単位として含む樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体及びその水素添加物、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィン又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体、並びにこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性した変性(共)重合体等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系単量体等のノルボルネン系単量体を用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロースエステル系樹脂は、好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を挙げることができる。
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロースエステル系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。中でも、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートとは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が少量用いられてもよい。
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリエステルである。中でも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性の観点から好ましく使用される。ポリカーボネートとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのようなビスフェノールから誘導されるポリカーボネートが例示される。
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルを主たる単量体とする(50重量%以上含有する)重合体であることができ、これに少量の他の共重合成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、より好ましくはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体であり、第三の単官能単量体をさらに共重合させてもよい。
第三の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルのようなヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミド類等を挙げることができる。第三の単官能単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂には、多官能単量体をさらに共重合させてもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような2価アルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールを(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンのような芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80〜160℃である。ガラス転移温度は、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体との重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長及びそれら有する官能基の種類、並びに単量体全体に対する多官能単量体の重合比の調整によって制御可能である。
また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めるための手段として、高分子の主鎖に環構造を導入することも有効である。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造及びラクトン構造等の複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造、無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造、グルタルイミド構造、コハクイミド構造等の環状イミド構造、ブチロラクトン及びバレロラクトン等のラクトン環構造が挙げられる。主鎖中の環構造の含有量を大きくするほど(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。環状酸無水物構造及び環状イミド構造は、無水マレイン酸及びマレイミド等の環状構造を有する単量体を共重合することによって導入する方法、重合後脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、アミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法等によって導入することができる。ラクトン環構造を有する樹脂(重合体)は、高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する重合体を調製した後、得られた重合体におけるヒドロキシル基とエステル基とを、加熱により、必要に応じて有機リン化合物のような触媒の存在下に環化縮合させてラクトン環構造を形成する方法によって得ることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニル系単量体及び架橋性単量体を共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルが好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニル系単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。架橋性単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ゴム粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を保護フィルムとすることもできる。また、(メタ)アクリル樹脂とは異なる樹脂からなる位相差発現層の片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂層が形成され、位相差が発現されたものを保護フィルムとすることもできる。
第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。偏光板を液晶表示装置のような画像表示装置に適用する場合、紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを画像表示素子(例えば液晶セル)の視認側に配置することで、画像表示素子を紫外線による劣化を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20は、同じ樹脂から構成されるフィルムであってもよいし互いに異なる樹脂から構成されるフィルムであってもよい。第1保護フィルム10と第2保護フィルム20の組み合わせの一例は、ラジカル重合性接着剤から形成される第1接着剤層15を介して貼合される第1保護フィルム10が(メタ)アクリル樹脂から構成され、カチオン重合性接着剤から形成される第2接着剤層25を介して貼合される第2保護フィルム20がポリオレフィン系樹脂又はセルロースエステル系樹脂から構成される組み合わせである。第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20は、厚み、添加剤の有無やその種類、位相差特性等において同じであってもよいし異なっていてもよい。
第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20は、その外面(偏光フィルム30とは反対側の表面)にハードコート層、防眩層、反射防止層、光拡散層、帯電防止層、防汚層、導電層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20の厚みはそれぞれ、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜120μm、より好ましくは10〜85μmである。第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20の厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。保護フィルムが薄いほど後述する耐冷熱衝撃性は低下しやすいが、本発明によれば、第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20の厚みが薄くても偏光板の耐冷熱衝撃性を効果的に向上させることができる。
(4)接着剤層
硬化性接着剤は、主成分として硬化性(重合性)化合物を含む接着剤であり、その硬化様式により分類すると、上記硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合性接着剤、上記硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合性接着剤等が挙げられる。硬化性接着剤を用いる場合、それから形成される接着剤層は、硬化性接着剤の硬化物層である。
第1接着剤層15はラジカル重合性化合物を含むラジカル重合性接着剤の硬化物層であり、第2接着剤層25はカチオン重合性化合物を含むカチオン重合性接着剤の硬化物層である。耐巻癖性の観点から、第1接着剤層15を形成するラジカル重合性接着剤は、ラジカル重合性化合物とともに、カチオン重合性化合物をさらに含んでいてもよい。また耐巻癖性の観点から、第2接着剤層25を形成するカチオン重合性接着剤は、それに含まれる硬化性化合物がカチオン重合性化合物からなることが好ましい。以下では、第1接着剤層15を形成する接着剤を第1接着剤ともいい、第2接着剤層25を形成する接着剤を第2接着剤ともいう。
ラジカル重合性化合物の具体例は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、ビニル化合物のようなラジカル重合性基を有する化合物を含む。また、カチオン重合性化合物の具体例は、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物のようなカチオン重合性基を有する化合物を含む。ラジカル重合性接着剤は、ラジカル重合性化合物を1種又は2種以上含むことができ、さらに1種又は2種以上のカチオン重合性化合物を含むことができる。カチオン重合性接着剤は、カチオン重合性化合物を1種又は2種以上含むことができる。
第1及び/又は第2接着剤は、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性接着剤であり、好ましくは活性エネルギー線硬化性接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合の具体的な実施形態としては、第1接着剤層15及び第2接着剤層25の少なくともいずれか一方が活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層である形態を挙げることができるが、第1接着剤層15及び第2接着剤層25の双方が活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層であることが好ましい。
(4−1)第1接着剤
第1接着剤に含まれるラジカル重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーをいい、具体的にはエチレン性不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物の他、スチレン、スチレンスルホン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドンのようなビニル化合物等が挙げられる。中でも、好ましいラジカル重合性化合物は(メタ)アクリル系化合物である。
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。(メタ)アクリルオリゴマーは好ましくは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーである。(メタ)アクリル系化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの例として、アルキル(メタ)アクリレートがある。アルキル(メタ)アクリレートにおいて、そのアルキル基は炭素数3以上であれば直鎖でも分岐していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアラルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートのようなテルペンアルコールの(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートのようなアルキル基部位にシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノアルキル(メタ)アクリレート;2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのようなアルキル部位にエーテル結合を有する(メタ)アクリレートも単官能(メタ)アクリレートモノマーとして用いることができる。
さらに、アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートや、アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートも用いることができる。アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートを含む。アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例は、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N’,N’−ジカルボキシメチル−p−フェニレンジアミンを含む。
(メタ)アクリルアミドモノマーは、好ましくはN−位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドであり、そのN−位の置換基の典型的な例はアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。
N−置換(メタ)アクリルアミドの具体例は、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミドのようなN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドのようなN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。また、N−置換基は水酸基を有するアルキル基であってもよく、その例として、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等がある。さらに、上記した5員環又は6員環を形成するN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例としては、N−アクリロイルピロリジン、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、4−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン等がある。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等である。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他に、3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
一方、(メタ)アクリルオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリルオリゴマー等がある。
ウレタン(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオールをポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応生成物等であり得る。
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、例えば水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることができ、その具体例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを含む。水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー以外の具体例は、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ−又はトリ−イソシアネート、及び、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオールとしては、芳香族、脂肪族又は脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオールと多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等がある。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオール等であり得る。
ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基(典型的には(メタ)アクリロイルオキシ基)とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等がある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリルオリゴマーは、例えば、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
第1接着剤は、重合性化合物がラジカル重合性化合物のみから構成されていてもよいが、後述するカチオン重合性化合物をさらに含むこともできる。耐巻癖性の観点から、第1接着剤におけるカチオン重合性化合物(2種以上のカチオン重合性化合物が含まれる場合にはそれらの合計含有量)の含有量は、重合性化合物100重量%中、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
第1接着剤は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし熱硬化性であってもよいが、好ましくは活性エネルギー線硬化性である。第1接着剤に活性エネルギー線硬化性を付与する場合には、当該接着剤に光ラジカル重合開始剤を配合することが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、ラジカル硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。光ラジカル重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤の具体例は、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンを含む。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、ラジカル重合性化合物100重量部に対して通常、0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光ラジカル重合開始剤を0.5重量部以上配合することにより、ラジカル重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械的強度と接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、偏光板の耐久性が低下する可能性がある。
(4−2)第2接着剤
第2接着剤に含まれるカチオン重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーをいい、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等を例示することができる。中でも、好ましいカチオン重合性化合物はエポキシ化合物である。エポキシ化合物とは、分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。中でも、耐候性、硬化速度及び接着性の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物や脂肪族エポキシ化合物を含むことが好ましく、脂環式エポキシ化合物を含むことがより好ましい。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(I)で示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味する。下記式(I)中、mは2〜5の整数である。
上記式(I)における(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
中でも、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(I)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(I)においてm=4のもの〕を有する脂環式エポキシ化合物は、硬化物のガラス転移温度が高く、また偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性の面でも有利である。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。その具体例は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂を含む。
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであり、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールの具体例は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物を含む。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。水素化エポキシ化合物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物である。例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等の単官能のエポキシ化合物;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物;4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物等がある。中でも、偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性の観点から、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する2官能のエポキシ化合物(脂肪族ジエポキシ化合物ともいう)が好ましい。かかる好適な脂肪族ジエポキシ化合物は、例えば、下記式(II)で表すことができる。
上記式(II)中のYは、炭素数2〜9のアルキレン基、エーテル結合が介在している総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である。
上記式(II)で表される脂肪族ジエポキシ化合物は、具体的には、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテルである。
上記式(II)で表される脂肪族ジエポキシ化合物を形成し得るジオール(グリコール)の具体例を以下に掲げる。アルカンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等がある。オリゴアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等がある。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等がある。
カチオン重合性化合物の1つであるオキセタン化合物は、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を含有する化合物であり、その具体例は、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコールとも呼ばれる。)、2−エチルヘキシルオキセタン、1,4−ビス〔{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(キシリレンビスオキセタンとも呼ばれる。)、3−エチル−3〔{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}メチル〕オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタンを含む。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。オキセタン化合物を併用することで、硬化速度や接着性を向上できることがある。
カチオン重合性化合物となり得るビニル化合物としては、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられ、その具体例は、例えば、n−アミルビニルエーテル、i−アミルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5〜20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2−メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ〜ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ〜ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルを含む。ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。ビニル化合物を併用することで、硬化速度や接着剤の低粘度化を向上できることがある。
第2接着剤は、上記以外の他の硬化性化合物をさらに含むことができる。他の硬化性化合物は、好ましくはラジカル重合性化合物以外の硬化性化合物であり、その具体例は、ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物のような上記以外の他のカチオン重合性化合物である。
耐巻癖性、及び偏光フィルムと保護フィルムとの間の接着性の観点から、第2接着剤に含まれる硬化性化合物の全量を100重量%とするとき、カチオン重合性化合物(第2接着剤に含まれるすべてのカチオン重合性化合物の含有量であり、2種以上のカチオン重合性化合物が含まれる場合にはそれらの合計含有量)の含有量は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
第2接着剤は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし熱硬化性であってもよいが、好ましくは活性エネルギー線硬化性である。第2接着剤に活性エネルギー線硬化性を付与する場合には、当該接着剤に光カチオン重合開始剤を配合することが好ましい。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。
芳香族ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはジフェニルヨードニウムカチオンを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩は、トリアリールスルホニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはトリフェニルスルホニウムカチオンや4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオン等を挙げることができる。芳香族ジアゾニウム塩は、ジアゾニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはベンゼンジアゾニウムカチオンを挙げることができる。また、鉄−アレーン錯体は、典型的にはシクロペンタジエニル鉄(II)アレーンカチオン錯塩である。
上に示したカチオンは、アニオン(陰イオン)と対になって光カチオン重合開始剤を構成する。光カチオン重合開始剤を構成するアニオンの例を挙げると、特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n]-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6 -、ヘキサフルオロアンチモネートアニオンSbF6 -、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネートアニオンSbF5(OH)-、ヘキサフルオロアーセネートアニオンAsF6 -、テトラフルオロボレートアニオンBF4 -、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンB(C6F5)4 -等がある。中でも、カチオン重合性化合物の硬化性及び得られる接着剤層の安全性の観点から、特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n]-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6 -であることが好ましい。
光カチオン重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、カチオン重合性化合物100重量部に対して通常、0.5〜10重量部であり、好ましくは6重量部以下である。光カチオン重合開始剤を0.5重量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械的強度と接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性が低下する可能性がある。
(4−3)添加剤
第1接着剤及び/又は第2接着剤は、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。添加剤の具体例は、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合促進剤(ポリオール等)、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱重合開始剤を含む。なお、熱重合開始剤は、熱硬化性接着剤を調製する場合に、光重合開始剤の代わりに用いられる。イオントラップ剤としては粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられ、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
(4−4)接着剤層のガラス転移温度
第1接着剤層15及び第2接着剤層25は、偏光板の耐久性(下記の耐冷熱衝撃性を含む。)及び加工性(裁断や端面研磨のような加工を施したときの偏光板端面におけるフィルムの剥がれにくさ)の観点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは15〜180℃であり、さらに好ましくは30〜150℃である。
第1接着剤層15のTgと第2接着剤層25のTgとは、同じであってもよいし互いに異なっていてもよいが、耐冷熱衝撃性の観点から、少なくとも一方の接着剤層のTgが60℃以上であることが好ましい。耐冷熱衝撃性とは、高温条件と低温条件とが繰り返されるような環境下に置かれたときの耐久性をいい、より具体的には、当該環境下における偏光フィルムのクラックやワレに対する耐性をいう。
接着剤層のTgは、示差走査熱量計(DSC)により測定され、例えば次の方法によって測定することができる。例えば活性エネルギー線硬化性接着剤であれば、熱可塑性樹脂フィルムを2枚用意し、コロナ処理することなく、一方の熱可塑性樹脂フィルム表面に調製した接着剤を、硬化後の膜厚が2μmとなるように塗工し、コロナ処理することなく、その塗工面にもう1枚の熱可塑性樹脂フィルムを重ねる。この貼合品の一方の熱可塑性樹脂フィルム側から活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させる。次に、その硬化物を挟んでいる熱可塑性樹脂フィルムを剥がし、その硬化物を5mg採取して、アルミニウム押え蓋型容器に入れ、押さえつけて密閉し、測定用試料を作製する。次いで、示差走査熱量計(DSC)〔例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)から販売されている「EXSTAR−6000 DSC6220」に上記の測定用試料が入った容器をセットし、窒素ガスをパージしながら、20℃から−60℃まで降温し、−60℃に達してから1分間保持した後、−60℃から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、150℃に達したら直ちに20℃まで降温する。そして、−60℃から150℃まで昇温するときのDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に規定される中間点ガラス転移温度を求め、これを測定対象の接着剤によって形成される接着剤層のガラス転移温度とする。
(4−5)接着剤の塗工、及び偏光フィルムと保護フィルムとの接着
偏光フィルム30の一方の面に第1接着剤層15を介して第1保護フィルム10を積層接着し、偏光フィルム30の他方の面に第2接着剤層25を介して第2保護フィルム20を積層接着することにより、本発明に係る偏光板が得られる。第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20(以下、これらを総称して単に「保護フィルム」ともいう。)は、段階的に片面ずつ積層接着してもよいし、両面の保護フィルムを一段階で積層接着してもよい。
偏光フィルム30と保護フィルムとの接着は、具体的には、偏光フィルム30の貼合面及び/又は保護フィルムの貼合面に接着剤を塗工し、接着剤の塗工層を介して両者のフィルムを重ね、例えば貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合後、活性エネルギー線を照射して硬化させるか(活性エネルギー線硬化性接着剤の場合)、又は加熱して硬化させる(熱硬化性接着剤の場合)ことにより行うことができる。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合においても、活性エネルギー線の照射と同時に、又は活性エネルギー線の照射後に、加熱処理を行ってもよい。接着剤の塗工層を形成する前に、偏光フィルム30及び保護フィルムの貼合面の一方又は両方に対して、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理のような易接着処理を施してもよい。
接着剤の塗工層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等の種々の塗工方式が利用できる。また、偏光フィルム30及び保護フィルムを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。
塗工性の観点から、第1接着剤及び第2接着剤は、その粘度が低いことが好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下である。接着剤は無溶剤型であることができるが、採用する塗工方式に適した粘度に調整するために有機溶剤を含有させてもよい。
また、接着剤の塗工層を形成する工程、又は偏光フィルム30と保護フィルムとを重ねて貼合する工程において、保護フィルム及び接着剤の少なくとも一方を加熱してもよい。これにより、偏光フィルム30と保護フィルムとの密着性、特には保護フィルムと接着剤層との密着性が向上する。加熱の具体的な態様としては、保護フィルムの加熱、接着剤の加熱、偏光フィルム30と保護フィルムとが未硬化の接着剤層を介して積層された積層体の加熱等がある。保護フィルムや積層体を加熱する方法としては、例えば、長尺の保護フィルムや積層体を順次、赤外線ヒーター等の輻射熱を発する装置を通過させる方法、長尺の保護フィルムや積層体に、送風機等を用いて加熱したガスを吹き付ける方法等を挙げることができる。また、接着剤を加熱する方法としては、例えば、予め貯槽内で接着剤を加熱、保温しておき、加熱された接着剤を塗工装置に供給する方法を挙げることができる。保護フィルム、接着剤又は積層体を加熱する温度は、30〜80℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。加熱温度が80℃を超えると、保護フィルム、接着剤又は積層体が熱により劣化するおそれがある。また、加熱温度が30℃未満であると、保護フィルムと偏光フィルム30との密着性の向上効果が十分でない傾向にある。
接着剤の塗工層を保護フィルムに形成する場合において保護フィルムの乾燥重量法に従う水分率は、0.2〜5重量%であることが好ましい。水分率が上記範囲にあることにより、特に第2接着剤の反応性が向上し、保護フィルムと偏光フィルム30の接着性が向上する傾向にある。
活性エネルギー線の光源は、例えば、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。活性エネルギー線は、好ましくは紫外線である。紫外線光源としては、波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
接着剤層への活性エネルギー線照射強度は、接着剤組成物毎に決定されるが、光重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1〜1000mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び接着剤の重合時の発熱により、接着剤層の黄変や偏光フィルム30の劣化、又は保護フィルムの肌不良を生じる可能性がある。また、接着剤への光照射時間も、接着剤組成物毎に制御されるが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、光重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が大きすぎると、光照射時間が非常に長くなって生産性向上には不利になりやすい。
保護フィルムを接着剤の塗工層を介して偏光フィルム30に積層するタイミングと塗工層を硬化させるタイミングは特に制限されない。例えば、一方の保護フィルムを積層した後、引き続き塗工層を硬化させ、その後、他方の保護フィルムを積層し、塗工層を硬化させることができる。あるいは、逐次的に又は同時に両方の保護フィルムを積層した後、両面の塗工層を同時に硬化させてもよい。また、活性エネルギー線の照射はどちらの保護フィルム側から行ってもよい。例えば、一方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有し、他方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない保護フィルム側から活性エネルギー線を照射することが好ましい。このように照射することで、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めることができる。
活性エネルギー線は、偏光フィルム30と保護フィルムとが未硬化の接着剤層を介して積層された積層体に張力をかけて、ロールに抱かせながら照射してもよい。また、接着剤の反応性を高めるために、活性エネルギー線照射と同時に、又は活性エネルギー線照射後に偏光板を加熱してもよい。加熱温度は特に制限はないが、通常は保護フィルムのTg以下である。
硬化後の第1及び第2接着剤層15,25の厚みは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。第1及び第2接着剤層15,25の厚みが過度に大きいと、接着剤の反応率が低下し、偏光板の耐湿熱性が悪化する傾向にある。第1及び第2接着剤層15,25の厚みは、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。第1接着剤層15と第2接着剤層25とは、厚みが同じであってもよいし異なっていてもよい。
得られた偏光板は、それが長尺物である場合は通常、ある一定の張力をかけた状態でロール状に巻き取られ偏光板ロールとされる。そして次工程に移るまでの間、養生、保管及び/又は輸送される。巻き取り時の張力は特に制限はないが、通常30〜150N/cm2である。
(5)偏光板のその他の構成要素
(5−1)光学機能性フィルム
偏光板は、所望の光学機能を付与するための、偏光フィルム30以外の他の光学機能性フィルムを備えることができ、その好適な一例は位相差フィルムである。上述のように、第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20が位相差フィルムを兼ねることもできるが、保護フィルムとは別途に位相差フィルムを積層することもできる。後者の場合、位相差フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層することができる。
位相差フィルムの具体例は、透光性を有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムから構成される複屈折性フィルム、ディスコティック液晶又はネマチック液晶が配向固定されたフィルム、基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたものを含む。基材フィルムは通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、熱可塑性樹脂としてはトリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、保護フィルムについて記述したものを使用することができる。例えば、セルロースエステル系樹脂を使用する場合を例に挙げると、セルロースエステル系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたものからフィルムを形成する方法、セルロースエステル系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布する方法、セルロースエステル系樹脂を一軸又は二軸に延伸する方法により複屈折性フィルムを得ることができる。複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂のような他の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
位相差フィルムは、広帯域化等、光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。また、光学異方性を有するフィルムに限らず、位相差フィルムとして実質的に光学的に等方なゼロレタデーションフィルムを使用することもできる。ゼロレタデーションフィルムとは、面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthがともに−15〜15nmであるフィルムをいう。ここでいう面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値である。
面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下記式:
Re=(nx−ny)×d
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
で定義される。式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚みである。
ゼロレタデーションフィルムには、保護フィルムや複屈折性フィルムについて記述した熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、セルロースエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムを用いることができる。中でも、位相差値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロースエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
偏光板に含まれ得る他の光学機能性フィルム(光学部材)の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等である。これらは一般的に、偏光板が液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される偏光板である場合に設けられる。
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、ドット付設シート等であることができる。
輝度向上フィルムは、偏光板を適用した液晶表示装置における輝度を向上させる目的で使用される。具体的には、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層を基材フィルム上に支持した円偏光分離シート等が挙げられる。
反射層、半透過反射層、光拡散層は、偏光板を反射型、半透過型、拡散型の光学部材とするためにそれぞれ設けられる。反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。半透過型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。また拡散型の偏光板は、光拡散性を付与してモアレ等の表示不良を抑制した液晶表示装置に用いられる。反射層、半透過反射層及び光拡散層は、公知の方法により形成することができる。
(5−2)粘着剤層
本発明に係る偏光板は、これを液晶セル等の画像表示素子、又は他の光学部材に貼合するための粘着剤層を含むことができる。粘着剤層は、保護フィルムの外面に積層することができる。
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、(メタ)アクリル系樹脂や、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等をベースポリマーとするものを用いることができる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、耐候性、耐熱性、リワーク性等の観点から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系粘着剤には、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル系樹脂がベースポリマーとして有用である。
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを偏光板の対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。粘着剤層の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、1〜50μm程度の範囲が適当であり、好ましくは2〜40μmである。
偏光板は、上記のセパレートフィルムを含み得る。セパレートフィルムは、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
粘着剤層には、必要に応じ、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉や他の無機粉末からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が配合されていてもよい。
帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子等を挙げることができるが、イオン性化合物が好ましく用いられる。イオン性化合物を構成するカチオン成分は無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性の観点から有機カチオンであることが好ましい。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。一方、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[(PF6 -)]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO2)2N-]アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO2)2N-]アニオン等が挙げられる。
(5−3)プロテクトフィルム
本発明に係る偏光板は、その表面(保護フィルム表面)を仮着保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板が貼合された後、それが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
プロテクトフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例では、接着剤を構成するラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤及び添加剤として次のものを用いた。
(ラジカル重合性化合物)
〔1〕ラジカル重合性化合物1:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成(株)から入手した商品名「FA−513AS」)、
〔2〕ラジカル重合性化合物2:N,N−ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)から入手した商品名「DMAA」)、
〔3〕ラジカル重合性化合物3:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(新中村化学工業(株)から入手した商品名「A−600」)。
(光ラジカル重合開始剤)
〔4〕光ラジカル重合開始剤1:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(BASF社から入手した商品名「イルガキュア907」)。
(カチオン重合性化合物)
〔5〕カチオン重合性化合物1:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル(株)から入手した商品名「CEL2021P」)、
〔6〕カチオン重合性化合物2:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)から入手した商品名「デナコールEX−211」)。
(光カチオン重合開始剤)
〔7〕光カチオン重合開始剤1:トリアリールスルホニウム塩(サンアプロ(株)から入手した商品名「CPI−100P」、50重量%のプロピレンカーボネート溶液)。
(添加剤)
〔8〕添加剤1:シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)から入手した商品名「SH710」)。
<製造例1:ラジカル重合性接着剤の調製>
下記に記載のラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤、添加剤を、下記に記載の配合割合で20mLのスクリュー管に量り取り、混合・脱泡して、紫外線の照射により硬化する液状のラジカル重合性接着剤を調製した。表1においては、この接着剤を「R」と略す。
ラジカル重合性化合物1 35重量部、
ラジカル重合性化合物2 20重量部、
ラジカル重合性化合物3 45重量部、
光ラジカル重合開始剤1 3重量部、
添加剤1 0.25重量部。
<製造例2:カチオン重合性接着剤の調製>
下記に記載のカチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、添加剤を、下記に記載の配合割合で20mLのスクリュー管に量り取り、混合・脱泡して、紫外線の照射により硬化する液状のカチオン重合性接着剤を調製した。表1においては、この接着剤を「C」と略す。
カチオン重合性化合物1 60重量部、
カチオン重合性化合物2 40重量部、
光カチオン重合開始剤1 2.2重量部(固形分換算)、
添加剤1 0.25重量部。
<製造例3:(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製>
メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとを96:4の重量比で共重合させた共重合体である(メタ)アクリル系樹脂を用意した。また、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された硬質の重合体からなり、中間層がアクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体からなり、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなる3層構造の弾性体粒子であって、中間層である弾性体までの平均粒径が240nmであるアクリル系ゴム粒子を用意した。
上記の(メタ)アクリル系樹脂と上記のアクリル系ゴム粒子とが70:30の重量比で配合されており、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が添加されているペレットを調製し、これを二軸押出機で溶融混練しつつ、そのペレット100重量部に対して滑剤であるステアリン酸0.05重量部を加えて混合し、(メタ)アクリル系樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを65mmφの一軸押出機に投入し、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、押し出されたフィルム状溶融樹脂の両面を、45℃に温度設定された鏡面を有する2本のポリシングロールで挟み込んで冷却して、厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルムを作製した。表1においては、この(メタ)アクリル系樹脂フィルムを「PMMA」と略す。
<実施例1>
(1)偏光板の作製
第1保護フィルムとしての製造例3で作製した(メタ)アクリル系樹脂フィルムの片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、第1接着剤(第1接着剤層を形成する接着剤)として製造例1で調製したラジカル重合性接着剤をバーコーターを用いて硬化後の厚みが約2.0μmとなるように塗工した。次いで、その塗工面に厚み25μmのポリビニルアルコール(PVA)−ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。次に、第2保護フィルムとしての環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂、表1においては「COP」と略す。)からなる厚み50μmの位相差フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZEONOR」、波長590nmにおける面内位相差値Re:52nm〕の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、第2接着剤(第2接着剤層を形成する接着剤)として製造例2で調製したカチオン重合性接着剤を硬化後の厚みが約2.0μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で作製した(メタ)アクリル系樹脂フィルム付の偏光フィルムを偏光フィルム側で重ね、貼合ロールを用いて押圧、貼合して積層体を得た。この積層体を、その第2保護フィルム(環状ポリオレフィン系樹脂フィルム)側から、ベルトコンベア付の紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」使用〕を用いて積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、両面の接着剤層を硬化させて、偏光板を作製した。偏光板の作製に用いた接着剤の種類及び保護フィルムの種類を表1にまとめた。
(2)偏光板の耐巻癖性の評価
上記(1)で作製した偏光板から80mm×80mmサイズの試験片を切り出し、直径4cmのプラスチック製円柱物に、第1保護フィルムが内側になるように巻き掛け、セロテープ(登録商標)で固定した。これを、温度80℃の乾燥条件下に10分間置いた後、温度23℃相対湿度60%の環境下に4日間置いた。その後、試験片をプラスチック製円柱物から剥離し、水平な台の上に下に凸になるように置き、台から試験片の4つの角部までの高さを定規でそれぞれ計測し、得られた4点の値の平均値(巻癖による変形量)を求めた。結果を表1に示す。この変形量が小さいほど耐巻癖性に優れる。偏光板間で変形量を対比する場合、接着剤の種類を除いて同じ構成の偏光板間で対比される。
<実施例2、比較例1〜3>
第1保護フィルム、第2保護フィルム、第1接着剤、第2接着剤として表1に記載のものを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐巻癖性を評価した。結果を表1に示す。