JP2016108617A - アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線、ワイヤーハーネス、並びにアルミニウム合金線材およびアルミニウム合金撚線の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線、ワイヤーハーネス、並びにアルミニウム合金線材およびアルミニウム合金撚線の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い引張強度及び導電率を確保しつつ、屈曲疲労特性が従来より高い電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金線材の提供。【解決手段】Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.01〜1.40質量%、Ti:0.000〜0.100質量%、B:0.000〜0.030質量%、Cu:0.00〜1.00質量%、Ag:0.00〜0.50質量%、Au:0.00〜0.50質量%、Mn:0.00〜1.00質量%、Cr:0.00〜1.00質量%、Zr:0.00〜0.50質量%、Hf:0.00〜0.50質量%、V:0.00〜0.50質量%、Sc:0.00〜0.50質量%、Co:0.00〜0.50質量%、Ni:0.00〜0.50質量%、残部:Al及び不可避不純物からなり、外周部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数が内部の析出物の数より多いアルミニウム合金線材1。【選択図】図2

Description

本発明は、電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線、ワイヤーハーネス並びにアルミニウム合金線材の製造方法およびアルミニウム合金線材の測定方法に関し、特に、素線径が0.5mm以下である極細線として使用した場合であっても、高い柔軟性と導電率を確保しつつ、屈曲疲労特性の高いアルミニウム合金線材に関するものである。
従来、自動車、電車、航空機等の移動体の電気配線体、または産業用ロボットの電気配線体として、銅又は銅合金の導体を含む電線に、銅又は銅合金(例えば、黄銅)製の端子(コネクタ)を装着した、いわゆるワイヤーハーネスと呼ばれる部材が用いられてきた。昨今では、自動車の高性能化や高機能化が急速に進められており、これに伴い、車載される各種の電気機器、制御機器などの配設数が増加するとともに、これら機器に使用される電気配線体の配設数も増加する傾向にある。また、その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上させるため、移動体の軽量化が強く望まれている。
こうした移動体の軽量化を達成するための手段の一つとして、例えば電気配線体の導体を、従来から用いられている銅又は銅合金に代えて、より軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金にする検討が進められている。アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、アルミニウムの導体線材に、銅の導体線材と同じ電流を流すためには、アルミニウムの導体線材の断面積を、銅の導体線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウムの導体線材を用いたとしても、アルミニウムの導体線材の質量は、純銅の導体線材の質量の半分程度であることから、アルミニウムの導体線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。なお、上記の%IACSとは、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
しかし、送電線用アルミニウム合金線材(JIS規格によるA1060やA1070)を代表とする純アルミニウム線材では、一般に引張強度、耐衝撃性、屈曲疲労特性などが劣ることが知られている。そのため、例えば、車体への取付け作業時に作業者や産業機器などによって不意に負荷される荷重や、電線と端子の接続部における圧着部での引張や、ドア部などの屈曲部で負荷される屈曲疲労などに耐えることができない。また、種々の添加元素を加えて合金化した材料は引張強度、屈曲疲労性を高めることは可能であるものの、アルミニウム中への添加元素の固溶現象により導電率の低下を招くこと、硬質化によりワイヤーハーネス取付け時に取り回し性が低下し生産性が低下する問題があった。そのため、導電率を低下させない範囲内で添加元素を限定ないし選択し、さらに屈曲疲労性と柔軟性を両立させる必要があった。
また、高強度アルミニウム合金線材としては、例えばMgとSiを含有するアルミニウム合金線材が知られており、このアルミニウム合金線材の代表例としては、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系合金)線材が挙げられる。6000系アルミニウム合金線材は、一般に、溶体化処理及び時効処理を施すことにより高強度化を図ることができる。しかしながら、6000系アルミニウム合金線材を用いて線径0.5mm以下といった極細線を製造する場合、溶体化処理及び時効処理を施すことで高導電率と高屈曲疲労特性を達成できるものの、耐力(0.2%耐力)が上昇し、塑性変形に大きな力が必要となり、車体への取付け作業効率が低下する傾向にあった。
移動体の電気配線体に用いられる従来の6000系アルミニウム合金線としては、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1は、発明者らが研究開発した結果をもとに特許出願したものであり、線材外周部と内部での平均結晶粒径の大きさを規定したものであり、従来品と同等以上の伸び性および導電率を維持しつつ、適切な耐力と高い耐屈曲疲労特性を両立したものである。
特許第5607853号公報
しかしながら、アルミニウム合金線材の用途によっては、屈曲疲労特性のさらなる向上が求められる可能性があり、さらなる技術改良が求められている。
また、特許文献1と同等の特性を有するアルミニウム合金線材であっても、製造工程時間の短縮による量産性の確保を図ることのできる技術改良が求められている。
本発明の目的は、素線径が0.5mm以下である極細線として使用した場合であっても、高い引張強度及び高い導電率を確保しつつ、屈曲疲労特性が従来よりも高く、0.2%耐力が適度に低く、さらに量産性に優れた電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線、ワイヤーハーネスを提供すること、並びにアルミニウム合金線材およびアルミニウム合金撚線の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、これまで研究を重ねた高強度、高導電率が得られる析出型のAl−Mg−Si合金を用いて、添加成分と製造プロセスが合金組織に与える影響を明らかにし、線材外周部に優先的にMgSi化合物を析出することに成功した。この研究結果に基づき、アルミニウム合金線材が屈曲変形した際、最も大きな応力が負荷される外周部でMgSi化合物を優先的に且つ短時間で析出させ、当該外周部を強化することで、屈曲疲労特性が従来よりも向上し、線材内部では0.2%耐力を適度に低い状態に保つことができ、更には高い引張強度及び高い導電率を併せ持つアルミニウム合金線材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.01〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Co:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなり、
外周部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Noutが、内部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Ninより多いことを特徴とする、アルミニウム合金線材。
(2)外周部のビッカース硬さが60〜130Hv、内部のビッカース硬さが50〜120Hvであり、かつ内部のビッカース硬さに対する外周部のビッカース硬さの比が1.0より大きい、上記(1)記載のアルミニウム合金線材。
(3)前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%およびB:0.001〜0.030質量%からなる群から選択された1種または2種を含有する、上記(1)記載のアルミニウム合金線材。
(4)前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%、Hf:0.01〜0.50質量%、V:0.01〜0.50質量%、Sc:0.01〜0.50質量%、Co:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%からなる群から選択された1種または2種以上を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金線材。
(5)前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のアルミニウム合金線材。
(6)Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、Co、Niの含有量の合計が0.01〜2.00質量%である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアルミニウム合金線材。
(7)素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアルミニウム合金線材。
(8)Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.01〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Co:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金線材を複数本撚り合わせて構成されるアルミニウム合金撚線であって、
外周部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Noutが、内部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Ninより多いことを特徴とする、アルミニウム合金撚線。
(9)上記(1)記載のアルミニウム合金線材または上記(8)記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
(10)上記(9)記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
(11)溶解、鋳造後に、熱間加工を経て荒引線を形成し、その後、少なくとも伸線加工、溶体化熱処理、歪み導入処理および時効熱処理の各工程を行うアルミニウム合金線材の製造方法であって、
前記溶体化熱処理は、450〜580℃の範囲内の所定温度まで加熱し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、
前記歪み導入処理は、前記溶体化熱処理後且つ前記時効熱処理前に、線材の外周部に歪みを導入し、
前記時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度で加熱することを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
(12)前記歪み導入処理は、前記線材に曲げ加工を施すことにより線材の外周部に歪みを導入する、(11)記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
(13)前記歪み導入処理は、1パス当たりの加工率が10%以下である引抜加工を1回又は複数回施し、合計加工率10%以下で線材の外周部に歪みを導入する、上記(11)記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
(14)溶解、鋳造後に、熱間加工を経て荒引線を形成し、その後、少なくとも伸線加工、溶体化熱処理、歪み導入処理および時効熱処理の各工程を順次行い、更に線材の撚線加工を、前記伸線加工後であって前記時効熱処理の前に行うアルミニウム合金撚線の製造方法であって、
前記溶体化熱処理は、450〜580℃の範囲内の所定温度まで加熱し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、前記歪み導入処理は、前記伸線加工後且つ前記時効熱処理前に、線材又は撚線の外周部に歪みを導入し、
前記時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度まで加熱することを特徴とする、上記(8)記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
(15)前記歪み導入処理は、前記線材に曲げ加工を施すことにより前記線材又は撚線の外周部に歪みを導入する、上記(14)記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
(16)前記歪み導入処理は、1パス当たりの加工率が10%以下である引抜加工を1回又は複数回行い、合計加工率10%以下で前記線材又は撚線の外周部に歪みを導入する、上記(14)記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
なお、上記化学組成に含有範囲が挙げられている元素のうち、含有範囲の下限値が「0質量%」と記載されている元素はいずれも、必要に応じて任意に添加される選択添加元素を意味する。すなわち所定の添加元素が「0質量%」の場合、その添加元素が含まれないことを意味する。
本発明のアルミニウム合金線材は、細径線に利用できるよう高強度化されており、柔軟で取り扱いが容易、かつ軽量で屈曲疲労特性も高いため、移動体に搭載されるバッテリーケーブル、ハーネスあるいはモータ用導線、産業用ロボットの配線体として有用である。また、本発明の製造方法によれば、優れた屈曲疲労特性を有するアルミニウム合金線材を短時間で製造することができ、量産性に優れる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金線材の外周部に歪みを導入する方法を説明する図であり、(a)及び(b)は第1の歪み導入処理、(c)は第2の歪み形成処理を示す。 本発明の実施形態に係るアルミニウム合金線材及びアルミニウム合金撚線の外周部及び内部を説明する断面図であり、(a)はアルミニウム合金線材、(b)はアルミニウム合金撚線を示す。 (a)〜(c)は、図2(a)のアルミニウム合金線材における外周部及び内部のビッカース硬さを測定する方法を説明する図である。 図2(b)のアルミニウム合金線材における外周部及び内部のビッカース硬さを測定する方法を説明する図である。
以下に、本発明の化学組成等の限定理由を示す。
(1)化学組成
<Mg:0.10〜1.00質量%>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はSiと一緒にβ”相(ベータダブルプライム相)などとして析出し引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる作用を持つ。また、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターを形成した場合は引張強度、伸びを向上させる作用を有する元素である。しかしながら、Mg含有量が0.10質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Mg含有量が1.00質量%を超えると、結晶粒界にMg濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度、伸びが低下するとともに、耐力が高くなり取り回し性が低下する。また、Mg元素の固溶量が多くなることによって導電率も低下する。したがって、Mg含有量は0.10〜1.00質量%とする。なお、Mg含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.00質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.10〜0.50質量%とすることが好ましく、このような観点から総合的に0.30〜0.70質量%が好ましい。
<Si:0.10〜1.20質量%>
Si(ケイ素)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はMgと一緒にβ”相などとして析出し引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる作用を持つ。またSiは、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターや、Si−Siクラスターを形成した場合に引張強度、伸びを向上させる作用を有する元素である。Si含有量が0.10質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Si含有量が1.00質量%を超えると、結晶粒界にSi濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度、伸びが低下するとともに耐力が高くなり取り回し性が低下する。また、Si元素の固溶量が多くなることによって導電率も低下する。したがって、Si含有量は0.10〜1.20質量%とする。なお、Si含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.00質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.10〜0.50質量%とすることが好ましく、このような観点から総合的に0.30〜0.70質量%が好ましい。
<Fe:0.01〜1.40質量%>
Fe(鉄)は、主にAl−Fe系の金属間化合物を形成することによって結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度を向上させる元素である。Feは、Al中に655℃で0.05質量%しか固溶できず、室温では更に少ないため、Al中に固溶できない残りのFeは、Al−Fe、Al−Fe−Si、Al−Fe−Si−Mgなどの金属間化合物として晶出又は析出する。この金属間化合物は、結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる。また、Feは、Al中に固溶したFeによっても引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる作用を有する。Fe含有量が0.01質量%未満だと、これらの作用効果が不十分であり、また、Fe含有量が1.40質量%超えだと、晶出物または析出物の粗大化により伸線加工性が低下すると共に、耐力が上昇し取り回し性が低下する。また、耐屈曲疲労特性と導電率も低下する。したがって、Fe含有量は0.01〜1.40質量%とし、好ましくは0.15〜0.70質量%、更に好ましくは0.15〜0.45質量%とする。
本発明のアルミニウム合金線材は、上述の通り、Mg、SiおよびFeを必須の含有成分とするが、必要に応じて、さらに、TiおよびBからなる群から選択された1種または2種、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiの1種または2種以上を含有させることができる。
<Ti:0.001〜0.100質量%>
Tiは、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生して工業的に望ましくない。Ti含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、Ti含有量が0.100質量%超えだと導電率が低下する傾向があるからである。したがって、Ti含有量は0.001〜0.100質量%とし、好ましくは0.005〜0.050質量%、より好ましくは0.005〜0.030質量%とする。
<B:0.001〜0.030質量%>
Bは、Tiと同様、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生しやすくなるため工業的に望ましくない。B含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、B含有量が0.030質量%超えだと導電率が低下する傾向がある。したがって、B含有量は0.001〜0.030質量%とし、好ましくは0.001〜0.020質量%、より好ましくは0.001〜0.010質量%とする。
<Cu:0.01〜1.00質量%>、<Ag:0.01〜0.50質量%>、<Au:0.01〜0.50質量%>、<Mn:0.01〜1.00質量%>、<Cr:0.01〜1.00質量%>および<Zr:0.01〜0.50質量%>、<Hf:0.01〜0.50質量%>、<V:0.01〜0.50質量%>、<Sc:0.01〜0.50質量%>、<Co:0.01〜0.50質量%><Ni:0.01〜0.50質量%>の1種または2種以上を含有させること
Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiは、いずれも結晶粒を微細化する作用と異常な粗大成長粒の生成を抑制する元素であり、さらに、Cu、AgおよびAuは、粒界に析出することで粒界強度を高める作用も有する元素であって、これらの元素の少なくとも1種を0.01質量%以上含有していれば、上述した作用効果が得られ、引張強度、及び伸びを向上させることができる。一方、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiの含有量のいずれかが、それぞれ上記の上限値を超えると、該元素を含有する化合物が粗大になり、伸線加工性を劣化させるため、断線が生じやすく、また、導電率が低下する傾向がある。したがって、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiの含有量の範囲は、それぞれ上記の範囲とした。なお、この元素群の中で、特にNiを含有するのが好ましい。Niを含有すると、結晶粒微細化効果と異常粒成長抑制効果が顕著になり引張強度と伸びが向上する。また、導電率の低下と伸線加工中の断線をより抑制しやすくなる。この効果が顕著になるので、Niの含有量は0.05〜0.3質量%であるのが更に好ましい。
また、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiは、多く含有するほど導電率が低下する傾向と伸線加工性が劣化する傾向、耐力上昇による取り回し性が低下する傾向がある。従って、これらの元素の含有量の合計は、2.00質量%以下とするのが好ましい。本発明のアルミニウム合金線材ではFeは必須元素なので、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiの含有量の合計は0.01〜2.00質量%とする。これらの元素の含有量は、0.10〜2.00質量%とするのが更に好ましい。ただし、これらの元素を単独で添加する場合は、含有量が多いほど該元素を含有する化合物が粗大になる傾向にあり、伸線加工性を劣化させ、断線が生じやすくなることから、それぞれの元素において上記の規定の含有範囲とした。
なお、高導電率を保ちつつ、耐力値を適度に低下させるには、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiの含有量の合計は、0.01〜0.80質量%が特に好ましく、0.05〜0.60質量%が更に好ましい。一方で、導電率はやや低下するが更に引張強度、伸び、引張強度に対する耐力値を適度に低下させるためには、0.80超〜2.00質量%が特に好ましく、1.00〜2.00質量%が更に好ましい。
<残部:Alおよび不可避不純物>
上述した成分以外の残部はAl(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を加味して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、Ga、Zn、Bi、Pbなどが挙げられる。
このようなアルミニウム合金線材は、合金組成や製造プロセスを組み合わせて制御することにより実現できる。以下、本発明のアルミニウム合金線材の好適な製造方法について説明する。
(2)本発明のアルミニウム合金線材の製造方法
本発明のアルミニウム合金線材は、[1]溶解、[2]鋳造、[3]熱間加工(溝ロール加工など)、[4]第1伸線加工、[5]第1熱処理(中間熱処理)、[6]第2伸線加工、[7]第2熱処理(溶体化熱処理)、[8]外周部歪導入処理、および[9]第3熱処理(時効熱処理)の各工程を順次行うことを含む製造方法によって製造することができる。なお、第2熱処理前後、または時効熱処理の後に、撚線とする工程や電線に樹脂被覆を行う工程を設けてもよい。以下、[1]〜[9]の工程について説明する。
[1]溶解
溶解は、上述したアルミニウム合金組成になるように各成分の分量を調整して溶製する。
[2]鋳造および[3]熱間加工(溝ロール加工など)
次いで、鋳造輪とベルトを組み合わせたプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で鋳造し、連続して圧延を行い、例えば直径5〜13mmφの適宜の太さの棒材とする。このときの鋳造時の冷却速度は、Fe系晶出物の粗大化の防止とFeの強制固溶による導電率低下の防止の観点から、好ましくは1〜20℃/sであるが、これに制限されるものではない。鋳造及び熱間圧延は、ビレット鋳造及び押出法などにより行ってもよい。
[4]第1伸線加工
次いで、表面の皮むきを実施して、例えば直径5〜12.5mmφの適宜の太さの棒材とし、これを冷間で伸線加工する。加工度ηは、1〜6の範囲であることが好ましい。ここで加工度ηは、伸線加工前の線材断面積をA、伸線加工後の線材断面積をAとすると、η=ln(A/A)で表される。加工度ηが1未満だと、次工程の熱処理時、再結晶粒が粗大化し、引張強度及び伸びが著しく低下し、断線の原因になるおそれがある。また、加工度ηが6よりも大きいと、伸線加工が困難となり、伸線加工中に断線するなど品質の面で問題を生ずるおそれがあるからである。表面の皮むきは、行うことによって表面の清浄化がなされるが、行わなくてもよい。
[5]第1熱処理(中間熱処理)
次に、冷間伸線した被加工材に第1熱処理を施す。本発明の第1熱処理は、被加工材の柔軟性を取り戻し、伸線加工性を高めるために行うものである。伸線加工性が十分であり、断線が生じなければ第1熱処理は行わなくても良い。
[6]第2伸線加工
上記第1熱処理の後、さらに冷間で伸線加工を施す。この際の加工度ηは1〜6の範囲が好ましい。加工度ηは、再結晶粒の形成及び成長に影響を及ぼす。加工度ηが1よりも小さいと、次工程の熱処理時、再結晶粒が粗大化し、引張強度及び伸びが著しく低下する傾向があり、また、加工度ηが6よりも大きいと、伸線加工が困難となり、伸線加工中に断線するなど品質の面で問題を生ずる傾向があるからである。なお、第1熱処理を行わない場合、第1伸線加工と第2伸線加工は連続で行ってもよい。
[7]第2熱処理(溶体化熱処理)
伸線加工した加工材に第2熱処理を施す。本発明の第2熱処理は、ランダムに含有されているMgとSiの化合物をアルミニウム母相中に溶け込ませるために行う溶体化熱処理である。溶体化処理は、加工中にMgやSiの濃化部分をならす(均質化する)ことができ、最終的な時効熱処理後でのMgとSiの化合物の粒界偏析の抑制につながる。第2熱処理は、具体的には、450〜580℃の範囲内の所定温度まで加熱し、所定の時間保持後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却する熱処理である。第2熱処理の加熱時の所定温度が580℃よりも高いと、結晶粒径が粗大化し、異常成長粒が生成し、同所定温度が450℃よりも低いと、MgSiを十分に固溶させることができない。したがって、第2熱処理における加熱時の所定温度は、Mg、Si含有量によっても変化するが450〜580℃、好ましくは480〜520℃の範囲とする。
第2熱処理を行う方法としては、例えば、バッチ焼鈍、ソルトバス(塩浴)でも、高周波加熱、通電加熱、走間加熱などの連続熱処理でも良い。
ただし、高周波加熱や通電加熱を用いた場合、通常は線材に電流を流し続ける構造になっているため、時間の経過と共に線材温度が上昇する。そのため、電流を流し続けると線材が溶融してしまう可能性があるので、適正な時間範囲にて熱処理を行う必要がある。走間加熱を用いた場合においても、短時間の焼鈍であるため、通常、走間焼鈍炉の温度は線材温度より高く設定される。長時間の熱処理では線材が溶融してしまう可能性があるため、適正な時間範囲にて熱処理を行う必要がある。また、すべての熱処理において被加工材にランダムに含有されているMg、Si化合物をアルミ母相中に溶け込ませる所定の時間以上が必要である。以下、各方法による熱処理を説明する。
高周波加熱による連続熱処理は、高周波による磁場中を線材が連続的に通過することで、誘導電流によって線材自体から発生するジュール熱により熱処理するものである。急熱、急冷の工程を含み、線材温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は0.01〜2s、好ましくは0.05〜1s、より好ましくは0.05〜0.5sで行う。
連続通電熱処理は、2つの電極輪を連続的に通過する線材に電流を流すことによって線材自体から発生するジュール熱により熱処理するものである。急熱、急冷の工程を含み、線材温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中、大気中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は0.01〜2s、好ましくは0.05〜1s、より好ましくは0.05〜0.5sで行う。
連続走間熱処理は、高温に保持した熱処理炉中を線材が連続的に通過して熱処理させるものである。急熱、急冷の工程を含み、熱処理炉内温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中、大気中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は好ましくは0.5〜30sで行う。
線材温度又は熱処理時間の一方又は両方が上記で定義される条件より低い場合は、溶体化が不完全になり後工程の時効熱処理時に生成する溶質原子クラスターやβ”相やMgSi析出物が少なくなり、引張強度、耐衝撃性、耐屈曲疲労特性、導電率の向上幅が小さくなる。線材温度又は焼鈍時間の一方又は両方が上記で規定される条件より高い場合は、結晶粒が粗大化すると共に、アルミニウム合金線材中の化合物相の部分溶融(共晶融解)が起こり、引張強度、伸びが低下し、導体の取り扱い時に断線が起こりやすくなる。
[8]外周部歪み導入処理
溶体化処理を行った線材の外周部に歪み導入処理を施す。この歪み導入処理は、溶体化処理と時効熱処理との間に行う工程である。本処理は、線材の外周部に1〜10%のひずみを導入し、後述する時効処理時に、外周部でのMg,Si化合物又は溶質原子クラスターの析出を促進することを目的として行われる。外周部の歪み量が1%未満であると高い屈曲疲労特性を得ることができず、10%を超えると0.2%耐力が過剰となる。
この外周部歪み導入は、例えば図1(a)及び(b)に示すように、治具10の外表面10aにアルミニウム合金線材1を押し付けて曲げ加工を施すことによって実施することができる。具体的には、φ30mmの丸棒型治具を用いた曲げ加工では1%のひずみが、φ3mmの丸棒型治具を用いた曲げ加工では10%のひずみがそれぞれ外周部に導入される。ひずみεは次式(1)のように、変形後の長さlと変形前の長さl0での差を変形前の長さlで割ったものに100を掛けたものである。
ε=(l−l)/l*100 ・・・(1)
また、図1(c)に示すように、ダイス20の孔20aにアルミニウム合金線材1’を通すことによっても、外周部歪み導入を実施することができる。具体的には、1パス当たりの加工率10%以下のダイスを用いて1回または複数回の引抜加工を行い、合計加工率10%以下で、外周部に優先的にひずみを導入する。
[9]第3熱処理(時効熱処理)
次いで、第3熱処理を施す。この第3熱処理は、Mg,Si化合物または、溶質原子クラスターを生成させるために行う時効熱処理である。時効熱処理は、20〜250℃の範囲の所定温度で加熱することが好ましい。時効熱処理における加熱温度が20℃未満であると、溶質原子クラスターの生成が遅く必要な引張強度と伸びを得るために時間が掛かるため量産的に不利である。また、上記加熱温度が250℃よりも高いと、強度に最も寄与するMgSi針状析出物(β”相)の他に、粗大なMgSi析出物が生成し強度が低下する。時効熱処理における加熱温度は、より伸びの向上に効果のある溶質原子クラスターを生成させるためには、20〜70℃がより好ましい。β”相も同時に析出させ、引張強度と0.2%耐力のバランスを取るには100〜150℃がより好ましい。
本実施形態では、上述の通り、第3熱処理(時効熱処理)を施す前に、外周部に歪み導入処理を施すので、本時効熱処理時に、外周部におけるMg,Si化合物及び/又は溶質原子クラスターの析出が促進され、析出物の所望の析出量を確保するまでの時効時間を大幅に短縮することができる。
本実施形態のアルミニウム合金線材は、素線径を、特に制限はなく用途に応じて適宜定めることができるが、細径線の場合は0.1〜0.5mmφ、中細径線の場合は0.8〜1.5mmφが好ましい。本実施形態のアルミニウム合金線材は、アルミニウム合金線として、単線で細くして使用できることが利点の一つであるが、複数本束ねて撚り合わせて得られるアルミニウム合金撚線、或いはアルミニウム合金圧縮撚線として使用することもできる。この場合、本発明の製造方法の上記[1]〜[9]の工程のうち、[1]〜[7]の各工程を順次行って得られたアルミニウム合金線材を複数本に束ねて撚り合わせてアルミニウム合金撚線或いはアルミニウム合金圧縮撚線を作製し、当該撚り合わせ工程の後に[8]外周部歪み導入工程を行い、その後[9]時効熱処理の工程を行ってもよい(中間焼鈍→伸線→溶体化→歪み導入→(撚線)→時効→(被覆))。また、上記[1]〜[9]の工程のうち、[1]〜[6]の各工程を順次行って得られたアルミニウム合金線材を複数本に束ねて撚り合わせてアルミニウム合金撚線或いはアルミニウム合金圧縮撚線を作製し、当該撚り合わせ工程の後に[7]溶体化処理を行い、その後[8]外周部歪み導入工程及び[9]時効熱処理の工程を順次行ってもよい(中間焼鈍→伸線→撚線→溶体化→歪み導入→時効→(被覆))。これらの製造方法により、アルミニウム撚線或いはアルミニウム合金圧縮合金撚り線にも歪みを導入することができる。
また、本実施形態では、さらに追加の工程として、連続鋳造圧延後に、従来法で行われているような均質化熱処理を行なうことも可能である。均質化熱処理は、添加元素を均一に分散させることができるため、晶出物やその後の第3熱処理にて溶質原子クラスターやβ”析出相を均一に生成しやすくなり、引張強度、耐屈曲疲労特性、伸びが安定して得られる。均質化熱処理は、加熱温度を450℃〜600℃にて行なうことが好ましく、より好ましくは500〜600℃である。また、均質化加熱処理における冷却においては、0.1〜10℃/分の平均冷却速度で徐冷することが、均一な化合物が得られやすくなる点で好ましい。
(3)本実施形態に係るアルミニウム合金線材及びアルミニウム合金撚線の組織的な特徴
上述のような製造方法によって製造された本実施形態のアルミニウム合金線材では、外周部での所定体積中に含まれるMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数をNout、内部での同体積中に含まれるMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数をNinとしたとき、外周部での析出物の数Noutが内部での析出物の数Minよりも多い点に特徴がある。例えば、内部での析出物の数Ninに対する外周部での析出物の数Moutが1よりも大きい。
ここで本発明では、上記「外周部」及び「内部」は図2(a)に示すような部分として定義される。すなわち、アルミニウム合金線材1の径方向断面の中心位置を中心Xとし、アルミニウム合金線材の半径2rの半分の長さrの半径を有する断面略円形の部分を内部1aとし、内部1aの半径方向外側に位置する断面略ドーナツ型の部分を外周部1b(グレースケール部)とする。
また、他の実施形態として、本発明をアルミニウム合金撚線、或いはアルミニウム合金圧縮撚線に適用することも可能である。例えば、図2(b)に示すように、アルミニウム合金圧縮撚線5は、中心部に位置する素線6がほぼ塑性変形せず、外周部に位置する素線7が塑性変形した圧縮撚線である。この場合にもアルミニウム合金線材1の場合と同様、アルミニウム合金圧縮撚線5の径方向断面の中心位置を中心Xとし、アルミニウム合金圧縮撚線の半径2rの半分の長さrの半径を有する断面略円形の部分を内部5aとし、内部5aの半径方向外側に位置する断面略ドーナツ型の部分を外周部5bとする。そして、外周部5bでの析出物の数Noutが、内部5aでの析出物の数Minよりも多い。
上記「析出物」とは、MgとSiの少なくともいずれか一方を含む化合物であればよく、代表的な化合物としてはMgSi、AiFeSi、AlFeMnSi、AlNiSiである。Mg−Siクラスターもこれらと同時に生成しているが、TEMでは明瞭な測定が困難なため、上記析出物の個数のカウントから除外する。
このような定義の元、本発明では、外周部におけるMg、Siからなる直径1μm以下の析出物の数Noutが、内部における析出物の数Ninより多い構成としている。線材が屈曲変形を受けた際には、内部よりも外周部に優先的に応力が集中することから、優先的に応力集中が生じる外周部に析出物を数多く存在させることで、屈曲疲労特性を改善することができる。
ここで特許文献1と同等の特性となる場合であっても、上述したとおり、本実施形態の構成を用いることにより、時効熱処理時の析出時間を従来よりも大幅に短縮することができる点でメリットがあり、特に量産車用のワイヤーハーネス作製時などに多量の線材を短期間で作製できる点で従来よりも格段に優れる。
(4)本実施形態のアルミニウム合金線材の特性
本実施形態のアルミニウム合金線材は、外周部のビッカース硬さが60〜130Hv、内部のビッカース硬さが50〜120Hv、かつ内部のビッカーズ硬さに対する外周部のビッカーズ硬さの比((外周部のビッカース硬さ)/(内部のビッカース硬さ))が1.0より大きい。これにより、後述する試験による破断までの屈曲回数が20万回以上となり、かつ0.2%耐力を250MPa以下とすることができる。
また、本実施形態のアルミニウム合金線材は、0.2%耐力、屈曲疲労特性、導電率及び引張強度がそれぞれ以下の範囲内となる特性を有している。
0.2%耐力は、ワイヤーハーネス取付け時の作業性を低下させないため、好ましくは250MPa以下、より好ましくは200MPa以下である。
屈曲疲労特性は、ドア部での繰り返し屈曲に耐え得るために、好ましくは20万回以上、より好ましくは40万回以上である。
導電率は、ジュール熱による発熱を防ぐため、好ましくは40%IACS以上である。また、導電率は、より好ましくは45%IACS以上、更に好ましくは50%IACS以上であり、この場合線材の更なる細径化が可能となる。
引張強度は、線材を細径化した場合でもワイヤーハーネス取付け時の引張応力で断線させないため、好ましくは200MPa以上である。また、引張強度は、より好ましくは250MPa以上であり、この場合線材の更なる細径化が可能となる。
本実施形態のアルミニウム合金線材は、アルミニウム合金線として、または複数本のアルミニウム合金線を撚り合わせて得られるアルミニウム合金撚線として使用することができるとともに、さらに、アルミニウム合金線またはアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線として使用することもでき、加えて、被覆電線と、この被覆電線の、被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス(組電線)として使用することも可能である。
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
<アルミニウム合金線材>
(実施例、比較例)
Mg、Si、Fe及びAlと、選択的に添加するTi、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiを、表1に示す含有量(質量%)になるようにプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で、表2に示す条件で連続的に鋳造しながら圧延を行い、φ9mmの棒材とした。次いで、これを所定の加工度が得られるように第1伸線加工を施した。次に、この第1伸線加工を施した加工材に、表2に示す条件で第1熱処理(中間熱処理)を施し、さらにφ0.3mmの線径まで所定の加工度が得られるように第2伸線加工を行った。次に、表1に示す条件で第2熱処理(溶体化熱処理)を施した。第1及び第2熱処理とも、バッチ式熱処理では、線材に熱電対を巻きつけて線材温度を測定した。連続通電熱処理では、線材の温度が最も高くなる部分での測定が設備上困難であるため、ファイバ型放射温度計(ジャパンセンサ社製)で線材の温度が最も高くなる部分よりも手前の位置にて温度を測定し、ジュール熱と放熱を考慮して最高到達温度を算出した。高周波加熱および連続走間熱処理では、熱処理区間出口付近の線材温度を測定した。第2熱処理後に、表2に示す条件で外周部に歪を導入した後、表2に示す条件で第3熱処理(時効熱処理)を施し、アルミニウム合金線を製造した。
作製された実施例および比較例のアルミニウム合金線について以下に示す方法により各特性を測定した。
(A)0.2%耐力及び引張強度の測定
JIS Z 2241に準じて各3本ずつの供試材(アルミニウム合金線)について引張試験を行い、その平均値を求めた。0.2%耐力はワイヤーハーネス取付け時の作業効率を低下させない250MPa以下を合格とし、引張強度は電線と端子の接続部における圧着部の引張強度を保つため、また、車体への取付け作業時に不意に負荷される荷重に耐えられるために、200MPa以上を合格レベルとした。
(B)導電率(EC)
長さ300mmの試験片を20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕中で、四端子法を用いて各3本ずつの供試材(アルミニウム合金線)について比抵抗を測定し、その平均導電率を算出した。端子間距離は200mmとした。導電率は、40%IACS以上を合格レベルとした。
(C)屈曲疲労特性の測定方法
耐屈曲疲労特性の基準として、常温におけるひずみ振幅は±0.17%とした。耐屈曲疲労特性はひずみ振幅によって変化する。ひずみ振幅が大きい場合、疲労寿命は短くなり、ひずみ振幅が小さい場合、疲労寿命は長くなる。ひずみ振幅は、線材の線径と曲げ冶具の曲率半径により決定することができるため、線材の線径と曲げ冶具の曲率半径は任意に設定して屈曲疲労試験を実施することが可能である。両振屈曲疲労試験機(藤井精機(現フジイ)社製、装置名「繰り返し曲げ試験機」)を用い、0.17%の曲げ歪みが与えられる治具を使用して、繰り返し曲げを実施することにより、破断までの繰返回数を測定した。本実施例では、破断までの繰返回数が20万回以上を合格とした。
(D)Mg,Si化合物からなる析出物の分散密度の測定方法
実施例及び比較例のアルミニウム合金線をFIB法にて薄膜にし、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された写真を基にEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、エネルギー分散型X線分光法)にて組成分析を行い、構成元素を同定し、Mg,Siの検出強度が母相に固溶したMg、Siの強度に対して10%以上であり、かつ1μm以下である化合物をカウント対象とした。化合物の分散密度は、40個以上をカウントできる範囲を設定して、化合物の分散密度(個/μm)=化合物の個数(個)/カウント対象範囲(μm)の式を用いて算出した。カウント対象範囲は場合によっては複数枚の写真を用いた。40個以上カウントできないほど化合物が少ない場合は、1μmを指定してその範囲の分散密度を算出した。
そして、カウント対象とした化合物の分散密度を外周部と内部で算出した。上記薄膜の試料厚さは、0.15μmを基準厚さとして算出した。試料厚さが基準厚さと異なる場合、試料厚さを基準厚さに換算して、つまり、(基準厚さ/試料厚さ)を撮影された写真を基に算出した面積率にかけることによって、面積率を算出できる。本実施例及び比較例では、FIB法によりすべての試料において試料厚さを約0.15μmに設定し作製した。
(E)ビッカース硬さの測定方法
JIS Z 2244:2009に準じて測定を行った。具体的には、図3(a)に示すように、上記の方法で作製された所定線径のアルミニウム合金線2を樹脂埋めし、その後、湿式研磨紙などを用いて円柱状の埋め込み樹脂30の下面30aを研磨して断面出しを行った(図3(b))。そして、ビッカース硬さ試験機(ミツトヨ社製、装置名「HM−125」)を用いて、試験力0.1〜1.0N、保持時間15秒にて測定した。測定箇所は、図3(c)に示すようにアルミニウム合金線2の断面において、一つの試料につき外周部2bで3点(図中の位置L1,L2,L3)、内部2aで1点(図中の位置L4)とした。十分なスペースが確保できない場合は、同等の試料を複数個用いて測定を行った。
(F)外周部に導入した歪み量の算出方法
外周部表面での長手方向の伸び量を、外周部に導入した歪み量と仮定して、当該ひずみ量を下記式にて算出した。
(ひずみ量)=(R+2r)/(R+r)×100−100
(但し、Rは曲げ半径、rはアルミニウム合金線の半径)
上記方法により測定した結果を表1に示す。なお、表1中、「A」は0.2%耐力が200MPa以下、屈曲疲労回数が40万回以上、導電率が45%IACS以上、引張強度250MPa以上である。また、「B」は0.2%耐力が250MPa以下、屈曲疲労回数が20万回以上、導電率が40%IACS以上、引張強度200MPa以上、である。また、「C」は、0.2%耐力が250MPa以上、屈曲疲労回数が20万回未満、導電率が40%IACS未満、及び引張強度200MPa未満のうち、少なくとも1つを満たした場合である。
Figure 2016108617
Figure 2016108617
表2の結果より、次のことが明らかである。実施例1〜4のアルミニウム合金線ではいずれも、引張強度及び導電率が高く、また、0.2%耐力が低く、屈曲疲労特性が従来よりも優れていた。
これに対し、比較例1では、外周部表面に歪みを加えておらず、外周部での析出物の数Noutが内部での析出物の数Minと同じであり、屈曲疲労回数が本発明の範囲外であった。また、比較例2では、外周部表面の歪み量が0.1%であるが、外周部での析出物の数Noutが内部での析出物の数Minと同じであり、屈曲疲労回数が本発明の範囲外であった。比較例3では、外周部表面の歪み量が20%であり、0.2%耐力が本発明の範囲外であった。
<アルミニウム合金撚線>
Mg、Si、Fe及びAlと、選択的に添加するTi、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、CoおよびNiを、表3に示す含有量(質量%)になるようにプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で、表4に示す条件で連続的に鋳造しながら圧延を行い、φ9mmの棒材とした。次いで、これを所定の加工度が得られるように第1伸線加工を施した。次に、この第1伸線加工を施した加工材に、表4に示す条件で第1熱処理(中間熱処理)を施し、さらにφ0.3mmの線径まで所定の加工度が得られるように第2伸線加工を行った。次に、7本撚りの撚り線工程後、撚線を圧縮して圧縮撚線を得た。表4に示す条件で第2熱処理(溶体化熱処理)を施し、第1及び第2熱処理とも、バッチ式熱処理では、線材に熱電対を巻きつけて線材温度を測定した。連続通電熱処理では、線材の温度が最も高くなる部分での測定が設備上困難であるため、ファイバ型放射温度計(ジャパンセンサ社製)で線材の温度が最も高くなる部分よりも手前の位置にて温度を測定し、ジュール熱と放熱を考慮して最高到達温度を算出した。高周波加熱および連続走間熱処理では、熱処理区間出口付近の線材温度を測定した。第2熱処理後に、表4に示す条件で外周部に歪を導入した後、表4に示す条件で第3熱処理(時効熱処理)を施し、アルミニウム合金線を製造した。
作製された実施例および比較例のアルミニウム合金圧縮撚線について、上記と同様の方法により各特性を測定した。なお、ビッカーズ硬さの測定方法については、測定箇所は、図4に示すようにアルミニウム合金圧縮撚線5の断面において、一つの試料につき外周部5bで3点(図中の位置L1,L2,L3)、内部5aで1点(図中の位置L4)とした。十分なスペースが確保できない場合は、同等の試料を複数個用いて測定を行った。結果を表4に示す。
Figure 2016108617
Figure 2016108617
表4の結果より、次のことが明らかである。実施例7〜9のアルミニウム合金圧縮撚線ではいずれも、引張強度及び導電率が高く、また、0.2%耐力が低く、屈曲疲労特性が従来よりも優れていた。
これに対し、比較例4では、Mg含有量が本発明の範囲外であり、外周部表面の歪み量が2%であり、外周部での析出物の数Noutが内部での析出物の数Minより多いものの、導電率が本発明の範囲外となった。また、比較例5では、Si含有量が本発明の範囲外であり、外周部表面の歪み量が2%であり、外周部での析出物の数Noutが内部での析出物の数Minより多いものの、導電率が本発明の範囲外となった。比較例6では、Si含有量が本発明の範囲外であり、外周部表面の歪み量が2%であるが、溶体化処理温度が本発明の範囲外であり、伸線中に断線した。
本発明のアルミニウム合金線材は、Mg、Siを含有するアルミニウム合金を用いることを前提とし、素線径が0.5mm以下である細径線として使用した場合であっても、高い引張強度及び高い導電率を確保しつつ、電線取り回し性を向上することが可能である。よって、移動体に搭載されるバッテリーケーブル、ワイヤーハーネスあるいはモータ用導線、産業用ロボットの配線体として有用である。さらに、本発明のアルミニウム合金線材は、屈曲疲労特性が高いことから従来の電線よりも電線径を細くすることも可能であり、また、このような特性を有する線材あるいは該線材を用いたワイヤーハーネスの製造工程時間を短縮することができ、量産性を向上させることができる点で、量産車などの部品として極めて有用である。
1 アルミニウム合金線材
1’アルミニウム合金線材
2 アルミニウム合金線
1a 内部
1b 外周部
5 アルミニウム合金圧縮撚線
6 素線
7 素線
5a 内部
5b 外周部
10 治具
10a 外表面
20 ダイス
20a 孔
30 埋め込み樹脂
30a 下面

Claims (16)

  1. Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.01〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Co:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなり、
    外周部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Noutが、内部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Ninより多いことを特徴とする、アルミニウム合金線材。
  2. 外周部のビッカース硬さが60〜130Hv、内部のビッカース硬さが50〜120Hvであり、かつ内部のビッカース硬さに対する外周部のビッカース硬さの比が1.0より大きい、請求項1記載のアルミニウム合金線材。
  3. 前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%およびB:0.001〜0.030質量%からなる群から選択された1種または2種を含有する、請求項1又は2記載のアルミニウム合金線材。
  4. 前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%、Hf:0.01〜0.50質量%、V:0.01〜0.50質量%、Sc:0.01〜0.50質量%、Co:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%からなる群から選択された1種または2種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  5. 前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  6. Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Hf、V、Sc、Co、Niの含有量の合計が0.01〜2.00質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  7. 素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  8. Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.01〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Co:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金線材を複数本撚り合わせて構成されるアルミニウム合金撚線であって、
    外周部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Noutが、内部でのMg及び/又はSiを含有する直径1μm以下の析出物の数Ninより多いことを特徴とする、アルミニウム合金撚線。
  9. 請求項1記載のアルミニウム合金線材または請求項8記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
  10. 請求項9記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
  11. 溶解、鋳造後に、熱間加工を経て荒引線を形成し、その後、少なくとも伸線加工、溶体化熱処理、歪み導入処理および時効熱処理の各工程を行うアルミニウム合金線材の製造方法であって、
    前記溶体化熱処理は、450〜580℃の範囲内の所定温度まで加熱し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、前記歪み導入処理は、前記溶体化熱処理後且つ前記時効熱処理前に、線材の外周部に歪みを導入し、
    前記時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度まで加熱することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
  12. 前記歪み導入処理は、前記線材に曲げ加工を施すことにより線材の外周部に歪みを導入する、請求項11記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
  13. 前記歪み導入処理は、1パス当たりの加工率が10%以下である引抜加工を1回又は複数回行い、合計加工率10%以下で線材の外周部に歪みを導入する、請求項11記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
  14. 溶解、鋳造後に、熱間加工を経て荒引線を形成し、その後、少なくとも伸線加工、溶体化熱処理、歪み導入処理および時効熱処理の各工程を順次行い、更に線材の撚線加工を、前記伸線加工後であって前記時効熱処理の前に行うアルミニウム合金撚線の製造方法であって、
    前記溶体化熱処理は、450〜580℃の範囲内の所定温度まで加熱し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、前記歪み導入処理は、前記伸線加工後且つ前記時効熱処理前に、線材又は撚線の外周部に歪みを導入し、
    前記時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度まで加熱することを特徴とする、請求項8記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
  15. 前記歪み導入処理は、前記線材に曲げ加工を施すことにより前記線材又は撚線の外周部に歪みを導入する、請求項14記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
  16. 前記歪み導入処理は、1パス当たりの加工率が10%以下である引抜加工を1回又は複数回行い、合計加工率10%以下で前記線材又は撚線の外周部に歪みを導入する、請求項14記載のアルミニウム合金撚線の製造方法。
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