JP2016109665A - 磁場計測方法及び磁場計測装置 - Google Patents

磁場計測方法及び磁場計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光ポンプ式の磁気計測において、プローブ光が一方向でありながら、複数方向の磁場を計測可能とすること。【解決手段】磁場計測装置1において、光源18は、ガスセル12に対して、ポンプ光とプローブ光とを兼ねた直線偏光をZ軸方向に照射し、磁場発生器8は、ガスセル12に対して、X,Y軸方向それぞれに、同一周期であり且つ位相が異なる交番磁場を印加する。演算制御部30は、交番磁場のX,Y軸方向成分Ax,Ayと、磁気センサー10の計測値W-に相当するスピン偏極度Mxとを用いて、計測領域の磁場C(Cx,Cy,Cz)を算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、光を利用した磁場計測方法及び磁場計測装置に関する。
光を利用した磁気計測装置は、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生する微少な磁場の一成分を計測することが可能であり、医療画像診断装置などへの応用が期待されている。かかる磁気計測装置では、アルカリ金属などのガス(気体)を封入したガスセルにポンプ光及びプローブ光を照射する。ガスセル内に封入された原子は、ポンプ光により励起されてスピン偏極し、このガスセルを透過したプローブ光の偏光面は、磁気光学効果により磁場に応じて回転する。このガスセルの透過前後のプローブ光の偏光面の回転角度を測定することで、磁場の一成分を計測する(例えば、特許文献1)。
特開2013−108833号公報
従来の一般的な光ポンピング式の磁気計測装置は、磁場の検出軸は一方向であり、検出軸と磁場との方向が異なる場合には、磁場の検出軸への射影成分が計測される。しかし、実際に空間に分布する磁場は三次元のベクトルであり、より精密に磁場を計測しようとする場合、X,Y,Z直交三軸といった三軸方向の磁場を計測することが望ましい。検出軸はプローブ光の照射方向に応じた方向となるため、単純に、プローブ光の照射方向を増やすことで検出軸を増やす場合、それぞれの照射方向を精密に直交させる必要がある。照射方向が想定する方向に対して傾くと、それに伴って検出軸に傾きが生じ、その結果、三次元ベクトルである磁場の計測値に誤差が生じてしまう。また、ガスセルにプローブ光を三軸方向から入射させる場合、装置の構成が複雑となり、実現しがたいという課題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光ポンプ式の磁気計測において、プローブ光が一方向でありながら、複数方向の磁場を計測可能とすること、或いは高精度に磁気計測を行うことである。
[適用例1]上記課題を解決するための第1の発明は、第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、光を射出する光源と、前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、前記光学特性を検出する光検出器と、前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を算出することと、を含む磁場計測方法である。
本適用例の磁場計測方法によれば、第3方向(Z方向)といった一方向のみへの光の照射によって、計測領域の磁場を算出することができる。具体的には、計測領域の磁場に応じて光の光学特性を変化させる媒体に対して、光の射出方向である第3方向(Z方向)と直交する第1方向(X方向)の磁場である第1交番磁場と、第3方向(Z方向)及び第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)の磁場であって、第1交番磁場と同一周期であり、且つ、第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場と、を印加する。そして、光の光学特性の検出結果と、第1交番磁場と、第2交番磁場とを用いて、計測領域の磁場を算出する。
[適用例2]第2の発明として、第1の発明の磁場計測方法であって、前記計測領域の磁場を算出することは、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とを発生させた際の前記媒体の磁化ベクトルの前記第1方向の成分を示す磁化値、又は前記磁化値に対応する値、を前記光検出器の検出結果に基づいて算出することを含む、磁場計測方法を構成してもよい。
本適用例の磁場計測方法によれば、媒体の磁化ベクトルの第1方向(X方向)の成分を示す磁化値を、光の光学特性の検出結果に基づいて算出し、この磁化値と、第1交番磁場と、第2交番磁場とを用いて、計測領域の磁場を算出する。
[適用例3]第3の発明として、第2の発明の磁場計測方法であって、前記計測領域の磁場を算出することは、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場との組み合わせを3個以上異ならせていることを含む、磁場計測方法を構成してもよい。
本適用例の磁場計測方法によれば、磁化値と、第1交番磁場の値と、第2交番磁場の値と、の組み合わせであって、磁化値が異なる3以上のタイミングにおける組み合わせを用いて、計測領域の磁場を算出することができる。
[適用例4]第4の発明として、第3の発明の磁場計測方法であって、前記計測領域の磁場を算出することは、前記組み合わせのそれぞれに以下の数式1を適応させることである、磁場計測方法を構成してもよい。
Figure 2016109665
ただし、前記計測領域の磁場はC=(Cx,Cy,Cz)であり、x,y,zはそれぞれ前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向の空間座標であり、Mxは前記磁化値であり、a,cは定数であり、A10f(ωt)は前記第1交番磁場であり、A20f(ωt+δ)は前記第2交番磁場であり、δは前記位相差であり、ωは前記第1交番磁場と前記第2交番磁場との角振動数であり、tは時間である。
本適用例の磁場計測方法によれば、磁化値、第1交番磁場の値、及び、第2交番磁場の値の組み合わせそれぞれについて各値を数式1に代入した3以上の式からなる連立方程式を生成し、この連立方程式を解くことで、三次元ベクトルである媒体の計測領域の磁場(Cx,Cy,Cz)を算出することができる。
[適用例5]第2方向の交番磁場及び第1方向の交番磁場は、具体的には次のように定めることができる。例えば、第5の発明として、前記位相差はπ/2である、磁場計測方法を構成してもよい。
[適用例6]また、第6の発明として、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは三角関数波である、磁場計測方法を構成してもよい。
[適用例7]また、第7の発明として、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは三角波である、磁場計測方法を構成してもよい。
[適用例8]また、第8の発明として、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは矩形波である、磁場計測方法を構成してもよい。
[適用例9]第9の発明は、第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、光を射出する光源と、前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、前記光学特性を検出する光検出器と、前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、前記第3方向の磁場を前記媒体に印加する第3磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を原磁場として算出する第一工程と、前記計測領域に測定対象物を配置する第二工程と、前記計測領域に形成したい磁場であるターゲット磁場と前記原磁場との差分の磁場を、前記第1磁場発生器と前記第2磁場発生器と前記第3磁場発生器とに発生させる第三工程と、前記第三工程を行っており前記第二工程が終了している期間に前記光検出器の検出結果を用いて、前記測定対象物が発生した磁場を測定する第四工程と、を含む磁場計測方法である。
本適用例の磁場計測方法によれば、計測領域を所定のターゲット磁場とした状態において、測定対象物が発生した磁場を測定することができる。例えば、外部から計測領域に漏れ入っている原磁場を相殺すべく、ターゲット磁場をゼロ磁場とすれば、測定対象物が発生する磁場を正確に計測することができる。
[適用例10]第10の発明は、第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、光を射出する光源と、前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、前記光学特性を検出する光検出器と、前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、前記第3方向の磁場を前記媒体に印加する第3磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を原磁場として算出する第一工程と、前記計測領域に測定対象物を配置する第二工程と、前記計測領域に形成したい磁場であるターゲット磁場と前記原磁場との差分の磁場の第1方向の成分を前記第1交番磁場に加えた第3交番磁場を前記第1磁場発生器に発生させ、前記差分の磁場の第2方向の成分を前記第2交番磁場に加えた第4交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させ、前記差分の磁場の第3方向の成分の磁場を前記第3磁場発生器に発生させる第三工程と、前記第三工程を行っており前記第二工程が終了している期間に前記光検出器の検出結果と前記第3交番磁場と前記第4交番磁場とを用いて、前記測定対象物が発生した磁場を測定する第四工程と、を含む磁場計測方法である。
本適用例の磁場計測方法によれば、計測領域を所定のターゲット磁場とした状態において、測定対象物が発生した磁場を測定することができる。例えば、外部から計測領域に漏れ入っている原磁場を相殺すべく、ターゲット磁場をゼロ磁場とすれば、測定対象物が発生する磁場をベクトル量として正確に計測することができる。
[適用例11]第11の発明は、第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、光を射出する光源と、前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、前記光学特性を検出する光検出器と、前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を算出することと、を実行する演算制御部と、を備えた磁場計測装置である。
本適用例の磁場計測装置によれば、第3方向(Z方向)といった一方向のみへの光の照射によって、計測領域の磁場を算出することができる。具体的には、計測領域の磁場に応じて光の光学特性を変化させる媒体に対して、光の射出方向である第3方向(Z方向)と直交する第1方向(X方向)の磁場である第1交番磁場と、第3方向(Z方向)及び第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)の磁場であって、第1交番磁場と同一周期であり、且つ、第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場と、を印加する。そして、光の光学特性の検出結果と、第1交番磁場と、第2交番磁場とを用いて、計測領域の磁場を算出する。
本実施形態に係る磁場計測装置の構成の一例を示す概略側面図。 本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する模式図であり、具体的には、Y方向から見た図。 本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する模式図であり、具体的には、X方向から見た図。 本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する模式図であり、具体的には、Z方向から見た図。 本実施形態に係る磁気センサーの構成を説明する模式図であり、具体的には、Z方向から見た平面図。 本実施形態に係る磁気センサーの構成を説明する模式図であり、具体的には、Y方向から見た側面図。 本実施形態に係る演算制御部の機能構成図。 磁場が無い場合のアライメントを説明する図。 磁場によるアライメントの変化を説明する図。 ガスセルを透過することによる直線偏光の偏光面の変化を説明する図。 ガスセルを透過することによる直線偏光の偏光面の変化を説明する図。 アライメント方位角θとプローブ光の検出結果との関係を示す図。 本実施形態に係る磁場計測処理の流れを説明するフローチャート。 第1実施例における人工磁場が三角関数波である場合のスピン偏極度の一例を示すグラフ。 第2実施例における人工磁場が三角波である場合のスピン偏極度の一例一例を示すグラフ。 第3実施例における人工磁場がのこぎり波である場合のスピン偏極度の一例を示すグラフ。 第4実施例における人工磁場が矩形波である場合のスピン偏極度の一例を示すグラフ。
以下、実施形態について図面に従って説明する。
なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
[磁場計測装置の構成]
まず、本実施形態に係る磁場計測装置の構成例を説明する。図1は、本実施形態に係る磁場計測装置の構成の一例を示す概略側面図である。図2は、本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する図であり、具体的には、Y方向から見た図である。図3は、本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する図であり、具体的には、X方向から見た図である。図4は、本実施形態に係る磁場発生器の構成を説明する図であり、具体的には、Z方向から見た図である。図5は、本実施形態に係る磁気センサーの構成を説明する模式図であり、具体的には、Y方向から見た平面図である。図6は、本実施形態に係る磁気センサーの構成を説明する模式図であり、具体的には、Y方向から見た側面図である。図7は、本実施形態に係る演算制御部の機能構成図である。
図1に示す磁場計測装置1は、計測対象物が発生する磁場をベクトル量として計測する計測装置である。なお、計測対象物が発生する磁場に関する一部の情報(例えば、その一成分や大きさ、有無など)を計測する装置は磁気計測装置と称するものとする。本実施形態では、計測対象物を人体(被検体)とし、計測対象物が発する磁場を心磁(心臓の電気生理学的な活動から発生する磁場)や脳磁とする。ここでは、磁場計測装置1が心磁をベクトル量として計測する計測装置である場合を例に説明する。
磁場計測装置1は、光ポンピング法を用いて磁場を計測する装置であり、ポンプ光とプローブ光とを兼用する、いわゆるワンビーム方式である。なお、ワンビーム方式のものに限らず、ポンプ光を照射するための光源とプローブ光を照射するための光源とを分離した、いわゆるツービーム方式の構成としてもよい。図1に示すように、磁場計測装置1は、土台3と、テーブル4と、磁気シールド装置6と、磁場発生器8と、磁気センサー10と、演算制御部30(図7参照)とを備えている。
図6に示す磁気センサー10において、光源18から射出されるレーザー光(照射光ともいう)18aがガスセル12を通過する方向(照射方向)を第3方向(本実施形態ではZ方向)とする。照射光の直線偏光成分の振動方向を第2方向(本実施形態ではY方向)とする。第2方向(Y方向)及び第3方向(Z方向)と直交する方向を第1方向(本実施形態ではX方向)とする。そして、第1方向(X方向)、第2方向(Y方向)、第3方向(Z方向)を直交座標系の軸方向とし、以下ではそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向と呼称する。
図1において、Z軸方向は鉛直方向であり、磁場計測装置1の高さ方向(図1における上下方向)である。X軸方向及びY軸方向は水平方向であり、土台3、テーブル4の上面が延在する方向である。横たわった状態の被検体9の身長方向(図1における左右方向)はX軸方向に沿っているものとする。従って、被検体9の身長方向と交差する方向(図1における奥から手前に向かう方向)がY軸方向である。
土台3は磁気シールド装置6(本体部6a)の内側の底面上に配置され、本体部6aの外側まで、被検体9の移動可能方向であるX軸方向に沿って延在している。テーブル4は、第1テーブル4aと、第2テーブル4bと、第3テーブル4cとを有している。土台3上には、直動機構3aによりX軸方向に沿って移動する第1テーブル4aが設置されている。第1テーブル4aの上には、図示しない昇降装置によりZ軸方向に沿って昇降する第2テーブル4bが設置されている。第2テーブル4bの上には、図示しない直動機構によりレール上をY軸方向に沿って移動する第3テーブル4cが設置されている。
磁気シールド装置6は、開口部6bを有する角筒状の本体部6aを備えている。本体部6aの内部は空洞となっており、Y軸方向及びZ軸方向で構成される面(Y−Z断面でX軸方向に直交した平面)の断面形状は概ね四角形になっている。心磁を計測する際は、本体部6aの内部に被検体9がテーブル4上に横たわった状態で収容される。本体部6aはX軸方向に延在しており、これ自体でパッシブ磁気シールドとして機能する。
本体部6aの開口部6bから+X方向に土台3が突出している。磁気シールド装置6の大きさは、例えば、X軸方向における長さが約200cm程度であり、開口部6bの一辺が90cm程度である。そして、開口部6bから、磁気シールド装置6内に、テーブル4に横たわった被検体9がテーブル4と共に土台3上をX軸方向に沿って移動して出入することができる。
磁気シールド装置6の本体部6aは、比透磁率が例えば数千以上の強磁性体、または、高伝導率の導体によって形成される。強磁性体にはパーマロイ、フェライト、または鉄、クロムもしくはコバルト系のアモルファス等を用いることができる。高伝導率の導体には、例えば、アルミニウム等で、渦電流効果によって磁場低減効果を有するものを用いることができる。なお、強磁性体と高伝導率の導体とを交互に積層して本体部6aを形成することも可能である。
本体部6aの内部には、磁場発生器8が設置されている。磁場発生器8は、3軸ヘルムホルツコイルで構成され、計測領域5に対して、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に所定磁場を発生させることができる。つまり、磁場発生器8は、少なくとも、X軸方向の磁場を発生させる第1磁場発生器8Xと、Y軸方向の磁場を発生させる第2磁場発生器8Yとを含み、さらに、Z軸方向の磁場を発生させる第3磁場発生器8Zを含むことが好ましい。
本実施形態では、磁場発生器8は、第1磁場発生器(X軸方向に沿って対向する一対のヘルムホルツコイル)8Xと、第2磁場発生器(Y軸方向に沿って対向する一対のヘルムホルツコイル)8Yと、第3磁場発生器(Z軸方向に沿って対向する一対のヘルムホルツコイル)8Zとを含んでいる。磁気シールド装置6の本体部6a内の、磁場計測装置1が心磁を計測する対象となる領域が計測領域5である。被検体9における計測位置である胸部9aと磁気センサー10とは、計測領域5内に配置される。
図2、図3、及び図4に示すように、磁場発生器8が含むヘルムホルツコイル8X、ヘルムホルツコイル8Y、及びヘルムホルツコイル8Zの直径は、計測領域5の径よりも大きい。すなわち、計測領域5は、第1磁場発生器8Xと第2磁場発生器8Yと第3磁場発生器8Zとで囲まれた領域に内包される。これらヘルムホルツコイル8X,8Y,8Zの中心と、計測領域5の中心と、磁気センサー10の中心とがほぼ一致することが好ましい。このようにすれば、計測領域5において、三次元ベクトルである磁場を精度良く計測することができる。
また、対向する一対のヘルムホルツコイル同士の間の距離は、他のヘルムホルツコイルの径よりも大きいことが好ましい。例えば、図2に示すように、対向する一対のヘルムホルツコイル8X同士の間の距離がヘルムホルツコイル8Y及びヘルムホルツコイル8Zの径よりも大きいことが好ましい。このようにすれば、一対のヘルムホルツコイル8Y(または8Z)により、Y軸(またはZ軸)に沿って平行で均一な磁場を発生させることができる。同様に、一対のヘルムホルツコイル8Y(または8Z)同士の間の距離も、他のヘルムホルツコイルの径よりも大きいことが好ましい。
例えば、図2において、仮に一対のヘルムホルツコイル8X同士の間の距離が他のヘルムホルツコイル8Y及びヘルムホルツコイル8Zの径よりも小さい場合、一対のヘルムホルツコイル8Y(または8Z)を底面とする円柱状の領域の内側にヘルムホルツコイル8Xが入り込むこととなる。そうすると、一対のヘルムホルツコイル8Y(または8Z)により形成される磁場に歪みが生じてしまい、計測領域5付近においてY軸(またはZ軸)に沿って平行で均一な磁場を発生させることが困難となる。
磁気センサー10は、本体部6aの天井に支持部材7を介して固定されている。磁気センサー10は、計測領域5のZ軸方向における磁場の強度成分を計測する。磁気センサー10は、光ポンピング法を用いて磁場を計測する。被検体9の心磁を計測する際は、被検体9における計測位置である胸部9aが磁気センサー10と対向する位置になるように第1テーブル4a及び第3テーブル4cを移動させ、胸部9aが磁気センサー10に接近するように第2テーブル4bを上昇させる。
光ポンピング式の磁気センサー10を用いた微弱磁場の計測では、ガスセル12が配置された計測領域5に存在する、例えば地磁気や都市ノイズ等の環境により外部から流入する磁場(原磁場)を打ち消すことが好ましい。原磁場が存在すると、その影響を受けて、計測対象物(被検体9)が発生した磁場に対する感度の低下や、計測精度の低下を招くためである。本実施形態では、磁気シールド装置6により外部から計測領域5への磁場の流入が抑制されている。そして、本体部6aの内部に配置された磁場発生器8により計測領域5付近をゼロ磁場に近い低磁場に保つことができる。
図5に示すように、磁気センサー10は、光源18と、ガスセル12と、光検出器14,15とを有する。光源18は、セシウムの吸収線に応じた波長のレーザー光18aを出力する。レーザー光18aの波長は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、D1線に相当する894nmの波長に設定している。光源18はチューナブルレーザーであり、光源18から出力されるレーザー光18aは一定の光量を有する連続光である。
本実施形態では、光源18は、演算制御部30に設置されている。光源18から発せられたレーザー光18aは、光ファイバー19を通って磁気センサー10の本体に供給される。磁気センサー10の本体と光ファイバー19とは、光コネクター20を介して接続されている。光コネクター20を介して供給されたレーザー光18aは、−Y方向に進行して偏光板21に入射する。偏光板21を通過したレーザー光18aは、直線偏光になっている。そして、レーザー光18aは、第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23、第3ハーフミラー24、第1反射ミラー25に順次入射する。
第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23及び第3ハーフミラー24は、レーザー光18aの一部を反射して+X方向に進行させ、一部のレーザー光18aを通過させて−Y方向に進行させる。第1反射ミラー25は、入射したレーザー光18aを全て+X方向に反射する。第1ハーフミラー22、第2ハーフミラー23、第3ハーフミラー24、第1反射ミラー25により、レーザー光18aは4つの光路に分割される。各光路のレーザー光18aの光強度が同じ光強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。
次に、図6に示すように、レーザー光18aは第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29に順次照射入射する。第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27及び第6ハーフミラー28は、レーザー光18aの一部を反射して+Z方向に進行させ、一部のレーザー光18aを通過させて+X方向に進行させる。第2反射ミラー29は、入射したレーザー光18aを全て+Z方向に反射する。
第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29により、1つの光路のレーザー光18aは4つの光路に分割される。各光路のレーザー光18aの光強度が同じ光強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。したがって、レーザー光18aは16個の光路に分離される。そして、各光路のレーザー光18aの光強度が同じ強度になるように、各ミラーの反射率が設定されている。
第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29の+Z方向側には、レーザー光18aの各光路に、4行4列の16個のガスセル12が設置されている。そして、第4ハーフミラー26、第5ハーフミラー27、第6ハーフミラー28、第2反射ミラー29にて反射したレーザー光18aは、ガスセル12を通過する。
ガスセル12は、内部に空隙を有する箱であり、この空隙には、計測領域5(図1参照)の磁場に応じて光の光学特性を変化させる媒体としてのアルカリ金属のガスが封入されている。アルカリ金属は特に限定されず、カリウム、ルビジウムまたはセシウムを用いることができる。本実施形態では、例えばアルカリ金属にセシウムを用いている。
各ガスセル12の+Z方向側には、偏光分離器13が設置されている。偏光分離器13は、入射したレーザー光18aを、互いに直交する2つの偏光成分のレーザー光18aに分離する素子である。偏光分離器13には、例えば、ウォラストンプリズムまたは偏光ビームスプリッターを用いることができる。
偏光分離器13の+Z方向側には光検出器14が設置され、偏光分離器13の+X方向側には光検出器15が設置されている。偏光分離器13を通過したレーザー光18aは光検出器14に入射し、偏光分離器13にて反射したレーザー光18aは光検出器15に入射する。光検出器14及び光検出器15は、入射したレーザー光18aの受光光量に応じた信号を演算制御部30に出力する。
光検出器14,15が磁場を発生すると測定に影響を与える可能性があるので、光検出器14,15は非磁性の材料で構成されることが望ましい。磁気センサー10は、X軸方向の両面及びY軸方向の両面に設置されたヒーター16を有している。ヒーター16は磁界を発生しない構造であることが好ましく、例えば、流路中に蒸気や熱風を通過させて加熱する方式のヒーターを用いることができる。ヒーターの代わりに、高周波電圧によりガスセル12を誘電加熱してもよい。
磁気センサー10は、被検体9(図1参照)の+Z方向側に配置される。磁気センサー10が計測領域5にて検出する磁場ベクトルB(測定対象物が発生する対象磁場ベクトルを含む)は、−Z方向側から磁気センサー10に入る。磁場ベクトルBは、第4ハーフミラー26〜第2反射ミラー29を通過し、ガスセル12を通過した後、偏光分離器13を通過して磁気センサー10から出る。
磁気センサー10は、光ポンピング式磁気センサーや光ポンピング原子磁気センサーと称されるセンサーである。ガスセル12内のセシウムは、加熱されてガス状態になっている。そして、直線偏光になったレーザー光18aをセシウムガスに照射することにより、セシウム原子が励起され磁気モーメントの向きが揃えられる。この状態でガスセル12に磁場ベクトルBが通過するとき、セシウム原子の磁気モーメントが磁場ベクトルBの磁場により歳差運動する。この歳差運動をラーモア歳差運動と称する。
ラーモア歳差運動の大きさは、磁場ベクトルBの強さと正の相関を有している。ラーモア歳差運動は、レーザー光18aの偏向面を回転させる。ラーモア歳差運動の大きさとレーザー光18aの偏向面の回転角の変化量とは、正の相関を有する。したがって、磁場ベクトルBの強さとレーザー光18aの偏向面の回転角の変化量とは、正の相関を有している。磁気センサー10の感度は、磁場ベクトルBのZ軸方向において高く、Z軸方向と直交する方向において低くなっている。
偏光分離器13は、ガスセル12を透過したレーザー光18aを互いに直交する軸方向(図11に示すα軸及びβ軸)の2成分の直線偏光に分離する。分離された一方の直線偏光は光検出器14に導かれ、他方の直線偏光は光検出器15に導かれる。そして、光検出器14及び光検出器15は、直交する2成分それぞれの直線偏光を受光し、受光光量に応じた信号を発生して演算制御部30に出力する。それぞれの直線偏光の強さを検出することにより、レーザー光18aの偏向面の回転角を検出することができる。そして、レーザー光18aの偏向面の回転角の変化から、磁場ベクトルBの強さを検出することができる。
ガスセル12、偏光分離器13、光検出器14、及び光検出器15からなる素子をセンサー素子11と称する。本実施形態では、磁気センサー10には、センサー素子11が4行4列の16個配置されている。磁気センサー10におけるセンサー素子11の個数及び配置は特に限定されない。センサー素子11は、3行以下でもよく5行以上でもよい。同様にセンサー素子11は、3列以下でもよく5列以上でもよい。センサー素子11の個数が多い程空間分解能を高くすることができる。
図7に示すように、演算制御部30は、操作部31と、表示部32と、通信部33と、処理部40と、記憶部50とを有する。操作部31は、ボタンスイッチやタッチパネル、キーボード、各種センサー等の入力装置であり、なされた操作に応じた操作信号を処理部40に出力する。この操作部31によって、磁場計測の開始指示等の各種指示入力が行われる。
表示部32は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、処理部40からの表示信号に基づく各種表示を行う。この表示部32に、計測結果等が表示される。通信部33は、無線通信機やモデム、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等の通信装置であり、所与の通信回線と接続して外部との通信を実現する。
処理部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のマイクロプロセッサーや、ASIC(特定用途向け集積回路:Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)メモリー等の電子部品によって実現される。処理部40は、所定のプログラムやデータ、操作部31からの操作信号、磁気センサー10からの計測信号等に基づいて各種の演算処理を実行して、演算制御部30の動作を制御する。
処理部40は、照射制御部41と、磁場発生制御部42と、原磁場算出部43と、バイアス磁場決定部44と、対象磁場算出部45と、を有する。処理部40は、記憶部50に記憶された磁場計測プログラム51に従った磁気計測処理(図13に示すフローチャート参照)を実行する。
本実施形態に係る磁気計測処理では、例えば人体の心臓や脳といった測定対象物が発生する磁場の測定を行う前に、初期設定として、測定対象物が置かれていない状態の計測領域5の原磁場Cxを算出する。そして、原磁場Cxを打ち消すようなバイアス磁場を磁場発生器8に発生させた状態で、測定対象物が発生する磁場の測定を行う。すなわち、測定対象物(被検体9)が発生する磁場の計測は、計測領域5に流入する外部磁場(原磁場)を低減した状態で実施する。
照射制御部41は、磁気センサー10の光源18による照射光の照射を制御する。具体的には、照射制御部41は、光源18による照射光の照射の開始や終了のほか、照射光の光強度、照射光に含まれる直線偏光面の向きなどを制御する。
磁場発生制御部42は、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)に対して、X,Y,Z軸方向それぞれに所定の磁場を発生させるように制御する。具体的には、磁場発生制御部42は、初期設定時には、所定の人工磁場A(Ax,Ay,Az)を、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)に発生させる。詳細は後述するが、人工磁場Aは、その第1方向(X方向)成分及び第2方向(Y方向)成分が、振幅及び周期が同一であって位相が異なる交番磁場f(ωt)であり、その第3方向(Z方向)成分がゼロ(Az=0)である磁場ベクトルである。人工磁場A(Ax,Ay,Az)は、人工磁場データ52として記憶部50に記憶される。
また、磁場発生制御部42は、測定時には、バイアス磁場決定部44によって決定されたバイアス磁場Bb(Bbx,Bby,Bbz)と、人工磁場A(Ax,Ay,Az)との合成磁場(Bb+A)を、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)に発生させる。
原磁場算出部43は、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)が人工磁場ベクトルA(Ax,Ay,Az)を発生している状態において、磁気センサー10から出力される信号に基づいて、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を算出する。具体的には、磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる磁気センサー計測値(二乗差W-)をスピン偏極度Mxとし、ある時刻tにおける、人工磁場ベクトルAのX軸方向成分Axの値Ax(t)、及び、Y軸方向成分Ayの値Ay(t)と、スピン偏極度Mx(t)との組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3つ以上の組み合わせを取得する。
そして、取得した組み合わせそれぞれを、後述する数式15に代入して得られる3つ以上の式からなる連立方程式を定義し、この連立方程式を解く所定の算術演算処理を実行することで、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を算出する。算出した原磁場C(Cx,Cy,Cz)は、原磁場データ53として記憶部50に記憶される。
バイアス磁場決定部44は、原磁場算出部43によって算出された原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を打ち消すようなバイアス磁場Bb(Bbx,Bby,Bbz)を決定する。決定したバイアス磁場Bb(Bbx,Bby,Bbz)は、バイアス磁場データ54として記憶部50に記憶される。
対象磁場算出部45は、測定対象物が配置され、磁場発生器8がバイアス磁場Bbを発生している状態において、磁気センサー10から出力される信号に基づいて、この測定対象物が発生する対象磁場ベクトルB(Bx,By,Bz)を算出する。具体的には、磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)をスピン偏極度Mxとし、ある時刻tにおける、人工磁場ベクトルAのX軸方向成分Axの値Ax(t)、及び、Y軸方向成分Ayの値Ay(t)と、スピン偏極度Mx(t)との組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3つ以上の組み合わせを取得する。
そして、取得した組み合わせそれぞれを、数式15に代入して得られる3つ以上の式からなる連立方程式を定義し、この連立方程式を解く所定の算術演算処理を実行することで、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を、測定対象物が発生する対象磁場B(Bx,By,Bz)として算出する。算出した対象磁場ベクトルB(Bx,By,Bz)は、測定磁場データ55として記憶部50に記憶される。また、磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる磁気センサー計測値(二乗差W-)は、磁気センサー計測データ56として記憶部50に記憶される。
記憶部50は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置で構成される。記憶部50は、処理部40が演算制御部30を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部40の作業領域として用いられ、処理部40が実行した演算結果や、操作部31からの操作データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部50には、磁場計測プログラム51と、人工磁場データ52と、原磁場データ53と、バイアス磁場データ54と、測定磁場データ55と、磁気センサー計測データ56と、が記憶される。
[原理]
磁場計測装置1における磁場の計測原理について説明する。図8は、磁場が無い場合のアライメントを説明する図である。図9は、磁場によるアライメントの変化を説明する図である。図10及び図11は、ガスセルを透過することによる直線偏光の偏光面の変化を説明する図である。図12は、アライメント方位角θとプローブ光の検出結果との関係を示す図である。
なお、以下の説明では、原理を分かり易くするために時系列的な記述をしているが、実際には、(A)光ポンピング及び(C)プロービングは、本実施形態のワンビーム方式では同時に生じ得る。
(A)光ポンピング
ガスセル12に封入されたアルカリ金属原子の気体は、D1線の超微細構造量子数FからF’(=F−1)の状態の遷移に相当する波長に調整されたポンプ光(本実施形態では、ガスセル12を通過する光)が照射されることで、スピンがほぼ反平行(逆方向)に向いた(スピン偏極した)原子がほぼ同数混在する集団となる。この状態をアライメントと呼ぶ。なお、一つの原子のスピン偏極は時間の経過とともに緩和するが、ポンプ光がCW(continuous wave)光であるので、スピン偏極の形成と緩和は同時並行的且つ連続的に繰り返され、その結果、原子の集団全体としてみれば定常的なスピン偏極が形成される。
計測領域5がゼロ磁場である場合、アライメントは、原子の磁気モーメントの確率分布で表される。本実施形態のようにポンプ光が直線偏光の場合、その形状は、図8に示すように、X−Y平面において、ポンプ光の直線偏光の電場の振動方向(本実施形態では、Y軸方向)に沿って伸びた2つの楕円を連結した領域Rの形状となる。
(B)磁場の作用
計測領域5に何らかの磁場が存在すると、その磁場ベクトル(ガスセル12が受ける磁場)の方向を回転軸としてアルカリ金属原子が歳差運動を始める。そして、図9に示すように、ポンプ光による光ポンピング作用と、気体原子がガスセル12の内壁と衝突する等して起こる緩和作用とが加わることによって、アライメントの方向(楕円の長径に沿った方向)が、原点Oを中心として回転するように変化する。
アライメントの方向は、Y軸に対して磁場の強さに応じた角度(θ)だけ回転した配置で定常状態となる。ここで、アライメント方向をθpとし、その直交方向をθsとする。また、ポンプ光の電場の振動方向であるY軸方向に対してアライメント方向θpがなす角θを、アライメント方位角θとする。このアライメント方位角θは、主としてZ軸方向の磁場強度に応じて増加する。
(C)プロービング
この状態の原子集団を、Y軸方向に電場ベクトルE0で振動する直線偏光成分を有するプローブ光(本実施形態では、ガスセル12を通過する光)が通過する状況を考える。つまり、図10に示すように、プローブ光の電場の振動方向がY軸方向に沿った直線偏光を、+Z方向に向けてガスセル12を通過させる。図10において、原点Oが原子集団(ガスセル12に封入されている気体原子)の位置に相当し、この原子集団が光ポンピングされていることで、Y軸方向に沿った領域に分布するアライメントが生じている。Z軸方向において、−Z方向側は原子集団を透過する前の直線偏光を示し、+Z方向は原子集団を透過した直線偏光(透過光)を示している。
直線偏光が原子集団を透過すると、線形二色性により直線偏光の偏光面は回転し、その電場ベクトルはE1に変化する。線形二色性とは、アライメントに沿った方向θp(図9参照)と、アライメントに垂直な方向θs(図9参照)とで直線偏光の透過率が異なる性質である。具体的には、アライメントに沿った方向θpよりもアライメントに垂直な方向θsの成分が多く吸収されるため、プローブ光の偏光面は、アライメントに沿った方向θpに近づくように回転する。
図11は、直線偏光が原子集団を透過する前後の偏光面の回転の様子を、プローブ光の照射方向であるZ軸方向に垂直なX−Y平面に示した図である。本実施形態では、ガスセル12に入射するプローブ光は、電場の振動方向がY軸方向である電場ベクトルE0の直線偏光である。アライメントにより、プローブ光のうちの方向θpの成分は透過率tpで透過し、方向θsの成分は透過率tsで透過する。線形二色性によりtp>tsであるため、ガスセル12を透過したプローブ光の偏光面は、方向θpに近づくように回転する。こうしてガスセル12を通過した光は、電場ベクトルE1を有するものとなる。
具体的に、電場ベクトルE0のアライメントに沿った成分をE0Pと表記し、電場ベクトルE0のアライメントと直線偏光の進行方向とに垂直な方向に沿った成分をE0sと表記する。また、電場ベクトルE1のアライメントに沿った成分をE1Pと表記し、電場ベクトルE1のアライメントと直線偏光の進行方向とに垂直な方向に沿った成分をE1sと表記する。この場合、E1P=tp0Pと、E1s=ts0sとの関係となる。
アライメントに沿った方向と、プローブ光の電場の振動方向とが成す角(以下、「アライメント方位角」という。)をθとすると、上述の関係から、電場ベクトルE1の方向θp及び方向θsの各成分は以下の数式2によって算出される。
Figure 2016109665
上述したように、ガスセル12を透過したプローブ光は、偏光分離器13により、プローブ光の照射方向であるY軸方向に対して+45度をなすα軸と、Y軸方向に対して−45度をなすβ軸との2つの偏光成分に分離される。ガスセル12を透過した電場ベクトルE1の直線偏光のα軸方向成分Eαとβ軸方向成分Eβとは、数式3によって算出される。
Figure 2016109665
光検出器14,15は、α軸とβ軸との2つの偏光成分それぞれの光強度を計測し、受光光量に応じた信号を演算制御部30に出力する。演算制御部30は、光検出器14,15からの信号を処理し、以下の数式4、数式5に従ってα軸及びβ軸の各軸方向の成分の二乗和W+と二乗差W-とを算出する。Eαはα軸方向の成分の光強度を表し、Eβはβ軸方向の成分の光強度を表す。
Figure 2016109665
Figure 2016109665
図12には、アライメント方位角θに対する、電場ベクトルE1の直線偏光のα軸及びβ軸方向成分Eα,Eβ、及びそれぞれの二乗値Eα 2,Eβ 2と、α軸及びβ軸の各軸方向の成分の二乗和W+と二乗差W-と、を示している。なお、アライメント方位角θ=0とは、計測領域5がゼロ磁場の状態(図8参照)である。但し、方向θpの成分の透過率tp=1、方向θsの成分の透過率ts=0.8、としている。
図12において、二乗差W-の値に着目すると、二乗差W-は、アライメント方位角θに対して180度を周期として振動する。そして、二乗差W-は、アライメント方位角θが−45度から+45度の範囲では、アライメント方位角θに対してほぼ線形変化しているため、高い感度が得られる。また、その線形変化の中心が0度であって、その線形変化の範囲が他(二乗和W+など)と比べて広いため、計測領域5に生じる磁場を計測するには好適である。心磁や脳磁等の生体磁場は微弱であり、アライメント方位角θは小さいことから、二乗差W-を用いれば偏光面の回転角度を高感度に観測できる。
但し、上述したように、計測領域5に計測対象の磁場とは異なる不要な磁場が存在するとその影響を受けて感度が低下し、計測精度の低下を招く。通常は、心磁や脳磁等の計測対象の磁場を計測するには、磁気シールド装置6によって計測領域5への外部からの磁場の侵入が抑制された環境下(外部磁場が小さい状態)で行われるが、磁気シールド装置6によっては、外部磁場を測定に影響しない程度に十分に低減することが困難である。言い換えれば、外部磁場の侵入を磁気シールド装置6によって完全には遮蔽できないことが多い。完全に磁気を遮蔽できる磁気シールドは、装置が大がかりであり、費用も高額な上、設置コストや運用コストも高い。
そこで、本実施形態では、磁気シールド装置6を用いた上で、磁気シールド装置6内に漏れ入っている外部磁場(原磁場Cと称する)を計測し、これを磁場発生器8で低減した状態で計測対象の磁場を計測することとする。但し、そもそも外部磁場が低い場合や外部磁場が安定している場合には、磁気シールド装置6すら用いずに本実施形態を構成することもできる。
図12によれば、アライメント方位角θが−45度から+45度の範囲では、二乗差W-は、スピン偏極度(Mx,My,Mz)のX軸方向成分Mx(以下、スピン偏極度Mxと表記する)にほぼ比例する。このスピン偏極度Mxは、原子の磁気モーメントを合成した磁化ベクトルのX軸方向成分である磁化値に相当する。このため、以下では、二乗差W-を、スピン偏極度Mxであるとして扱う。本実施形態では、このスピン偏極度Mxに着目し、スピン偏極度Mxの値が、ガスセル12に印加される磁場ベクトルBの各成分Bx,By,Bzに応じてどのように変化するかを表す関係式を導出することにする。
光ポンピングにより生じたアライメントのスピン偏極度(Mx,My,Mz)の時間発展は、以下の数式6〜数式8に示すブロッホ方程式(Bloch equations)で近似される。γFは、ガスセル12内の媒体気体(アルカリ金属原子気体)の種類で決まる磁気回転比を表す。また、Γ0はスピン偏極度(Mx,My,Mz)の緩和速度を表し、Γpは光ポンピング速度を表す。Mpは、アルカリ金属原子集団のスピンが全て一方向に揃った際の最大磁化である。
Figure 2016109665
Figure 2016109665
Figure 2016109665
ポンピング光及びプローブ光は、定常的に一定のパワーでガスセル12に照射されるので、スピン偏極度(Mx,My,Mz)の定常解は、上記の数式6〜数式8の左辺をそれぞれゼロとおいて解くことができる。解は、数式9〜数式11により得られる。
Figure 2016109665
Figure 2016109665
Figure 2016109665
数式9〜数式11において、a,cは定数であり、以下の数式12で与えられる。
Figure 2016109665
(D)磁場の計測
さて、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)により、ガスセル12に対して、X,Y,Z軸方向それぞれに、人工磁場A(Ax,Ay,Az)を発生・印加させる場合を考える。この場合、磁気センサー10が検出する磁場ベクトルB(Bx,By,Bz)は、数式13に示すように、磁場発生器8が発生する人工磁場ベクトルA(Ax,Ay,Az)と、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)とのベクトル和となる。原磁場Cとは、人工磁場Aがゼロの際に計測領域5に存在する磁場である。
Figure 2016109665
ここで、人工磁場ベクトルAのZ軸方向成分Azをゼロ(Az=0)とする。また、人工磁場ベクトルAのX軸方向成分Axを振幅A10で周波数ωの交番磁場f(ωt)とする。すなわち、人工磁場ベクトルAのX軸方向成分Axを第1交番磁場とする(Ax=A10f(ωt))。さらに、Y軸方向成分Ayを、第1交番磁場との位相差がδであり、振幅A20で周波数ωの交番磁場f(ωt+δ)とする。すなわち、人工磁場ベクトルAのY軸方向成分AYを第2交番磁場とする(AY=A20f(ωt+δ))。位相差δは、ゼロ以外である(δ≠0)。つまり、人工磁場Aとして、Z軸方向を軸とする回転磁場を原磁場Cに重畳する。
交番磁場f(ωt)とは、f(ωt)=f(ωt+2π)、を満たす任意の周期関数である。この場合、磁気センサー10が計測領域5にて検出する磁場ベクトルB(Bx,By,Bz)は、以下の数式14で表現される。なお、振幅A10と振幅A20とは磁場のディメンジョンを有する係数で、交番磁場f(ωt)はノンディメンジョン(無次元)関数である。
Figure 2016109665
この数式14を数式9のスピン偏極度Mxに代入すると、以下の数式15が得られる。
Figure 2016109665
なお、A10=A20=A0とすると、制御と計算とが容易となり、数式14、数式15は、それぞれ数式16、数式17となる。
Figure 2016109665
Figure 2016109665
数式15または数式17を用いて、未知数である原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)の3つの値を、次のように算出する。ある時刻tに磁場計測装置1は、磁場発生器8にてX軸方向成分Ax(t)、及び、Y軸方向成分Ay(t)との人工磁場A(t)を発生させ、その際のスピン偏極度Mx(t)(すなわち、二乗差W-(t))を計測する。X軸方向成分Ax(t)(第1交番磁場)とY軸方向成分Ay(t)(第2交番磁場)との組み合わせを3個以上異ならせて、スピン偏極度Mx(t)を3個以上取得する。
そして、それぞれの組み合わせ毎に、人工磁場Aの値Ax(t),Ay(t)、及び、スピン偏極度Mx(t)を、数式15または数式17に代入して得られる3つの式からなる連立方程式を生成する。この連立方程式を解くことで、未知数である原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)を算出することができる。
なお、数式15または数式17において、定数a,cも未知数とすることができる。つまり、数式15または数式17には、原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)と、定数a,cとの5つの未知数が含まれるとする。この場合、磁場計測装置1を用いた計測を行って、ある時刻tにおける人工磁場Ax(t),Ay(t)と、スピン偏極度Mx(t)との組み合わせであって、スピン偏極度Mx(t)が異なる5つの組み合わせを取得する。そして、それぞれの組み合わせ毎に各値を数式17に代入して得られる5つの式からなる連立方程式を生成する。この連立方程式を解くことで、未知数である原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)、及び、定数a,cを算出することができる。
さらには、人工磁場の値Ax(t),Ay(t)と、スピン偏極度Mx(t)との組み合わせであって、スピン偏極度Mx(t)が異なる6つ以上の組み合わせを取得し、数式17のフィッティングをかけてもよい。具体的には、数式17を用いて算出したスピン偏極度Mxと、磁気センサー10の計測値であるMxとの偏差が最小となるように、未知数である原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)と、定数a,cを算出する。
また、人工磁場Ax,Ayとする交番磁場f(ωt)を、次の数式18で示す周期関数とすると、数式17は数式19となり、計測が容易となる。
Figure 2016109665
Figure 2016109665
さらに、交番磁場f(ωt)の振幅A0を、原磁場CのX軸方向成分Cx、及び、Y軸方向成分Cyに比べて充分小さいとすると(概ね1/10以下。A0<Cx/10、A0<Cy/10)、数式17、数式19は、数式20へと簡略化され、さらに計測が容易となる。
Figure 2016109665
このように、数式15、数式17、数式19、または数式20を用いて、磁場発生器8による人工磁場A(Ax,Ay,Az)と、そのときのスピン偏極度Mx(すなわち、二乗差W-)とから、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を算出することができる。
[処理の流れ]
図13は、本実施形態に係る磁場計測処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、図7に示す処理部40の各部が磁場計測プログラム51を実行することで実現される処理である。また、測定対象物を人体(被検体9)とし、心磁(心臓の電気生理学的な活動から発生する磁場)や脳磁を測定する場合を例に説明する。
図13に示すように、まず、照射制御部41が、光源18に、ポンプ光及びプローブ光を兼ねた直線偏光成分を含む照射光の照射を開始させる(ステップS01)。次いで、原磁場Cを測定するため、磁場発生制御部42が、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)に、人工磁場A(Ax,Ay,Az)を発生させる(ステップS02)。
続いて、原磁場算出部43が、人工磁場Aが発生されている状態において、3以上の異なるタイミングtにおいて磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)と、そのときの人工磁場Ax,Ayの値との組み合わせを取得する(ステップS03)。そして、原磁場算出部43は、取得した計測値(二乗差W-)と、人工磁場Ax,Ayとの組み合わせを用いて、原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を算出する(ステップS04)。
続いて、バイアス磁場決定部44が、算出された原磁場Cを打ち消すような、バイアス磁場Bb(Bbx,Bby,Bbz)を決定する(ステップS05)。その後、測定対象物(被検体9)を磁気シールド装置6内(計測領域5)に、磁気センサー10に接近させて配置する(ステップS06)。
続いて、この測定対象物(被検体9)が発生する磁場Bを測定するため、磁場発生制御部42が、バイアス磁場Bbと人工磁場Aとの合成磁場を、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)に発生させる(ステップS07)。
次いで、対象磁場算出部45が、合成磁場が発生されている状態において、3以上の異なるタイミングtにおいて磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)と、そのときの人工磁場Ax,Ayの値との組み合わせを取得する(ステップS08)。そして、対象磁場算出部45は、取得した計測値(二乗差W-)と、人工磁場Ax,Ayとの組み合わせを用いて、測定対象物が発生する対象磁場B(Bx,By,Bz)を算出する(ステップS09)。
その後、照射制御部41が、光源18による照射光の照射を終了させる(ステップS10)。以上の処理を行うと、処理部40は磁気計測処理を終了する。
このように構成される磁場計測装置1における具体的な実施例として、以下、人工磁場A(Ax,Ay,Az)を具体的に示した4つの実施例を説明する。
[第1実施例]
第1実施例は、人工磁場AのX軸方向成分Ax、及び、Y軸方向成分Ayとする交番磁場f(ωt)を三角関数波とし、その位相差δを「π/2」とする実施例である。つまり、人工磁場ベクトルA(Ax,Ay,Az)は、次の数式21で表現されるものとする。
Figure 2016109665
従って、ガスセル12に印加される磁場Bは、次の数式22で表現される。
Figure 2016109665
そして、スピン偏極度Mxの数式15は、次の数式23となる。
Figure 2016109665
更に、交番磁場f(ωt)の振幅A0を、原磁場CのX軸方向成分Cx、及び、Y軸方向成分Cyに比べて充分小さいとすると(概ね1/10以下。A0<Cx/10、A0<Cy/10)、数式23は、数式24へと簡略化される。
Figure 2016109665
そして、磁場計測装置1を用いた計測を行って、X軸方向成分Ax(tとY軸方向成分Ay(t)との組み合わせが異なる3個以上の人工磁場を形成し、その際のスピン偏極度Mx(t)(すなわち、二乗差W-)を取得する。すなわち、X軸方向成分Ax(ti)とY軸方向成分Ay(ti)との人工磁場Aiを計測領域に形成した状態で、磁化値Mx(ti)を取得する。ここでiは1からnの任意の整数で、nは3以上の整数である。
なお、jをiとは異なる1からnの任意の整数とした場合、「X軸方向成分Ax(t)とY軸方向成分Ay(t)との組み合わせが異なる」とは、時刻tiでのX軸方向成分Ax(ti)と時刻tjでのX軸方向成分Ax(tj)とが異なっているか(Ax(ti)≠Ax(tj))、或いは、時刻tiでのY軸方向成分AY(ti)と時刻tjでのY軸方向成分AY(tj)とが異なっているか(AY(ti)≠AY(tj))の少なくとも一方が満たされることである。
それぞれの組み合わせ毎に、人工磁場の値Ax(t),Ay(t)、及び、スピン偏極度Mx(t)を、数式23に代入して得られる3つ以上の式でなる連立方程式を生成し、この連立方程式を解くことで、未知数である原磁場ベクトルCの各成分(Cx,Cy,Cz)を算出することができる。
図14は、第1実施例における人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxの一例を示すグラフである。図14では、横軸を位相ωtとして、1周期分(2π分)の人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxのグラフを示している。また、スピン偏極度Mxの変化を分かり易くするため、上のグラフの一部を、縦軸方向を拡大して示したものが下のグラフである。
図14に示すように、人工磁場Ax,Ayを三角関数波とする場合、スピン偏極度Mxは滑らかに変化する曲線となる。つまり、交番磁場f(ωt)の1周期期間において、数式24を用いた原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)の算出に必要な、人工磁場Ax,Ayと、スピン偏極度Mxとの組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3個以上の組み合わせを取得することができる。
通常、aはA0やCx,Cyよりも十分大きく設定される(a>10×A0、a>10×Cx、a>10×Cy)。こうした場合、分母の振動項は小さくなるので、磁化値であるスピン偏極度Mxは分子に比例し、数式24は、次の数式25と表現される。
Figure 2016109665
つまり、磁場変調しないときの出力信号「Cxy+aCz」に変調信号「Cx0sin(ωt)+Cy0cos(ωt)」が重畳された波形となる。この出力信号であるスピン偏極度Mxと変調磁場に同期した参照信号をロックインアンプに入力すると、直交する二つの位相成分「Cx0」と「Cy0」とが、それぞれin-phase信号、quadrature信号として出力される。A0は既知であるので、これら二つの信号から原磁場ベクトルCのX軸方向成分Cx及びY軸方向成分Cyを検出できる。こうした方法で原磁場ベクトルCのX成分CxとY成分Cyとを検出してもよい。
また、磁気センサー10は一次遅れ要素を持つこともあるため、位相遅れやゲイン変化が生じる場合には、周波数ωでの遅れ位相やゲインを予め把握しておき、計測条件や計測値を補正してもよい。周波数ωは、磁場計測に必要となる帯域以外に設定してもよく、例えばカットオフ周波数ωC以上に設定してもよい。なお、カットオフ周波数ωCとは、スピン偏極度の緩和速度Γ0と光ポンピング速度ΓPとの和である(ωC=Γ0+ΓP)。
[第2実施例]
第2実施例は、人工磁場AのX軸方向成分Ax、及び、Y軸方向成分Ayとする交番磁場f(ωt)を三角波とし、その位相差δを「π/2」とする実施例である。
図15は、第2実施例における人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxの一例を示すグラフである。図15では、横軸を位相ωtとして、1周期分(2π分)の人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxのグラフを示している。また、スピン偏極度Mxの変化を分かり易くするため、上のグラフの一部を、縦軸方向を拡大して示したものが下のグラフである。
図15に示すように、人工磁場Ax,Ayを三角波とする場合、スピン偏極度Mxは、直線的に変化し、その傾きが、人工磁場Ax,Ayである三角波の頂点において変化する。つまり、交番磁場f(ωt)の1周期期間において、数式17を用いた原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)の算出に必要な、人工磁場Ax,Ayと、スピン偏極度Mxとの組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3個以上の組み合わせを取得することができる。
[第3実施例]
第3実施例は、人工磁場AのX軸方向成分Ax、及び、Y軸方向成分Ayとする交番磁場f(ωt)をのこぎり波とし、その位相差δを「π」とする実施例である。
図16は、第3実施例における人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxの一例を示すグラフである。図16では、横軸を位相ωtとして、2周期分(4π分)の人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxのグラフを示している。また、スピン偏極度Mxの変化を分かり易くするため、上のグラフの一部を、縦軸方向を拡大して示したのが下の図である。
図16に示すように、人工磁場Ax,Ayをのこぎり波とする場合、スピン偏極度Mxは、直線的に変化し、その傾きが、人工磁場Ax,Ayであるのこぎり波の頂点において変化する。つまり、交番磁場f(ωt)の1周期期間において、数式17を用いた原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)の算出に必要な、人工磁場Ax,Ayと、スピン偏極度Mxとの組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3個以上の組み合わせを取得することができる。
[第4実施例]
第4実施例は、人工磁場AのX軸方向成分Ax、及び、Y軸方向成分Ayとする交番磁場f(ωt)を矩形波とし、その位相差δを「π/2」とする実施例である。
図17は、第4実施例における、人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxの一例を示すグラフである。図17では、横軸を共通の位相ωtとして、上から順に、1周期分の人工磁場Ax,Ay、及び、スピン偏極度Mxのグラフを示している。
図17に示すように、人工磁場Ax,Ayは、ともに二値(0,A0)を取る。そして、スピン偏極度Mxは、人工磁場Ax,Ayの組み合わせに応じた四値(Mx1〜Mx4)をとる。つまり、交番磁場f(ωt)の1周期期間において、数式17を用いた原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)の算出に必要な、人工磁場Ax,Ayと、スピン偏極度Mxとの組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3個以上の組み合わせを取得することができる。
具体的には、人工磁場Ax=0、Ay=0、である第一期間τ1において、磁気センサー10に印加される磁場Bの数式14は、次の数式26となる。
Figure 2016109665
そして、スピン偏極度Mxの数式17は、次の数式27となる。
Figure 2016109665
また、人工磁場Ax=A0、である第二期間τ2において、磁気センサー10に印加される磁場Bの数式14は、次の数式28となる。
Figure 2016109665
そして、スピン偏極度Mxの数式17は、次の数式29となる。
Figure 2016109665
また、人工磁場Ax=0、Ay=A0、である第三期間τ3において、磁気センサー10に印加される磁場Bの数式14は、次の数式30となる。
Figure 2016109665
そして、スピン偏極度Mxの数式17は、次の数式31となる。
Figure 2016109665
また、人工磁場Ax=Ay=A0、である第四期間τ4において、磁気センサー10に印加される磁場Bの数式14は、次の数式32となる。
Figure 2016109665
そして、スピン偏極度Mxの数式17は、次の数式33となる。
Figure 2016109665
第一期間τ1に磁場計測装置1から得られた磁化値(Mx1)を、数式27の左辺に代入して第1の方程式を得る。第二期間τ2に磁場計測装置1から得られた磁化値(Mx2)を、数式29の左辺に代入して第2の方程式を得る。第三期間τ3に磁場計測装置1から得られた磁化値(Mx3)を、数式31の左辺に代入して第3の方程式を得る。第四期間τ4に磁場計測装置1から得られた磁化値(Mx4)を、数式33の左辺に代入して第4の方程式を得る。そして、これら4つの方程式を連立させて、未知数である原磁場ベクトルC(Cx,Cy,Cz)を算出する。
[第5実施例]
第5実施例は、測定対象物が置かれていない状態の計測領域5を上述の実施例のようにゼロ磁場とするのではなく、計測領域5に所定の磁場を作る場合の実施例である。測定対象物が置かれていない状態の計測領域5に作りたい磁場を、ターゲット磁場と称する。ターゲット磁場をゼロ磁場ではなく所定の磁場としたい場合は、図13に示すステップS03にて磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)と、そのときの人工磁場Ax,Ayの値との組み合わせを取得した後、以下の処理を行う。
第一工程として、取得した計測値(二乗差W-)と、人工磁場Ax,Ayとの組み合わせを用いて、計測領域5の磁場を、原磁場Cとして算出する(ステップS04に相当)。続いて、第二工程として、測定対象物(被検体9)を計測領域5に配置する(ステップS06に相当)。なお、第5実施例では、ターゲット磁場をゼロ磁場ではなく所定の磁場とするため、算出された原磁場Cを打ち消すようなバイアス磁場Bbを計測領域5に印加すること(ステップS05及びステップS07)は行わない。
続いて、第三工程として、計測領域5に形成したい所定の磁場であるターゲット磁場と原磁場Cとの差分の磁場を、第1磁場発生器8Xと第2磁場発生器8Yと第3磁場発生器8Zとに発生させる(ステップS07に相当)。これにより、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)により印加される人工磁場Aと原磁場Cとが合成され、計測領域5にターゲット磁場として所定の磁場を作ることができる。なお、第二工程と第三工程との順番が入れ替わってもよい。
そして、第四工程として、第三工程を行っており第二工程が終了している期間に磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)を用いて、測定対象物が発生した磁場Bを測定する(ステップS09に相当)。これにより、計測領域5を所定のターゲット磁場とした状態において、測定対象物が発生した磁場Bを測定することができる。
なお、第5実施例において、外部から計測領域5に漏れ入っている原磁場Cを相殺すべく、ターゲット磁場をゼロ磁場とすれば、測定対象物が発生する磁場B(厳密には、磁場のZ方向の成分)を正確に計測することができる。
[第6実施例]
第6実施例は、第5実施例に対して、計測領域5にターゲット磁場として所定の三次元ベクトルの磁場を作る場合の実施例である。第6実施例において、第一工程及び第二工程は、第5実施例と同様である。
第三工程として、計測領域5に形成した所定の磁場であるターゲット磁場と原磁場C(Cx,Cy,Cz)との差分の磁場のX方向の成分を第1交番磁場に加えた第3交番磁場を第1磁場発生器8Xに発生させ、差分の磁場のY方向の成分を第2交番磁場に加えた第4交番磁場を第2磁場発生器8Yに発生させ、差分の磁場のZ方向の成分の磁場を第3磁場発生器8Zに発生させる(ステップS07に相当)。これにより、磁場発生器8(8X,8Y,8Z)により印加される人工磁場A(Ax,Ay,Az)と原磁場C(Cx,Cy,Cz)とが合成され、計測領域5にターゲット磁場として所定の三次元ベクトルの磁場を作ることができる。なお、第二工程と第三工程との順番が入れ替わってもよい。
そして、第四工程として、第三工程を行っており第二工程が終了している期間に磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)と第3交番磁場と第4交番磁場とを用いて、測定対象物が発生した磁場B(Bx,By,Bz)を測定する(ステップS09に相当)。これにより、計測領域5を所定の三次元ベクトルのターゲット磁場とした状態において、測定対象物が発生した磁場Bを測定することができる。
なお、第6実施例において、外部から計測領域5に漏れ入っている原磁場C(Cx,Cy,Cz)を相殺すべく、ターゲット磁場をゼロ磁場とすれば、測定対象物が発生する磁場Bをベクトル量として正確に計測することができる。
[作用効果]
このように、本実施形態の磁場計測装置1によれば、アルカリ金属原子等の気体(ガス)が封入されたガスセル12に対して、一方向(Z軸方向)の照射光(プローブ光)の照射によって、計測領域の磁場ベクトル(Cx,Cy,Cz)を算出することができる。
具体的には、照射光(プローブ光)の照射方向(Z軸方向)に直交するX軸方向及びY軸方向それぞれに同一周期であり、且つ、位相が異なる交番磁場f(ωt)である人工磁場A(Ax,Ay,Az)を印加する。そして、人工磁場AのX軸方向成分Ax、Y軸方向成分Ayの値と、磁気センサー10から出力される信号に基づいて得られる計測値(二乗差W-)に相当するスピン偏極度Mxとの組み合わせであって、スピン偏極度Mxが異なる3以上の組み合わせを取得する。そして、これらの組み合わせ、及び、スピン偏極度Mxと、磁場Cの各成分Cx,Cy,Czと、人工磁場Ax,Ayであるf(ωt)との関係式である数式17を用いて、磁場C(Cx,Cy,Cz)を算出する。
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
(A)バイアス磁場Bb
上述の実施形態では、原磁場Cを打ち消すようなバイアス磁場Bbを磁場発生器8に発生させて、測定対象物が発生する磁場B(Bx,By,Bz)を測定することとしたが、バイアス磁場Bbを発生させずに測定を行うこととしてもよい。具体的には、先ず上述の実施形態と同様に、予め、測定対象物が無い状態で原磁場Cxを計測する。その後、測定対象物を磁気センサー10に接近させて当該測定対象物の発生する磁場を計測するが、そのとき、磁場発生器8に人工磁場Aのみを発生させる。この場合、計測領域に印加される磁場は、原磁場Cと、測定対象物の磁場Bと、磁場発生器8による人工磁場Aとの合成磁場となる。従って、このときに数式17を用いて算出した磁場Cxから、予め測定した原磁場Cxを差し引いた磁場が、測定対象物が発生する磁場Bとなる。
(B)測定対象物
また、上述の実施形態では、測定対象物を人体とし、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)を計測することとしたが、測定対象物はこれ以外でもよい。そして、測定対象物によっては、上述の実施形態のように磁気センサー10に測定対象物を接近させるのではなく、磁気センサー10を測定対象物に接近させて、当該測定対象物が発生する磁場を計測するようにすることも可能である。
1…磁場計測装置、5…計測領域、8…磁場発生器、8X…第1磁場発生器(ヘルムホルツコイル)、8Y…第2磁場発生器(ヘルムホルツコイル)、8Z…第3磁場発生器(ヘルムホルツコイル)、9…被検体(測定対象物)、10…磁気センサー、12…ガスセル(媒体)、14,15…光検出器、18…光源、30…演算制御部。

Claims (11)

  1. 第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、
    光を射出する光源と、
    前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、
    前記光学特性を検出する光検出器と、
    前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、
    前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、
    前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、
    前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、
    前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を算出することと、
    を含む磁場計測方法。
  2. 前記計測領域の磁場を算出することは、前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とを発生させた際の前記媒体の磁化ベクトルの前記第1方向の成分を示す磁化値、又は前記磁化値に対応する値、を前記光検出器の検出結果に基づいて算出することを含む、
    請求項1に記載の磁場計測方法。
  3. 前記計測領域の磁場を算出することは、前記第1交番磁場と前記
    第2交番磁場との組み合わせを3個以上異ならせていることを含む、
    請求項2に記載の磁場計測方法。
  4. 前記計測領域の磁場を算出することは、前記組み合わせのそれぞれに以下の数式1を適応させることである、請求項3に記載の磁場計測方法。
    Figure 2016109665
    ただし、前記計測領域の磁場はC=(Cx,Cy,Cz)であり、x,y,zはそれぞれ前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向の空間座標であり、Mxは前記磁化値であり、a,cは定数であり、A10f(ωt)は前記第1交番磁場であり、A20f(ωt+δ)は前記第2交番磁場であり、δは前記位相差であり、ωは前記第1交番磁場と前記第2交番磁場との角振動数であり、tは時間である。
  5. 前記位相差はπ/2である、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の磁場計測方法。
  6. 前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは三角関数波である、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の磁場計測方法。
  7. 前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは三角波である、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の磁場計測方法。
  8. 前記第1交番磁場と前記第2交番磁場とは矩形波である、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の磁場計測方法。
  9. 第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、
    光を射出する光源と、
    前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、
    前記光学特性を検出する光検出器と、
    前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、
    前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、
    前記第3方向の磁場を前記媒体に印加する第3磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、
    前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、
    前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、
    前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を原磁場として算出する第一工程と、
    前記計測領域に測定対象物を配置する第二工程と、
    前記計測領域に形成したい磁場であるターゲット磁場と前記原磁場との差分の磁場を、前記第1磁場発生器と前記第2磁場発生器と前記第3磁場発生器とに発生させる第三工程と、
    前記第三工程を行っており前記第二工程が終了している期間に前記光検出器の検出結果を用いて、前記測定対象物が発生した磁場を測定する第四工程と、
    を含む磁場計測方法。
  10. 第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、
    光を射出する光源と、
    前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、
    前記光学特性を検出する光検出器と、
    前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、
    前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、
    前記第3方向の磁場を前記媒体に印加する第3磁場発生器と、を備えた磁場計測装置が、前記計測領域の磁場を計測するための磁場計測方法であって、
    前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、
    前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、
    前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を原磁場として算出する第一工程と、
    前記計測領域に測定対象物を配置する第二工程と、
    前記計測領域に形成したい磁場であるターゲット磁場と前記原磁場との差分の磁場の第1方向の成分を前記第1交番磁場に加えた第3交番磁場を前記第1磁場発生器に発生させ、前記差分の磁場の第2方向の成分を前記第2交番磁場に加えた第4交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させ、前記差分の磁場の第3方向の成分の磁場を前記第3磁場発生器に発生させる第三工程と、
    前記第三工程を行っており前記第二工程が終了している期間に前記光検出器の検出結果と前記第3交番磁場と前記第4交番磁場とを用いて、前記測定対象物が発生した磁場を測定する第四工程と、
    を含む磁場計測方法。
  11. 第1方向と第2方向と第3方向とは互いに直交し、
    光を射出する光源と、
    前記光が前記第3方向に沿って通過し、計測領域の磁場に応じて光学特性を変化させる媒体と、
    前記光学特性を検出する光検出器と、
    前記第1方向の磁場を前記媒体に印加する第1磁場発生器と、
    前記第2方向の磁場を前記媒体に印加する第2磁場発生器と、
    前記第1磁場発生器に第1交番磁場を発生させることと、前記第1交番磁場と同一周期であり、且つ、前記第1交番磁場との位相差がδである第2交番磁場を前記第2磁場発生器に発生させることと、前記光検出器の検出結果、前記第1交番磁場、及び、前記第2交番磁場を用いて、前記計測領域の磁場を算出することと、を実行する演算制御部と、
    を備えた磁場計測装置。
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