JP2016107811A - 車両用シートクッション - Google Patents
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Abstract
【課題】人の着座時や仰臥時にクッション性に富み、軽量化を実現でき、リサイクル性に優れる車両用シートクッションを提供することである。【解決手段】JIS K7221−2:2006記載の方法に準じて測定した曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡体からなる複数の独立した棒状又は板状の、着座時に身体が当接する座面を有し下方に曲げ変形する座面支持体を備えたシートバックパッドと、前記シートバックパッドの座面支持体の下方に前記座面支持体の曲げ変形を可能とし、かつ着座者の荷重による前記座面支持体の曲げ変形時の衝撃に対して減衰性を発揮する弾性体と、を備えることにより課題解決できた。【選択図】図3
Description
本発明は、車両用シートクッションの軽量化に関し、特にリサイクル性に富み、フィット感、クッション性に富むことを特徴とする車両用シートクッションに関する。
一般に車両用シートクッションは、金属製のシートフレームやワイヤーを内包し、一般にウレタンフォームをクッション材として用い全体を表皮材で被覆していた。乗員の体重は主にシートフレームやワイヤーと表皮材との間に挟まれたウレタンフォーム層を圧縮方向に撓ませることにより支えられており、クッション性及びフィット性は主にウレタンフォーム層が圧縮方向に撓んだ際の反力、復元力及び撓みによって得られていた。
また、シートクッションの軽量化に関する技術として、特許文献1にシートフレームが枠状を呈し、シートフレームの断面が山形を呈すると共に、シートフレームの枠状の内周側に前記山形の一側を形成して着座者に対向する傾斜面を有し、シートフレームに弾性を有するネットを被せ、その周縁部をシートフレームの山形上から引き回して該山形の他側に固定することで凹曲面状の着座面を形成するように張設し、ネットとシートフレームの傾斜面との間に角度を設けた技術が開示されている。
他の軽量化に関する技術としては、特許文献2に、シートフレームに着脱可能に取り付けられたベースプレートと、該ベースプレート上に配置されたブロックと、該ブロック上に配置されたスプリングプレートと、該スプリングプレートを被覆する表皮とを備える着座部を有し、前記ブロックは、前記ベースプレートと前記スプリングプレート間に所定の空間を形成するように配置され、前記スプリングプレートは、弾性を有する発泡体であるPP(ポリプロピレン)ビーズ発泡体、PE(ポリエチレン)ビーズ発泡体、PP発泡体、PE発泡体、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)発泡体、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)及びウレタンフォーム材のいずれかで形成されている発泡体で成形され、前記スプリングシートは、前記ベースプレート方向への力が加えられたときに前記空間内へ撓む車両用シートに関する技術が開示されている。
従来の一般的なシートクッションではクッション材としてウレタンフォームが使用されており、クッション性が極めて高く快適性に優れているため今もなお、多用されている。しかし、該ウレタンフォームはリサイクル性能に劣るという問題があった。さらに、シートクッションは一般的なクッション性の他に、自動車の運動に伴い乗員に加えられる前後左右の加速度に対し、乗員の身体を最適な位置で支える機能も求められる。長時間の乗車時の疲労を軽減するためにも最適な位置で身体を支える必要がある。このため非常に軽量で軟質なウレタンフォームのみでは機能を満足することができず、ある程度の剛性を得るためにはウレタンフォームの密度を一定以上の密度とする必要があり、このため軽量化が進まないという問題があった。
特許文献1に記載の技術は、乗員による荷重を支えるネット素材がシートバック周囲に設置されたシートフレームに引き込まれ強固に固定されており、乗員の着座により加えられた荷重はネット素材を通じ最終的にシートフレームの剛性により支えられていた。従ってシートフレームの構造は一定以上の強度を保たねばならず、このため従来のクッション材に相当するネット素材自体の重量は軽量であるものの、シートフレームの重量は増加傾向にあり全体としての重量軽減効果が十分ではないという問題があった。
さらに、ネット素材のクッション性は主に素材の伸びによって得られるため限定されており、長期間の使用によりたるみが発生し商品性に劣る傾向にもあった。またシートフレームに平面的なネット素材を張架する構造であるため、基本的なシートクッションの形状は平面的であり、乗員の身体を最適な位置で支えるために必要な三次元形状を得ることが困難であり、その結果、乗員に不快感を与えるという問題があった。これは自動車の運動によって乗員へ横Gが加えられる際等、不安定なハンモック状のネット素材では乗員の身体を安定して支えることができないからである。
次に、特許文献2の技術については、スプリングプレートは外形略矩形の板状発泡体であり該スプリングプレートの乗員が着座する側には横方向に複数の溝が形成されている。しかし、溝部が浅いと柔軟性を与えることができず、溝部が深ければクッション材が撓む際、わずかに残った溝部底部の連結部分へ過大な引っ張り力が集中し大きな伸び変形が発生するため復元不能な永久変形を生じる、あるいは破断する恐れが高かった。溝底部にある連結部分が一部でも破壊されれば支えを一気に失いクッション材全体の見かけ硬さが急激に低下し、クッション材としての機能が大きく損なわれる。従って破壊を回避するためクッション材の撓みを一定以上に設計することが事実上困難であり、十分な着座時のフィット感及び快適性を付与することが困難であった。
また、特許文献2の技術は、乗員の体格に応じて、高さの異なるブロックを適宜選択することにより個人的に良好な着座感を得ることができるとの記載があるが、乗員は体重の軽重によって着座する前に自分に適する高さのブロックに変えなければならないという、現実的には実施困難な対応をしなければならないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、乗員の着座時のフィット感やクッション性に富み、軽量化を実現でき、リサイクル性に富む車両用シートクッションを提供することである。
本発明において、合成樹脂発泡体とは、柔軟で曲げ変形が可能であり、かつ復元性に優れたものであり、JIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下でスキンを取り除いた長さ350mm
、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで撓みが最大90mmとなるまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて測定した曲げ撓みが20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡成形体を指す。具体的には発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、その他ポリオレフィン系樹脂発泡体、あるいは改質ポリスチレン系樹脂発泡体などを指す。前記合成樹脂発泡体には、ビーズ発泡成形体が含まれ、ビーズ発泡成形体としては、ポリプロピレン系ビーズ発泡成形体、ポリエチレン系ビーズ発泡体などがあげられる。
、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで撓みが最大90mmとなるまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて測定した曲げ撓みが20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡成形体を指す。具体的には発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、その他ポリオレフィン系樹脂発泡体、あるいは改質ポリスチレン系樹脂発泡体などを指す。前記合成樹脂発泡体には、ビーズ発泡成形体が含まれ、ビーズ発泡成形体としては、ポリプロピレン系ビーズ発泡成形体、ポリエチレン系ビーズ発泡体などがあげられる。
材料の具体的選定にあたっては、更に長さ400mm程度の棒状又は板状の試験片の両端を支持し、中央を25mm前後押し下げ30分間保持し、その後荷重を解放した直後にサンプルの変形からの回復が90%以上あることが望ましい。あるいは従来のウレタンフォーム製のシートクッションで行なわれていた試験に準じ、両端を支持したサンプルの中央部を所定回数繰り返し押し下げ変形させ、その後に測定された残留歪み(残留変位量ともいう。)が所定量以下であることが望ましい。
このような条件を満たす材料として、例えば発泡ポリプロピレンの密度0.06g/cm3〜0.015g/cm3、より好ましくは密度0.035g/cm3〜0.015g/cm3、または発泡ポリエチレンの密度0.08g/cm3〜0.03g/cm3などが好ましい。一方、柔軟性に乏しく曲げ変形により容易に破断の恐れがある硬質発泡ウレタンや発泡ポリスチレンなどは好ましくない。
発明者らは軽量化を図るために材料の検討を進めた。連続気泡構造であるウレタンフォームに変わりうる素材の例として、一般に独立気泡構造を持つ合成樹脂発泡体は、従来からシートクッションのクッション材として一般に用いられてきたウレタンフォームに比し、軽量で剛性に富みリサイクルも容易である等の利点を持っていたが、圧縮方向での撓み、復元力をクッションとして使用する場合、内包する空気の反発力により発泡体の変形に伴い反力が急激に高まる傾向にあるため、クッション性に欠け硬く感じられ快適性に劣っていた。
また一般に独立気泡構造を持つ合成樹脂発泡体は、ウレタンフォームと同様、圧縮方向に撓ませクッション材として使用する場合、長期間の使用に従い徐々に回復力を失いクリープが発生する。これは気泡を構成する樹脂皮膜の繰り返し変形による疲労と内包する空気の圧力低下によるところが大きい。従って長期間使用される自動車用シートバックの素材としては好ましいものではなかった。
そこで、発明者らは合成樹脂発泡体の物性を様々な角度から分析することにより、従来の一般的なクッション材として使用されてきた圧縮方向に撓ませる構造ではなく、曲げ変形が可能で復元性に優れた合成樹脂発泡体からなる支持体の曲げ変形とその回復性をクッション材として利用する方法が最適であることを見出し本発明に至った。
「発明が解決しようとする課題」に記載した課題を解決するために、請求項1に記載の車両用シートクッション2の発明は、JIS K7221−2:2006記載の方法に準じて測定した曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡体からなる複数の棒状又は複数の板状の、着座時に身体が当接する座面を有し下方に曲げ変形する座面支持体5を備えたシートクッションパッド3と、前記シートクッションパッド3の座面支持体5の下方に前記座面支持体5の曲げ変形を可能とし、かつ着座者の荷重による前記座面支持体5の曲げ変形に対して圧縮変形して減衰性を有する弾性体11と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の車両用シートクッション2は、請求項1において、前記座面支持体5と、シートクッションパッドの支持体19との間に、前記弾性体11を配設したことを特徴とする。
請求項3に記載の車両用シートクッション2は、請求項1又は2において、前記弾性体11が、JIS K6400−2:2012に規定された25%圧縮時の硬さが20〜600Nであることを特徴とする。
請求項4に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記弾性体11内に合成樹脂発泡体を内在させたことを特徴とする。
請求項5に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記複数の棒状又は複数の板状の座面支持体5間の間隙15から、前記座面支持体5の下方に配設させた前記弾性体11を、前記座面支持体5の座面4から上方に突出させたことを特徴とする。
請求項6に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記弾性体11内に、孔や空洞を設けたことを特徴とする。
請求項7に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記座面支持体5の座面4を覆うように弾性体11を覆設したことを特徴とする。
請求項8に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記座面支持体5の着座者の臀部が当接する範囲を薄肉形状にすることを特徴とする。
請求項9に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、車両用シートクッション2の前部に側面断面視で上下方向及び前下方向の範囲が合成樹脂発泡体のみからなる部位を設け、該部位がサブマリン防止部20であることを特徴とする。
請求項10に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、平面視で下方に弾性体11を配設した範囲に相当する範囲の座面支持体5の厚みを一定にし、弾性体11の厚みを部位によって変えることにより前記座面支持体5と弾性体11との接触点を複数設けることによって着座者の荷重を分散させることを特徴とする。
請求項11に記載の車両用シートクッション2は、請求項1乃至10のいずれかにおいて、前記座面を有する座面支持体5のシート幅方向における両側にそれぞれ設けられた左右のサイドサポート部6が、前記サイドサポート部6の外周壁側を前記合成樹脂発泡体とし、前記外周壁に囲繞された内部に弾性体11を配設したことを特徴とする。
請求項1に記載の車両用シートクッション2の発明は、いずれも従来一般的に使用されていたウレタンフォームを合成樹脂発泡体に置換することが可能なものであり、そのため軽量化、リサイクル性の向上が可能となるものである。また、比較的硬質でありクッション性、フィット性、耐クリープ性に劣っていた合成樹脂発泡体を使用するにもかかわらず、高いクッション性、フィット性を付与させることが可能であり、設計の自由度が高く乗員の身体を適切に支持し高い快適性を得ることができ、長期間の使用によっても従来のすべてをウレタンフォームからなるシートクッションパッドと同等の良好な耐クリープ性を発揮するため高い商品性を有するという効果を奏する。
さらに、座面支持体5の曲げ変形する領域に、圧縮可能な弾性体11であって、着座者の荷重による座面支持体5の曲げ変形時の衝撃に対して減衰性を発揮する弾性体11を配設することによって、座面支持体5に生ずる曲げ変形を減衰させることができ、クッション性を高めることができる。また、支持体5に対する、例えば子供の飛び跳ねや重量物の衝突により生ずる衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに、剛性のある、シートクッションパッドの支持体19により、弾性体11が支持されるため、弾性体11の圧縮変形が更に確実なものになるという効果を奏する。また、シートクッションパッド3はその上面側を合成樹脂発泡体で下方側を弾性体11で構成しているため、平面視で車両用シートバック2の座面支持体5以外の部位においても、合成樹脂発泡体の厚みを薄くしかつ弾性体11が減衰性を有し圧縮変形して復元性を有することによってクッション性を高めることができ、合成樹脂発泡体が過度な曲げ変形などで破壊されることを有効に防止することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに使用する弾性体11が車両用シートクッション2のクッション材として適当な圧縮硬さと減衰性を有し、圧縮変形からの復元性を有する弾性体11とすることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに合成樹脂発泡体が弾性体11に内在しているため、乗員の体重差等により車両用シートクッション2に加えられる体重が変化する際、段階的にクッション性を変化させたり、臀部等必要な個所のみ部分的に硬さを変化させることができるという効果を奏する。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに着座者に対して、座面支持体5の棒状または板状の支持体相互に生じる段差により角部の凹凸を感じるという違和感を緩和するという効果を奏する。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、弾性体11に孔13や空洞12を設けることにより、さらにきめ細かく弾性体11のクッション性を部分的に調整したり、通気性を向上させるという効果を奏する。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに着座者が着座した瞬間のクッション性を高めることができるという効果を奏する。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに着座時に臀部が沈み込みやすいようにするので高いクッション性を有することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに車両衝突時に着座者の臀部が、車両用シートクッション2の上面に沿って前方へ滑ることを防止できるので、安全性を高められるという効果を奏する。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらに着座者の身体により加えられる荷重に対し座面支持体5と弾性体11からなる車両用シートクッション2の部分的なクッション性をさらに細かく調整可能とすることができる。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏するとともに、さらにサイドサポート部6も従来のウレタンフォームのみからなる形態に比較して、軽量化やリサイクル性を向上させ、クッション性、フィット性、耐クリープ性に劣っていた合成樹脂発泡体を使用するにもかかわらず、サイドサポート部6が容易に曲げ変形及び圧縮変形しやすいため、さらにクッション性、フィット性を高めることができる。
以下、本発明にかかる車両用シートクッション2の実施形態について説明する。
本発明にかかる車両用シートクッション2は、図1に示す車両用シート1を構成する車両用シートクッション2であって、図3に示すように、JIS K7221−2:2006記載の方法に準じて測定した曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡体からなる複数の棒状又は複数の板状の、着座時に身体が当接する座面4を有し下方に曲げ変形する座面支持体5を備えたシートクッションパッド3と、前記シートクッションパッド3の座面支持体5の下方に前記座面支持体5の曲げ変形を可能とし、かつ着座者の荷重による前記座面支持体5の曲げ変形に対して圧縮変形して減衰性を有する弾性体11と、を備える。
車両用シートクッション2は、図3(a)に示すように、着座者側から順に、表皮(図示なし)、座面支持体5、弾性体11、底面板17等のシートクッションパッドの支持体19が配設される。底面板17は、合成樹脂、金属板、又はそれらの複合材からなり、剛性を有し、弾性体11の圧縮変形のときの壁的存在であり、図3又は図6に示すように座面支持体5とは別体の形態、又は、図4又は図5に示すように座面支持体5と一体の形態がある。
合成樹脂発泡体からなる複数の棒状又は複数の板状の座面支持体5と、座面支持体5の下方に前記座面支持体5の曲げ変形を可能とする減衰性を有する弾性体11との形態を、図2で示す表皮を取り除いた車両用シートクッション2のA−A断面図で説明する。
図2に示すように、シートクッションパッド3には、複数の棒状又は複数の板状の座面支持体5が構成要素としてあり、前記座面支持体5が着座者の荷重によって下方に曲げ変形する。着座者の荷重が加わったときの曲げ変形の大きさを減じるために、図3に示すように、前記座面支持体5の曲げ変形側の領域に圧縮変形しやすく前記荷重に対して減衰性を有する弾性体11を配設する。
前記弾性体11としては、ウレタンフォーム、発泡樹脂成形体、発泡樹脂の粒子、発泡ゴム、エストラマー、繊維状物、立体編物、ウール、絹、綿、三次元スプリング構造体等の繊維の接合物、気体を密封した伸縮可能な袋状体又は球状体等の、繰り返し荷重に対して復元性を有し、減衰性を有する材料、例えば繊維やゴムを使った構成物からなり、軟質発泡材料の硬さの求め方に関するJIS K6400−2:2012に規定された、直径200mmの平らな円盤の加圧板で25%圧縮時(D法)の硬さが好ましくは20〜600Nであるものをいう。弾性体11の形状や大きさによって減衰性が最適になる硬さを設定する。20N未満であれば柔らか過ぎて圧縮された後に元の形態に復帰しようとする反力が弱すぎて減衰性を有さない、600N超であれば荷重が負荷されたときに硬すぎて圧縮変形をせず減衰性を有さない。
座面支持体5と弾性体11との形態は、図4の個所イに示すように、座面支持体5間の間隙15に弾性体11を配設して座面4を平滑な面とする形態、図5(a)の個所ロに示すように、座面支持体5間の間隙15に弾性体11を配設してさらに延出させて座面支持体5の座面4より突出させた形態、又は、図4(b)に示すように、座面支持体5間の間隙15に弾性体11を配設せずに座面支持体5の曲げ変形する領域に弾性体11を配設した形態等があり、座面支持体5の曲げ変形する側である、座面支持体5の背面側に弾性体11を配設する形態であればよい。
また、弾性体11を、図3又は図4に示すように座面支持体5の裏面と、底面板17等のシートクッションパッドの支持体19との間に配設する。前記シートクッションパッドの支持体19とは、車両用シートクッション2の底部を形成し、図13(a)に示すように一般には樹脂又は金属板からなり剛性を有する底面板17が相当し、あるいは図13(b)に示すようにシートクッションフレーム8に張架されたワイヤー、スプリング18等から構成され、シートクッションパッド3に接し下方から支持する構成要素をいう。これによって、平面視で車両用シートクッション2の曲げ変形する部位以外の部位においてもクッション性を高めることができる。
さらに、図6に示すように弾性体11内に合成樹脂発泡体10を内在させてもよい。この形態の場合においても、合成樹脂発泡体10を内在させた弾性体11全体で、25%圧縮時の硬さが好ましくは20〜600Nとなるようにする。内在させた合成樹脂発泡体10は、柱状、球状、立方体、直方体、円錐形等いずれの形態でもよい。内在させる前記合成樹脂発泡体10の形態、位置、数、大きさは、弾性体11の形態や大きさに応じて快適なクッション性が得られるように、適宜設ければよい。内在させる合成樹脂発泡体10によって、部分的に硬さの調整をすることができる
座面支持体5と弾性体11との形態はいずれの形態であっても、座面支持体5の曲げ変形する側に減衰性を有する弾性体11を配設しているので、着座者の荷重を座面支持体5の曲げ変形と弾性体11の圧縮変形とで支えるため、走行中の旋回運動等で乗員の身体へ横方向に加えられる加速度に対しても、より高い追従性とクッション性を発揮する。また、重量物の車両用シートバック2上の不特定位置への衝突等に対しても弾性体11によって合成樹脂発泡体からなる座面支持体5の破損を防ぐことができる。
座面4の着座者側には表皮が覆設されるので、棒状又は板状の座面支持体5の角を着座者は違和感として感じにくいが、図5(a)や(b)に示すように弾性体11を座面支持体5の表面から突出させると棒状又は板状の座面支持体5の角を着座者は違和感としてさらに感じにくくなる。
また、図8に示すように、弾性体11内に空洞12を設けたり、図9(a)、(b)又は(c)に示すように上下方向に孔13を設けたり、図9(d)に示すように前後方向に孔13を設ける。孔13は貫通孔であっても貫通していない孔であってもよい。弾性体11に孔13や空洞12を設けることにより、さらにきめ細かく弾性体11のクッション性を部分的に調整したり、通気性を向上させることができる。
次に、図10に示すように、車両用シートクッション2の前部に側面断面視で上下方向及び前下方向の範囲が合成樹脂発泡体のみからなる部位を設け、該部位がサブマリン防止部20を形成することができる。前記サブマリン防止部20の後方であって、座面支持体5の下方に弾性体11が配設される。
着座者の身体が前方へ押し出されようとする際、従来から一般的に使用されている発泡ポリウレタンでは車両用シートクッション2前方がほとんど抵抗なく変形し着座者の身体を支える抵抗を生じないのに対して、発泡プラスチックなどの本発明の合成樹脂発泡体は剛性を有しているため着座者の大腿部を有効に支え抵抗力を発揮することができる。よって、着座者の臀部が、車両衝突時に、車両用シートクッション2の上面に沿って前方へ滑ると、車両用シートクッション2の前部に形成された、剛性を有する合成樹脂発泡体からなるサブマリン防止部20に当接して臀部を停止させることができるので、安全性を高められるという効果を奏する。
次に、図12に示すように、座面支持体5の座面4側に弾性体11からなる層を形成させる。この形態の場合には、着座者は着座した瞬間はまず減衰性を有する弾性体11に当接するので、弾性体11の硬さを好ましくは20N〜250Nとした場合、着座した瞬間から柔らかい感触のクッション性を感じることができる。
次に、座面を有する座面支持体5のシート幅方向における両側にそれぞれ設けられた左右のサイドサポート部6の形態について説明する。図14又は図15に示すように、サイドサポート部6の外周壁側を合成樹脂発泡体で形成し、前記外周壁に囲繞された内部側に弾性体11を配設した形態である。そして、前記サイドサポート部6の外周壁が、図14に示すようにサイドサポート部6の外周壁と座面支持体5とが連続的につながった形態、又は、図15に示すように着座者が当接する側であって、前記座面支持体5と前記サイドサポート部6の外周壁の境目である個所トにおいて、前記座面支持体5と前記サイドサポート部6の外周壁とが分離される形態がある。
いずれかの形態であっても、内部に減衰性を有する弾性体11を配設させているので、サイドサポート部6のクッション性は高い。
図14(a)や(b)のヘ部に示すように、サイドサポート部6における弾性体11と合成樹脂発泡体との割合で、クッション性を確保しながら可能限り合成樹脂発泡体の割合を大きくすることによって、車両用シートバック2の軽量化を図ることができる。
また、図15に示すように、座面支持体5とサイドサポート部6の外周壁とを分離する形態とすることによって、サイドサポート部6が座面支持体5の曲げ変形に引っ張られて内倒れすることが発生しにくくなることから着座者は左右方向からの圧迫感を感じにくくなり、サイドサポート部6自体も軽い荷重で変形しやすいことからクッション性が高まる。
次に、図7の個所ニに示すように、座面支持体5の着座者の臀部が当接する範囲を薄肉形状にすることによって、座面支持体5の個所ニの範囲の剛性を低下させて着座者の臀部が深く沈み込むようにする。これにより、高いクッション性を有する。
次に、図11に示すように、平面視で下方に弾性体11を配設した範囲に相当する範囲の座面支持体5の厚みを一定にし、弾性体11の厚みを部位によって変えることにより前記座面支持体5と弾性体11との接触点を複数設けることができる。これによって着座者の身体により加えられる荷重に対し座面支持体5と弾性体11からなる車両用シートクッション2の部分的なクッション性をさらに細かく調整可能とすることができる。
次に、合成樹脂発泡体について説明する。本発明における合成樹脂発泡体は、柔軟で曲げ変形が可能であり、かつ復元性に優れたものであり、JIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下でスキンを取り除いた長さ350mm、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで最大90mmまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて測定した曲げ撓みが20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡成形体を指す。曲げ撓みが20mm未満で破壊を生じるような合成樹脂発泡成形体は、耐久性面から不適である。身体による押圧を支えるため必要となる支持体3の断面が非常に大きくなり、20mm撓み時の荷重が、2N未満又は100N超の場合、乗員によって加えられる荷重によって好ましい撓み量を発生させることが困難となり、ともに好ましい設計が困難となる。具体的には発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、その他ポリオレフィン系樹脂発泡体、あるいは改質ポリスチレン系樹脂発泡体などを指す。なお、上記発泡体の中でも樹脂発泡粒子の型内成形体が、フィット感を考慮した形状自由度(設計容易性)の観点から好ましい。
本発明で用いられる発泡粒子を構成するポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂であり、具体的にはポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、さらにそれらの2種以上の混合物などが挙げられる。なお、上記「主成分とする」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン系樹脂中に50重量%以上含まれることを意味し、その含有量は好ましくは75重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位が50重量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他のオレフィンは、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましく、下限値としては0.3重量%であることが好ましい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独または2種以上を混合して用いることができる。ポリプロピレン系樹脂は、JIS K7161:1994(試験片:JIS K 7162(1994)記載の試験片1A形(射出成形で直接成形)、試験速度:1mm/min)に規定する引張弾性率(E)の値で600MPa以上の基材樹脂を発泡してなる樹脂発泡体であることがのぞましい。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位が50重量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体、エチレン−ブテン1共重合体、エチレン−ヘキセン1共重合体、エチレン−4メチルペンテン1共重合体、エチレン−オクテン1共重合体等、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
そして、前記合成樹脂発泡体の具体的選定にあたっては、長さ400mm程度の棒状の試験片の両端を支持し、中央を25mm前後押し下げ30分間保持し、その後荷重を解放した後にサンプルの変形からの回復が90%以上ある材料、又は、従来のウレタンフォーム製のシートバックで行なわれていた試験に準じ、両端を支持したサンプルの中央部を所定回数繰り返し押し下げ変形させ、その後に測定された残留歪みが所定量以下である材料が望ましい。該所定回数又は該所定量は各車両メーカーが従来材料を選定するときに任意に定めていた仕様に従う。
このような条件を満たす材料として、例えば発泡ポリプロピレンの密度0.06g/cm3〜0.015g/cm3、より好ましくは密度0.035g/cm3〜0.015g/cm3、又は発泡ポリエチレンの密度0.08g/cm3〜0.03g/cm3などが好ましい。このような材料はJIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲下でスキンを取り除いた長さ350mm、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで最大90mmまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて行う試験において、曲げ撓み20mm時の荷重が2〜100Nであり曲げに対する柔軟性と共に曲げ剛性にも優れているが、一方従来から一般に用いられていた軟質ウレタンフォームは、曲げ撓みが20mm時の荷重が0.46Nで、曲げ剛性が大きく劣るため、本発明のシートバックを構成する材料としては適切でない。
以下に、合成樹脂発泡体を使用した場合のクリープ性や曲げ剛性について説明する。まず、クリープ性を評価するために、JIS K 6767:1999による圧縮永久歪を測定した。縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片を25%歪んだ状態に圧縮し、温度23℃±2℃において22時間放置する。圧縮終了24時間後の厚さを測定する。なお、圧縮永久歪は、圧縮永久歪(%)=(試験片元厚み(mm)−圧縮終了24時間後の厚さ(mm))÷試験片元厚み(mm)×100で求めた。
試験の結果、45倍ポリプロピレン発泡粒子成形体の圧縮永久歪は11%であった。一方、同測定方法による発泡ポリウレタンの圧縮永久歪は2%以下である。このことは、従来、シートバックのクッション材として一般に用いられて圧縮変形によりクッション性を発揮するウレタンフォームに対し、単純に合成樹脂発泡体に置き換えたのみでは圧縮永久歪が発生し、当初のクッション性の維持が困難であり商品性が低下することが示されている。
1 車両用シート
2 車両用シートクッション
3 シートクッションパッド
4 座面
5 座面支持体
6 サイドサポート部
8 シートクッションフレーム
10 合成樹脂発泡体
11 弾性体
12 空洞
13 孔
15 間隙
17 底面板
18 スプリング
19 シートクッションパッドの支持体
20 サブマリン防止部
2 車両用シートクッション
3 シートクッションパッド
4 座面
5 座面支持体
6 サイドサポート部
8 シートクッションフレーム
10 合成樹脂発泡体
11 弾性体
12 空洞
13 孔
15 間隙
17 底面板
18 スプリング
19 シートクッションパッドの支持体
20 サブマリン防止部
Claims (11)
- JIS K7221−2:2006記載の方法に準じて測定した曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡体からなる複数の棒状又は複数の板状の、着座時に身体が当接する座面を有し下方に曲げ変形する座面支持体を備えたシートクッションパッドと、
前記シートクッションパッドの座面支持体の下方に前記座面支持体の曲げ変形を可能とし、かつ着座者の荷重による前記座面支持体の曲げ変形に対して圧縮変形して減衰性を有する弾性体と、を備えることを特徴とする車両用シートクッション。 - 前記座面支持体と、シートクッションパッドの支持体との間に、前記弾性体を配設したことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートクッション。
- 前記弾性体が、JIS K6400−2:2012に規定された25%圧縮時の硬さが20〜600Nであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シートクッション。
- 前記弾性体内に合成樹脂発泡体を内在させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 前記複数の棒状又は複数の板状の座面支持体間の間隙から、前記座面支持体の下方に配設させた前記弾性体を、前記座面支持体の座面から上方に突出させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 前記弾性体内に、孔や空洞を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 前記座面支持体の座面を覆うように弾性体を覆設したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 前記座面支持体の着座者の臀部が当接する範囲を薄肉形状にすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 車両用シートクッションの前部に側面断面視で上下方向及び前下方向の範囲が合成樹脂発泡体のみからなる部位を設け、該部位がサブマリン防止部であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 平面視で下方に弾性体を配設した範囲に相当する範囲の座面支持体の厚みを一定にし、弾性体の厚みを部位によって変えることにより前記座面支持体と弾性体との接触点を複数設けることによって着座者の荷重を分散させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用シートクッション。
- 前記座面を有する座面支持体のシート幅方向における両側にそれぞれ設けられた左右のサイドサポート部が、前記サイドサポート部の外周壁側を前記合成樹脂発泡体とし、前記外周壁に囲繞された内部に弾性体を配設したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用シートクッション。
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JP2016107811A true JP2016107811A (ja) | 2016-06-20 |
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Family Applications (1)
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JP2014247047A Pending JP2016107811A (ja) | 2014-12-05 | 2014-12-05 | 車両用シートクッション |
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JP (1) | JP2016107811A (ja) |
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2014
- 2014-12-05 JP JP2014247047A patent/JP2016107811A/ja active Pending
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