JP2016037094A - 車両用シート - Google Patents

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Hiroaki Tanigawa
浩明 谷川
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Abstract

【課題】合成樹脂発泡体からなるシートパッドを使用した車両用シートであって、異常な出来事によって局部的に強い衝撃荷重を受けても破損を防止できる車両用シートを提供することである。【解決手段】合成樹脂発泡体からなり、着座者の荷重がかかる面が曲げ変形する車両用シートパッドと、前記車両用シートパッドの曲げ変形を可能とする空間部と、前記車両用シートパッドの周縁部を支持するシートフレームと、を備え、前記車両用シートパッドの曲げ変形する方向側の面に接して、伸縮性を有する帯状の補助支持体を張設することにより課題解決できた。【選択図】図4

Description

本発明は、車両用シートクッションや車両用シートバックという車両用シートの軽量化に関し、特にリサイクル性に富み、フィット感、クッション性に富む車両用シートに関する。
一般に車両用シートは、金属製のシートフレームやワイヤーを内包し、一般にウレタンフォームをクッション材として用い全体を表皮材で被覆していた。乗員の体重は主にシートフレームやワイヤーと表皮材との間に挟まれたウレタンフォーム層を圧縮方向に撓ませることにより支えられており、クッション性及びフィット性は主にウレタンフォーム層が圧縮方向に撓んだ際の反力、復元力及び撓みによって得られていた。
また、車両用シートの軽量化に関する技術として、特許文献1にシートフレームが枠状を呈し、シートフレームの断面が山形を呈すると共に、シートフレームの枠状の内周側に前記山形の一側を形成して着座者に対向する傾斜面を有し、シートフレームに弾性を有するネットを被せ、その周縁部をシートフレームの山形上から引き回して該山形の他側に固定することで凹曲面状の着座面を形成するように張設し、ネットとシートフレームの傾斜面との間に角度を設けた技術が開示されている。
他の軽量化に関する技術としては、特許文献2に、シートフレームに着脱可能に取り付けられたベースプレートと、該ベースプレート上に配置されたブロックと、該ブロック上に配置されたスプリングプレートと、該スプリングプレートを被覆する表皮とを備える着座部を有し、前記ブロックは、前記ベースプレートと前記スプリングプレート間に所定の空間を形成するように配置され、前記スプリングプレートは、弾性を有する発泡体であるPP(ポリプロピレン)ビーズ発泡体、PE(ポリエチレン)ビーズ発泡体、PP発泡体、PE発泡体、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン樹脂)発泡体、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)及びウレタンフォーム材のいずれかで形成されている発泡体で成形され、前記スプリングシートは、前記ベースプレート方向への力が加えられたときに前記空間内へ撓む車両用シートに関する技術が開示されている。
特開2002−28044号公報 特許第4009490号公報
従来の一般的な車両用シートではクッション材としてウレタンフォームが使用されており、クッション性が極めて高く快適性に優れているため今も尚、多用されている。しかし、該ウレタンフォームはリサイクル性能に劣るという問題があった。さらに、シートバックは一般的なクッション性の他に、自動車の運動に伴い乗員に加えられる前後左右の加速度に対し、乗員の身体を最適な位置で支える機能も求められる。長時間の乗車時の疲労を軽減するためにも最適な位置で身体を支える必要がある。このため非常に軽量で軟質なウレタンフォームのみでは機能を満足することができず、ある程度の剛性を得るためにはウレタンフォームの密度を一定以上の密度とする必要があり、このため軽量化が進まないという問題があった。
特許文献1に記載の技術は、乗員による荷重を支えるネット素材がシートバック周囲に設置されたシートフレームに引き込まれ強固に固定されており、乗員の着座により加えられた荷重はネット素材を通じ最終的にシートフレームの剛性により支えられていた。従ってシートフレームの構造は一定以上の強度を保たねばならず、このため従来のクッション材に相当するネット素材自体の重量は軽量であるものの、シートフレームの重量は増加傾向にあり全体としての重量軽減効果が十分ではないという問題があった。
さらに、ネット素材のクッション性は主に素材の伸びによって得られるため限定されており、長期間の使用によりたるみが発生し商品性に劣る傾向にもあった。またシートフレームに平面的なネット素材を張架する構造であるため、基本的なシートバックの形状は平面的であり、乗員の身体を最適な位置で支えるために必要な三次元形状を得ることが困難であり、その結果、乗員に不快感を与えるという問題があった。これは自動車の運動によって乗員へ横Gが加えられる際等、不安定なハンモック状のネット素材では乗員の身体を安定して支えることができないからである。
次に、特許文献2の技術については、スプリングプレートは外形略矩形の板状発泡体であり該スプリングプレートの乗員が着座する側には横方向に複数の溝が形成されている。しかし、溝部が浅いと柔軟性を与えることができず、溝部が深ければクッション材が撓む際、わずかに残った溝部底部の連結部分へ過大な引っ張り力が集中し大きな伸び変形が発生するため復元不能な永久変形を生じる、あるいは破断する恐れが高かった。溝底部にある連結部分が一部でも破壊されれば支えを一気に失いクッション材全体の見かけ硬さが急激に低下し、クッション材としての機能が大きく損なわれる。従って破壊を回避するためクッション材の撓みを一定以上に設計することが事実上困難であり、十分な着座時のフィット感及び快適性を付与することが困難であった。
また、特許文献2の技術は、乗員の体格に応じて、高さの異なるブロックを適宜選択することにより個人的に良好な着座感を得ることができるとの記載があるが、乗員は体重の軽重によって着座する前に自分に適する高さのブロックに変えなければならないという、現実的には実施困難な対応をしなければならないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、乗員の着座時のフィット感やクッション性に富み、軽量化を実現でき、リサイクル性に富む車両用シートを提供することである。
本発明において、合成樹脂発泡体とは、柔軟で曲げ変形が可能であり、かつ復元性に優れたものであり、JIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下でスキンを取り除いた長さ350mm
、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで撓みが最大90mmとなるまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて測定した曲げ撓みが20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡成形体を指す。具体的には発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、その他ポリオレフィン系樹脂発泡体、あるいは改質ポリスチレン系樹脂発泡体などを指す。前記合成樹脂発泡体には、ビーズ発泡成形体が含まれ、ビーズ発泡成形体としては、ポリプロピレン系ビーズ発泡成形体、ポリエチレン系ビーズ発泡体などがあげられる。
材料の具体的選定にあたっては、更に長さ400mm程度の棒状又は板状の試験片の両端を支持し、中央を25mm前後押し下げ30分間保持し、その後荷重を解放した直後にサンプルの変形からの回復が90%以上あることが望ましい。あるいは従来のウレタンフォーム製のシートバックで行なわれていた試験に準じ、両端を支持したサンプルの中央部を所定回数繰り返し押し下げ変形させ、その後に測定された残留歪み(残留変位量ともいう。)が所定量以下であることが望ましい。
このような条件を満たす材料として、例えば発泡ポリプロピレンの密度0.06g/cm〜0.015g/cm、より好ましくは密度0.035g/cm〜0.015g/cm、または発泡ポリエチレンの密度0.08g/cm〜0.03g/cmなどが好ましい。一方、柔軟性に乏しく曲げ変形により容易に破断の恐れがある硬質発泡ウレタンや発泡ポリスチレンなどは好ましくない。
発明者らは軽量化を図るために材料の検討を進めた。連続気泡構造であるウレタンフォームに変わりうる素材の例として、一般に独立気泡構造を持つ合成樹脂発泡体は、従来からシートバックのクッション材として一般に用いられてきたウレタンフォームに比し、軽量で剛性に富みリサイクルも容易である等の利点を持っていたが、圧縮方向での撓み、復元力をクッションとして使用する場合、内包する空気の反発力により発泡体の変形に伴い反力が急激に高まる傾向にあるため、クッション性に欠け硬く感じられ快適性に劣っていた。
また一般に独立気泡構造を持つ合成樹脂発泡体は、ウレタンフォームと同様、圧縮方向に撓ませクッション材として使用する場合、長期間の使用に従い徐々に回復力を失いクリープが発生する。これは気泡を構成する樹脂皮膜の繰り返し変形による疲労と内包する空気の圧力低下によるところが大きい。従って長期間使用される自動車用シートバックの素材としては好ましいものではなかった。
そこで、発明者らは合成樹脂発泡体の物性を様々な角度から分析することにより、従来の一般的なクッション材として使用されてきた圧縮方向に撓ませる構造ではなく、曲げ変形が可能で復元性に優れた合成樹脂発泡体からなる支持体の曲げ変形とその回復性をクッション材として利用する方法が最適であることを見出し本発明に至った。
「発明が解決しようとする課題」に記載した課題を解決するために、請求項1に記載の車両用シート1の発明は、合成樹脂発泡体からなり、着座者の荷重がかかる面が曲げ変形する車両用シートパッド4と、前記車両用シートパッド4の曲げ変形を可能とする空間部9と、前記車両用シートパッド4の周縁部を支持するシートフレーム10と、を備え、前記車両用シートパッド4の曲げ変形する方向側の面に接して、伸縮性を有する帯状の補助支持体6を張設することを特徴とする。
請求項2に記載の車両用シート1は、請求項1において、前記補助支持体6の帯状の形態が、車両用シートクッション2の場合は平面視で、車両用シートバック3の場合は正面視で、着座者からの車両用シートパッド4に対する荷重が大である範囲に接する部位を幅広とし、荷重が小である範囲に接する部位を幅狭とする略台形状の一つの帯状体16であり、又は、着座者からの車両用シートパッド4に対する荷重が大である範囲に接する部位は高荷重で伸縮する材質の四角形状の帯状体7を張設し、荷重が小である範囲に接する部位は低荷重でも伸縮する四角形状の帯状体8を張設する複数の帯状体群であることを特徴とする。
請求項3に記載の車両用シート1は、請求項1又は2において、前記車両用シートパッド4の曲げ変形時の支点となる前記車両用シートパッド4の両端部を結ぶ方向に対して直交する方向となる、前記補助支持体6の両端部を、前記シートフレーム10に固定して前記補助支持体6を張設することを特徴とする。
請求項1に記載の車両用シート1の発明は、いずれも従来一般的に使用されていたウレタンフォームを合成樹脂発泡体に置換することが可能なものであり、そのため軽量化、リサイクル性の向上が可能となるものである。また、比較的硬質でありクッション性、フィット性、耐クリープ性に劣っていた合成樹脂発泡体を使用するにもかかわらず、高いクッション性、フィット性を付与させることが可能であり、設計の自由度が高く乗員の身体を適切に支持し高い快適性を得ることができ、長期間の使用によっても従来のウレタンフォームと同等の良好な耐クリープ性を発揮するため高い商品性を有するという効果を奏する。
また、せん断方向の衝撃に対して切断しやすい合成樹脂発泡体からなる車両用シートパッド4であっても、車両用シートクッション2や車両用シートバック3なる車両用シート1の裏面に接触した状態で、面状で支持しているので、車両用シートパッド4が強い衝撃を受けたときに、帯状の補助支持体6が伸縮して前記衝撃を吸収し、かつ車両用シートパッド4の局部的な変形を阻止する。これによって、合成樹脂発泡体からなる車両用シートパッド4は、局部的に強い衝撃荷重を受けても切断や破損することが生じないという効果を奏する。
請求項2に記載の車両用シート1は、請求項1と同じ効果を奏するとともに、車両用シートパッド4の裏面全範囲を覆う四角形状の形態の補助支持体6の場合は車両用シートパッド4の横幅と略同じ幅の長い帯状でベルト状の材料をベルト状の端部に直交する方向に直線的に切断して得られるのに対して、補助支持体6が台形状の形態の場合は、車両用シートパッド4の横幅と略同じ幅の長い帯状でベルト状の材料から、台形の幅狭部分と幅広部分が交互になるようにベルト状の端部に斜交する方向に斜めに切断して得る。したがって、補助支持体6を台形状にすることによって、同じ長さのベルト状の材料から多くの補助支持体6を得ることができるので製造コストを低減できるという効果を奏する。
また、荷重で伸縮する材質の帯状体7と低荷重でも伸縮する帯状体8からなる複数の帯状体群からなる補助支持体6の場合は、補助支持体6の耐荷重が大きいほどコスト的に高価になることから、全体を高荷重用とせずに、高コストの高荷重用と低コストの低荷重用とを組み合わせることにより、補助支持体6の購入コストを低減させることができる。
また、補助支持体6が一つの台形状の形態の場合は、例えば、車両用シートクッション2の場合は、臀部周りが荷重が大きいので前後方向で後部は幅広とし、臀部から離隔した膝部近傍は荷重が軽いので前後方向で前部は幅狭とすることによって、着座者の部位によって荷重の大きさが異なってもそれぞれの部位において適するクッション性を発揮させることができるという効果を奏する。
そして、複数の帯状体群からなる補助支持体6の場合は、高い荷重を受ける範囲には高い荷重で伸縮する材質の帯状体7を張設し、低い荷重を受ける範囲には低い荷重でも伸縮する帯状体8を張設するので、例えば、車両用シートクッション2の場合は、臀部周りが荷重が大きいので左右方向で中央部は高荷重用の補助支持体6を配設し、臀部から左右方向に離隔した範囲は低荷重用の補助支持体6を配設するので、着座者の部位によって荷重の大きさが異なってもそれぞれの部位において適するクッション性を発揮させることができるという効果を奏する。
請求項3に記載の車両用シート1は、請求項1又は2と同じ効果を奏するとともに、合成樹脂発泡体の車両用シートパッド4が左右端を支持点として両端支持の形態で曲げ変形するので中央部が最も曲げ変形量が大きくなるのに対して、補助支持体6は、車両用シートクッション2の場合は前後端に、車両用シートバック3の場合は上下端にそれぞれ固定させて張架させるので、補助支持体6が前記車両用シートパッド4の曲げ変形の大きい中央部をしっかりと支持するという効果を奏する。
車両用シートの概要斜視図である。 車両用シートクッションの概要斜視図である。 シートフレームの概要斜視図である。 シートフレームに平面視で四角形状の1枚物の補助支持体を設けた概要図である。 シートフレームに平面視で台形状の1枚物の補助支持体を設けた概要図である。 シートフレームに平面視で複数の帯状体からなる補助支持体を設けた概要図である。 図2において表皮を取り除いた状態で、無負荷時のA−A断面を示す説明図である。 図2において表皮を取り除いた状態で、荷重を加えた場合のA−A断面を示す説明図である。 無負荷時の補助支持体のモデル図である。 荷重を加えた負荷時の補助支持体のモデル図である。 負荷耐久性試験の概要図である。 背形加圧治具の概要図で、(a)は平面図で、(b)は正面図で、(c)は側面図である。 繰り返し荷重による残留変位量線図である。 シートバック形状での荷重―変位量線図である。 発泡体と無発泡体とのJIS K7221−2による曲げ試験の比較図である。
車両用シート1は図1に示すように車両用シートクッション2や車両用シートバック3からなる。本発明にかかる車両用シート1は、合成樹脂発泡体からなり、着座者の荷重がかかる面が曲げ変形する車両用シートパッド4と、前記車両用シートパッド4の曲げ変形を可能とする空間部9と、前記車両用シートパッド4の周縁部を支持するシートフレーム10とを備え、前記車両用シートパッド4の曲げ変形する方向側の面に接して、伸縮性を有する帯状の補助支持体6を張設している。
車両用シートパッド4は、車両用シートクッションパッド又は車両用シートバックパッドを意味している。そして、車両用シートパッド4の材質である合成樹脂発泡体は、JIS K7221−2:2006記載の方法に準じて測定した曲げ撓み量が20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡体である。
図1で示すような車両用シート1の車両用シートクッション2から表皮20を取り除くと、外観からは、図2に示すような車両用シートパッド4となる。前記車両用シートパッド4の内側には、図4乃至図6に示すような補助支持体6や図3に示すようなシートフレーム10が構成されている。
前記シートフレーム10は、図3に示すように、前側をパイプ11、後側をパイプ12、左右の両サイドにサイドフレーム13を備えている。
車両用シートパッド4又は支持体5は、図7又は図8に示すように左右端をサイドフレーム13の上部に載設されている。または、図9又は図10に示すように延出された脚体21を有している場合は該脚体21がサイドフレーム13に載設する形態となる。
そして、車両用シートパッド4又は支持体5は、図8又は図10に示すように着座者の荷重Wによって左右端部を支持点とし中央部になるほど曲げ変形量が大きくなる両端支持の形態の曲げ変形をする。そして、着座者の荷重Wが軽減されると車両用シートパッド4の曲げ変形量が縮小されて図7又は図9に示すように元の位置まで復元し、着座者が身体を車両用シート1に着座し荷重Wを加えると車両用シートパッド4の曲げ変形量が増加し図8又は図10に示すような形態となり、着座者が車両用シート1から離れると車両用シートパッド4が無荷重時の位置まで復元する。このように、着座者の荷重の大小に応じて車両用シートパッド4の曲げ変形量が変化することによって着座者はクッション性を感じることができる。
したがって、曲げ変形する車両用シートパッド4の構成要素であり座面となる支持体5の形態は、左右方向にサイドフレーム13を支持点として架設状に設けられた1枚又は数枚の平板状の形態、又は図2に示すように複数の棒状の形態からなる。そして、座面となる支持体5の左右端は、支持体5の曲げ変形時の両端支持の支持点となるように、図9又は図10に示すように座面に対して略垂直方向に延出した脚体21を有し、該脚体21がサイドフレーム13の上端に当接する形態、又は、図7や図8に示すように座面の左右端が脚体なしで直接にサイドフレーム13の上端に当接する形態などがある。なお、車両用シートパッド4の形態はこれらに限定されるものではなく、車両用シートクッション2が着座者の荷重Wによって曲げ変形できる形態であればいずれの形態であってもよい。
補助支持体6の形態は、図4乃至図6に示すように、伸縮性を有する帯状体である。補助支持体6の平面視の形態は、図4に示すような四角形状の1枚物の形態、図5に示すように台形状の形態、又は、図6に示すような四角形状の3枚物の形態などがある。車両用シートパッド4の裏面に接する帯状体であればいずれの形状であってもよいが、好ましいのは、図5に示すように、着座者からの車両用シートパッド4に対する荷重が大である範囲に接する部位は幅広で、荷重が小である範囲に接する部位は幅狭となる略台形状の帯状体16であり、又は、図6に示すように、着座者からの車両用シートパッド4に対する荷重が大である範囲に接する部位は高荷重で伸縮する材質の帯状体7を張設し、荷重が小である範囲に接する部位は低荷重でも伸縮する帯状体8を張設する複数の帯状体群などの形態など、着座者の荷重の大小によって補助支持体6の平面視の面積や材質を変えるのがコスト面などからよい。
略台形状の帯状体16の補助支持体6を備える車両用シートクッション2の場合は、着座者の臀部付近の荷重が最も重く、脚腿から膝にかけて徐々に荷重が小になることから、臀部付近が当接する後側を幅広にし、膝側になるにしたがって幅狭になるような台形状の形態の補助支持体6にする。また、略台形状の帯状体16の補助支持体6を備える車両用シートバック3の場合は、着座者の腰部付近の荷重が最も重く、頭部側にかけて徐々に荷重が小になることから、腰部付近が当接する後側を幅広にし、頭部側になるにしたがって幅狭になるような台形状の形態の補助支持体6にする。
補助支持体6は、車両用シートパッド4の曲げ変形する方向側の面に接して車両用シートパッド4又は支持体5を被覆しているので、合成樹脂発泡体からなる支持体5の曲げ変形を面で受けて支持体5の急激な曲げ変形の発生を抑制させている。これによって、車両用シートパッド4が局部的に強い荷重を受けても支持体5が破損されにくい。
また、補助支持体6の張設形態は、車両用シートパッド4の曲げ変形時の支持点となる車両用シートパッド4の両端部を結ぶ方向に対して直交する方向となるように、補助支持体6の両端部をシートフレーム10に固定して前記補助支持体6を張設する。例えば、車両用シートクッション2の場合は、図4乃至図6に示すように補助支持体6の前端部をパイプ11に固定し、後端部をパイプ12に固定する。また、補助支持体6の幅が車両用シートパッド4の幅と略同じ幅の部分については、補助支持体6の左右端部を、伸縮性を有さない材質からなる係止具でサイドフレーム13へ引っかけたりする。
そして、補助支持体6のパイプ11、12への固定方法は、補助支持体6をパイプ11、12に巻き付けて接着剤などの固定化手段で固定し、又は、補助支持体6の端部を予めパイプ状に形成して縫製し、形成したパイプ状の孔にパイプ11、12を挿通させる方法などがある。
車両用シートパッド4の曲げ変形量が最大となるのは左右方向で中央域であるから、車両用シートパッド4の両端部を結ぶ方向に対して直交する方向に補助支持体6の両端部を張設することによって、補助支持体6が車両用シートパッド4の曲げ変形を裏面からしっかりと支持することができる。
補助支持体6の材質としては、不織布、網、ネット材、バネックスなどの伸縮性を有する材料であればよい。
次に、合成樹脂発泡体について説明する。本発明における合成樹脂発泡体は、柔軟で曲げ変形が可能であり、かつ復元性に優れたものであり、JIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下でスキンを取り除いた長さ350mm、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで最大90mmまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて測定した曲げ撓みが20mm以上、かつ20mm撓み時の荷重が2〜100Nの合成樹脂発泡成形体を指す。曲げ撓みが20mm未満で破壊を生じるような合成樹脂発泡成形体は、耐久性面から不適である。身体による押圧を支えるため必要となる支持体3の断面が非常に大きくなり、20mm撓み時の荷重が100N超の場合、好ましい撓み量を発生させることが困難となり、ともに好ましい設計が困難となる。具体的には発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、その他ポリオレフィン系樹脂発泡体、あるいは改質ポリスチレン系樹脂発泡体などを指す。なお、上記発泡体の中でも樹脂発泡粒子の型内成形体が、フィット感を考慮した形状自由度(設計容易性)の観点から好ましい。
本発明で用いられる発泡粒子を構成するポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂であり、具体的にはポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、さらにそれらの2種以上の混合物などが挙げられる。なお、上記「主成分とする」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン系樹脂中に50重量%以上含まれることを意味し、その含有量は好ましくは75重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位が50重量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他のオレフィンは、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましく、下限値としては0.3重量%であることが好ましい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独または2種以上を混合して用いることができる。ポリプロピレン系樹脂は、JIS K7161:1994(試験片:JIS K 7162(1994)記載の試験片1A形(射出成形で直接成形)、試験速度:1mm/min)に規定する引張弾性率(E)の値で600MPa以上の基材樹脂を発泡してなる樹脂発泡体であることがのぞましい。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位が50重量%以上の樹脂が挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体、エチレン−ブテン1共重合体、エチレン−ヘキセン1共重合体、エチレン−4メチルペンテン1共重合体、エチレン−オクテン1共重合体等、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
そして、前記合成樹脂発泡体の具体的選定にあたっては、長さ400mm程度の棒状の試験片の両端を支持し、中央を25mm前後押し下げ30分間保持し、その後荷重を解放した後にサンプルの変形からの回復が90%以上ある材料、又は、従来のウレタンフォーム製のシートバックで行なわれていた試験に準じ、両端を支持したサンプルの中央部を所定回数繰り返し押し下げ変形させ、その後に測定された残留歪みが所定量以下である材料が望ましい。該所定回数又は該所定量は各車両メーカーが従来材料を選定するときに任意に定めていた仕様に従う。
このような条件を満たす材料として、例えば発泡ポリプロピレンの密度0.06g/cm〜0.015g/cm、より好ましくは密度0.035g/cm〜0.015g/cm、又は発泡ポリエチレンの密度0.08g/cm〜0.03g/cmなどが好ましい。このような材料はJIS K7221−2:2006記載の方法(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲下でスキンを取り除いた長さ350mm、幅100mm、厚さ25mmの試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで最大90mmまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録する。)に準じて行う試験において、曲げ撓み20mm時の荷重が2〜100Nであり曲げに対する柔軟性と共に曲げ剛性にも優れているが、一方従来から一般に用いられていた軟質ウレタンフォームは曲げ剛性が0.46Nと大きく劣るため、本発明のシートバックを構成する材料としては適切でない。
以下に、合成樹脂発泡体を使用した場合のクリープ性や曲げ剛性について説明する。まず、クリープ性を評価するために、JIS K 6767:1999による圧縮永久歪を測定した。縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片を25%歪んだ状態に圧縮し、温度23℃±2℃において22時間放置する。圧縮終了24時間後の厚さを測定する。なお、圧縮永久歪は、圧縮永久歪(%)=(試験片元厚み(mm)−圧縮終了24時間後の厚さ(mm))÷試験片元厚み(mm)×100で求めた。
試験の結果、45倍ポリプロピレン発泡粒子成形体の圧縮永久歪は11%であった。一方、同測定方法による発泡ポリウレタンの圧縮永久歪は2%以下である。このことは、従来、シートバックのクッション材として一般に用いられて圧縮変形によりクッション性を発揮するウレタンフォームに対し、単純に合成樹脂発泡体に置き換えたのみでは圧縮永久歪が発生し、当初のクッション性の維持が困難であり商品性が低下することが示されている。
次に、図12に示すような背形の加圧治具40(平面視で楕円形の左右方向長さ440mm、奥行(幅)290mm、正面視で高さ60mm)を用いサンプル板41を常温下で5,000回、10,000回、15,000回繰り返し490Nの荷重を加え押圧した後の残留変位量を測定し負荷耐久性試験として実施した。なお、合成樹脂発泡体を曲げ変形させた場合の残留変位量を調査するために、図11に示したように発泡ポリプロピレン45倍発泡品である厚さ20mm、幅(奥行)600mmの平板状のサンプル板41を340mmの間隔で両端支持とし供した。該負荷耐久性試験の結果を図13に示す。
図13より、従来のウレタンフォームに要求される仕様は、残留変位量は5mm(図13で線C)以下であるのに対して、本発明の合成樹脂発泡体の場合(図13で線D)は、残留変位量は2.5mmであり、前記仕様の範囲内であることが示されている。
したがって、図13から、曲げ変形が可能で復元性に優れた合成樹脂発泡体の曲げ変形による撓みとその回復性をクッション材として使用する場合、従来から用いられてきたウレタンフォームに匹敵する、あるいは上回る耐クリープ性を有することが示されている。
前記耐クリープ性がウレタンフォームを上回るのは、合成樹脂発泡体を車両用シートパッド4として使用する場合、中央部が押し下げられ曲げ変形が発生する際、部材の各部にはそれぞれ引っ張り、圧縮、せん断等が働き、部材が変形するが、このそれぞれの変形の程度が従来のように、部材を単純に圧縮することによってクッション材とする場合の直接的な変形量と比べて少なく回復性を損なわぬ弾性域内に止まるからである。
次に、図14は、両端支持された合成樹脂発泡体からなる車両用シートパッド4を使用したシートバック型試験体と、従来構造のウレタンフォームを使用したシートバック型試験体を、図9に示すような背形の加工治具40で圧縮速度100mm/minで押圧した際、発生する反力を比較した例である。ウレタンフォームを使用した試験体の大きさは幅650mm、長さ350mm、厚さ100mmであり、合成樹脂発泡体を使用した試験体は長さ350mm、幅50mm、厚さ30mmの発泡ポリプロピレン45発泡品を2mmの間隔を空けて複数列設した形状である。図11に示す細線Uは比較用に用意された、一般にシートバックに使用されるウレタンフォームの荷重―変位量線図であり、太線Pは本発明による合成樹脂発泡体からなる支持体3の中央を押し曲げた際の荷重―変位量線図である。また、押し下げたときの荷重―変位量線をu1及びp1に示し、押し下げ後に開放したときの荷重―変位量線をu2及びp2に示した。
図14から、比較的硬質である合成樹脂発泡体からなる車両用シートパッド4によっても、曲げ変形によりクッション性を得る構造とした場合、従来のウレタンフォームとほぼ等しい柔軟性が得られることを示されている。
次に、図15は合成樹脂発泡体の例として発泡ポリプロピレンを選択し、同等の樹脂からなる無発泡の樹脂板(厚み1mm)からなるサンプルと、発泡ポリプロピレン45倍発泡品からなるサンプル(厚み45mm)をJIS K7221−2:2006(23℃±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下でスキンを取り除いた長さ350mm、幅25mm、サンプル重量同等、厚さ任意の試験片を支点間距離300mm、試験速度20±1mm/minで最大90mmまで荷重を加え、荷重撓み曲線を記録した。)に準じ両端支持し、この中央部を押し下げた場合の荷重―変位量線図である。幅を25mmに一定にし、サンプル重量が同等になるように厚みを調整した。無発泡の樹脂板の場合を荷重―変位量線図Mで表し、発泡ポリプロピレン45倍発泡品からなるサンプルの場合を荷重―変位量線図Hで表している。
図15より、共にサンプルの重量は等しいが、発泡体とすることによって曲げ剛性が大きく高まることが示されている。従来、発泡体を曲げ変形させクッション材として使用することは一般的ではなかったが、発泡体を使用することにより同等の曲げ剛性を獲得するに必要な部品重量を減少させうる、すなわち車両用シートバックの軽量化が図れることが示されている。
1 車両用シート
2 車両用シートクッション
3 車両用シートバック
4 車両用シートパッド
5 支持体
6 補助支持体
7 帯状体
8 帯状体
9 空間部
10 シートフレーム
11 パイプ
12 パイプ
13 サイドフレーム
16 帯状体
20 表皮
21 脚体
W 荷重

Claims (3)

  1. 合成樹脂発泡体からなり、着座者の荷重がかかる面が曲げ変形する車両用シートパッドと、前記車両用シートパッドの曲げ変形を可能とする空間部と、前記車両用シートパッドの周縁部を支持するシートフレームと、を備え、
    前記車両用シートパッドの曲げ変形する方向側の面に接して、伸縮性を有する帯状の補助支持体を張設することを特徴とする車両用シート。
  2. 前記補助支持体の帯状の形態が、車両用シートクッションの場合は平面視で、車両用シートバックの場合は正面視で、着座者からの車両用シートパッドに対する荷重が大である範囲に接する部位を幅広とし、荷重が小である範囲に接する部位を幅狭とする略台形状の一つの帯状体であり、又は、着座者からの車両用シートパッドに対する荷重が大である範囲に接する部位は高荷重で伸縮する材質の四角形状の帯状体を張設し、荷重が小である範囲に接する部位は低荷重でも伸縮する四角形状の帯状体を張設する複数の帯状体群であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  3. 前記車両用シートパッドの曲げ変形時の支点となる前記車両用シートパッドの両端部を結ぶ方向に対して直交する方向となる、前記補助支持体の両端部を、前記シートフレームに固定して前記補助支持体を張設することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
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