JP2016114866A - 太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置 - Google Patents

太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置を提供することである。【解決手段】本発明の太陽光反射フィルムミラーは、樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであって、光入射側にハードコート層を有し、当該ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、当該ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層が形成されていることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置に関する。より詳しくは、本発明は、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー等に関する。
太陽熱発電用のフィルムミラー(太陽光反射フィルムミラー)は、砂漠のような過酷な屋外環境下で長期間曝露されることから、高い耐久性が必要であった。このため、太陽光反射フィルムミラーの最表面にはハードコート層を設け、外界からの物理的な衝撃に耐久性を持たせてきた(例えば、特許文献1参照。)。
また、ハードコート層表面は外界の汚れを付きにくくするため、疎水性にすることが一般的であった。
しかし、長期にわたる屋外曝露で徐々にハードコート層は損傷するため、ハードコート層表面に疎水性を付与する保護剤(オーバーコート層形成用塗布液)を定期的に設け、オーバーコート層を形成する方法が有効と考えている。
しかし、これまで用いてきた疎水性のハードコート層表面では、オーバーコート層の耐久性は低く、頻繁にオーバーコート層形成用塗布液を塗布する必要が生じるという問題があった。
米国特許出願公開第2013/036220号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、表面の水接触角が、0〜60°の範囲内のハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層を形成することで、耐久性の高い保護機能(疎水性の維持)を達成でき、ひいては、外に長期間曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー等を提供できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであって、
光入射側にハードコート層を有し、
当該ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、
当該ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層が形成されていることを特徴とする太陽光反射フィルムミラー。
2.前記オーバーコート層が、少なくとも下記成分(A)〜(D)を含有するオーバーコート層形成用塗布液を前記ハードコート層の表面に塗布して形成された層であることを特徴とする第1項に記載の太陽光反射フィルムミラー。
(A)粒子径が、1〜400nmの範囲内の金属化合物粒子
(B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子
(C)乳化剤
(D)水
3.前記ハードコート層が、
親水性ポリマーと、
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有する金属アルコキシド化合と、
酸化ケイ素と、
を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の太陽光反射フィルムミラー。
一般式(1) Z−(OR
一般式(2) Al−(OR
(Zは、ケイ素(Si)原子、チタン(Ti)原子又はジルコニウム(Zr)原子を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
4.樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーの再復方法であって、
当該太陽光反射フィルムミラーが、第1項から第3項までのいずれか一項に記載の太陽光反射フィルムミラーであり、
当該太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、前記オーバーコート層を再復するため、前記オーバーコート層形成用塗布液を用いて、前記ハードコート層の表面に前記除去・再復可能なオーバーコート層を形成することを特徴とする太陽光反射フィルムミラーの再復方法。
5.前記太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、水で洗浄し、その後、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする第4項に記載の太陽光反射フィルムミラーの再復方法。
6.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の太陽光反射フィルムミラーと、ミラー支持基材とを有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置。
本発明の上記手段により、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー、太陽光反射フィルムミラーの再復方法及び太陽熱発電用反射装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来、長期にわたる屋外曝露で徐々にハードコート層が損傷するため、ハードコート層表面に疎水性を付与するオーバーコート層を定期的に設ける方法が有効と考えている。
しかし、これまで用いてきた疎水性のハードコート層の表面では、オーバーコート層の耐久性が低くなってしまい、頻繁にオーバーコート層を形成するための塗布液を塗布し、オーバーコート層を形成する必要があるという問題があった。
本発明者は、上記問題に対し、ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層を形成することで耐久性の高い保護機能(疎水性の維持)を達成することができることを見いだした。
なお、これは、ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であると、ハードコート層の表面は親水性であるため、表面自由エネルギーの値が大きく、オーバーコート層がハードコート層上に好適に形成されるためであると考えられる。
また、本発明のオーバーコート層は、除去・再復可能であるため、屋外で太陽光に曝露した後、当該オーバーコート層のみを除去し、オーバーコート層を形成するための塗布液を塗布するなどして、再度オーバーコート層を形成することができる。これにより、定期的にオーバーコート層のみを更新することが可能になり、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる太陽光反射フィルムミラー等を提供できることを見いだした。
本発明の太陽光反射フィルムミラーは、樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであって、光入射側にハードコート層を有し、当該ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、当該ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層が形成されていることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記オーバーコート層が、少なくとも上記成分(A)〜(D)を含有する塗布液を前記ハードコート層の表面に塗布して形成された層であることが、本発明の効果を好適に発揮できるため好ましい。
本発明においては、前記ハードコート層が、親水性ポリマーと、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有する金属アルコキシド化合と、酸化ケイ素と、を含有することで、より、屋外で長期間太陽光に曝露されても、損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できるため好ましい。
本発明の太陽光反射フィルムミラーには、当該太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、前記オーバーコート層を再復するため、前記オーバーコート層形成用塗布液を用いて、前記ハードコート層の表面に前記除去・再復可能なオーバーコート層を形成することを特徴とする太陽光反射フィルムミラーの再復方法を好適に採用できる。
当該太陽光反射フィルムミラーの再復方法によれば、屋外で長期間太陽光に曝露されても、太陽光反射フィルムミラーに損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できる。
また、太陽光反射フィルムミラーの再復方法は、太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、水で洗浄し、その後、前記オーバーコート層を形成することで、より、屋外で長期間太陽光に曝露されても、太陽光反射フィルムミラーに損傷が発生すること及び反射率が低下することを抑制できるため好ましい。
本発明の太陽光反射フィルムミラーは、太陽熱発電用反射装置に好適に具備させることができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[太陽光反射フィルムミラーの概要]
本発明の太陽光反射フィルムミラーは、樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであって、光入射側にハードコート層を有し、当該ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、当該ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層が形成されている。
前記樹脂基材上には、構成層として、接着層、金属反射層及び上部隣接層、易接着層、ハードコート層がこの順に設けられた太陽光反射フィルムミラーであることが好ましい。該構成層として、さらに、ガスバリアー層、傷防止層等の特別な機能層を設けることができる。
上記した太陽光反射フィルムミラーの厚さは50〜200μmの範囲内であることが好ましい。
好ましくは80〜150μmの範囲内である。50μmより厚い場合は強度や、後述するミラー支持基材に貼り付ける際の操作性に優れ、また200μmより薄い場合は特に樹脂基材が反射層とミラー支持基材の間にあるとき、ミラー支持基材に蓄熱した熱が、太陽光反射フィルムミラー表面に伝わりやすくなり、結露防止効果が良好である。
[樹脂基材]
本発明に係る樹脂基材としては、従来公知の種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム及びセルロースエステル系フィルムが挙げられる。
特にポリエステル系フィルム、セルロースエステル系フィルムを用いることが好ましく、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
当該樹脂基材は、厚さが10〜300μmの範囲内であれば好ましく使用できるが、更に好ましくは50〜195μm、特に好ましくは80〜145μmである。
また、樹脂基材には、その目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
[金属反射層]
本発明に係る金属反射層は、金属を蒸着又はメッキすることにより設けることができる。中でも銀を蒸着又はメッキすることにより作製される銀反射層は、反射率が高く太陽熱発電用反射装置の反射層として特に好ましい。前記銀反射層の形成法としては、湿式法及び乾式法のどちらも使用することができる。
湿式法とは、めっき法の総称であり、溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例を挙げるとすれば、銀鏡反応などがある。
一方、乾式法とは、真空成膜法の総称であり、具体的に例示するとすれば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法などがある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロール・to・ロール方式が可能な蒸着法が好ましく用いられる。すなわち、本発明の太陽光反射フィルムミラーを製造する製造方法としては、当該銀反射層を銀蒸着によって形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
当該金属反射層の厚さは、反射率等の観点から、10〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。
本発明において、金属反射層は樹脂基材に対して光線入射側にあっても、その反対側にあっても良いが、光線による樹脂基材の劣化を防止する目的から、光線入射側に位置する方が好ましい。
[上部隣接層]
本発明の太陽光反射フィルムミラーに好適に適用可能な上部隣接層は、金属反射層の樹脂基材から遠い側に隣接し、銀の腐食劣化を防ぐとともに、金属反射層の傷防止及び、上部隣接層の外側に形成されるバリアー層や傷防止層との接着力向上に寄与するものであることが好ましい。
当該上部隣接層に使用するバインダーとしての樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の単独又はこれらの混合樹脂を使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、更にイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
イソシアネートは、TDI(トリレンジイソシアネート)系、XDI(キシレンジイソシアネート)系、MDI(メチレンジイソシアネート)系、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系等の従来使用されてきた各種イソシアネートが使用可能であるが、耐候性の点から、XDI系、MDI系、HMDI系のイソシアネートを使用するのが好ましい。
上部隣接層の厚さは、密着性、耐候性等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
上部隣接層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
また、上記隣接層には、目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
[接着層]
接着層は、樹脂基材(樹脂フィルム)上に設けられ、樹脂基材と金属反射層との接着性を高める機能を有する。接着層は、樹脂からなることが好ましい。このため、当接着層は、樹脂基材と金属反射層とを密着する密着性、金属反射層を真空蒸着法等で形成するときの熱にも耐え得る耐熱性及び金属反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性があることが好ましい。
接着層に使用できるバインダーとしての樹脂は、上記の密着性、耐熱性及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独又はこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、更にイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
接着層の厚さは、密着性、平滑性、反射材の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
また、接着層には、その目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
(腐食防止剤)
本発明の太陽光反射フィルムミラーには、金属反射層の腐食防止剤を用いても良い。該腐食防止剤は大別して、金属反射層に対する吸着性基を有する腐食防止剤と、酸化防止剤と、を用いることができる。
ここで、「腐食」とは、金属(特に銀)がそれを取り囲む環境物質によって、化学的又は電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象をいう(JIS Z0103−2004参照)。
本発明の太陽光反射フィルムミラーは、前記接着層が酸化防止剤を含有し、かつ前記上部隣接層が銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤を含有している態様であってもよい。
なお、腐食防止剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0g/mの範囲内であることが好ましい。
(金属反射層に対する吸着性基を有する腐食防止剤)
金属反射層に対する吸着性基を有する腐食防止剤としては、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種又はこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
このような腐食防止剤としては、例えば特開2012−48102の段落0046〜0056に記載された化合物を例示することができる。
(酸化防止剤)
本発明の太陽光反射フィルムミラーに用いられる銀反射層の腐食防止剤としては、酸化防止剤を用いることもできる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
このような酸化防止剤としては、例えば特開2012−48102の段落0059〜0061に記載された化合物を例示することができる。
なお、本発明においては、上記酸化防止剤と光安定剤を併用することもできる。
このような光安定剤としては、例えば特開2012−48102の段落0063〜0065に記載された化合物を例示することができる。
(紫外線吸収剤)
本発明においては、太陽光や紫外線による劣化防止の目的で、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。前記樹脂基材上に設けられた構成層のうちいずれか一層に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系等が挙げられる。
このような紫外線吸収剤としては、例えば特開2012−48102の段落0068〜0071に記載された化合物を例示することができる。
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤又は着色剤等との併用で効果を発現するもの、又はクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤等も併用することができる。但し、上記の紫外線吸収剤を使用する場合は、紫外線吸収剤の光吸収波長が、光重合開始剤の有効波長と重ならないものを選択する必要がある。
通常の紫外線防止剤を使用する場合は、可視光でラジカルを発生する光重合開始剤を使用することが有効である。
紫外線吸収剤の使用量は、0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。20質量%よりも多いと密着性が悪くなり、0.1質量%より少ないと耐候性改良効果が小さい。
[ハードコート層]
本発明に係るハードコート層は、表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であれば、公知のものであってもよく、特に限定されないが、親水性ポリマーと、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有する金属アルコキシド化合と、酸化ケイ素と、を含有する層であることが、特に好ましい。
一般式(1) Z−(OR
一般式(2) Al−(OR
(Zは、ケイ素(Si)原子、チタン(Ti)原子又はジルコニウム(Zr)原子を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
上述のように、本発明におけるハードコート層は、表面の水接触角が、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、0〜60°の範囲内である(親水性である)表面を有する層であり、好ましくは、0〜30°であり、更に好ましくは0〜20°の層をいう。
(接触角試験)
JIS−R3257に基づいて、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、反射ミラーの表面に水を3μL滴下して、その水滴の滴下1分後の接触角を接触角計DM300(協和界面化学)を用いて測定できる。
本発明に用いられるハードコート層は、上述のように、(a)親水性ポリマー、下記で説明する(b)金属アルコキシド化合物及び(c)酸化ケイ素(コロイダルシリカ)を含む親水性組成物から形成される。また、(d)触媒を含むことが好ましく、更に必要に応じて(e)添加剤を含むことが好ましい。
本発明に用いられるハードコート層は樹脂基材表面に設けた易接着層の上に(a)親水性ポリマー、(b)金属アルコキシド化合物及び(c)酸化ケイ素(コロイダルシリカ)を含む親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥させることにより形成することができる。
〔(a)親水性ポリマー〕
本発明に使用される親水性ポリマーは親水性基を有するポリマーである。また、金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーであることが好ましい。
上記親水性ポリマーの親水性基としては、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、又は連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、カルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、及び金属アルコキシド化合物と触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、ケイ皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。具体的には下記一般式(I)、(II)で表される構造を挙げられる。
上記親水性ポリマーは、反応性基と親水性基を有することが好ましい。反応性基は、主鎖の一つの末端のみに有する場合や、主鎖に複数個有する場合などがある。
「反応性基」は、金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる官能基を意味する。また、反応性基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
反応性基は、一般には、ポリマーの架橋剤に含まれる反応性基と同様であり、熱又は光により架橋を形成できる化合物である。架橋剤について、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載がある。
親水性ポリマーは、下記一般式(I)及び(II)で表される構造の少なくとも1種を含むことが好ましい。
親水性ポリマーが架橋構造を有しており、末端で化学結合しているか、又は、架橋構造物に化学結合した主鎖に親水性ポリマーが結合しているグラフトポリマー構造を有していると、親水性ポリマー鎖の運動性が非常に高くなり、親水性に優れたハードコート層を提供できるため好ましい。
Figure 2016114866
一般式(I)及び(II)中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。Xは反応性基を表す。A及びL、L、Lは、それぞれ独立に単結合又は連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−CON(R、−OR、−OH、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表す。ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜18)を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。Zはハロゲンイオンを表す。Bは一般式(III)を含む基を表す。
Figure 2016114866
一般式(III)中、R、R、L及びYは、一般式(I)及び(II)中のものと同義である。
一般式(I)において、Xで表される反応性基の例は、カルボキシル(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸又は無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ(HN−)、ヒドロキシル(HO−)、エポキシ基(例、グリシジル基)、メチロール(HO−CH−)、メルカプト(HS−)、イソシアナート(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基を含む。反応性基としては、アルコキシシリル基が最も好ましい。片末端には、2以上の反応性基を有していてもよい。なお、2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基A並びにL、L及びLは、それぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基及びこれらの組合せから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−CO−又は−NH−を含む組合せであることが好ましい。
(末端に反応性基を有する親水性ポリマー(I))
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基(例、カルボキシル)を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの重量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000〜100万の範囲内であることがさらに好ましく、2000〜10万の範囲内であることが最も好ましい。
この一般式(I)で表される高分子化合物は、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(I)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R及びRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1〜20までのアルキル基上の水素原子のいずれか一つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状並びに炭素原子数5〜10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
A及びLは単結合又は有機連結基を表す。ここで、A及びLが有機連結基を表す場合、A及びLは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1〜60個までの炭素原子、0〜10個までの窒素原子、0〜50個までの酸素原子、1〜100個までの水素原子及び0〜20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組み合わされて構成されるものを挙げることができる。
Figure 2016114866
また、Yは−NHCOR、−CONH、−CON(R、−COR、−OH、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表す。ここで、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す(好ましくは炭素数1〜18)。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。Zはハロゲンイオンを表す。また、−CON(Rのように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rは更に置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R又はRがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH、−CONH、−COOH、−SO、−NMe 、モルホリル基等が好ましい。
本発明に好適に用い得る一般式(I)で表される親水性ポリマーの具体例(例示化合物I−1〜例示化合物I−38)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2016114866
Figure 2016114866
上記に例示した親水性ポリマー(I)の合成について、ポリマー主鎖末端にシランカップリング基を有するポリマーを例に挙げて述べる。下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。親水性ポリマー(I)は、同様に対応する化合物を用いることにより合成することができる。
Figure 2016114866
上記一般式(i)及び(ii)において、A、R〜R、L、Yは、上記一般式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
(複数個反応性基を有する、親水性ポリマー(II))
前記一般式(II)で表される反応性基を複数個有する親水性ポリマー(II)は、金属アルコキシドと反応し得る官能基を有する幹ポリマーに親水性ポリマー側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを用いることができる。
一般式(II)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、上記一般式(I)のR、Rと同様の置換基を表す。L、Lは、前記一般式(I)のLと同義である。Bは、前記一般式(III)で表され、一般式(III)中の、R、R、L及びYは式(I)及び(II)中のものと同じである。Xは前記一般式(I)と同義である。
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作製することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に
1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、
2.幹高分子に枝高分子を結合させる、
3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)
という三つの方法に分けられる。これらの三つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に好適に用いることができる親水性グラフトポリマーを作製することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に好適に用いることができるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
(親水性マクロモノマー)
上記親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシ基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基又はエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。また、ポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも、マクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の重量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
親水性マクロモノマーと共重合可能でかつ架橋剤と反応し得る官能基(以下、適宜、反応性官能基と称する)を有するモノマーの反応性官能基としては、カルボキシ基又はその塩、アミノ基、ヒドロキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、グリシジルなどのエポキシ基、メチル基、(ブロック)イソシアネート基、シランカップリング剤等が挙げられる。一般的なモノマーとしては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊〔1981〕、「紫外線硬化システム」加藤清視著、総合技術センター刊〔1989〕、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」加藤清視著、高分子刊行会〔1985〕、「新・感光性樹脂の実際技術」赤松清著、シーエムシー刊行(102−145頁)〔1987〕等に記載されているモノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、下記化学構造式で表される如きフェノール性ヒドロキシ基含有モノマー(1)、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールメタクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、下記化学構造式で例示されるようなブロックイソシアネート基含有モノマー(2)等のブロックイソシアネートモノマー、ビニルアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
Figure 2016114866
これらのグラフトポリマーとしては、重量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成しやすいなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
上記、親水性ポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好ましく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
親水性ポリマー(II)の共重合比率は、親水性官能基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Bを含有するモノマーのモル比(m)とXを含有するモノマーのモル比(n)が、m/n=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m/n=40/60〜98/2がより好ましく、m/n=50/50〜97/3が最も好ましい。mがm/n=30/70以上の比率であれば親水性が不足することなく、一方、nがm/n=99/1以上の比率であれば、反応性基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(0.1〜100cPs、測定条件:5%水溶液、25℃)、好ましくは0.5〜70mPa・s(0.5〜70cPs)、さらに好ましくは1〜50mPa・s(1〜50cPs)の範囲にあると、良好な膜物性を与える。
(一般式(IV−a)又は(IV−b)で表される構造を含む親水性ポリマー)
本発明に用いられる(a)親水性ポリマーは、下記一般式(IV−a)及び(IV−b)で表される構造を含むことが好ましい。
Figure 2016114866
一般式(IV−a)及び(IV−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数8以下)を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を一つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは各構造の組成比を表す。ただし、xは0<x<100、yは0<y<100である。Yは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1〜20までのアルキル基上の水素原子のいずれか一つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状並びに炭素原子数5〜10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0〜200個までの炭素原子、0〜150個までの窒素原子、0〜200個までの酸素原子、0〜400個までの水素原子、及び0〜100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては、上記一般式(I)におけるA及びLが表す具体的な連結基として例示した上記の構造単位又はこれらが組み合わされて構成されるものを挙げることができる。
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマー又はオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1000〜1000000が好ましく、1000〜500000が更に好ましく、1000〜200000が最も好ましい。
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を一つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は二つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を一つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CO−Na、−CONH、−SO、−Na、−SONH、−PO等が好ましい。
x及びyは(a)親水性ポリマーにおける、一般式(IV−a)で表される構造単位と一般式(IV−b)で表される構造単位の組成比である。ただし、xは0<x<100、yは0<y<100である。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である一般式(IV−a)及び(IV−b)は、それぞれ全て同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(IV−a)に相当する構造単位と一般式(IV−b)に相当する構造単位の組成比が上記範囲であることが好ましい。
以下に、一般式(II)、(IV−a)及び(IV−b)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(II−1)〜(II−50)〕をその重量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
Figure 2016114866
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一般式(II)、(IV−a)及び(IV−b)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成する前記各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(II)、(IV−a)及び(IV−b)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法のいずれをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
また、一般式(II)、(IV−a)及び(IV−b)で表される構造を含む親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(a)親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎない方が好ましい。したがって、(a)親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以下である。
(a)親水性ポリマーの重量平均分子量としては、100万以下が好ましく、1000〜100万がさらに好ましく、2000〜10万が最も好ましい。
上記(a)親水性ポリマーは、親水性組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
〔(b)金属アルコキシド化合物〕
(b)金属アルコキシド化合物は、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは、下記一般式(1)及び一般式(2)で表すことができ、式中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti、又はZrを表す。Rがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1〜4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
一般式(1) Z−(OR
一般式(2) Al−(OR
(Zは、ケイ素(Si)原子、チタン(Ti)原子又はジルコニウム(Zr)原子を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
以下に、一般式(1)で表される加水分解重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解重合性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、等を挙げることができる。
また、ZがTiである場合、即ち、加水分解性化合物中にチタンを含むものとしては、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、一般式(2)で表される加水分解性化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
また、皮膜強度を改善するためなどに、下記一般式(3)で示す金属アルコキシドを併用してもよい。
一般式(3) (R−Z−(OR4−m
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Z、Rは上記一般式(1)と同じである。mは1〜2の整数を表す。Rがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1〜4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。一般式(3)で表される金属アルコキシドの具体例としては、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート及び前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネート等を挙げることができる。
上記金属アルコキシド化合物は単独で用いても、2種類以上併用しても良い。金属アルコキシド化合物の含有量としては、親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%の範囲で使用される。上記量以下では充分な架橋皮膜を得ることができず、上記量以上では親水性が低下する。金属アルコキシド化合物は市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
〔(c)酸化ケイ素〕
本発明に係る酸化ケイ素は、上記親水性組成物中では、コロイド状のシリカ(以下、「コロイダルシリカ」ともいう。)であることが好ましい。ここでコロイダルシリカとは、平均粒径が1nm〜1μmの無水ケイ酸の微粒子のコロイド(膠質)を指し、特開昭53−112732号公報、特公昭57−009051号公報、同57−51653号公報等に記載されているものを用いることができる。これらのコロイド状シリカはゾル−ゲル法で調製して使用することもできるし、市販品を利用することもできる。コロイド状シリカをゾル−ゲル法で調製する場合には Werner Stober et al ; J.Colloid and Interface Sci.,26,62−69(1968)、Ricky D.Badley et al ; Langmuir 6,792−801(1990)、色材協会誌,61〔9〕488−493(1988)を参考にして合成できる。コロイド状シリカの主成分は二酸化ケイ素であるが、少量成分としてアルミナ又はアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよく、更に安定剤として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基やテトラメチルアンモニウムのような有機塩基が含まれていてもよい。
酸化ケイ素(コロイダルシリカ)の添加量としては、微粒子含有量として0.1〜50体積%であることが好ましく、更に好ましくは1〜40体積%、最も好ましくは10〜30体積%である。上記範囲以下では膜の密着性が低下し、上記範囲以上では膜が脆くなり耐擦り性が低下する。
〔(d)触媒〕
上記親水性組成物においては、(a)親水性ポリマー、さらに(b)金属アルコキシド化合物などの架橋成分を溶媒に溶解し、よく撹拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために(d)触媒を用いるが好ましい。
(d)触媒としては酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。
触媒を使用することにより、ハードコート層皮膜形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、抗菌剤や基材板上での熱変形を抑制できる。
本発明で用いられる(d)触媒としては、前記(b)金属アルコキシド化合物を加水分解、重縮合し、(a)親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、又は塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、又は塩基性化合物を水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、又は塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、又は塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸又は塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
酸性触媒又は塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、ギ酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
また、前記の触媒の他に金属錯体からなるルイス酸触媒も好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシ基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加してヒドロキシ基となる。
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1−アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンが特に好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾル−ゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾル−ゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
(d)触媒は、上記親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(d)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
上記親水性組成物は前記(a)〜(c)成分を含有し、(d)触媒を含有することが好ましく、更に目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用し得る成分((e)添加剤)について説明する。
〔(e)添加剤〕
〔界面活性剤〕
添加剤として、前記親水性組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
使用可能なノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
使用可能なアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
使用可能なカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
使用可能な両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、それらの界面活性剤も用いることができる。
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、上記親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔無機微粒子〕
上記親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、(c)酸化ケイ素以外に、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、ハードコート層中に安定に分散して、ハードコート層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子は市販品として容易に入手することができる。
上記無機微粒子は、上記親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔酸化防止剤〕
ハードコート層の安定性向上のため、ハードコート層を形成するための塗布液(ハードコート層用塗布液)に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
〔高分子化合物〕
本発明に係るハードコート層用塗布液には、ハードコート層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシ基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
〔抗菌剤〕
本発明の太陽光反射フィルムミラーに抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物に抗菌剤を含有させることができる。ハードコート層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面の親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れたハードコート層が得られる。
抗菌剤としては、太陽光反射フィルムミラーの親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤又は、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび、酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体、イミダゾール誘導体、スルホン誘導体、N・ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール誘導体、第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル〈以下、「TPN」ともいう。〉、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチルスズ)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以下、「TBZ」ともいう。〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以下、「BCM」ともいう。〉、10,10′−オキシビスフェノキシアルシン〈以下、「OBPA」ともいう。〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以下、「ZPT」ともいう。〉、N,N−ジメチル−N′−(フルオロジクロロメチルチオ)−N′−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2′−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。例えばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
市販品としては、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、ハードコート層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散又は固体分散可能であり、ハードコート層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、ハードコート層や塗布液に対して安定に分散することができ、ハードコート層や塗布液の劣化も起こらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亞合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
抗菌剤の含有量は、一般的には0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
〔親水性組成物の調製〕
上記親水性組成物の調製方法について記述する。
親水性組成物の調製は、好ましくは(a)親水性ポリマー、(b)金属アルコキシド化合物、(c)酸化ケイ素(コロイダルシリカ)、必要に応じて(d)触媒、更に好ましくは(e)添加剤を溶媒に溶解後、撹拌することで実施できる。(d)触媒を基材に塗設する直前に混合することが好ましい。具体的には(d)触媒の混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。
(d)触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。
その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
調製における反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち撹拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この撹拌により(a)及び(b)成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
前記親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
以上述べたように、親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾル−ゲル法を利用している。ゾル−ゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を親水性組成物の調製に適用することができる。
このような親水性組成物を含む溶液を、下記の易接着層上に被膜し、乾燥することで、太陽光反射フィルムミラーを得ることとしてもよい。即ち、本発明の太陽光反射フィルムミラーは、易接着層上に、前記本発明の親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものであってもよい。
親水性膜の形成において、親水性組成物を含む溶液を被膜した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
本発明のハードコート層の厚さは、0.01〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来すことがなく、好ましい。
〔表面自由エネルギー〕
ハードコート層表面の親水性度は、汎用的に、水接触角で測定される。しかし、非常に親水性の高い表面である場合、水接触角が10°以下、更には5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70〜95mN/m、好ましくは72〜93mN/m、さらに好ましくは75〜90mN/mの範囲にあるハードコート層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
[易接着層]
易接着層とは、PET基板並びにハードコート層との密着性を向上させるために設ける層であり、通常、ポリマー及び架橋剤を主成分として構成される。ポリマーは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂の少なくとも一つからなり、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の樹脂混合物から形成されているのが好ましい。
上記易接着層を形成するのに用いる共重合ポリエステル系樹脂はジカルボン酸と、分岐したグリコールとを構成成分とする。ここでいう分岐したグリコールとは枝分かれしたアルキル基を有するジオールであって、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
上記の、分岐したグリコール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、更に好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
上記共重合ポリエステル系樹脂の構成成分としてのジカルボン酸としては、テレフタル酸又はイソフタル酸であるのが最も好ましい。少量であれば他のジカルボン酸、特に、ジフェニルカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。上記ジカルボン酸の他に、共重合ポリエステル系樹脂に水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸を1〜10モル%の値囲で共重合させるのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
上記易接着層を形成するのに用いるポリウレタン系樹脂は、例えば、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下「ブロック」ともいう。)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化又は水溶性化する。ポリエステルフィルム面上に易接着層を形成する際の乾燥又は熱セット過程で、上記ポリウレタン系樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調製中のポリウレタン系樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、ポリエステルフィルム面上に塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ポリウレタン系樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な易接着層となる塗膜が得られる。
上記ブロック化剤の内、熱処理温度、熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては重亜硫酸塩類が最も好ましい。上記ポリウレタン系樹脂において用いられるウレタンプレポリマーの化学組成としては、
(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する有機ポリイソシアネート、又は分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20000の化合物、
(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート又は
(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
上記(1)の化合物として一般に用いることができるものは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基又はメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド類、スチレンオキシド若しくはエピクロルヒドリン等を重合した化合物、又はそれらのランダム共重合、ブロック共重合又は多価アルコールヘの付加重合を行って得られた化合物がある。ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状又は分岐状の化合物が挙げられ、例えば、コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和若しくは不飽和カルボン酸又はこれらのカルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、又はそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。さらに、ポリエステルポリオールとしてはラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシド又はプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系脂肪族ジイソシアネート類、イソホロジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類又はこれらの化合物を単一又は複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類などが挙げられる。
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール若しくは1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン若しくはペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン若しくはピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミン若しくはジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類又は水等が挙げられる。
ウレタンプレポリマーを合成するには通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式又は多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。更に遊離のイソシアネート基の含有量は10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンプレポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であるのが好ましい。
得られた上記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく撹拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度及び粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内又は分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成したり、また他の官能基への付加を起こしたりする性質を有するようになる。
上記に説明したブロック型イソシアネート基を含有する樹脂の一例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、ガルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
上記分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル系樹脂及びブロック型イソシアネート基を含有するポリウレタン系樹脂を混合してポリエステルフィルムへの塗布液を調製する場合、(分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル系樹脂の質量):(ブロック型イソシアネート基を含有するポリウレタン系樹脂の質量)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは80:20〜20:80の範囲である。固形分質量に対する分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル系樹脂の割合が10質量%未満では、ポリエステルフィルムヘの塗布性が不良で、表面層と該フィルムとの間の接着性が不十分となる。また、固形分質量に対するブロック型イソシアネート基を含有するポリウレタン系樹脂の割合が10質量%未満の場合には、UV硬化タイプのハードコート層においては実用性のある接着性が得られない。
易接着層を形成するのに使用される水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質及び合金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質又は酸性物質を添加してもよい。
上記水性塗布液をフィルム表面に塗布する際には、該フィルムヘの濡れ性を上げ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性活性剤及びノニオン性の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。塗布液を調製するのに用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50質量%以下となるまで混合してもよい。さらに、10質量%以下であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計は、50質量%以下とする。
有機溶剤の添加質量が50質量%以下であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50質量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、更には火災などの危険性も考えられる。
易接着層形成のための塗布液は好適には水性塗布液を用いる。該水性塗布液の組成物には、その効果を消失しない限りにおいて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、有機フィラー及び潤滑剤等の種々の添加剤を混合してもよい。さらに、塗布液が水性であるため、その寄与効果を消失しない限りにおいて、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂及びエマルジョン等を塗布液に添加してもよい。
易接着層には、親水性ポリマーと化学結合可能な微粒子を含むことが望ましい。これにより、樹脂基材とハードコート層との密着性が向上する。
前記微粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子等が挙げられ、中でも前記密着性の観点から無機微粒子であることが好ましく、中でも特にシリカ微粒子が好ましい。
前記微粒子の平均粒径は、高い透明性が得やすいという理由から、好ましくは500nm以下1nm以上、更に好ましくは100nm以下2nm以上、特に好ましくは50nm以下5nm以上である。
また、易接着層において、微粒子の含有量は0.1〜50体積%が好ましく、更に好ましくは1〜30体積%である。微粒子の含量が上記の範囲であれば充分な密着性が得られ、強度に優れた膜が得られる。
また、易接着層の厚さは、易接着性向上等に優位な変化が見られないという理由から、2.0μm以下が好ましく、更に好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは05μm以下である。
[オーバーコート層]
オーバーコート層は、ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層として形成される。
ここでいう除去・再復可能とは、水などの洗浄液によって、ハードコート層の表面か除去でき、さらに、当該オーバーコート層が除去されたハードコート層の表面に、オーバーコート層を形成するためのオーバーコート層形成用塗布液等を塗布してオーバーコート層を再度形成(再復)できることをいう。
なお、オーバーコート層の再復の方法は、オーバーコート層をハードコート層の表面に再度形成できるものであれば、特に限定されず、例えば、上述のオーバーコート層形成用塗布液の塗布などが挙げられる。
また、このようなオーバーコート層としては、除去・再復可能なものであれば、特に限定されず、公知のものを使用できるが、特に、少なくとも下記成分(A)〜(D)を含有するオーバーコート層形成用塗布液を前記ハードコート層の表面に塗布して形成された層であることが好ましい。
(A)粒子径が、1〜400nmの範囲内の金属化合物粒子
(B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子
(C)乳化剤
(D)水
前記(B)成分は、以下の(B1)〜(B4)の各成分、
(B1)成分:加水分解性ケイ素化合物、
(B2)成分:ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基、アミノ基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体、
(B3)成分:乳化剤、
(B4)成分:水、
を含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であることが好ましい。
前記(A)成分は、前記(B)成分と相互作用することにより、前記(B)成分の硬化剤として作用すると考えられる。当該相互作用としては、例えば、前記(A)成分が一般に有するヒドロキシ基と、前記(B)成分が有するヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基、アミノ基、エーテル基との水素結合や、前記(A)成分が一般に有するヒドロキシ基と、前記(B)成分を構成する前記(B1)成分の重合生成物との縮合(化学結合)等を例示することができる。
また、前記(A)成分が、前記(B)成分と相互作用しながら前記(B)成分の粒子間に連続層を形成して存在することが好ましい。この場合、得られるオーバーコート層の透明性がより向上し得る。
前記(A)成分に用いられる金属化合物としては、前記(B)成分との相互作用の観点から、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、等を例示することができる。
中でも、相互作用の強さの観点から、表面ヒドロキシ基の多い二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、及びそれらの複合酸化物等が好ましく、これらの2種以上を併用することについては差し支えない。
前記(A)成分に用いられる金属化合物としては、防汚染性を付与する観点から、光照射により、光触媒活性及び/又は親水性を発現する化合物(以下、単に「光触媒」と略記することがある)を用いることが好適である。前記(A)成分として、光照射により光触媒活性を発現する化合物を用いた場合、得られるオーバーコート層の表面は優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現し得る。また、前記(A)成分として、光照射により親水性を発現する化合物を用いた場合、得られるオーバーコート層の表面は降雨等の水による自己浄化能(セルフクリーニング)を発現し得、耐汚染性を発現し得る。
なお、可視光(例えば約400〜800nmの波長の光)の照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現する光触媒(可視光応答型光触媒)を選択すると、得られるオーバーコート層の表面は、紫外線が十分に照射されない場所(室内等)における環境浄化効果や防汚効果が非常に大きなものとなるため好ましい。
前記光触媒としてより具体的には、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等、更にはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。これらの光触媒の中でもTiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できるが、紫外線吸収の観点から光触媒活性が比較的穏やかなルチル型が好ましい。
前記可視光応答型光触媒としては、例えば、TaON、LaTiON、CaNbON、LaTaON、CaTaON等のオキシナイトライド化合物(例えば特開2002−66333号公報参照)、SmTi等のオキシサルファイド化合物(例えば特開2002−233770号公報参照)、CaIn、SrIn、ZnGa、NaSb等のd10電子状態の金属イオンを含む酸化物(例えば特開2002−59008号公報参照)、アンモニアや尿素等の窒素含有化合物存在下でチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)や高表面酸化チタンを焼成して得られる窒素ドープ酸化チタン(例えば特開2002−29750号公報、特開2002−87818号公報、特開2002−154823号公報、特開2001−207082号公報参照)、チオ尿素等の硫黄化合物存在下にチタン酸化物前駆体(オキシ硫酸チタン、塩化チタン、アルコキシチタン等)を焼成して得られる硫黄ドープ酸化チタン、酸化チタンを水素プラズマ処理したり真空下で加熱処理したりすることによって得られる酸素欠陥型の酸化チタン(例えば特開2001−98219号公報参照)、さらには光触媒粒子をハロゲン化白金化合物で処理したり(例えば特開2002−239353号公報参照)、タングステンアルコキシドで処理(特開2001−286755号公報参照)したりすることによって得られる表面処理光触媒、等を好適に挙げることができる。
上記可視光応答型光触媒の中でもオキシナイトライド化合物、オキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、特に好適に使用することができる。
また、前記(A)成分に用いられる金属化合物としては、得られるオーバーコート層の帯電防止性能等を発現する観点から、導電性を有する金属酸化物が好適に用いられる。
このような導電性を有する金属酸化物としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛等を挙げることができる。
なお、前記(A)成分は、上述した種々の金属化合物を用いて(好ましくは主成分として用いて)形成することができる。ここで、本実施の形態において「主成分」とは、特定成分(2種以上の特定成分を併用する場合には、それらの総量)がマトリックス成分中に占める割合が好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
前記(A)成分を用いる際の形態としては、例えば、粉体、分散液、ゾル等が挙げられる。
ここでいう分散液、又はゾルとは、前記(A)成分が水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%の濃度で、1次粒子及び/又は2次粒子として分散された状態を意味する。
上記親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、更にはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記分散液又はゾル中に観察される前記(A)成分の数平均粒子径(1次粒子と2次粒子との混合物であっても良いし、1次粒子、2次粒子いずれかのみであってもよい)としては、好ましくは1〜400nm、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは3〜80nm、特に好ましくは5〜50nmである。前記(A)成分の数平均粒子径は、オーバーコート層形成用塗布液を用いて形成されるオーバーコート層の光学特性等に寄与し得る。特に、100nm以下とすることは、得られるオーバーコート層の透明性を大きく向上させ得る。
なお、本実施の形態における数平均粒子径(以下、「粒子径」ともいう。)とは、後述する実施例の方法に準じて測定された値である。
前記(A)成分としては、溶媒に対する分散安定性、化学的安定性、耐久性を向上させる観点から、以下の(A′)成分、
(A′)成分:式(A′1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(A′2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(A′3)で表されるジオキシオルガノシラン単位、式(A′4)で表されるトリオキシシラン単位、及びジフルオロメチレン単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を有する変性剤化合物を用いて、前記(A)成分の金属化合物粒子を変性処理して形成される変性金属化合物粒子を含むことが好ましい。なお、「変性処理」とは、上記変性剤化合物を前記金属化合物粒子の表面に固定化することを意味する。上記変性剤化合物の前記金属化合物粒子表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)又は化学結合によるものと考えられる。
(A′1) RSi−
(式(A′1)中、Rは各々独立に直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又はヒドロキシ基を表す。)
(A′2) −(RSiO)−
(式(A′2)中、Rは式(A′1)で定義したとおりである。)
Figure 2016114866
(式(A′3)中、Rは式(A′1)で定義したとおりである。)
Figure 2016114866
前記変性剤化合物としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等を有することが好適である。また、前記変性剤化合物としては、ケイ素化合物、フルオロアルキル化合物、フルオロオレフィン重合体であることが好ましい。このような変性剤化合物は、前記金属化合物粒子と強固に結合し得る。
前記変性剤化合物の中でフルオロアルキル化合物の具体例を示すと、式(A′5)で示される化合物を挙げることができる。
(A′5) CF(CF)g−Y−(V)w
{式(A′5)中、gは0〜29の整数を表す。Yは分子量14〜50000のw価の有機基を表す。wは、1〜20の整数である。Vは、エポキシ基、ヒドロキシ基、アセトアセチル基、チオール基、環状酸無水物基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリオキシアルキレン基、リン酸基、及び下式(A′6)で表される基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を表す。
(A′6) −SiWxRy
(式(A′6)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは、1〜3の整数であり、yは0〜2の整数である。また、x+y=3である。)}
また、上記変性剤化合物としては、得られる(A′)成分の表面エネルギーを小さくして自己傾斜機能を発現させる観点から、表面エネルギーの小さい化合物(例えば、上記式(A′1)〜(A′4)における置換基Rが直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基から選ばれる少なくとも1種である化合物、及び/又はジフルオロメチレン単位を有する化合物)を選択することが好ましい。
ここで、上記「自己傾斜機能を発現」とは、前記(A′)成分と前記(B)成分とを含むオーバーコート層形成用塗布液を基材上に積層してオーバーコート層を形成する際、基材表面の性状(特に親水/疎水性)に対応して前記(A′)成分の濃度勾配(オーバーコート層形成用塗布液にて形成される層中の濃度の偏り)が自立的に形成されることを意味する。
前記(A′)成分として、表面エネルギーの小さな化合物で変性された光触媒を用い、表面親水性の大きな基材を用いてオーバーコート層を形成する場合、前記(A′)成分は空気と接する側に偏在して前記基材表面付近の存在量が少なくなる傾向となる。このような場合、高い光触媒活性を期待し得るとともに、基材が分解され難くなる(基材の耐久性が向上する)ため好ましい。
なお、上記変性処理の方法としては、例えば、水及び/又は有機溶媒の存在下、又は非存在下において、前記金属化合物粒子と前記変性剤化合物とを混合し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜80℃にて加熱する方法や、混合溶媒の存在下で前記金属化合物粒子と前記変性剤化合物とを混合し、(減圧)蒸留等して混合溶媒の溶媒組成を変化させる方法、等が挙げられる。
前記(A′)成分が、前記(A)成分中に占める割合としては、好ましくは0.01〜100質量%、より好ましくは0.01〜99.99質量%、更に好ましくは0.1〜95質量%、特に好ましくは1〜90質量%である。当該割合を0.01質量%以上とすることは、自己傾斜性を付与する観点から好適である。なお、当該割合を99.99質量%以下とすることは、光触媒性能を比較的短時間で発現させる観点から好適である。
また、前記(A)成分、又は前記(A′)成分について、その粒子長(l)と粒子直径(di)の比(l/di)としては、比表面積を確保する観点、及び粒子の配向効果の観点から、好ましくは1/1〜20/1、より好ましくは1/1〜15/1、更に好ましくは1/1〜10/1である。
なお、上記粒子長や粒子直径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡観察する方法を用いることができる。
前記(B)成分は、上述の(B1)〜(B4)の各成分を含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。このようにして得られる(B)成分としては、前記(B1)成分に由来するヒドロキシ基と、前記(B2)成分の重合生成物とが、水素結合等により複合化されたものを用いることが好適である。
前記(B1)成分としては、下記式(7)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤を例示することができる。
(7) SiWxRy
(式(7)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の、炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
なお、シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する化合物を意味する。
前記式(7)で表される化合物の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類;等を挙げることができる。また、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、前記(B1)成分としては、フェニル基を有するケイ素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等)を用いることができる。フェニル基を有するケイ素アルコキシドを用いた場合、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が良好となり好適である。
更に、前記(B1)成分としては、チオール基を有するシランカップリング剤や、以下の(B1−1)成分、
(B1−1)成分:ビニル重合性基を有する加水分解性ケイ素化合物
を含んでもよい。これらを用いた場合、得られるオーバーコート層の耐候性、防汚染性が良好となり好適である。
上記チオール基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等、を挙げることができる。
また、前記(B1−1)成分としては、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤、等を挙げることができる。
これらシランカップリング剤は、後述する(B2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を上述した前記(B1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、前記(B1)の重合生成物と後述する(B2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。
なお、(B1−1)成分にいう「ビニル重合性基」としては、例えば、ビニル基、アリル基等を挙げることができ、中でも3−(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。
また、前記(B1)成分としては、以下の(B1−2)成分、
(B1−2)成分:環状シロキサンオリゴマー
を含んでいてもよい。当該(B1−2)成分を用いた場合、得られるオーバーコート層の柔軟性がより良好となり好適である。
前記環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(8)で表される化合物を例示することができる。
(8) (R′SiO)m
(式(8)中、R′は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
中でも、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
なお、前記(B1)成分が縮合生成物として使用される場合、当該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。
前記(B1)成分と、後述する(B)成分との比の値(B1)/(B)(質量比)としては、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜80/100、より好ましくは0.1/100〜70/100である。
一方、前記(B1−1)成分と、前記(B)成分との比の値(B1−1)/(B)(質量比)としては、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜10/100である。
また、前記(B1−1)成分と、前記(B2)成分との比の値(B1−1)/(B2)(質量比)としては、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/100〜100/100、より好ましくは0.5/100〜50/100である。
他方、前記(B1−2)成分と、前記(B)成分との比の値(B1−2)/(B)(質量比)としては、親水性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜5/100である。
また、前記(B1−2)成分と、前記(B2)成分との比の値(B1−2)/(B2)(質量比)としては、重合安定性の観点から、好ましくは0.5/100〜50/100、より好ましくは1.0/100〜20/100である。
前記(B2)成分としては、例えば、ヒドロキシ基含有ビニル単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル又は4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種のヒドロキシ基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコールなどを以て代表されるような、種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸などを以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;前掲したような各種のヒドロキシ基含有単量体類と、ε−カプロラクトンなどを以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物;又はグリシジル(メタ)アクリレートなどを以て代表されるような、種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などを以て代表されるような、種々の酸類との付加物;さらには、(メタ)アクリル酸などを以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)などを以て代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような種々のヒドロキシ基含有ビニル単量体類などである。
カルボキシ基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル又はコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸又は無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と前掲した各種のヒドロキシ基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;さらには、前掲したような各種のカルボキシ基含有単量体類とラクトン類を付加反応せしめて得られるような単量体類などである。
アミノ基含有ビニル単量体としては、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート又はN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールN−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド又はN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド又はN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル又は4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などである。
エーテル基含有ビニル単量体としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類などが挙げられる。具体例としては、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350〔以上、日本油脂(株)製〕、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA〔以上、日本乳化剤(株)製〕などが挙げられる。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位は2〜30が好ましい。2未満では、塗膜の柔軟性が不十分となり、30を超えると、塗膜が軟らかくなり、耐ブロッキング性に劣る。
アミド基含有ビニル単量体としては、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができる。
より具体的には、例えばN−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミド、N−n−プロピルメタアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N,N′−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
前記(B2)成分としては、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を用いることが好ましい。
前記(B2)成分と、前記(B)成分との比の値(B2)/(B)(質量比)としては、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜0.5/1である。
また、前記(B2)成分と、前記(A)成分との比の値(B2)/(A)(質量比)としては、(A)成分との水素結合性や配合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜1.0/1である。
前記(B3)成分としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
前記(B3)成分としては、得られる前記(B)成分の水分散安定性を向上させる観点及び得られるオーバーコート層の耐候性、防汚染性を向上させる観点から、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。
上記反応性乳化剤としてより具体的には、例えば、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、四級アンモニウム塩を有するビニル単量体等を挙げることができる。
上記スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、ナフチル基、及びコハク酸基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物;等が挙げられる。
硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、及びナフチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物が挙げられる。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。より詳しくは、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A又はS−180(商品名)(花王(株)製)等を挙げることができる。
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例としては、例えばアクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)((株)ADEKA製)等を挙げることができる。
また、ノニオン基を有するビニル単量体として具体的には、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、(株)ADEKA製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等を挙げることができる。
前記(B3)成分の使用量としては、重合安定性の観点から、前記(B)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.001〜5質量部である。
前記(B)成分は上述した(B1)〜(B3)の各成分、及び前記(B4)成分(即ち「水」)を含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。前記(B4)成分の使用量としては、重合安定性の観点から、重合原液中の含有率として好ましくは30〜99.9質量%である。
前記重合原液には、(B1)〜(B4)成分に加え、更に種々の成分を混合することができる。
まず、前記重合原液には、以下の(B5)成分、
(B5)成分:(B2)成分と共重合可能な他のビニル単量体、
を混合することができる。
このような(B5)成分を用いることは、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性ケイ素化合物(B1)の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から好適である。
前記(B5)成分としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体、等を挙げることができる。
前記(B5)成分が全ビニル単量体中に占める割合としては、好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。このような使用量とすることは、ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、加水分解性ケイ素化合物(B1)の重合生成物との相溶性等を制御する観点から好適である。
また、前記重合原液には、連鎖移動剤を混合することができる。
このような連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、更にはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等を挙げることができる。
これら連鎖移動剤の使用量としては、全ビニル単量体合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。このような使用量とすることは、重合安定性の観点から好適である。
更に、前記重合原液には分散安定剤を混合することができる。
このような分散安定剤としては、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
これらの分散安定剤の使用量としては、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。
上述した重合原液の重合は、重合触媒の存在下で実施するのが好ましい。
前記(B1)成分の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズジラウレートのようなスズ化合物等を挙げることができる。
中でも、加水分解性ケイ素化合物(B1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が非常に好ましい。
前記(B2)成分の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適である。水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が好ましく使用される。より具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
なお、重合触媒の使用量としては、全ビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望むときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
本実施の形態において、前記(B1)成分の重合と、前記(B2)成分との重合とは、別々に実施することも可能であるが、同時に実施すると水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
前記(B)成分を得る方法としては、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に前記(B1)成分と前記(B2)成分とを重合する、いわゆる乳化重合が適している。
乳化重合の方法としては、例えば、前記(B1)成分と前記(B2)成分、更には必要に応じて前記(B3)成分を、そのまま又は乳化した状態で、一括若しくは分割して、又は連続的に、反応容器中に滴下し、前記重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させる方法が挙げられる。場合によっては、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合を行っても差し支えない。
なお、重合原液の配合としては、重合安定性の観点から、最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように前記(B1)〜(B4)の各成分を配合するのが好ましい。
更に、前記乳化重合を行うに際しては、粒子径を適度に成長又は制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。シード重合法とは、あらかじめ水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。シード重合法を行う際の重合系中のpHとしては、好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0である。pHは、リン酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
なお、前記(B)成分を得る方法としては、前記(B1)成分を重合させるのに必要な前記(B3)成分及び前記(B4)成分の存在下、前記(B1)成分及び前記(B2)成分を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できる。
前記(B)成分としては、オーバーコート層形成用塗布液を用いて形成されるオーバーコート層の基材密着性を向上させる観点から、コア層と、当該コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。そして、当該コア/シェル構造を形成する方法としては、前記乳化重合を多段で行う、多段乳化重合が非常に有用である。
多段乳化重合の例としてより具体的には、例えば第一段階として、前記(B3)成分及び前記(B4)成分の存在下、前記(B1)、(B2)、及び(B5)成分よりなる群から選択される少なくとも1種以上を重合してシード粒子を形成し、第二段階として、当該シード粒子の存在下、前記(B1)成分及び前記(B2)成分、更には必要に応じ前記(B5)成分を含む重合原液を添加して重合する(2段重合法)。3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、例えば第三段階として、更に前記(B1)成分及び前記(B2)成分、必要に応じ前記(B5)成分を含む重合原液を添加して重合することができる。このような方法は、重合安定性の観点からも好適である。
2段重合法においては、前記第一段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と、前記第二段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)の質量比としては、重合安定性の観点から、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
3段重合法においては、前記第一段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と、前記第二段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)、前記第三段階において添加される重合原液中の固形分質量(M3)の質量比としては、重合安定性の観点から、好ましくは(M2+M3)/(M1)=9/1〜1/9、M3/M2=1/1〜0.1/1が好ましい。
また、前記(B1)成分と(B2)成分との比(B2)/(B1)(質量比)は、基材密着性の観点から、重合の第一段階で形成されるコア部においては(B2)/(B1)=1/1以下、第二段階において形成されるシェル層においては(B2)/(B1)=0.1/1〜1/1、第三段階において形成されるシェル層においては(B2)/(B1)=1/1〜9/1とすることがより好ましい。
また、前記コア/シェル構造としては、重合安定性の観点から、前記シード粒子の粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)が大きく変化することなく、前記第二段階の重合によって粒子径が増大した構造を有することが好ましい。なお、体積平均粒子径は、数平均粒子径と同様に測定し得る。
前記コア/シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により観察することができる。
前記コア/シェル構造のコア層のガラス転移温度(Tg)としては、好ましくは0℃以下である。この場合、オーバーコート層形成用塗布液の物性として、室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくいオーバーコート層を形成することが可能となり、好ましい。
なお、本発明におけるTgは示差走査熱量測定装置(DSC)にて測定することができる。
前記(B)成分の粒子径としては、10〜800nmである。この様な粒子径の範囲に調整し、粒子径が1〜400nmの前記(A)成分と組み合わせてオーバーコート層形成用塗布液を調製することにより、耐候性、防汚染性が良好であり、しかも樹脂基材に対する保護性が良好なオーバーコート層を実現し得る。また、前記(B)成分の粒子径を50〜300nmとすることは、得られるオーバーコート層の透明性向上の観点から好適である。
前記(A)成分と前記(B)成分の比(A)/(B)(質量比)としては、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜90/10、さらに好ましくは9/91〜83/17である。この範囲で配合されたオーバーコート層形成用塗布液からは、耐候性、防汚染性に優れたオーバーコート層を実現し得るため好ましい。
また、前記(A)成分の表面積(SA)と前記(B)成分の表面積(SB)との比(SA)/(SB)としては、好ましくは0.001〜1000の範囲である。なお表面積は、前記(A)成分及び前記(B)成分の各々の粒子径、及び各々の配合質量数から算出することができる。
上記オーバーコート層形成用塗布液には、その用途及び使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。
前記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤が好ましい。
また、前記紫外線吸収剤としては、例えば有機系紫外線吸収剤を挙げることができる。このような有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤を用いることが好ましい。また、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
なお、前記光安定剤は、前記有機系紫外線吸収剤と併用することが好ましい。両者を併用することは、得られるオーバーコート層の耐候性向上に寄与し得る。
また、これらの有機系紫外線吸収剤や、光安定剤、各種添加剤成分は、前記(A)成分及び前記(B)成分と単に配合することも可能であるし、前記(B)成分を合成する際に共存させることも可能である。
上述したオーバーコート層形成用塗布液は、特に限定されるものではないが、水等の溶媒等に溶解又は分散させた状態として調製することができる。
また、オーバーコート層は、例えば、水等の溶媒等に分散させた前記オーバーコート層形成用塗布液(「水分散体」と略記することがある)を前記基材上に塗工し、乾燥して形成される。ここで、水分散体の固形分濃度としては、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。また、水分散体の粘度としては、好ましくは20℃において0.1〜100000mPa・s、好ましくは1〜10000mPa・sである。更に、前記塗工方法としては、例えばスプレー吹き付け法、ロールコート法、刷毛塗り法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
オーバーコート層の厚さとしては、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmである。透明性の面から、100μm以下の厚さであることが好ましく、耐候性、防汚染性等の機能を発現するためには0.05μm以上の厚さであることが好ましい。
なお、本発明に係る「オーバーコート層」は、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であってもかまわない。
[太陽光反射フィルムミラーの再復方法]
樹脂基材上に金属反射層を有する、本発明の太陽光反射フィルムミラーの再復方法は、当該太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、前記オーバーコート層を再復するため、前記オーバーコート層形成用塗布液を用いて、前記ハードコート層の表面に前記除去・再復可能なオーバーコート層を形成するものであることが好ましい。
なお、オーバーコート層の再復方法は、特に限定されず、太陽光反射フィルムミラーを製造する際に、オーバーコート層を形成する方法と同様の方法で再復されてもよい。
また、本発明の太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、洗浄液で洗浄し、その後、前記オーバーコート層を形成(再復)する太陽光反射フィルムミラーの再復方法であってもよい。なお、この洗浄液は、特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、水が挙げられる。
なお、洗浄液(水)で洗浄することで、オーバーコート層を除去し、その後にオーバーコート層を形成(再復)する方法であってもよい。
また、洗浄方法はこれに限定されず、洗浄液による洗浄以外にも、例えば、風を吹き付けて洗浄する方法が挙げられる。
[太陽熱発電用反射装置の構成概要]
本発明に係る太陽熱発電用反射装置は少なくとも太陽光反射フィルムミラーとミラー支持基材から構成されることが好ましい。前記太陽光反射フィルムミラーは、樹脂基材と金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであり、ミラー支持基材は高い蓄熱性と高い熱伝導率を有していることが好ましい。
[粘着層]
太陽熱発電用反射装置のミラー支持基材と太陽光反射フィルムミラーを接着するための粘着層を設けることが好ましい。粘着剤としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、粘着剤、ヒートシール剤、などのいずれもが用いられる。
例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴムなどが用いられる。
ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。
粘着層の厚さは、粘着効果、乾燥速度等の観点から、通常5〜50μm程度の範囲であることが好ましい。この厚さでは全体の熱伝導については問題はないが、粘着剤自身に熱伝導性(1W/(m・K)以上)があるとより好ましい。
具体的な粘着層としては、ADY社のHS80−S、綜研化学社製「SKダインシリーズ」、東洋インキ社製Oribain BPWシリーズ、BPSシリーズ」、荒川化学社製「アルコン」「スーパーエステル」「ハイペール」、スリーボンド社製1225B等の粘着剤が好適に用いられる。熱伝導性のあるものとしては、これらの中でもADY社のHS80−Sが好ましい。
また熱伝達の観点から、できるだけミラー支持基材と太陽光反射フィルムミラーとを密着させることが重要である。本発明では太陽光反射フィルムミラー背面の95%以上が密着していることが好ましい。好ましくは98〜100%密着していることである。
[ミラー支持基材]
ミラー支持基材は、太陽光反射フィルムミラーの温度低下を低減させるための高い熱容量と熱伝導性を持つ蓄熱体であることが好ましい。好ましい理由は下記のとおりである。
太陽光反射フィルムミラー背面に位置するミラー支持基材に、昼間の高温時は太陽光反射フィルムミラーを介して外部の大気からの熱量が流入する。このとき、外部の熱量はミラー支持基材に蓄えられる。夜間、熱輻射が減少し、太陽光反射フィルムミラー自身から熱放射のみになったとき、太陽光反射フィルムミラーにはミラー支持基材から熱量が供給され、急激な温度低下が起きず、露点温度以下になることを防ぐことが可能になる。このため、ミラー支持基材は、高い熱容量と熱伝導性を持つ蓄熱体であることが好ましい。
ミラー支持基材が蓄熱性を有し、上記好ましい効果を奏すには、太陽光反射フィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量があることが好ましい。120kJ/K以上材料の熱容量があることが好ましい。熱容量はミラー支持基材の材料の比熱容量にその質量を乗じた値である。比熱容量が高い場合は、ミラー支持基材の質量は少なくて良く、かつ体積も大きくならないため好ましい。ミラー支持基材の比熱容量は材料で決まるが、100J/(kg・K)以上であることが好ましい。上限に特に制限はないが、材料の性質上から1000J/(kg・K)程度が限度である。
ミラー支持基材の熱伝導率は50W/(m・K)以上であることが必要である。この値が低い場合は、熱が効率的に移動しない。好ましくは100W/(m・K)以上であることである。この値も材料の性質で決まり、400W/(m・K)程度が上限である。
このような比熱容量と熱伝導率をみたすミラー支持基材の材料としては、純アルミニウム、アルミニウム合金、純銅、黄銅、純鉄、タングステン鋼(W含有率5%以下)、クロム鋼(Cr含有率2%以下)、炭素鋼(C含有率0.5%以下)マンガン鋼(Mn含有率1%以下)を挙げることができる。比重が2.7g/cmであり、耐食性に優れるアルミニウム合金5000系、6000系、7000系が、質量の点からより好ましい。
また、ミラー支持基材は太陽光反射フィルムミラーの面精度を保つための剛体でもあり、ミラー支持基材の太陽光反射フィルムミラー側の表面の表面粗さは15〜100nmの範囲であることが好ましい。この範囲にあると、ミラー支持基材の表面の僅かな凹凸は粘着層で吸収され、太陽光反射フィルムミラーの平面性や、太陽光反射フィルムミラーとミラー支持基材の密着性が影響されることが少なくなる。
上記の特性値は一般的な方法で測定することができる。
表面粗さは一般的な方法で測定することができる。例えば、Veeco社製 Wyko NT9300 オプティカル プロファイラや、パナソニック社製超高精度三次元測定機(UA3P)などで行うことができる。
金属の熱容量の値は周知であり、また例えばBrukerAXS社製 示差走査熱量計(DSC3000SA シリーズ)などで測定できる。
金属の熱伝導率も周知であり、またJISR1650−3等などに準じて測定できる。
[断熱材]
ミラー支持基材は断熱材により、太陽光入射面以外の部分を覆われていることが好ましい。断熱材層の厚さは特に限定されず、所望の断熱性に応じて適宜設定できるが、好ましくは10〜50mm、更に好ましくは20〜40mm程度である。
断熱材層の熱伝導率としては0.10W/(m・K)以下が好ましく、より好ましくは0.06W/(m・K)以下である。熱伝導率の下限については、熱伝導率は低いほど好ましいが、そのためにはコストや厚さの増大を伴うことなどから、0.02W/(m・K)以上が好ましい。
用いることができる断熱材は、公知の断熱材から選択すればよい。例えば、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリエチレン系などのプラスチック製発泡体を用いることができる。これらは、形状に対する加工性がよく、取り扱いやすく、また、周辺環境中の水分が、比較的に断熱材中に浸透しにくいためである。特に好ましいのはポリスチレン系の発泡体である。
また周辺環境の空気中の水分が断熱材を浸透して結露するのを極力防止するため、水分の透過性が低いポリ塩化ビニリデン製のラテックスをコーティングしたり、同様のフィルムやアルミニウム箔などを断熱材の外側に接着剤などで貼り付けたりしてもよい。
また、断熱材は、ミラー支持基材できるだけ密着するように型決めされている。これは、周辺に空間があると、その空間に含まれる水分が冷却に伴い結露するためである。したがって、断熱材の加工が複雑になりすぎない範囲で、周辺空間はできるだけ小さくし、断熱材がミラー支持基材に密着するようにするのがよい。
断熱材の配置は、ミラー支持基材から空気への放熱を防ぐために裏面に固定するのが良いが、更には側面も覆っているとなお望ましい。また突然の降雨を想定して、内部に水が浸透しないような構造、例えば表面を樹脂などで防水保護するとより好ましい。
断熱材の固定法は、断熱材の吹き付け、又はシート状断熱材の接着剤による貼り付け、ビス止めなどでも良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《太陽光反射フィルムミラー1の作製》
樹脂基材として、二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記化合物(1)を真空蒸着法によりコーティングして、厚さ0.1μmのアンカー層を形成し、アンカー層上に、銀反射層として、真空蒸着法により厚さ100nmの銀反射層を形成した。更に、上記銀反射層上に、下記化合物(1)を真空蒸着法によりコーティングして、厚さ0.3μmの上部隣接層を形成した。
Figure 2016114866
次に、上部隣接層上に、ドライラミネーションプロセスにより、接着層と、紫外線吸収層として透明アクリルフィルム(三菱レイヨン製アクリプレンHBS010P 厚さ100μm)を、ラミネート温度60℃にて貼合した。
[ハードコート層1の形成]
[易接着層及びハードコート層1の形成]
次に、下記のようにして前記紫外線吸収層上に、下記易接着層塗布液をバーコーターにより塗布し、185℃で5分間乾燥させて厚さ0.2μmの易接着層を形成した。次に、コロナ処理後、下記組成のハードコート層用塗布液(1)をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥した後、下記のゾル・ゲル調製液を塗布し100℃、10分でオーブン乾燥して、厚さ3μmのハードコート層を形成した。
このハードコート層1の表面の水接触角は、5°であった。
(水接触角の測定)
JIS−R3257に基づいて、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、反射ミラーの表面に水を3μL滴下して、その水滴の滴下1分後の接触角を接触角計DM300(協和界面化学)を用いて測定した。
<易接着層塗布液>
ジメチルテレフタレート95部、ジメチルイソフタレート95部、エチレングリコール35部、ネオペンチルグリコール145部、酢酸亜鉛0.1部及び三酸化アンチモン0.1部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(26.7〜1333.2Pa(0.2〜10mmHg))で2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル系樹脂(以下PET1と省略))の30%水分散液を67部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂の20%水溶液(第一工業製薬社製:商品名エラストロンH−3、以下PU1と省略)を40部、エラストロン用触媒(第一工業製薬社製:商品名Cat64)を0.5部、水を478部及びイソプロピルアルコールを5部、それぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤を1質量%添加し易接着層塗布液とした。
Figure 2016114866
<ゾル・ゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8g、オルトチタン酸テトラエチル10gと下記親水性ポリマー(化(1))5gを混合し、室温で2時間撹拌して調製した。
(親水性ポリマー(化(1)))
親水性ポリマー(化(1))を下記手順にて合成した。
500ml三口フラスコにアクリルアミド21.0g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル4.3g、及び1−メトキシ−2−プロパノール260gを入れ、80℃窒素気流下、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル1.9gを加えた。6時間撹拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体を濾取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水ポリマー(化(1))を得た。乾燥後の質量は22.1gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により求めたポリマーの重量平均分子量は9000であった。
Figure 2016114866
<ハードコート層用塗布液(1)>
ハードコート層用塗布液(1)は下記の配合で調製した。
・上記ゾル−ゲル調製液500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液30g
・精製水450g
・酸化ケイ素分散物20質量%水溶液100g(日産化学工業(株)製スノーテックスC、平均粒径10〜20nm)
[オーバーコート層1の形成]
高圧水でミラー表面を洗浄し表面のごみを取り除いたのち、下記オーバーコート層形成用塗布液1をハードコート層の表面に噴霧し、屋外の環境にて乾燥することでオーバーコート層1を形成した。
<オーバーコート層形成用塗布液1の調製>
下記のエマルジョン粒子B−1を100質量部、酸化ケイ素の10質量%水分散体を80質量部及びシリカ被覆酸化チタンの10質量%水分散体を5質量部、配合させたオーバーコート層形成用塗布液を調製した。
(重合体エマルジョン粒子B−1)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸3gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。更に反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却した。100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10質量%に調整し、重合体エマルジョン粒子B−1((B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子)の10質量%水分散体(粒子径160nm)を得た。
なお、上記粒子径は、試料中の固形分含有量が0.01〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
(酸化ケイ素の10質量%水分散体)
日産化学工業(株)製商品名「スノーテックスO」((A)粒子径が、1〜400nmの範囲内の金属化合物粒子)を水中に分散させたもの(固形分10質量%、数平均粒子径10nm)を使用した。
(シリカ被覆酸化チタンの10質量%水分散体)
石原産業(株)製商品名「TSK−5」((A)粒子径が、1〜400nmの範囲内の金属化合物粒子)を水中に分散させたもの(固形分10質量%、数平均粒子径73nm)を使用した。
《太陽光反射フィルムミラー2の作製》
上記太陽光反射フィルムミラー1の作製において、ハードコート層1を下記ハードコート層2とし、オーバーコート層1を下記オーバーコート層2にしたほかは、同様にして、太陽光反射フィルムミラー2を作製した。
[ハードコート層2の形成]
太陽光反射フィルムミラー1の作製における易接着層及びハードコート層の形成において、易接着層は形成せずに、紫外線吸収層上に、ポリマー末端又は側鎖にシラン基を有するアクリル樹脂と3%の白金錯体触媒を溶剤に混合した液を、スプレーコーティングにより塗設してハードコート層2を形成した。
ハードコート層2の表面の水接触角は、35°であった。
[オーバーコート層2の形成]
オーバーコート層1の形成において、下記重合体エマルジョン粒子B−2をエマルジョン粒子B−1の代わりに使用したほかは、オーバーコート層1と同様にして、オーバーコート層2を形成した。
(重合体エマルジョン粒子B−2)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸3gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに、アクリル酸ブチル5g、フェニルトリメトキシシラン5g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1gの混合液とジエチルアクリルアミド30g、アクリル酸0.1g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)0.1g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液4g、イオン交換水190gの混合液更に反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却した。100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10質量%に調整し、重合体エマルジョン粒子B−2((B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子)の10質量%水分散体(数平均粒子径180nm)を得た。
《太陽光反射フィルムミラー3の作製》
上記太陽光反射フィルムミラー1の作製において、ハードコート層1の代わりに下記ハードコート層3とし、オーバーコート層1を下記オーバーコート層3にしたほかは、同様にして、太陽光反射フィルムミラー3を作製した。
[ハードコート層3の形成]
太陽光反射フィルムミラー1の作製における易接着層及びハードコート層の形成において、易接着層は形成せずに、樹脂コート上に、ジブチルエーテル中の3%パーヒドロポリシラザン液(クラリアント社製 NL120)を用いて、乾燥後の膜の厚さが100nmとなるように、バーコーティングし、3分間自然乾燥した後、70℃のオーブンで30分間アニールし、ガスバリアー性を有するハードコート層3を形成した。
ハードコート層3の表面の水接触角は、47°であった。
[オーバーコート層3の形成]
オーバーコート層1の形成において、下記重合体エマルジョン粒子B−3を重合体エマルジョン粒子B−1の代わりに使用したほかは、オーバーコート層1と同様にして、オーバーコート層3を形成した。
(重合体エマルジョン粒子B−3)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸3gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とポリオキシメチレンメタクリレート(商品名「ブレンマーPE−200」、日本油脂(株)製)137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。更に反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却した。100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10質量%に調整し、重合体エマルジョン粒子B−3((B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子)の10質量%水分散体(数平均粒子径250nm)を得た。
《太陽光反射フィルムミラー4の作製》
上記太陽光反射フィルムミラー1の作製において、ハードコート層1の代わりに下記ハードコート層4としたほかは、同様にして、太陽光反射フィルムミラー4を作製した。
[ハードコート層4の形成]
太陽光反射フィルムミラー1の作製における易接着層及びハードコート層の形成において、易接着層は形成せずに、紫外線吸収層上に、オプスターZ7537(JSR)を厚さ5μmで塗布し、紫外線照射により硬化して防汚性兼耐傷性を有するハードコート層4を形成した。
ハードコート層4の表面の水接触角は、66°であった。
《太陽光反射フィルムミラー5の作製》
上記太陽光反射フィルムミラー1の作製において、ハードコート層1の代わりに下記ハードコート層5とし、オーバーコート層1の代わりに上記オーバーコート層2としたほかは、同様にして、太陽光反射フィルムミラー5を作製した。
[ハードコート層5の形成]
太陽光反射フィルムミラー1の作製における易接着層及びハードコート層の形成において、易接着層は形成せずに、紫外線吸収層上に、69質量%のLAROMER PO90226(光硬化性アクリレート系樹脂;BASFジャパン製)に30質量%のアモルファスシリカ、1質量%の光開始剤を混合した溶液を、乾燥膜厚が3μmになるようにバーコーティングし、80℃でプレ乾燥させた後、紫外線硬化させることで、耐傷性のハードコート層5を形成した。
ハードコート層5の表面の水接触角は、86°であった。
《太陽光反射フィルムミラー6の作製》
上記太陽光反射フィルムミラー3の作製において、オーバーコート層3を形成しなかったほかは、同様にして、太陽光反射フィルムミラー6を作製した(オーバーコート層なしの太陽光反射フィルムミラー。)。
表1に上記太陽光反射フィルムミラー1〜6の構成をまとめた。
Figure 2016114866
《評価》
上記のようにして作製した太陽光反射フィルムミラー1〜6について、下記のようにして、反射率を評価した。
(曝露試験)
まず、太陽光反射フィルムミラー1〜6について、屋外で太陽光に曝露する前に、下記のようにして、反射率を計測した。結果は表2に示すとおりであった。
次に、太陽光反射フィルムミラー1〜5の表面を水で洗浄することで、オーバーコート層を除去した(除去工程)のち、再度、太陽光反射フィルムミラー1〜5に対応するオーバーコート層を、上記[オーバーコート層1〜3の形成]に記載の方法と同じようにしてハードコート層の上に形成(再復)した(再復工程)。
その後、2週間屋外で太陽光に曝露したのち、太陽光反射フィルムミラーの表面を洗浄し、更に2週間、屋外で太陽光に曝露した(曝露工程)。
上述の除去工程、再復工程及び曝露工程を、曝露試験の1回のサイクルとし、当該曝露試験の1回目、2回目、3回目のそれぞれについて、太陽光反射フィルムミラー1〜5について、反射率を計測した。
結果は表2に示す。
なお、太陽光反射フィルムミラー6については、その表面を水で洗浄したのち、1月間、屋外で太陽光に曝露することを、曝露試験の1回のサイクルとし、当該曝露試験の1回目、2回目、3回目のそれぞれについて、反射率を測定した。
結果は表2に示す。
(反射率)
日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100(固体試料測定システム)を使って、入射角5度の基準サンプルに対する相対反射率測定を行った。波長範囲は250〜2500nmで測定し、各波長の反射率(%)の平均値を、評価対象の反射率(%)として評価した。
Figure 2016114866

Claims (6)

  1. 樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーであって、
    光入射側にハードコート層を有し、
    当該ハードコート層の表面の水接触角が、0〜60°の範囲内であり、かつ、
    当該ハードコート層の表面に、除去・再復可能なオーバーコート層が形成されていることを特徴とする太陽光反射フィルムミラー。
  2. 前記オーバーコート層が、少なくとも下記成分(A)〜(D)を含有するオーバーコート層形成用塗布液を前記ハードコート層の表面に塗布して形成された層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光反射フィルムミラー。
    (A)粒子径が、1〜400nmの範囲内の金属化合物粒子
    (B)粒子径が、10〜800nmの範囲内の重合体エマルジョン粒子
    (C)乳化剤
    (D)水
  3. 前記ハードコート層が、
    親水性ポリマーと、
    下記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有する金属アルコキシド化合と、
    酸化ケイ素と、
    を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽光反射フィルムミラー。
    一般式(1) Z−(OR
    一般式(2) Al−(OR
    (Zは、ケイ素(Si)原子、チタン(Ti)原子又はジルコニウム(Zr)原子を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
  4. 樹脂基材上に金属反射層を有する太陽光反射フィルムミラーの再復方法であって、
    当該太陽光反射フィルムミラーが、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の太陽光反射フィルムミラーであり、
    当該太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、前記オーバーコート層を再復するため、前記オーバーコート層形成用塗布液を用いて、前記ハードコート層の表面に前記除去・再復可能なオーバーコート層を形成することを特徴とする太陽光反射フィルムミラーの再復方法。
  5. 前記太陽光反射フィルムミラーを屋外で太陽光に曝露した後、水で洗浄し、その後、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項4に記載の太陽光反射フィルムミラーの再復方法。
  6. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の太陽光反射フィルムミラーと、ミラー支持基材とを有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018180099A (ja) * 2017-04-05 2018-11-15 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 親水性ハードコート積層体、及びその製造方法

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