JP2016117449A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関や駆動系の温度が低い状況におけるコースト走行時の燃料カット期間の延長を図る。【解決手段】内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することのできる電動機を備えた車両を制御するものであって、車両がコースト走行するときに電動機から内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することとし、そのときの電動機の出力の大きさを、内燃機関の温度、及び/または、内燃機関のクランクシャフトと車軸との間に介在する変速機の温度に応じて変更する車両の制御装置を構成した。【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することのできる電動機を備えた車両の制御装置に関する。
車両の車軸(及び、駆動輪)や補機を駆動する駆動源となる内燃機関に、これをアシストする電動機を付設した車両が公知である。この電動機は、発電機としての機能を兼ね備えていることが多く、車両が減速する際に回生制動を行い、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収することが可能である(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。
内燃機関を搭載した車両では、気筒への燃料供給を一時的に停止する燃料カットを実施することが知られている。一般に、アクセルペダルの踏込量が0または0に近い閾値以下となり、かつエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上あるときに、燃料カットを開始、即ち燃料噴射を中断する。そして、アクセルペダルの踏込量が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数まで低下した等の何れかの条件が成立したときに、燃料カットを終了して燃料噴射を再開する。
車両の燃費性能をより高めるためには、燃料カット状態を維持したコースト走行(惰走、慣性走行)の期間をできる限り長く引き延ばすことが求められる。コースト走行中の車速及びエンジン回転数は、エンジンブレーキ及び駆動系の損失により徐々に衰えてゆく。特に、駆動系にベルト式無段変速機(Continuously Variable Transmission)を採用している車両では、ベルトを挟圧するプーリの回転が停止する前にプーリを最もローギア寄りの位置まで変位させる必要がある。だが、変速機の変速比をローギア化すると、エンジンブレーキ作用が増強され、車速とともにエンジン回転数が急速に低下して燃料カット終了条件が成立し、早期に燃料カットが終了することとなってしまう。加えて、エンジンブレーキ作用が強く車両の減速度が不必要に高いことは、ドライバビリティの低下(または、ドライブフィーリングの悪化)にもつながる。
そこで、車両のコースト走行時に電動機を稼働させて内燃機関のクランクシャフトひいては車軸に回転駆動力を付与し、車両の減速度を緩和するコーストアシストを実施することが考えられている(下記特許文献2を参照)。
特開2014−101847号公報 特開平02−256843号公報
冷間始動の直後等、内燃機関や駆動系の温度が低い状況下では、メカニカルロスが大きいためにコースト走行中の車両の減速度が高くなる。この場合において、コーストアシストを行う電動機の出力が不足して燃料カットが短期間のうちに終了し、所望の燃費低減効果を得られないことがあった。
本発明は、内燃機関や駆動系の温度が低い状況におけるコースト走行時の燃料カット期間の延長を図ることを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することのできる電動機を備えた車両を制御するものであって、車両がコースト走行するときに電動機から内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することとし、そのときの電動機の出力の大きさを、内燃機関の温度、及び/または、内燃機関のクランクシャフトと車軸との間に介在する変速機の温度に応じて変更する車両の制御装置を構成した。
本発明によれば、内燃機関や駆動系の温度が低い状況にあっても、コースト走行時の燃料カット期間を延長させることが可能となる。
本発明の一実施形態における内燃機関の概略構成を示す図。 同実施形態における内燃機関と発電機兼電動機との接続の構造を模式的に示す図。 同実施形態における発電機兼電動機の電気回路を示す図。 同実施形態における車両の駆動系の構成を示す図。 同実施形態における無段変速機の変速線図。 コースト走行中の内燃機関の冷却水温またはトランスミッションフルードの温度と、コーストアシストを行う電動機の出力との関係を例示する図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に示す車両用内燃機関100は、火花点火式の4ストロークエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
外部EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものである。EGR装置2は、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
図2に示すように、本実施形態における内燃機関100には、スタータモータ(セルモータ)140、発電機兼電動機であるISG(Integrated Starter Generator。または、モータジェネレータ)110及びコンプレッサ130その他の補機が付随している。
スタータモータ140は、主として冷間始動時(運転者がイグニッションスイッチまたはイグニッションキーを操作して内燃機関100を始動)に内燃機関100のクランクシャフト10を回転駆動する、クランキング専用の電動機である。スタータモータ140は、その出力軸にピニオンギア141を有し、このピニオンギア141が内燃機関100の出力軸であるクランクシャフト10に固定されたリングギア103に噛合することで、クランクシャフト10に回転駆動力を伝達する。ピニオンギア141は、スタータモータ140による内燃機関100のクランキング中以外は、リングギア103から離脱している。
ISG110は、クランクシャフト10ひいては車両の車軸(そして、駆動輪)153を駆動する電動機としての機能と、クランクシャフト10から駆動力の伝達を受けて発電する発電機としての機能とを兼ね備える。ISG110は、巻掛伝動機構112、113、101を介して内燃機関100のクランクシャフト10の一端側と接続している。
ISG110は、例えばインナーロータ方式の交流同期機であり、永久磁石及びロータコイル(励磁(界磁)巻線)116を両備したロータ(回転子)と、ロータの外周面に対向する三相交流のステータコイル(固定子巻線)115を備えたステータ(固定子)とを要素としてなる。ロータは、ロータ軸111の外周に固着している。ロータ軸111及びクランクシャフト10には、それぞれプーリ(または、スプロケット)112、101が固着しており、これらプーリ112、101に巻き掛けたベルト(または、チェーン)113により、クランクシャフト10とロータ軸111との間で相互に(双方向に)回転駆動力を伝達する。
ISG110は、主としてアイドルストップした内燃機関100の再始動時や、車軸153に供給する走行駆動力を増強する(特に、加速中や登坂中の)モータアシスト時に、車載の蓄電装置61から電力の供給を受けてクランクシャフト10を回転駆動する。翻って、クランクシャフト10により回転駆動されて発電する場合には、その発電した電力を同蓄電装置61に充電する。車両が減速する際には、ISG110による回生制動を行い、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収することができる。
蓄電装置61は、バッテリ及び/またはキャパシタを含む。本実施形態では、車両に、主蓄電装置611及び副蓄電装置612を搭載している。主蓄電装置611は、例えば車両用として周知の鉛バッテリ等である。副蓄電装置612は、例えばニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリ、キャパシタ等である。この副蓄電装置612は、主蓄電装置611では必ずしも回収できない回生電力を回収して蓄えることができる。副蓄電装置612とISG110等とを接続する電気回路上には、断接切換可能なスイッチ(または、リレー)613を設けてある。このスイッチ613は、内燃機関100の冷間始動時及び冷間始動直後の時期には切断(開放)されており、主蓄電装置611が満充電または満充電に近い状態まで充電された後に接続される。
車両に実装されているエアコンディショナの冷媒圧縮用のコンプレッサ130もまた、ISG110と同様、巻掛伝動機構102、134、133を介して内燃機関100のクランクシャフト10の一端側と接続している。コンプレッサ130の入力軸132及びクランクシャフト10には、それぞれプーリ(または、スプロケット)133、102が固着しており、これらプーリ133、102に巻き掛けたベルト(または、チェーン)134によって、クランクシャフト10から入力軸132に回転駆動力を伝達する。ベルト134は、コンプレッサ130以外の補機である潤滑油ポンプ(図示せず)や冷却水ポンプ(図示せず)等にも駆動力を伝達することがある。なお、コンプレッサ130の本体と入力軸132との間には、断接切換可能なマグネットクラッチ131を設けており、エアコンディショナを稼働しないときには当該クラッチ131を切断する。
内燃機関100と車軸153とを繋ぐトランスミッション120は、クランクシャフト10の他端側に設置する。
周知の通り、車両には各種の電気負荷が実装されている。電気負荷の具体例としては、エアコンディショナの送風用ブロワ、リアガラスの曇りを取るデフォッガ、オーディオ機器、カーナビゲーションシステム、照明灯(ヘッドランプ、テールランプ、ストップランプ(ブレーキランプ)、フォグランプ、ウィンカ(ターンシグナルランプ)等)、内燃機関の冷却水を空冷するラジエータのファン、電動パワーステアリング装置、等が挙げられる。これら電気負荷は、発電機として働くISG110及び/または蓄電装置61から、必要な電力の供給を受ける。
図3に、ISG110の等価回路を示す。ISG110を発電機として動作させる場合、三相コイルであるステータコイル115には三相交流の誘起電流が発生する。この誘起電流は、ダイオードを用いた整流器113によって直流電流とした上で蓄電装置61や電気負荷に供給される。
ISG110に付帯するコントローラ114は、本実施形態の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0から発される、ISG110の出力電圧の目標値を指令する制御信号nを受け付ける。そして、その指令された目標電圧に蓄電装置61の端子電圧(換言すれば、電装系に供給する電源電圧)を追従せしめるべく、半導体スイッチング素子119をスイッチ動作させてロータコイル116に印加する励磁電流の大きさを調節するPWM(Pulse Width Modulation)制御を実施する。ISG110の出力電圧即ちステータコイル115に誘起される発電電圧は、ロータコイル116を流れる励磁電流が大きいほど大きくなる。
発電機として作動するISG110は、内燃機関100から見れば機械的な負荷となる。ISG110の出力電圧が蓄電装置61の端子電圧を超越するとき、蓄電装置61が充電され、かつISG110から電気負荷に電力が供給される。つまり、ISG110がクランクシャフト10の回転のエネルギを費やして電気エネルギを生成する仕事をする。蓄電装置61への充電量及び電気負荷への給電量は、ISG110の出力電圧と蓄電装置61の端子電圧との電位差に依存する。
逆に、ISG110の出力電圧が蓄電装置61の端子電圧に満たないかこれに近いときには、蓄電装置61が充電されず、またISG110から電気負荷に電力が供給されない(蓄電装置61から電気負荷に電力供給されることはある)。つまり、ISG110がクランクシャフト10の回転のエネルギを費やす仕事をしないか、またはその仕事が小さくなる。要するに、ECU0からISG110に高い発電電圧を指令すると、エンジン回転に対するISG110の機械負荷が増し、低い発電電圧を指令すると、エンジン回転に対するISG110の機械負荷が減る。
因みに、コントローラ114は、電気負荷の増大等に伴いISG110による発電量を増加させる際、励磁電流をステップ的に急増させるのではなく、励磁電流を徐々に増大させる徐励機能を有する。この徐励機能により、内燃機関100に対する機械的な負荷の一時的な集中を避け、アイドル運転ないし低負荷運転領域におけるエンジン回転の低落を防いでいる。
また、コントローラ114は、ECU0から発される、励磁電流の上限値を指令する制御信号nを受け付けるとともに、ロータコイル116を流れる励磁電流の大きさをセンサ117を介して検出し、励磁電流を指令された上限値以下に規制する。励磁電流に上限を設けるのは、内燃機関100に対する機械的な負荷が過大となってエンジン回転が不安定化することを予防する意図である。故に、例えば、冷媒圧縮用コンプレッサ130の作動時と非作動時とでは、前者の方が励磁電流の上限値が低くなる。
励磁電流の上限値へのクリップは、ISG110の発電電圧の目標電圧値への追従に優先する。つまり、コントローラ114は、蓄電装置61の端子電圧が未だECU0から指令された目標電圧未満であるとしても、ロータコイル116を流れる励磁電流が既にECU0から指令された上限に達している場合には、それ以上励磁電流を増大させない。
他方、ISG110をクランクシャフト10を駆動する電動機として動作させる場合には、ロータコイル116に所要の励磁電流を通電しつつ、ステータコイル115に半導体スイッチング素子を用いたインバータ118を介して三相交流電流を印加して、ロータの周囲に回転磁界を発生させる。インバータ118の各相のハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチはそれぞれ、コントローラ114によって点弧/消弧される。このときのコントローラ114は、ECU0から発される、電動機として働くISG110の出力のレベルを指令する制御信号nを受け付ける。そして、その指令された出力レベルにISG110の出力を追従せしめるべく、ロータコイル116に印加する励磁電流の大きさ、及び/または、ステータコイル115に印加する三相電流の大きさを調節するPWM制御を実施する。内燃機関100のクランクシャフト10に回転駆動力を付与するISG110の出力は、ロータコイル116を流れる励磁電流が大きいほど大きくなり、またステータコイル115を流れる三相電流が大きいほど大きくなる。
図4に、車両が備える駆動系のトランスミッション120の例を示す。このトランスミッション120は、トルクコンバータ7及び自動変速機8、9を備えてなる。特に、本実施形態では、自動変速機8、9の構成要素として、遊星歯車機構を利用した前後進切換装置8、及び無段変速機の一種であるベルト式CVT9を採用している。
内燃機関100及び/または電動機たるISG110が出力する回転駆動力は、内燃機関100のクランクシャフト10からトルクコンバータ7の入力側のポンプインペラ71に入力され、出力側のタービンランナ72に伝達される。タービンランナ72の回転は、前後進切換装置8を介してCVT9の駆動軸94に伝わり、CVT9における変速を経て従動軸95を回転させる。従動軸95の回転は、出力ギア151に伝達される。出力ギア151は、デファレンシャル装置のリングギア152と噛合し、デファレンシャル装置を介して車軸153及び駆動輪(図示せず)を回転させる。
トルクコンバータ7は、ロックアップ機構を備える。ロックアップ機構は、この分野では既知のもので、トルクコンバータ7の入力側と出力側とを相対回動不能に締結するロックアップクラッチ73と、ロックアップクラッチ73を断接切換駆動するための作動液圧(油圧)を制御するロックアップソレノイドバルブ(図示せず)とを要素とする。ロックアップソレノイドバルブは、制御信号tを受けてその開度を変化させる流量制御弁である。
CVT9を搭載した車両においては、車速が所定値(例えば、10km/h)以上である場合、ほぼ常時トルクコンバータ7をロックアップする。車速が所定値以下となれば、トルクコンバータ7のロックアップを解除する。ロックアップ時、ロックアップクラッチ73はトルクコンバータカバー74に押し付けられ、トルクコンバータカバー74と一体となって回転する。ロックアップ時、トルクコンバータ7の入力側(のドライブプレート)に入力された回転駆動力は、トルクコンバータカバー74からロックアップクラッチ73を経由してトルクコンバータ7の出力側、ひいては前後進切換装置8に直接伝達される。ロックアップ時、トルクコンバータ7の出力側回転数の入力側回転数に対する比である速度比は1となる。
翻って、非ロックアップ時には、ロックアップクラッチ73がトルクコンバータカバー74から離反する。非ロックアップ時、トルクコンバータ7の入力側に入力された回転駆動力は、トルクコンバータカバー74からポンプインペラ71、タービン72へと伝わり、前後進切換装置8に伝達される。非ロックアップ時、トルクコンバータ7の速度比は、駆動状態に応じて1よりも小さくなったり大きくなったりする。
前後進切換装置8は、そのサンギア81がタービンランナ72と連絡し、リングギア82が駆動軸94と連絡している。プラネタリギア831を支持するプラネタリキャリア83と変速機ケースとの間には、断接切換可能な液圧クラッチたるフォワードブレーキ84を介設している。また、プラネタリキャリア83とサンギア81(または、トルクコンバータ7の出力側)との間にも、断接切換可能な液圧クラッチたるリバースクラッチ85を介設している。
走行レンジのうちのDレンジでは、フォワードブレーキ84を締結し、リバースクラッチ85を切断する。これにより、トルクコンバータ7の出力軸の回転が逆転されかつ減速されて駆動軸94に伝達され、前進走行となる。翻って、Rレンジでは、リバースクラッチ85を締結し、フォワードブレーキ84を切断する。これにより、サンギア81とプラネタリキャリア83とが一体的に回転し、トルクコンバータ7の出力軸と駆動軸94とが直結して後進走行となる。フォワードブレーキ84またはリバースクラッチ85を断接切換駆動するための作動液圧を制御するソレノイドバルブ(図示せず)は、制御信号uを受けてその開度を変化させる流量制御弁である。
非走行レンジのうちのNレンジでは、フォワードブレーキ84及びリバースクラッチ85をともに切断する。Pレンジでは、車軸153が動かないよう機械的にロックする。
CVT9は、駆動プーリ91及び従動プーリ92と、両プーリ91、92に巻き掛けられたベルト93とを要素とする。駆動プーリ91は、駆動軸94に固定した固定シーブ911と、駆動軸91上にローラスプラインを介して軸方向に変位可能に支持させた可動シーブ912と、可動シーブ912の後背に配設された液圧サーボ913とを有しており、液圧サーボ913を操作し可動シーブ912を変位させることを通じて変速比を無段階に変更できる。並びに、従動プーリ92は、従動軸95に固設した固定シーブ921と、従動軸95上にローラスプラインを介して軸方向に変位可能に支持させた可動シーブ922と、可動シーブ922の後背に配設された液圧サーボ923とを有しており、液圧サーボ923を操作し可動シーブ922を変位させることを通じてトルク伝達に必要なベルト推力を与える。
走行レンジを操作するべくフォワードブレーキ84またはリバースクラッチ85に供給される作動液(作動油)、及び変速比を操作するべく液圧サーボ913、923に供給される作動液は、トルクコンバータ7に用いられる流体と共通である。この流体は、トランスミッションフルード(CVTF)と呼称される。トランスミッションフルードは、前後進切換装置8やCVT9のベルト93等の潤滑、並びにベルト93のプーリ91、92に対する滑り摩擦の抑止等にも用いられる。
ECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。その入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフト10の回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出するセンサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の温度を示唆する冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、変速機7、8、9の温度を示唆するトランスミッションフルードの温度を検出する作動液温センサから出力される作動液温信号f、吸気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、蓄電装置61の端子電圧及び/または端子電流(特に、バッテリ電圧やバッテリ電流)を検出するセンサから出力される電圧/電流信号h、ISG110のコントローラ114からもたらされるステータス信号s等が入力される。ステータス信号sは、ISG110に関する各種の情報、例えば回転数や温度、ロータコイル116を流れる励磁電流の大きさ、現在の動作モード(即ち、発電しているか、内燃機関100をクランキングしているか、内燃機関100をモータアシストしているか、発電機としても電動機としても働かない無負荷状態か)等の情報を含む。
ECU0の出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l、ISG110のコントローラ114に対してこれを制御するための制御信号n、マグネットクラッチ131に通電する電気回路上のスイッチ62に対してクラッチ締結信号o、ロックアップクラッチ73の断接切換用のロックアップソレノイドバルブに対して開度制御信号t、フォワードブレーキ84またはリバースクラッチ85の断接切換用のソレノイドバルブに対して開度制御信号u、CVT9に対して変速比制御信号v等を出力する。制御信号nは、ISG110の動作モードを指示するとともに、発電機として動作させる場合にISG110から出力させる発電電圧の目標値や、電動機として動作させる場合のISG110の出力レベル等を指令する信号である。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関100の運転を制御する。ECU0は、内燃機関100の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、h、sを入力インタフェースを介して取得し、要求されるスロットルバルブ32開度、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、要求EGR率、トルクコンバータ7のロックアップを行うか否か、CVT9の変速比、エアコンディショナのコンプレッサのON/OFF、ISG110の発電量または出力等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、n、o、t、u、vを出力インタフェースを介して印加する。
図5に、ECU0がCVT9を制御する際の変速線図を示す。変速線図は、車速及びアクセル開度に対応した目標入力回転数(タービン72の回転数)を表すものであり、車速及びアクセル開度に対応したCVT9の変速比を規定する。図5には、アクセル開度が100%の場合の変速線を太い破線で、50%の場合の変速線を太い実線で、0%の場合の変速線を太い鎖線で、それぞれ描画している。変速比は、CVT9がハードウェア的に実現し得るローギア側の限界L及びハイギア側の限界Hの間の値をとる。
加えて、ECU0は、内燃機関100の始動時、特に冷間始動において、スタータモータ140に制御信号rを入力し、ピニオンギア141をリングギア103に噛合させて内燃機関100のクランキングを行う。
ECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、所定の燃料カット条件が成立したときに、気筒1への燃料供給を一時中止する燃料カットを実施する。ECU0は、少なくとも、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり、エンジン回転数が燃料カット許可回転数以上あり、なおかつ前回実施した燃料カットの終了時点から所定時間が経過していることを以て、燃料カット条件が成立したものと判断する。そして、インジェクタ11からの燃料噴射を中断する。
燃料カット条件の成立後、所定の燃料カット終了条件が成立したときには、燃料カットを終了することとし、気筒1への燃料供給を再開する。ECU0は、アクセル開度が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数まで低下した等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したものと判断し、中断していたインジェクタ11からの燃料噴射を再開する。
その上で、本実施形態のECU0は、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり、車両がコースト走行するときに、ISG110を電動機として稼働させ、内燃機関100のクランクシャフト10及び車軸153に回転駆動力を与えるコーストアシストを実行する。このコーストアシストにより、コースト走行中の車両の減速度が小さくなるとともに、エンジン回転数の低下が遅くなって燃料カット期間が延長される。
しかしながら、車両の現在の状況如何によらず、常に一定のコーストアシストを実行することは必ずしも効果的ではない。例えば冷間始動の直後等、内燃機関100や駆動系の温度が低い状況下では、それらのメカニカルロスが大きく、コースト走行中の車両の減速度が高くなる。この場合において、コーストアシストを行うISG110の出力が不足すると、エンジン回転数の低下が遅くならず、燃料カット条件の成立後、短期間で燃料カット終了条件が成立して燃料カットが早期に終了してしまう。結果、燃料噴射を伴わないコースト走行の距離が短くなり、所望の燃費低減効果を得られない。
そこで、本実施形態では、コーストアシストを実行する際のISG110の出力の大きさを、現在の内燃機関100の温度、及び/または、現在の変速機7、8、9の温度に応じて調整することとしている。
図6に、内燃機関100の温度または変速機7、8、9の温度と、コーストアシストを行うISG110の出力との関係を例示する。基本的には、内燃機関100の温度が低い場合に、内燃機関100の温度がより高い場合と比較してISG110の出力を増大させる。内燃機関100の現在温度は、冷却水温信号eを参照して知得される冷却水温により示唆される。同様に、変速機7、8、9の温度が低い場合、変速機7、8、9の温度がより高い場合と比較してISG110の出力を増大させる。変速機7、8、9の現在温度は、作動液温信号fを参照して知得されるトランスミッションフルードの温度により示唆される。
図6に示した例によれば、内燃機関100の冷却水温がある所定値T1未満である状況におけるコースト走行中のISG110の出力を、冷却水温が所定値T2(このT2は、T1よりも高い)以上である状況におけるコースト走行中のISG110の出力よりも大きく設定する。そして、冷却水温がT1以上T2未満の範囲内にあるときには、冷却水温が高いほどコースト走行中のISG110の出力を減少させる。
また、トランスミッションフルードの温度がある所定値T3(T3は、上記のT1と同一の値であっても異なる値であってもよい)未満である状況におけるコースト走行中のISG110の出力を、トランスミッションフルードの温度が所定値T4(このT4は、T3よりも高い。T4は、上記のT2と同一の値であっても異なる値であってもよい)以上である状況におけるコースト走行中のISG110の出力よりも大きく設定する。そして、トランスミッションフルードの温度がT3以上T4未満の範囲内にあるときには、トランスミッションフルードの温度が高いほどコースト走行中のISG110の出力を減少させる。
コースト走行中のISG110の出力を、内燃機関100の冷却水温及びトランスミッションフルードの温度の双方に基づいて設定することも当然に可能である。その場合、トランスミッションフルードの温度が同等の条件下では、冷却水温が高いほどISG110の出力を減少させる。また、冷却水温が同等の条件下では、トランスミッションフルードの温度が高いほどISG110の出力を減少させる。
ECU0のメモリには予め、内燃機関100の冷却水温及び/またはトランスミッションフルードの温度と、コーストアシストを行うISG110の出力レベルとの関係を規定したマップデータまたは関数式が格納されている。コースト走行中、ECU0は、現在の冷却水温及び/またはトランスミッションフルードの温度をキーとして当該マップを検索し、あるいは、現在の冷却水温及び/またはトランスミッションフルードの温度を当該関数式に代入して、設定するべきISG110の出力レベルを知得し、電動機としてのISG110を当該出力レベルに制御する。
本実施形態では、内燃機関100のクランクシャフト10または車軸153に回転駆動力を付与することのできる電動機110を備えた車両を制御する制御装置0において、車両がコースト走行するときに電動機110から内燃機関100のクランクシャフト10または車軸153に回転駆動力を付与するコーストアシストを実行することとし、そのときの電動機110の出力の大きさを、内燃機関100の温度、及び/または、内燃機関100のクランクシャフト10と車軸153との間に介在する変速機7、8、9の温度に応じて変更する車両の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、冷間始動の直後のような内燃機関100や駆動系の温度が低い状況下にあっても、コースト走行中の車両の減速度を適正に抑制してエンジン回転数の低下を遅らせ、燃料カット期間を延長することが可能となる。従って、燃料噴射を伴わないコースト走行の距離が長くなり、所望の燃費低減効果を得られる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、内燃機関に付随する電動機は、内燃機関のクランクシャフトまたは車軸を回転駆動できるものであればよく、発電機としての機能を必ずしも兼ね備えていなくともよい。
また、車両の駆動系に採用される変速機の態様は、ベルト式CVTには限定されない。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、内燃機関のクランクシャフトまたは車軸を回転駆動できる電動機が付随する車両のコースト走行時の制御に適用できる。
0…制御装置(ECU)
7、8、9…変速機(トルクコンバータ、前後進切換装置、CVT)
10…クランクシャフト
100…内燃機関
110…発電機兼電動機(ISG)
153…車軸

Claims (1)

  1. 内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することのできる電動機を備えた車両を制御するものであって、
    車両がコースト走行するときに電動機から内燃機関のクランクシャフトまたは車軸に回転駆動力を付与することとし、
    そのときの電動機の出力の大きさを、内燃機関の温度、または内燃機関のクランクシャフトと車軸との間に介在する変速機の温度に応じて変更する車両の制御装置。
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