JP2016124788A - 長鎖ケトアルコールの製造方法およびそれを還元してなる長鎖ジオール - Google Patents
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Abstract
【課題】汎用化学品、機能性高分子用モノマーや医農薬原体等の生物活性物質原料等として重要な長鎖ケトアルコールを高収率で安価に工業的に有利に製造する方法の提供。
【解決手段】共役酸のpKaが25以上である塩基を含む溶液中に式(1)で示される総C数4〜22のメチルケトンを添加する工程、次いで式(2)で示される総C数3〜21のアルデヒドを添加して反応させる工程、及び反応を失活させる工程を有し、全工程を0℃以下にて行なうことで、式(3)に示される総C数7〜25の長鎖ケトアルコールを製造する。前記ケトアルコールは、更にカルボニル基を還元剤により水酸基に変換してアルカンジオールを製造することができる。CH3−C(=O)−R1・・・(1)R2−CHO・・・(2)
(R1及びR2はC2〜20のアルキル基)
【選択図】なし
【解決手段】共役酸のpKaが25以上である塩基を含む溶液中に式(1)で示される総C数4〜22のメチルケトンを添加する工程、次いで式(2)で示される総C数3〜21のアルデヒドを添加して反応させる工程、及び反応を失活させる工程を有し、全工程を0℃以下にて行なうことで、式(3)に示される総C数7〜25の長鎖ケトアルコールを製造する。前記ケトアルコールは、更にカルボニル基を還元剤により水酸基に変換してアルカンジオールを製造することができる。CH3−C(=O)−R1・・・(1)R2−CHO・・・(2)
(R1及びR2はC2〜20のアルキル基)
【選択図】なし
Description
本発明は、長鎖ケトアルコール化合物の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる長鎖ケトアルコールおよびそれを還元してなる長鎖ジオールは、医薬品、農薬、香料、各種化学品、樹脂などの原料として有用である。
長鎖ケトアルコールの製造方法としては、例えばケトンと水酸化ナトリウム水溶液を5〜10℃中で撹拌しながらアルデヒドを添加する方法が開示されている(例えば非特許文献1)が、十分な収率が得られるものではなかった。本方法は水を含む溶媒系であるため、長鎖アルキル基を有する化合物を反応させる際に基質が析出して反応の進行が著しく低下する。また、0℃以下の低温での反応は溶媒か凍結するため困難であり、高温下で反応させると反応中間体の異性体が生じやすく、副生物が生じやすいという問題がある。
副生物の生成を抑制するという観点から、アルデヒドとケトンを混合した溶液を水酸化ナトリウムに短時間接触させる方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、本方法は短い反応時間を厳密に制御する必要があるため技術難易度が高く、短時間で急激に反応が進行するため除熱が困難で溶媒系によっては発火や爆発の怖れがあり、副生物を増大させてしまう懸念もある。また、非特許文献1と同様に、水を含む溶媒系が用いられるので、長鎖アルキル基を有する化合物を反応させる際に基質が析出して反応の進行が著しく低下する。
厳格な反応制御や後処理工程、特殊な装置の使用を避けるという観点から、アルデヒドとケトンを混合した原料を固体塩基触媒と接触させる方法が開示されている(特許文献2)が、依然として収率は低く、特に炭素数4以上のケトンを用いた場合には収率が10%程度まで低下しており、なお改良の余地があった。
J.Chem.Soc.,905,(1930).
本発明の目的は、不純物の少ない長鎖ケトアルコールを高収率で製造し得る方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、0℃以下の低温下で保持している塩基中にケトンを添加し、次いで0℃以下の低温下を保持しながらアルデヒドを添加し所定時間ケトンとアルデヒドを反応させ、塩基をクエンチすることで、収率良く長鎖ケトアルコールを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
共役酸のpKaが25以上である塩基を含む溶液中に式(1)で示される総炭素数4〜22のメチルケトンを添加する工程、次いで式(2)で示される総炭素数3〜21のアルデヒドを添加して反応させる工程、および反応を失活させる工程を有し、
全工程を0℃以下にて行なうことを特徴とする、総炭素数7〜25の式(3)に示す長鎖ケトアルコールの製造方法である。
CH3−C(=O)−R1 ・・・(1)
(式中R1は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
R2−CHO ・・・(2)
(式中R2は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
(式中R1およびR2は上記定義に従う)
共役酸のpKaが25以上である塩基を含む溶液中に式(1)で示される総炭素数4〜22のメチルケトンを添加する工程、次いで式(2)で示される総炭素数3〜21のアルデヒドを添加して反応させる工程、および反応を失活させる工程を有し、
全工程を0℃以下にて行なうことを特徴とする、総炭素数7〜25の式(3)に示す長鎖ケトアルコールの製造方法である。
CH3−C(=O)−R1 ・・・(1)
(式中R1は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
R2−CHO ・・・(2)
(式中R2は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
さらに本発明は、上記の製造方法によって得られる長鎖ケトアルコール、およびそれに有するカルボニル基を還元剤を用いて水酸基に変換する式(4)で示されるアルカンジオールの製造方法である。
(式中R1およびR2は上記定義に従う)
本発明によれば、汎用化学品、機能性高分子用モノマーや医農薬原体の中間体などの生物活性物質原料等として重要な化合物である長鎖ケトアルコールおよびそれを還元してなる長鎖ジオールを、高収率かつ安価で、工業的に有利に製造することができる。
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造方法は、総炭素数4〜22のメチルケトンおよび炭素数3〜22の脂肪族アルデヒド化合物を用いる。該メチルケトン化合物は、CH3−C(=O)−R1で表され、該脂肪族アルデヒド化合物は、R2−CHOで表される。R1およびR2は、置換されていてもよい炭素数2〜20でかつ直鎖、分岐もしくは脂環式のアルキル基である。
前記R1またはR2で示されるアルキル基としては、例えば、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基,ジデシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基及びそれらの分岐異性体等が例示され、これらの中から前記定義に従う炭素数のものが選ばれる。
前記R1またはR2で示されるアルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、その炭素原子に結合している水素原子が、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基又はジアルキルアミノ基等で更に置換されていてもよい。
R1の炭素数は、入手性、溶解性の観点から2〜20であり、6〜13であるのが好ましい。炭素数が多すぎると、長鎖ケトアルコールの溶解性は低下し、製造時に固体が析出して攪拌性が低下する。なお、本明細書中において炭素数とは、R1およびR2がさらに炭素原子を含む置換基を有する場合、該置換基も含めた全ての炭素原子の合計数を意味する。
R2の炭素数は、入手性、溶解性の観点から2〜20であり、5〜12であるものが好ましい。炭素数が多すぎると、長鎖ケトアルコールの溶解性は低下し、製造時に固体が析出して攪拌性が低下する。
R1およびR2の構造は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、選択する化合物により目的化合物以外にアルデヒドまたはケトン同士の縮合物を含む混合物が得られる場合がある。該混合物は、再結晶化、蒸留、カラム分別、分取HPLC等の公知の分離方法により、各々単離することができる。
本発明により得られる長鎖ケトアルコールは、反応の選択性と低温での溶解性の点から総炭素数7〜25であり、R1−C(=O)−CH2−CH(−OH)−R2で表され、R1およびR2は前記記載の通りである。
R2の炭素数は、入手性、溶解性の観点から2〜20であり、5〜12であるものが好ましい。炭素数が多すぎると、長鎖ケトアルコールの溶解性は低下し、製造時に固体が析出して攪拌性が低下する。
R1およびR2の構造は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、選択する化合物により目的化合物以外にアルデヒドまたはケトン同士の縮合物を含む混合物が得られる場合がある。該混合物は、再結晶化、蒸留、カラム分別、分取HPLC等の公知の分離方法により、各々単離することができる。
本発明により得られる長鎖ケトアルコールは、反応の選択性と低温での溶解性の点から総炭素数7〜25であり、R1−C(=O)−CH2−CH(−OH)−R2で表され、R1およびR2は前記記載の通りである。
本発明の製造方法における反応機構は、式(1)で示されるメチルケトンに対して低温下で塩基を作用させることでケトンのα水素を引き抜き、エノラートを系中発生させた後、式(2)で示されるアルデヒドを反応させることで式(3)に示す長鎖ケトアルコールを得るものである。この時、置換基の少ないメチル側のα水素が引き抜かれて発生したものを速度論的エノラート、メチレン側のα水素が引き抜かれて発生したものを熱力学的エノラートと表現する、本発明により得られる長鎖ケトアルコールは、速度論的エノラートからアルデヒドと反応させることで収率良く得られる。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造方法に用いる塩基の共役酸のpKaは、メチルケトンのα水素のpKaより高いことが望ましい。ケトンα位の一般的なpKaの値は19〜20程度である。得られたエノラートの安定性の観点から、塩基としては共役酸のpKaが25以上のものを用い、そのような塩基として有機リチウム試薬を用いる事が好ましい。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造方法に使用する塩基は、共役酸のpKaがメチルケトンのα水素のpKaより高いものを用いる。これらの中で、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラザン等の有機金属試薬を用いることが好ましい。目的化合物の選択性の観点からは、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラザン等の嵩高い強塩基を用いる事が好ましい。これらの中で、共役酸の酸性度の観点からリチウムジイソプロピルアミドがより好ましい。一方、安全性の観点から、ブチルリチウム、リチウムテトラメチルピペリジドなど消防法上の第三類試薬よりも四類試薬を用いることが好ましく、リチウムヘキサメチルジシラザンなどが例示される。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造方法では、低温下で塩基に対してメチルケトンを徐々に滴下し速度論的エノラートを系中発生させた後、アルデヒドを加えて反応させる。塩基は等量以上を用いて反応を行うことが好ましい。一般に、金属水酸化物等の塩基を触媒量用いて反応を行う場合は、ケトンとアルデヒドの混合溶液に対して塩基を添加し反応させる。メチルケトンに対して塩基を滴下すると、ケトン同士が反応した生成物や熱力学的エノラートの生成が増加し、得られる長鎖ケトアルコールの選択性が低下する。触媒量の塩基で反応を行う場合、平衡反応となるため直鎖ケトアルコールの選択性が低下してしまう。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造に使用する溶媒としては、通常、一般的に市販されている溶媒を選択することができる。例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化アリール系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;が挙げられる。有機リチウム試薬は溶液中では会合状態で存在しているため、試薬としての反応性を高めるために配位性の高いエーテル系溶媒を用いることがより好ましい。
かかる溶媒の使用量としては、製造する長鎖ケトアルコールに対して1〜1000質量倍の範囲であることが好ましく、得られる長鎖ケトアルコールの溶解度や反応液の攪拌効率の観点からは、10質量倍以上であることが好ましく、反応速度の観点からは100質量倍以下であることが好ましい。
かかる溶媒の使用量としては、製造する長鎖ケトアルコールに対して1〜1000質量倍の範囲であることが好ましく、得られる長鎖ケトアルコールの溶解度や反応液の攪拌効率の観点からは、10質量倍以上であることが好ましく、反応速度の観点からは100質量倍以下であることが好ましい。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造における反応圧力に関しては、特に制限がなく、常圧でも加圧でもよい。しかし、操作性の容易な常圧で反応を行うことが望ましい。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造における反応温度は、メチルケトンに塩基を作用させ中間体を生成する際の選択性の観点から、メチルケトンの添加工程、アルデヒドの添加および反応の工程、並びに失活工程までの全製造工程で0℃以下であり、−80〜0℃であることが好ましく、−50〜0℃であることがより好ましい。反応温度が低いほど目的とするケトアルコールを得やすく、反応温度が高くなると意図しない副生物が増加する。各工程の反応時間は1分〜10時間とすることができる。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造に使用する塩基の使用量は、メチルケトンに対して1.0当量から1.3当量用いることが好ましい。メチルケトンに対して等量以下の塩基を用いると、発生したエノラートが塩基として作用し、残りのメチルケトンをエノラートへと変換する平衡反応が進行し、長鎖ケトアルコールの選択性が低下するため、確実に等量以上用いる事が望ましい。塩基がメチルケトンに対して1.5当量以上である場合、後添するアルデヒド由来のエノラートが形成、もしくは得られた長鎖ケトアルコールから副反応が進行するため目的の長鎖ケトアルコールの収率が低下するため好ましくない。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造法で使用するアルデヒドは、蒸留やカラム等の一般的な方法で精製したものを用いることが好ましい。
未精製のものを用いると、不純物による副反応や単離精製時に除去しなければならない。
未精製のものを用いると、不純物による副反応や単離精製時に除去しなければならない。
アルデヒドの反応工程終了後、例えば塩化アンモニウム等の一般的なクエンチ剤を加えて反応を失活させる工程を行ない、中和、抽出、再結晶、洗浄等によって長鎖ケトアルコールの粗生成物を得ることができる。長鎖ケトアルコールは再結晶化等の方法により単離精製できる。
本発明の長鎖ケトアルコールの製造法で得られた長鎖ケトアルコールは、適切な還元剤を用いて還元することで長鎖ジオールへと変換することができる。本発明の長鎖ケトアルコールの還元において用いられる還元方法は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ボラン、ボラン-テトラヒドロフランコンプレックス、ボラン‐ジメチルスルフィドコンプレックス、ボラン-ピリジンコンプレックスを用いる還元反応、または接触還元を用いる事が出来る。良好な収率を担保し、安全面も考慮した場合、水素化アルミニウム同等の反応性を有し、自然発火性の低い水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムを用いる事が好ましい。
本発明の長鎖ケトアルコールの還元反応に用いる還元剤の使用量は、ケトアルコールに対して1.0当量から10.0当量であることが好ましく、反応性と原子効率性の観点から1.1当量から2.0当量であることが好ましい。
本発明の長鎖ケトアルコールの還元反応で用いられる温度条件は、反応剤の活性と目的化合物の選択率を極度に損なわない範囲であればよいが、−40℃から140℃の範囲が好ましい。−40℃以下の場合はコスト面の観点から、140℃以上の場合は基質であるケトアルコールが分解し始めるため、基質安定性の観点から好ましくない。
本発明の長鎖ケトアルコールの還元反応で使用する溶媒としては、エステル、カルボニル基、ニトロ基などを有さない、一般的に市販されている試薬を用いる事が可能である。水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなど還元力の強い試薬を用いる場合は、溶媒自体と反応するためアルコール系溶媒は使用しないことが好ましい。
本発明の長鎖ジオール製造工程終了後、一般的なクエンチ(中和)、抽出、再結晶、洗浄によって長鎖ジオールを得ることができ、その後、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶化等の一般的な精製方法により単離精製できる。
以下に実施例、および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
<11−ヒドロキシ−9−エイコサノンの合成>
反応操作として、窒素雰囲気下、500mLの4つ口フラスコに塩基として52.5mmolのリチウムヘキサメチルジシラザン(LHMDS)(1.3M トルエン溶液,40.4 mL)と12mLのテトラヒドロフラン(THF)を加え、−40℃に冷却。基質であるメチルケトンとして50mmolの2−デカノン(9.47mL)と10mLのTHFからなる溶液を内温が−70℃を超えない範囲で滴下後、1時間攪拌した。次に、基質であるアルデヒドとして50mmolのデカナール(9.41mL)と10mLのTHFからなる溶液を、内温−40℃を超えない範囲で滴下し、1時間かけて−30℃に昇温した(反応の進行を確認)。次に、反応失活操作として、280mmolの塩化アンモニウム(15g)と水(50mL)からなる溶液を0℃以下に保ちながら滴下した。次いで中和操作として20℃以下で50mLの2N塩酸を加えしpH=6〜8に中和した。抽出操作として、50mLの酢酸エチルを系中に加えて400rpm−5分間攪拌し、分液する操作を3回繰り返し、得られた有機相を超純水と飽和食塩水を用いて洗浄した後、溶媒を留去して得られた粗体中に含まれる11−ヒドロキシ−9−エイコサノンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量し、粗体収率を求めたところ、74%(11.6g)であった。得られた粗体をヘキサンに40℃で完溶させ再結晶を行い、7.1g(単離収率45%)の白色結晶を得た。下記に示す1H−NMR測定結果より、得られた白色結晶が11−ヒドロキシ−9−エイコサノンであることを同定。また得られた白色結晶の液体クロマトグラフィー分析より、純度が99%以上であることを確認した。
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件>
カラム:ODS−80Tm×2本(東ソー)
溶離液:メタノール:THF=90:10(体積比)
流速:0.8mL/min
サンプル濃度:20mg/mL
打ち込み量:20μL
<1H−NMR測定結果>
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.26 - 1.62 (m, 28H), 2.41 (t, 2H), 2.51 (dd, 1H ), 2.61 (dd, 1H), 3.04 (d, H), 4.01 (m, 1H).
<11−ヒドロキシ−9−エイコサノンの合成>
反応操作として、窒素雰囲気下、500mLの4つ口フラスコに塩基として52.5mmolのリチウムヘキサメチルジシラザン(LHMDS)(1.3M トルエン溶液,40.4 mL)と12mLのテトラヒドロフラン(THF)を加え、−40℃に冷却。基質であるメチルケトンとして50mmolの2−デカノン(9.47mL)と10mLのTHFからなる溶液を内温が−70℃を超えない範囲で滴下後、1時間攪拌した。次に、基質であるアルデヒドとして50mmolのデカナール(9.41mL)と10mLのTHFからなる溶液を、内温−40℃を超えない範囲で滴下し、1時間かけて−30℃に昇温した(反応の進行を確認)。次に、反応失活操作として、280mmolの塩化アンモニウム(15g)と水(50mL)からなる溶液を0℃以下に保ちながら滴下した。次いで中和操作として20℃以下で50mLの2N塩酸を加えしpH=6〜8に中和した。抽出操作として、50mLの酢酸エチルを系中に加えて400rpm−5分間攪拌し、分液する操作を3回繰り返し、得られた有機相を超純水と飽和食塩水を用いて洗浄した後、溶媒を留去して得られた粗体中に含まれる11−ヒドロキシ−9−エイコサノンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量し、粗体収率を求めたところ、74%(11.6g)であった。得られた粗体をヘキサンに40℃で完溶させ再結晶を行い、7.1g(単離収率45%)の白色結晶を得た。下記に示す1H−NMR測定結果より、得られた白色結晶が11−ヒドロキシ−9−エイコサノンであることを同定。また得られた白色結晶の液体クロマトグラフィー分析より、純度が99%以上であることを確認した。
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件>
カラム:ODS−80Tm×2本(東ソー)
溶離液:メタノール:THF=90:10(体積比)
流速:0.8mL/min
サンプル濃度:20mg/mL
打ち込み量:20μL
<1H−NMR測定結果>
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.26 - 1.62 (m, 28H), 2.41 (t, 2H), 2.51 (dd, 1H ), 2.61 (dd, 1H), 3.04 (d, H), 4.01 (m, 1H).
[比較例1](ケトンに塩基を添加する方法による合成)
塩基であるLHMDSと、基質である2−デカノンの投入順序を入れ替え、2−デカノンのTHF溶液に対してLHMDSのTHF溶液を滴下したこと以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコール合成を実施したところ、粗体収率は25%であった。
塩基であるLHMDSと、基質である2−デカノンの投入順序を入れ替え、2−デカノンのTHF溶液に対してLHMDSのTHF溶液を滴下したこと以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコール合成を実施したところ、粗体収率は25%であった。
[比較例2](塩基とケトンとの反応温度が5℃)
反応中の保持温度を全て5℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は40%であった。
反応中の保持温度を全て5℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は40%であった。
[比較例3](反応失活温度のみが5℃)
反応失活温度を5℃とした以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は46%であった。
反応失活温度を5℃とした以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は46%であった。
[比較例4](非特許文献1と同等の方法)
塩基として50%水酸化ナトリウム水溶液をデカノンに対して0.5当量加え、反応とクエンチを5℃で行う以外は実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は6%であった。
塩基として50%水酸化ナトリウム水溶液をデカノンに対して0.5当量加え、反応とクエンチを5℃で行う以外は実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は6%であった。
[比較例5](特許文献1と同等の方法)
2−デカノンとデカナールのTHF溶液(50℃)に対して塩基量が0.5 mol%となるように1%水酸化ナトリウム水溶液を加え、塩基添加からクエンチまでの操作を50℃で行う以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は5%であった。
2−デカノンとデカナールのTHF溶液(50℃)に対して塩基量が0.5 mol%となるように1%水酸化ナトリウム水溶液を加え、塩基添加からクエンチまでの操作を50℃で行う以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は5%であった。
[比較例6](特許文献2と同等の方法)
2−デカノンとデカナール、0.05 mol%の水酸化ナトリウム(固体)のTHF溶液を50℃に加熱し、濾過によりクエンチする以外は実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は6%であった。
2−デカノンとデカナール、0.05 mol%の水酸化ナトリウム(固体)のTHF溶液を50℃に加熱し、濾過によりクエンチする以外は実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ、粗体収率は6%であった。
[実施例2](塩基にLDA)
用いる塩基をリチウムジイソプロピルアミド(LDA)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコール合成を実施したところ、粗体収率は75%であった。
用いる塩基をリチウムジイソプロピルアミド(LDA)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコール合成を実施したところ、粗体収率は75%であった。
[実施例3](C20長鎖ケトアルコール)
ケトンとして2-ドデカノンを使用しアルデヒドとしてオクタナールを使用する以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ粗体収率60%で得られた。
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.25 - 1.63 (m, 28H), 2.43 - 2.49 (m, 3H), 2.58 (d, 1H), 3.04 (d, H), 4.01 (m, 1H).
ケトンとして2-ドデカノンを使用しアルデヒドとしてオクタナールを使用する以外は、実施例1と同様の方法でケトアルコールの合成を実施したところ粗体収率60%で得られた。
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.25 - 1.63 (m, 28H), 2.43 - 2.49 (m, 3H), 2.58 (d, 1H), 3.04 (d, H), 4.01 (m, 1H).
実施例1〜3、比較例1〜6の結果を表1に示す。表1の結果より、長鎖ケトアルコールは本発明の製造方法によって収率よく製造することができる。
[実施例4](C20長鎖ケトアルコールの還元)
窒素雰囲気下3Lの4つ口フラスコにVITRIDE(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)(70wt%, 121.0 ml, 428.0 mmol)とTHF(1L)からなる溶液を0℃に冷却、11−ヒドロキシ−9−エイコサノン(133.0 g, 425.0 mmol)とTHF(466 ml)からなる溶液を内温5℃以下で滴下した。定量分析により転化率が99%以上になるまでVITRIDEを追加し、転化率>99%確認後、内温5℃以下でメタノール(183 ml)を滴下した。30分程度攪拌し反応液から水素(気泡)が出ないことを確認後、硫酸ナトリウム(290.0 g, 2.0 mol)と水(976 g)からなる懸濁液を内温5℃以下で滴下。懸濁液をろ過後、ろ液を後処理しクルード体134 gを取得。その後、再結晶(ヘキサン10wt%)により55.0 gの9,11−エイコサンジオールを得た(単離収率46.2%)。
ガスクロマトグラフィー(GC)条件は微極性液相カラム(Rtx-5ms、RESTEK)を用い、INJ. 250℃,DET. 250℃、カラム温度250℃一定で分析し、検出時間は5.7 min、純度98.6%であった。
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.27-1.65 (m, 32H), 1.60 (dd, 2H), 2.32 (brs, 2H), 3.92-3.94 (m, 2H).
窒素雰囲気下3Lの4つ口フラスコにVITRIDE(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)(70wt%, 121.0 ml, 428.0 mmol)とTHF(1L)からなる溶液を0℃に冷却、11−ヒドロキシ−9−エイコサノン(133.0 g, 425.0 mmol)とTHF(466 ml)からなる溶液を内温5℃以下で滴下した。定量分析により転化率が99%以上になるまでVITRIDEを追加し、転化率>99%確認後、内温5℃以下でメタノール(183 ml)を滴下した。30分程度攪拌し反応液から水素(気泡)が出ないことを確認後、硫酸ナトリウム(290.0 g, 2.0 mol)と水(976 g)からなる懸濁液を内温5℃以下で滴下。懸濁液をろ過後、ろ液を後処理しクルード体134 gを取得。その後、再結晶(ヘキサン10wt%)により55.0 gの9,11−エイコサンジオールを得た(単離収率46.2%)。
ガスクロマトグラフィー(GC)条件は微極性液相カラム(Rtx-5ms、RESTEK)を用い、INJ. 250℃,DET. 250℃、カラム温度250℃一定で分析し、検出時間は5.7 min、純度98.6%であった。
1H−NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (dt, 6H), 1.27-1.65 (m, 32H), 1.60 (dd, 2H), 2.32 (brs, 2H), 3.92-3.94 (m, 2H).
以上の結果より、本発明の長鎖ケトアルコールの製造方法は、高選択的に炭素数7〜25の長鎖ケトアルコールを製造することができる。
本発明によれば、汎用化学品、機能性高分子用モノマーや医農薬原体の中間体などの生物活性物質原料として重要な化合物である長鎖ケトアルコールを高収率かつ安価で、工業的に有利に製造することができる。
Claims (9)
- 共役酸のpKaが25以上である塩基を含む溶液中に式(1)で示される総炭素数4〜22のメチルケトンを添加する工程、次いで式(2)で示される総炭素数3〜21のアルデヒドを添加して反応させる工程、および反応を失活させる工程を有し、
全工程を0℃以下にて行なうことを特徴とする、総炭素数7〜25の式(3)に示す長鎖ケトアルコールの製造方法。
CH3−C(=O)−R1 ・・・(1)
(式中R1は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
R2−CHO ・・・(2)
(式中R2は、炭素数2〜20のアルキル基を示す。)
- 用いる塩基が有機リチウム系塩基である請求項1に記載の長鎖ケトアルコールの製造方法。
- 用いる塩基がリチウムヘキサメチルジシラザンである請求項1または2に記載の長鎖ケトアルコールの製造方法。
- 用いる塩基がリチウムジイソプロピルアミドである請求項1または2に記載の長鎖ケトアルコールの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる式(3)で示される長鎖ケトアルコール。
- 総炭素数が18〜23である請求項5に記載の長鎖ケトアルコール。
- R1およびR2が互いに同じである請求項5または6に記載の長鎖ケトアルコール。
- R1およびR2が互い異なる請求項5または6に記載の長鎖ケトアルコール。
- 請求項5〜8のいずれか1項に記載の長鎖ケトアルコールに有するカルボニル基を還元剤を用いて水酸基に変換する、式(4)で示されるアルカンジオールの製造方法。
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CN109678642A (zh) * | 2019-01-17 | 2019-04-26 | 中国科学院长春应用化学研究所 | 一种基于醛酮缩合反应合成二烯烃类化合物的方法 |
-
2014
- 2014-12-26 JP JP2014263910A patent/JP2016124788A/ja active Pending
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