JP2016108234A - 薄片状黒鉛、黒鉛材料、及び薄片状黒鉛分散液 - Google Patents
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Abstract
Description
このような薄片状黒鉛を成膜して、高性能の導電膜や熱伝導膜を得る試みが検討されている。
溶液塗布法により薄片状黒鉛を成膜する場合、溶液内で薄片状黒鉛を分散しておく必要がある。
また、酸化せずに黒鉛から剥離して薄片状黒鉛を得る別の方法として、特許文献2には、黒鉛または黒鉛化合物の層間を高圧乳化法により剥離する高圧乳化処理工程を有する薄層黒鉛又は薄層黒鉛化合物の製造方法が開示されている。しかしながら特許文献2の方法では、乳化処理時に黒鉛が剥離すると共に、剥離した黒鉛同士の凝集も生じてしまい、超音波法と同様に剥離された黒鉛の厚みの分布が広くなり、充分に薄片化されていない黒鉛が無視できないほど残留するという問題があった。
このように従来の製造方法では、酸化黒鉛が残留したり、充分に薄片化されていない黒鉛が数多く残留することから、導電性に優れた薄片状黒鉛を得ることが困難であった。
従来の製造方法では、電気伝導性や熱伝導性に優れた膜を成膜するためには、充分に薄片化されていない黒鉛を取り除くために分級等の処理を行う必要があり、優れた導電性を得るのに使用可能な薄片状黒鉛の収率は低いものであった。
また、導電性及び熱伝導性に優れた前記薄片状黒鉛の製造方法、前記黒鉛材料の製造方法、及び前記薄片状黒鉛分散液の製造方法を提供することを第二の目的とする。
更に、薄片状黒鉛を高収率で得ることができる薄片状黒鉛の製造方法、薄片化が不十分な黒鉛の残留が少ない薄片状黒鉛分散液の製造方法、及び、導電性及び熱伝導性に優れた黒鉛材料の製造方法を提供することを第三の目的とする。
前記第一の目的を解決するための第一の本発明に係る黒鉛材料は、前記本発明に係る薄片状黒鉛が積層されてなることを特徴とする。
また、前記第一の目的を解決するための第一の本発明に係る薄片状黒鉛分散液は、前記本発明に係る薄片状黒鉛が溶媒に分散されてなることを特徴とする。
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有することを特徴とする。
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により薄片状黒鉛分散液とする工程と、
前記薄片状黒鉛分散液を成膜又は成形する工程とを有することを特徴とする。
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有することを特徴とする。
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により薄片状黒鉛分散液とする工程と、
前記薄片状黒鉛分散液を成膜又は成形する工程とを有することを特徴とする。
また、第二の本発明によれば、導電性及び熱伝導性に優れた薄片状黒鉛を高収率で得ることができる薄片状黒鉛の製造方法、薄片化が不十分な黒鉛の残留が少ない薄片状黒鉛分散液の製造方法、及び、導電性及び熱伝導性に優れた黒鉛材料の製造方法を提供することができる。
更に、第三の本発明によれば、導電性及び熱伝導性に優れた薄片状黒鉛を高収率で得ることができる薄片状黒鉛の製造方法、薄片化が不十分な黒鉛の残留が少ない薄片状黒鉛分散液の製造方法、及び、導電性及び熱伝導性に優れた黒鉛材料の製造方法を提供することができる。
I.第一及び第二の本発明
以下、第一の本発明に係る薄片状黒鉛、薄片状黒鉛分散液、及び黒鉛材料、並びに、これらの第一の本発明の物を製造するのに適した、第二の本発明に係る薄片状黒鉛の製造方法、薄片状黒鉛分散液の製造方法、及び黒鉛材料の製造方法について順に説明する。
なお、本発明において、薄片状黒鉛とは、単層のグラフェン、及び、厚みが50nm以下の範囲で複層化したグラフェンを含むものである。
また、本発明において表面張力は、液体表面の有する、液体内部と比較して余剰な単位面積当たりの自由エネルギーと定義される。
本発明に係る薄片状黒鉛は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上であり、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.336nm以下であって、平均厚みが50nm以下であることを特徴とする。
本発明の薄片状黒鉛は、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、グラファイトの薄片間の剥離が促進されてなるものであることから、単層のグラフェン又は前記平均面間隔(d002)が黒鉛と同様の0.336nm以下で複層化したグラフェンであって平均厚みが50nm以下であり、優れた導電性及び熱伝導性を有する。フッ素が結合した薄片状黒鉛(グラフェン)としては、組成が(CmF)n(m=1〜20)で表されるフッ素化グラファイトが知られている(渡辺信淳著、「グラファイト層間化合物」、近代編集社、(1986))。しかしながら、フッ素化グラファイトは前記平均面間隔(d002)が0.809nmと黒鉛よりずっと広い面間隔を有するものであり、且つ絶縁性であるため、本発明の薄片状黒鉛は、上記フッ素化グラファイトとは明確に区別されるものである。また、前記文献には、黒鉛にフッ化水素をドーピングした炭素材料も記載されている。しかしながら、当該炭素材料は前記平均面間隔(d002)が0.55nm〜1.28nmと黒鉛よりずっと広い面間隔を有するものであるため、本発明の薄片状黒鉛は、上記炭素材料とは明確に区別されるものである。上記炭素材料は導電性であるが、ガスをドーピングしていることから安定性が悪く、加工性にも問題がある。
それに対して、本発明の微量のフッ素が吸着又は結合した薄片状黒鉛は、安定性に優れ、剥離した薄片状黒鉛がより再凝集し難く、加工性にも優れるものである。本発明によれば、前記薄片状黒鉛が再凝集せずに薄片のまま積層し、集積膜等の積層体を任意に形成することができるため、導電性や熱伝導性に優れた黒鉛材料を得ることができる。
前記飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)は、飛行時間型二次イオン質量分析計(例えば、Physical Electronics社製、型名:TRIFTII)を用いて、69Ga+を照射することで検出されるNEGATIVE2次イオンを、2次イオンマススペクトルとして検出することにより行う。当該飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された、全(−)イオンの総カウント数と、フッ素(−)イオンのカウント数とを計測し、上記全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合を算出することができる。
また、本発明の薄片状黒鉛は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上であるが、導電性及び熱伝導性により優れた黒鉛材料乃至薄片状黒鉛とする点から、前記割合は10%以下であることが好ましく、更に5%以下であることが好ましく、より更に3%以下であることが好ましい。ノイズとみなせるフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.2%程度となる場合があるため、ノイズを除く点から、0.5%以上としている。中でも前記フッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.8%以上であることが好ましく、1%以上であることが更に好ましい。
本発明の薄片状黒鉛において、炭素原子の組成は、X線光電子分光法による測定で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることがより更に好ましく、95%以上であることがより更に好ましい。炭素原子の組成は、X線光電子分光法による測定で100%であっても良いが、通常、若干酸素原子が含まれていることから、99%以下であることが好ましい。
本発明の薄片状黒鉛において、酸素原子の組成は、X線光電子分光法による測定で10%以下であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがより更に好ましい。
また、本発明の薄片状黒鉛において、後述する分散剤等の影響により、X線光電子分光法による測定で、炭素原子及び酸素原子とは異なる原子、例えば、硫黄原子、窒素原子等が含まれていても良い。炭素原子及び酸素原子とは異なる原子の合計の組成は、X線光電子分光法による測定で5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがより更に好ましい。
すなわち、本発明の薄片状黒鉛において、X線光電子分光法による測定で、炭素原子の組成と酸素原子の組成との和が95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、98%以上であることがより更に好ましい。
なお、ここでX線光電子分光法による測定は、Thermo Fisher Scientific 社製(VG Theta Probe)、アルバックファイ社製(PHI5000 Versa Probe)等のX線光電子分光装置を用い、X線を試料に照射して検出される二次電子のスペクトルを解析して行うことができる。前記パーセントは、原子百分率を表す。
また、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、炭素原子のピークを拡大し、炭素原子間でsp2結合を形成している結合(結合エネルギー約284.6eV)と炭素原子間でsp3結合を形成している結合(結合エネルギー約285.5eV)とにピーク分離を行うことにより、前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合を算出することができる。同様に、酸素原子のピークを拡大し、酸素原子のうち炭素原子との結合と例えば、酸素原子のうち硫黄原子との結合とにピーク分離を行うことにより、前記酸素原子のうち炭素原子と結合した酸素原子比を算出することができる。なお、酸素原子の他分子との結合によるピークシフト、及び結合エネルギーは、成書(例えば、染野壇編、「表面分析」、講談社(1976年)p274)を参照することができる。
また、ラマン分光スペクトルで測定される2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.1以上であることが好ましく、更に0.2以上であることが好ましく、より更に0.3以上であることが好ましい。当該強度比IG’/IGは、通常、薄片状黒鉛の厚みが薄いほど大きくなり、厚みが約0.34nm(グラフェン単原子層)の時に2となることから、2以下となる。
ラマン分光スペクトルで測定される1300〜1400cm-1の範囲にあるスペクトルは、結晶の欠陥がある場合に現れるバンド(Dバンド)とされており、1580〜1620cm-1の範囲にあるスペクトルは、sp2混成軌道(C−C 間の結合の手が3本)である場合に共通で観測されるバンド(Gバンド)である。また、2600〜2800cm-1の範囲にあるスペクトルも、sp2混成軌道である場合に共通で観測されるバンド(G’バンド)である。
本発明の薄片状黒鉛の厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
本発明の薄片状黒鉛の平均厚みは、基板上に薄片状黒鉛を独立分散させた状態で厚みをAFMで測定し、200個の薄片状黒鉛の厚みの測定値の平均値を算出することで求めることができる。
薄片状黒鉛、薄片状黒鉛を含む混合液、又は薄片状黒鉛分散液をサンプリングし、溶媒で20〜2000倍に希釈して薄片を凝集させずに分散させた後に、孔径0.02μm以下のメンブレンフィルター上に塗布することで溶媒を濾別しメンブレンフィルター上に薄片状黒鉛を凝集させずに独立した状態で配置させる。分散剤が付着している場合には、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒で薄片状黒鉛を洗浄することにより分散剤を除去しても良い。メンブレンフィルター上に凝集させずに独立した状態で配置された薄片状黒鉛に、洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に薄片状黒鉛を転写する。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で付着している薄片状黒鉛をAFMで測定し、薄片の厚みを測定する。AFM測定は、島津製作所製ナノサーチ顕微鏡SFT−3500における走査型プローブ顕微鏡(SPM)の機能を用い、コンタクトモード、即ちAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で走査範囲を10μm×10μmにして測定を行うことができる。シリコンウエハーに付着している薄片状黒鉛におけるシリコンウエハーと薄片状黒鉛の高さの差を薄片状黒鉛の厚みとする。
薄片状黒鉛の平均厚みは、AFMにより、薄片状黒鉛を合計200個観測できるまで上記操作を繰り返し、AFMで観測された200個分の薄片状黒鉛の厚みの測定値の平均値を算出することで求めることができる。
前記個数%は、薄片状黒鉛の全個数に対する、該当する厚みの薄片状黒鉛の個数の割合を表す。前記個数%は、AFMで観測された200個のうち、該当する厚みを有する薄片状黒鉛の個数を求め、200個中の個数割合を求めることで、算出することができる。
本発明の薄片状黒鉛は各々、アスペクト比(最大径/厚み)が3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。本発明の薄片状黒鉛の平均アスペクト比(平均最大径/平均厚み)は3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
第二の本発明の薄片状黒鉛の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(以下、分散処理工程ということがある)を有することを特徴とする。
黒鉛(グラファイト)は、二次元構造を有するグラフェンが多層に積層した構造を有している。当該黒鉛において、各層間にはファンデルワールス力が生じており、比較的弱い力で結合しているものと推定される。
使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒は、比較的低極性であり、表面張力が小さいため、前記黒鉛の層間に浸入しやすいものと推定される。このような溶媒を用いて分散処理することにより、黒鉛の剥離が促進されて薄片状黒鉛が生成されやすいものと推定される。
また、前記薄片状黒鉛の製造方法においては、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤を組み合わせて用いる。このように前記フッ素系溶媒に対する溶解度の低い分散剤を選択して用いることにより、分散剤が液体の場合には、分散処理時の混合液は、前記溶媒相と、前記分散剤相の2相を含む不均一系となり、黒鉛や薄片状黒鉛は極性の近い前記分散剤相に存在し易い。
このような不均一の液体中においては、分散処理により生成した薄片状黒鉛の周囲に分散剤が存在するために、薄片状黒鉛同士が直ちに凝集することを抑制する。また、分散剤が高粘性であれば、その分、薄片状黒鉛同士の接触が抑制され、その結果、薄片状黒鉛の凝集は抑制される。更にこのような製造方法においては、前記分散剤相が前記溶媒相と分離しているため、分散剤が吸着した薄片状黒鉛は前記分散剤相へ移行して、より再凝集が抑制されやすいものと推定される。
また、分散剤が固体の場合には、分散処理時の混合液は、前記溶媒相中に固体の黒鉛と固体の分散剤を含む不均一系となり、黒鉛と分散剤は、どちらも前記溶媒に対して親和性が低いため、前記溶媒相中では相対的に黒鉛と分散剤の親和性が高まり、分散処理により生成した薄片状黒鉛の周囲に分散剤が存在するために、薄片状黒鉛同士の凝集を抑制し、分散性が向上すると推定される。
以上のことから、前記薄片状黒鉛の製造方法によれば、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、黒鉛の剥離が容易に進行して薄片状黒鉛が生成され、且つ、薄片状黒鉛が再凝集しにくくなり、前記本発明に係る薄片状黒鉛を高収率で得ることができる。
本発明において原料となる黒鉛は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、高配向性熱分解黒鉛等を使用でき、特に天然黒鉛が好ましい。天然黒鉛は、土状黒鉛と鱗状黒鉛とに分類されるが、特に鱗状黒鉛が好ましい。鱗状黒鉛は、灰分が少なく、純度が高いためである。黒鉛を粉砕したグラフェンフレークが近年XGscience社から商品化されており、これを原料に用いることもできる。また、これらの黒鉛の層間を予め広げた膨張黒鉛を用いることもできる。黒鉛の大きさは、特に限定されないが、最終的に得ようとする薄片状黒鉛の大きさに応じて選択される。
当該黒鉛の分散処理前における粒径は、分散処理が可能な大きさであれば特に限定されないが、通常、最大径が100μm以下のものが好ましく用いられる。
本発明においては、分散処理時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒が用いられることが好ましい。当該特定の溶媒は黒鉛の層間に入り込みやすいため、黒鉛の剥離が進行しやすくなる。なお、ここでの使用温度とは、分散処理開始時の溶媒温度をいう。
また、当該溶媒としては、黒鉛の層間に入り込みやすく、黒鉛の剥離が進行しやすい点から、中でも、使用温度での表面張力が15mN/m以下のフッ素系溶媒であることが好ましい。
本発明において使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において分散剤は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満のものを用いることが好ましい。
このような分散剤を選択して用いることにより、薄片状黒鉛の再凝集を抑制し、当該薄片状黒鉛を高収率で得ることができる。
分散剤としては、薄片状黒鉛に対して親和性の高い疎水性基と、親水性基とを1分子内に有する化合物が挙げられる。当該疎水性基としては炭素数が3以上、より好ましくは6以上の炭化水素基が挙げられ、親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、及びこれらの塩等が挙げられる。このような分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性等の界面活性剤を使用できる。また、分散剤としては、高分子界面活性剤(高分子分散剤)を用いても良い。
また、高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;ポリエチレンイミン及びその誘導体等が挙げられる。ポリウレタン類としては、主骨格がポリウレタンで側鎖にポリエステル及びポリエーテル鎖の少なくとも1種及びアルキルアンモニウム塩を有する構造も好適に用いられる。
サンプル管瓶に、本発明の製造方法に用いる溶媒と評価しようとする分散剤を0.1(g/100g溶媒)の濃度になる様に投入し、撹拌後、遠心分離により溶媒と残存する分散剤を分離後、残存する分散剤の質量を測定し、溶解度を算出する。分散剤が前記溶媒に全て溶解した場合には当該分散剤の前記溶媒に対する溶解度は0.1(g/100g溶媒)以上と判断される。
中でも、分散剤の粘度が25℃において10mPa・s以上であることが、前記溶媒と当該分散剤の2相を含む混合液が高粘性の液体となり、薄片状黒鉛の再凝集を抑制する点から更に好ましい。分散剤の粘度は、25℃において100mPa・s以上50000mPa・s以下であることが更に好ましく、25℃において100mPa・s以上3000mPa・s以下であることがより更に好ましい。
なお、当該分散剤の粘度は、25℃において、ASTMD4440に準じて測定するものをいう。
本発明において分散剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記薄片状黒鉛の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、当該混合液を、従来公知の分散機を用いて分散処理することにより、黒鉛の剥離が容易に進行して薄片状黒鉛が生成され、且つ、薄片状黒鉛が再凝集しにくくなり、薄片状黒鉛を高収率で得ることができる。
分散処理を行うための分散機としては、超音波分散機、2本ロール、3本ロール等のロールミル、アトライター、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル、ミキサーミル、機械的撹拌等が挙げられる。これらの中でも、せん断力を付与できる方法等、粘度が高い液体を分散させるのに適した方法を選択して用いることが好ましく、粉砕ボールを用いたボールミルとすることが好ましい。ボールミルのボール形は特に限定されないが、1mm〜100mmが好ましく、5mm〜50mmがより好ましい。
また、混合液中の黒鉛と、前記溶媒との含有比は、黒鉛からの剥離効率を上げて、薄片状黒鉛の収率を向上する点から、黒鉛1質量部に対して、溶媒が10質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、20質量部以上50000質量部以下であることがより好ましい。
前記薄片状黒鉛の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で更に他の工程を有していてもよい。このような工程としては、例えば、薄片状黒鉛を取り出すための使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程や、分散剤を溶解して除去する工程等が挙げられる。前記溶媒を除去する工程は、後述する薄片状黒鉛分散液の製造方法の溶媒除去工程と同様にして行うことができる。また、分散剤を溶解して除去する工程は、例えば前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を用いて、薄片状黒鉛の表面に付着している分散剤を溶解、洗浄することにより行うことができる。
また、後述する薄片状黒鉛分散液の製造方法と同様にして薄片状黒鉛分散液を製造し、当該薄片状黒鉛分散液から前記薄片状黒鉛を得ることも好ましい。
更に、充分に薄片化されなかった黒鉛を除去するための分級工程を含んでいても良い。
上記分級工程は、従来公知の分級方法の中から適宜選択して用いることができる。一方、前記製造方法により得られる薄片状黒鉛は、充分に薄片化されていない黒鉛がほとんど残留しないため、当該分級工程を行うことなく、導電性や熱伝導性に優れた本発明の薄片状黒鉛を得ることができる。
本発明の薄片状黒鉛は、溶媒を含む分散液として用いても良く、更に樹脂等と混合したペースト状の樹脂組成物として用いてもよい。前記薄片状黒鉛を含む分散液は、後述するような黒鉛材料の製造に用いることができるほか、導電性インクとして用いることができる。また、前記薄片状黒鉛を含む樹脂組成物は、導電性樹脂組成物として、導電性塗料や導電性接着剤として用いることができる。
また、本発明の薄片状黒鉛は、膜乃至シート状、成形体として用いても良い。
更に、本発明の薄片状黒鉛は、高分子複合材料としても良いし、樹脂と混合したペレット、ワイヤー等として用いても良い。
本発明に係る薄片状黒鉛分散液は、前記本発明に係る薄片状黒鉛が溶媒に分散されてなることを特徴とする。
前述のように、本発明に係る薄片状黒鉛は導電性及び熱伝導性に優れるため、本発明に係る薄片状黒鉛分散液は、優れた導電性、更には優れた熱伝導性を有する黒鉛材料を製造するための予備調製物として優れている。
また、薄片状黒鉛分散液に樹脂等を添加して、樹脂組成物として用いても良い。
また、本発明に係る薄片状黒鉛分散液は、分散剤を含有していることが好ましい。当該分散剤としては、前記薄片状黒鉛の製造方法において説明したものと同様の分散剤を適宜選択して用いることができるため、ここでの説明を省略する。
当該前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上となる溶媒としては、分散液の分散安定性の点から、前記分散剤の溶解度が10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましく、更に20(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
本発明において前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第二の本発明の薄片状黒鉛分散液の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有することを特徴とする。
なお、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程を、以下、溶媒除去工程ということがあり、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程を、以下、溶媒添加工程ということがある。
上記(i)の工程においては、前述の分散処理工程により得られた分散処理後の混合液から、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する。当該溶媒を除去することにより、残渣として分散剤と薄片状黒鉛との混合物を得ることができる。
溶媒を除去する方法は、用いた溶媒に応じて適宜選択すればよい。溶媒を除去する方法としては、操作の簡便性の点から、デカンテーションや濾過が好ましく、適宜加熱や減圧処理することにより溶媒を除去してもよい。
また、上記(ii)の工程においては、例えば、相分離していることを利用して分液により溶媒相を除去することができる。
上記(i)の工程においては、前記溶媒除去工程により溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加することにより、薄片状黒鉛の分散液を得ることができる。上記(ii)の工程においては、前記溶媒除去工程の前に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する。
前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上となる溶媒としては、分散液の分散安定性の点から、前記分散剤の溶解度が10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましく、更に20(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒としては、前述したのでここでの説明を省略する。
薄片状黒鉛分散液に用いられる添加剤としては、例えば、可塑剤、消泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
また、薄片状黒鉛分散液中の溶媒の含有割合は、薄片状黒鉛分散液全量中に80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、更に90質量%以上97質量%以下であることが好ましい。
また、分散剤が含まれる場合の薄片状黒鉛分散液中の分散剤の含有割合は、分散性の点から、薄片状黒鉛分散液の固形分全量100質量部に対して、80質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、90質量部以上99.5質量部以下であることがより好ましい。
なお、本発明において固形分とは、溶媒以外の全ての成分を表し、例えば、液状の分散剤であっても固形分に含まれるものとする。
本発明に係る黒鉛材料は、前記本発明に係る薄片状黒鉛が積層されてなることを特徴とする。
前述のように、本発明に係る薄片状黒鉛は平均厚みが50nm以下であって導電性及び熱伝導性に優れるため、前記本発明に係る薄片状黒鉛が積層されてなる黒鉛材料は、優れた導電性を有し、更には優れた熱伝導性を有する。
なお、本発明に係る薄片状黒鉛としては、前述しているため、ここでの説明を省略する。
また、本発明に係る黒鉛材料は、前記本発明の薄片状黒鉛の各々の少なくとも一部が互いに接触しているものであっても良い。本発明に係る黒鉛材料は、前記本発明の薄片状黒鉛の各々が、厚み方向の側面同士で接触しているものであっても良い。
本発明に係る黒鉛膜は、構成する薄片状黒鉛の厚みの分布により、直径18mmの円以上の面積を有する自立膜とすることも可能であるが、小片状であっても良い。
本発明に係る黒鉛材料が膜乃至シート状である場合、厚みは特に限定されるものではない。可撓性を有するようにする点から、本発明に係る黒鉛材料が膜乃至シート状である場合の厚みは1mm以下であることが好ましく、更に200μm以下であることが好ましい。このような厚みを有する本発明の黒鉛膜乃至黒鉛シートは、可撓性を有することから、非常に薄く軽い且つ屈曲性に優れた導電体となり得る。
また、本発明に係る黒鉛材料は、前記本発明に係る薄片状黒鉛が積層されてなるものであることから、曲面や凹凸の多い被着体に対しても追従させることができる。
本発明に係る黒鉛材料においても、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.336nm以下であることが好ましい。
更に、本発明に係る黒鉛材料においても前記本発明の薄片状黒鉛と同様に、酸素原子の組成は、X線光電子分光法による測定で10%以下であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがより更に好ましい。
また、本発明に係る黒鉛材料においても前記本発明の薄片状黒鉛と同様に、フッ素原子は微量しか存在しないため、X線光電子分光法による測定ではフッ素原子の組成は0%と測定されても良い。
また、ラマン分光スペクトルで測定される2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.1以上であることが好ましく、更に0.2以上であることが好ましく、より更に0.3以上であることが好ましい。当該強度比IG’/IGは、通常薄片状黒鉛の厚みが薄いほど大きくなり、厚みが約0.34nm(グラフェン単原子層)の時に2となることから、2以下となる。
熱拡散率は、周期加熱放射測温法を用いて測定することができ、例えば、株式会社ベテルのサーモウエイブアナライザTA3を用いて測定することができる。
本発明に係る黒鉛材料においては、好ましくは表面抵抗値が、200Ω/□以下、より好ましくは100Ω/□以下である範囲内で、積層体を構成する薄片状黒鉛の一部に薄片の厚みが50nm超過の薄片状黒鉛が含まれていても良い。
第二の本発明の黒鉛材料の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により薄片状黒鉛分散液とする工程と、
前記薄片状黒鉛分散液を成膜又は成形する工程とを有することを特徴とする。
前記薄片状黒鉛分散液を用いて、黒鉛材料を製造する方法は、従来公知の成膜方法又は成形方法の中から適宜選択することができる。
黒鉛材料の好適な成膜方法としては、濾紙、メンブレンフィルター等の多孔質基材上に前記薄片状黒鉛分散液を滴下し、濾過することにより溶媒を除去して成膜する方法が挙げられる。また、黒鉛材料の好適な成形方法としては、例えば、多孔質の型に前記薄片状黒鉛分散液を滴下し、濾過することにより溶媒を除去して成形する、鋳込み成形のような方法が挙げられる。これらの方法によれば、分散剤を溶媒と共に除去することが可能であることから、導電性及び熱伝導性に優れた黒鉛材料とするのに適している。
当該方法においては、更に、前記分散剤を溶解する溶媒で黒鉛材料を洗浄することが好ましい。分散剤を溶解する溶媒で洗浄することにより、分散剤が除去されて高純度の黒鉛材料を得ることができるため、導電性及び熱伝導性に優れた黒鉛材料とすることができる。当該分散剤を溶解する溶媒としては、前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上、更に10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
このようにして得られた黒鉛材料は、前記多孔質基材又は透液性の型から剥がして単体として用いてもよく、ガラス基材や樹脂基材等、他の基材に転写して用いてもよい。
更に黒鉛材料をプレス機やロールプレス機等を用いて圧縮処理することで、導電性や熱伝導性を高めることができる。
以下、第三の本発明に係る薄片状黒鉛の製造方法、薄片状黒鉛分散液の製造方法、及び黒鉛材料の製造方法について順に説明する。
1.薄片状黒鉛の製造方法
第三の本発明に係る薄片状黒鉛の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(以下、分散処理工程ということがある)を有することを特徴とする。
また、第三の本発明の製造方法においては、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、当該溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤を組み合わせて用いる。このような特定の分散剤を特定の溶媒と組み合わせて分散処理することにより、前記第二の本発明に係る薄片状黒鉛の製造方法と同様に、黒鉛や薄片状黒鉛は極性の近い前記分散剤相に存在し易くなり、分散処理により生成した薄片状黒鉛の周囲に分散剤が存在するために、薄片状黒鉛同士が直ちに凝集することが抑制される。更に本発明においては、前記分散剤相が前記溶媒相と分離しているため、分散剤が吸着した薄片状黒鉛は前記分散剤相へ移行して、より再凝集が抑制されやすいものと推定される。
以上のことから、第三の本発明の薄片状黒鉛の製造方法によれば、黒鉛の剥離が容易に進行して薄片状黒鉛が生成され、且つ、薄片状黒鉛が再凝集しにくいため、導電性及び熱伝導性に優れた薄片状黒鉛を高収率で得ることができる。
当該分散処理工程において、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤と、分散処理の方法とについては、前記第二の本発明に係る薄片状黒鉛の製造方法と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本発明においては、分散処理時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒が用いられる。当該特定の溶媒は黒鉛の層間に入り込みやすいため、黒鉛の剥離が進行しやすくなる。なお、ここでの使用温度とは、分散処理開始時の溶媒温度をいう。
また、当該溶媒としては、黒鉛の層間に入り込みやすく、黒鉛の剥離が進行しやすい点から、中でも、使用温度での表面張力が15mN/m以下の溶媒であることが好ましい。
第三の本発明において使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第三の本発明の薄片状黒鉛の製造方法により得られる薄片状黒鉛は、前記第一の本発明の薄片状黒鉛と同様に、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.336nm以下となる。
また、第三の本発明の薄片状黒鉛の製造方法において、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒がフッ素を含む場合に得られる薄片状黒鉛は、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、薄片間の剥離を促進されてなるものであることから、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は、前述した第一の本発明の薄片状黒鉛のそれらと同様になる。
更に、第三の本発明の薄片状黒鉛の製造方法により得られる薄片状黒鉛の厚み、及び面方向サイズはそれぞれ、前述した第一の本発明の薄片状黒鉛のそれらと同様になる。
第三の本発明に係る薄片状黒鉛分散液の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(分散処理工程)と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(以下、溶媒除去工程ということがある)と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(以下、溶媒添加工程ということがある)
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)
のいずれかの工程を有することを特徴とする。
第三の本発明に係る黒鉛材料の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、黒鉛と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(分散処理工程)と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)
のいずれかの工程により薄片状黒鉛分散液とする工程と、
前記薄片状黒鉛分散液を成膜又は成形する工程(成膜又は成形工程)とを有することを特徴とする。
[評価方法]
<TOF−SIMSによるフッ素検出>
薄片状黒鉛または黒鉛膜に対して、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析 Physical Electronics社製、型名:TRIFTII)を使用して、69Ga+を照射することで検出されるNEGATIVE2次イオンを、2次イオンマススペクトルとして検出した。
試料は薄片状黒鉛作製後6カ月以上経過する等、薄片状黒鉛表面への分子吸着の影響が考慮される場合には、1次イオンビーム(69Ga+)を用いて最表面をSiO2換算にて約1nmエッチングした後、測定を行った。
薄片状黒鉛または黒鉛材料に対して、XRD(粉末X線回折 株式会社リガク製、型名:Miniflex II)を用いて、CuKα線(λ=0.15418nm)による回折パターンから、ピーク位置の2θを特定し、Braggの回折式:λ=2d・sinθより、平均面間隔:dを算出した。通常、黒鉛の平均面間隔(d002)は0.3356nmである。
薄片状黒鉛を含む混合液、又は薄片状黒鉛分散液をサンプリングし、使用した分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒で20〜2000倍に希釈した後に孔径0.02μmのメンブレンフィルター上に塗布することで溶媒を濾別しメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更に分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒(各例において、分散液溶媒に用いた溶媒、比較例2及び5のみは、トルエンの代わりに水)で洗浄することにより分散剤を除去した。薄片状黒鉛を載せた状態でメンブレンフィルターの上に洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に薄片状黒鉛を転写した。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で付着している薄片状黒鉛をAFMで測定し、薄片の厚みを測定した。尚、AFM測定は、島津製作所製ナノサーチ顕微鏡SFT−3500における走査型プローブ顕微鏡(SPM)の機能を用い、コンタクトモード、即ちAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で走査範囲を10μm×10μmにして測定を行った。シリコンウエハー上に付着している薄片状黒鉛におけるシリコンウエハーと薄片状黒鉛の高さの差を薄片状黒鉛の厚みとした。
薄片状黒鉛の平均厚みは、AFMにより、薄片状黒鉛を合計200個観測できるまで上記操作を繰り返し、AFMで観測された200個分の薄片状黒鉛の厚みの測定値の平均値を算出することで求めた。
X線光電子分光法による測定は、X線光電子分光装置(実施例1〜7と比較例1〜3がThermo Fisher Scientific 社製、製品名VG Theta Probe、実施例8〜18と比較例4〜6がアルバックファイ社製、製品名PHI5000 Versa Probe)を用い、X線を試料に照射して検出される二次電子のスペクトルを解析して行った。
なお、照射X線としては単結晶分光AlKα線を用い、中和電子銃を使用した。
炭素原子のピークを拡大し、炭素原子間でsp2結合を形成している結合(結合エネルギー約284.6eV)と炭素原子間でsp3結合を形成している結合(結合エネルギー約285.5eV)とにピーク分離を行うことにより、前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合を算出することができる(図6参照)。
ラマン分光法による分析は、堀場製作所製のラマン分光分析装置(型名:XploRA)を用いて行った。光源は532nmレーザーを使用した。得られたチャートのベースライン補正を行った後、1300〜1400cm−1(ID)、1580〜1620cm−1(IG)、2600〜2800cm−1(IG’)の各ピーク強度を算出し、ピーク強度比ID/IG、IG’/IGを求めた。ラマン測定は、測定する黒鉛膜の位置を変えて10回測定し、後述するピーク強度はそれらの平均値を示した。
なお、詳細な測定条件は以下の通りで行った。
分光器:焦点距離=200mmのCzerny Turner型
検出器:分解能(100μmのスリット幅)2〜15cm-1
レーザー出力:20〜25mW
黒鉛膜について、4探針法による抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、型名:ロレスタGP MCP−T610)によって表面抵抗値を測定した。
黒鉛膜を濾過の際に使用したメンブレンフィルターから剥離し、直径18mmの円以上の面積を有する黒鉛自立膜の形成を試みた。自立膜が形成できたものもあれば、複数の小片に分かれて自立膜が形成できなかったものがあった。自立膜が形成できたものについて、膜の面内方向の熱拡散率を株式会社ベテルのサーモウエイブアナライザTA3(周期加熱放射測温法)を用いて測定した。
(実施例1−1:薄片状黒鉛の製造)
フッ素系溶剤(ハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)、3M社製Novec7200、表面張力13.6mN/m)10mL(14.3g)に黒鉛(日本黒鉛社製ACB−100)2mgと分散剤(東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸;前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 25(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1200mPa・s)50mgを混合し、ボールミル(レッチェ社製ミキサーミル)にてステンレスボールと共に10Hz30分処理することにより、薄片状黒鉛1を得た。
薄片状黒鉛1を含む混合液から少量サンプリングし、孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルター(GEヘルスケアジャパン社製、アノディスク、材質:アルミナ、以下別途記載のない限り同様)でフッ素系溶媒を濾別し水で洗浄することにより分散剤を除去した薄片状黒鉛1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、薄片状黒鉛1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
実施例1−1で得られた薄片状黒鉛1を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水(前記分散剤の溶解度 25(g/100g溶媒))10mLを添加することにより、沈殿の無い薄片状黒鉛分散液1を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。
なお当該収率は、薄片状黒鉛分散液を1時間静置し、沈殿の生じないことを確認することで、沈殿するほど粗大な黒鉛は残存しないこと、から収率100%と判断した。
また、薄片状黒鉛分散液1を少量サンプリングし、孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルター上に塗布することでフッ素系溶媒を濾別しメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更に水で洗浄することにより分散剤を除去した薄片状黒鉛1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、薄片状黒鉛のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
更に、当該薄片状黒鉛1を載せた状態でメンブレンフィルターの上に洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に薄片状黒鉛1を転写した。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛1をAFMで測定し、薄片の厚みを測定したところ、測定した薄片の厚みは、2nm〜10nmの範囲であり、平均厚みは7nmであった。
実施例1−2で得られた薄片状黒鉛分散液1を濾過し、水で洗浄することにより、直径18mm、厚み30μmの円形の黒鉛膜1を得た。
黒鉛膜1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。図1に、黒鉛膜1のX線回折法による測定結果を示す。黒鉛膜1のピークは2θ=26.56°に位置し、平均面間隔(d002)は0.3356nmと算出され、原料黒鉛のACB−100と同様であった。
また、黒鉛膜1についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、81%であった。
図2に、本発明に係る黒鉛膜1のSEM写真を示す。
実施例1−1において、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛2を得た。
実施例2−1で得られた薄片状黒鉛2を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水10mLを添加することにより、沈殿の無い薄片状黒鉛分散液2を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。薄片状黒鉛分散液2を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛2を作製し、AFMにより薄片状黒鉛2の厚みを測定したところ、3nm〜12nmの範囲であり、平均厚みは8nmであった。
実施例2−2で得られた薄片状黒鉛分散液2を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜2を得た。
黒鉛膜2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.3%であった。また、黒鉛膜2のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜2についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、78%であった。
実施例1−1において、分散剤を東京化成工業社製span20(ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 4200mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛3を得た。
実施例3−1で得られた薄片状黒鉛3を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、イソプロピルアルコール10mLを添加することにより、沈殿の無い薄片状黒鉛分散液3を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。薄片状黒鉛分散液3を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛3を作製し、AFMにより薄片状黒鉛3の厚みを測定したところ、5nm〜41nmの範囲であり、平均厚みは33nmであった。
実施例3−2で得られた薄片状黒鉛分散液3を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、黒鉛膜3を得た。
黒鉛膜3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜3のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜3についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、76%であった。
実施例1−1において、分散剤をビックケミージャパン製BYK−9076(ポリウレタン含有、高分子量共重合物のアルキルアンモニウム塩、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 15(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1050mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛4を得た。
実施例4−1で得られた薄片状黒鉛4を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水10mLを添加することにより、沈殿の無い薄片状黒鉛分散液4を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。薄片状黒鉛分散液4を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛4を作製し、AFMにより薄片状黒鉛4の厚みを測定したところ、3nm〜11nmの範囲であり、平均厚みは8nmであった。
実施例4−2で得られた薄片状黒鉛分散液4を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜4を得た。
黒鉛膜4についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜4のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜4についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、78%であった。
実施例1−1において、分散剤をシグマアルドリッチ製 分岐ポリエチレンイミン(数平均分子量Mn60000、50%水溶液)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 10000mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛5を得た。
実施例5−1で得られた薄片状黒鉛5を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水10mLを添加することにより、薄片状黒鉛分散液5を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率 100%)。薄片状黒鉛分散液5を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛5を作製し、AFMにより薄片状黒鉛5の厚みを測定したところ、7nm〜48nmの範囲であり、平均厚みは35nmであった。
実施例5−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液5を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜5を得た。
黒鉛膜5についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜5のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜5についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、76%であった。
実施例1−1において、分散剤を東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 20(g/100g溶媒)、25℃で固体)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛6を得た。
実施例6−1で得られた薄片状黒鉛6を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水10mLを添加することにより、沈殿の無い薄片状黒鉛分散液6を得た(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。薄片状黒鉛分散液6を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛6を作製し、AFMにより薄片状黒鉛6の厚みを測定したところ、3nm〜11nmの範囲であり、平均厚みは9nmであった。
実施例6−2で得られた薄片状黒鉛分散液6を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜6を得た。
黒鉛膜6についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.5%であった。また、黒鉛膜6のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜6についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、80%であった。
実施例1−1において、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.7(g/100g溶媒)、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして比較薄片状黒鉛1を得た。
比較例1−1で得られた比較薄片状黒鉛1を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、イソプロピルアルコール10mLを添加することにより、比較薄片状黒鉛分散液1を得た。当該比較薄片状黒鉛分散液1は沈殿が生じていた。比較薄片状黒鉛分散液1の上澄み液を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する比較薄片状黒鉛1を作製し、AFMにより比較薄片状黒鉛1の厚みを測定したところ、63nm〜260nmの範囲であり、平均厚みは198nmであった。沈殿を含めると、実際はより厚い薄片状黒鉛が存在すると考えられる。
比較例1−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液1を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較黒鉛膜1を得た。図3に、比較黒鉛膜1のSEM写真を示す。
比較黒鉛膜1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズを除くと0であった。また、比較黒鉛膜1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
実施例1−2において水の代わりにトルエン(前記分散剤の溶解度が1(g/100g溶媒))を用いた以外は実施例1−2と同様にして比較薄片状黒鉛分散液2を得た。当該比較薄片状黒鉛分散液2は沈殿が生じていた。比較薄片状黒鉛分散液2の上澄み液を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する比較薄片状黒鉛2を作製し、AFMにより比較薄片状黒鉛2の厚みを測定したところ、75〜230nmの範囲であり、平均厚みは177nmであった。沈殿を含めると、実際はより厚い薄片状黒鉛が存在すると考えられる。
比較例2−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液2を濾過し、水で洗浄することにより、比較黒鉛膜2を得た。
比較黒鉛膜2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は、ノイズを除くと0であった。また、比較黒鉛膜2のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤を水(表面張力(25℃)72mN/m)に変更し、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(水に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして比較薄片状黒鉛3を得た。
比較例3−1で得られた比較薄片状黒鉛3を含む混合液から、水を除去し、イソプロピルアルコール10mLを添加することにより、比較薄片状黒鉛分散液3を得た。当該比較薄片状黒鉛分散液3は沈殿が生じていた。比較薄片状黒鉛分散液3の上澄み液を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する比較薄片状黒鉛3を作製し、AFMにより比較薄片状黒鉛3の厚みを測定したところ、70nm〜250nmの範囲であり、平均厚みは182nmであった。沈殿を含めると、実際はより厚い薄片状黒鉛が存在すると考えられる。
比較例3−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液3を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較黒鉛膜3を得た。
比較黒鉛膜3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は、ノイズを除くと0であった。比較黒鉛膜3のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
自立膜が形成された実施例1,2,4及び6の黒鉛膜について熱拡散率を測定したところ、鉄(1.4×10−5m2/s)、SUS304(ステンレス)(0.4×10−5m2/s)等に比べて同等または高い値を示し、熱伝導性に優れていることが確認された。
一方、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例1では、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。比較例1の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜1は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、比較例2でも、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。比較例2では、分散液を調製する際に、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)未満の溶媒を添加して分散液を調製したため沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜2は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、比較例3でも、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例3では、分散液に沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜3は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
フッ素系溶剤(ハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)、3M社製Novec7200、表面張力13.6mN/m)14mL(20.0g)に黒鉛(日本黒鉛社製ACB−100)20mgと分散剤(東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸;前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 25(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1200mPa・s)100mgを混合し、ボールミル(レッチェ社製ミキサーミル)にてステンレスボールと共に20Hz30分処理することにより、薄片状黒鉛8を得た。
更に、当該薄片状黒鉛8を載せた状態でメンブレンフィルターの上に洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に薄片状黒鉛8を転写した。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛8をAFMで測定し、薄片の厚みを測定した。この操作を繰り返し、薄片状黒鉛8の平均厚みを求めたところ、26nmであった。また、測定した薄片の内10nm未満の厚みの薄片が32個数%であり、10nm以上50nm以下の範囲の厚みの薄片が62個数%であり、50nm超過の厚みの薄片は6個数%であることを確認した。
図4に、薄片状黒鉛8のAFM写真を示す。
実施例8−2で得られた薄片状黒鉛分散液8を濾過し、水で洗浄することにより、直径36mm、厚み20μmの円形の黒鉛膜8を得た。
黒鉛膜8についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。
実施例8−1において、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛9を得た。
実施例9−2で得られた薄片状黒鉛分散液9を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜9を得た。
黒鉛膜9についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.3%であった。また、黒鉛膜9のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜9についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、79%であった。
黒鉛膜9のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.10であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.39であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、分散剤を東京化成工業社製span20(ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 4200mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛10を得た。
実施例10−2で得られた薄片状黒鉛分散液10を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、黒鉛膜10を得た。
黒鉛膜10についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜10のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜10についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、76%であった。
黒鉛膜10のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.15であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.33であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、分散剤をビックケミージャパン製BYK−9076(ポリウレタン含有、高分子量共重合物のアルキルアンモニウム塩、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 15(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1050mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛11を得た。
実施例11−2で得られた薄片状黒鉛分散液11を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜11を得た。
黒鉛膜11についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜11のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜11についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、79%であった。
黒鉛膜11のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.08であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.38であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、分散剤をシグマアルドリッチ製 分岐ポリエチレンイミン(数平均分子量Mn60000、50%水溶液)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 10000mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛12を得た。
実施例12−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液12を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜12を得た。
黒鉛膜12についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜12のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜12についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、78%であった。
黒鉛膜12のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.16であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.31であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、分散剤を東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 20(g/100g溶媒)、25℃で固体)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛13を得た。
実施例13−2で得られた薄片状黒鉛分散液13を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜13を得た。
黒鉛膜13についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.5%であった。また、黒鉛膜13のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜13についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、82%であった。
黒鉛膜13のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.13であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.40であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、フッ素系溶剤をパーフルオロカーボン(CxF2x+2、x=12)、3M社製フロリナートFC−43、表面張力16mN/m)10mL(18.7g)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛14を得た。分散剤(東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸)の前記フッ素系溶剤に対する溶解度は0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度は25(g/100g溶媒)であった。
実施例14−2で得られた薄片状黒鉛分散液14を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜14を得た。
黒鉛膜14についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜14のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜14についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、75%であった。
黒鉛膜14のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.09であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.35であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、フッ素系溶剤をハイドロフルオロカーボン(CxHyF(2x+2-y)x=12(主成分))、旭硝子社製アサヒクリンAC−2000、表面張力13.4mN/m)10mL(16.7g)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛15を得た。分散剤(東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸)の前記フッ素系溶剤に対する溶解度は0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度は25(g/100g溶媒)であった。
実施例15−2で得られた薄片状黒鉛分散液15を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜15を得た。
黒鉛膜15についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は1.4%であった。また、黒鉛膜15のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜15についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は96%であり、酸素原子の組成は4%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、80%であった。
黒鉛膜15のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.08であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.44であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.7(g/100g溶媒)、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして比較薄片状黒鉛4を得た。
比較例4−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液4を、沈殿を含めた状態で孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較黒鉛膜4を得た。
比較黒鉛膜4についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は、ノイズ(0.2%)を除くと0であった。また、比較黒鉛膜4のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
比較黒鉛膜4についてラマン測定を行った。その結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.08であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.18であり、薄片状黒鉛の厚みがそれほど薄くないことを裏付ける結果を得た。
実施例8−2において水の代わりにトルエン(前記分散剤の溶解度が1(g/100g溶媒))を用いた以外は実施例8−2と同様にして比較薄片状黒鉛分散液5を得た。当該比較薄片状黒鉛分散液5は沈殿が生じていた。混合液をデカンテーションして上澄み液を除去後、沈殿を目開き100μmのナイロンメッシュで濾別し加熱真空オーブンを用いて乾燥後に質量を測定すると、沈殿の質量は原料に対して80質量%であった。厚みが50nm以下の薄片状黒鉛は沈殿しないので、厚みが50nm以下の薄片状黒鉛の割合は少なくとも20質量%以下である。厚みが50nm以下の薄片状黒鉛は、厚みが50nm超過の薄片状黒鉛に比べて面方向のサイズが同じか小さい場合が多いことを考慮すると、厚みの分だけ質量は軽いので、比較薄片状黒鉛分散液5において少なくとも20個数%以下と言える。
比較例5−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液5を、沈殿を含めた状態で孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し、水で洗浄することにより、比較黒鉛膜5を得た。
比較黒鉛膜5についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.2%)を除くと0であった。また、比較黒鉛膜5のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
比較黒鉛膜5についてラマン測定を行った。その結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.17であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.18であり、薄片状黒鉛の厚みがそれほど薄くないことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、前記フッ素系溶剤を水(表面張力(25℃)72mN/m)に変更し、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(水に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例8−1と同様にして比較薄片状黒鉛6を得た。
比較例6−2で得られた比較薄片状黒鉛分散液6を、沈殿を含めた状態で孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較黒鉛膜6を得た。
比較黒鉛膜6についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.2%)を除くと0であった。また、比較黒鉛膜6のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
比較黒鉛膜6についてラマン測定を行った。その結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.16であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.17であり、薄片状黒鉛の厚みがそれほど薄くないことを裏付ける結果を得た。
自立膜が形成された実施例8、9、11、13、14及び15の黒鉛膜について熱拡散率を測定したところ、鉄(1.4×10−5m2/s)、SUS304(ステンレス)(0.4×10−5m2/s)等に比べて同等または高い値を示し、熱伝導性に優れていることが確認された。
一方、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例4では、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。また、得られた比較黒鉛膜4は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、比較例5でも、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。比較例5では、分散液を調製する際に、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)未満の溶媒を添加して分散液を調製したため沈殿が生じてしまった。また、得られた比較黒鉛膜5は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、比較例6でも、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上の薄片状黒鉛は得られなかった。黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例6では、分散液に沈殿が生じてしまった。また、得られた比較黒鉛膜6は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
以下第三の本発明の実施例を示すが、第三の本発明の実施例のうち、実施例1〜6及び8〜15並びに比較例1〜6は、前記実施例Iシリーズの前記第一及び第二の発明の実施例1〜6及び8〜15並びに比較例1〜6と同じものである。そのため、第三の本発明の実施例のうち、実施例1〜6及び8〜15並びに比較例1〜6のここでの詳細な記載は省略する。
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤をヘプタン(表面張力19.65mN/m)10mL(6.8g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ヘプタンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例1−1と同様にして薄片状黒鉛7を得た。
実施例7−1で得られた薄片状黒鉛7を含む混合液から、ヘプタンを除去し、水10mLを添加することにより、薄片状黒鉛分散液7を得た。(分散液に分散した薄片状黒鉛の収率100%)。薄片状黒鉛分散液7を用いて、実施例1−2と同様にシリコンウエハー上に独立分散した状態で存在する薄片状黒鉛7を作製し、AFMにより薄片状黒鉛7の厚みを測定したところ、4nm〜37nmの範囲であり、平均厚みは30nmであった。
実施例7−2で得られた薄片状黒鉛分散液7を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜7を得た。黒鉛膜7のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜7についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、74%であった。
自立膜が形成された実施例1,2,4及び6の黒鉛膜について熱拡散率を測定したところ、鉄(1.4×10−5m2/s)、SUS304(ステンレス)(0.4×10−5m2/s)等に比べて同等または高い値を示し、熱伝導性に優れていることが確認された。
一方、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例1の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜1は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、分散液を調製する際に、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)未満の溶媒を添加して分散液を調製した比較例2の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜2は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例3の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は0%であった。また、得られた比較黒鉛膜3は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
実施例8−1において、前記フッ素系溶剤をヘプタン(表面張力19.65mN/m)20mL(13.6g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ヘプタンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛16を得た。
実施例16−2で得られた薄片状黒鉛分散液16を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜16を得た。黒鉛膜16のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜16についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、70%であった。
黒鉛膜16のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.08であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.43であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、前記フッ素系溶剤を2,4−ジメチルペンタン(表面張力17.7mN/m)20mL(13.4g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、2,4−ジメチルペンタンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛17を得た。
実施例17−2で得られた薄片状黒鉛分散液17を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜17を得た。黒鉛膜17のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜17についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、73%であった。
黒鉛膜17のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.08であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.43であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
実施例8−1において、前記フッ素系溶剤をポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製KF−96L−1cs、表面張力16.9mN/m)20mL(16.4g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリジメチルシロキサンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例8−1と同様にして薄片状黒鉛18を得た。
実施例18−2で得られた薄片状黒鉛分散液18を濾過し、水で洗浄することにより、黒鉛膜18を得た。黒鉛膜18のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料黒鉛のACB−100と同様の0.3356nmを示した。
また、黒鉛膜18についてX線光電子分光法による測定を行ったところ、炭素原子の組成は95%であり、酸素原子の組成は5%であった。そして前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は、73%であった。
黒鉛膜18のラマン測定の結果、1300〜1400cm−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGが0.07であり、欠陥の少ないことを裏づける結果を得た。また2600〜2800cm-1の範囲にあるピーク強度(IG’)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比IG’/IGが0.46であり、薄片状黒鉛の厚みが薄いことを裏付ける結果を得た。
自立膜が形成された実施例8、9、11、13、14及び15の黒鉛膜について熱拡散率を測定したところ、鉄(1.4×10−5m2/s)、SUS304(ステンレス)(0.4×10−5m2/s)等に比べて同等または高い値を示し、熱伝導性に優れていることが確認された。
一方、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例4の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は低かった。また、得られた比較黒鉛膜4は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、分散液を調製する際に、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)未満の溶媒を添加して分散液を調製した比較例5の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は低かった。また、得られた比較黒鉛膜5は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
また、黒鉛分散時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例6の分散液は、沈殿が生じてしまい、分散液に分散した50nm以下の薄片状黒鉛の収率は低かった。また、得られた比較黒鉛膜6は抵抗値が高く、導電性に劣ることが示された。
Claims (4)
- 飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.5%以上であり、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.336nm以下であって、平均厚みが50nm以下である薄片状黒鉛。
- X線光電子分光法による測定で、炭素原子の組成は80%以上99%以下であり、酸素原子の組成は10%以下であり、前記炭素原子の有する結合のうち、炭素原子間でsp2結合を形成している結合の割合は60%以上である、請求項1に記載の薄片状黒鉛。
- 前記請求項1又は2に記載の薄片状黒鉛が積層されてなる、黒鉛材料。
- 前記請求項1又は2に記載の薄片状黒鉛が溶媒に分散されてなる、薄片状黒鉛分散液。
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