JP2016106542A - Dna傷害型物質のスクリーニング方法 - Google Patents

Dna傷害型物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】DNA複製が起きている染色体又は核酸上で特異的にDNAを切断する抗癌(腫瘍)活性及び/又は抗ウイルス活性を有する物質を迅速かつ簡便にスクリーニング方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、(1)DNA複製領域を可視化するとともに早期解析を可能にするハロゲン付加ヌクレオチドを取り込ませたDNAを抗体染色する手法と、(2)染色体の切断を見るためのパルスフィールド電気泳動法とを組み合わせることによって、抗癌活性及び/又は抗ウイルス活性を有する物質を特定するスクリーニング方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、DNA傷害型物質をスクリーニングする方法に関し、特に抗癌(腫瘍)活性及び/又は抗ウイルス活性を有する物質を得るための新規なスクリーニングする方法に関する。また、本発明は、該スクリーニング方法によって得られたDNA傷害型物質、及び該DNA傷害型物質を含む医薬組成物に関する。
DNAを傷害する化合物は、突然変異や細胞死を引き起こすため有害物質に分類され、DNA合成部位のみに特異的に作用し、かつ、増殖細胞を優先的に傷害する作用がある。このような化合物は抗癌(腫瘍)剤又は抗ウイルス剤としての利用価値がある。特にDNA複製をターゲットにした薬剤は有用性が高い。
しかしながら、抗癌剤の場合、その化学特性に起因して、薬剤が有効に作用する癌細胞種と作用しない癌細胞種が存在することがある。さらに、薬剤による細胞毒性が強すぎるために副作用の1つとして多臓器機能不全を引き起こすことにより、治療を継続できないことも多い。薬効が見られない大きな原因としては、抗癌剤が癌細胞まで届いていないことが想定されている。薬剤による細胞死については、細胞死が癌細胞以外の健常な細胞にも起きることが原因であると考えられる。これらの問題点の解決策として、作用機序が類似なものであっても、化学構造が異なる化合物を見出すことが必要になる。また、既存のすべての薬剤に対して耐性を持った癌が存在することも知られている。したがって、これまでとは異なる作用機序を持った化合物を同定することが重要となる。
また、現在、ウイルス感染、特に、高い罹患率及び死亡率と関連する大規模なウイルス感染に対して、新しい治療薬の開発が必要とされている。これまでに利用可能とされる治療薬は、ウイルス感染の大半の症例に不適切であるかまたは有効ではない。ウイルス感染の治療及び予防を改善するためには、ウイルスのライフサイクルの様々な局面(例えば、DNA複製)を阻害することができる化合物の同定は必要である。
これまでに、本発明者らは、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いて、損傷させたDNA複製フォークにおける修復機構の解明を試みた(非特許文献1及び2)。一方で、このような修復機能を逆に利用して、DNAを損傷させ、複製を阻害する作用機序を持つ抗癌活性や抗ウイルス活性を有する化合物を得る方法は見いだされていない。
Hanada, K., et al., EMBO J., 25, 4921-4932 (2006) Hanada, K., et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 14, 1096-1104 (2007)
本発明は、上記事情に鑑み、DNA複製が起きている染色体又は核酸上で特異的にDNAを切断する抗癌(腫瘍)活性及び/又は抗ウイルス活性を有する物質を迅速かつ簡便にスクリーニングする技術を提供することを目的とする。また、このようなスクリーニング方法によって得られた上記活性を有するDNA傷害型物質及び該物質を含む医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、(1)DNA複製領域を可視化するとともに早期解析を可能にするハロゲン付加ヌクレオチドを取り込ませたDNAを抗体染色する手法と、(2)染色体の切断を見るためのパルスフィールド電気泳動法とを組み合わせることによって、抗癌活性及び/又は抗ウイルス活性を有する物質を特定することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]DNA傷害型物質をスクリーニングする方法であって、下記:
(a)培養細胞にハロゲン付加ヌクレオチドを添加し、DNAをラベルする工程;
(b)培養系に被験物質を添加する工程;
(c)培養細胞を回収し、溶解後、パルスフィールドゲル電気泳動により染色体又は核酸を分離する工程;
(d)分離された染色体又は核酸をメンブレンに転写し、ハロゲン付加ヌクレオチドに対する一次抗体を添加し、反応させる工程;
(e)標識剤を結合させた、一次抗体に特異的な二次抗体を添加し、反応させる工程;
(f)場合により、該標識剤に対する基質を添加し、反応させる工程;及び
(g)工程(e)又は(f)の反応後、標識剤又は基質に由来するシグナルが検出された場合に、工程(b)において添加された被験物質をDNA傷害型物質として選択する工程
を含むスクリーニング方法。
[2]ハロゲン付加ヌクレオチドが、ブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、フルオロデオキシウリジン、又はクロロデオキシウリジンである、上記[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]標識剤が、酵素又は蛍光分子である、上記[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法。
[4]酵素が、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウレアーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びベータガラクトシダーゼからなる群から選択される、上記[3]に記載のスクリーニング方法。
[5]基質が、5−ブロモ−4−クロロ−3’−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、3,3’‐ジアミノベンジジン四塩酸(DAB)、オルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、5−アミノサリチルサン(ASA)、ルミノール、及びルシフェリンからなる群から選択される、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のスクリーニング方法。
[6]蛍光分子が、Cy−2、Cy−3、Cy−3.5、Cy−5、Cy−5.5、Cy−7、Alexa、FITC、テキサスレッド、及びローダミンからなる群から選択される、上記[3]に記載のスクリーニング方法。
[7]被験物質が生薬由来の物質から選択される、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のスクリーニング方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載のスクリーニング方法を用いて得られたDNA傷害型物質。
[9]上記[8]に記載のDNA傷害型物質を含む、癌及び/又はウイルス感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
[10]DNA傷害型物質がデヒドロコスツスラクトン又はアルカンニンである、上記[9]に記載の医薬組成物。
本発明によれば、DNA複製が起きている場所で特異的にDNA切断を起こす物質のスクリーニング方法が提供される。これにより、新規な抗癌剤及び抗ウイルス剤を迅速かつ効率的に発見することができる。
図1は、パルスフィールド電気泳動とハロゲン付加ウラシルの染色を組み合わせた新規なDNA切断測定に関する結果を示す。A.BrdUを30分処理した細胞における染色体切断の結果を示す。ヒドロキシウレア処理群では臭化エチジウム染色及び抗体染色の両方でバンドが検出されたのに対して、γ線では臭化エチジウム染色の場合のみでバンドが得られた。B.BrdUを24時間処理した細胞における染色体切断の結果を示す。γ線処理とヒドロキシウレア処理の両方で予期した通りバンドが検出できた。 図2は、既存の抗癌剤を用いて、本発明のスクリーニング方法の有用性を検証した結果を示す。(a)シスプラスチン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、(b)ドキソルビシン、エトポシド、カンプトテシン、(c)ゲムシタビンの処理により、DNA複製領域において染色体切断が検出できることを確認した。 図3は、120種の生薬エキスをスクリーニングした結果を示す。臭化エチジウム染色のみの測定で酵素物質を選定し、オウバク(#8)とオウレン(#10)を発見した。 図4は、オウレン及びオウバクの活性を評価した結果、並びにその主成分であるベルベリン、コプチシン、及びパルマチンの活性を評価した結果を示す。DNA複製領域における染色体切断及び細胞障害性の両方について、ベルベリンとコプチシンに活性があることが分かった。 図5は、95種類の生薬由来の化合物をスクリーニングした結果を示す。臭化エチジウム染色のみの測定で酵素物質を選定し、アルカンニン(#5)、コプチシン(#29)、クルクミン(#32)、デヒドロコスツスラクトン(#34)、エボジアミン(#43)、シコニン(#91)、チモサポニンAIII(#95)に活性があることが分かった。 図6は、図5に示された活性を有する化合物の各々について、さらに活性を評価した結果を示す。 ピロリ菌感染による宿主細胞の二重鎖切断を化学発光法によって検出した結果を示す。
本発明は、DNA傷害型物質をスクリーニング方法であって、DNA複製が起きている場所で特異的に染色体又は核酸の切断を目視検出するスクリーニング方法であって、(1)DNA複製領域を可視化するとともに早期解析を可能にするハロゲン付加ヌクレオチドを取り込ませたDNAを抗体染色する手法と、(2)染色体の切断を見るためのパルスフィールド電気泳動法とを組み合わせることによって、DNA傷害型物質を得ることを特徴とする。なお、本発明のスクリーニング方法において対象とするDNA傷害型物質は、DNA複製が起きている場所で特異的に染色体又は核酸の切断を行うことができる物質である。すなわち、抗癌剤をスクリーニングの対象とする場合は、DNA傷害型物質は、癌細胞のDNA複製を阻害するために、DNA複製が起きているDNA複製フォーク部分でのDNA2重鎖を切断することができる複製阻害剤となり得るものである。一方、抗ウイルス剤をスクリーニングの対象とする場合には、ウイルスが感染した細胞において、ウイルスの核酸(DNA又はRNA)が宿主の染色体に組み込まれた場合はウイルスの核酸を含む染色体、又は宿主の染色体に組み込まれずに宿主の核内で核酸が複製する場合はウイルスの核酸自体、においてDNA複製が起きているDNA複製フォーク部分でのDNA2重鎖を切断することができる複製阻害剤となり得るものである。一例として、後述するように、本発明のスクリーニング方法を用いることによって、新規な抗癌剤として、生薬由来のデヒドロコスツスラクトン及びアルカンニンを発見することができた(実施例2)。
1.スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、DNA傷害型物質をスクリーニングする方法であって、下記:
(a)培養細胞にハロゲン付加ヌクレオチドを添加し、DNAをラベルする工程;
(b)培養系に被験物質を添加する工程;
(c)培養細胞を回収し、溶解後、パルスフィールドゲル電気泳動により染色体又は核酸を分離する工程;
(d)分離された染色体又は核酸をメンブレンに転写し、ハロゲン付加ヌクレオチドに対する一次抗体を添加し、反応させる工程;
(e)標識剤を結合させた、一次抗体に特異的な二次抗体を添加し、反応させる工程;
(f)場合により、該標識剤に対する基質を添加し、反応させる工程;及び
(g)工程(e)又は(f)の反応後、標識剤又は基質に由来するシグナルが検出された場合に、工程(b)において添加された被験物質がDNA傷害型物質であると判断する工程を含む。
第1に、本発明のスクリーニング方法は、DNA複製領域を可視化するとともに早期解析を可能にするハロゲン付加ヌクレオチドを取り込ませたDNAを抗体染色する手法を用いるものである。本明細書において、「ハロゲン付加ヌクレオチド」とは、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)で標識されたヌクレオチド誘導体である。本発明のスクリーニング方法は、細胞において複製が起こっているDNAに該ヌクレオチド誘導体を取り込ませ、最終的には、該ヌクレオチド誘導体に対する抗体を用いたイムノブロットによって、DNA複製を検出するとともに、該DNA複製の部位における被験物質による染色体又は核酸の切断を視覚化するものである。したがって、ハロゲン付加ヌクレオチドは、斯かる目的が達成されるものであれば限定されず、例えば、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、ヨードデオキシウリジン(IdU)、フルオロデオキシウリジン(FdU)、クロロデオキシウリジン(CldU)が挙げられ、好ましくは、BrdU、IdUである。なお、ハロゲン付加ヌクレオチドの添加濃度と添加時間は適宜調整することができ、DNA複製を確認するのに適した濃度及び時間であればよく、例えば、添加濃度は、最終濃度として1μM〜100μMであってもよく、添加時間は、10分〜24時間であってもよい。
別の態様において、本発明のスクリーニング方法では、早期解析を目的とし、上記の通り、ハロゲン標識されたヌクレオチド誘導体及びそれに対する抗体を使用しているが、ウリジンを放射性同位元素で標識された誘導体を用いることも可能である。しかしながら、放射線量を定量するには1カ月程度の時間を要するという欠点を有する。これに対して、ハロゲン付加ヌクレオチドを用いた手法では、これに対する抗体を用いて定量するため、時間を2〜3日に短縮できるという利点を有する。
第2に、本発明のスクリーニング方法に使用される培養細胞の種類は限定されない。本発明は、候補とする被験物質がDNA傷害型物質であるか否かをインビトロでスクリーニングする方法であって、使用される培養細胞は、DNA複製が認められる培養細胞であればよい。このような培養細胞としては、癌細胞、ウイルス感染させた細胞であってよいが、例えば、特定の癌(腫瘍)(小細胞癌、肝臓癌、結腸直腸癌、神経芽細胞種、黒色腫、精巣癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌など)に対する抗癌剤を得ることを目的とする場合には、その癌組織に由来する癌細胞、又は正常な細胞を不死化した培養細胞を用いることができる。さらに、細胞を培養するための基材(ディッシュ、プレートなど)もまた限定されない。また、培養するための培養装置(インキュベーターなど)も、実験室で通常設置されているものでよく、通常の培養条件で細胞を培養することで足りる。
第3に、本発明のスクリーニング方法を用いてDNA傷害型物質を特定するために使用される被験物質は限定されない。本発明は、被験物質を培養細胞に添加後、該培養細胞から染色体又は核酸を抽出し、その後、パルスフィールドゲル電気泳動により分離するという手法を用いるため、被験物質が染色体等の分離に影響を及ぼすことはない。被験物質としては、公知の合成化合物、ペプチド、タンパク質、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出物又は細胞培養上清、植物由来の化合物又は抽出物(例えば、生薬エキス、生薬由来の化合物)、及び微生物由来の化合物若しくは抽出物又は培養産物などであってもよい。
また、培養系に添加される被験物質の濃度及び添加時間は、所望の効果が期待され得る濃度及び時間であってもよく、限定されない。一態様において、被験物質が固体である場合は、被験物質を適切な水溶液(例えば、生理食塩水、培養液など)に溶解後、例えば、最終濃度として1μM〜100μMに濃度を調整して使用することができる。なお、被験物質が水溶液に溶解しない場合は、細胞毒性にならないように若干の有機溶媒を用いて、所定濃度の水溶液を調製してもよい。別の態様において、被験物質が溶液である場合、適切な水溶液を用いて、所定濃度(例えば、最終濃度1μM〜100μM)に調整し、使用することができる。さらに、被験物質の添加時間は、1時間〜48時間であってもよく、限定されない。
第4に、本発明のスクリーニング方法は、パルスフィールドゲル電気泳動(Pulsed−Field Gel Electrophoresis:PFGE)により染色体又は核酸を分離する手法を組み合わせることを特徴とする。パルスフィールドゲル電気泳動は、1980年代にSchwartz,D.C.及びCantor,C.R.によって開発された、分子量の大きいDNA断片を分離するためのゲル電気泳動法の1つである。核酸及びタンパク質を分離するための、以前より知られているアガロースゲル電気泳動法では、核酸では、200bp〜10kbp程度を分離することができるが、10kbpを超える核酸(染色体を含む)に対しては分離不能である。これに対して、PFGEでは、100bp〜10Mb程度の核酸(染色体を含む)を分離することができ、本発明のスクリーニング方法に適した手法である。本発明のスクリーニング方法においては、市販のパルスフィールドゲル電気泳動装置(例えば、Biometra Rotaphor(Biometra))を用いることができる。また、当業者は周知の通り、PFGE用に試料を調製する場合は、染色体(又はDNA)をピペッティングによる機械的に損傷させないことを要する。このため、培養細胞から機械的に損傷されていない染色体を試料として得るために、市販のキット(例えば、CHEFゲノムDNAプラグキット(Bio−Rad))を用いてもよい。また、PFGEを行うための泳動条件は、当業者であれば適宜調整することができるが、上記の装置に添付された取扱説明書や泳動条件を参照にしながら選択してもよい。試料の泳動後、正常な染色体又は被験物質によって切断されなかった染色体はゲルの上部に留まり、一方、被験物質によって切断された染色体はサイズが小さくなったことに伴って、より下部に移動する。
第5に、一実施形態として、本発明によれば、PFGEによる泳動後のゲル上のバンドをイムノブロットによって検出することができる。この場合、ゲル上のバンドをすべて、例えば、ニトロセルロースメンブレンに転写させておくと都合がよい。上記の通り、DNA複製が起こっている場所では、ハロゲン付加ヌクレオチド(例えば、BrdU)がDNAを構成する塩基として取り込まれている。典型的には、DNAに取り込まれたハロゲン付加ヌクレオチドへの、該ヌクレオチドに対する一次抗体(例えば、抗BrdU抗体)の結合、続いて、該一次抗体への酵素標識化された二次抗体の結合、さらに酵素に対する基質との反応によってメンブレン上でバンドを視覚化することができる。
本発明の一実施形態において、本発明のスクリーニング方法に使用される二次抗体は、間接又は直接的に検出可能な標識剤が結合されている。標識剤の例としては、限定されないが、酵素及び蛍光分子が挙げられる。本発明によれば、標識剤として使用される酵素は、限定されないが、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウレアーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼなどが挙げられる。本発明においては、これらの酵素に対する基質は、発色基質、又は発光基質(例えば、化学発光基質、生物発光基質)が好ましく、当業者であれば適宜選択することができる。発色基質の例として、限定されないが、5−ブロモ−4−クロロ−3’−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、3,3’‐ジアミノベンジジン四塩酸(DAB)、オルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、及び5−アミノサリチルサン(ASA)を使用することができる。後述する実施例1においては、酵素としてアルカリホスファターゼを標識した二次抗体と、基質としてBCIP/NBTとの組み合わせを用いて、本発明のスクリーニング方法によってDNAの二重鎖切断を検出した。
また、発光基質の例として、限定されないが、化学発光基質、生物発光基質などが挙げられる。「化学発光基質」とは、二次抗体に結合した酵素(例えば、上記で列挙した酵素)と直接又は間接的に反応して、発光する基質をいう。化学発光基質としては、例えば、2,4,5トリフェニルイミダゾール、3−メチルインドール、テトラキスエチレンなどの他、o−アミノフタリルヒドラジド(「ルミノール」)、ベンゾペリレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジド及びイソルミノールのN−アルキル誘導体などのルミノール誘導体、アクリジニウムエステル及びルシゲニンなどのアクリジン系化合物、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3''−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンなどのアダマンチル−1,2−ジオキセタン誘導体などが挙げられる。また、このような化学発光基質の使用において、酵素剤、基質剤、化学発光増強剤などを組み合わせて使用することができる。例えば、(ミクロ)ペルオキシダーゼ及びN−アセチルグルコサミダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの酵素剤、過酸化水素、過マンガン酸塩、次亜塩素酸などの酸化剤、鉄、コバルト、銅、マンガンなどの金属の化学発光増強剤などを挙げることができる。後述する実施例3において具体的に説明するように、本発明者らは、酵素としてホースラディッシュペルオキシダーゼを用い、BrdUで24時間処理した胃癌細胞株(AGS細胞)にピロリ菌を感染させた場合、感染によって切断されたDNAがヒト細胞由来か又はピロリ菌由来かを確認するために実験を行った。その際に、切断されたDNAをメンブレンに転写して、抗BrdU抗体を添加した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合した二次抗体とECLシステムを組み合わせることによって発色させることに成功した。
生物発光基質は、生物由来の発光体であり、本明細書においては、上述した化学発光基質と同様に使用することができる。生物発光基質剤としては、例えば、ホタル(Photinus pyralis)ルシフェリン、ウミホタル(Cypridina)ルシフェリン、ウミシイタケ(Renilla reniformis)ルシフェリン、発光ミミズ(Diplocardia)ルシフェリン、ラチア(Latia neritoides)ルシフェリン、ホタルイカ(Wataseniae)ルシフェリンやバクテリアルシフェリン(還元型フラビンモノヌクレオチド)などの発光生物由来のルシフェリンの他、オワンクラゲ由来のエクオリンなどを挙げることができる。
本発明においては、最終的に、酵素−基質の反応に基づいた発色又は発光によりDNAの二重鎖切断を検出するが、検出感度を増大させるための既知の手法を導入して行ってもよい。例えば、当業者であれば周知であるように、検出感度を増強させるために、ビオチン−ストレプトアビジン系を適宜組み込んで使用してもよい。
本発明の別の一実施形態において、蛍光分子を二次抗体に結合させ、一次抗体と反応した二次抗体からの蛍光を直接測定する方法を採用してもよい。蛍光分子には、限定されないが、Cy−2、Cy−3、Cy−3.5、Cy−5、Cy−5.5、Cy−7、Alexa、FITC、テキサスレッド、ローダミンなどが挙げられる。
上記の通り、本発明は、ハロゲン化ヌクレオチドに対する抗体を用いて被験物質を検出するスクリーニング方法に関するが、ハロゲン化ヌクレオチドを短時間処理することによって、DNA複製領域だけがラベル化され、その部位でのDNA切断が起きたかどうかを検証できるという利点を有する。さらに、全DNA量の定量は、臭化エチジウム染色、サイバーグリーン染色、サイバーゴールド染色などが可能であるが、臭化エチジウムが結合したDNAは紫外線で切断され得ることを利用してメンブレンへの転写効率を高めているため、臭化エチジウムの使用が望ましい。また、CldUで24時間処理し、続いてIdUで30分処理した後に薬剤を加え、DNA切断を測定すると、全DNA量も抗体で染色することが可能となり、全DNA量とDNA複製領域でのDNA切断量を同一の検出系で比較解析することも可能である。
本発明によれば、酵素−基質反応に基づく発色の測定、又は蛍光の測定によって、メンブレン上でバンドが検出された場合には、培養系に添加した被験物質をDNA傷害型物質として選択することができる。さらに、選択されたDNA傷害型物質の抗癌活性及び/又は抗ウイルス活性について、種々の方法を用いて、インビトロ及びインビボの実験系において検証してもよい。当然のことながら、本発明のスクリーニング方法によって得られた抗癌活性及び/又は抗ウイルス活性を有するDNA傷害型物質もまた本発明に包含される。
後述するように、公知のDNA傷害型物質であるヒドロキシウレアを用いて、本発明のスクリーニング方法の有用性について検証した(実施例1)。さらに、本発明のスクリーニング方法によって、DNA傷害型物質としてデヒドロコスツスラクトン及びアルカンニンを得ることができた(実施例2)。
2.DNA傷害型物質を含む医薬組成物
本発明によれば、癌及び/又はウイルス感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供することができる。本発明の医薬組成物は、限定されないが、本発明のスクリーニング方法によって得られたDNA傷害型物質を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に溶解又は懸濁させることによって得られる。さらに、本発明の医薬組成物に、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤など)を含有させてもよい。また、本発明の医薬組成物に含有させるDNA傷害型物質の含有量又は濃度は、治療及び予防の対象とする疾患によって適宜変更してよい。DNA傷害型物質の用量は、特定の製剤、適用の態様、治療を受ける特定の位置、宿主及び癌(腫瘍)に応じて変化させることができる。対象の年齢、体重、性別、食事、投与時間、宿主の状態、薬物の組合せ、反応感度及び重傷度などの他の因子も考慮されるべきである。
医薬組成物の処方形態には、経口、局所または非経口投与に合わせた、任意の固体(錠剤、丸薬、カプセル、顆粒など)又は液体(溶液、懸濁液、エマルジョンなど)組成物であってもよい。
本発明の医薬組成物の対象への投与は、静脈内、経口、腹腔内、静脈内などの任意の適切な方法であってよい。投与は、最大耐量以内で連続的又は定期的に実施することができる。1回の投与あたり、最大24時間の注射又は輸液等による投与であってもよく、より好ましくは1〜12時間、最も好ましくは1〜6時間である。入院せずに、治療を行うことができる短時間の投与が特に好ましい。しかしながら、対象の状態(例えば、疾患の重症度、緊急性など)を考慮して、投与は12〜24時間であってよく、又は必要に応じてさらに長時間であってもよい。投与は、例えば、1〜4週の適切な間隔で実施することができる。本発明の医薬組成物は、徐放製剤としてのリポソーム若しくはナノ粒子カプセル化によって、又は他の標準的な送達手段によって、疾患部位に送達されてもよい。
本発明のスクリーニング方法によって得られたDNA傷害型物質及びこれを含む医薬組成物は、他の薬物(抗癌剤、抗ウイルス剤、制吐剤、ホルモン剤など)と共に使用されてもよい。他の薬物は、DNA傷害型物質又はこれを含む医薬組成物と同時に投与されてもよく、又は別個に投与されてもよい。
本発明によれば、本発明のスクリーニング方法によって得られたDNA傷害型物質又はこれを含む医薬組成物を用いた、癌及び/又はウイルス感染を治療及び/又は予防する方法が提供される。
以下、製造例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより明確に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1:パルスフィールド電気泳動(PFGE)法によるDNA複製領域での二重鎖切断の検出
SV40で不死化した繊維芽細胞MRC5を10cmの細胞培養用ディッシュ上で、DMEM培地に10%のウシ胎児血清(FBS)を加えた培地で培養した。培養細胞に最終濃度が10μMとなるようにバロゲン付加ウラシル(FdU、CldU、BrdU、IdUのいずれか)を加え、30分間、37℃にて5%CO下でインキュベートした。この処理により、DNA複製が起きている場所にハロゲン付加ヌクレオチドを導入することができる。最終的にハロゲン付加ヌクレオチドを特異的に認識する抗体によって識別が可能となる。ハロゲン付加ヌクレオチドでDNA複製領域をラベルした後、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄後、新しい培地を加え薬剤処理を行った。その後、24時間インキュベートした。
24時間の処理後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン−EDTA処理により細胞をディッシュから剥がした。次に、培地を加えて細胞を15mlのチューブに回収し、1,000rpm、5分間の遠心分離により、細胞のみを回収した。沈殿した細胞にPBSを加えて懸濁させ、細胞数を血球計算盤で数えた。細胞数を測定した後、再び遠心分離を行い、沈殿した細胞を5×10細胞/mlとなるようにPBSで調整した。その後、1%のアガロース(BIORAD社 MEGABASE Agarose)と1:1の割合で混ぜ、BIORAD社のCHEFプラグモールドの枠内に流し込み、同一体積中に同一細胞数(2.5×10細胞/80μl)となるようにプラグを調製した。細胞を包埋したプラグを溶解バッファー(100mM EDTA、1%(w/v)ラウロイルサルコシンナトリウム、0.2%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、1mg/mlプロテイナーゼK)に浸し、37℃で24時間処理し、細胞質を分解した。細胞質が除去されたプラグは、0.9%アガロースゲル(0.25×TBEバッファーで調整)へセットして電気泳動を行った。電気泳動は、BIOMETRA社のパルスフィールド電気泳動装置を使用し、バッファーは0.25×TBEを用い、温度を13℃にて、電圧を180−120V log変化とし、電極の角度を120°〜110°の直線変化とし、通電時間を30秒〜5秒 log変化させ、23時間の泳動を行った。電気泳動を終了後、ゲルを500ng/mlの臭化エチジウムを含んだ0.25×TBEバッファーで一晩染色した。染色後、ゲルをGE healthcare社のTyphoon FLA7000スキャナーで解析し、二重鎖切断が起きたDNAを定量した。
次に、ゲルで分画できた二重鎖切断は、DNA複製部位であったかどうかを検証した。予めヌクレオチドのアナログであるハロゲン付加ウラシルを導入しているため、DNA切断部位にハロゲン付加ウラシルが存在するかを検証した。ハロゲン付加ウラシルとしてFdU、CldU、及びBrdUはSigma社のB−33抗体で染色が可能で、BrdU及びIdUはBD社のBU44抗体で染色が可能であることを明らかにした(データ示さず)。
ゲル中に含まれるDNAを効率よくナイロンメンブレンに転写するために、DNAを細かく切断する必要がある。そこで、臭化エチジウム存在下で紫外線を照射するとDNAが切断されることが知られているので、2kJ/mの紫外線をゲルに照射してDNAをゲル内で切断した。その後、アルカリ変性バッファー(0.5N NaOH、1.5M NaCl)で1時間処理し、ゲル中のDNAを1本鎖化する。その後、中和バッファー(1M Tris−Cl(pH7.6)、1.5M NaCl)で1時間処理して中和した。中和処理後、20×SSC(3M NaCl、0.3Mクエン酸三ナトリウム)を用いてナイロンメンブレン(GE Healthcare社のHibond−N+)に転写した。転写後、1.2kJ/mの紫外線照射により、メンブレンとDNAを架橋した。メンブレンへの抗体の非特異的な結合を防ぐために、1%スキムミルク、0.1%Tween−20を含むPBS溶液で20分間処理し、ブロッキングした。ブロッキング後、PBS−0.1%Tween−20溶液中の一次抗体(マウス抗BrdU抗体)で3〜24時間反応させた。PBS−0.1%Tween−20で3回洗浄後、二次抗体(アルカリホスファターゼ標識した抗マウス抗体、ロバ、Jackson社)溶液で1時間処理し、3回洗浄し、続いて染色を行った。染色は、BCIP/NBT(5−ブロモ−4−クロロ−3’−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム)溶液(Roche社)を含んだAPバッファー(0.1M Tris−Cl(pH9.5)、100mM NaCl、50mM MgCl)をメンブレンに添加し、バンドが見えるまで室温で反応させた。
このシステムの有用性を検証するために、ランダムに染色体を切断するγ線処理と、DNA複製領域で染色体を切断するヒドロキシウレアによる処理を行い、実際にDNA複製領域において二重鎖切断を測定できるか検証した。BrdUを30分処理することでDNA複製領域をラベルした細胞に、γ線を5、10、20Gy照射した細胞、又は1、2、4mMのヒドロキシウレアで24時間処理した細胞を使って、パルスフィールド電気泳動を行った。その後、臭化エチジウム染色と抗体染色を行い、ヒドロキシウレア処理群では臭化エチジウム染色及び抗体染色の両方でバンドが検出されたのに対して、γ線では臭化エチジウム染色の場合のみでバンドが得られた(図1A)。対照群として、BrdUを24時間処理したものを使用した。この場合は、すべての染色体領域にBrdUが存在するため、γ線処理とヒドロキシウレア処理の両方で予期した通りバンドが検出できた(図1B)。この結果は、従来から行われている顕微鏡観察による結果と一致していた(データ示さず)。これらの結果から、ハロゲン付加ヌクレオチドとパルスフィールド電気泳動を組み合わせることによって、DNA複製領域において染色体の二重鎖切断を検出できることが明らかになった。
さらに、本発明のスクリーニング方法の性能を検証するために、既存の抗癌剤による処理によって、実際にDNA複製領域において染色体切断が検出できるかについて検討した。具体的には、細胞に、クロスリンク剤、ブレオマイシン、トポイソメラーゼ阻害剤等、ヌクレオチド製剤等の処理により、DNA複製領域において染色体切断が増加するかを試験した。その結果、クロスリンク剤であるシスプラスチン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、アントラサイクリン系のドキソルビシン、トポイソメラーゼ阻害剤であるエトポシド、カンプトテシン、ヌクレオチド製剤であるゲムシタビンの処理により、DNA複製領域において染色体切断が検出できることを確認した(図2)。したがって、上記の手法が、DNA傷害型物質のスクリーニングに利用できることがわかった。
実施例2:生薬エキス及び生薬由来の化合物を用いたスクリーニング
富山大学和漢医薬総合研究所の事業である生薬のスクリーニング事業で分与頂いた120種類の生薬エキスと95種類(陰性対照を1つ含む)の生薬由来化合物を利用して、実際にDNA複製領域で染色体切断を引き起こす活性を有する化合物が探索できるか検証した。使用した生薬エキスのリストと生薬由来の化合物のリストをそれぞれ下記の表1及び表2に示す。
生薬エキスに関しては、10μMのIdUで30分処理した細胞に、最終濃度が50μg/mlとなるように薬剤(生薬)を添加し、24時間培養した。その後、パルスフィールド電気泳動を行い、臭化エチジウム染色でDNA切断が増加した生薬の選定を行った。その結果、オウバク(ID#8)とオウレン(ID#10)を用いた処理によって、染色体切断が起こることが分かった(図3)。次に、これらの生薬に関して、25μg/m、50μg/ml、100μg/mlとなるように添加し、薬剤の濃度効果について検証した。その結果、特にオウレンを用いた場合、DNA複製領域における染色体切断が上昇することが明らかになった(図4a)。次に、これらの生薬の主成分を文献的に調べてみたところ、オウバクは、ベルベリン及びパルマチンを多く含み、オウレンは、ベルベリン、コプチシン及びパルマチンを多く含むことが分かった。これらはいずれも構造的に類似した物質である(図4b)。したがって、ベルベリン、コプチシン及びパルマチンの3種をそれぞれ10μM、20μM、40μMとなるように添加して、DNA複製領域における染色体切断を調べた。その結果、コプシチンに最も強いDNA複製領域における染色体切断活性があり、また、ベルベリンにも染色体切断活性があることが分かった。しかしながら、パルマチンには染色体切断活性はなかった(図4c)。この活性に関しては、顕微鏡での解析で確認をしている(図4d)。次に、これらの化合物の細胞毒性を評価するために、コロニーサバイバルアッセイを行った。コロニーサバイバルアッセイは、細胞を6cmディッシュに500個ずつ置いたものに薬剤を添加して24時間処理した後、PBSで洗浄し、新しい培地を添加して1週間培養後、コロニーの形成効率で細胞の生存率を評価するという手段である。このアッセイを行い、各化合物の細胞毒性を評価したところ、ベルベリンとコプチシンの50%致死濃度(IC50)は、およそ6μMであった(図4e)。なお、ベルベリン及びコプシチンに抗癌作用があることは報告されている。
次に、95種類の生薬由来の化合物をスクリーニングした。その結果、上述のコプチシン(#29)を含めて7種の化合物に染色体切断を誘導する活性があることを発見した(図5)。さらに、これらの活性について、個々の化合物の特性を検証した(図6)。このうち、クルクミン(#32)、エボジアミン(#43)、シコニン(#91)、及びチモサポニンAIII(#95)については、抗癌作用が報告されている。しかし、アルカンニン(#5)及びデキドロコスツスラクトン(#34)に関しては、抗癌作用に関する報告がないため、新規の抗癌剤として利用可能であることが示唆された。細胞毒性については、アルカンニンはIC50=300nMであり、臨床レベルでも効果が期待できる濃度で薬効がある。デキドロコスツスラクトンはIC50=2.5μMであり、臨床レベルでの応用も期待し得るものである。
実施例3:DNA複製領域での二重鎖切断の化学発光による検出
実施例1及び2では、染色体の二重鎖切断について、ハロゲン付加ヌクレオチドの取り込み、該ハロゲン化ヌクレオチドへの一次抗体による結合、該一次抗体に対するアルカリホスファターゼ標識した二次抗体の結合、及びアルカリホスファターゼに対する基質(BCIP/NBT溶液)の添加によって得られる発色に基づいて検出した。本実施例では、染色体の二重鎖切断を発光(蛍光)によっても検出できるかどうかについて検討した。
一例として、ピロリ菌の感染によって宿主の染色体が切断されることが知られているが、この際に検出されるDNAが、宿主(細胞)由来のDNAであるのか、又はピロリ菌由来のDNAであるのかを確認するために、本発明の方法が有効であることを以下に検討した。実験方法は、使用した細胞、二次抗体の標識、化学発光法による検出の違いを除いて、実施例1及び2の方法に準じた。要約すると、ヒト胃癌細胞株(AGS細胞)を10cmの細胞培養ディッシュ上でサブコンフルエントになるまで培養し、最終濃度が10μMとなるようにBrdUを添加後、24時間培養した。細胞を洗浄後、BrdU標識された宿主細胞に対して、ピロリ菌(TN2gf4株)をMOI=100(1つの細胞あたり100の細菌を感染させる割合)で感染させた。感染から1日後に、細胞を回収し、実施例1と同様にパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)用にプラグを調製し、電気泳動を行った。続いて、ゲルを臭化エチジウム溶液で染色した(図7C)。
次に、ゲルで分画された二重鎖切断が、ピロリ菌のDNAではなく、ヒト胃癌細胞株由来のDNA複製部位で行われたものであることを検証した。実施例1と同様に、ゲル中のDNAを変性させ、ナイロンメンブレンに転写した。転写後、洗浄及びブロッキング処理し、一次抗体(マウス抗BrdU抗体)を反応させ、続いて、二次抗体(ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識)を反応させた。次に、ECLシステム(ECL prime,cat # RPN2232,GE healthcare)を用いてメンブレン上のバンドを検出した(図7B)。なお、このECLシステムは、二次抗体を標識したHRPに対して反応した基質の化学発色をGE healthecare社のLAS4000を用いて検出するものである。結果は、図7BとCを対比することに明らかなように、切断されたDNAのバンドが同位置に現れていることから、切断されたDNAは宿主細胞由来であることが確認できた。このような検証により、本発明のスクリーニング方法において、実施例1及び2に示した発色法に限らず、化学発光法もまた二重鎖切断の検出に使用できることが分かった。

Claims (10)

  1. DNA傷害型物質をスクリーニングする方法であって、下記:
    (a)培養細胞にハロゲン付加ヌクレオチドを添加し、DNAをラベルする工程;
    (b)培養系に被験物質を添加する工程;
    (c)培養細胞を回収し、溶解後、パルスフィールドゲル電気泳動により染色体又は核酸を分離する工程;
    (d)分離された染色体又は核酸をメンブレンに転写し、ハロゲン付加ヌクレオチドに対する一次抗体を添加し、反応させる工程;
    (e)標識剤を結合させた、一次抗体に特異的な二次抗体を添加し、反応させる工程;
    (f)場合により、該標識剤に対する基質を添加し、反応させる工程;及び
    (g)工程(e)又は(f)の反応後、標識剤又は基質に由来するシグナルが検出された場合に、工程(b)において添加された被験物質をDNA傷害型物質として選択する工程を含むスクリーニング方法。
  2. ハロゲン付加ヌクレオチドが、ブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、フルオロデオキシウリジン、又はクロロデオキシウリジンである、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 標識剤が、酵素又は蛍光分子である、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
  4. 酵素が、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ウレアーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びベータガラクトシダーゼからなる群から選択される、請求項3に記載のスクリーニング方法。
  5. 基質が、5−ブロモ−4−クロロ−3’−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、3,3’‐ジアミノベンジジン四塩酸(DAB)、オルトフェニレンジアミン(OPD)、2,2’−アジノジ(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンゼン(TMB)、5−アミノサリチルサン(ASA)、ルミノール、及びルシフェリンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  6. 蛍光分子が、Cy−2、Cy−3、Cy−3.5、Cy−5、Cy−5.5、Cy−7、Alexa、FITC、テキサスレッド、及びローダミンからなる群から選択される、請求項3に記載のスクリーニング方法。
  7. 被験物質が生薬由来の物質から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法を用いて得られたDNA傷害型物質。
  9. 請求項8に記載のDNA傷害型物質を含む、癌及び/又はウイルス感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
  10. DNA傷害型物質がデヒドロコスツスラクトン又はアルカンニンである、請求項9に記載の医薬組成物。
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