JP2003180394A - ファージ溶原菌を利用したdna代謝系にダメージを与える物質を検出する方法 - Google Patents

ファージ溶原菌を利用したdna代謝系にダメージを与える物質を検出する方法

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JP2003180394A
JP2003180394A JP2001387619A JP2001387619A JP2003180394A JP 2003180394 A JP2003180394 A JP 2003180394A JP 2001387619 A JP2001387619 A JP 2001387619A JP 2001387619 A JP2001387619 A JP 2001387619A JP 2003180394 A JP2003180394 A JP 2003180394A
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phage
damaging
lysogen
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JP2001387619A
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English (en)
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Hideo Ikeda
日出男 池田
Yasushi Ogata
康至 小方
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Medinet Co Ltd
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MEDEINETTO KK
Medinet Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 化合物におけるDNA代謝系にダメージを与え
る活性を評価する方法、および該方法を利用したDNA代
謝系をターゲットとする抗菌剤または抗癌剤の簡便なス
クリーニング方法の提供を課題とする。 【解決手段】 ファージ溶原菌においては、DNA二重鎖
切断等のDNA代謝系のダメージにより、プロファージが
誘発され、その際、溶菌が起こる。本発明者らは、ファ
ージ溶原菌の菌体内で、レポーター遺伝子を発現させて
おき、プロファージの誘発に伴う溶菌によって放出され
る該レポーター遺伝子産物の活性を指標とすることによ
り、被検化合物についてDNA代謝系にダメージを与える
活性を有するか否かを評価できる方法を開発した。この
評価方法を利用することにより、抗菌剤または抗癌剤の
スクリーニングが可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ファージ溶原菌を
利用した化合物のDNA代謝系にダメージを与える活性の
評価方法、および該評価方法を利用した抗菌剤または抗
癌剤のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大腸菌染色体中にファージDNAを有する
大腸菌(ファージ溶原菌)において、DNA代謝系にダメ
ージが生じると、SOS応答と呼ばれる生体反応が誘導さ
れ、プロファージの誘発が起こることが知られている。
従って、SOS応答を指標とすることにより、DNA代謝系の
ダメージを評価することができる。DNA代謝系のダメー
ジとは例えば、DNA二重鎖切断、DNAのメチル化または酸
化等を言う。
【0003】既に、この知見を利用した、インダクテス
ト (Inductest) と呼ばれるDNA代謝系にダメージを与え
る活性の評価方法が発表されている(Moreau P. et. a
l., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73: 3700-3704, 197
6)。この方法は、大腸菌においてDNA代謝異常によるSOS
応答に伴うプロファージの誘発を指標とし、生成するフ
ァージを検出することにより行う。具体的には、試験す
るサンプル溶液で処理した溶原菌を軟寒天と指示菌と共
に寒天平板プレートに撒き、一晩培養後、形成されたプ
ラークを計数することによってファージを検出するもの
である。この方法では、DNA二本鎖切断等のDNA損傷を定
量的に検出することができる。しかしながら、この方法
においては、(1)結果が判明するまで2日を要する、
(2)プラークの形成数を検出するため、結果の判定に
労力を要する、(3)多数の材料が必要であるため、費
用がかかる、(4)プラークを形成させる際までに多数
の工程があり、慣れるまでに時間を要する、(5)多数
のサンプルについて一度に試験するには不向きである等
の問題点が残っていた。
【0004】従って、DNA二本鎖切断等のDNA代謝系のダ
メージを評価できる、実用性のある、効率的でかつ経済
的な方法は、これまでのところ知られていなかった。こ
のDNA代謝系のダメージの評価方法が開発されれば、あ
る化合物についてDNA二本鎖切断導入活性等のDNA代謝系
にダメージを与える活性を評価することができ、この評
価方法を利用することにより、DNA代謝系にダメージを
与える活性を有する抗菌剤、抗癌剤のスクリーニングが
可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、DNAの
代謝系のダメージを評価できる、効率的でかつ経済的な
新たな方法を提供することにある。さらに、本発明はこ
のような評価方法を利用した、DNA代謝系をターゲット
とする抗菌剤または抗癌剤の簡便なスクリーニング方法
を提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】ファージ溶原菌において
は、DNA二重鎖切断等のDNA代謝系のダメージにより、プ
ロファージが誘発され、その際、溶菌が起こる。このと
き、細菌内に存在したタンパク質は、細菌体外へ放出さ
れる。本発明者らは、この点に着目した。即ち、予めフ
ァージ溶原菌の菌体内で、レポーター遺伝子を発現させ
ておけば、プロファージの誘発に伴う溶菌によって細菌
内に存在したタンパク質と共にレポーター遺伝子産物も
菌体外へ放出されるため、菌体外のレポーター活性を指
標とすることにより、被検化合物のDNA代謝系にダメー
ジを与える活性の有無について評価できるものと考え
た。
【0007】本発明者らは、レポーター遺伝子としてla
c遺伝子を有し、かつλ(ラムダ)ファージDNAを染色体
上に持つ大腸菌(λファージ溶原菌)を作製し、該溶原
菌を利用して、化合物のDNA損傷活性について検討し
た。まず、該溶原菌を予めIPTG (Isopropyl-1-thio-b-D
-galactoside)で処理することにより、lac遺伝子産物で
あるβ−ガラクトシダーゼを発現させた。次に、被検化
合物を該溶原菌の培養液に添加し、λプロファージの誘
発に起因する溶菌によって培養液中に放出されるβ−ガ
ラクトシダーゼの活性を、Millerの方法 (Miller, J.
H. (1992) in Ashort course in bacterial genetics
(Miller, J. H., ed) pp 72-74, p 445,Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY) に
従い測定した。この方法はONPG(o-ニトロフェノール-
β-D-ガラクトシド)を基質としてβ−ガラクトシダー
ゼによって産生されるo-ニトロフェノールの発色 (黄
色) を、分光光度計 (OD420) によって測定するもので
ある。
【0008】この方法を用いて実験を行った結果、既
に、DNAの代謝系にダメージを与えることが判明してい
る抗菌剤、抗癌剤、環境負荷物質を含む多くの化合物に
ついて、DNA代謝系にダメージを与える活性を簡便に評
価がすることができた。
【0009】本発明者らは上記の如く、レポーター遺伝
子を発現するファージ溶原菌を利用することにより、化
合物のDNA代謝系にダメージを与える活性を簡便に評価
できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】本発明の方法は、従来の方法に比べ、試験
後直ぐに結果が分かり、操作も簡単で、簡便に結果を判
定でき、さらに、経済的でかつ多数のサンプルについて
一度に試験することができる等の利点を有する。この方
法を利用することにより、DNAの代謝系をターゲットと
する抗菌剤、抗癌剤のスクリーニング、さらには環境負
荷物質の評価等を行うことが可能である。
【0011】即ち、本発明は、化合物のDNA代謝系にダ
メージを与える活性を評価する方法、および該方法を利
用したDNA代謝系をターゲットとする抗菌剤または抗癌
剤の簡便なスクリーニング方法に関し、より具体的に
は、〔1〕 化合物のDNA代謝系にダメージを与える活
性を評価する方法であって、(a)レポーター遺伝子を
発現するファージ溶原菌であって、該溶原菌のDNA代謝
系にダメージが生じると溶菌するファージ溶原菌を提供
する工程、(b)工程(a)のファージ溶原菌に被検化
合物を接触させる工程、および(c)ファージ溶原菌の
溶菌に伴い菌体外へ放出されるレポーター活性を測定す
る工程を含み、工程(c)により有意にレポーター活性
が検出された場合に、被検化合物がDNA代謝系にダメー
ジを与える活性を有すると評価される方法、〔2〕 DN
A代謝系にダメージを与える活性を有する化合物のスク
リーニング方法であって、(a)〔1〕に記載の評価方
法により、被検化合物についてDNA代謝系にダメージを
与える活性を評価する工程、および(b)DNA代謝系に
ダメージを与える活性を有すると評価された化合物を選
択する工程、を含む方法、〔3〕 DNA代謝系にダメー
ジを与える活性が、DNAに損傷を与える活性である
〔1〕または〔2〕に記載の方法、〔4〕 DNAに損傷
を与える活性が、DNA二重鎖切断導入活性である〔3〕
に記載の方法、〔5〕 レポーター遺伝子がlac遺伝子
である〔1〕または〔2〕に記載の方法、〔6〕 ファ
ージ溶原菌が大腸菌由来である〔1〕または〔2〕に記
載の方法、〔7〕 ファージがλファージ、φ80ファ
ージ、434ファージ、および166ファージからなる
群より選択される、〔6〕に記載の方法、〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法により同定され
るDNA代謝系にダメージを与える活性を有する化合物、
〔9〕 〔8〕に記載の化合物を有効成分として含有す
る抗菌剤、〔10〕 〔8〕に記載の化合物を有効成分
として含有する抗癌剤、〔11〕 以下の(a)および
(b)を構成要素として含む、化合物のDNA代謝系にダ
メージを与える活性を評価するためのキット、(a)レ
ポーター遺伝子を発現するファージ溶原菌であって、該
溶原菌のDNA代謝系にダメージが生じると溶菌するファ
ージ溶原菌、(b)レポーター遺伝子産物の検出用試
薬、を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、ファージ溶原菌を利用
した、化合物のDNA代謝系にダメージを与える活性につ
いての評価方法を提供する。前述のように、ファージ溶
原菌のDNA代謝系にダメージが生じると、SOS応答によ
り、プロファージの誘発が起こり、ファージ溶原菌が溶
菌する。本発明においては、該ファージ溶原菌の菌体内
にレポーター遺伝子を発現させておき、プロファージの
誘発に伴って起きる溶菌により放出される該レポーター
遺伝子産物の活性(レポーター活性)を指標とすること
により、化合物についてDNA代謝系にダメージを与える
活性を評価する。従って、本発明においてはまず、レポ
ーター遺伝子を発現するファージ溶原菌であって、該溶
原菌のDNA代謝系にダメージが生じると溶菌するファー
ジ溶原菌を提供する(工程(a))。
【0013】本発明の「ファージ溶原菌」とは、ファー
ジゲノム(DNA)を染色体中に保持し、ファージを産生す
る能力を有する細菌を言う。溶原菌内の染色体中に存在
するファージゲノムをプロファージと呼ぶ。また、「溶
菌」とは、ファージ溶原菌から、プロファージの誘発に
伴い、細胞壁および細胞膜が分解し、子ファージが放出
される現象を言う。
【0014】本発明における「DNA代謝系のダメージ」
とは、このDNA代謝系のダメージによって、細菌のSOS応
答が誘導され、その結果、プロファージの誘発を引き起
こすようなDNA代謝系におけるダメージを言う。本発明
の「DNA代謝系にダメージを与える活性」としては、例
えばDNAに直接損傷を与える活性が挙げられる。このDNA
の損傷とは、具体的には、DNAの二重鎖切断、メチル
化、酸化、チミンダイマー等の塩基間の共有結合等を例
示することができる。また、上記DNA代謝系のダメージ
は、直接的なDNA損傷を伴わず、DNA代謝に関わる因子が
阻害されることによって引き起こされる場合もある。例
えば、大腸菌においてDNAジャイレースまたはヒストン
様タンパク質HUを阻害することによって結果的にDNA二
重鎖切断が導入されることが知られている。また、DNA
損傷を伴わないDNA複製の停止といったDNA代謝系のダメ
ージによっても、プロファージの誘発が起こることが知
られている。従って本発明において評価できるDNA代謝
系にダメージを与える活性を持つ化合物には、DNAに直
接損傷を与える化合物、またはDNAには直接損傷を与え
ないが、DNA代謝系にはダメージを与える化合物が含ま
れる。
【0015】本発明のファージ溶原菌は、該溶原菌の染
色体DNA代謝系のダメージに起因して、プロファージの
誘発が起こり、それに伴って溶菌し得る細菌であれば、
ファージおよび宿主菌の種類は制限されない。本発明に
おいては、例えば、λファージ(ラムダファージ)のゲ
ノムが染色体中に保持された大腸菌(λファージ溶原
菌)を好適に使用することができる。その他、λファー
ジと類似のファージ、例えばφ80ファージ、434フ
ァージ、および166ファージ(A. Kornberg andT. A.
Baker, in DNA Replication (W. H. Freeman and Compa
ny, New York, ed. 2, 1992), pp553-636)等が大腸菌へ
溶原化した溶原菌を用いることも可能である。
【0016】本発明の溶原菌は、被検化合物の膜透過性
が高められた菌株、またはDNA損傷が除去修復機構によ
り、修復されずに残るようにするために、除去修復機構
の欠損株であることが好ましい。例えば、溶原菌が大腸
菌由来である場合には、envA -および/またはuvrB-変異
株を好適に使用することができる。
【0017】また、本発明の溶原菌として、DNAに生じ
た損傷が修復されずに残る下記の菌株由来のものを好適
に使用することができる。 (i)DNAの二重鎖切断の修復機構が欠損した菌株:
例えば、大腸菌recBCD変異株 (ii)メチル化されたDNAの修復機構が欠損した菌
株: 例えば、大腸菌ada、tag、alkA、alkBまたはaidB
変異株 (iii)酸化されたDNAの修復機構が欠損した菌株:
例えば、大腸菌mutM、mutT、またはmutY変異株
【0018】本発明のファージ溶原菌は、ファージを該
ファージが溶原化し得る宿主菌へ、溶原化させることに
よって作製することができる。ファージの細菌への溶原
化は、当業者においては周知の方法により行うことがで
きる。例えば、λファージが溶原化した大腸菌は、大腸
菌培養液にλファージライセートを混合し、インキュベ
ートすることにより、容易に作製することができる。
【0019】本発明の上記レポーター遺伝子は、その発
現産物を検出することが可能であれば、特に制限はな
く、当業者が一般的に各種アッセイ系に用いるレポータ
ー遺伝子を使用することができる。
【0020】好適なレポーター遺伝子としては、lac遺
伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)、ルシフェラーゼ
遺伝子、CAT (chrolamphenicol acetyl transferase)遺
伝子等を例示することができるが、これらに制限されな
い。
【0021】また本発明においては、宿主菌に既に存在
する遺伝子をレポーター遺伝子として利用することが可
能である。つまり、菌体内で構成的に発現している、ま
たは発現を誘導させることできる遺伝子であって、さら
に該遺伝子の産物が菌体外へ放出された際に、該遺伝子
産物を検出することが可能なものであれば、本発明のレ
ポーター遺伝子として利用することができる。
【0022】ファージ溶原菌として大腸菌由来の菌株を
用いる場合は、通常、大腸菌はlac遺伝子を有すること
から、本発明におけるレポーター遺伝子としてlac遺伝
子を好適に使用することができる。lac遺伝子をレポー
ター遺伝子として用いる場合、ファージ溶原菌へIPTGを
添加することにより、lac遺伝子の発現を誘導すること
が可能である。
【0023】本発明の「レポーター遺伝子を発現するフ
ァージ溶原菌」は、レポーター遺伝子を発現するベクタ
ー(プラスミド)を、当業者に周知の方法、例えばエレ
クトロポレーション法、カルシウム法によってファージ
溶原菌へ導入することにより作製することができる。レ
ポーター遺伝子を発現するベクターは、当業者において
一般的に行われる方法により構築することができる。レ
ポーター遺伝子は、ファージ溶原菌体内で、プラスミド
上の遺伝子として存在していてもよいし、あるいは溶原
菌の染色体中に組み込まれた状態で存在していてもよ
い。また、レポーター遺伝子を発現するファージ溶原菌
は、レポーター遺伝子を発現する細菌へ、ファージを溶
原化させることによっても作製することができる。
【0024】本発明の方法によりDNA代謝系にダメージ
を与える活性を評価できる被検化合物としては、特に制
限はなく、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微
生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、精製もしく
は粗精製蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、核
酸、合成低分子化合物、天然化合物等が挙げられる。
【0025】本発明においては、次いで、工程(a)の
ファージ溶原菌に被検化合物を接触させる(工程
(b))。
【0026】本工程における「接触」は、例えば、ファ
ージ溶原菌培養液に被検化合物を添加することにより行
うことができる。また、被検化合物がタンパク質(ペプ
チド)である場合は、該タンパク質を発現するベクター
を、本発明のファージ溶原菌へ導入することにより、本
発明の「接触」を行うことも可能である。
【0027】本発明においては、次いで、ファージ溶原
菌の溶菌に伴って菌体外へ放出されるレポーター活性を
測定する(工程(c))。
【0028】本工程におけるレポーター遺伝子産物の活
性の測定は、該レポーター遺伝子の種類に応じて、当業
者において一般的に行われる方法で実施することができ
る。例えば、レポーター遺伝子としてlac遺伝子を用い
た場合、該遺伝子の産物であるβ-ガラクトシダーゼの
活性は、比色法と呼ばれるMillerの方法(Miller, J. H.
(1992) in A short course in bacterial genetics (M
iller, J. H., ed) pp72-74, p 445, Cold Spring Harb
or Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)によっ
て測定することができる。具体的には、β-ガラクトシ
ダーゼのONPGを基質とする酵素反応によって生成される
o-ニトロフェノールの発色を、分光光度計を用いて測定
する。この方法は、測定にかかる時間が比較的短く、操
作も簡便であり、本工程の測定方法として好適に実施す
ることができる。また、レポーター遺伝子としてルシフ
ェラーゼ遺伝子を用いた場合は、市販のDual Luciferas
esystem (Promega)を使用することにより、該遺伝子の
産物であるルシフェラーゼの活性を測定することができ
る。
【0029】本発明においては、上記の工程(c)によ
り有意にレポーター活性が検出された場合に、被検化合
物がDNA代謝系にダメージを与える活性を有すると評価
される。
【0030】また、ファージ溶原菌からのプロファージ
の誘発は、自然状態(被検化合物等を接触させない状
態)において、極めて低い頻度で起こることも想定され
る。従って、本発明においては、ファージ溶原菌に被検
化合物を接触させない場合を対照(コントロール)と
し、この対照と比較して上記工程(c)によって測定さ
れる活性が有意に高い場合に、被検化合物はDNA代謝系
にダメージを与える活性を有すると判定することもでき
る。
【0031】また上記の評価方法は、被検試料の中にDN
A代謝系のダメージを引き起こすような化合物が含まれ
るか否かの判定に使用することが可能である。上記した
ように、プロファージの誘発が起こるようなDNA代謝系
のダメージとして、DNAの損傷、例えばDNAの二重鎖切
断、メチル化、酸化、チミンダイマー等の塩基間の共有
結合等が挙げられることから、本発明の方法により、被
検試料中にこれらのDNA損傷をもたらすような物質、例
えば、環境変異原物質、発癌性物質、酸化ストレスを与
える物質等が存在するか否かを評価することができる。
これにより、例えば、環境破壊が懸念される河川、ある
いは土壌中からサンプルを採取することにより、サンプ
ル中の環境変異原物質または発癌性物質の存在の有無を
検査することができる。
【0032】本発明の好ましい態様においては、例え
ば、lac遺伝子を有するλファージ溶原菌を用いて、下
記の如く実施することができる。
【0033】図1に本発明の評価方法の概略を示す。ま
ず、ファージ溶原菌培養液にIPTGを添加することによ
り、lac遺伝子の発現を誘導し、該遺伝子の産物である
β-ガラクトシダーゼを菌体内へ産生させる。つづい
て、被検化合物を該培養液へ添加する。次いで、該培養
液を遠心分離し、上清を採取し、溶菌に伴って菌体外へ
放出されたβ-ガラクトシダーゼ活性の測定を行う。測
定の結果、有意にβ-ガラクトシダーゼ活性を検出され
た場合に、被検化合物はDNA代謝系にダメージを与える
活性を有するものと判定を行う。
【0034】また本発明は、上記の評価方法を利用し
た、DNA代謝系にダメージを与える活性を有する化合物
のスクリーニング方法を提供する。
【0035】本発明の方法においてはまず、上記の評価
方法により、被検化合物についてDNA代謝系にダメージ
を与える活性の評価を行う。次いで、DNA代謝系にダメ
ージを与える活性を有すると評価された化合物を選択す
る。
【0036】本発明のスクリーニング方法に供すること
ができる被検化合物としては特に制限はなく、例えば、
上述した化合物を挙げることができる。
【0037】また、本発明は上記スクリーニング方法に
よって選択されるDNA代謝系にダメージを与える活性を
有する化合物を提供する。該化合物は、細菌(細胞)の
DNA代謝系にダメージを与えることから、殺菌作用もし
くは細菌(細胞)の増殖を阻害する作用があるものと考
えられる。従って、本発明の方法により取得される化合
物は、抗菌剤もしくは抗がん剤となることが期待され
る。即ち、本発明においては、上記の評価方法を利用す
ることにより、抗菌剤または抗癌剤の候補化合物のスク
リーニングを行うことができる。特に、本発明のスクリ
ーニング方法は、DNA二重鎖切断を誘導することによっ
て細胞を殺す抗菌剤または抗癌剤の候補化合物の検索
に、好適に利用できる。また、本発明のスクリーニング
方法により、酸化的ストレスを与える化合物をスクリー
ニングすることも可能である。
【0038】また、病原性大腸菌O-157は、産生される
毒素(ベロ毒素)が食中毒の原因となることが知られて
いる。このベロ毒素は、O-157染色体中に存在するプロ
ファージの遺伝子によってコードされている。O-157に
対する抗菌剤を投与した際に、ベロ毒素を有するプロフ
ァージの誘発が起こってしまうと、ベロ毒素遺伝子を含
む子ファージが形成されるために、他の細菌への再感染
が懸念される。従って、ベロ毒素を有するプロファージ
の誘発を引き起こさないような、抗菌剤の開発が重要と
考えられる。そこで、例えば本発明におけるファージ溶
原菌としてO-157を使用し、O-157に対し抗菌作用が知ら
れる化合物を被検化合物としてスクリーニングを行うこ
とにより、プロファージの誘発を引き起こさない抗菌剤
をスクリーニングすることが可能である。
【0039】さらに、本発明の方法では、ある化合物に
ついて、DNA代謝系にダメージを与える活性に対する阻
害作用の有無を評価することが可能である。この場合は
例えば、以下のようにして評価を行うことができる。ま
ず、本発明のファージ溶原菌を、DNA代謝系にダメージ
を与える活性を有する化合物によって予め処理を行う
か、もしくは被検化合物をファージ溶原菌へ接触させる
際に、DNA代謝系にダメージを与える活性を有する化合
物と一緒に接触させる。次いで、上記工程(c)により
レポーター遺伝子産物の活性を測定する。被検化合物を
接触させない場合と比較してレポーター活性が有意に低
下する場合、該被検化合物は、DNA代謝系にダメージを
与える活性を阻害する作用を有するものと判定する。好
ましい態様においては、ある化合物について、DNA二重
鎖切断または酸化的ストレスを阻害する作用を有するか
否かについて評価することができる。また、この方法を
利用することにより、DNA代謝系にダメージを与える活
性を阻害する化合物のスクリーニングを行うことができ
る。例えばこのスクリーニング方法により、抗酸化作用
を有する化合物を取得することが可能である。上記方法
により取得される化合物もまた、本発明に含まれる。
【0040】本発明のスクリーニング方法に必要な、例
えば、上記レポーター遺伝子を有するファージ溶原菌、
レポーター遺伝子産物の検出に必要な試薬等を、予め組
み合わせてキットとすることができる。これらのキット
には、必要に応じてレポーター遺伝子産物の検出に用い
られる基質化合物、細胞の培養のための培地や容器、陽
性や陰性の標準試料、更にはキットの使用方法を記載し
た指示書等をパッケージしておくこともできる。例え
ば、レポーター遺伝子としてlac遺伝子を使用する場合
には、基質であるONPGをキットに含めることができる。
【0041】本発明のスクリーニング方法によって単離
される化合物をヒトや動物、例えばマウス、ラット、モ
ルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブ
タ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬とし
て使用する場合には、単離された化合物自体を直接ヒト
や動物に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製
剤化して投与を行うことも可能である。例えば必要に応
じて、糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、
マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしく
はそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、ま
たは注射剤の形で非経口的に使用できる。また、薬理学
上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や
生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安
定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と
適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0042】錠剤、カプセル剤に混和することができる
添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、ト
ラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セ
ルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、
アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウム
のような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような
甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのよう
な香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである
場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を
含有することができる。注射のための無菌組成物は注射
用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従
って処方することができる。
【0043】注射用の水溶液としては、例えば生理食塩
水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-
ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナ
トリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコ
ール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えば
プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イ
オン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HC
O-50と併用してもよい。
【0044】油性液としてはゴマ油、大豆油があげら
れ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアル
コールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸
塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、
塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、
フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。
【0045】患者への投与は、例えば、動脈内注射、静
脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支
的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方
法により行いうる。投与量は、ヒトや動物の体重や年
齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適
当な投与量を適宜選択することが可能である。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに具体的
に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるもので
はない。
【0047】〔実施例1〕 DNAジャイレース阻害剤ナ
リジキシン酸のDNA代謝系にダメージを与える活性、お
よび最適条件の検討 (1)λファージ溶原菌を利用したDNA代謝系にダメー
ジを与える活性の評価方法 λプロファージ溶原菌を利用したDNA代謝系にダメージ
を与える活性の評価方法の概略を図1に示した。まず、
次のようにして菌株の接種を行った。50ml遠心管(CORNI
NG, 430290; 本体材質: ポリプロピレン製、キャップ形
状: プラグシール) 2本にLB培地(BIO 101, Inc., Cat #
3002-014)を5mlずつ無菌操作により分注し、片方に大腸
菌HI406株(envA uvrB lac+ λ(papa))のグリセロール・
ストックを10μl加えた。次に、通気 (aeration) のた
め、50ml遠心管の蓋は、蓋を固く閉めた状態から180°
回転させ緩めた。
【0048】次いで、以下のようにして前培養を行っ
た。50ml遠心管を恒温震盪機 (TAITECPersonal-11)
に、スプリングネットの上段と下段とでスプリングネッ
トの孔ふたつ分ずれるように斜めに差し (通気のた
め)、37℃で震盪速度110min-1で一晩(約16時間) 震盪培
養した。本培養においては、無菌操作により、菌液を50
ml遠心管中のLB培地5〜10ml (必要量 + 2ml (濁度 (OD
600) 測定用 + 余分量)) に対して1/100に希釈し (希釈
の結果、OD600の値はおよそ0.02となる)、37℃で震盪速
度110min-1で2時間震盪培養した (OD600の値はおよそ0.
2以上となる) 菌の増殖がこれまで通りであることを確
認するため、培養開始前と培養開始後1時間おきに濁度
(OD600) を測定して、その増殖曲線を描き、倍加時間
(約30分) を以前の結果と比較した。
【0049】次に、IPTG (Isopropyl-1-thio-b-D-galac
toside)処理を行った。菌液にIPTG(SIGMA, I-5502)を終
濃度1x 10-3 Mとなるように加え (0.1M IPTGを1/100量
加えた)、37℃において震盪速度110min-1で30分間震盪
培養した。OD600の値はおよそ0.3以上となった。自然誘
発により生成されたλファージを除くため、無菌操作に
より、菌液 (必要量+0.5ml) を15ml遠心管(CORNING, 43
0052; 本体材質: ポリプロピレン製、キャップ形状: プ
ラグシール)に移し、冷却遠心機 (HITACHI 20PR-52) に
て4℃で3,000rpmで5分間遠心し、上清をデカンテーショ
ンにより捨て、LB培地を同量加え、ボルテックスした。
【0050】次に、サンプル溶液処理を行った。無菌操
作により、菌液を15ml遠心管に0.5mlずつ分注し、様々
な濃度のサンプル溶液を加え、37℃で震盪速度110min-1
で3時間震盪培養を行った。濁度 (OD600) の測定におい
ては、15ml遠心管を氷上に20分間置き、サンプル溶液を
加えていない菌液の濁度 (OD600) を測定した。
【0051】次に、β−ガラクトシダーゼフラクション
の調製を行った。15ml遠心管を冷却遠心機 (HITACHI 20
PR-52) にて4℃で3,000rpmで5分間遠心し、上清20μlを
氷上のヒートブロックの孔に差しておいた、80μlのZ b
uffer(Na2HPO4 (Wako, 197-02865) 0.85g、NaH2PO4*2H2
O (Wako, 192-02815) 0.62g、KCl (Wako, 163-03545)75
mg、MgSO4*7H2O (Wako, 131-00405) 24.6mg、2-mercapt
oethanol (SIGMA, M-314) を脱イオン水に溶解して100m
lとし、NaOH (Wako, 197-02125) を加え、pHを7.0に合
わせ、フィルター (Gelman Sciences, 0.45μm) で滅菌
したもの)の入ったマイクロ遠心管 (500 PP- Microcent
rifuge tube 1.5ml; greiner labortechnik, Cat. No.
616201)に移し、ボルテックスした。さらに、β−ガラ
クトシダーゼ反応を測定した。マイクロ遠心管をフラッ
シング後、インキュベーター (Wako THERMOSTATION TS-
505) にて28℃で5分間インキュベートし、4mg/mlのONPG
(o-nitorophenol-b-D-galactoside; ONPG(SIGMA, N-112
7)20mgをZ buffer 2.5mlに溶解したもの)を20μl加え
(ピペットマンで3回ピペッティングした)、15分間イン
キュベーションした (ひとつのサンプルにつき30秒ずつ
ずらして行った)。
【0052】次に、反応を停止させた。1M のNa2CO3(Na
2CO3 (Wako, 199-01585)53gを脱イオン水に溶解して500
mlとし、121℃で20分間オートクレーブしたもの)を50μ
l加えて反応を止め (ボルテックスミキサーで10秒間ボ
ルテックスした後、再び氷上のヒートブロックの孔に差
す)、OD420を測定し (測定前に室温に戻し、遠心機でフ
ラッシングした)、以下の式によりβ−ガラクトシダー
ゼ活性 (プロファージ誘発活性 (Inducing activity);
サンプル化合物を加えていない菌液のOD600 =1当たり
の菌液の、上清1ml当たりに含まれるβ−ガラクトシダ
ーゼによってONPGを基質として1分間に生成されたo-nit
rophenolの量)を求めた。プロファージ誘発活性 (Induc
ing activity) の定義は、1000 x OD420/(反応時間
(分))(15分)x(菌液の量 (μl))(20μl)x(サンプル溶液
を加えていない菌液のOD600)である。
【0053】(2)DNAジャイレース阻害剤ナリジキシ
ン酸のDNA代謝系にダメージを与える活性の評価 最もポピュラーな抗菌剤であるナリジキシン酸をモデル
サンプルとして本発明の評価方法を行った。この薬剤
は、DNAジャイレース (大腸菌DNAトポアイソメレースI
I) の阻害剤であり、また大腸菌においてSOS応答を誘導
することが知られている。検討の結果、ナリジキシン酸
の濃度に依存してβ−ガラクトシダーゼ活性 (プロファ
ージ誘発活性) が上昇することが分かった(図2)。
【0054】また、ナリジキシン酸の量依存的反応を調
べることによって求めた最小誘導濃度(minimal inducin
g concentration;MIC)である40μg/ml (172μM) のナ
リジキシン酸についてのタイムコース(time course)を
取った結果、2時間以上の処理で未処理のコントロール
に比べ明瞭な活性が検出されることが分かった(図
3)。
【0055】同時にMoreau等 (1976) のインダクテスト
を行った結果、ナリジキシン酸によってλファージの感
染中心(infective centers)の力価(titer;ファージ液1
ml当たりに存在するファージの数) が上昇した(図
4)。従って、本発明者らが開発した方法は、Moreauら
(Moreau P. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 7
3:3700-3704, 1976)のインダクテストの代わりとして用
いることが可能である。
【0056】(3)β−ガラクトシダーゼ活性の測定の
最適条件の検討 β−ガラクトシダーゼ活性の測定に最適な条件を求める
べく、様々な検討を加えた結果、β−ガラクトシダーゼ
の反応時間は高々15分以上で一定の活性が得られること
が分かり、試験時間の短縮が可能となった(図5)。
【0057】また、反応のボリュームを様々に変えた結
果、反応のボリュームはMillerの方法(Miller, J. H.
(1992) in A short course in bacterial genetics (Mi
ller,J. H., ed) pp 72-74, p 445, Cold Spring Harbo
r Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に定め
られたボリューム (1ml) である必要は無く、0.12mlか
ら1.2mlの範囲において一定の活性が得られることが分
かった(図6)。実施例では0.12mlの反応ボリュームで
マイクロ遠心管中で反応を行わせているが、例えばマル
チプルウェルプレート (96ウェル) 中で反応を行わせ、
マイクロプレートリーダーで吸光度を測定することによ
って、多数のサンプルについても簡便に評価することが
できる所謂ハイスルー・プットな方法も確立することが
可能である。
【0058】さらに、β−ガラクトシダーゼの活性を測
定する際、培養液上清をβ−ガラクトシダーゼの反応の
バッファーであるZ bufferで1/5に希釈することによ
り、希釈せずそのまま培養液上清を用いた時と比べて2.
5倍の活性を得ることに成功した(図7)。この結果か
ら、40μg/mlのナリジキシン酸での3時間処理によりコ
ントロールの約25倍の活性が得られた。これは処理前の
活性 (バックグラウンド) の約87倍の値であった。
【0059】〔実施例2〕 抗癌剤ブレオマイシンのDN
A代謝系にダメージを与える活性の評価 活性酸素を生成することによりDNAの二重鎖切断を誘導
することが知られている抗癌剤であるブレオマイシンに
ついて、実施例1に記載の手順により、DNA代謝系にダ
メージを与える活性の評価を行った。
【0060】その結果、高いプロファージ誘発活性が検
出された(図8)。従って、本発明の方法は、薬剤のDN
A二重鎖切断誘起能を測定する方法として有効であるこ
とが示された。ナリジキシン酸もDNAジャイレースを阻
害することによリDNAに二重鎖切断を誘導することが知
られているので、実施例1および2の結果は、本発明の
方法は、ナリジキシン酸やブレオマイシンの様なDNA二
重鎖切断を誘導することによって細胞を殺す抗菌剤や抗
癌剤の検索に有効であることを示すものである。
【0061】〔実施例3〕 変異原物質MNNGのDNA代謝
系にダメージを与える活性の評価 発癌性のあることが知られている変異原物質であるMNNG
(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine) について、
実施例1に記載の手順により、DNA代謝系にダメージを
与える活性の評価を行った。その結果、MNNGによって
も、プロファージ誘発活性が検出された(図9)。この
ことから、本発明の方法が、MNNGのような発癌性物質の
検出においても有効であることが示された。
【0062】〔実施例4〕 過酸化水素のDNA代謝系に
ダメージを与える活性の評価 過酸化水素について、実施例1に記載の手順により、DN
A代謝系にダメージを与える活性の評価を行った。その
結果、プロファージ誘発活性が検出された(図10)。
このことから、本発明の方法が酸化的ストレスを測定す
る方法としても有効であることが示された。
【0063】〔実施例5〕 ハイドロキシルアミンのDN
A代謝系にダメージを与える活性の評価 ハイドロキシル基を遊離することで毒性を示すことが考
えられているハイドロキシルアミンについて、実施例1
に記載の手順により、DNA代謝系にダメージを与える活
性の評価を行った。その結果、本発明の方法により、こ
のような環境負荷物質についても、プロファージ誘発活
性を明瞭に検出することができた(図11)。
【0064】
【発明の効果】本発明により、化合物のDNA代謝系にダ
メージを与える活性の評価方法、および該方法を利用し
たDNA代謝系にダメージを与える活性を有する化合物の
スクリーニング方法が提供された。本発明の方法によ
り、DNA代謝系にダメージを与える物質、例えば、環境
変異原物質、発癌性物質、酸化ストレス物質等を検出す
ることが可能である。また、本発明のスクリーニング方
法により選択される化合物は、DNA代謝系をターゲット
とする抗菌剤または抗癌剤の候補化合物となるものと期
待される。また本発明は、抗酸化物のスクリーニングに
利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を示す図である。
【図2】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、ナリジキシン酸処理によるβ−ガ
ラクトシダーゼ活性 (プロファージ誘発活性) の上昇を
示す図である。
【図3】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、ナリジキシン酸処理によるタイム
コースを示す図である。2時間以上のナリジキシン酸処
理により未処理の対照と比べて明瞭な活性が検出され
た。
【図4】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、ナリジキシン酸処理によるプロフ
ァージ誘発活性、および誘発されたλファージの力価を
示す図である。Aは誘導活性を、Bはλファージの力価を
表す。
【図5】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、β-ガラクトシダーゼ反応のタイ
ムコースを示す図である。β−ガラクトシダーゼの反応
は初速が大きく、やがて反応速度は一定となる反応であ
り、β−ガラクトシダーゼの反応時間は高々15分で一定
の活性が得られた。Aはo-ニトロフェノールの産生を、B
は誘導活性を表す。
【図6】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、β−ガラクトシダーゼの反応に対
する反応容量の影響を示す図である。反応容量が0.12ml
から1.2mlの範囲において一定の活性が得られた。
【図7】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法において、培養液上清をZバッファーで様々
に希釈した時のβ-ガラクトシダーゼ反応を示す図であ
る。培養液上清をZバッファーで1/5に希釈することによ
り、希釈せずそのまま培養液上清を用いた時の2.5倍の
活性が得られることが分かる。Aはo-ニトロフェノール
の産生を、Bは誘導活性を表す。
【図8】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性
の評価方法における、抗癌剤の一種であるブレオマイシ
ン処理によるプロファージ誘発活性の上昇を示す図であ
る。
【図9】本発明のDNA代謝系にダメージを与える活性の
評価方法における、変異原物質であるMNNG処理によるプ
ロファージ誘発活性の上昇を示す図である。
【図10】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活
性の評価方法における、酸化的ストレスを与える過酸化
水素水処理によるプロファージ誘発活性の上昇を示す図
である。
【図11】 本発明のDNA代謝系にダメージを与える活
性の評価方法における、ハイドロキシルアミン処理によ
るプロファージ誘発活性の上昇を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 G01N 33/50 Z // C12N 1/21 C12N 1/21 7/00 7/00 15/09 15/00 A Fターム(参考) 2G045 AA40 4B024 AA11 BA80 CA02 DA06 FA10 GA11 GA19 HA20 4B063 QA05 QA20 QQ91 QQ98 QR75 QS24 4B065 AA26X AA98X AB01 AC20 4C084 AA16 ZB26 ZB35

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化合物のDNA代謝系にダメージを与える
    活性を評価する方法であって、(a)レポーター遺伝子
    を発現するファージ溶原菌であって、該溶原菌のDNA代
    謝系にダメージが生じると溶菌するファージ溶原菌を提
    供する工程、(b)工程(a)のファージ溶原菌に被検
    化合物を接触させる工程、および(c)ファージ溶原菌
    の溶菌に伴い菌体外へ放出されるレポーター活性を測定
    する工程を含み、工程(c)により有意にレポーター活
    性が検出された場合に、被検化合物がDNA代謝系にダメ
    ージを与える活性を有すると評価される方法。
  2. 【請求項2】 DNA代謝系にダメージを与える活性を有
    する化合物のスクリーニング方法であって、(a)請求
    項1に記載の評価方法により、被検化合物についてDNA
    代謝系にダメージを与える活性を評価する工程、および
    (b)DNA代謝系にダメージを与える活性を有すると評
    価された化合物を選択する工程、を含む方法。
  3. 【請求項3】 DNA代謝系にダメージを与える活性が、D
    NAに損傷を与える活性である請求項1または2に記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 DNAに損傷を与える活性が、DNA二重鎖切
    断導入活性である請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 レポーター遺伝子がlac遺伝子である請
    求項1または2に記載の方法。
  6. 【請求項6】 ファージ溶原菌が大腸菌由来である請求
    項1または2に記載の方法。
  7. 【請求項7】 ファージがλファージ、φ80ファー
    ジ、434ファージ、および166ファージからなる群
    より選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の方法に
    より同定されるDNA代謝系にダメージを与える活性を有
    する化合物。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の化合物を有効成分とし
    て含有する抗菌剤。
  10. 【請求項10】 請求項8に記載の化合物を有効成分と
    して含有する抗癌剤。
  11. 【請求項11】 以下の(a)および(b)を構成要素
    として含む、化合物のDNA代謝系にダメージを与える活
    性を評価するためのキット。 (a)レポーター遺伝子を発現するファージ溶原菌であ
    って、該溶原菌のDNA代謝系にダメージが生じると溶菌
    するファージ溶原菌、(b)レポーター遺伝子産物の検
    出用試薬。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013530723A (ja) * 2010-07-20 2013-08-01 アメリカン ステリライザー カンパニー 滅菌プロセスをモニターするための方法
JP2016106542A (ja) * 2014-12-03 2016-06-20 国立大学法人 大分大学 Dna傷害型物質のスクリーニング方法

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