JP2016113730A - ポリアミド高配向未延伸糸及びその製造方法 - Google Patents

ポリアミド高配向未延伸糸及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】後に糸加工を含む様々な態様で高次加工しても工程通過性に特段支障がないのは無論のこと、伸度を比較的低く抑えることでそのままの状態で製織編でき、しかも強度にも優れる新規な高配向未延伸糸と、その未延伸糸を生産性よく安定的に製造するための方法とを提供する。
【解決手段】3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドから構成される高配向未延伸糸であって、単糸繊度が2.0〜7.0dtexで、伸度が50〜80%であり、かつ引張強度が1.5〜3.5cN/dtexの範囲にあることを特徴とするポリアミド高配向未延伸糸。前記共重合ポリアミド中の共重合成分としてナイロン6及びナイロン66を含み、かつナイロン6及びナイロン66の合計含有量がポリアミド高配向未延伸糸100質量部に対して20〜90質量部の範囲にあることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、別途延伸しなくてもそのままの状態で糸加工や製織編などに供することができる高配向未延伸糸と、その未延伸糸を製造するための好ましい製法とに関するものである。
マルチフィラメント糸は種々の特性に優れていることから、多量かつ広範囲に渡り使用されている。中でも、紡糸引取速度を2000〜7000m/分に設定して得られる高配向未延伸糸(以下、単に「未延伸糸」と記すことがある)は、主に延伸仮撚加工の供給糸として用いられ、衣料分野だけでなく産業資材分野においても汎用性あるものとして多用されている。
近年、生産性向上のため、紡糸引取速度を速くして単位時間あたりの生産量を増やす試みがある。しかし、マルチフィラメント糸は、製造時、引取速度を上げると配向結晶化が進み、糸条の糸質のうち幾つかは、これが要因で悪化することがあり、その改善が望まれている。例えば、配向結晶化が進むと、単糸が脆くなる結果、後に高次加工したとき工程通過性が低減する傾向にある。
そこで、引取速度を速くした場合においても同等特性のマルチフィラメント糸が得られるよう、配向結晶化の上昇を抑えるための手段が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、特定触媒の存在下に芳香族ジカルボキシレートエステルを重縮合して得たポリエステル重合体に、別のポリマーを特定量溶融添加した組成物を、引取速度2000〜6000m/分で溶融紡糸して得たポリエステル高配向未延伸糸が開示されている。この発明では、触媒の組成を工夫することにより、配向結晶化の上昇を抑えているものと考えられる。
また、特許文献2には、固有粘度、分子量分布などを好適化したポリエステル重合体を、3500〜7000m/分の引取速度で溶融紡糸して得たポリエステル高配向未延伸糸が開示されている。この発明では、ポリエステル重合体の物性を好適化することで、配向結晶化の上昇を抑えているものと考えられる。
さらに、特許文献3には、ポリエステル重合体に別のポリマーを所定量添加したうえで、3000〜8000m/分で溶融紡糸して得たポリエステル高配向未延伸糸が記載されている。この発明では、当該別のポリマーを使用することにより、配向結晶化の上昇を抑えているものと考えられる。
このように、高配向未延伸糸の分野では、専らポリエステル高配向未延伸糸が知られ、種々の改質技術を適用することで配向結晶化を抑えた未延伸糸が多く提案され、その製法としても、生産性などに十分配慮した製法が種々提案されている。
特開2005−126869号公報 特開2001−89935号公報 特開2000−345017号公報
上記特許文献によれば、いずれの未延伸糸も配向結晶化の指標たる複屈折率が低く抑えられているだけでなく、紡糸時の紡糸操業性や高次加工性なども改善されている。
一方で、配向結晶化を抑えると糸条の強度は一般に低下するが、上記未延伸糸では、固有粘度を調整するなどして糸条の強度低下を抑えている。このように、上記未延伸糸では、配向結晶化の上昇に伴う糸質の悪化が抑えられ、同時に配向結晶化の抑制に伴う糸質の悪化も抑えられている。
また、配向結晶化が抑えられた糸条は、配向結晶化が進んだ糸条と比べ、可撓性に優れ織編物にソフトな風合いを与えることができる。したがって、未延伸糸を直に使用すれば、そのような特性を持った織編物が得られ、結果として織編物の商品価値を高めることができることになる。
この点、例えば製織工程についていえば、撚糸、整経、サイジング及び製織という一連の流れで行われ、それぞれの工程にはそれぞれ目的があり、実施態様も全く異なる。ただし、工程安定化のため糸条に所定の張力を付加する点で唯一共通する。
張力を付加すれば当然糸条は伸びるが、伸びたままでは糸質が変化してしまい、織物に所望の特性を付与できない。したがって、糸条が伸びきらないよう伸度を所定範囲に低く抑える必要がある。
そこで、高配向未延伸糸の伸度について検討するに、上記未延伸糸では、後に延伸仮撚加工するにあたり、生産性の向上と共により高捲縮な仮撚糸を得る観点から伸度をむしろ高くしており、同文献によれば、160〜200%付近が好ましい範囲とされている。このような伸度の高い糸条は、延伸仮撚加工性には優れるものの、これを直に製編織すると糸条が伸びきってしまい、たるみなどが発生して製織編工程に重大な支障をきたすばかりか、製織編できたとしても品質に劣るものしか得られない。
以上のように、従来の未延伸糸では、配向結晶化の上昇に伴う糸質の悪化、例えば高次加工性などが改善されており、かつ配向結晶化の抑制に伴う糸質の悪化、例えば強度低下などが抑えられているが、糸条の伸度が高いため直に製織編できず、未延伸糸が本来的に持つ様々な特性を直接織編物に反映できないという問題がある。
本発明は、上記従来技術の欠点を解消するものであり、後に糸加工を含む様々な態様で高次加工しても工程通過性に特段支障がないのは無論のこと、伸度を比較的低く抑えることでそのままの状態で製織編でき、しかも強度にも優れる新規な高配向未延伸糸と、その未延伸糸を生産性よく安定的に製造するための方法とを提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は、ポリエステル高配向未延伸糸の伸度を抑えるため、紡糸時の引取速度を変更するという観点から検討したが、速度が上がるにつれ伸度が下がるという事実を把握しただけで、工業生産に適した範囲の引取速度は見出すことができなかった。これは、糸加工や製織編工程に良好に適用しうる範囲の伸度を得ようとすると、著しく引取速度を上げる必要があるからであり、そのような速度範囲は、かえって紡糸操業性を悪化させるだけで、コスト面や品質維持の点で好ましいものといえないことがわかった。
そこでやむを得ず、未延伸糸の改良技術として従来から採用されているポリエステル重合体の改質技術を用いて種々検討した。この技術であれば、紡糸操業性に特に問題はない。しかし、この方法をもってしても、伸度を抑えた未延伸糸を得るには至らなった。この原因を検討したところ、ポリエステルの化学構造自体にそもそも問題があり、試行錯誤したものの、重合時の触媒を好適化する、重合体の物性を好適化する、特定の重合体を添加するといった従来の改質技術をいくら好適化しても、もはや伸度を抑えたポリエステル高配向未延伸糸は得られないという結論に達した。そこで、視点を変え、重合体そのもの組成を抜本的に見直し、試行錯誤したところ、驚くべきことに共重合ポリアミドを適用すると、未延伸糸の伸度が低下する傾向にあることを見出した。そして、さらに進んで検討した結果、3種以上の共重合成分からなるポリアミドを使用すると、伸度が比較的低いだけでなく、細繊度化しても紡糸、製織編に十分耐えうるだけの高い強度を持った糸条が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、第一に、3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドから構成される高配向未延伸糸であって、単糸繊度が2.0〜7.0dtexで、伸度が50〜80%であり、かつ引張強度が1.5〜3.5cN/dtexの範囲にあることを特徴とするポリアミド高配向未延伸糸を要旨とするものである。
本発明の未延伸糸は、未延伸糸であるにも関わらず、伸度が比較的低く、そのままの状態で製織編できるものである。しかも、比較的細繊度であるにも関わらず引張強度にも優れている。無論、高次の糸加工も可能である。例えば、織編物とすれば、未延伸糸が本来的に持つ可撓性などの特性が付与でき、ソフト感ある織編物が得られる。
また、本発明の製造方法によれば、上記の未延伸糸を一工程で生産性、紡糸操業性よく安定的に製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の未延伸糸は、3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドから構成される。
共重合成分としては、ポリアミド形成能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン613及びナイロン10T成分などがあげられる。
本発明では、上記共重合成分のうち、特にナイロン6成分及びナイロン66成分を使用することが好ましく、その合計含有量としては、ポリアミド高配向未延伸糸100質量部に対して20〜90質量部とするのが好ましい。この範囲とすることにより、糸条の強伸度をより好ましいものにできる。本発明では、かかる点に加え、さらにナイロン12成分及びナイロン11成分のうち少なくとも一方をポリアミド高配向未延伸糸100質量部に対して10〜80質量部含ませるのがよく、強伸度をより好適化する点で有利となる。
以上の点から、3元重合体とする場合は、ナイロン6及びナイロン66成分と、ナイロン12成分、ナイロン11成分の一方との組み合わせが好ましいことになる。他方、4元重合体とするときは、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン12及びナイロン11成分の組み合わせがよいことになる。
本発明では、このような共重合ポリアミドを使用することにより、未延伸糸の強度を高めつつ伸度を比較的低く抑えることができる。ナイロン6やナイロン66などを使用すると、ポリエステル重合体を使用したときと比べ、一般に伸度の低い糸が得られ易いことが知られている。例えば、特公平1−35098号公報に、ナイロン6又はナイロン66を使用した伸度50〜80%のナイロン高配向未延伸糸が記載されている。しかし、この未延伸糸では、強度が十分とはいえない。例えば、整経など張力が掛かる場面において、延伸糸の場合と同じ条件を適用してしまうと、糸が伸びきってしまい、毛羽、糸切れが発生する他、織編物としたとき繊度変化により染色斑が生じ易くなる。そこで、この未延伸糸を整経する際は、整経張力をヤング率より大幅に小さくしなければならず、工程通過性や作業効率の点で課題が残る。
他方、本発明者の研究によれば、ナイロン11を単独使用した場合は、ナイロン6やナイロン66のときと異なり、所望の強度は得られる一方、伸度の高過ぎるナイロン高配向未延伸糸しか得られない。
この点、3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドを使用することで、所望の強伸度を持つ糸条が得られる理由は定かでないが、単糸を構成する繊維構造に何らかの要因があり、その特異的な繊維構造は、当該ポリアミドを高配向未延伸糸にしたときだけ形成されるものと考えられる。
また、本発明の未延伸糸には、低重合物が含まれていてもよい。低重合物としては、カプロラクタムなどがあげられるが、これに限定されない。低重合物の含有量としては、未延伸糸100質量部に対して5質量部以下が好ましい。5質量部を超えると、紡糸口金やローラ又は製織編の際に使用するガイドなどに汚れ、白粉として生成、堆積することがあり、工程通過性低下の要因となり易く好ましくない。一方、下限については特に限定されないが、低重合物が含まれていると、糸条の可撓性が向上することがあるため、1質量部以上とするのが好ましい。
低重合物を糸条中に含有させる場合、積極的にこれを糸条中に含有させてもよいが、通常は、共重合成分を共重合するときもしくはポリアミドを溶融紡糸するときに、副生成物として生成、含有されることもあるため、実用上はあえて含有させなくてもよい。
ここで、低重合物が糸条に含有されることを前提に、既述の共重合成分も併せて、総合的に最も好ましい糸条の組成を例示するなら、未延伸糸100質量部に対して、各々ナイロン6成分及びナイロン66成分の合計含有量が40〜50質量部、ナイロン12成分が45〜55質量部及び低重合物が2〜5質量部であるか、同じくナイロン6成分及びナイロン66成分の合計含有量が40〜50質量部、ナイロン12成分が15〜25質量部、ナイロン11成分が25〜35質量部及び低重合物が2〜5質量部となる。
この他、糸中には、必要に応じてブロッキング防止剤、無機充填剤、補強剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、艶消剤、抗菌剤などが含まれていてもよい。
また、本発明の未延伸糸は、マルチフィラメント糸でもモノフィラメント糸でもよい。すなわち、未延伸糸を構成する単糸が複数あるときは、マルチフィラメント糸となり、1本のときは、モノフィラメント糸となる。そして、未延伸糸がマルチフィラメント糸である場合、各単糸の組成は同じでも異なっていてもよいが、通常は同一のものとするのがよい。また、異なる組成の共重合ポリアミドを使用して一本の単糸を構成してもよく、この場合の共重合ポリアミドの接合形態としては、サイドバイサイド型、芯鞘型、海島型などがあげられる。
さらに、単糸の断面形状としても、任意の形状が採用でき、例えば、丸断面、異形断面、中空断面などがあげられる。
このように、本発明の未延伸糸は、特定の共重合ポリアミドを含む単糸から構成されるが、糸中には本発明の効果を損なわない範囲で、他の単糸が含まれていてもよい。他の単糸としては、任意の単糸が使用できるが、通常はナイロン6、ナイロン66又はナイロン11などからなる単糸が好ましい。
本発明では、未延伸糸が本来的に持つ可撓性などの特性を織編物に直接的に付与でき、結果としてソフト感ある織編物が得られる。本発明の場合、織編物へさらにソフト感を付与する観点から、単糸繊度はあまり太くしないことが好ましい。具体的には、2.0〜7.0dtexとするのがよく、3.0〜5.0dtexとするのがよりよい。単糸繊度が2.0未満になると、所定の強度を持った糸条が得られ難く、一方、7.0dtexを超えると、織編物としたときソフト感が低減する。
また、未延伸糸の総繊度としては、20〜350dtexが好ましい。
さらに、本発明の未延伸糸は、別途延伸しなくてもそのままの状態で糸加工、製織編が可能である。この場合、上記したナイロン高配向未延伸糸と違い、通常の延伸糸の場合と同様の条件で糸加工、製織編(経糸準備工程含む)しても何ら差支えない。本発明では、これらの点を可能とするため、所定の強伸度を有する必要がある。
まず、引張強度としては、1.5〜3.5cN/dtexの範囲が好ましく、2.0〜3.0cN/dtexの範囲がより好ましい。強度が1.5cN/dtex未満になると、糸加工や製織編などの際、毛羽、糸切れなどが発生し易くなる。一方、上限については、一般に糸条の強度は高い程好ましいといえるから、本来上限を付さずともよいと考えられる。しかし、強度の高い糸条を得ようとするには、一般に後述する引取速度を上げる必要があり、それに伴い工程管理にかかる費用が嵩み、紡糸操業性も不安定なものとなり易い。このため、上限としては3.5cN/dtexとするのがよい。
他方、伸度としては、50〜80%の範囲が好ましく、60〜70%の範囲がより好ましい。伸度が50%未満になると、製織編時の張力変動を吸収し難くなり、工程通過性が低下する。加えて、伸度が50未満の糸条を得ようとすると、引取速度をかなり上げる必要があり、コスト、紡糸操業性の点で不利となる。一方、80%を超えると、製編織の途中で糸条が伸び切り易くなり、結果、ゆるみ、たるみなどが発生し、製織編工程に重大な支障をきたすことになる。
本発明においてかかる強伸度が達成される機構は定かでないが、単糸を構成する特異な繊維構造に由来するものと考えられる。経験上、共重合ポリアミドを構成する共重合成分の種類、数を上記のように好適化し、かつ後に例示するPOY方式の製法に準じて未延伸糸となせば、かかる繊維構造を創出できる。
以上のように、本発明の未延伸糸は、従来のポリエステル高配向未延伸糸とは異なる構成、効果を有しており、産業上の利用価値が高い。未延伸糸の用途としては、織編物の他、モール糸、モップ糸、細幅テープ、ブラシ、カーペットのパイル糸、縫糸など資材用途にも好適である。
次に、本発明の好ましい製造方法について説明する。
まず、共重合成分を3種以上用意する。共重合成分としては、カプロラクタム(ナイロン6成分)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル量付加物(ナイロン66成分)、ラウリンラクタム(ナイロン12成分)、11アミノウンデカン酸(ナイロン11成分)、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸の等モル量付加物(ナイロン69成分)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル量付加物(ナイロン610成分)、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジカルボン酸の等モル量付加物(ナイロン612成分)、ヘキサメチレンジアミンとブラシリン酸の等モル量付加物(ナイロン613成分)などがあげられる。
次いで、かかる共重合成分を、撹拌機を備えた重縮合反応器に所定量添加し、重縮合反応させることで、共重合ポリアミドを得る。ここで、得られたポリアミドには、副生成物として低重合物が混在しうることは前記した通りである。そして、副生成物は、後述の溶融紡糸によっても追加的に副生されることがあり、最終的な生成量は未延伸糸全体に対し5質量部を超えない範囲に抑えることが好ましい点も前述した。このように本発明では、低重合物が副生することがあるため、重縮合する際の共重合成分の仕込み量と、ポリアミド中の各成分量とが必ずしも一致しないことがある。しかも、低重合物は、その後の工程でも副生することがある。したがって、結果的に、重縮合時の共重合成分の仕込み量と、未延伸糸における各共重合成分の含有量とが、必ずしも一致しないことがある。この点、本発明の未延伸糸における糸質、繊維構造は、未延伸糸を現に構成している各成分量に由来するところが大きいから、本発明では、仕込み量でなく、未延伸糸全体に対する量で各成分量を検討するのである。
仕込み量については、未延伸糸に含ませようとする各成分の目標含有量と低重合物の予想生成量とを総合的に勘案すれば、当業者であれば容易に決定できる。
その後、得られたポリアミドを溶融紡糸する。紡糸温度としては紡糸操業性の点から130〜180℃が好ましく、紡糸口金から紡出した後、冷却固化し、適宜油剤を付与する。その後、巻き取ることなく順次第一ローラ、第二ローラへ導入する。第一ローラの引取速度は、3500〜4500m/分とするのが好ましく、3800〜4200m/分とするのがより好ましい。引取速度が3500m/分を下回ると、生産性が低下することに加え、未延伸糸を巻き取ったパッケージが崩れ易くなる。パッケージが崩れると、解舒不良となる。一方、4500m/分を上回ると、糸切れが増える傾向にあり、加えて、最終的に未延伸糸の強伸度が所定範囲を外れることがある。本発明にいう引取速度とは、この第一ローラの回転速度をいう。他方、第二ローラの速度は、第一ローラの引取速度より若干高くするのがよい。これは、延伸するためのものでなく、糸条の走行を円滑にするためのもので、これにより、ゆるみ、たるみなどを抑えることができる。
その後、フリクションローラの速度を好ましくは3400〜4600m/分の範囲に設定し、所定の形状をしたパッケージに巻き取ることにより、本発明の未延伸糸を得ることができる。パッケージの形状としては、チーズ形状が好ましい。
本発明の製造方法は、高速で糸条を引き取り、実質的に延伸工程を省略する高速紡糸法(POY方式)に準拠し、同じ一工程法でも所謂スピンドロー方式(SDY方式)とは全く異なるものである。スピンドロー方式の場合、通常、第一ローラと第二ローラとの間で糸条が延伸される。その意味で、SDY方式を採用した糸条は、延伸糸に分類される。ローラ間で糸条を延伸すると、単糸の配向結晶化が進むことで高次加工性が低下し、さらに糸条の可撓性も低下し、織編物にソフト感を付与し難くなる。本発明では、このPOY方式を採用する必要があり、これ以外の製法では、上記した特異的な繊維構造は発現しない。
この他、巻き取るまでの任意の段階で糸条を混繊、交絡してもよい。また、巻き取り時、必要に応じて糸条をオイリングしてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例及び比較例における各物性値は、以下の方法で測定した。
1.総繊度、単糸繊度
JIS L1013 8.3.1B法(簡便法)に基づいて総繊度を測定した。その後、JIS L1013 8.4に基づいてフィラメント数(単糸数)を数え、総繊度をフィラメント数で割り返すことで、単糸繊度を算出した。
2.引張強度、伸度
JIS L1013 8.5.1(標準時試験)に基づいて測定した。ORIENTEC製TENSILON RTC−1210を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した。
3.糸条の組成
重水素トリフルオロ酢酸1mLに重水を1滴加えたものを用意し、これに糸条50mgを溶解し、その後、これをH−、13C−NMR測定した。そして、スペクトルの積分値から共重合成分の組成比を求めた。装置としては、Varian製Varian GEMINI2000/300 NMRを使用し、測定核H(測定周波数300MHz)、13C(測定周波数75MHz)にて測定した。
4.紡糸操業性、生産性
糸条を1t溶融紡糸したときの糸切れ回数を数えた。
(実施例、比較例)
複数種の共重合ポリアミド重合体チップを用意した。そして、各々のチップに対し0.02質量%のステアリン酸マグネシウムを添加し、各々エクストルーダー型溶融紡糸機を用い溶融混練した。その後、溶融紡糸した。
紡糸口金から紡出後、冷却固化し、油剤を付与した後、巻き取ることなく、第一ローラ、第二ローラに順次導入し、フリクションローラを経てチーズ形状のパッケージに各糸条を巻き取った。
表1に、得られた各糸条の組成、総繊度、単糸繊度、強伸度と共に、製造時の紡糸温度、第一(引取速度)及び第二ローラの回転速度を示す。また、糸条を得た後、各々筒編地を作製し、精練した後、筒編地のソフト感を1級(劣る)〜5級(優れる)の5段階で官能評価した。
Figure 2016113730
実施例にかかる未延伸糸は、比較的細繊度であるにも関わらず強度に優れ、しかも伸度が比較的低くそのままの状態で製編できるものであった。得られた筒編地の風合いも十分ソフト感あるものだった。また、糸条の製造においても、糸切れ回数が少なく、紡糸操業性に優れた生産が可能であることも確認できた。
これに対し、比較例1〜3かかる糸条は、いずれもスピンドロー方式により採取されたもので、本発明にいう高配向未延伸糸には該当しない。そして、当該糸条の伸度は本願所定の範囲を外れている。ただ、SDY方式では、通常、第二ローラの速度を上げるなどして延伸倍率を高めれば、糸条の伸度を下げることは一応可能である。しかし、第二ローラの速度を表1記載のものより早く設定すると、紡糸操業性が悪化する傾向にある。このように、SDY方式では、伸度の比較的低い糸条を得ると同時に、その糸条を紡糸操業性よく生産することが困難な傾向にある。
そして、同例における糸条は、延伸糸であるため、配向結晶化が進んでおり、織編物にソフトな風合いを与えることができなかった。
さらに、比較例4では、3種以上の共重合成分を含むポリアミド以外のポリアミドを使用したため、本願所定の糸質が得られなかった。
このように、特定の共重合ポリアミドを高配向未延伸糸にしたときだけ、所望の糸質が得られた。

Claims (4)

  1. 3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドから構成される高配向未延伸糸であって、単糸繊度が2.0〜7.0dtexで、伸度が50〜80%であり、かつ引張強度が1.5〜3.5cN/dtexの範囲にあることを特徴とするポリアミド高配向未延伸糸。
  2. 前記共重合ポリアミド中の共重合成分としてナイロン6成分及びナイロン66成分を含み、かつナイロン6成分及びナイロン66成分の合計含有量がポリアミド高配向未延伸糸100質量部に対して20〜90質量部の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のポリアミド高配向未延伸糸。
  3. さらに、前記共重合ポリアミド中の共重合成分としてナイロン12成分及びナイロン11成分のうち少なくとも一方を含み、かつ当該共重合成分をポリアミド高配向未延伸糸100質量部に対して10〜80質量部含むことを特徴とする請求項2記載のポリアミド高配向未延伸糸。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の共重合ポリアミドを、3500〜4500m/分の引取速度で溶融紡糸することを特徴とするポリアミド高配向未延伸糸の製造方法。
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