JP2016113982A - エンジン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストンへの冷却用のオイル供給を適切に制御する技術を提供することを目的とする。【解決手段】エンジン制御装置は、エンジンのピストンにオイルを供給してピストンを冷却するオイル供給装置を制御するエンジン制御装置であって、エンジン運転状態として負荷率を算出し(S410)、エンジンに設置されたノックセンサの検出信号に基づいてノッキングの有無を判定する(S412)。エンジン制御装置は、負荷率と、基本閾値と学習閾値との加算により算出される判定閾値とを比較し、ノッキングの有無の判定結果と、エンジン運転状態と判定閾値との比較結果とのうち少なくともノッキングの有無の判定結果に基づいて、判定閾値を設定する(S416、S426)。エンジン制御装置は、ノッキングの有無の判定結果と、負荷率と判定閾値との比較結果とに基づいてオイル供給装置のオイル供給を制御する(S428、S430、S432)。【選択図】図3

Description

本発明は、エンジンのピストンにオイルを供給してピストンを冷却するオイル供給装置を制御する技術に関する。
エンジンの異常燃焼によるノッキングの発生を抑制するために、エンジンのピストンにオイルを供給してピストンを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような技術では、エンジン運転状態が所定の領域であるか否かを判定して、オイルを供給するか否かを判定している。
特開平10−68319号公報
特許文献1の技術では、エンジン運転状態の境界を表わす判定閾値とエンジン運転状態とを比較して、エンジン運転状態が所定の領域であるか否かを判定している。判定閾値には、エンジンの機差および経時変化を考慮し、オイルを噴射してノッキングの発生を抑制する方向にマージンが設定される。
しかしながら、ピストンを冷却するためにオイルを供給する方向にマージンを設定すると、ピストンを冷却する必要がない場合にもオイルを供給することがあるので、過度の冷却により燃料の噴霧化が阻害されるおそれがある。燃料の噴霧化が阻害されると、燃費の低下、エミッションの悪化、未燃燃料によるデポジットの増加等の問題が生じる。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ピストンへの冷却用のオイル供給を適切に制御する技術を提供することを目的とする。
本発明のエンジン制御装置は、エンジンのピストンにオイルを供給してピストンを冷却するオイル供給装置を制御するエンジン制御装置であって、ノッキング判定手段と、運転状態取得手段と、比較手段と、学習手段と、供給制御手段とを備えている。
ノッキング判定手段は、エンジンに設置されたノックセンサの検出信号に基づいてノッキングの有無を判定し、運転状態取得手段はエンジン運転状態を取得する。比較手段は運転状態取得手段が取得するエンジン運転状態と判定閾値とを比較する。
学習手段は、ノッキング判定手段の判定結果と比較手段の比較結果とのうち少なくとも判定結果に基づいて判定閾値を設定し、供給制御手段は判定結果と比較結果とに基づいてオイル供給装置のオイル供給を制御する。
この構成によれば、ノッキングの有無の判定結果と、エンジン運転状態と判定閾値との比較結果とのうち少なくともノッキングの有無の判定結果に基づいて判定閾値を設定するので、ノッキングの有無によって適切に判定閾値を設定し、ピストンへのオイル供給を適切に制御できる。
例えば、ノッキングが発生したときには、ピストンを冷却してノッキングの発生を抑制するように、エンジン運転状態と比較するときにピストンへのオイル供給を促進する判定閾値に設定する。
また、ノッキングが発生していないときには、現在のエンジン運転状態ではピストンを冷却する必要がないので、エンジン運転状態と比較するときにピストンへのオイル供給を抑制する判定閾値に設定する。これにより、冷却用に不要なオイルをピストンに供給することを抑制できる。
ノッキングの有無の判定結果に加え、エンジン運転状態と判定閾値との比較結果に基づいて、学習手段は判定閾値を設定してもよい。
このように、ノッキングの有無の判定結果と、エンジン運転状態と判定閾値との比較結果とのうち少なくともノッキングの有無の判定結果に基づいて、適切な判定閾値を可変に設定することができる。
尚、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
第1実施形態のエンジン制御装置を適用したエンジンを示すブロック図。 点火時期制御処理を示すフローチャート。 オイル噴射制御処理を示すフローチャート。 学習閾値設定処理を示すフローチャート。 供給不良判定処理を示すフローチャート。 オイル噴射制御処理を示すタイムチャート。 エンジン運転状態と判定閾値との関係を示す特性図。 第2実施形態によるエンジン運転状態と判定閾値との関係を示す特性図。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)50は、例えば、自動車用の直噴式ガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)10に設置された燃料噴射弁20、点火プラグ22、オイル制御弁30等の作動を制御する。
燃料噴射弁20は、エンジン10の各気筒に設置され、各気筒の燃焼室200に直接燃料を噴射する。点火プラグ22は、エンジン10のシリンダヘッドに設置され、燃焼室200の混合気に火花放電で点火する。吸気弁24は燃焼室200に吸気を吸入する吸入ポートを開閉し、排気弁26は燃焼室200から排気を排出する排気ポートを開閉する。
ノックセンサ28は、エンジン10のシリンダブロックに設置され、エンジン10のノッキングを検出する。
オイル制御弁30は、エンジン10の底部のオイルパンから図示しないオイルポンプが吸入して吐出するオイルをジェットノズル40に供給する。オイル制御弁30は、コイル32への通電を制御されることにより開弁または閉弁する電磁制御弁である。
オイル制御弁30が開弁すると、ジェットノズル40からオイルがピストン12の下部に向けて噴射され、ピストン12に供給される。ジェットノズル40からピストン12に噴射されたオイルは、ピストン12内を流れてピストン12を冷却し、オイルパンに落下する。ジェットノズル40からピストン12に噴射されたオイルは、潤滑油としても機能する。
オイル制御弁30が閉弁すると、ジェットノズル40からのオイルの噴射は停止される。
[1−2.処理]
次に、ECU50が実行する各処理について説明する。図2〜図5において、「S」はステップを表わしている。
(1)点火時期制御処理
図2に示す点火時期制御処理のフローチャートは一定時時間間隔で実行される。
S400においてECU50は、ノックセンサ28の検出信号を入力してノッキングの有無を判定する(S400)。
ノッキング有りの場合(S400:Yes)、異常燃焼によりノッキングが発生していると考えられる。そこで、ECU50は、異常燃焼を抑制するために、次式(1)から点火時期の遅角量を設定する(S402)。式(1)において、所定値は正の値である。
点火遅角量=点火遅角量の前回値+所定値 ・・・(1)
式(1)から点火時期の遅角量を設定することにより、点火時期の遅角量は前回値よりも所定値増加する。遅角量の前回値の初期値は0である。図6の時刻T1、T2においてノッキングが発生したので、点火時期は遅角側に所定値増加している。
ノッキング無しの場合(S400:No)、ECU50は点火遅角量が0以下であるか否かを判定する(S404)。点火遅角量が0より大きい場合(S404:No)、現在はノッキングが発生していないが、以前にノッキングが発生したために点火時期の遅角制御の実行中であると考えられる。但し、現在はノッキングが発生していないので、点火遅角量が0になるまで点火遅角量を徐々に減少させる(S406)。
図6の時刻T1からT2の間および時刻T2からT3の間において、現在はノッキングが発生していないが以前にノッキングが発生したために、点火遅角量が徐々に減少し点火時期が進角している。
(2)オイル噴射制御処理
図3に示すオイル噴射制御処理のフローチャートは一定時時間間隔で実行される。
S410においてECU50は、図示しないエアフローセンサが検出する吸気量とエンジン回転数センサが検出するエンジン回転数とから、後述する判定閾値と比較する比較対象値としてエンジン10の負荷率を算出する。次に、ECU50は、バックアップメモリに記憶されている供給不良情報に基づいて、オイル供給不良が発生しているか否かを判定する(S412)。
オイル供給不良は、オイル制御弁30の固着またはジェットノズル40の目詰まり等により発生し、ピストン12に冷却用のオイルを噴射できなくなる異常状態を意味する。供給不良情報は、後述するS418で実行される供給不良判定処理で判定されて設定され、RAM等のバックアップメモリに記憶されている。
供給不良情報がオイル供給不良を示している場合(S412:Yes)、ピストン12に冷却用のオイルを噴射して異常燃焼を抑制できないので、ECU50はフェイルセーフ処理を実行する(S422)。S422のフェイルセーフ処理として、ECU50はエンジン回転数または負荷率が所定値以下になるように、燃料噴射量または吸気量を制限する。
そして、ECU50は、S430に処理を移行してオイル制御弁30を開弁してジェットノズル40からのオイル噴射を指令し、S434に処理を移行する。S422のフェイルセーフ処理の実行後、S430でオイル噴射を指令することにより、オイル制御弁30の固着やジェットノズル40の目詰まりが解消される可能性がある。
オイル供給が正常であることを供給不良情報が示している場合(S412:No)、ECU50はノックセンサ28の検出信号に基づいてノッキングの有無を判定する(S414)。ノッキング有りの場合(S414:Yes)、ECU50は学習閾値設定処理を実行する(S416)。S416の学習閾値設定処理の詳細については図4に基づいて後述する。
学習閾値は、オイル制御弁30を開弁してジェットノズル40からオイルを噴出させるか否かを判定するときに負荷率と比較する判定閾値を次式(2)から算出するために使用される。学習閾値は正負のいずれの値にも設定されることがあり、学習閾値の初期値は0である。
判定閾値=基本閾値+学習閾値 ・・・(2)
式(2)において、基本閾値は、エンジン10の運転特性により予め実験等によりエンジン回転数に対応して設定された固定値であり、ROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに記憶されている。学習閾値は、エンジン回転数に対応して、エンジン運転状態とノッキングの有無とによって設定される可変値であり、RAM等のバックアップメモリに記憶されている。
基本閾値と学習閾値とを加算して式(2)から設定される判定閾値は、エンジン回転数に対応して学習閾値により可変に設定される。
学習閾値が低下すると判定閾値が低下するので、ピストン12にオイルを噴射することを許可する負荷率の条件が低下する。これにより、ピストン12にオイルを噴射しやすくなる。学習閾値が増加すると判定閾値が増加するので、ピストン12にオイルを噴射することを許可する負荷率の条件が上昇する。これにより、ピストン12にオイルを噴射し難くなる。
S416で学習閾値設定処理を実行後、ECU50は供給不良判定処理を実行する(S418)。S418の供給不良判定処理の詳細については図5に基づいて後述する。
供給不良情報がオイル供給不良を示している場合(S420:Yes)、ECU50はS422に処理を移行して前述したフェイルセーフ処理を実行し、S430に処理を移行する。これにより、前述したように、オイル制御弁30の固着やジェットノズル40の目詰まりが解消される可能性がある。
オイル供給が正常であることを供給不良情報が示している場合(S420:No)、ECU50は、オイル制御弁30を開弁してジェットノズル40からのオイル噴射を指令し(S430)、S434に処理を移行する。S430を実行することにより、ジェットノズル40からオイルが噴射されピストン12が冷却されるので、ノッキングの発生を抑制できる。
ノッキング無しの場合(S414:No)、ECU50は点火遅角量が0以下であるか否かを判定する(S424)。点火遅角量が0より大きい場合(S424:No)、現在ノッキングが発生していないのは点火時期を遅角させているからだと考えられる。ノッキングが発生していないことに基づいて現在の学習閾値を更新することは誤学習になるので、現在の学習閾値を更新せずに保持することが望ましい。
そこで、ECU50は、学習閾値を更新せず、ノッキングが発生しないようにオイル制御弁30を開弁してジェットノズル40からのオイル噴射を指令し(S430)、S434に処理を移行する。
点火遅角量が0以下の場合(S424:Yes)、点火時期の遅角制御を実行しなくてもノッキングが発生していないので、判定閾値を増加してピストン12にオイルを噴射し難くすることが望ましいと考えられる。そこで、ECU50は、次式(3)から学習閾値を設定し(S426)、S428に処理を移行する。式(3)において、β>0である。
学習閾値=前回値+β ・・・(3)
式(3)から学習閾値を設定することにより、図6の時刻T4から時刻T5の間に示すように判定閾値は徐々に増加する。但し、学習閾値には上限ガード値が設定されているので、図6の時刻T5で学習閾値が上限ガード値に達し、判定閾値が上限値に達すると判定閾値は上限値を超えて設定されない。
学習閾値の上限ガード値は、エンジン10の機差および経年変化を考慮し、最もノッキングが発生しにくく、最も摩耗しにくいエンジン10を想定して設定されている。上限ガード値は、ピストン12にオイルを噴射する必要のないエンジン運転状態の上限の境界を設定する。
S428においてECU50は、現在の負荷率が次式(4)を満たしているか否かを判定する。式(4)において、現在の負荷率は、エンジン回転数と吸気量とによりS410で算出した値である。
現在の負荷率<基本閾値+学習閾値 ・・・(4)
ノッキングが発生しておらず点火時期の遅角制御が行われていない状態で(S414:No、S424:Yes)、現在の負荷率が式(4)を満たしていない場合(S428:No)、現在の負荷率が高いために異常燃焼によりノッキングが発生する可能性が高いと考えられる。
そこで、ECU50は、オイル制御弁30を開弁してジェットノズル40からのオイル噴射を指令し(S430)、S434に処理を移行する。S430を実行することにより、ジェットノズル40からオイルが噴射されピストン12が冷却されるので、ノッキングの発生を抑制できる。
現在の負荷率が式(4)を満たしている場合(S428:Yes)、現在の負荷率は低いので異常燃焼の可能性は低いと考えられる。そこで、ECU50は、オイル制御弁30を閉弁してジェットノズル40からのオイルの噴射を停止し(S432)、S434に処理を移行する。S434においてECU50は、学習閾値および供給不良情報をRAM等のバックアップメモリに記憶する。
負荷率とエンジン回転数とにより表わされるエンジン運転状態と判定閾値との関係を図7に示す。基本閾値300と学習閾値とは、エンジン回転数に対応する値として、メモリに記憶されたマップ等から求められる。基本閾値300と学習閾値とを加算した判定閾値302には、上限値310と下限値312とが設定されている。図7において、エンジン運転状態が斜線で表わされる領域であれば、ジェットノズル40からオイルが噴射される。
(3)学習閾値設定処理
図4に示す学習閾値設定処理のフローチャートは、図3のS416において実行される処理である。
S440において、ECU50は、現在の負荷率が前述した式(4)を満たしているか否かを判定する。図3のS416が実行されるのはノッキングが発生したときであるから、現在の負荷率が式(4)を満たしており判定閾値よりも小さい場合(S440:Yes)、判定閾値が現在の負荷率よりも小さくなるように、ECU50は次式(5)から学習閾値を設定する。式(5)においてα>0であり、前述したβとの大小関係はα>βである。
学習閾値=現在の負荷率−基本閾値−α ・・・(5)
図6の時刻T1で示すように、ノッキングが発生し、現在の負荷率が判定閾値よりも小さいときに、S442で式(5)から学習閾値を設定することにより、1回の処理で判定閾値は現在の負荷率よりも小さくなる。
現在の負荷率が式(4)を満たしておらず判定閾値以上の場合(S440:No)、ECU50は次式(6)から学習閾値を設定する(S444)。式(6)のαは、式(5)のαと同じ所定値である。
学習閾値=前回値−α ・・・(6)
図6の時刻T2で示すように、ノッキングが発生し、現在の負荷率が判定閾値以上の場合、S444で式(6)から学習閾値を設定することにより、判定閾値は前回値よりもαだけ小さくなる。
S442またはS444で設定した学習閾値が下限ガード値よりも小さくなると(S446:Yes)、ECU50は学習閾値を下限ガード値に設定する。これにより、判定閾値は下限値になる。
下限ガード値は、エンジン10の機差および経年変化を考慮し、最もノッキングが発生しやすく、最も摩耗しやすいエンジン10を想定して設定されている。下限ガード値は、ピストン12にオイルを噴射する必要のあるエンジン運転状態の下限の境界を設定する。
(4)供給不良判定処理
図5に示す供給不良判定処理のフローチャートは、図3のS418において実行される処理である。
S450において、ECU50は、学習閾値が下限ガード値であるか否かを判定する。学習閾値が下限ガード値ではない場合(S450:No)、ECU50はS460に処理を移行する。
学習閾値が下限ガード値である場合(S450:Yes)、ECU50は、学習閾値が継続して下限ガード値に張り付いている張り付き時間をカウントアップし(S452)、学習閾値が下限ガード値から離れている非張り付き時間をクリアする(S454)。
張り付き時間が第1所定時間以上の場合(S456:Yes)、ジェットノズル40からのオイル噴射を指令しているにも関わらずノッキングが継続して起こっているために、学習閾値が下限値に張り付いたままであると考えられる。そこで、ECU50はオイル供給不良と判定する(S458)。
S460において、ECU50は、張り付き時間をクリアし(S460)、非張り付き時間をカウントアップする(S462)。
非張り付き時間が第2所定時間以上の場合(S464:Yes)、ジェットノズル40から正常にオイルを噴射しているためにノッキングが停止していると考えられる。そこで、ECU50はオイル供給正常と判定する(S466)。
[1−3.効果]
以上説明した第1実施形態によると、以下の効果を得ることができる。
(1)ジェットノズル40からオイルを噴射するか否かを判定するためにエンジン運転状態を表わす負荷率と比較する判定閾値を、ノッキングの有無と、負荷率と判定閾値との比較結果とのうち少なくともノッキングの有無に基づいて可変に設定する。これにより、ノッキングの有無と、負荷率と判定閾値との比較結果とのうち少なくともノッキングの有無に基づいて適切な判定閾値を設定し、設定した判定閾値に基づいてジェットノズル40からのオイル噴射を適切に制御できる。
その結果、ジェットノズル40からオイルを噴射する必要のないエンジン運転状態の領域を極力広げピストン12の過冷却を抑制し燃料の噴霧化を促進できるので、燃費の向上、エミッションの向上、未燃燃料の低減等を実現できる。
(2)判定閾値が所定時間以上下限値に張りついている場合、オイル供給不良と判断するので、オイル供給不良を検出するための新たなセンサが不要である。
(3)ノッキングが発生すると式(5)から学習閾値を設定し現在の負荷率よりも判定閾値を小さくするので、ノッキングが発生してから速やかにジェットノズル40からオイルを噴射できる。
(4)判定閾値をエンジン回転数からマップ等により求め、負荷率と判定閾値とを比較するので、判定閾値の設定、ならびに負荷率と判定閾値との比較が容易である。
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
第2実施形態では、開弁時の開度を調整できるオイル制御弁30を使用する。これ以外の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と実質的に同一である。
例えば、エンジン回転数と負荷率が上昇しエンジン10内の温度が上昇するにしたがい、ピストン12を冷却するために必要なオイル量は増加するので、第2実施形態では、エンジン回転数と負荷率が上昇するにしたがいオイル制御弁30の開度を大きくしてオイルの噴射量を増やしている。
そのため第2実施形態では、例えば、0%、25%、50%、75%のように一定刻みのオイル制御弁30の開度毎にエンジン運転状態の境界を設定している。第1実施形態と同様に、判定閾値で境界を表わす。式(2)のように、判定閾値は基本閾値と学習閾値で構成される。
図8に示すように、符号320、330、340、350は前記各開度に対応する基本閾値である。符号320、330、340、350が表わす基本閾値に学習閾値を加算して、前記各開度に対応する判定閾値322、332、342、352になる。
エンジン回転数と負荷率の上昇に従って開度を大きくし、オイル流量を増量する必要があるため、図8の外側の閾値(即ち、エンジン回転数が高く、負荷率が大きい側)と対応する開度は内側の閾値(即ち、エンジン回転数が低く、負荷率が小さい側)と対応する開度より大きい。例えば、符号322は開度が0%に対応する判定閾値、符号332は開度が25%に対応する判定閾値、符号342は開度が50%に対応する判定閾値、符号352は開度が75%に対応する判定閾値である。
ECU50は、エンジン回転数とオイル制御弁30の開度とに対応する値として判定閾値322、332、342、352をメモリに記憶されたマップ等から取得し、エンジン回転数と吸気量とから算出される負荷率と判定閾値322、332、342、352との比較結果に基づいて、ピストン12にオイルを噴射するときのオイル制御弁30の開度を決定する。
図8で、例えば、エンジン回転数と吸気量とから算出した負荷率が判定閾値322以下の場合、開度を0%に設定する。即ち、ピストン12にオイルを噴射しない。負荷率が判定閾値322より大きく判定閾値332以下の場合、開度を25%に設定する。負荷率が判定閾値332より大きく判定閾値342以下の場合、開度を50%に設定する。負荷率が判定閾値342より大きく判定閾値352以下場合、開度を75%に設定する。負荷率が判定閾値352より大きい場合、開度を100%に設定する。
[2−2.効果]
以上説明した第2実施形態では、負荷率と判定閾値322、332、342、352との比較結果に基づいて、ピストン12にオイルを噴射するときのオイル制御弁30の開度を決定するので、エンジン運転状態を表わす回転数と負荷率に応じて、ピストン12へのオイルの供給量としてオイルの噴射量を適切に調整できる。
[3.他の実施形態]
(1)第1実施形態では、エンジン回転数に対応する値として判定閾値を設定し、エンジン運転状態を表わす負荷率と比較した。これに対し、ピストンにオイルを噴射するエンジン運転状態の領域とオイルを噴射しないエンジン運転状態の領域との境界を表わす判定閾値を、エンジン回転数と負荷率とにより設定してもよい。
この場合、実際のエンジン回転数と負荷率とが、判定閾値が示す境界で分けられるエンジン運転状態の領域のどちらに属するかにより、ピストンにオイルを噴射するか否かを判定する。
(2)上記実施形態では、負荷率とエンジン回転数とによりエンジン運転状態を表わした。これに対し、負荷率に代えて、エンジン10のトルクまたは吸気量とエンジン回転数とによりエンジン運転状態を表わしてもよい。この場合、エンジン回転数、またはエンジン回転数とオイル制御弁の開度とに対応する値として設定される判定閾値と、エンジン10のトルクまたは吸気量とを比較する。
(3)上記実施形態では、直噴式のガソリンエンジン10に本発明を適用した。これ以外にも、ポート噴射式のガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンに本発明を適用してもよい。
(4)上記実施形態における一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。尚、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
(5)上述したエンジン制御装置の他、当該エンジン制御装置を構成要素とするエンジン制御システム、当該エンジン制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した記録媒体、エンジン制御方法など、種々の形態で本発明を実現することもできる。
10:エンジン、20:燃料噴射弁、28:ノックセンサ、30:オイル制御弁(オイル供給装置)、40:ジェットノズル(オイル供給装置)、50:ECU(エンジン制御装置、ノッキング判定手段、運転状態取得手段、比較手段、学習手段、供給制御手段、不良判定手段、点火時期制御手段)

Claims (9)

  1. エンジン(10)のピストン(12)にオイルを供給して前記ピストンを冷却するオイル供給装置(30、40)を制御するエンジン制御装置(50)であって、
    前記エンジンに設置されたノックセンサの検出信号に基づいてノッキングの有無を判定するノッキング判定手段(S414)と、
    エンジン運転状態を取得する運転状態取得手段(S410)と、
    前記運転状態取得手段が取得する前記エンジン運転状態と判定閾値とを比較する比較手段(S428、S440)と、
    前記ノッキング判定手段の判定結果と前記比較手段の比較結果とのうち少なくとも前記判定結果に基づいて前記判定閾値を設定する学習手段(S426、S442、S444)と、
    前記判定結果と前記比較結果とに基づいて前記オイル供給装置のオイル供給を制御する供給制御手段(S430、S432)と、
    を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジン制御装置であって、
    前記学習手段は、前記エンジンの運転特性に基づいて設定された固定の基本閾値に加算して前記判定閾値を設定するための学習閾値を、前記判定結果と前記比較結果とのうち少なくとも前記判定結果に基づいて設定する、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のエンジン制御装置であって、
    前記エンジン運転状態は、エンジン回転数と、前記エンジンの負荷率またはトルクまたは吸気量のいずれかとにより表わされ、
    前記比較手段は、前記運転状態取得手段が取得する前記負荷率または前記トルクまたは前記吸気量のいずれかを前記エンジン運転状態に代わる比較対象値として前記判定閾値と比較し、
    前記学習手段は、前記判定結果と前記比較結果とのうち少なくとも前記判定結果に基づいて、前記エンジン回転数に対応する値として前記判定閾値を設定する、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  4. 請求項3に記載のエンジン制御装置であって、
    前記学習手段(S442、S444)は、前記判定結果がノッキングの発生を示すと、前記比較対象値が前記判定閾値以上の場合は前記判定閾値から所定値を減算して前記判定閾値に設定し、前記比較対象値が前記判定閾値よりも小さい場合は前記比較対象値よりも小さくなるように前記判定閾値を設定する、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  5. 請求項3または4に記載のエンジン制御装置であって、
    前記判定閾値には上限値および下限値が設定されている、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  6. 請求項5に記載のエンジン制御装置であって、
    前記判定閾値が第1所定時間以上の間前記下限値である場合、前記オイルの供給不良であると判断し、前記判定閾値が第2所定時間以上の間前記下限値よりも大きい場合、前記オイルが正常に供給されていると判断する不良判定手段(S456、S458、S464、S466)を備える、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のエンジン制御装置であって、
    前記判定結果がノッキングの発生を示すと、前記エンジンに供給される燃料に点火する点火プラグの点火時期を遅角させる遅角制御を実行する点火時期制御手段(S402)を備え、
    前記点火時期制御手段が前記遅角制御を実行中で前記判定結果がノッキングの発生を示していない場合、前記学習手段(S414、S424)は前記判定閾値を保持する、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置であって、
    前記オイル供給装置(30)は、前記エンジンへの前記オイルの供給を開弁と閉弁とを切り替えて制御する電磁制御弁か、あるいは開度によって前記オイルの供給量を制御する電磁制御弁を備える、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
  9. 請求項8に記載のエンジン制御装置であって、
    前記エンジン運転状態は、エンジン回転数と、前記エンジンの負荷率またはトルクまたは吸気量のいずれかとにより表わされ、
    前記比較手段は、前記運転状態取得手段が取得する前記負荷率または前記トルクまたは前記吸気量のいずれかを前記エンジン運転状態に代わる比較対象値として前記判定閾値と比較し、
    前記学習手段は、前記電磁制御弁が開度によって前記オイルの供給量を制御する場合、前記判定結果と前記比較結果とに基づいて、前記エンジン回転数と前記電磁制御弁の開度とに対応する値として前記判定閾値を設定する、
    ことを特徴とするエンジン制御装置。
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