JP2016121122A - 1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1)で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法であって、式(2)で表される化合物を金属触媒に接触させて得る、式(1)で表される化合物の製造方法。
[R1及びR2は各々独立にH、置換/未置換のアルキル基又は置換/未置換のアリール基、或いは互いに連結して、炭素環を形成していてもよい]
【選択図】なし
Description
従来、1−ブロモ−1−フルオロエチレンの製造方法として、以下に示す1−ブロモ−1−フルオロエチレンの3つの合成方法が知られている。
(A)特許文献1には、次のスキームに示す方法が開示されている。
(B)非特許文献1及び非特許文献2には、次のスキームに示す方法が開示されている。
(C)非特許文献3には、次のスキームに示す方法が開示されている。
また、非特許文献1及び2に記載の方法は、ジブロモフルオロエタン8の脱臭化水素反応の様式が2通りあり、熱力学的に安定な異性体9が多く生成し、目的の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(化合物6)が低い選択性でしか得られない、という不利点がある。
また、非特許文献3に記載の方法は、高温条件が必要であり、かつ目的の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の収率が低い(収率13%)という不利点がある。
従って、本発明の目的は、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物を高い収率で、且つ比較的穏和な条件下で容易に得ることのできる工業的に有利な1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法を提供することにある。
式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法であって、
式(2):
で表される化合物を金属触媒に接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程Aを含む製造方法
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法であって、
式(2):
で表される化合物を金属触媒に接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程Aを含む製造方法。
項2.
R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基である、項1に記載の製造方法。
項3.
前記金属触媒が、1種以上の金属元素の酸化物である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
更に、工程Aの前に、
式(4):
で表される化合物をHBrと反応させて、前記式(2)で表される化合物を得る工程Bを含む項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.
式(2):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される化合物の製造方法であって、無機固体の存在下で、
式(4):
で表される化合物をHBrと反応させて、前記式(2)で表される化合物を得る工程Bを含む製造方法。
項6.
式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物、及び
式(3):
で表される化合物
を含有する組成物。
項7.
R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基である、項6に記載の組成物。
本明細書中、「ハロゲン原子」の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を包含する。
本明細書中、「アルキル基」の例は、メチル、エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、及び3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を包含する。
本明細書中、「フルオロアルキル基」とは、1個以上のフッ素原子で置換されているアルキル基を意味する。当該「フルオロアルキル基」は、「パーフルオロアルキル基」を包含する。「パーフルオロアルキル基」の例は、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、及びC6F13等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を包含する。
本発明の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法は、式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法であって、
式(2):
で表される化合物を金属触媒に接触させて、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)を得る工程Aを含む製造方法である。
本明細書中、前記式(2)で表される化合物を原料化合物(2)と称する場合がある。
Rfは、好ましくは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基(例、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13)である。
R1及びR2で表される「1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、Rf、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ホルミル基、メトキシ基、エトキシ基、−C(O)NRaRb(ここで、Ra、及びRbは、同一又は異なって、例えば、メチル基、又はエチル基である)等が挙げられる。
Rfは、好ましくは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基(例、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13)である。
(a)シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタン、シクロオクタン等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数3〜8)のシクロアルカン、
(b)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、及びシクロオクテン等の炭素数5〜10(好ましくは、炭素数5〜8)のシクロアルケン、及び
(c)シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の炭素数5〜10(好ましくは、炭素数5〜8)のシクロアルカジエン
等の非芳香族炭素環が挙げられる。
R2は、好ましくは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
本発明の好適な一態様においては、R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基である。
本発明の特に好適な一態様においては、R1は水素原子であり、及びR2は水素原子である。当業者に明らかなように、当該態様においては、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)は1−ブロモ−1−フルオロエチレンであり、原料化合物(2)は、1−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンである。
当該酸化物の例は、Cr2O3、ZnO、Co2O3、NiO、及びCuO等の遷移金属の酸化物;Li2O、K2O、及びNa2O等のアルカリ金属の酸化物;CaO、及びMgO等のアルカリ土類金属の酸化物;並びにAl2O3等のその他の金属の酸化物を包含する。
工程Aの反応に用いられるCr2O3は、好ましくは、非晶質のCr2O3である。
工程Aの反応に用いられるAl2O3、好ましくは、大きい比表面積を有することが好ましい。具体的には、Al2O3の非表面積は、好ましくは10〜1000m2/gの範囲内、より好ましくは20〜500m2/gの範囲内である。
前記金属触媒は、特に好ましくは、Al2O3(好ましくは、γ−Al2O3)を含有する金属触媒である。
前記金属触媒は、より特に好ましくは、Al2O3(好ましくは、γ−Al2O3)から実質的になる金属触媒である。
前記金属触媒は、最も好ましくは、Al2O3(好ましくは、γ−Al2O3)からなる金属触媒である。
前記金属触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
2種以上の金属触媒を組み合わせて使用する場合(例、2種以上の金属種を混合する場合)、好ましくは、そのうち1種は、金属としてAlを含有する金属触媒である。
当該無機担体としては、例えば、炭素、金属、金属硫酸塩、金属塩化物、金属酸化物、金属フッ化物、及び合金、並びにこれらの複合体が例示される。
当該無機担体としては、具体的には、例えば、SiO2、メチル化SiO2、Al2O3、MoO3、ThO2、ZrO2、TiO2、Cr2O3、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2、TiO2−ZrO2、Al2O3−B2O3、SiO2−WO3、SiO2−NH4F、HSO3Cl−Al2O3、HF−NH4−Y、HF−Al2O3、NH4F−SiO2−Al2O3、AlF3−Al2O3、Ru−F−Al2O3、F−Al2O3、KF−Al2O3、AlPO4、AlF3、ボーキサイト、カオリン、活性炭、グラファイト、Pt−グラファイト、Al、Al−Mg、Ni−Mo、石綿、シリカゲル、活性白土、珪藻土、ゼオライト、及び合成ゼオライト(例、モレキュラーシーブス)が例示される。
前記担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
フッ素化の程度については、特に限定的ではないが、例えば、フッ素含有量が触媒重量に対して1〜35wt%程度の範囲内、好ましくは5〜30wt%の範囲内である金属触媒を好適に用いることができる。
当該フッ素化処理の処理条件は、金属触媒の前記フッ素含有量が所望する量になるように、適宜設定すればよい。当業者は、使用する金属触媒、及び含フッ素化合物(フッ素化剤)の種類等に応じて、技術常識に基づいて、当該処理条件を設定できる。
当該フッ素化処理の処理温度は、後記で説明する工程Aの反応温度よりも高いことが好ましく、具体的には、例えば、通常、150〜500℃の範囲内、好ましくは、200〜450℃の範囲内、より好ましくは、200〜420℃の範囲内、更に好ましくは、200〜380℃の範囲内、より更に好ましくは、220〜360℃の範囲内、特に好ましくは240〜350℃の範囲内である。
当該不活性ガスは、工程Aの反応後にも残存することにより、本発明の製造方法で得られる1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)を前述した合成原料として用いる際に、希釈剤としても機能し得る点で好ましいことがあり得る。しかし、後述するように、本発明の製造方法によれば、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)、及び後記で説明する、希釈剤として機能し得る化合物(3)を含有する組成物が得られるので、この観点での、このような不活性ガスの使用の意義は小さくなる。言い換えれば、当該化合物(3)の量に応じて、このような不活性ガスの使用を省略するか、又はその使用量を減じることができる。
当該反応生成物は、式(3):
で表される化合物(本明細書中、化合物(3)と称する場合がある。)も含有する。
すなわち、通常、本発明の製造方法においては、前記反応器の反応出口で、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)、及び前記化合物(3)を含有する反応生成物(すなわち、組成物)が得られる。
当該反応生成物(組成物)における1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)、及び前記化合物(3)の比率は、例えば、工程Aに用いる触媒、及び反応条件によって調製できる。例えば、前述した好ましい反応温度の範囲内において、当該温度を比較的高くすることで化合物(3)の選択率を高くすることができ、また、前述したフッ素化されていてもよい金属触媒中の好ましいフッ素含有量の範囲内において、当該含有量を比較的高くすることで化合物(3)の選択率を高くすることができる。一方、例えば、前述した好ましい反応温度の範囲内において、当該温度を比較的低くすることで化合物(1)の選択率を高くすることができる。
当該反応生成物は、後記で説明する本発明の組成物であることができる。
当該反応生成物は、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)を含有する組成物として、そのまま用いてもよいし、蒸留等の公知の方法によって分離及び精製してもよい。当該分離及び精製においては、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)と、前記化合物(3)とを別々に回収してもよい。当該蒸留の条件は、本発明が属する技術分野の技術常識に基づいて、適当に設定できる。
このように未反応の原料化合物(2)をリサイクルすることによって、原料転化率が低い場合であっても、高い生産性を維持することができる。
本発明の製造方法によれば、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)の選択率は好ましくは45%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは85%以上あることができる。
本発明の製造方法によれば、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)の収率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは85%以上であることができる。
式(3b):
で表される化合物(本明細書中、副生成物(3b)と称する場合がある。)、及び/又は
式(3c):
で表される化合物(本明細書中、副生成物(3c)と称する場合がある。)
を含有する可能性がある。
1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)の含有率が、好ましくは、45〜95mol%、より好ましくは、75〜95mol%であり、
原料化合物(2)(好ましくは、1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン)の含有率が、好ましくは、0〜40mol%、より好ましくは、0〜10mol%であり、
化合物(3)(好ましくは、1,1,1-トリフルオロエタン)の含有率が、好ましくは、0〜50mol%、より好ましくは、0〜20mol%であり、
副生成物(3b)(好ましくは、1,1-ジフルオロエチレン)の含有率が、好ましくは、0〜35mol%、より好ましくは、0〜5mol%であり、且つ
副生成物(3c)(好ましくは、1,1-ジブロモエチレン)の含有率が、好ましくは、0〜10mol%、より好ましくは、0〜2mol%である。
1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)の含有率が、好ましくは、50〜100mol%、より好ましくは、90〜100mol%であり、
原料化合物(2)(好ましくは、1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン)の含有率が、好ましくは、0〜10mol%、より好ましくは、0〜1mol%であり、
化合物(3)(好ましくは、1,1,1-トリフルオロエタン)の含有率が、好ましくは、0〜40mol%、より好ましくは、0〜20mol%であり、
副生成物(3b)(好ましくは、1,1-ジフルオロエチレン)の含有率が、好ましくは、0〜10mol%、より好ましくは、0〜2mol%であり、且つ
副生成物(3c)(好ましくは、1,1-ジブロモエチレン)の含有率が、好ましくは、0〜2mol%、より好ましくは、0〜1mol%である。
である。
工程Aで用いられる原料化合物(2)は、例えば、Journal of the Chemical Society; (1956); p. 61-69に記載の方法、又はこれに準じた方法により製造できる。
工程Aで用いられる原料化合物(2)は、例えば、
式(4):
で表される化合物(本明細書中、化合物(4)と称する場合がある。)
をHBrと反応させて、原料化合物(2)を得る工程Bを含む製造方法によって製造できる。
工程Bの反応時間は、通常、2秒〜100時間の範囲内である。
工程Bの反応は、不活性ガスの不存在下で行ってもよく、窒素、ヘリウム、又はアルゴン等の不活性ガスの存在下で行ってもよい。不活性ガスの使用を省略するか、又はその使用量を減じることができることは、前記工程Aで述べたことと同様である。
当該無機固体の好ましい形態は、好ましくは、ペレット、又は粒等である。
工程Bの反応系において、当該無機固体は、好ましくは、複数の、ペレット、又は粒として存在する。
当該無機固体のペレット、又は粒等の形は、特に限定されないが、例えば、球状、円柱状、又はドーナツ状等であることができる。
当該無機固体のペレット、又は粒等のサイズ(直径)は、好ましくは0.1〜50mmの範囲内、より好ましくは0.2〜30mmの範囲内、及び更に好ましくは0.3〜20mmの範囲内である。
当該無機固体は、工程Bの反応の触媒として機能できる。
前記無機固体は、工程Bの反応条件で、少なくともその一部が固体であればよい。
前記無機固体の例は、前記工程Aについて例示した無機担体を包含する。
前記無機固体は、多孔質であることが好ましい。前記無機固体の比表面積は、好ましくは10〜6000m2/gの範囲内、より好ましくは100〜4000m2/gの範囲内である。
前記無機固体の好ましい例は、活性炭、石綿、シリカゲル、活性白土、珪藻土、モレキュラーシーブス、及びゼオライトを包含する。
前記無機固体の特に好ましい例は、活性炭を包含する。
前記無機固体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
当該工程Bのために用いる反応器は、特に限定されず、例えば、前記で説明した反応器を用いることができる。
前記無機固体を用いる場合、工程Bは、前記無機固体を充填した管状の反応器に化合物(4)、及びHBrを供給することにより、実施できる。
この場合、工程BにおけるHBrの量は、化合物(4)の1モルに対して、好ましくは、0.1〜2.5モルの範囲内である。
この場合、工程Bの反応を行う反応容器と工程Aの反応を行う反応容器を連結して、工程Bの反応で得られた原料化合物(2)を、連続的に、工程Aの反応を行う反応容器に流通させてもよい。また、単一の反応容器内に、工程B及び工程Aの反応の各原料化合物を順次投入することで、これらの反応を当該単一の反応容器内で行わせてもよい。
すなわち、本発明の一態様は、
1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)の製造方法であって、
無機担体の存在下で、化合物(4)をHBrと反応させることを含む、製造方法
である。
当該製造方法は、工程Aの条件に準じる条件、及び方法を採用して実施すればよい。
本発明の好適な一態様においては、前記金属触媒は、無機担体に担持された金属触媒であることができる。当該無機担体は、化合物(4)とHBrとの反応の触媒として好適に機能できる。
当該不活性ガスは、当該反応容器内での工程Aの反応後にも残存することにより、本発明の製造方法で得られる1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)を前述した合成原料として用いる際に、希釈剤としても機能し得る点で好ましいことがあり得る。しかし、前述したように、本発明の製造方法によれば、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)、及び後記で説明する、希釈剤として機能し得る化合物(3)を含有する組成物が得られるので、この観点での、このような不活性ガスの使用の意義は小さくなる。言い換えれば、当該化合物(3)の量に応じて、このような不活性ガスの使用を省略するか、又はその使用量を減じることができる。
化合物(4)(好ましくは、フッ化ビニリデン)の流量(0℃、1atmでの流量)は、通常、5〜5000cc/minの範囲内であり、好ましくは、10〜3000cc/minの範囲内である。
「化合物(4)(好ましくは、フッ化ビニリデン)の流量(0℃、1atmでの流量)」の「HBrの流量(0℃、1atmでの流量)」に対する比は、通常、0.1〜2.5の範囲内であり、好ましくは、0.5〜1.5の範囲内である。
当該精製において回収された、化合物(4)、及び/又はHBrは、再び工程Bの反応に再使用してもよい。ここで、前述のように、HBrは工程Bにおいて完全に消費させた場合は、化合物(4)を工程Bの反応に再使用してもよい。
この場合、工程Bの反応を行う反応容器と工程Aの反応を行う反応容器を連結して、工程Bの反応で得られた原料化合物(2)を、連続的に、工程Aの反応を行う反応容器に流通させてもよい。
すなわち、本発明の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法は、工程A、工程B、及び工程Cを含む製造方法であることができる。
工程Cの反応は、例えば、工程Bの反応を行う反応容器内で実施し、次いで同反応容器内で工程Bを実施してもよい。
化合物(1)を含有する組成物のうち、更に化合物(3)を含有する組成物は新規組成物である。
すなわち、本発明の組成物は、
式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物、及び
式(3):
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
を含有する。
R2は、好ましくは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
本発明の好適な一態様においては、R1は水素原子であり、及びR2は水素原子である。
本発明の当該組成物は、例えば、前記で説明した本発明の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)の製造方法において当該化合物(3)を完全には除去しないことによって、製造できる。従って、当該本発明の組成物は、低コストで製造することが可能である。
当該本発明の組成物は、例えば、前記で説明した本発明の1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)の製造方法において、工程Aの反応後、水洗、蒸留などの条件で反応生成物を精製することによって好適に製造できる。
すなわち、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)は、重合化反応等の種々の反応に供されることができる。このような反応において、当該化合物(3)(好ましくは、1,1,1-トリフルオロエタン)は、非常に安定な化合物であるので、当該化合物(3)(好ましくは、1,1,1-トリフルオロエタン)は希釈剤として機能できる。この場合、当該化合物(3)は、好ましくは、式(3)におけるR1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基である化合物である。
また、当該化合物(3)のうち、1,1,1-トリフルオロエタン等は、冷媒としても機能できる。
当該本発明の組成物は、より好ましくは、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)を60mol%以上、且つ100mol%未満の量で含有する。
当該本発明の組成物は、更に好ましくは、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)(好ましくは、1-ブロモ-1-フルオロエチレン)を75mol%より多く、且つ100mol%未満(例、95mol%以下)の量で含有する。
当該本発明の組成物は、更に好ましくは、当該化合物(3)(好ましくは、1,1,1-トリフルオロエタン)を0mol%より多く(例、1%mol以上)、且つ20mol%以下の量で含有する。
当該安定化剤としては、例えば、
脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン、脂環式第二級アミン、脂環式第三級アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、及びポリマー担持アミン化合物等のアミン化合物
等が挙げられる。
脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、及びエチレンジアミンが挙げられる。
脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが挙げられる。
脂環式第二級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリンが挙げられる。
脂環式第三級アミンとしては、例えば、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン、5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−5−エン、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ハロアニリン、及びニトロアニリンが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、メラミン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、及びイミダゾールが挙げられる。
ポリマー担持アミン化合物としては、例えば、ポリアリルアミン、及びポリビニルピリジンが挙げられる。
当該安定化剤としては、また例えば、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1個以上の原子を有する化合物が挙げられる。当該化合物としては、1個以上の芳香性6員炭素環、並びに当該1個以上の芳香性6員炭素環の1個以上の環構成炭素原子に直接結合している酸素原子又は硫黄原子を有する炭素数6〜20の化合物が好ましい。その例としては、具体的には、例えば、ヒドロキノン、4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン(TBH)、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及びフェノチアジン等が挙げられる。
テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、カンフェン、α-テルピネン、リモネン、γ-テルピネン、p-シメン、及びテルピノーレン等が挙げられる。
当該安定化剤の含有量は、好ましくは、10〜50000wtppmの範囲内である。当該範囲内では、当該安定化剤は、好適に機能できる。
当該安定化剤は、1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物(1)を精製した後に添加してもよく、及び/又は工程Aの前の工程Bで生成する原料化合物(2)(好ましくは、1−ブロモ−1,1−ジフルオロエタン)を精製した後(好ましくは、工程Aに入る直前)に添加してもよい。
γ-Al2O3 (組成: Al2O3 97 w/w %, SiO2 0.2 w/w %,) 15.0gを触媒として、温度計を備えた金属製反応管に充填した。この反応管内部を大気圧(1 atm)および300℃に維持し、窒素(N2)を反応管に供給した。次に、窒素(N2)の供給を継続したまま、無水フッ化水素(HF)を反応管に供給し、触媒を前処理した。その後、窒素(N2)を60 cc/min(0℃、1atmでの流量)で供給しながら出発原料として1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン( CH3CF2Br )を30cc/min(0℃、1atmでの流量)の速度で供給し、反応管の温度を250℃に変更した。この時の接触時間(W/F0)は10.0 g・sec/ccであった。所定の反応温度になってから2時間後の反応管の流出物を分析した。この実験を実験1とし、その分析結果を以下の表1に示した。実験1と同様に、但し、反応温度を300℃に変更して、同様に当該所定の反応温度になってから2時間後の反応管の流出物を分析した。この実験を、実験2とし、その分析結果を、以下の表1に示した。実験1と同様に、但し、反応温度が350℃になってから2時間後の反応管の流出物を分析した。この実験を実験3とし、その結果を以下の表1に示した。
尚、各生成物の構造は以下の通りである;
1,1-ジフルオロエチレン ( CH2=CF2 )
1,1,1-トリフルオロエタン ( CH3CF3 , HFC-143a )
1-ブロモ-1-フルオロエチレン ( CH2=CFBr )
1,1-ジブロモエチレン ( CH2=CBr2 )
実施例1で使用したものと同じ処理をした触媒を用い、但し、用いる触媒量を10.0 gに変更し、供給する窒素(N2)の流量を80 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更し、供給する1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン(CH3CF2Br)の流量を40 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更し、及び反応温度を280℃に変更した以外は実施例1の実験1と同様の条件で実験(実験1)を行った。接触時間(W/F0)は5.0 g・sec/ccであった。同様に、但し、反応温度を300℃に変更した実験2、及び反応温度320℃に変更した実験3を実施し、実施例1と同様の分析を行った。結果を表2に示す。
実施例1で使用したものと同じ処理をした触媒を用い、但し、用いる触媒量を25.0 gに変更し、供給する窒素(N2)の流量を60 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更し、供給する1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン(CH3CF2Br)の流量を40 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更し、及び反応温度を280℃に変更した以外は実施例1の実験1と同様の条件で実験(実験1)を行い、そのままの状態で反応を28時間継続した。接触時間(W/F0)は15.0 g・sec/ccであった。前記所定の反応温度になってから、2時間後、9時間後、19時間後、及び28時間後の分析結果をそれぞれ表3に示す。
酸化クロム(Cr2O3) 20.0gを触媒として、実施例1で用いたものと同じ反応管に充填した。この反応管を大気圧(1 atm)および300℃に維持し、実施例1の記載と同じ触媒の前処理を行った。その後、窒素(N2)を60 cc/min(0℃、1atmでの流量)で供給しながら1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン( CH3CF2Br )を30cc/min(0℃、1atmでの流量)の速度で供給し、反応管の温度を260℃に変更した。この時の接触時間(W/F0)は13.3 g・sec/ccであった。前記所定の反応温度になってから2時間後の反応管の流出物を分析した(実験1)。実験1と同様に、但し反応温度を300℃に変更した実験2を実施した。これらの結果を、表4に示す。
実施例4で使用したものと同じ処理をした触媒を用い、但し、用いる触媒量を30.0 gに変更し、供給する窒素(N2)の流量を40 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更し、供給する1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン(CH3CF2Br)の流量を20 cc/min(0℃、1atmでの流量)に変更して、反応温度260℃で実施例4と同様の実験を行った(実験1)。接触時間(W/F0)は30.0 g・sec/ccであった。実験1と同様に、但し、反応温度を300℃に変更した実験2を実施した。これらの結果をそれぞれ表5に示す。
実施例1で使用したものと同じ処理をした触媒を用い、但し、供給する1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン(CH3CF2Br)のガスを臭化水素 (HBr) 及びフッ化ビニリデン (CH2=CF2) に変更し、及び反応温度を300℃で、実施例1の実験1と同様の条件で実験を行った (実験1)。臭化水素の流量は、30 cc/min(0℃、1atmでの流量)であり、及びフッ化ビニリデンの流量は、50 cc/min(0℃、1atmでの流量)であった。接触時間 (W/F0) は、11.3 g・sec/cc であった。実験1と同様に、但し、臭化水素の流量を50 cc/minに変更し、及び接触時間 (W/F0) を、9.0 g・sec/cc に変更した実験2を実施した。これらの結果をそれぞれ表7に示す。表中、出発原料転化率の値は、フッ化ビニリデンに基づく。
実施例1で使用したものと同じ反応管を使用し、この反応管内部には何も充填せずに大気圧(1 atm)および250℃に維持し、窒素(N2)を60 cc/min(0℃、1atmでの流量)で反応管に供給して2時間維持した。次に、窒素(N2)60 cc/minの供給を継続したまま、1-ブロモ-1,1-ジフルオロエタン( CH3CF2Br )を30cc/min(0℃、1atmでの流量)の速度で供給し、反応管の温度を250℃に維持した。この時の接触時間(V/F0)は空間部分の容積Vが21.0ccであったため、14.0 secであった。所定の反応温度になってから2時間後の反応管の流出物を分析した。この実験を実験1とし、その分析結果を以下の表6に示した。同様に、但し、反応温度をそれぞれ300℃、350℃、400℃、又は450℃に変更した実験2〜5を実施した。これらの分析結果を表6に示した。なお、当該比較例1では、原料転化率が極めて低かったので、反応管出口組成(GC%)を示した。
活性炭15gを触媒として、温度計を備えた反応管に充填した。この反応管を大気圧(1 atm)及び235℃に維持し、窒素(N2)を反応管に供給し、反応管内部を窒素置換した。窒素(N2)の供給を停止した後、フッ化ビニリデン (CH2=CF2)及び臭化水素を各々50cc/minで供給した。接触時間は、9.0 g・sec/ccであった。その10時間後の反応管の流出物を分析し、その分析結果を下記に示した。表中、出発原料転化率の値は、フッ化ビニリデンに基づく。
実施例7で使用したものと同じ反応管を使用し、但し、この反応管内部には何も充填せずに大気圧(1 atm)及び235℃又は300℃に維持し、窒素(N2)を反応管に供給し、反応管内部を窒素置換した。窒素(N2)の供給を停止した後、フッ化ビニリデン (CH2=CF2) 及び臭化水素 (HBr) を各々10cc/minで供給した。その10時間後の反応管の流出物を分析し、その分析結果を下記に示した。表中、出発原料転化率の値は、フッ化ビニリデンに基づく。
Claims (7)
- 式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物の製造方法であって、
式(2):
で表される化合物を金属触媒に接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程Aを含む製造方法。 - R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記金属触媒が、1種以上の金属元素の酸化物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 更に、工程Aの前に、
式(4):
で表される化合物をHBrと反応させて、前記式(2)で表される化合物を得る工程Bを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。 - 式(2):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される化合物の製造方法であって、無機固体の存在下で、
式(4):
で表される化合物をHBrと反応させて、前記式(2)で表される化合物を得る工程Bを含む製造方法。 - 式(1):
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表すか、或いは
互いに連結して、炭素環を形成していてもよい。]
で表される1−ブロモ−1−フルオロエチレン化合物、及び
式(3):
で表される化合物
を含有する組成物。 - R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基である、請求項6に記載の組成物。
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