JP2016109668A - ガスセンサ取付構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスセンサの応答性を確保しつつガスセンサへのデポジットの付着を抑制することができるガスセンサ取付構造を提供すること。【解決手段】吸気通路6にガスセンサ10を取り付けてなるガスセンサ取付構造1。ガスセンサ10の素子カバー4は側壁部41と底壁部42とを有する。側壁部41には複数の側面孔43が形成され、底壁部42には底面孔44が形成されている。側面孔43は、センサ素子2の測定電極21よりも基端側において周方向の複数個所に配置されている。吸気通路6におけるガスセンサ10の外周側に隣接する位置には、素子カバー4の一部を覆う耐熱撥水性樹脂からなる遮蔽板5が設けてある。遮蔽板5は、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向Aに対して直交する方向までの角度範囲において、素子カバー4に対向するように配置されており、かつ、下流側に開放部50を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関の吸気通路にガスセンサを取り付けてなるガスセンサ取付構造に関する。
内燃機関の吸気通路には、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサとして、例えば、吸入ガスの酸素濃度を検出する酸素センサが取り付けられている。内燃機関には、例えば、EGR装置(排気再循環装置)やPCV装置(ブローバイガス還元装置)が設けられている。そして、これらによって還流された排ガス(EGRガス、PCVガス)が、外部から新たに導入された空気と混合されて、内燃機関の燃焼室に導入される。この吸入ガス中の酸素濃度を酸素センサによって検出して、EGR量の調整やPCV量の調整にフィードバックすることができるよう構成されている。
このように吸気通路に配設された酸素センサには、吸入ガスがセンサ素子に接触することとなる。そして、吸入ガス中には、カーボンやオイル等からなるデポジットが含まれている。このデポジットがセンサ素子に付着することにより、センサ素子の検出精度に影響するおそれがある。特に、吸入ガスは、排ガスに比べて低温であり、デポジットの粘性が高いため、デポジットがセンサ素子に付着しやすいという問題がある。
また、センサ素子を覆うように素子カバーを適切に設けることにより、センサ素子へのデポジットの付着を低減することは可能であるが、素子カバーにデポジットが付着することにより、素子カバーにおける通気孔を目詰まりさせてしまうことも考えられる。その結果、センサ素子への吸入ガス(被測定ガス)の導入が妨げられ、検出精度が低下するおそれがある。
かかる問題を解決するために、特許文献1に開示された酸素センサは、センサ素子を覆う内側カバーの側部を覆うように、導入孔を有しない無底筒状の外側カバーを設けた構成を有する。これにより、吸入ガスの流れが直接内側カバーに当たることを防ぎ、内側カバーへのデポジットの付着を抑制しようとしている。
特開平10−253575号公報
しかしながら、特許文献1に開示された酸素センサにおいては、外側カバーが内側カバーの全周を覆うように設けられている。そのため、吸入ガス(被測定ガス)がセンサ素子まで円滑に導入されにくく、酸素センサの応答性が低下するおそれがある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ガスセンサの応答性を確保しつつガスセンサへのデポジットの付着を抑制することができるガスセンサ取付構造を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、内燃機関の吸気通路にガスセンサを取り付けてなるガスセンサ取付構造であって、
上記ガスセンサは、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を内側に保持する絶縁碍子と、該絶縁碍子を内側に保持するハウジングと、該ハウジングの先端側に配設された素子カバーとを備え、
該素子カバーは、上記センサ素子に対して外周側から対向配置された側壁部と、上記センサ素子に対して先端側から対向配置された底壁部とを有し、
上記側壁部には、複数の側面孔が形成され、上記底壁部には底面孔が形成されており、
上記側面孔は、上記センサ素子に設けられた測定電極よりも基端側において周方向の複数個所に配置されており、
上記吸気通路における上記ガスセンサの外周側に隣接する位置には、上記素子カバーの一部を覆う耐熱撥水性樹脂からなる遮蔽板が設けてあり、
該遮蔽板は、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向に対して直交する方向までの角度範囲において、上記素子カバーに対向するように配置されており、かつ、下流側に開放部を有することを特徴とするガスセンサ取付構造にある。
上記ガスセンサ取付構造においては、吸気通路におけるガスセンサの外周側に隣接する位置に、上記遮蔽板が設けてある。そして、遮蔽板は、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向に対して直交する方向までの角度範囲において、上記素子カバーに対向するように配置されている。これにより、吸気通路を通る吸入ガスが直接ガスセンサに当たることを防ぐことができる。それゆえ、吸入ガス中に含まれるデポジットが素子カバーやセンサ素子に付着することを抑制することができる。
また、遮蔽板は、下流側に開放部を有する。それゆえ、吸気通路における遮蔽板の先端側もしくは側方を通過した吸入ガスの一部が、負圧によって開放部からガスセンサ側に向かって流れる。そして、その吸入ガスが、側面孔を通じて素子カバーの内側に導入され、底面孔から素子カバーの外側へ排出される。このように、吸入ガスの一部を、遮蔽板の開放部から側面孔及び底面孔を通じて循環させることができる。そして、センサ素子の測定電極は、素子カバー内において、側面孔よりも先端側であって底面孔よりも基端側の位置に配されているため、吸入ガスが円滑にセンサ素子の測定電極に供給されることとなる。その結果、ガスセンサの応答性を確保することができる。
また、遮蔽板は、耐熱撥水性樹脂からなるため、吸入ガスが遮蔽板に当たっても、デポジットが遮蔽板に堆積することを防ぐことができる。それゆえ、デポジットの堆積による吸入ガスの流れの阻害を防ぐことができる。
以上のごとく、本発明によれば、ガスセンサの応答性を確保しつつガスセンサへのデポジットの付着を抑制することができるガスセンサ取付構造を提供することができる。
実施形態1における、ガスセンサ取付構造の説明図。 実施形態1における、ガスセンサの先端側部分の断面説明図。 実施形態1における、ガスセンサ取付構造の断面説明図。 図3のVI−VI線矢視断面図。 実施形態1における、吸気通路及びガスセンサ取付構造の断面説明図。 実験例1における、平均応答時間の測定結果を示す線図。 実験例2における、平均応答時間の測定結果を示す線図。 実験例3における、デポジット付着量の測定結果を示す線図。 実験例4における、デポジット付着量の測定結果を示す線図。 実験例5における、素子カバーの外周面と遮蔽板の内周面との距離の説明図。 実験例5における、平均応答時間の測定結果を示す線図。 実験例5における、素子カバーの外周面と遮蔽板の開放部の仮想内周面との距離の説明図。 実験例5における、デポジット付着量の測定結果を示す線図。 実験例6における、素子カバーの外周面と遮蔽板の内周面との距離の説明図。 実験例6における、デポジット付着量の測定結果を示す線図。 実験例6における、平均応答時間の測定結果を示す線図。
(実施形態1)
上記ガスセンサ取付構造の実施形態につき、図1〜図5を用いて説明する。
本実施形態のガスセンサ取付構造1は、図1に示すごとく、内燃機関の吸気通路6にガスセンサ10を取り付けてなる構造である。
ガスセンサ10は、図2に示すごとく、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子2と、センサ素子2を内側に保持する絶縁碍子11と、絶縁碍子11を内側に保持するハウジング3と、ハウジング3の先端側に配設された素子カバー4とを備えている。
素子カバー4は、センサ素子2に対して外周側から対向配置された側壁部41と、センサ素子2に対して先端側から対向配置された底壁部42とを有する。
側壁部41には、複数の側面孔43が形成され、底壁部42には底面孔44が形成されている。
側面孔43は、センサ素子2に設けられた測定電極21よりも基端側において周方向の複数個所に配置されている。
図3に示すごとく、吸気通路6におけるガスセンサ10の外周側に隣接する位置には、素子カバー4の一部を覆う耐熱撥水性樹脂からなる遮蔽板5が設けてある。
遮蔽板5は、図4、図5に示すごとく、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向Aに対して直交する方向までの角度範囲において、素子カバー4に対向するように配置されており、かつ、下流側に開放部50を有する。
なお、気流方向Aとは、吸気通路6における吸入ガスaの主流の流通方向である。また、吸気通路6内においては、特にガスセンサ10を配置した部位の付近等においては、吸入ガスaの方向は種々の方向を向くこととなるが、特に断らない限り、気流方向Aとは、吸入ガスaの主流の方向であり、吸気通路6の形成方向と一致する方向を意味する。また、図4、図5においては、センサ素子2の記載を省略している。
また、ガスセンサ10において、ガスセンサ10を吸気通路6に挿入する側を先端側、その反対側を基端側という。
本例のガスセンサ10は、内燃機関への吸入ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサである。また、ガスセンサ10は、所定電圧を印加したときに酸素濃度に応じた限界電流が流れるよう構成された限界電流式のガスセンサである。
また、センサ素子2は、複数のセラミック層を積層してなる積層型の素子であり、板棒形状を有する。また、センサ素子2は、ジルコニア等からなる固体電解質体と、該固体電解質体の表面に形成された測定電極21及び基準電極(図示略)等を有する。また、図2に示すごとく、測定電極21はセンサ素子2の先端部付近に設けてある。
センサ素子2は、測定電極21よりも基端側の一部において、絶縁碍子11の内側に保持されている。また、絶縁碍子11は金属製のハウジング3の内側に保持されている。ハウジング3は、吸気通路6の管壁61に取り付けられる取付用ネジ部31を有する。
図2〜図4に示すごとく、素子カバー4は、側壁部41を略円筒形状に形成してなり、その先端側に、軸方向に直交するように、底壁部42が形成されている。側壁部41には、軸方向の同じ位置に、複数の側面孔43が、周方向に等間隔に形成されている。側面孔43は、複数個であれば特に限定されるものではないが、4個以上であることが好ましい。本実施形態においては、側面孔43は、6個、周方向に等間隔に配置されている。また、底壁部42には、その中央部に、一つの底面孔44が形成されている。底面孔44の個数についても特に限定されるものではなく、複数個形成されていてもよい。また、複数の側面孔43は軸方向の同じ位置に設けられていることが好ましいが、必ずしもその限りではない。
ガスセンサ10は、図3に示すごとく、内燃機関用の吸気通路6の管壁61に設けた取付部に、ハウジング3の取付用ネジ部31を螺合させることにより、取り付けられている。そして、吸気通路6内において、ガスセンサ10の外周側に隣接するように、遮蔽板5が配設されている。遮蔽板5は、素子カバー4の側壁部41に対向するように配設されている。遮蔽板5は、ガスセンサ10の軸方向に平行に形成されている。
図4に示すごとく、軸方向から見たとき、遮蔽板5は、素子カバー4の側壁部41と中心軸を共有するような円弧状に形成されている。そして、遮蔽板5は、下流側の一部に開放部50を有する。本例において、軸方向から見たとき、開放部50は、60°以上の角度範囲に形成されており、開放部50の中心は、ガスセンサ10の中心Cから気流方向Aの下流側の位置に配されている。
ここで、開放部50が60°以上の角度範囲に形成されているとは、軸方向から見たとき、ガスセンサ10の中心Cと開放部50の両端とをそれぞれ結ぶ一対の直線同士がなす下流側の角度θが、60°以上であることを意味する。本明細書において、開放部50が形成された角度範囲とは、この定義に準じて解釈される。また、開放部50が形成された角度範囲、すなわち上記角度θを、適宜「開放角度θ」という。
本実施形態においては、側面孔43が周方向に等間隔に6個設けてあることに伴い、開放部50の開放角度θは60°以上としている。つまり、側面孔43の形成個数に応じて、開放部50の開放角度θの好ましい下限値は異なる。すなわち、側面孔43が、周方向に等間隔にn個(n≧4)設けてあるとして、軸方向から見たとき、遮蔽板5の開放部50は、360°/n以上の角度範囲に形成されていることが好ましい。例えば、側面孔43の形成個数が4個の場合は、開放部50の開放角度θは90°以上が好ましく、側面孔43の形成個数が8個の場合は、開放部50の開放角度θは45°以上が好ましいこととなる。このような開放角度θとすることで、素子カバー4の側面孔43が開放部50に1個以上面することとなり、吸入ガスが側面孔43を通じて素子カバー4の内側に導入されやすくなることとなる。
なお、側面孔43の形成個数にかかわらず、開放角度θの上限は180°である。また、開放部50は、ガスセンサ10の軸方向に平行に、同一の幅にて形成されている。
図3に示すごとく、吸気通路6への遮蔽板5の突出長さKは、吸気通路6への素子カバー4の突出長さLの0.9〜1.2倍であることが好ましい。より好ましくは、遮蔽板5の突出長さKを0.95L〜1.05Lとする(後述する実験例1及び実験例3参照)。
また、遮蔽板5は、耐熱撥水性樹脂からなるが、遮蔽板5の全体が耐熱撥水性樹脂によって構成されていることが耐久性の観点からは好ましいが、一部が耐熱撥水性樹脂によって構成されていてもよい。後者の場合、遮蔽板5は、例えば、金属からなる本体部の外周面に、耐熱撥水性樹脂がコーティングされた構成とすることができる。また、耐熱撥水性樹脂としては、例えば、FAS(パーフルオロアルキル基含有シラン)等の耐熱フッ素系樹脂を用いることができる。
また、素子カバー4には、耐熱撥水性樹脂がコーティングされている。耐熱撥水性樹脂は、素子カバー4の外側面(側壁部41の外周面及び底壁部42の先端面)に形成されている。また、耐熱撥水性樹脂は、側面孔43の周囲にのみ設けてもよい。この耐熱撥水性樹脂も、例えば、FAS等の耐熱フッ素系樹脂を用いることができる。
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記ガスセンサ取付構造1においては、吸気通路6におけるガスセンサ10の外周側に隣接する位置に、遮蔽板5が設けてある。そして、遮蔽板5は、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向Aに対して直交する方向までの角度範囲において、素子カバー4に対向するように配置されている。これにより、吸気通路6を通る吸入ガスが直接ガスセンサ10に当たることを防ぐことができる。それゆえ、吸入ガス中に含まれるデポジットが素子カバー4やセンサ素子2に付着することを抑制することができる。そして、素子カバー4の側面孔43をデポジットが塞ぐことを防ぐことができる。
また、遮蔽板5は、下流側に開放部50を有する。それゆえ、図3、図5に示すごとく、吸気通路6における遮蔽板5の先端側もしくは側方を通過した吸入ガスaの一部が、負圧によって開放部50からガスセンサ10側に向かって流れる。そして、その吸入ガスaが、側面孔43を通じて素子カバー4の内側に導入され、底面孔44から素子カバー4の外側へ排出される。このように、吸入ガスaの一部を、遮蔽板5の開放部50から側面孔43及び底面孔44を通じて循環させることができる。そして、図3に示すごとく、センサ素子2の測定電極21は、素子カバー4内において、側面孔43よりも先端側であって底面孔44よりも基端側の位置に配されているため、吸入ガスaが円滑にセンサ素子2の測定電極21に供給されることとなる。その結果、ガスセンサ10の応答性を確保することができる。
また、遮蔽板5は、耐熱撥水性樹脂からなるため、吸入ガスaが遮蔽板5に当たっても、デポジットが遮蔽板5に堆積することを防ぐことができる。それゆえ、デポジットの堆積による吸入ガスの流れの阻害を防ぐことができる。
また、開放部50の開放角度θが60°以上であることにより、ガスセンサ10の応答性を充分に高くすることができる。この60°という角度は、本実施形態のように、側面孔43が周方向に等間隔に6個設けてある場合において、360°を6で除した値である。すなわち、軸方向から見たとき、開放部50が360°/n(n:側面孔43の形成個数)以上の角度範囲に形成されていることにより、開放部50から素子カバー4に向かう吸入ガスを、側面孔43から素子カバー4内に円滑に導入することができ、後述する実験例2に示すように、ガスセンサ10の応答性を充分に高くすることができる。
また、遮蔽板5の突出長さKを、素子カバー4の突出長さLの0.9〜1.2倍とすることにより、より効果的に、ガスセンサ10の応答性を確保しつつガスセンサ10へのデポジットの付着を抑制することができる。
また、素子カバー4には、耐熱撥水性樹脂がコーティングされているため、素子カバー4の表面にデポジットが接触したとしても、素子カバー4にデポジットが堆積することを効果的に抑制することができる。
以上のごとく、本実施形態によれば、ガスセンサの応答性を確保しつつガスセンサへのデポジットの付着を抑制することができるガスセンサ取付構造を提供することができる。
(実験例1)
本例は、図6に示すごとく、ガスセンサ取付構造1における、遮蔽板5の突出長さK(図3参照)が応答性に与える影響につき、評価した例である。
すなわち、上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、遮蔽板5の突出長さKを、0.85L〜1.3Lの間で振って、それぞれについてガスセンサの応答性の試験を行った。ここで、Lは吸気通路6への素子カバー4の突出長さLである(図3参照)。
遮蔽板5の突出長さK以外の構成については、いずれの試料においても同様である。そして、遮蔽板5の開放部50の開放角度θは、60°である。また、6個の側面孔43の形成位置(中心位置)は、素子カバー4の先端から基端側へ(2/3)Lの位置であり、各側面孔43は直径2mmの円形である。また、底面孔44は直径2.5mmの円形である。また、センサ素子2の測定電極21は、素子カバー4の先端から基端側へ(1/3)Lの位置にその中心が配置されている。また、素子カバー4の直径は、12mmである。また、遮蔽板5は、素子カバー4の外周面から径方向に、5mm離れた位置に配置される。
応答性試験については、便宜的に、本来の使用態様とは異なる態様で、ガスセンサ10を取り付けると共に、ガスセンサ10の検出信号を処理している。つまり、ガスセンサ10は、吸気通路ではなく排気管に取り付け、排ガス中の酸素濃度を検出することにより、内燃機関の空燃比(A/F)を測定して、これを応答性の評価に用いた。
具体的には、それぞれの遮蔽板5をガスセンサ10と共に、2Lの直列4気筒のエンジンの排気管に設置した。ここで、排気管の内径は、55mmであり、排気管には触媒コンバータを搭載しない状態とした。また、比較のために、遮蔽板を配置せずに、ガスセンサ10のみを排気管に取り付けた状態でも、試験を行った。
この状態において、回転数1200回/分、吸入空気量10g/秒にてエンジンを運転した。そして、エンジンに供給する混合気の空燃比A/Fが15となる状態と、18となる状態とを複数回にわたって交互に形成した。排気温度は約160℃、ガスセンサ10の素子温度は740℃とした。
そしてこのとき、ガスセンサ10によって実際に測定されるA/Fの値を調べた。すなわち、時刻t1においてエンジンの空燃比を15から18へと移行したとき、ガスセンサ10によって測定されるA/Fの値が15から18に向かって10%変動した時点(すなわち、A/Fの値が15.3となる時点)から90%変動した時点(すなわち、A/Fの値が17.7となる時点)までの時間を応答時間Δt1として測定した。
また、時刻t2においてエンジンの空燃比を18から15へと移行したとき、ガスセンサ10によって測定されるA/Fの値が18から15に向かって10%変動した時点(すなわち、A/Fの値が17.7となる時点)から90%変動した時点(すなわち、A/Fの値が15.3となる時点)までの時間を応答時間Δt2として測定した。
そして、これを複数回繰り返し、複数の応答時間Δt1及び複数の応答時間Δt2の平均値を算出して各ガスセンサ10の平均応答時間Tとした。
測定結果を、図6に示す。同図から分かるように、K≦1.2Lにおいては、平均応答時間Tが、遮蔽板5を設けない場合の平均応答時間T0の1.1倍以下である。それゆえ、遮蔽板5の突出長さKを1.2L以下としておけば、遮蔽板5による応答性への影響を充分に抑制できるといえる。ここで、T0の1.1倍以下を応答性の基準としたのは、EGR開度へのフィードバック制御と燃焼状態へのフィードフロント制御とに必要な応答性に基づく。
(実験例2)
本例は、図7に示すごとく、ガスセンサ取付構造1における、遮蔽板5の開放部50の開放角度θ(図4参照)が応答性に与える影響につき、評価した例である。
すなわち、上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、開放部50の開放角度θを、0°、45°、60°、120°、180°、270°、360°の7つの水準に設定して、それぞれについて試験を行った。ここで、開放角度θが0°とは、開放部50を設けずに、遮蔽板5をガスセンサ10の全周にわたって円筒状に形成したものである。また、開放角度θが360°とは、遮蔽板を設けないものである。
各試料における、開放部50の開放角度θ以外の構成は、上記7つの水準において同様であり、遮蔽板5の突出長さKは、K=Lとした。その他の構成は、実験例1において示したものと同様である。
これらの4つの水準について、上記と同様の応答性試験を行った。その結果を、図7に示す。同図から分かるように、開放部50を設けない構成(θ=0°)においては、平均応答時間Tが長くなってしまう。しかし、θ≧60°以上においては、平均応答時間Tが、遮蔽板5を設けない場合(θ=360°)の平均応答時間T0の1.1倍以下である。それゆえ、開放部の開放角度θを60°以上としておけば、遮蔽板5による応答性への影響を充分に抑制できるといえる。
(実験例3)
本例は、図8に示すごとく、ガスセンサ取付構造1における、遮蔽板5の突出長さK(図3参照)がガスセンサ10へのデポジット付着の防止効果に与える影響につき、評価した例である。
すなわち、上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、遮蔽板5の突出長さKを、0.85L〜1.3Lの間で振って、それぞれについてガスセンサ10の応答性の試験を行った。また、比較のために、遮蔽板5を配置せずに、ガスセンサ10のみを吸気通路に取り付けた状態でも、試験を行った。
遮蔽板5の突出長さK以外の構成については、上記いずれの水準においても同様であり、開放部50の開放角度θは、60°である。その他の構成は、実験例1において示したものと同様である。
本例の評価試験に当たっては、それぞれの遮蔽板5をガスセンサ10と共に、エンジンの吸気通路に取り付けた。吸気通路における遮蔽板5及びガスセンサ10を取り付けた部分には、外気とともに、EGRガス及びブローバイガスが混合された吸入ガスが流通するよう構成されている。また、吸気通路の内径は60mmである。
この状態において、回転数1200回/分にてエンジンを、24時間連続して運転した。また、吸入ガスの温度を80℃以下とした。なお、エンジンは、HPL(high pressure loop)−EGRを備えた、排気量2Lのディーゼルエンジンであり、燃焼圧は2.5Barである。
24時間の連続運転の後、ガスセンサ10の素子カバー4における側面孔43へのデポジットの堆積量を測定した。デポジットの堆積量は、側面孔43の内側に付着したデポジットを側面孔43の開口方向から見たときの面積を、6個の側面孔43のすべてにつき測定し合計することにより得た。この合計面積を、6個の側面孔43の面積の総和Sに対する比率として、図8に示す。
測定結果を、図8に示す。同図から分かるように、遮蔽板5を設けたものについては、遮蔽板を設けていないもの(θ=360°)に比べて、堆積量が大きく低減されている。そして、K≧0.9Lにおいては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割以下である。それゆえ、遮蔽板5の突出長さKを0.9L以上とすることにより、素子カバー4へのデポジットの付着を充分に抑制できるといえる。なお、堆積量を側面孔43の総面積Sの1割以下とする基準は、上述の平均応答時間Tを1.1T0以下に維持するために必要な値に基づく。
(実験例4)
本例は、図9に示すごとく、ガスセンサ取付構造1における、遮蔽板5の開放部50の開放角度θ(図4参照)がデポジット付着の防止効果に与える影響につき、評価した例である。
すなわち、上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、開放部50の開放角度θを、0°、45°、60°、90°、120°、180°、270°、360°の8つの水準に設定して、それぞれについて試験を行った。ここで、開放角度θが0°とは、開放部50を設けずに、遮蔽板5をガスセンサ10の全周にわたって円筒状に形成したものである。また、開放角度θが360°とは、遮蔽板を設けないものである。
各試料における、開放部50の開放角度θ以外の構成は、上記8つの水準において同様であり、遮蔽板5の突出長さKはLとした。その他の構成は、実験例1において示したものと同様である。
これらの6つの水準について、実験例3と同様の評価試験を行った。その結果を、図9に示す。同図から分かるように、θ≦180°においては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割以下である。それゆえ、遮蔽板5の開放部50の開放角度θを180°以下とすることにより、素子カバー4へのデポジットの付着を充分に抑制できるといえる。このことは、軸方向から見たとき、上流側から気流方向Aに対して直交する方向までの角度範囲において、遮蔽板5が素子カバー4に対向するように配置されていることにより、素子カバー4へのデポジットの付着を充分に抑制できることを表している。
(実験例5)
本例は、図10〜図13に示すごとく、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の内周面55との位置関係、及び、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の開放部50との位置関係について、検討した例である。
素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の内周面55とが近すぎると、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の内周面55との間のガスの流れが低下することが懸念されるため、応答性の低下が懸念される。一方、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の開放部50とが近すぎると、遮蔽板5の効果の低下が懸念され、素子カバー4へのデポジットの付着が懸念される。
そこで、まず、遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45との距離D1(図10参照)とガスセンサ10の応答性との関係につき、調べた(図11参照)。ここで、距離D1は、遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45とが最も接近した位置における両者間の距離をいう。
上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、距離D1を1mm〜7mmの7つの水準に設定して、それぞれについて試験を行った。具体的には、図10に示すごとく、素子カバー4に対して、遮蔽板5を気流方向Aと平行にずらすことにより、距離D1を調整して、各水準を設定した。ただし、開放角度θを一定に保つべく、各水準ごとに開放部50の幅を変化させている。また、ガスセンサ10の軸方向と気流方向Aとの双方に直交する方向については、遮蔽板5の中心軸の位置とガスセンサ10(素子カバー4)の中心軸の位置とは、同等の位置にある。
各試料における、素子カバー4と遮蔽板5との位置関係以外の構成は、上記7つの水準において同様である。遮蔽板5の突出長さKは、K=Lとし、開放部50の開放角度θは60°とした。その他の構成は、実験例1において示したものと同様である。
これらの7つの水準について、上記と同様の応答性試験を行った。その結果を、図11に示す。同図から分かるように、距離D1が短いほど、平均応答時間Tが長くなる傾向が観測された。そして、距離D1=1mmとしたものにおいては、平均応答時間Tが長くなってしまう。しかし、距離D1≧2mmとしたものにおいては、平均応答時間Tが、遮蔽板5を設けない場合の平均応答時間T0の1.1倍以下である。それゆえ、距離D1を2mm以上としておけば、遮蔽板5による応答性への影響を充分に抑制できるといえる。
次に、図12に示すごとく、素子カバー4を遮蔽板5の開放部50に近付けた際の、ガスセンサ10へのデポジット付着の防止効果への影響を調べた。ここで、図12に示すごとく、遮蔽板5の内周面55を開放部50に延長した仮想内周面550を想定する。この仮想内周面550と素子カバー4の外周面45との距離をD2とする。この距離D2と、ガスセンサ10へのデポジットの付着しやすさとの関係を、実験例3と同様の方法にて調べた。ここで、距離D2は、仮想内周面550と素子カバー4の外周面45とが最も接近した位置における両者間の距離をいう。
上述の実施形態1に示したガスセンサ取付構造1を基本構成として、距離D2を1mm〜7mmの7つの水準に設定して、それぞれについて試験を行った。距離D2の調整方法は、上述した距離D1の調整方法に準ずる。
各試料における、素子カバー4と遮蔽板5との位置関係以外の構成は、上記7つの水準において同様である。遮蔽板5の突出長さKは、K=Lとし、開放部50の開放角度θは60°とした。その他の構成は、実験例1において示したものと同様である。
これらの7つの水準について、実験例3と同様の評価試験を行った。その結果を、図13に示す。同図から分かるように、距離D2が短いほど、デポジット堆積量が多くなる。そして、D2=1mmのものにおいては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割を超えていた。一方、D2≧2mmのものにおいては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割以下である。それゆえ、距離D2を2mm以上とすることにより、素子カバー4へのデポジットの付着を充分に抑制できるといえる。
上記の結果から、遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45との距離D1は2mm以上であり、かつ、遮蔽板5の内周面55を開放部50に延長した仮想内周面550と素子カバー4の外周面45との距離D2は2mm以上であることが好ましいと言える。
(実験例6)
本例も、図14〜図16に示すごとく、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の内周面55との位置関係、及び、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の開放部50との位置関係について、検討した例である。ただし、本例においては、特に遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45とが離れすぎた場合の懸念として、デポジット付着の防止効果の低下の有無について調べた。
本例においては、図14に示すごとく、素子カバー4と遮蔽板5とが、互いの中心軸を一致させた状態を保ちつつ、遮蔽板5の直径を変化させることにより、素子カバー4の外周面45と遮蔽板5の内周面55との距離D3を変化させた。したがって、本例においては、距離D3は遮蔽板5の内周面55の半径と素子カバー4の外周面45の半径との差に一致する。その他の構成は、実験例5にて用いた試料と同様である。
まず、ガスセンサ10へのデポジット堆積量の試験にあたっては、距離D3を1mm〜9mmの間で9つの水準に振った。
これらの9つの水準について、実験例3と同様の評価試験を行った。その結果を、図15に示す。同図から分かるように、距離D3が長いほど、デポジット堆積量が多くなる。そして、D3=9mmのものにおいては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割を超えていた。一方、D3≦8mmのものにおいては、堆積量が、側面孔43の総面積Sの1割以下である。それゆえ、距離D2を8mm以下とすることにより、素子カバー4へのデポジットの付着を充分に抑制できるといえる。
次に、距離D3を短くしすぎると、ガスセンサ10の応答性が低下するおそれが懸念される。それゆえ、距離D3を変化させたときのガスセンサ10の応答性についても、実験例1と同様の評価試験を行った。
その結果を、図16に示す。同図から分かるように、距離D3が短いほど、平均応答時間Tが長くなる傾向が観測された。そして、距離D3=1mmとしたものにおいては、平均応答時間Tが長くなってしまう。しかし、距離D3≧2mmとしたものにおいては、平均応答時間Tが、遮蔽板5を設けない場合の平均応答時間T0の1.1倍以下である。それゆえ、距離D3を2mm以上としておけば、遮蔽板5による応答性への影響を充分に抑制できるといえる。
上記の結果から、遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45との距離は8mm以下であることが好ましいことが分かる。そして、特に、素子カバー4と遮蔽板5とが、互いの中心軸を一致させた状態で配置された構成においては、遮蔽板5の内周面55と素子カバー4の外周面45との距離D3は2〜8mmであることが好ましいといえる。
本発明は、上述の実施形態1に限定されるものではなく、種々の形態を採りうる。例えば、ガスセンサは、素子カバーを外側から覆うように他のカバーを有している、いわゆる二重カバー構造(複数カバー構造)を有していてもよい。この場合、最も内側に配された素子カバーに設けられた側面孔が、測定電極よりも基端側に形成されていればよい。すなわち、本明細書において、「素子カバー」とは、「センサ素子に対して外周側から対向配置された側壁部と、センサ素子に対して先端側から対向配置された底壁部とを有するものであり、例えば二重カバー構造における外側のカバーを意味するものではない。
また、上記実施形態1においては、遮蔽板を、ガスセンサと別体の部品として、吸気通路に取り付けた構造を示したが、遮蔽板をガスセンサに取り付けた構造とすることもできる。
1 ガスセンサ取付構造
10 ガスセンサ
11 絶縁碍子
2 センサ素子
3 ハウジング
4 素子カバー
41 側壁部
42 底壁部
43 側面孔
44 底面孔
5 遮蔽板
50 開放部
A 気流方向

Claims (7)

  1. 内燃機関の吸気通路(6)にガスセンサ(10)を取り付けてなるガスセンサ取付構造(1)であって、
    上記ガスセンサ(10)は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と、該センサ素子(2)を内側に保持する絶縁碍子(11)と、該絶縁碍子(11)を内側に保持するハウジング(3)と、該ハウジング(3)の先端側に配設された素子カバー(4)とを備え、
    該素子カバー(4)は、上記センサ素子(2)に対して外周側から対向配置された側壁部(41)と、上記センサ素子(2)に対して先端側から対向配置された底壁部(42)とを有し、
    上記側壁部(41)には、複数の側面孔(43)が形成され、上記底壁部(42)には底面孔(44)が形成されており、
    上記側面孔(43)は、上記センサ素子(2)に設けられた測定電極(21)よりも基端側において周方向の複数個所に配置されており、
    上記吸気通路(6)における上記ガスセンサ(10)の外周側に隣接する位置には、上記素子カバー(4)の一部を覆う耐熱撥水性樹脂からなる遮蔽板(5)が設けてあり、
    該遮蔽板(5)は、軸方向から見たとき、少なくとも上流側から気流方向(A)に対して直交する方向までの角度範囲において、上記素子カバー(4)に対向するように配置されており、かつ、下流側に開放部(50)を有することを特徴とするガスセンサ取付構造(1)。
  2. 上記側面孔(43)は、周方向に等間隔にn個設けてあり、nは4以上であり、軸方向から見たとき、上記遮蔽板(5)の上記開放部(50)は、360°/n以上の角度範囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ取付構造(1)。
  3. 上記吸気通路(6)への上記遮蔽板(5)の突出長さ(K)は、上記吸気通路(6)への上記素子カバー(4)の突出長さ(L)の0.9〜1.2倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ取付構造(1)。
  4. 上記素子カバー(4)には、耐熱撥水性樹脂がコーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスセンサ取付構造(1)。
  5. 上記遮蔽板(5)の内周面(55)と上記素子カバー(4)の外周面(45)との距離(D1、D3)は2mm以上であり、かつ、上記遮蔽板(5)の内周面(55)を上記開放部(50)に延長した仮想内周面(550)と上記素子カバー(4)の外周面(45)との距離(D2)は2mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスセンサ取付構造(1)。
  6. 上記遮蔽板(5)の内周面(55)と上記素子カバー(4)の外周面(45)との距離(D1、D3)は8mm以下であることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサ取付構造(1)。
  7. 上記素子カバー(4)と上記遮蔽板(5)とは、互いの中心軸を一致させた状態で配置されており、上記遮蔽板(5)の内周面(55)と上記素子カバー(4)の外周面(45)との距離(D3)は2〜8mmであることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサ取付構造(1)。
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