JP5604126B2 - 親水性フィルム - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1〜5に記載の技術は、防曇性の持続が不十分であり、親水性塗膜が溶け出し視認性が低下したり、濡れた布などで擦ると塗膜表面にキズが発生し視認性が低下するという問題がある。また特許文献6の技術では、防曇性を有する層をコーティングする方法ではなくヒーターを鏡に内蔵することで防曇性を持たせているが、装置が大掛かりになり、コストもかかる欠点がある。
ポリエステルフィルム上に、親水性組成物を用いて形成された親水性層を有する親水性フィルムであって、該親水性組成物は、下記群から選ばれる少なくとも一種の極性基とアルコキシシリル基とを有する親水性ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有することを特徴とする親水性フィルム。
極性基:−CONH 2 、−COOM、−OH
(Mは、水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。)
アルコキシシリル基:−Si−(OR) n R 3−n
(Rは各々独立に、−CH 3 、−C 2 H 5 、または−C 3 H 7 を表し、nは2または3を表す。)
<2>
前記ポリエステルフィルムと前記親水性層との間に、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびメチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する組成物を用いて形成された中間層を有することを特徴とする<1>に記載の親水性フィルム。
<3>
前記親水性ポリマーの極性基が、−CONH 2 、−COOH、および−OHから選ばれる少なくとも1種であり、且つ前記中間層が、テトラメトキシシランおよびメチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種を含有する組成物を用いて形成されたことを特徴とする<2>に記載の親水性フィルム。
<4>
前記親水性層および中間層の膜厚が30nm〜200nmであることを特徴とする<2>または<3>に記載の親水性フィルム。
<5>
前記親水性層表面に、水を噴霧し、80℃で5秒間乾燥を100サイクル繰り返した後の親水性層表面の水滴接触角が15°以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の親水性フィルム。
本発明は、前記<1>〜<5>に係る発明であるが、参考のためにそれ以外の事項(例えば、下記1〜6)についても記載している。
1. ポリエステルフィルム上に、親水性組成物を用いて形成された親水性層を有する親水性フィルムであって、該親水性組成物は、親水性ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有することを特徴とする親水性フィルム。
2. 前記親水性ポリマーが、下記群から選ばれる少なくとも一種の極性基とアルコキシシリル基とを有することを特徴とする上記1に記載の親水性フィルム。
極性基:−CONH2、−COOM、−OH
(Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。)
アルコキシシリル基:−Si−(OR)nR3−n
(Rは各々独立に、−CH3、−C2H5、又は−C3H7を表し、nは2又は3を表す。)
3. 前記ポリエステルフィルムと前記親水性層との間に、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びメチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する組成物を用いて形成された中間層を有することを特徴とする上記1又は2に記載の親水性フィルム。
4. 前記親水性ポリマーの極性基が、−CONH2、−COOH、及び−OHから選ばれる少なくとも1種であり、かつ前記中間層が、テトラメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種を含有する組成物を用いて形成されたことを特徴とする上記3に記載の親水性フィルム。
5. 前記親水性層及び中間層の膜厚が30nm〜200nmであることを特徴とする上記3又は4に記載の親水性フィルム。
6. 前記親水性層表面に、水を噴霧し、80℃で5秒間乾燥を100サイクル繰り返した後の親水性層表面の水滴接触角が15°以下であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性フィルム。
本発明の親水性フィルムは、ポリエステルフィルム上に、親水性組成物を用いて形成された親水性層を有する親水性フィルムであって、該親水性組成物は、親水性ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有することを特徴とする。
本発明における親水性組成物は、親水性ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有する。
親水性ポリマーとしては特に限定されないが、親水性ポリマーが有する好ましい主鎖構造としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル系樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、特にポリエステル製基材との密着性に優れるという理由からアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。親水性ポリマーは共重合体であってもよく、該共重合体はランダム共重合体であってもよい。
L101〜L102が多価の有機連結基を表す場合、L101〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から選択される1つ以上の原子から成り立つものであることが好ましい。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−又は−S−又は−CO−又は−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
一般式(I−1)において、L101は単結合、又は、−CH2−、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SO2NH−及び−SO3−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。L101は−CH2−、及び−CONH−を含むことがより好ましく、−CONH−(CH2)n1−であることが更に好ましい(n1は1〜5の整数を表し、1〜4が好ましく、2又は3がより好ましい)。
一般式(I−2)において、L102は単結合であることが好ましい。
また、Ra〜Rgにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウム又はスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
R101、R102、及びR103が水素原子であって、R105は炭化水素基であることが好ましく、1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
L201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201又はSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2Re、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2Ra、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3Re、−OSO3Re、−SO2Rd、−NHSO2Rd、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、又は−PO3(Rd)(Re)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
L202は単結合であることが好ましい。
親水性ポリマー(III)は、下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む。親水性ポリマー(III)は、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーであることが好ましい。
L301、L302及びL303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA301、側鎖及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L301、L302及びL303が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
A301は−OH、−ORa、−CORa、−CO2Re、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2Ra、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3Re、−OSO3Re、−SO2Rd、−NHSO2Rd、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、又は−PO3(Rd)(Re)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
rは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
親水性ポリマーは硬化性と親水性の観点から、親水性組成物の全固形分に対して80質量%以上含み、80〜95質量%使用されることが好ましく、80〜90質量%使用されることが更に好ましい。
極性基:−CONH2、−COOM、−OH
(Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。)
アルコキシシリル基:−Si−(OR)nR3−n
(Rは各々独立に、−CH3、−C2H5、又は−C3H7を表し、nは2又は3を表す。)
アルコキシシリル基としてはテトラメトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランの少なくとも1種を含むことがより好ましい。
極性基とアルコキシシリル基がともに上記好ましい範囲を満たすことがより好ましい。
親水性組成物中に、前記親水性ポリマー(II)を含有する場合は、良好な硬化性を得るために架橋剤を含有することが好ましい。また、親水性組成物中に前記親水性ポリマー(I)又は(III)を含有する場合は架橋剤を含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには架橋剤を含有してもよい。
Al−(OR22)3 (V−2)
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
本発明の親水性組成物においては、親水性ポリマー、必要に応じて架橋剤を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性層が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために硬化触媒を用いることが好ましい。触媒を使用することにより、親水性層皮膜形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、抗菌剤やポリエステルフィルム上での熱変形を抑制できる。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
(界面活性剤)
本発明においては、前記親水性組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であることがより好ましい。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜30質量%、更に好ましくは0.01〜20質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の親水性フィルムの安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
本発明の親水性フィルムの親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
親水性組成物の調製は、親水性ポリマー、適宜、架橋剤、硬化触媒、その他の添加剤を溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。硬化触媒をポリエステルフィルムに塗設する直前に混合することが好ましい。具体的には硬化触媒の混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。
硬化触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。
その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
調製における反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により親水性ポリマー及び架橋剤の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
このような親水性組成物を含む溶液を、ポリエステルフィルム上に被膜し、乾燥することで、親水性フィルムを得ることができる。
乾燥温度が低いと十分な架橋反応が進まず塗膜強度が低い。温度が高いと塗膜のひび割れを生じやすく部分的に防曇性が不十分になる。
乾燥時間は5〜30秒間が好ましい。更に好ましくは10〜30秒間である。
乾燥時間が短いと乾燥不十分により塗膜強度が低下することがある。必要以上に乾燥時間を長くしすぎると生産性が低下する。
また、親水性層のTgは、塗膜強度の観点から、40℃〜150℃が好ましい。また、親水性層の弾性率は1GPa〜7GPaが好ましい。
なお、上記の親水性層の表面性状は、ポリエステルフィルムの表面粗さ、親水性層形成用塗布液組成物の粘度、親水性被膜の加熱温度、速度などを調節することによって制御できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、親水性層表面に、水を噴霧し、80℃で5秒間乾燥を100サイクル繰り返した後の親水性層表面の水滴接触角が15°以下であることが特に好ましい。
また、親水性層表面に霧吹きでまんべんなく水をふきつけたのち45℃の水蒸気に10秒間あてて、防曇試験(親水性層表面の曇り面積を測定し、該曇り面積が全体の80%以下であるかを判断)を行ったのち80℃1分間乾燥するサイクルを1サイクルとし、防曇試験において親水性層表面の曇り面積が80%以下になるまでのサイクル数(80%以下を維持できるサイクル数)を評価した場合、100サイクル以上が好ましく、150サイクル以上がより好ましく、200サイクル以上が更に好ましい。また、該サイクル試験後の水滴接触角は20°以下が好ましく、15°以下がより好ましい。
また、他にも、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、更に好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水性層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
本発明に用いられるポリエステルフィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナエチレンフタレート、ポリエステルイミド、ポリエーテルエステルなどからなるフィルムが挙げられる。中でも汎用性の面からポリエチレンテレフタレートが好ましい。特に二軸延伸させて得られるポリエステルフィルムが強度が高く好ましい。
ポリエステルフィルムの膜厚は25μm〜150μmが好ましい。
上記の厚み範囲であれば窓やガラス面への貼り付け施工性が優れるため好ましい。
ポリエステルフィルムと親水性層の間に一層以上の中間層を設けることができる。中間層としては、特に限定されないが、例えばポリエステルフィルムと親水性層の密着力を確保するためのプライマー層などがある。プライマー層としては親水性層との濡れ性のよいものであれば市販されている製品を用いても良い。中でも水性アクリル系のものが好ましい。また中間層には紫外線吸収剤などを含むことも好ましい。
またポリエステルフィルム表面を改質してもよい。改質方法としてはコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、アルカリ化成処理など公知の方法を用いることができる。
中でもテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びメチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する組成物を用いて形成された中間層がより好ましく、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する組成物を用いて形成された中間層が更に好ましい。
溶剤としては特に制限がなく、例えば親水性組成物に用いられる前記溶剤が、特に蒸留水、エタノールなどが好ましい。
中間層用組成物の固形分濃度は好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは3〜5質量%である。
本発明の親水性フィルムを使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
本発明の親水性フィルムの裏面に粘着層を付与することが好ましい。粘着層としては特に限定せず公知のものが用いられる。例えばポリエチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリル系などのビニル系共重合体。ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエステルなどの縮合系樹脂を用いたものが好ましい。粘着層のガラス転移温度は粘着のしやすさから−20℃〜20℃が好ましい。
中でも親水性層との密着性が優れるので縮合系樹脂を用いた粘着層が好ましい。特に好ましくはポリエステル系、ポリエーテル系樹脂である。
本発明の親水性フィルムを、別の基板上に貼り付けて使用する場合、基板の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基板における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂及びこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類又は混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、更に好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
本発明の親水性フィルムが前記の接着層を有する場合には、更に離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性フィルムを適切な基板へ貼り付けた後には剥がされる。
[親水性ポリマー合成例]
500ml三口フラスコにアクリルアミド56.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル11.6g、エタノール140g、1−メトキシ−2−プロパノール140gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル2.3gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体を沈殿させた。得られた固体をデカンテーションして採取した。
ついで30℃で乾燥質量が恒量に達するまで乾燥して溶媒を除去し式−1で表される親水性ポリマーを得た。得られたポリマーの乾燥質量は65.6gであった。得られたポリマーの分子量をGPC(ポリエチレンオキシド標準)により測定したところ質量平均分子量18800のポリマーであった。
アクリルアミドをアクリル酸に変更した以外は上記と同様の方法で式−2で表される親水性ポリマーを作製した。
アクリルアミドをビニルアルコールに変更した以外は上記と同様の方法で式−3で表される親水性ポリマーを作製した。
アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピルをアクリルアミド−3−(メトキシシリル)プロピルに変更した以外は上記と同様の方法で式−4で表される親水性ポリマーを作製した。
アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピルをアクリルアミド−3−(プロポキシシリル)プロピルに変更した以外は上記と同様の方法で式−5で表される親水性ポリマーを作製した。
アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピルをアクリルアミド−メチル−2−(エトキシシリル)プロピルに変更した以外は上記と同様の方法で式−6で表される親水性ポリマーを作製した。
テトラメトキシシラン10質量部、チタンアセチルアセトナートを前記テトラメトキシシランのアルコキシシリル基のモル数と等モルを添加し蒸留水900質量部、エタノール1000質量部を加え、20℃で30分間攪拌し中間層用組成物を得た。
式−1の親水性ポリマー、チタンアセチルアセトナート、及びその他の成分を表1記載の量(質量%)で添加し、該親水性ポリマー、チタンアセチルアセトナート、及びその他の成分からなる混合物の固形分100質量部当たり、蒸留水900質量部、エタノール1000質量部を加え、20℃で30分間攪拌し親水性組成物を得た。
ついで表1記載のPETフィルム支持体表面に15w・min/m2の処理量でコロナ処理したうえに前記中間層用組成物を膜厚100nmになるようにバーコーターのコイル径を調整して塗布し180℃5秒間乾燥し、更に該中間層上に前記親水性組成物を膜厚100nmになるようにバーコーターのコイル径を調整して塗布し180℃5秒間乾燥したのちフィルムを巻き取った。
得られたフィルムロールを80℃5時間サーモ処理し実施例1の親水性フィルム試料を作製した。
親水ポリマー、チタンアセチルアセトナート、その他の成分、中間層の有無、親水性層膜厚、及び中間層膜厚を表1記載のものにした以外は実施例1と同様に親水性フィルム試料を作製した。
なお親水性層及び中間層の膜厚は前記組成物の固形分濃度を調整して変更した。
・防曇持続性
親水性層表面に霧吹きでまんべんなく水をふきつけたのち45℃の水蒸気に10秒間あてて防曇試験を行ったのち80℃1分間乾燥するサイクルを1サイクルとし、防曇試験において親水性層表面の曇り面積が80%以下になるまでサイクル数を評価した(防曇サイクル試験)。なお評価は最大200サイクルまでとした。
また、上記の防曇サイクル試験後の親水性層表面の外観を以下のランクで目視評価した。
優秀:防曇サイクル試験前と変化なし
良好:防曇サイクル試験前に比べてやや透明度が低下しているが視認性あり
不良:透明度が低下し、視認性なし
協和界面科学(株)製 接触角計DropMaster500を用いて超純水を用いて親水性層表面の接触角を求めた。水滴接触角は初期と上記防曇サイクル試験後のものを測定した。
親水性層表面を蒸留水で湿らせた不織布(旭化成製BEMCOT)を面圧10gf/cm2、ストローク30mmで5000回繰り返し擦り、目視にて表面にキズが確認できたものを不良、キズは確認できなかったが水に対する接触角が20°以上になったものを良好、水に対する接触角が20°未満かつキズが確認できなかったものを優秀とした。
親水性層表面に油性マジック(ゼブラ社製マッキ−黒色)で直径30mmの円を描き50℃10分間乾燥したのち水道水を1L/分の流量で5分間流水しマジックインキの除去を以下のレベルで評価した。
優秀:全てのマジックインキが除去
良好:マジックインキの90%以上が除去
不良:マジックインキの90%未満が除去
表1において、「PET」は2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚100μm)、「スノーテックスC」は日産化学製コロイダルシリカ(平均粒径10〜20nm)、「TMOS」はテトラメトキシシラン(和光純薬製試薬)、「MTMS」はメチルトリメトキシシラン(東京化成製試薬)である。
Claims (5)
- ポリエステルフィルム上に、親水性組成物を用いて形成された親水性層を有する親水性フィルムであって、該親水性組成物は、下記群から選ばれる少なくとも一種の極性基とアルコキシシリル基とを有する親水性ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有することを特徴とする親水性フィルム。
極性基:−CONH 2 、−COOM、−OH
(Mは、水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。)
アルコキシシリル基:−Si−(OR) n R 3−n
(Rは各々独立に、−CH 3 、−C 2 H 5 、または−C 3 H 7 を表し、nは2または3を表す。) - 前記ポリエステルフィルムと前記親水性層との間に、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびメチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する組成物を用いて形成された中間層を有することを特徴とする請求項1に記載の親水性フィルム。
- 前記親水性ポリマーの極性基が、−CONH2、−COOH、および−OHから選ばれる少なくとも1種であり、且つ前記中間層が、テトラメトキシシランおよびメチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種を含有する組成物を用いて形成されたことを特徴とする請求項2に記載の親水性フィルム。
- 前記親水性層および中間層の膜厚が30nm〜200nmであることを特徴とする請求項2または3に記載の親水性フィルム。
- 前記親水性層表面に、水を噴霧し、80℃で5秒間乾燥を100サイクル繰り返した後の親水性層表面の水滴接触角が15°以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水性フィルム。
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