JP2016100086A - 回転式筒状炉、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法、非水電解質二次電池用負極活物質、及び非水電解質二次電池 - Google Patents

回転式筒状炉、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法、非水電解質二次電池用負極活物質、及び非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】炉芯管の内部に発生する粉つまりを抑制することで、炭素被膜の量、結晶性などのばらつきが少なく、高容量でサイクル性の高い非水電解質二次電池用負極活物質を、大量生産することができる回転式筒状炉を提供する。
【解決手段】炭素被膜が形成された粒子を排出するための出口端を有する回転可能な筒状の炉芯管と、炉芯管を加熱するためのヒーターを備えた加熱室とを具備し、炉芯管が、ヒーターを備えた加熱室の内部に位置する加熱部と、加熱室の外に位置する非加熱部とからなり、出口端側の非加熱部における炉心管の内部の粒子を、出口端側に強制的に移動させるための治具を出口端側に有するものであることを特徴とする回転式筒状炉。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転式筒状炉、及びこれを用いた非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法、並びにこの製造方法で製造された非水電解質二次電池用負極活物質及びこの負極活物質を含む非水電解質二次電池に関する。
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度の二次電池が強く要望されている。従来、この種の二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にV、Si、B、Zr、Snなどの酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、溶融急冷した金属酸化物を負極材として適用する方法(例えば、特許文献3参照)、負極材料に酸化珪素を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、負極材料にSiO及びGeOを用いる方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。また、負極材に導電性を付与する目的として、SiOを黒鉛とメカニカルアロイング後、炭化処理する方法(例えば、特許文献6参照)、珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献7参照)、酸化珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献8参照)がある。
しかしながら、上記従来の方法では充放電容量が上がりエネルギー密度が高くなるものの、サイクル性が不十分であったり、市場の要求特性には未だ不十分であったりし、必ずしも満足でき得るものではなく、更なるエネルギー密度の向上が望まれていた。
特に特許文献4では、酸化珪素をリチウムイオン二次電池負極活物質として用い、高容量の電極を得ているが、本発明者らがみる限りにおいては未だ初回充放電時における不可逆容量が大きく、また、サイクル性が実用レベルに達していないため、改良する余地がある。
また、負極活物質に導電性を付与した技術についても、特許文献6では、固体と固体の融着であるため、均一な炭素被膜が形成されず、導電性が不十分であるといった問題がある。また、特許文献7の方法においては均一な炭素被膜の形成が可能となるものの、Siを負極活物質として用いているためリチウムイオンの吸脱着時の膨張・収縮があまりにも大きすぎて結果として実用に耐えられず、サイクル性が低下するためこれを防止するべく充電量の制限を設けなくてはならない。特許文献8の方法においては、サイクル性の向上は確認されるものの、微細な珪素結晶の析出、炭素被覆の構造及び基材との融合が不十分であることより、充放電のサイクル数を重ねると徐々に容量が低下し、一定回数後に急激に低下するという現象があり、二次電池用としてはまだ不十分である。特許文献9では、一般式SiOで表される酸化珪素に炭素被膜を化学蒸着させて容量・サイクル特性の向上を図っている。
以上のような炭素被膜(黒鉛被膜)を形成して導電性を付与した負極活物質を使用すれば、高容量でサイクル特性が良好な電極を得ることができる。このような負極活物質は、連続炉であるロータリーキルンを用いて大量生産することが提案されている(例えば、特許文献10参照)。
特開平5−174818号公報 特開平6−60867号公報 特開平10−294112号公報 特許第2997741号公報 特開平11−102705号公報 特開2000−243396号公報 特開2000−215887号公報 特開2002−42806号公報 特許4171897号公報 特開2013−8654号公報
上記のように、炭素被膜を形成して導電性を付与した負極活物質を、ロータリーキルンを用いて大量生産することが提案されている。しかし、ロータリーキルンを用いてケイ素粉末に炭素被膜を形成する場合、その内部でケイ素粉末に炭素被膜の形成処理を行う炉芯管の出口側の非加熱部の長さが長ければ、炉芯管の内壁に粒子が付着しやすくなり、粉つまりが起きやすくなる。この粉つまりにより、炉芯管内のケイ素粉末のかさが変化することにより、ケイ素粉末と炭素源との接触量やケイ素粉末の熱履歴にばらつきが生まれ、回収される材料の炭素被膜の量や結晶性といった物性のバラつきが大きくなってしまう。特に、ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)の炭素被膜の形成の工程に用いる場合、回収する材料の炭素被膜の量や結晶性といった物性がばらついてしまう。このように物性にばらつきがあるケイ素粉末を負極活物質として二次電池に使用することにより、その電池特性が悪化してしまうという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、炉芯管の内部に発生する粉つまりを抑制することで、炭素被膜の量、結晶性などのばらつきが少なく、高容量でサイクル性の高い非水電解質二次電池用負極活物質を大量生産することができる回転式筒状炉を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子の表面に、有機物ガスを熱分解させることにより炭素被膜を形成して非水電解質二次電池負極活物質を製造するための回転式筒状炉であって、前記粒子を投入するための入口端と、前記炭素被膜が形成された粒子を排出するための出口端とを有する回転可能な筒状の炉芯管と、該炉芯管を加熱するためのヒーターを備えた加熱室とを具備し、前記ヒーターで前記炉芯管を加熱しつつ、該炉芯管を回転させることにより、該炉芯管の内部に導入した前記粒子を混合・攪拌しながら、前記粒子の表面に前記炭素被膜を形成し、該炭素被膜が形成された粒子を前記出口端から排出するものであり、前記炉芯管が、前記ヒーターを備えた加熱室の内部に位置する加熱部と、前記加熱室の外に位置する非加熱部とからなり、前記出口端側の前記非加熱部における前記炉心管の内部の前記粒子を、前記出口端側に強制的に移動させるための治具を前記出口端側に有するものであることを特徴とする回転式筒状炉を提供する。
本発明では、回転式筒状炉において、粒子を強制的に炉芯管の出口側に移動させる治具(以下、粒子移動補助用治具とも称する)により、ケイ素化合物の粒子を出口端側に強制的に移動させることができる。そのため、従来から発生し易かった出口端側の非加熱部における粉つまりを抑制し、炉芯管内におけるケイ素粉末のかさのばらつきを抑制できる。その結果、炭素被膜の量やケイ素化合物の結晶性等のばらつきを抑制できるため、高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する非水電解質二次電池負極活物質を量産できる。
このとき、前記治具が、前記炉芯管の内部で前記粒子と接触して前記粒子を前記出口端側に移動させるものであることが好ましい。
治具が粒子と直接接触するものであれば、より確実に粒子を出口端側に移動させることができる。
またこのとき、本発明の回転式筒状炉は、前記治具の前記炉芯管の内部に入り得る部分の前記炉芯管の軸方向長さAと、前記炉芯管の前記出口端から前記加熱部までの長さBとが、0.5≦A/B≦1.4を満たすものであることが好ましい。
上記のA/Bが0.5以上であれば、非加熱部に侵入する治具の長さが充分となり、効果的に粒子を移動させることができる。また、A/Bが1.4以下であれば、治具が加熱部において加熱されすぎることが無く、治具の変形、破損を防止できる。
このとき、前記治具が、回転羽、誘導板、及びスクレーパーの少なくとも1種であることが好ましい。
これらのうち少なくとも1種を使用することで、効果的に粒子を出口端側に移動させることができる。
またこのとき、前記治具は、材質が、耐熱鋳鋼、ニッケルをベースとした超合金、ニッケル―モリブデン―クロム合金、カーボン材、アルミナ、SiC、マグネシア―カーボン質、アルミナ―マグネシア―カーボン質、及びマグネシア―クロム質のいずれかであることが好ましい。
本発明の治具が、これらのいずれかの材質であれば、耐熱性に優れたものとなる。
このとき、前記カーボン材が、CIP材、押出材、モールド材、炭素繊維と樹脂との複合素材、及び炭素繊維と炭素から成るマトリックスとの複合材料のいずれかであることが好ましい。
本発明において、カーボン材がこれらのいずれかであることが好適である。
またこのとき、前記加熱室は、前記加熱部における前記炉芯管の内部を、800℃以上1200℃以下の処理温度に制御可能なものであることが好ましい。
加熱室が処理温度を800℃以上に制御できるものであれば、効率的に炭素被覆を行うことができ、処理時間も短時間にできるため生産性が良いものとなる。また、加熱室が処理温度を1200℃以下に制御できるものであれば、過剰にケイ素化合物粒子の不均化が進行することが無く、また、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こすことがないので、均一な炭素被膜を形成できる。
このとき、本発明の回転式筒状炉は、前記炉芯管を振動させる機構を有することが好ましい。
炉芯管を振動させる機構を有することで、炉芯管の内壁に粒子が付着し難く、粉つまりをより抑制できる。
またこのとき、前記炉芯管を振動させる機構は、ノッカー、落下物により衝撃を与える機構、超音波を発する機構、バイブレーターのいずれかであることが好ましい。
さらに、前記ノッカーは、駆動方式がエアー式又は電磁式であることが好ましい。
本発明では、これらのような機構で炉芯管を振動させることが好適である。
このとき、前記回転式環状炉が、ロータリーキルンであることが好ましい。
本発明では、回転式環状炉として、ロータリーキルンを使用することが好適である。
また本発明は、上記のいずれかに記載の回転式筒状炉を用いて、ケイ素化合物(SiOx:0.5≦x<1.6)からなる粒子の表面に炭素被膜を形成する工程を有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
このような本発明の製造方法により製造された非水電解質二次電池用負極活物質であれば、高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する二次電池を作製可能であり、安価な非水電解質二次電池用負極活物質となる。
また、本発明は、上記に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法により製造されたものであることを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質を提供する。
このような本発明の非水電解質二次電池用負極活物質であれば、二次電池の負極として使用した場合に高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する二次電池を作製可能なものとなる。
また、本発明は、上記に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を含む負極を備えたものであることを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
このような本発明の非水電解質二次電池であれば、高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する二次電池とすることができる。
本発明では、回転式筒状炉において、粒子移動補助用治具により、ケイ素化合物の粒子を出口端側に強制的に移動させることができるため、従来から発生し易かった出口端側の非加熱部における粉つまりを抑制し、炉芯管内におけるケイ素粉末のかさのばらつきを抑制できる。その結果、形成される炭素被膜の量やケイ素化合物の結晶性等のばらつきを抑制できるため、高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する非水電解質二次電池負極活物質を製造できる。また、本発明の回転式筒状炉は、連続的な処理が可能であるため、上記のような良好な特性を有する負極活物質を大量生産することができ、製造コストを低減できる。
また、本発明の回転式筒状炉を用いた非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法も、同様に、良好な特性を有する負極活物質を大量生産することができる。また、この製造方法で製造されたケイ素系負極活物質を用いた負極を備える非水電解質二次電池は、高容量で良好なサイクル特性を有する。
本発明の回転式筒状炉の一例を示す概略図である。 本発明の回転式筒状炉における治具として使用できる回転羽の概略図である。 本発明の回転式筒状炉における治具として使用できる誘導板の概略図である。 本発明の回転式筒状炉の炉芯管の一例を示す概略図である。 本発明のリチウム二次電池の構成例(ラミネートフィルム型)を示す概略図である。 本発明の非水電解質二次電池用負極の一例を示す概略図である。
本発明者らは、二次電池の容量及びサイクル特性の向上という目的を達成するために種々検討を行った結果、負極活物質材料の表面を、例えば有機物ガスの熱分解によって、炭素被膜で被覆することで、著しい電池特性の向上が見られることを確認すると同時に、従来用いられていたバッチ炉等では、その量産が現実的でないことを見出した。そこで、本発明者らは連続生産の可能性について詳細検討を行った結果、炉芯管を回転させる方式の回転式筒状炉を使用することで、市場の要求する特性レベルを満たした上で連続生産が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
本発明は、ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子の表面に、炭素被膜を形成して非水電解質二次電池負極活物質を製造するための回転式筒状炉である。
この場合、炭素被膜を形成する対象となるケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子は、特に限定されるものではないが、平均粒子径は0.01μm以上50μm以下とすることができ、0.1μm以上20μm以下がより好ましく、0.5μm以上15μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が0.01μm以上であれば、表面積が大きくなり過ぎないため、表面酸化の影響を受け難いので純度を高く保つことができ、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いた場合、高い充放電容量を維持できる。また、嵩密度も大きくすることができ、単位体積あたりの充放電容量を大きくすることができる。平均粒子径が50μm以下であれば、電極作製時に、非水電解質二次電池負極活物質を混合したスラリーが、例えば集電体等に塗布しやすいものとなる。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における体積平均粒子径で表すことができる。
また、特に限定されることは無いが、ケイ素化合物として、珪素の微粒子がケイ素系化合物に分散した複合構造を有する粒子を使用することができる。ケイ素系化合物については、不活性なものが好ましく、製造しやすさの点において二酸化珪素が好ましい。また、珪素の微粒子がケイ素系化合物に分散した複合構造を有する粒子は下記に記す性状(i)、(ii)を有していることが好ましい。
(i) 銅を対陰極としたX線回折(Cu−Kα)において、2θ=28.4°付近を中心としたSi(111)に帰属される回折ピークが観察され、その回折線の広がりをもとに、シェーラーの式によって求めた珪素の微粒子(結晶)の粒子径が、好ましくは1〜500nm、より好ましくは2〜200nm、更に好ましくは2〜20nmである。珪素の微粒子の大きさが1nm以上であれば、充放電容量を高く維持できるし、逆に500nm以下であれば充放電時の膨張収縮が小さくなり、サイクル性が向上する。なお、珪素の微粒子の大きさは透過型電子顕微鏡写真により測定することもできる。
(ii) 固体NMR(29Si−DDMAS)測定において、そのスペクトルが−110ppm付近を中心とするブロードな二酸化珪素のピークとともに、−84ppm付近にダイヤモンド型結晶構造の特徴であるピークが存在する。なお、このスペクトルは、通常の酸化珪素(SiOx:x=1.0+α)とは全く異なるもので、構造そのものが明らかに異なっているものである。また、透過電子顕微鏡によって、Siの結晶が無定形の二酸化珪素に分散していることが確認される。この珪素/二酸化珪素分散体(Si/SiO)中における珪素微粒子(Si)の分散量は、2質量%以上36質量%以下、特に10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この分散珪素量が2質量%以上であれば、高い充放電容量を維持でき、36質量%以下であると良好なサイクル性が得られる。尚、固体NMR測定における化学シフトの基準物質は、測定温度で固体であるヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いる。
なお、上記珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子(珪素複合体粉末)は、珪素の微結晶が珪素系化合物に分散した構造を有する粒子であり、上記した好ましい平均粒子径0.01μm以上50μm以下を有するものであれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、下記の方法を好適に採用することができる。
例えば、一般式SiO(0.5≦x<1.6)で表される酸化珪素の粒子(粉末)を、不活性ガス雰囲気下、900℃以上1400℃以下の温度域で熱処理を施して不均化する方法を好適に採用できる。
なお、この場合の酸化珪素とは、通常、二酸化珪素と金属珪素との混合物を加熱して生成した一酸化珪素ガスを冷却・析出して得られた非晶質の珪素酸化物の総称である。酸化珪素粉末は一般式SiOxで表され、平均粒子径の下限は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。平均粒子径の上限は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。BET比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.2m/g以上で、上限として好ましくは30m/g以下、より好ましくは20m/g以下である。xの範囲は0.5≦x<1.6であり、より好ましくは0.8≦x<1.3、更に好ましくは0.8≦x≦1.0であることが望ましい。
酸化珪素粉末の平均粒子径及びBET比表面積が上記範囲内であれば、所望の平均粒子径及びBET比表面積を有する珪素複合体粉末を得ることが容易である。また、xの値が0.5より小さいSiOx粉末の製造はサイクル特性に難があり、xの値が1.6以上のものは、熱処理による不均化反応を行った際に、不活性なSiOの割合が大きくなり、リチウムイオン二次電池に使用した場合、充放電容量が低下するおそれがある。
また、酸化珪素の不均化において、熱処理温度が900℃以上であれば、不均化が効率よく進行するし、Siの微細なセル(珪素の微結晶)の形成を短時間で行えるので、効率的である。また熱処理温度が1400℃以下であれば、酸化珪素中の二酸化珪素部の構造化が進みにくく、リチウムイオンの往来が阻害されることがないので、リチウムイオン二次電池としての機能が低下するおそれがない。また、より好ましい熱処理温度は1000℃以上1300℃以下、特に1000℃以上1200℃以下である。なお、処理時間(不均化時間)は、不均化処理温度に応じて10分以上20時間以下、特に30分以上12時間以下の範囲で適宜選定することができるが、例えば1100℃の処理温度においては5時間程度で所望の物性を有する珪素複合体粉末(不均化物)が得られる。
上記不均化処理は、加熱機構を有する反応装置を用いて不活性ガス雰囲気で行うことができ、反応装置としては特に限定されず、連続法、回分法での処理が可能な炉で、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉、ロータリーキルン等をその目的に応じて適宜選択することができる。この場合、不均化処理ガスとしては、Ar、He、H、N等の上記処理温度にて不活性なガス単独もしくはそれらの混合ガスを用いることができる。不均化処理は、本発明の回転式筒状炉を使用して炭素被膜の被覆を行うのと同時に行っても良い。不均化処理と炭素被膜の被覆を同時に行う場合、回転式筒状炉として、例えば、ロータリーキルン等を使用することができる。
続いて、上記のようなケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子に、炭素被膜を被覆するための、本発明の回転式筒状炉について図1から図4を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の回転式筒状炉10は、主に、その内部で原料(ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子)に炭素被膜を形成する炉芯管1と、炉芯管1を外部から加熱するヒーターを備えた加熱室2と、原料を炉芯管1に連続的に供給できるフィーダー3と、処理された粒子(炭素被膜で被覆されたケイ素化合物の粒子)を回収する回収容器4、炭素被膜の原料となる原料ガスを回転式筒状炉10内部に供給するガス入り口5とを有する。
また、炉芯管1は、原料を投入するための入口端aと、炭素被膜が形成された粒子を排出するための出口端bとを有する筒状の管であり、その軸を中心に回転可能である。
上記のような構成の回転式筒状炉10は、加熱室2に備えられたヒーターで炉芯管1を加熱しつつ、炉芯管1を回転させることにより、炉芯管1の内部に導入した粒子を混合・攪拌しながら、粒子の表面に炭素被膜を形成し、炭素被膜が形成された粒子を出口端bから排出する。
ここで、炉芯管1は、ヒーターを備えた加熱室2の内部に位置する加熱部1aと、加熱室2の外に位置する非加熱部1b、1b’とからなり、本発明の回転式筒状炉10は、炉心管1の内部の粒子を、上記出口端b側に強制的に移動させるための治具6を出口端b側に有する。この治具6は、出口端b側から炉芯管1内方向に向かって設置されたものとできる。
本発明では、治具6が粒子を出口端b側に強制的に移動させることによって、炉芯管1の出口端b側の非加熱部1b’における粉つまりを抑制し、炉芯管1内におけるケイ素粉末のかさのばらつきを抑制できる。このように、回転式筒状炉を使用した場合であっても、ケイ素粉末のかさのばらつきが発生し難いため、従来用いられていたバッチ炉等と同程度に、所望の被覆量でより均一で良好な炭素被膜を形成できるとともに、ケイ素化合物の結晶性のばらつきを抑制できる。そのため、高い充放電容量と良好なサイクル特性を有する非水電解質二次電池負極活物質を製造できる。さらに、回転式筒状炉10は連続炉であるため、高品質の負極活物質を連続的に製造して、大量生産することが可能である。従って、電池特性を向上させることができる負極活物質を低コストに製造することができる。
また、本発明では、治具6の炉芯管1の内部に入り得る部分の炉芯管1の軸方向長さAと、炉芯管1の出口端bから加熱部1aまでの長さBとが、0.5≦A/B≦1.4を満たすものであることが好ましい。上記のA/Bが0.5以上であれば、非加熱部1bに侵入する治具6の長さが充分となり、効果的に粒子を移動させることができる。また、A/Bが1.4以下であれば、治具6が加熱部1aにおいて加熱され過ぎることが無く、治具6の変形、破損を防止できる。ここで、長さAは、例えば、治具6自体が炉芯管1の軸方向に移動できるものである場合には、その移動により炉芯管1の内部に入る部分の炉芯管軸方向の長さも含んだ長さとする。また、治具6自体が炉芯管1の軸方向に移動しないものである場合は、治具6の炉芯管1の内部に入っている部分の長さが上記長さAとなる。
また、治具6は、炉芯管1の内部で粒子と接触して粒子を出口端b側に移動させるものであることが好ましく、具体的には、治具6として、回転羽、誘導板、かきとり棒、及びスクレーパーの少なくとも1種を好適に用いることができる。さらに、治具6は、材質が、耐熱鋳鋼、ニッケルをベースとした超合金、ニッケル―モリブデン―クロム合金、カーボン材、アルミナ、SiC、マグネシア―カーボン質、アルミナ―マグネシア―カーボン質、及びマグネシア―クロム質のいずれかであることが好ましい。これらの材質であれば、耐熱性が高いので、治具6の変形、破損の発生を抑制できる。
また、治具6の材質の好適な例として、カーボン材を挙げたが、このカーボン材としては、CIP(Cold Isostatic Press)材、押出材、モールド材、炭素繊維と樹脂との複合素材、及び炭素繊維と炭素から成るマトリックスとの複合材料のいずれかであることが好ましい。これらのようなものであれば、耐熱性が高く、更に粒子が治具6に付着しにくい。また、複合素材について、炭素繊維(カーボンファイバー)と組み合わせる樹脂としては、主にエポキシ等の熱硬化性樹脂を選択できる。また、炭素から成るマトリックスとしては、例えば炭素マトリックス又は黒鉛マトリックスを選択できる。このような、炭素繊維と炭素から成るマトリックスとの複合材料はC/Cコンポジット(Carbon Fiber Carbon Composite)とも呼ばれる。
図2は治具6として、回転羽21を使用した場合を示す概略図である。回転羽21は耐熱性金属で、流れてくる粒子と接触することができ、回転羽21の回転により粒子を出口端b側に強制的に送りだせることが好ましい。耐熱性金属の材質は特に限定されるものではなく、温度などの使用条件によって、ステンレス鋼、インコネル、ハステロイ、耐熱鋳鋼など適宜選択すればよい。また、図2では、回転羽21は、回転式筒状炉10の出口端b側のふたに取り付けられているが、設置態様は特にこれに限定されることは無い。
図3は治具6として、誘導板31を使用した場合を示す概略図である。本発明で用いる移動板は耐熱性金属で、流れてくる粒子と接触することができ、炉芯管1の回転に沿って粒子を出口端b側に強制的に送りだせるものであることが好ましい。さらに、誘導板自身も前後に移働可能であることが好ましい。誘導板自身が前後に移動可能であることにより、さらに粒子を出口端b側に強制的に送りだすことが可能となる。耐熱性金属の材質は特に限定されるものではなく、温度など使用条件によって、ステンレス鋼、インコネル、ハステロイ、耐熱鋳鋼など適宜選択すればよい。また、図3においても、誘導板31は、回転式筒状炉10の出口端b側のふたに取り付けられているが、設置態様は特にこれに限定されることは無い。
また上記のように、治具6として、かきとり棒を使用しても良い。かきとり棒とは、その先端等に、炉芯管1内部の粒子に接触し強制的に移動させるための掻き取り部を有する棒状の治具である。例えば、このかきとり棒が炉芯管1の軸方向に前進、後退することで、掻き取り部が炉芯管1の軸方向に移動し、炉芯管1内部の粒子を強制的に移動させることができる。
また上記のように、治具6として、スクレーパーを使用しても良い。スクレーパーとは、へら状の刃に柄を取り付けたものである。スクレーパーは、へら状の刃が、炉芯管1の回転により流れてくる粒子や炉芯管1の内部に付着した粒子に接触することで、粒子を掻き取ることができる。
また、本発明の回転式筒状炉10は、炉芯管1を振動させる機構7を有することが好ましい。図1に示すように、本発明の回転式筒状炉10は、炉芯管1を振動させる機構7を複数個有していても良いが、特に個数は限定されることは無く1個であっても良い。
また、本発明において、炉芯管を振動させる機構7は、ノッカー、落下物により衝撃を与える機構、超音波を発する機構、バイブレーターのいずれかを好適に使用することができる。ノッカーは、駆動方式がエアー式又は電磁式であるものを使用することができる。
また、炉芯管を振動させる機構7は、炉芯管1の外壁に配置することができる。
また、図4に示すように、本発明で用いる炉芯管1は、外側が金属であり、内側の粒子に直接接触する部分である接粉部がカーボン材である、2重構造のものとすることが好ましい。これは、炉芯管1の内部で炭素被膜を蒸着する際に、粒子の凝集が起こったとしても、内壁(接粉部)の材質がカーボン材であれば、内壁への粒子の付着を抑制することができるためである。ここでカーボンとは、CIP材、押出材、モールド材、カーボンコンポジットと呼ばれる炭素繊維と樹脂(主にエポキシ等の熱硬化性樹脂)の複合素材、及び炭素繊維と炭素マトリックス又は黒鉛マトリックスの複合材料などを用いることができるが、特に限定されるものではない。また、更に内壁への粒子の付着を少なくするには、上記したように、炉芯管1の外壁に炉芯管を振動させる機構7を設置して炉芯管1を定期的に振動させることが有効であるが、この点で外側(外壁)が金属であることが好ましい。外壁が金属であれば、炉芯管を振動させる機構7で炉芯管1に衝撃を加えた場合であっても、炉芯管1が割れる恐れが無い。この金属は特に限定されるものではなく、温度など使用条件によって、ステンレス鋼、インコネル、ハステロイ、耐熱鋳鋼など適宜選択すればよい。
また、本発明において、加熱室2は、加熱部1aにおける炉芯管1の内部を、800℃以上1200℃以下の処理温度に制御可能なものであることが好ましい。処理温度が800℃以上であれば、効率的に炭素被覆が行われ、処理時間も短時間にできるため生産性が良い。また、1200℃以下であれば、過剰にケイ素化合物粒子の不均化が進行することが無い。さらに、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こすことがなく、均一に導電性被膜が形成されるので、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いた場合、サイクル性能が良好なものとなる。また、この処理温度範囲内であれば、珪素複合体粉末に炭素被膜を形成する場合であっても、珪素微粒子の結晶化が進み難く、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いた場合に充電時の膨張を小さくできる。ここで、処理温度とは装置内における最高設定温度のことで、炉芯管1の中央部の温度が該当することが多い。
なお、処理時間は目的とする炭素被覆量、処理温度、ガス(有機物ガス)の濃度(流速)や導入量等によって適宜選定されるが、通常、最高温度域での滞留時間として1時間以上10時間以下、特に1時間以上4時間以下が経済的にも効率的である。
本発明において炉芯管1内へ供給する有機物ガスを発生する原料として用いられる有機物としては、特に非酸性雰囲気下において、上記熱処理温度で熱分解して炭素を生成し得るものが選択される。例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素又はこれらの混合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環から3環の芳香族炭化水素又はこれらの混合物が挙げられる。また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油又はこれらの混合物も用いることができる。
また、本発明において、回転式筒状炉10が、ロータリーキルンであることが好ましい。上述のような構成を有する回転式筒状炉10として、ロータリーキルンを使用することが好適である。
次に本発明の製造方法において回転式筒状炉で炭素被覆を施したケイ素化合物(負極活物質)の物性について説明する。炭素被覆量は特に限定されるものではないが、SiO(0.5≦x≦1.6)からなる粒子と炭素被膜の合計に対し0.3質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは2質量%以上20質量%以下である。炭素被覆量が0.3質量%以上であれば、十分な導電性を維持でき、非水電解質二次電池に用いた場合にサイクル性が良好なものとなる。炭素被覆量が40質量%以下であれば、負極材料に占める炭素の割合が適量となり、ケイ素材の割合を十分に高くすることができるため、非水電解質二次電池に用いた場合、高い充放電容量を得られる。
[負極の製造方法]
まず、ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)から成る粒子を製造する。これはまず、酸化珪素ガスを発生する原料を不活性ガスの存在下もしくは減圧下900℃〜1600℃の温度範囲で加熱し、酸化ケイ素ガスを発生させる。この場合、原料は金属珪素粉末と二酸化珪素粉末との混合物であり、金属珪素粉末の表面酸素及び反応炉中の微量酸素の存在を考慮すると、混合モル比が、0.8<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.3の範囲であることが望ましい。粒子中のSi結晶子は仕込み範囲や気化温度の変更、また生成後の熱処理で制御される。発生したガスは吸着板に堆積される。反応炉内温度を100℃以下に下げた状態で堆積物を取出し、ボールミル、ジェットミルなどを用いて粉砕、粉末化を行う。
得られた粒子の表層に、炭素被膜を形成する。これには、熱分解CVDを用いる。熱分解CVDは、上述の本発明の回転式筒状炉内に酸化ケイ素粉末を導入し、炭化水素ガスを充満させ炉内温度を昇温させる。上述のように、炉内温度は800℃以上1200℃以下の範囲とすることが好ましい。炭化水素ガスは特に限定することはないが、CnHm組成のうち3≧nが望ましい。低製造コスト及び分解生成物の物性が良いからである。炭素量の測定は島津製作所製の全有機炭素計を用いて定量できる。
続いて、表面に炭素被膜が形成されたケイ素化合物粒子と必要に応じて炭素系活物質を混合するとともに、これらの負極活物質粒子とバインダー(負極結着剤)、導電助剤など他の材料とを混合し負極合剤としたのち、有機溶剤又は水などを加えてスラリーとする。
次に、負極集電体の表面に、この負極合剤のスラリーを塗布し、乾燥させて負極活物質層を形成する。この時、必要に応じて加熱プレスなどを行っても良い。
<リチウムイオン二次電池>
次に、上記した本発明の負極を用いた非水電解質二次電池の具体例として、リチウムイオン二次電池について説明する。
[ラミネートフィルム型二次電池の構成]
図5に示すラミネートフィルム型二次電池50は、主にシート状の外装部材55の内部に倦回電極体51が収納されたものである。この倦回体は正極、負極間にセパレータを有し、倦回されたものである。また正極、負極間にセパレータを有し積層体を収納した場合も存在する。どちらの電極体においても、正極に正極リード52が取り付けられ、負極に負極リード53が取り付けられている。電極体の最外周部は保護テープにより保護されている。
正負極リードは、例えば、外装部材55の内部から外部に向かって一方向で導出されている。正極リード52は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成され、負極リード53は、例えば、ニッケル、銅などの導電性材料により形成される。
外装部材55は、例えば、融着層、金属層、表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムであり、このラミネートフィルムは融着層が電極体51と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外周縁部同士が融着、又は、接着剤などで張り合わされている。融着部は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムであり、金属部はアルミ箔などである。保護層は例えば、ナイロンなどである。
外装部材55と正負極リードとの間には、外気侵入防止のため密着フィルム54が挿入されている。この材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン樹脂である。
[正極]
正極は、例えば、負極と同様に、正極集電体の両面又は片面に正極活物質層を有している。
正極集電体は、例えば、アルミニウムなどの導電性材により形成されている。
正極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵放出可能な正極材のいずれか1種又は2種以上を含んでおり、設計に応じて正極結着剤、正極導電助剤、分散剤などの他の材料を含んでいても良い。この場合、正極結着剤、正極導電助剤に関する詳細は、例えば既に記述した負極結着剤、負極導電助剤と同様である。
正極材料としては、リチウム含有化合物が望ましい。このリチウム含有化合物は、例えばリチウムと遷移金属元素からなる複合酸化物、又はリチウムと遷移金属元素を有するリン酸化合物があげられる。これら記述される正極材の中でもニッケル、鉄、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上を有する化合物が好ましい。これらの化学式として、例えば、LixM1OあるいはLiyM2POで表される。式中、M1、M2は少なくとも1種以上の遷移金属元素を示す。x、yの値は電池充放電状態によって異なる値を示すが、一般的に0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10で示される。
リチウムと遷移金属元素とを有する複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物などが挙げられる。リチウムニッケルコバルト複合酸化物としては、例えばリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)やリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)などが挙げられる。
リチウムと遷移金属元素とを有するリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1−uMnPO(0<u<1))などが挙げられる。これらの正極材を用いれば、高い電池容量を得ることができるとともに、優れたサイクル特性も得ることができる。
[負極]
図6を参照して負極の構成を説明する。負極60は、例えば、図6のように、集電体61の両面に負極活物質層62を有している。この負極は、正極活物質剤から得られる電気容量(電池としての充電容量)に対して、負極充電容量が大きくなることが好ましい。これにより、負極上でのリチウム金属の析出を抑制することができる。
また上記した正極活物質層は、正極集電体の両面の一部に設けられており、負極活物質層も負極集電体の両面の一部に設けられている。この場合、例えば、負極集電体上に設けられた負極活物質層は対向する正極活物質層が存在しない領域が設けられている。これは、安定した電池設計を行うためである。
上記の負極活物質層と正極活物質層とが対向しない領域では、充放電の影響をほとんど受けることが無い。そのため、負極活物質層の状態が形成直後のまま維持され、これによって負極活物質の組成など、充放電の有無に依存せずに再現性良く組成などを正確に調べることができる。
[セパレータ]
セパレータは正極、負極を隔離し、両極接触に伴う電流短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータは、例えば合成樹脂、あるいはセラミックからなる多孔質膜により形成されており、2種以上の多孔質膜が積層された積層構造を有しても良い。合成樹脂として例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
[電解液]
活物質層の少なくとも一部、又は、セパレータには、液状の電解質(電解液)が含浸されている。この電解液は、溶媒中に電解質塩が溶解されており、添加剤など他の材料を含んでいても良い。
溶媒は、例えば、非水溶媒を用いることができる。非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、1,2−ジメトキシエタン、又はテトラヒドロフランなどが挙げられる。この中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種以上を用いることが望ましい。より良い特性が得られるからである。またこの場合、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒を組み合わせることにより、より優位な特性を得ることができる。これは、電解質塩の解離性やイオン移動度が向上するためである。
合金系負極を用いる場合、特に溶媒としてハロゲン化鎖状炭酸エステル又はハロゲン化環状炭酸エステルのうち少なくとも1種を含んでいることが望ましい。これにより、充放電時、特に充電時において負極活物質表面に安定な被膜が形成されるからである。ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、ハロゲンを構成元素として有する(少なくとも1つの水素がハロゲンにより置換された)鎖状炭酸エステルである。ハロゲン化環状炭酸エステルは、ハロゲンを構成元素として有する(少なくとも1つの水素がハロゲンにより置換された)環状炭酸エステルである。
ハロゲンの種類は特に限定されないが、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも良質な被膜を形成するからである。また、ハロゲン数は、多いほど望ましい。得られる被膜がより安定的であり、電解液の分解反応が低減されるからである。
ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ジフルオロメチルメチルなどがあげられる。ハロゲン化環状炭酸エステルとしては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
溶媒添加物として、不飽和炭素結合環状炭酸エステルを含んでいることが好ましい。充放電時に負極表面に安定な被膜が形成され、電解液の分解反応が抑制できるからである。不飽和炭素結合環状炭酸エステルとして、例えば炭酸ビニレン又は炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。
また溶媒添加物として、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電池の化学的安定性が向上するからである。スルトンとしては、例えばプロパンスルトン、プロペンスルトンが挙げられる。
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性が向上するからである。酸無水物としては、例えば、プロパンジスルホン酸無水物が挙げられる。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類以上含むことができる。リチウム塩として、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.5mol/kg以上2.5mol/kg以下であることが好ましい。これは、高いイオン伝導性が得られるからである。
[ラミネートフィルム型二次電池の製造方法]
最初に上記した正極材を用い正極電極を作製する。まず、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤、正極導電助剤などを混合し正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させ正極合剤スラリーとする。続いて、ナイフロール又はダイヘッドを有するダイコーターなどのコーティング装置で正極集電体に合剤スラリーを塗布し、熱風乾燥させて正極活物質層を得る。最後に、ロールプレス機などで正極活物質層を圧縮成型する。この時、加熱しても良く、また圧縮を複数回繰り返しても良い。
次に、上記したリチウムイオン二次電池用負極の作製と同様の作業手順を用い、負極集電体に負極活物質層を形成し負極を作製する。
正極及び負極を作製する際に、正極及び負極集電体の両面にそれぞれの活物質層を形成する。この時、どちらの電極においても両面部の活物質塗布長がずれていても良い(図6を参照)。
続いて、電解液を調整する。続いて、超音波溶接などにより、正極集電体に正極リードを取り付けると共に、負極集電体に負極リードを取り付ける。続いて、正極と負極とをセパレータを介して積層、又は巻回させて巻回電極体を作製し、その最外周部に保護テープを接着させる。次に、扁平な形状となるように巻回体を成型する。続いて、折りたたんだフィルム状の外装部材の間に巻回電極体を挟み込んだ後、熱融着法により外装部材の絶縁部同士を接着させ、一方向のみ解放状態にて、巻回電極体を封入する。続いて、正極リード、及び負極リードと外装部材の間に密着フィルムを挿入する。続いて、解放部から上記調整した電解液を所定量投入し、真空含浸を行う。含浸後、解放部を真空熱融着法により接着させる。以上のようにして、ラミネートフィルム型二次電池を製造することができる。
上記作製したラミネートフィルム型二次電池等の本発明の非水電解質二次電池において、充放電時の負極利用率が93%以上99%以下であることが好ましい。負極利用率を93%以上の範囲とすれば、初回充電効率が低下せず、電池容量の向上を大きくできる。また、負極利用率を99%以下の範囲とすれば、Liが析出してしまうことがなく安全性を確保できる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
以下の手順により、ラミネートフィルム型の二次電池を作製した。
最初に正極を作製した。正極活物質はコバルト酸リチウム(LiCoO)を95質量部と、正極導電助剤2.5質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVDF)2.5質量部とを混合し正極合剤とした。続いて正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン、NMP)に分散させてペースト状のスラリーとした。続いてダイヘッドを有するコーティング装置で正極集電体の両面にスラリーを塗布し、熱風式乾燥装置で乾燥した。この時正極集電体は厚み15μmのものを用いた。最後にロールプレスで圧縮成型を行った。
次に負極を作製した。負極活物質は以下のように作製した。まず、金属ケイ素と二酸化ケイ素を混合した原料を反応炉へ設置し、10Paの真空度の雰囲気中で気化させたものを吸着板上に堆積させ、十分に冷却した後、堆積物を取出しボールミルで粉砕し、ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子を作製した。この粒子の粒径を調整した後、図1に示すような、本発明の回転式筒状炉で熱分解CVDを行うことで炭素被膜を形成し、負極活物質を作製した。この際に、SiOの不均化も進行させた。なお、ここで使用した回転式筒状炉は、炉芯管内の粒子を出口端側に強制的に移動させるための治具として、図2に示すような、回転羽を有するものとした。また、処理温度は1000℃、原料ガス種はメタン(50体積%、窒素希釈)、原料ガス供給量は150NL/min、最高温度域での粒子の滞留時間は3時間の条件でCVDを行った。また、炉芯管内の粉つまりの程度を確認した。
ここで作製した負極活物質のSiO(0.5≦x≦1.6)からなる粒子の質量と炭素被膜の質量の合計に対する炭素被膜の質量の割合(炭素被覆量)を算出した。炭素被覆量の測定は全有機炭素計(島津製作所製)を用いて定量した。また、製造した負極活物質の粉末から任意に10か所サンプリングし、炭素被覆量を算出し、その標準偏差を算出することにより炭素被覆量のバラつきの判断を行った。
また、作製した負極活物質の銅を対陰極としたX線回折(Cu−Kα)において、2θ=28.4°付近を中心としたSi(111)に帰属される回折ピークの半値幅を測定した。また、その回折線の広がりをもとに、シェーラーの式によって珪素の微粒子(結晶)の結晶子サイズを求めた。
次に、作製した負極活物質、炭素系導電助剤、ポリアクリル酸を85:5:10の乾燥質量比で混合した後、純水で希釈し負極合剤スラリーとした。
また、負極集電体としては、電解銅箔(厚さ15μm)を用いた。最後に、負極合剤のスラリーを負極集電体に塗布し真空雰囲気中で100℃×1時間の乾燥を行った。乾燥後の、負極の片面における単位面積あたりの負極活物質層の堆積量(面積密度とも称する)は3mg/cmであった。
次に、溶媒(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC))、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC))を混合したのち、電解質塩(六フッ化リン酸リチウム:LiPF)を溶解させて電解液を調製した。この場合には、溶媒の組成を堆積比でFEC:EC:DMC=10:20:70とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して1.2mol/kgとした。
次に、以下のようにして二次電池を組み立てた。最初に、正極集電体の一端にアルミリードを超音波溶接し、負極集電体にはニッケルリードを溶接した。続いて、正極、セパレータ、負極、セパレータをこの順に積層し、長手方向に巻回させ巻回電極体を得た。その捲き終わり部分をPET保護テープで固定した。セパレータは多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムにより多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムに挟まれた積層フィルム12μmを用いた。続いて、外装部材間に電極体を挟んだのち、一辺を除く外周縁部同士を熱融着し、内部に電極体を収納した。外装部材はナイロンフィルム、アルミ箔及び、ポリプロピレンフィルムが積層されたアルミラミネートフィルムを用いた。続いて、開口部から調整した電解液を注入し、真空雰囲気下で含浸した後、熱融着し封止した。
続いて、このように作製した二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。
サイクル特性については、以下のようにして調べた。最初に、電池安定化のため25℃の雰囲気下、2サイクル充放電を行い、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、総サイクル数が50サイクルとなるまで充放電を行い、その都度放電容量を測定した。最後に、50サイクル目の放電容量を2サイクル目の放電容量で割り、容量維持率を算出した。なお、サイクル条件として、4.2Vに達するまで定電流密度、2.5mA/cmで充電し、電圧に達した段階で4.2V定電圧で電流密度が0.25mA/cmに達するまで充電した。また、放電時は2.5mA/cmの定電流密度で電圧が2.5Vに達するまで放電した。
初回効率については、以下の式より算出した。
初回効率(%)=(初回放電容量/初回充電容量)×100
なお、雰囲気及び温度はサイクル特性を調べた場合と同様にし、充放電条件はサイクル特性の0.2倍で行った。すなわち、4.2Vに達するまで定電流密度、0.5mA/cmで充電し、電圧が4.2Vに達した段階で4.2V定電圧で電流密度が0.05mA/cmに達するまで充電し、放電時は0.5mA/cmの定電流密度で電圧が2.5Vに達するまで放電した。
(実施例1−2)
炉芯管内の粒子を出口端側に強制的に移動させるための治具を、図3に示すような誘導板に変更した回転式筒状炉を用いたこと以外、実施例1−1と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例1−1と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。
(比較例1−1)
炉芯管内の粒子を出口端側に強制的に移動させるための治具を具備しない回転式筒状炉を用いたこと以外、実施例1−1と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例1−1と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。
以下の表1及び表2に実施例1−1、1−2及び比較例1−1の負極活物質の製造条件、及び結果を示す。
Figure 2016100086
Figure 2016100086
表1、表2から分かるように、粒子移動補助用治具を具備する実施例1−1、1−2においては、炉芯管の出口端側の非加熱部における粉つまりが少ない。そのため、表1に示すように、炭素被覆量の標準偏差は小さく抑えられた。一方で、比較例1−1は、粉つまりが非常に多く、炉芯管内の粉がかさ高くなってしまったため、炭素被覆量の標準偏差は上記の実施例1−1、1−2と比較して大きくなってしまった。
また、表2に示すように、粒子移動補助用治具を具備する実施例1−1、1−2においては、二次電池の容量維持率及び初期効率は比較例1−1と比べて良好な値となった。これは、粒子移動補助用治具を用いることで、炭素被膜が均一に形成され、不均化も意図した通りに十分に進行したため、初期効率、容量維持率共に向上がみられたと考えられる。比較例1−1のように、粒子移動補助用治具を用いなかった場合、炭素被膜が均一に形成されておらず十分な導電性が取れない点、及び、炉芯管内の粒子のかさが必要以上に大きくなったことにより、熱のかかりが足りず、意図した不均化が不十分となる粒子が増加する点から、電池特性が悪化した。
(実施例2−1〜実施例2−6)
回転羽の炉芯管の内部に入り得る部分の炉芯管の軸方向長さAと、炉芯管の出口端から加熱部までの長さBとの比A/Bを表3のように変更したこと以外、実施例1−1と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例1−1と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2016100086
A/Bが0.5以上であると、粉つまりがほぼ解消した。これは、粉つまりの原因となる炉心管内非加熱部において炉壁への付着を回転羽がより効果的に抑制しているためである。また、A/Bが1.4以下であれば、粒子移動補助用治具が加熱部において変形、破損が起こるほどに加熱されてしまうことが無い。
(実施例3−1〜実施例3−5)
実施例2−4で使用した回転式筒状炉に、表4に示すような炉芯管を振動させる機構を取り付けたこと以外、実施例2−4と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例2−4と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2016100086
炉芯管を振動させることで、粉つまりを解消することができた。これにより、粉の流れが一定になり、より均一な炭素被膜を形成することができたため、初期効率、容量維持率が共に向上した。
(実施例4−1〜実施例4−5)
CVDにおける処理温度を表5に示すように変更したこと以外、実施例3−1と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例3−1と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表5に示す。
Figure 2016100086
800℃以上1200℃以下の処理温度において、初期効率、容量維持率共に向上がみられた。処理温度を800℃以上とすることにより、効率よく良好な炭素被膜が形成される。処理温度が1200℃以下であれば、過剰にケイ素化合物粒子の不均化が進行することが無く、また、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こすことがないので、均一な炭素被膜を形成できる。その結果、初期効率、容量維持率が共に向上した。800℃よりも低い温度(700℃)では、容量維持率が高くなったが、初期効率はやや低くなった。しかし、この場合も比較例1−1よりは良好な結果が得られた。
(実施例5−1〜実施例5−6)
誘導板の炉芯管の内部に入り得る部分の炉芯管の軸方向長さAと、炉芯管の出口端から加熱部までの長さBとの比A/Bを表3のように変更したこと以外、実施例1−2と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例1−2と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表6に示す。
Figure 2016100086
A/Bが0.5以上であると、粉つまりがほぼ解消した。これは、粉つまりの原因となる炉心管内非加熱部において炉壁への付着を回転羽がより効果的に抑制しているためである。また、A/Bが1.4以下であれば、粒子移動補助用治具が加熱部において変形、破損が起こるほどに加熱されてしまうことが無い。
(実施例6−1〜実施例6−5)
実施例5−4で使用した回転式筒状炉に、表7に示すような炉芯管を振動させる機構を取り付けたこと以外、実施例5−4と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例5−4と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表7に示す。
Figure 2016100086
炉芯管を振動させることで、粉つまりを解消することができた。これにより、粉の流れが一定になり、より均一な炭素被膜を形成することができたため、初期効率、容量維持率が共に向上した。
(実施例7−1〜実施例7−5)
CVDにおける処理温度を表8に示すように変更したこと以外、実施例6−1と同様な条件で負極活物質を作製した。また、実施例6−1と同様な方法で、負極活物質の炭素被覆量及び結晶性と、二次電池のサイクル特性及び初回効率を評価した。その結果を表8に示す。
Figure 2016100086
800℃以上1200℃以下の処理温度において、初期効率、容量維持率共に向上がみられた。処理温度を800℃以上とすることにより、効率よく良好な炭素被膜が形成される処理温度が1200℃以下であれば、過剰にケイ素化合物粒子の不均化が進行することが無く、また、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こすことがないので、均一な炭素被膜を形成できる。その結果、初期効率、容量維持率が共に向上した。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…炉芯管、 1a…加熱部、 1b、1b’…非加熱部
a…入口端、 b…出口端、
2…加熱室、 3…フィーダー、 4…回収容器、 5…ガス入り口、
6…治具、 7…炉芯管を振動させる機構、
10…回転式筒状炉、 21…回転羽、 31…誘導板、
50…リチウム二次電池(ラミネートフィルム型)、 51…電極体、
52…正極リード(正極アルミリード)、
53…負極リード(負極ニッケルリード)、
54…密着フィルム、 55…外装部材、
60…負極、 61…負極集電体、 62…負極活物質層。

Claims (14)

  1. ケイ素化合物(SiO:0.5≦x<1.6)からなる粒子の表面に、有機物ガスを熱分解させることにより炭素被膜を形成して非水電解質二次電池負極活物質を製造するための回転式筒状炉であって、
    前記粒子を投入するための入口端と、前記炭素被膜が形成された粒子を排出するための出口端とを有する回転可能な筒状の炉芯管と、
    該炉芯管を加熱するためのヒーターを備えた加熱室と
    を具備し、前記ヒーターで前記炉芯管を加熱しつつ、該炉芯管を回転させることにより、該炉芯管の内部に導入した前記粒子を混合・攪拌しながら、前記粒子の表面に前記炭素被膜を形成し、該炭素被膜が形成された粒子を前記出口端から排出するものであり、
    前記炉芯管が、前記ヒーターを備えた加熱室の内部に位置する加熱部と、前記加熱室の外に位置する非加熱部とからなり、
    前記出口端側の前記非加熱部における前記炉心管の内部の前記粒子を、前記出口端側に強制的に移動させるための治具を前記出口端側に有するものであることを特徴とする回転式筒状炉。
  2. 前記治具が、前記炉芯管の内部で前記粒子と接触して前記粒子を前記出口端側に移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の回転式筒状炉。
  3. 前記治具の前記炉芯管の内部に入り得る部分の前記炉芯管の軸方向長さAと、前記炉芯管の前記出口端から前記加熱部までの長さBとが、0.5≦A/B≦1.4を満たすものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転式筒状炉。
  4. 前記治具が、回転羽、誘導板、及びスクレーパーの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転式筒状炉。
  5. 前記治具は、材質が、耐熱鋳鋼、ニッケルをベースとした超合金、ニッケル―モリブデン―クロム合金、カーボン材、アルミナ、SiC、マグネシア―カーボン質、アルミナ―マグネシア―カーボン質、及びマグネシア―クロム質のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転式筒状炉。
  6. 前記カーボン材が、CIP材、押出材、モールド材、炭素繊維と樹脂との複合素材、及び炭素繊維と炭素から成るマトリックスとの複合材料のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の回転式筒状炉。
  7. 前記加熱室は、前記加熱部における前記炉芯管の内部を、800℃以上1200℃以下の処理温度に制御可能なものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転式筒状炉。
  8. 前記炉芯管を振動させる機構を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の回転式筒状炉。
  9. 前記炉芯管を振動させる機構は、ノッカー、落下物により衝撃を与える機構、超音波を発する機構、バイブレーターのいずれかであることを特徴とする請求項8に記載の回転式筒状炉。
  10. 前記ノッカーは、駆動方式がエアー式又は電磁式であることを特徴とする請求項9に記載の回転式筒状炉。
  11. 前記回転式環状炉が、ロータリーキルンであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の回転式筒状炉。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の回転式筒状炉を用いて、ケイ素化合物(SiOx:0.5≦x<1.6)からなる粒子の表面に炭素被膜を形成する工程を有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
  13. 請求項12に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法により製造されたものであることを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質。
  14. 請求項13に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を含む負極を備えたものであることを特徴とする非水電解質二次電池。
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