JP2016110893A - 酸化物超電導線材および酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、酸化物超電導層の剥離を抑制した酸化物超電導線材の提供を目的とする。
この構成によれば、安定化層が酸化物超電導層より下側の層と溶接領域により溶融接合される。上下で溶融接合された層同士の間に酸化物超電導層が挟まれた構造となり、酸化物超電導層を補強することができる。したがって、酸化物超電導層と中間層との剥離、ならびに酸化物超電導層と保護層との剥離を抑制した酸化物超電導線材を提供できる。
この構成によれば、安定化層が強度の高い基材と溶融接合されることで、溶融接合された層同士の間に、中間層および酸化物超電導が挟まれた構造となる。これにより、中間層と基材との剥離、中間層を構成する各層間の剥離、中間層と酸化物超電導層との剥離、酸化物超電導層と中間層との剥離、ならびに酸化物超電導層と保護層との剥離を抑制した酸化物超電導線材を提供できる。
この構成によれば、酸化物超電導層を長さ方向に亘り補強して、長さ方向に亘って酸化物超電導層の剥離を抑制できる。
この構成によれば、レーザ光を照射することで容易に溶接領域を形成することができる。また、溶接にレーザ光を用いることで、局所的に加熱して、溶接領域を幅方向に狭く形成できる。
この構成によれば、酸化物超電導線材を長さ方向に搬送しながら連続的に溶接領域を形成することができるため、酸化物超電導線材の生産効率を高めることができる。
また、本明細書中の各図において、線材の幅方向をX方向、長手方向をY方向、厚さ方向をZ方向とする。
図1に示すように、本実施形態の酸化物超電導線材(線材)5は、積層体10と、安定化層6とを備えている。積層体10は、帯状の基材1の上面1aに、中間層2、酸化物超電導層3、および保護層4が積層されてなる。安定化層6は、積層体10の保護層4の上面に半田接合されている。また、安定化層6と積層体10には、中間層2および酸化物超電導層3を貫通して基材1と安定化層6とを溶融接合する溶接領域7が形成されている。溶接領域7は、中間層2および酸化物超電導層3を厚さ方向に貫通している。溶接領域7は、酸化物超電導線材5の幅方向の少なくとも2か所に形成され、長さ方向に延びている。
基材1は、酸化物超電導線材5の基材として使用し得るものであれば良く、耐熱性の金属からなるものが好ましい。基材1は、耐熱性の金属の中でも、合金が好ましく、ニッケル(Ni)合金又は銅(Cu)合金がより好ましい。なかでも、市販品であればハステロイ(商品名、ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等の何れの種類も使用できる。また、基材1として、金属結晶の配向をそろえた配向基板を用いても良い。
本実施形態においては、基材1の形状は、長尺のテープ形状であるが、例えば、シート形状であっても良い。基材1の厚みは、目的に応じて適宜調整すれば良く、10〜500μmの範囲とすることができる。
ベッド層は、基材1と酸化物超電導層3との界面における構成元素の反応を抑え、この層よりも上面に設ける層の配向性を向上させるために設けられる。ベッド層は、界面反応性を低減し、その上に形成される膜の配向性を得るため層であり、Y2O3、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等からなり、その厚みは例えば10〜100nmである。
配向層は、その上に形成されるキャップ層や酸化物超電導層3の結晶配向性を制御するために設けられる。配向層は、その上のキャップ層の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から形成される。配向層の材質としては、Gd2Zr2O7、MgO、ZrO2−Y2O3(YSZ)、SrTiO3、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等の金属酸化物を例示することができる。この配向層はIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法で形成することが好ましい。
キャップ層は、酸化物超電導層3の結晶配向性を配向層と同等ないしそれ以上に強く制御するために設けられる。キャップ層は、上述の配向層の表面に成膜されて結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料からなり、具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、ZrO2、YSZ、Ho2O3、Nd2O3、LaMnO3等からなる。キャップ層の膜厚は50〜5000nmの範囲に形成できる。
酸化物超電導層3の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
また、安定化層6は、積層体10の周囲に断面視略C字型に金属テープで覆う構成としても良い。この場合、金属テープは、積層体10の外周(横断面四方)に半田接合され、安定化層6を構成する。
安定化層6を構成する金属テープの厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることができる。
なお、本実施形態に示すように、溶接領域7が安定化層6と基材1を溶融接合する構造とする場合には、安定化層6と基材1との間に含まれる全ての層間に生じる剥離応力を抑制できるため、より好ましい。
次に、この酸化物超電導線材5の製造方法の一例について説明する。
まず、帯状の基材1を用意し、基材1の上面1a側に、従来公知の方法により、中間層2、酸化物超電導層3、保護層4を積層し、積層体10を形成する。
次に、前記酸化物超電導層に酸素を供給する酸素アニール処理工程を行い、酸化物超電導層3に酸素を供給して、その結晶構造を整え、超電導特性を向上させる。
次に、積層体10の保護層4の上面に金属テープを半田接合して安定化層6を形成する。
図2(a)、(b)を基に溶接工程について説明する。
図2(a)は、線材5にレーザ光Lを照射するレーザ光照射装置20と、線材5を長さ方向に搬送する搬送装置21と、を示す概略図である。
なお、上述の溶接工程においては、レーザ光Lを安定化層6の上面6a側から照射する場合について説明した。しかしながら、レーザ光Lは、基材1の下面1b側から照射して溶接領域7を形成してもよい。
また、上述の溶接工程においては、レーザ光照射装置20を2基並べて線材5に照射する場合を例示した。しかしながら、溶接工程を複数回の工程に分け、1基のレーザ光照射装置20により、複数の溶接領域7を形成してもよい。
次に上述した実施形態の変形例1について説明する。図3は、変形例1の酸化物超電導線材105の断面斜視図である。
変形例1の酸化物超電導線材105は、上述の実施形態と比較して、線材105の幅方向における溶接領域107の位置が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
次に上述した実施形態の変形例2について説明する。図4は、変形例2の酸化物超電導線材205の断面斜視図である。
変形例2の酸化物超電導線材205は、上述の実施形態と比較して、線材205の長さ方向に亘る溶接領域207の構成が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
また、溶接領域207は、酸化物超電導線材205の長さ方向に延びている。線材205の長さ方向に延びる溶接領域207は、間欠的に形成されている。ここで、長さ方向に対し隣り合う溶接領域207、207同士が途切れる部分を間欠部211と呼ぶこととする。
変形例2においては、長さ方向に隣り合う溶接領域207、207同士の、幅方向の位置が同じ場合について、説明した。しかしながら、図5に示す変形例3の超電導線材305の様に、長さ方向に隣り合う溶接領域307A、307Bは、幅方向の位置が異なっていても良い。また、この場合において、図5に示すように溶接領域307A、307Bは、長さ方向で重複する領域があっても良い。重複した領域では、横断面において2か所の溶接領域307A、307Bが形成されている。
<試料の作製>
まず、ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚み0.075mm、長さ1000mmのテープ状の基材の表面を平均粒径3μmのアルミナを使用し研磨した。次に、前記基材の表面をアセトンにより脱脂、洗浄した。
この基材の上面上にスパッタ法によりAl2O3(拡散防止層;膜厚100nm)を成膜し、その上に、イオンビームスパッタ法によりY2O3(ベッド層;膜厚30nm)を成膜した。
次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO(金属酸化物層;膜厚5〜10nm)を形成し、その上にパルスレーザー蒸着法(PLD法)により500nm厚のCeO2(キャップ層)を成膜した。次いでCeO2層上にPLD法により2.0μm厚のGdBa2Cu3O7−x(酸化物超電導層)を形成した。
次に、スパッタ法により酸化物超電導層上に厚さ2μmのAgの保護層を形成し、酸素アニールを500℃で10時間行い、26時間炉冷後、取り出した。
次に、保護層の上面に、75μm厚、10mm幅の銅テープを半田接合し安定化層を形成した。
このように作製したサンプルを比較例の酸化物超電導線材とした。
溶接工程は、酸化物超電導線材を長手方向に送りながら、レーザ光照射装置によりレーザ光を照射して行った。線材の幅方向の中央の一か所にレーザを照射しながら線材を送り、酸化物超電導層を2分割するように溶接領域を形成したものを実施例1の酸化物超電導線材とした。また、レーザ光を2か所に照射して、酸化物超電導層を均等に3分割するように溶接領域を形成したものを実施例2の酸化物超電導線材とした。実施例1、実施例2ともに、形成された溶接領域の幅寸法(図1の幅寸法W7に相当)は、0.5mm〜1mmとなっていた。
実施例1、実施例2および比較例のコイルに対し、四端子法を用いてこれらの臨界電流値(Ic)を測定した。各サンプルのコイルに対し液体窒素に10分、常温で15分放置するヒートサイクル試験を、10サイクル繰り返した。ヒートサイクル試験後の各サンプルを再度上記と同様の臨界電流値測定を行った。
ヒートサイクル前の臨界電流値と、ヒートサイクル後の臨界電流値の低下率を表1にまとめて示す。
Claims (5)
- 帯状の基材の上面に、中間層、酸化物超電導層、および保護層が積層された積層体と、前記積層体の前記保護層の上面に半田接合された安定化層と、を備えた酸化物超電導線材であって、
前記酸化物超電導層を厚さ方向に貫通し前記酸化物超電導層より下側に位置する層と前記安定化層とを溶融接合する溶接領域を有する酸化物超電導線材。 - 前記溶接領域が、前記基材と前記安定化層とを溶融接合する請求項1に記載の酸化物超電導線材。
- 前記溶接領域が、線材の幅方向の少なくとも一部に形成され、線材の長さ方向に延びている請求項1又は2に記載の酸化物超電導線材。
- 帯状の基材の一方の面に、中間層、酸化物超電導層、および保護層を積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体の前記保護層の面上に金属テープを半田接合して安定化層を形成する工程と、
前記基材側の面、又は前記安定化層側の面の幅方向の少なくとも一部にレーザ光を照射し、前記安定化層を酸化物超電導層より下の層と溶接して、前記酸化物超電導層を厚さ方向に貫通する溶接領域を形成する溶接工程と、を有する酸化物超電導線材の製造方法。 - 前記溶接工程は、前記レーザ光を照射しながら線材を長さ方向に搬送して長さ方向に延びる前記溶接領域を形成する請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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