JP2016098180A - 混合溶剤の調製方法、製造方法および農園芸用乳剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】混合溶剤の調製方法を提供する。【解決手段】本発明の混合溶剤の調製方法は、2以上の溶剤を準備し、各溶剤の水との相溶性を試験する工程と、相溶性の試験の結果および上記各溶剤における被溶解化合物の溶解度に基づき、混合溶剤に使用する複数の溶剤を決定する工程と、を包含する。【選択図】なし
Description
本発明は混合溶剤の調製方法および製造方法、ならびにこの製造方法により得られる農園芸用乳剤に関する。
茎葉散布は、農園芸用薬剤の施用方法の中でも、一般に広く行われている方法である。茎葉散布に用いられる農園芸用薬剤の剤型の1つとして乳剤が挙げられる。乳剤は、ほとんどの場合、茎葉散布によって散布される。乳剤は、簡便に製造できる上、有効成分の分解が少なく安定であることが多い。また乳剤中に含まれる溶剤および界面活性剤などの成分が対象生物への農園芸用薬剤成分の浸透を助けることなどによって、他の剤形より優れた効果を有する場合も多い。そのため、乳剤は古くから農業生産の分野において使用されている重要な剤形である。
乳剤の調製方法としては、有効成分を溶剤に溶解させている溶液に界面活性剤を添加することにより、調製する方法が挙げられる。乳剤は、水に添加すると乳濁した微細な油滴となる。多くの場合、乳剤を水で希釈したものを散布液として使用する(非特許文献1)。このとき、散布液調製後から散布終了までは散布液のどの箇所でも濃度がほぼ一定となっているように、散布液の均一性が保たれる必要がある。
また、例えば、溶剤として水と相溶性を有するものを用いた乳剤は、水で希釈すると希釈液中で溶剤成分が水に溶け出すことによって、乳剤中では溶剤に溶解されていた有効成分が結晶化して析出する。また、乳濁した乳剤の状態から、油層の分離を生じたり、固体成分が沈殿として沈降したりする。このように、乳剤の原料として、水と相溶する溶剤を用いると、乳剤を希釈して得られる散布液は不均一となる。このような均一性の保たれていない散布液は、圃場などの現場における使用に適さない。例えば、液中の成分が不均一な散布液を圃場に散布すると、液の有効成分の濃度の薄い部分が散布された地域では、薬剤の効果が不足し、有効成分の濃度が濃い部分が散布された地域では、過剰な薬剤によって薬害が生じる可能性がある。さらに、散布液に固体成分が析出している場合、散布液の散布に使用される散布機の噴霧部、または散布機の循環部に取り付けられたフィルターによって、固体成分が捕捉されることによって、散布機が目詰まりを起こすことがある。このような場合、散布作業が不可能となる等、深刻な被害を生じる。
したがって、乳剤に用いる溶剤は目的の有効成分を溶解させることができる溶解度を有していなければならない一方で、乳剤用の溶剤は水と相溶しにくいものであること望まれる。
なお、結晶析出の防止を目的とした溶剤として、特許文献1には、A)シクロヘキサノンまたはアセトフェノン、B)ベンジルアルコールまたは2−エチルヘキサノール、およびC)脂肪酸、を含む組成物が記載されている。
農薬製剤ガイド(1997)日本農薬学会 農薬製剤・施用法研究会編 社団法人 日本植物防疫協会
有効成分が、水に不溶であるかまたは非常に水に溶解しにくいものである場合は、有効成分を溶解し、且つ水とは全く相溶しない、キシレンなどの溶剤を1種類単独で選択して用いられることが多かった。
一方、有効成分が、水に対して一定の親和性を有するものである場合は、当該有効成分を溶解するための溶剤の選択は難しいことが多く単独の溶剤のみでは対応できないことが多い。しかし、近年、水と一定の親和性を有する農園芸用薬剤が数多く発明されている。係る性質を有する農園芸用薬剤は、キシレンなどの、水と相溶しない溶剤には溶けにくい性質を有する。このような農園芸用薬剤に対応するためには、2種類以上の溶剤を組み合わせて用いることが検討される。すなわち、有効成分の十分な溶解度を有していると同時に、水と相溶しにくい性質を備える混合溶剤の開発が望まれる。しかし、上述の性質を備える混合溶剤が得られるような、適切な溶剤の組み合わせを選択することは困難である。
2種類以上の溶剤を組み合わせた例の記載がある特許文献1においても、各溶剤を選択した方法については開示されていない。
上記の課題を解決するために、本発明に係る混合溶剤の調製方法は、互いに相溶性を有する複数の溶剤を組み合わせた混合溶剤の調製方法であって、2以上の溶剤を準備し、各溶剤の水との相溶性を試験する工程と、相溶性の試験の結果および上記各溶剤における被溶解化合物の溶解度に基づき、混合溶剤に使用する複数の溶剤を決定する工程と、を包含する。
本明細書における「相溶性」とは、2種類以上の物質が相互に親和性を有し、当該物質の混合相についてどの箇所においても組成が一定である連続相を形成することを意味している。
また、本明細書において「溶解度」は、溶媒に溶質を溶解させた飽和溶液100g中における溶質の量として定義される。
本発明に係る混合溶剤の調製方法の一態様では、上記各溶剤における被溶解化合物の溶解度と、上記混合溶剤における各溶剤の混合割合とに基づき、上記混合溶剤における上記被溶解化合物の溶解度を推定する工程をさらに包含し、上記混合溶剤において所望の溶解度を満たすように、混合溶剤に使用する複数の溶剤を決定する。
本発明に係る混合溶剤の調製方法の一態様では、得られた上記混合溶剤と水との相溶性を試験する工程をさらに包含する。
本発明に係る混合溶剤の調製方法の一態様では、上記混合溶剤は、2種の溶剤(a)および溶剤(b)を組み合わせた混合溶剤であり、溶剤を決定する上記工程では、上記溶剤(a)として、上記溶剤(b)よりも上記被溶解化合物の溶解度が高い溶剤を選択し、上記溶剤(b)として、上記溶剤(a)よりも水との相溶性が低い溶剤を選択する。
本発明に係る混合溶剤の調製方法の一態様では、上記溶剤(b)は、10重量%で水を含む上記溶剤(b)と水との混合液において、水と相溶せずに分離する溶剤である。
本発明に係る混合溶剤の調製方法の一態様では、上記溶剤(a)は、40重量%で水を含む上記溶剤(a)と水との混合液において、水と相溶せずに分離する溶剤である。
また、本発明に係る混合溶剤の製造方法は、上記の課題を解決するために、上述の混合溶剤の調製方法において決定された上記混合溶剤における組成に基づき、互いに相溶性を有する複数の溶剤を組み合わせた混合溶剤を製造する。
また、本発明に係る農園芸用乳剤は、上述の混合溶剤の製造方法によって得られる混合溶剤と、上記被溶解化合物である有効成分と、界面活性剤とを含むものである。
本明細書における「農園芸用乳剤」とは、農園芸用途に用いられる農薬有効成分を乳化状態として散布する剤型であり、散布液を調製する前の乳剤を意味している。
本発明によれば、当該溶剤に対する対象の化合物の十分に高い溶解度を有し、且つ水との相溶性は抑制された混合溶剤を得るための調製方法を提供することができる。
〔1.混合溶剤の調製方法〕
以下、本発明に係る混合溶剤の調製方法の一実施形態について説明する。
以下、本発明に係る混合溶剤の調製方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る混合溶剤の調製方法は、2種類以上の溶剤を組み合わせた混合溶剤を調製するための方法である。この混合溶剤は、農園芸用乳剤の製造に用いるための、農園芸用乳剤の有効成分(被溶解化合物)を溶解させる溶剤としての役割を果たすものである。
<試験方法>
本実施形態に係る混合溶剤の調製方法では、2以上の溶剤を準備し、各溶剤の水との相溶性を試験する工程を包含する。
本実施形態に係る混合溶剤の調製方法では、2以上の溶剤を準備し、各溶剤の水との相溶性を試験する工程を包含する。
水との相溶性の試験の一態様は、溶剤と水とを混合した後で混合液を静置し、目視により確認することによって行うものである。一例として、以下の方法が挙げられる。2種以上の溶剤を準備し、それぞれの溶剤について、ガラス製の栓付き試験管などの透明な容器に、混合割合を変えた溶剤と水との混合液を調製する。次に、試験管に栓をした後、1分間、より好ましくは3分間振盪する。振盪の方法は、試験者が手で振ってもよく、振盪機などの装置を利用してもよい。その後、容器を10分間、より好ましくは30分間水平な場所に静置する。上記の時間静置することにより、相溶しているか否かの観察が容易となる。静置後、目視により観察を行う。
次いで、溶剤と水との相溶性の試験の結果および各溶剤における有効成分の溶解度に基づき、混合溶剤に好適な溶剤の候補を選択する。
なお、各溶剤における有効成分の溶解度は、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Section Physical-Chemical properties, Test No. 116: Fat Solubility of Solid and Liquid Substancesに公開されている溶解度の測定方法であるOECD法を用いて調べることができる。
混合溶剤の一態様として、溶剤(a)および溶剤(b)の2種類の溶剤を組み合わせた混合溶剤を調製する場合、溶剤(a)として、溶剤(b)よりも有効成分の溶解度が高い溶剤を選択し、溶剤(b)として、溶剤(a)よりも水との相溶性が低い溶剤を選択することができる。溶剤(a)に溶剤(b)を加えることにより、高い溶解度を有する溶剤(a)の水との相溶性を減じることができ、乳剤を製造するための溶剤として好適に使用できるようになる。
なお、溶剤(a)と溶剤(b)とは、互いに相溶する溶剤であり、一般的に農園芸用乳剤を調製するために用いられる溶剤の中から選択することができる。
以下、本工程において選択され得る溶剤(a)および溶剤(b)について詳細に説明する。
<溶剤(a)>
溶剤(a)は溶剤(b)よりも有効成分の溶解度が高い溶剤である。例えば、溶剤(a)における有効成分の溶解度は、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の20%以上であることが好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の50%以上であることがより好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の100%以上であることがさらに好ましい。ここで、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量に含まれる有効成分の量と混合溶剤の量とが決定されている場合、溶剤(a)における有効成分の溶解度は、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の1倍以上であることが好ましく、温度変化、農園芸用乳剤の原料組成の変動、および農園芸用乳剤が水で希釈された際、当該農園芸用乳剤中の溶剤が水へ分配されることによって、溶解能が低下する可能性を考慮すれば、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の1.2倍以上であることがより好ましく、農園芸用乳剤全量あたりの有効成分を溶解するために必要とされる溶解度を超える十分な溶解度を得る観点からは、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の2倍以上であることがさらに好ましい。なお、溶剤(a)に必要な溶解度は以下に記載の本実施形態の一態様に係る計算式から計算されるものであってよい。
溶剤(a)は溶剤(b)よりも有効成分の溶解度が高い溶剤である。例えば、溶剤(a)における有効成分の溶解度は、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の20%以上であることが好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の50%以上であることがより好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の100%以上であることがさらに好ましい。ここで、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量に含まれる有効成分の量と混合溶剤の量とが決定されている場合、溶剤(a)における有効成分の溶解度は、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の1倍以上であることが好ましく、温度変化、農園芸用乳剤の原料組成の変動、および農園芸用乳剤が水で希釈された際、当該農園芸用乳剤中の溶剤が水へ分配されることによって、溶解能が低下する可能性を考慮すれば、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の1.2倍以上であることがより好ましく、農園芸用乳剤全量あたりの有効成分を溶解するために必要とされる溶解度を超える十分な溶解度を得る観点からは、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、溶剤(a)に必要な溶解度の2倍以上であることがさらに好ましい。なお、溶剤(a)に必要な溶解度は以下に記載の本実施形態の一態様に係る計算式から計算されるものであってよい。
溶剤(a)は、溶剤(b)と混合して混合溶剤を得たときに、混合溶剤における有効成分の溶解度が十分に高ければよい。しかし、以下で説明するとおり、溶剤(b)は、水との相溶性が溶剤(a)と比較して低い。有効成分が水と一定の親和性を有する場合には、有効成分の溶剤(b)における溶解度は、溶剤(a)よりも低い場合が多い。このことから溶剤(a)における有効成分の溶解度は、得られる混合溶剤に期待する溶解度の、2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上の、十分に高い溶解度を有するものが好ましい。
水との相溶性が低い混合溶剤を調製する観点から、溶剤(a)の水との相溶性は高くないことが好ましく、例えば、溶剤(a)と水とを混合した混合液において、混合液全量に対する水の含有量が40重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であることが好ましい。より好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が20重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であり、さらに好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が10重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤である。
また、溶剤(a)の混合する量を調節することにより、本実施形態において得られる混合溶剤の水との相溶性を溶剤(a)よりも低減させることができる。
なお、溶剤(a)としては、水と任意の割合で相溶する溶剤は好適ではない。係る溶剤と、以下に説明する溶剤(b)とを混合して混合溶剤を調製しても、得られた混合溶剤と水とを混合したときに、混合溶剤は水へ溶解する。そのため、散布剤として水で希釈して用いる農園芸用乳剤のための溶剤としては好適でない。
溶剤(a)の水との相溶性については、公知の情報に基づきあらかじめ調べておいてもよい。溶剤(a)の水との相溶性について、あらかじめ調べることにより、種々の溶剤の中から好適なものを選択し、決定するための検討要素として利用できる。
溶剤(a)の具体例としては、脂肪酸エステル類、芳香族酸のエステル類、ピロリドン類、アミド系溶剤、モルフォリン系溶剤およびアルコール類の溶剤などが挙げられる。
<溶剤(b)>
溶剤(b)は、溶剤(a)よりも水との相溶性が低い溶剤である。一例として、溶剤(b)と水とを混合した混合液において、混合液全量に対する水の含有量が10重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であることが好ましい。より好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が5重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であり、さらに好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が1重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤である。10重量%で水を含む溶剤(b)と水との混合液において水と相溶性を有さない溶剤であれば、混合溶剤における溶剤(b)の混合量を増大させることにより、混合溶剤の水との相溶性を低下させることができる。
溶剤(b)は、溶剤(a)よりも水との相溶性が低い溶剤である。一例として、溶剤(b)と水とを混合した混合液において、混合液全量に対する水の含有量が10重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であることが好ましい。より好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が5重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤であり、さらに好ましくは、混合液全量に対する水の含有量が1重量%であるときに、水と相溶せずに分離するような溶剤である。10重量%で水を含む溶剤(b)と水との混合液において水と相溶性を有さない溶剤であれば、混合溶剤における溶剤(b)の混合量を増大させることにより、混合溶剤の水との相溶性を低下させることができる。
溶剤(b)における有効成分の溶解度は高いことが好ましいが、必ずしも溶剤(a)と同等の溶解度でなくてもよい。溶剤(b)は、得られる混合溶剤に期待する溶解度の、0.05倍以上、より好ましくは0.1倍以上、さらに好ましくは0.3倍以上の溶解度を有するものが好ましい。
さらに、溶剤(b)の水との相溶性についても、溶剤(a)の場合と同様に、公知の情報に基づきあらかじめ調べておいてもよい。
溶剤(b)の具体例としては、鉱物油、動物油および植物油などの各種天然油脂、ならびにこれらの天然油脂の改質品などの化学合成油脂などが挙げられる。鉱物油としては、ノルマル炭化水素、イソ炭化水素(流動パラフィン)、ナフテン系溶剤、アルケン系溶剤、およびシリコーンオイルなどを挙げることができる。動物油としては、ヘット、ラード、馬油、鯨油および魚油などを挙げることができる。植物油としては、大豆油、ナタネ油、ココナッツオイル、アマニ油およびヒマシ油などを挙げることができる。さらに、化学合成油脂としては、天然油脂のアルキル化物および水素添加物などの天然油脂改質品などが挙げられる。また、天然油脂の改質品のうち、植物油脂の改質品としては、大豆メチル化物、ナタネメチル化物および硬化ヒマシ油などが挙げられる。また、動物油脂の改質品としては、ヘット、鯨油および魚油などの改質品が挙げられる。
溶剤(a)と溶剤(b)とを混合する方法は特に限定されない。例えば、単一の容器中に溶剤(a)と溶剤(b)とを加え、攪拌装置を用いて混合攪拌することによって得られる。
溶剤(a)と溶剤(b)との混合割合は、混合溶剤と水との相溶性および混合溶剤における有効成分の溶解度について、所望の性質が得られるような割合であれば、特に制限はなく、例えば、混合溶剤全量における溶剤(a)の含有量が5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、95%未満または100%未満であり得る。
混合溶剤は農園芸用乳剤への適用を意図しているものであるため、混合溶剤と水との相溶性相溶性は低いことが好ましい。具体的には、混合溶剤と水との混合液において、水が混合液全量の10重量%のときに水との相溶性を有していないことが好ましく、水が混合液全量の5重量%のときに水との相溶性を有していないことがより好ましく、水が混合液全量の1重量%のときに水との相溶性を有していないことがさらに好ましい。水相溶性について上述の性質を有する溶剤であれば、乳剤として適用し、水で希釈して散布液を調製した場合に、液の均一性を保つことができる。したがって、本実施形態においては、得られた混合溶剤と水との相溶性を上記の試験方法によって試験する工程をさらに包含してもよい。
また、混合溶剤に求める有効成分の溶解度は、使用目的に応じて適宜設定すればよく、例えば、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の20%以上であることが好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の50%以上であることがより好ましく、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分の濃度(重量%)の100%以上であることがさらに好ましい。ここで、本実施形態に係る混合溶剤を用いて製造される農園芸用乳剤全量に含まれる有効成分の量と混合溶剤の量とが決定されている場合、混合溶剤における有効成分の溶解度は、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、混合溶剤に必要な溶解度の1倍以上であることが好ましく、温度変化、農園芸用乳剤の原料組成の変動、および農園芸用乳剤が水で希釈された際、当該農園芸用乳剤中の溶剤が水へ分配されることによって、溶解能が低下する可能性を考慮すれば、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、混合溶剤に必要な溶解度の1.2倍以上であることがより好ましく、農園芸用乳剤全量あたりの有効成分を溶解するために必要とされる溶解度を超える十分な溶解度を得る観点からは、有効成分の量と混合溶剤の量とから計算される、混合溶剤に必要な溶解度の2倍以上であることがさらに好ましい。なお、混合溶剤に必要な溶解度は以下に記載の本実施形態の一態様に係る計算式から計算されるものであってよい。
本実施形態の一態様では、各溶剤における有効成分の溶解度と、混合溶剤における各溶剤の混合割合とに基づき、混合溶剤における有効成分の溶解度を推定する工程を含んでいる。実際に混合溶剤を調製するよりも前に、混合溶剤における有効成分の溶解度を推定することにより、選択された溶剤の組み合わせが適切であるかを判断することができる。
本態様においては、以下の式(I)を用いて、混合溶剤の溶解度を推定する。なお、式(I)は、上述の2種類の溶剤、すなわち溶剤(a)および溶剤(b)を組み合わせて混合溶剤を調製するときに用いられる式である。
式(I)中、Smixは、混合溶剤の推定溶解度を示し、Saは溶剤(a)における有効成分の溶解度を示し、Sbは溶剤(b)における有効成分の溶解度を示している。
また、Caは混合溶剤中の溶剤(a)の割合を示しており、Cbは混合溶剤中の溶剤(b)の割合を示している。すなわち、
であり、
である。ここで、Waは混合溶剤中の溶剤(a)の重量を示し、Wbは混合溶剤中の溶剤(b)の重量を示している。
式(I)を用いれば、得られる混合溶剤における有効成分の溶解度について、実際に混合溶剤を調製し、溶解度を調べる作業を行うことなく、溶剤(a)および乳剤(b)の適切な混合の割合を推定することができる。したがって、さまざまな溶剤(a)および溶剤(b)の組み合わせ、および溶剤(a)および溶剤(b)の混合割合について、様々な種類の溶剤について、様々な割合で混合したものを作製して、実際に溶解度を測定する必要がない。そのため、目的の化合物に好適な新たな混合溶剤を効率よく開発することが可能である。
なお、3種類以上の溶剤を混合して混合溶剤を調製する場合には、以下の式(II)を用いて、混合溶剤の溶解度を推定することができる。
式(II)中、Smixは、混合溶剤の推定溶解度を示し、Siはi番目の溶剤(i)における有効成分の溶解度を示し、Ciは混合溶剤中の溶剤(i)の割合を示している。
<混合割合決定方法>
溶剤(a)と溶剤(b)とを混合する割合を決定する方法は、一例として、以下の方法によって行われる。まず、各種の溶剤(a)および溶剤(b)における有効成分の溶解度の値と、想定され得る溶剤(a)および溶剤(b)それぞれの混合割合とを上記の計算式に代入し、各混合割合について混合溶剤の溶解度を決定する。このとき、混合溶剤における有効成分の推定溶解度が、十分に高いまたは所望の溶解度である場合を、本実施形態に係る混合溶剤を調製するために好適な混合割合として決定する。
溶剤(a)と溶剤(b)とを混合する割合を決定する方法は、一例として、以下の方法によって行われる。まず、各種の溶剤(a)および溶剤(b)における有効成分の溶解度の値と、想定され得る溶剤(a)および溶剤(b)それぞれの混合割合とを上記の計算式に代入し、各混合割合について混合溶剤の溶解度を決定する。このとき、混合溶剤における有効成分の推定溶解度が、十分に高いまたは所望の溶解度である場合を、本実施形態に係る混合溶剤を調製するために好適な混合割合として決定する。
(その他の工程)
また、本実施形態に係る混合溶剤の調製方法は、OECD法を用いて、得られた混合溶剤に対し、対象となる有効成分の溶解度を調べることにより、目的の乳剤の製剤設計に合致するかどうかを確認する工程を包含してもよい。
また、本実施形態に係る混合溶剤の調製方法は、OECD法を用いて、得られた混合溶剤に対し、対象となる有効成分の溶解度を調べることにより、目的の乳剤の製剤設計に合致するかどうかを確認する工程を包含してもよい。
以上のように、本実施形態に係る混合溶剤の調製方法であれは、有効成分の溶解度が十分に高く、かつ水との相溶性は抑制された混合溶剤を簡便に見つけだすことができる。よって、単一の溶剤では溶剤として適用できなかった、より広範な化合物に対する溶剤の調製方法を提供することができる。さらに、本発明に係る混合溶剤の調製方法であれば、各種の化合物を溶解させるために適切な混合溶剤を簡便、容易且つ効率的に調製することが可能である。本実施形態に係る混合溶剤の調製方法は、特に、農園芸用乳剤に用いるための混合溶剤の調製方法に適用することができる。本方法を用いれば、農園芸用乳剤に好適に用いられる溶剤を調製することが可能である。
〔2.農園芸用乳剤〕
本実施形態に係る農園芸用乳剤は、上述の混合溶剤の調製方法によって得られる混合溶剤と、有効成分と、界面活性剤とを含んでいる。以下、各成分について以下に詳細に説明する。
本実施形態に係る農園芸用乳剤は、上述の混合溶剤の調製方法によって得られる混合溶剤と、有効成分と、界面活性剤とを含んでいる。以下、各成分について以下に詳細に説明する。
<混合溶剤>
本実施形態に係る農園芸用乳剤に含まれる混合溶剤は、上記〔1.混合溶剤の調製方法〕に記載の方法によって好適に調製される。溶剤の性質および含有する成分についても、上記〔1.混合溶剤の調製方法〕に記載の通りである。
本実施形態に係る農園芸用乳剤に含まれる混合溶剤は、上記〔1.混合溶剤の調製方法〕に記載の方法によって好適に調製される。溶剤の性質および含有する成分についても、上記〔1.混合溶剤の調製方法〕に記載の通りである。
また、本実施形態に係る農園芸用乳剤に含まれる混合溶剤の量は、当該混合溶液の溶解度から計算される、農園芸用乳剤中に含まれる有効成分全量を溶解するのに必要な量と当量以上であることが好ましく、温度変化、農園芸用乳剤の原料組成の変動、および農園芸用乳剤が水で希釈された際、当該農園芸用乳剤中の溶剤が水へ分配されることによって、溶解能が低下する可能性を考慮すれば、当該混合溶液の溶解度から計算される農園芸用乳剤全量あたりの有効成分を溶解するのに必要な量の1.2倍以上であることがより好ましく、農園芸用乳剤全量あたりの有効成分を溶解するために十分な混合溶剤量とする観点からは、当該混合溶液の溶解度から計算される、農園芸用乳剤に含まれる有効成分を溶解するのに必要な量の2倍以上であることがさらに好ましい。なお、混合溶剤の溶解度は上述の本実施形態の一態様に係る計算式から計算されるものであってよい。
<有効成分>
本実施形態に係る農園芸用乳剤に含まれる、農園芸用の薬剤の有効成分としては、茎葉散布に使用可能な有効成分が挙げられる。有効成分の種類は、目的に応じて選択すればよく、例えば殺虫剤、殺菌剤、除草剤および植物調節剤などが挙げられる。
本実施形態に係る農園芸用乳剤に含まれる、農園芸用の薬剤の有効成分としては、茎葉散布に使用可能な有効成分が挙げられる。有効成分の種類は、目的に応じて選択すればよく、例えば殺虫剤、殺菌剤、除草剤および植物調節剤などが挙げられる。
殺虫剤の具体的な例としては、MPP、MEP、ピリミホスメチル、ダイアジノン、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、クロルピリホスメチル、バミドチオン、イミダクロプリド、マラソン、PAP、ジメトエート、エチルチオメトン、モノクロトホス、BRP、CVMP、ジメチルビンホス、プロパホス、DEP、EPN、NAC、MTMC、MIPC、BPMC、PHC、MPMC、XMC、ベンダイオカルブ、カルボスルファン、シラフロフェン、ベンフラカルブ、チオジカルブ、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、ブプロフェジン、エチプロールなどが挙げられる。
殺菌剤の具体的な例としては、メトコナゾール、イプコナゾールなどのトリアゾール系化合物、イミダゾール系殺菌剤チウラム、キャプタン、TPN、フサライド、IBP、EDDP、チオファネートメチル、ベノミル、イプロジオン、メプロニル、フルトラニル、テフロフタラム、ペンシクロン、メタラキシル、トリフルミゾール、ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンA、オキシテトラサイクリン、ヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブ、MAF、MAFA、ベンチアゾール、ジクロメジン、プロベナゾール、イソプロチオラン、トリシクラゾール、ピロキロン、オキソニック酸、グアザチン、フェリムゾンなどが挙げられる。
除草剤の具体的な例としては、グルホシネート、グリホサート、2,4−PAジメチルアミン、MCPAナトリウム塩、MCPB、フェノチオール、クロメプロップ、ナプロアニリド、CNP、クロメトキシニル、ビフェノックス、MCC、ベンチオカーブ、エスプロカルブ、モリネート、ブタクロール、ジメピペレート、DCPA、ブタクロール、トリフルラリン、フェンメディファム、デスメディファム、メトリブジン、プレチラクロール、ブロモブチド、メフェナセット、ダイムロン、ベンスルフロンメチル、シメトリン、プロメトリン、ジメタメトリン、ベンタゾン、オキサジアゾン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップ、トリフルラリン、ピペロホス、2,4−PAジメチルアミン、ACN、キザロホップエチル、アシュラム、ペンディメタリンなどが挙げられる。
植物調節剤の具体的な例としては、メトコナゾール、イプコナゾールなどのトリアゾール系、イミダゾール系化合物、イナベンフィド、オキシエチレンドコサノール、ニコチン酸アミド、およびベンジルアミノプリンなどが挙げられる。
また、農園芸用乳剤中の有効成分の濃度としては、農園芸用乳剤の全量の0.05重量%以上95重量%以下であることが好ましく、農園芸用乳剤の全量の0.1重量%以上80重量%以下であることがより好ましく、農園芸用乳剤の全量の0.5重量%以上70重量%以下であることがさらに好ましい。有効成分の濃度としては、より高濃度であるほど原材料の費用および輸送または保管にかかる費用が低減出来るため好ましい。また、有効成分の濃度は、例えば、農園芸用乳剤を希釈して使用する際の希釈の計算し易さなどによって適宜決定される。
また、有効成分は、上述した化合物のうちの1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を混合して用いることも可能である。例えば互いに類似した効果を有する2種類以上の化合物を組み合わせて用いることにより、同程度の効果を得るために必要な薬剤の散布量を低減させることができる。あるいは、互いに類似した効果を有する2種類以上の化合物同士の相互作用により、相乗的な効果を奏し、1種類の化合物を単独で用いた場合と比較して、同じ散布量で、より幅広い防除効果などのより優れた効果を奏する。また、互いに異なる効果を有する2種類以上の化合物を組み合わせて用いることにより、単一の製剤において同時に複数の目的の効果を奏する農園芸用乳剤を調製することができる。
<界面活性剤>
本実施形態に係る農園芸用乳剤に適用される界面活性剤としては、非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤が挙げられる。また、これらの界面活性剤のうち1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油があげられ、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの具体的な例としては、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが挙げられる。また、陰イオン界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンアリールフェニル硫酸塩などが挙げられる。
本実施形態に係る農園芸用乳剤に適用される界面活性剤としては、非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤が挙げられる。また、これらの界面活性剤のうち1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油があげられ、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの具体的な例としては、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが挙げられる。また、陰イオン界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンアリールフェニル硫酸塩などが挙げられる。
また、農園芸用乳剤中の界面活性剤の濃度としては、農園芸用乳剤の全量の2重量%以上30重量%以下であることが好ましく、農園芸用乳剤の全量の5重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る農園芸用乳剤は、上述の成分以外の成分を溶解してもよい。以下に本実施形態に係る農園芸用乳剤に用いることが可能な成分について説明する。
<その他の成分>
上記以外の成分としては、製剤補助剤などが挙げられる。具体例としては、安定化剤、色素および消泡剤などが挙げられる。
上記以外の成分としては、製剤補助剤などが挙げられる。具体例としては、安定化剤、色素および消泡剤などが挙げられる。
なお、本実施形態に係る農園芸用乳剤は、公知の乳剤の調製方法を用いることができる。調製方法の一例としては、有効成分と界面活性剤と溶剤に溶解させた溶液を作製する工程を包含する方法が挙げられる。
本実施形態に係る農園芸用乳剤は、そのまま使用してもよいし、水などの希釈剤で所定濃度に希釈して使用してもよい。希釈して使用する場合、農薬乳剤に対して1倍から20000倍の範囲で希釈することができる。
また、本実施形態に係る農園芸用乳剤の対象生物への施用方法は、特に限定されないが、例えば茎葉散布方法を好適に用いることができる。
以上のように、本実施形態に係る農園芸用乳剤であれば、当該溶剤に対する対象の化合物の十分に高い溶解度を有し、且つ水との相溶性は抑制された混合溶剤を用いているために、乳剤を水で希釈して散布液とした場合にも、液中の組成は、液の全体において均一に保たれる。よって、本実施形態に係る農園芸用乳剤は、圃場への茎葉散布などに特に好適に用いることができる。
〔試験例1〕
(単一の溶剤の水との相溶性の評価)
乳剤の水との相溶性を評価するための簡便な試験方法として、以下の通りの試験方法を、次の6種類の溶剤に対して実施した:N−メチルピロリドン(NMP)、Agnique AMD8−10(主成分:N,N-ジメチルオクタンアミドおよびN,N-ジメチルデカン−1−アミド、BASFジャパン社)、RHODIASOLVE RPDE(主成分:二塩基酸ジメチルエステル、ソルベイ日華社)、RHODIASOLVE POLAR CLEAN(主成分:5−(ジメチルアミノ)−4−メチル−5−オキソ−吉草酸メチルエステル、ソルベイ日華社)、Vegisol CM(主成分:大豆脂肪酸メチルエステル、カネダ株式会社)、Propylene carbonate(主成分:炭酸プロピレン、BASFジャパン社)、この試験方法は、概略的には、栓付きの試験管に、水と評価対象の溶剤とを加えて混合し、目視で観察を行う方法である。以下に試験方法、評価基準および試験結果について詳細を記載する。
(単一の溶剤の水との相溶性の評価)
乳剤の水との相溶性を評価するための簡便な試験方法として、以下の通りの試験方法を、次の6種類の溶剤に対して実施した:N−メチルピロリドン(NMP)、Agnique AMD8−10(主成分:N,N-ジメチルオクタンアミドおよびN,N-ジメチルデカン−1−アミド、BASFジャパン社)、RHODIASOLVE RPDE(主成分:二塩基酸ジメチルエステル、ソルベイ日華社)、RHODIASOLVE POLAR CLEAN(主成分:5−(ジメチルアミノ)−4−メチル−5−オキソ−吉草酸メチルエステル、ソルベイ日華社)、Vegisol CM(主成分:大豆脂肪酸メチルエステル、カネダ株式会社)、Propylene carbonate(主成分:炭酸プロピレン、BASFジャパン社)、この試験方法は、概略的には、栓付きの試験管に、水と評価対象の溶剤とを加えて混合し、目視で観察を行う方法である。以下に試験方法、評価基準および試験結果について詳細を記載する。
<試験方法>
まず、10〜20mLのガラス製の栓付き試験管を用意し、水と評価対象の溶剤とを、各サンプルにおいて混合の比率を変えてそれぞれ加えた。試験管に栓をした後、1分間手で強く振った。この試験管を水平な机上に30分間静置し、目視により観察を行った。
まず、10〜20mLのガラス製の栓付き試験管を用意し、水と評価対象の溶剤とを、各サンプルにおいて混合の比率を変えてそれぞれ加えた。試験管に栓をした後、1分間手で強く振った。この試験管を水平な机上に30分間静置し、目視により観察を行った。
<評価方法>
上述の方法よって得られた乳剤と水との混合サンプル液について、以下の通り判定した。すなわち、白濁の程度がサンプル液の全体において均一な白濁液となっている場合を、サンプル液における水と溶剤とは相溶して一相になっていると判断し、対象の乳剤は水との相溶性を有するものと判定した。一方、乳剤が水中に粒状となって分離をしているなどして、サンプル液における乳剤と水との分離が生じたり、不均一な濁りを生じたりしている場合を、サンプル液における乳剤と水とは分離していると判断し、対象の乳剤は水との相溶性を有さないものと判定した。
上述の方法よって得られた乳剤と水との混合サンプル液について、以下の通り判定した。すなわち、白濁の程度がサンプル液の全体において均一な白濁液となっている場合を、サンプル液における水と溶剤とは相溶して一相になっていると判断し、対象の乳剤は水との相溶性を有するものと判定した。一方、乳剤が水中に粒状となって分離をしているなどして、サンプル液における乳剤と水との分離が生じたり、不均一な濁りを生じたりしている場合を、サンプル液における乳剤と水とは分離していると判断し、対象の乳剤は水との相溶性を有さないものと判定した。
なお、サンプル液が上述の2つの場合の中間の様相を呈している場合には、対象の乳剤は水との相溶性を有さないものと判定した。
<結果>
6種の溶剤について、水との相溶性を上述の方法によって調べた。上述の評価方法に基づいて、水との相溶性を有すると判定したサンプルを+で示し、水との相溶性を有さないと判定したサンプルを−として示した。結果を表1に示す。
6種の溶剤について、水との相溶性を上述の方法によって調べた。上述の評価方法に基づいて、水との相溶性を有すると判定したサンプルを+で示し、水との相溶性を有さないと判定したサンプルを−として示した。結果を表1に示す。
試験した乳剤のうち、NMPは水との相溶性が最も高く、水と任意の割合で相溶することが可能であることがわかった。
これに対し、Vegisol CM、Propylene carbonateおよびRHODIASOLVE RPDEはサンプル液中の水の比率が10重量%であっても、溶剤は水と相溶しなかった。Agnique AMD8−10は20重量%以下の水と、Rhodia Solve Polar cleanは30重量%以下の水と、ぞれぞれ相溶したが、当該比率より高い濃度の水とは相溶せず、サンプル中の溶剤と水とは分離した。
また、乳剤の有効成分として用いられるアゾール系殺菌剤であるメトコナゾールおよび下記の式(III)で表される化合物Aの上述の6種の溶剤に対する溶解度について、OECD法を用いて実際に測定して調べた。結果を以下の表2に示す。
6種類の溶剤のうち、溶解度はメトコナゾールおよび化合物Aのいずれに対してもNMPが最も高く、Vegisol CMが最も低いことが分かった。
以上の表1および表2の結果から、NMPは、メトコナゾールおよび化合物Aに対して高い溶解度を有するものの、水と任意の割合で相溶性を有する。そのため、有効成分としてこれらの化合物を、溶剤としてNMPを含む乳剤を調製した場合、乳剤を水で希釈して散布液を調製する際に、NMPが水に溶け出すことによって、有効成分の結晶が析出することが予想された。
また、Vegisol CMの溶剤の場合、メトコナゾールおよび化合物Aのいずれに対しても溶解度が10未満であった。このことから、メトコナゾールおよび化合物Aのいずれを用いた場合でも、有効成分が乳剤全量の10重量%の乳剤を作ることが出来ないことが明確となった。
これらの結果から、単独でメトコナゾールあるいは化合物Aの乳剤を調製するのは困難であることが予想された。
〔実施例1〕
(2種類の溶剤による混合溶剤の水との相溶性の試験および評価)
<試験方法および評価方法>
上述の試験例1の結果に基づき、ある程度の水との相溶性を有し、メトコナゾールおよび化合物Aのいずれに対しても高い溶解度を有するAgnique AMD8−10と、疎水性が高く、水との相溶性が低いVegisol CMとを、混合比を変えて混合した。さらに、各混合溶剤について有効成分の混合溶剤に対する溶解度と混合溶剤の水との相溶性の試験を行った。試験方法は、上述の試験例1と同様の方法を用いて行った。結果を表3に示す。
(2種類の溶剤による混合溶剤の水との相溶性の試験および評価)
<試験方法および評価方法>
上述の試験例1の結果に基づき、ある程度の水との相溶性を有し、メトコナゾールおよび化合物Aのいずれに対しても高い溶解度を有するAgnique AMD8−10と、疎水性が高く、水との相溶性が低いVegisol CMとを、混合比を変えて混合した。さらに、各混合溶剤について有効成分の混合溶剤に対する溶解度と混合溶剤の水との相溶性の試験を行った。試験方法は、上述の試験例1と同様の方法を用いて行った。結果を表3に示す。
<結果>
〔実施例2〕
(混合溶剤に対する農園芸用薬剤有効成分の推定溶解度の算出)
上述の実施例1によって得られた混合溶剤について、溶剤に溶解させる有効成分を、メトコナゾールおよび化合物Aとしたときの溶剤に対する溶解度を、以下に記載する計算方法によって、推定溶解度として算出した。得られた推定溶解度と実際に測定した溶解度との比較を行った。
(混合溶剤に対する農園芸用薬剤有効成分の推定溶解度の算出)
上述の実施例1によって得られた混合溶剤について、溶剤に溶解させる有効成分を、メトコナゾールおよび化合物Aとしたときの溶剤に対する溶解度を、以下に記載する計算方法によって、推定溶解度として算出した。得られた推定溶解度と実際に測定した溶解度との比較を行った。
<計算方法>
上述の実施例1によって得られた混合溶剤に対する、溶解対象となる有効成分の溶解度を推測するため、上述の式(1)の計算式に基づいて、推定溶解度の算出を行った。計算式は、混合溶剤に対する溶解対象となる有効成分の溶解度は、混合溶剤を構成するそれぞれの溶剤単独のものに対する当該有効成分の溶解度と混合溶剤中の混合溶剤を構成するそれぞれの溶剤の混合比率との積の和に等しいと仮定して立式した。
上述の実施例1によって得られた混合溶剤に対する、溶解対象となる有効成分の溶解度を推測するため、上述の式(1)の計算式に基づいて、推定溶解度の算出を行った。計算式は、混合溶剤に対する溶解対象となる有効成分の溶解度は、混合溶剤を構成するそれぞれの溶剤単独のものに対する当該有効成分の溶解度と混合溶剤中の混合溶剤を構成するそれぞれの溶剤の混合比率との積の和に等しいと仮定して立式した。
<結果>
OECD法によって得られた、混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの溶解度(表4中、「実測値」)、ならびに上述の計算式から算出された混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの推定溶解度(表4中、「計算値」)を表4に示す。
OECD法によって得られた、混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの溶解度(表4中、「実測値」)、ならびに上述の計算式から算出された混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの推定溶解度(表4中、「計算値」)を表4に示す。
表4に示されているように、OECD法によって測定された、混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの溶解度は、計算式から算出された混合溶剤におけるメトコナゾールおよび化合物Aの溶解度の推定値とほぼ一致した。
Agnique AMD 8−10と水との相溶性は、Agnique AMD 8−10とVegisol CMとの混合液では低下した。特に、Agnique AMD 8−10:Vegisol CMを7:3となるように混合することによって、水との相溶性をほとんど有していない混合溶剤が得られた。
上述の試験例1の結果から、Agnique AMD 8−10単独の溶剤と水とは、20重量%以下の水と相溶することがわかる。次に、実施例1の結果から、溶剤全量に対して90重量%のAgnique AMD 8−10と10重量%のVegisol CMとの混合溶剤にすることにより、溶剤と相溶可能な水は10重量%以下となり、溶剤全量の70重量%のAgnique AMD 8−10と溶剤全量の30重量%のVegisol CMとの混合溶剤では、10重量%の水と相溶しなかった。
以上のように、上述の6種類の溶剤は、それぞれ単独の溶剤としては、メトコナゾールまたは化合物Aをそれぞれ有効成分として含む農園芸用乳剤に適用するために好適ではないが、この溶剤のうちの、例えば、AgniqueAMD8−10とVegisol CMとを混合することによって、メトコナゾールまたは化合物Aを溶解するための好適な溶剤が得られる可能性があることが分かった。さらに、得られた混合溶剤に対する有効成分の溶解度は、その重量組成から上述の計算式を用いた計算方法によって推定溶解度を算出することができることがわかった。
また、農園芸用乳剤に用いる溶剤を選択するにあたり、上述の混合溶剤と水との相溶性の試験および評価方法を用いれば、当該乳剤に用いる有効成分に対して適切な溶解度を有し、且つ水との相溶性の低い、製剤するために適切な混合溶剤を選択することが可能であることが示された。
〔試験例2〕
(混合溶剤を用いたメトコナゾール乳剤の調製)
上述の試験および評価方法ならびに計算方法によって得られた混合溶剤を用い、有効成分としてメトコナゾールを含む農園芸用乳剤を調製した。メトコナゾールは、トリアゾール系化合物群のうちの一種である。トリアゾール系化合物は、極性の高い溶剤に溶けやすく、且つ優れた殺菌活性を発揮することが知られており、農園芸用乳剤に好適に用いられている。
(混合溶剤を用いたメトコナゾール乳剤の調製)
上述の試験および評価方法ならびに計算方法によって得られた混合溶剤を用い、有効成分としてメトコナゾールを含む農園芸用乳剤を調製した。メトコナゾールは、トリアゾール系化合物群のうちの一種である。トリアゾール系化合物は、極性の高い溶剤に溶けやすく、且つ優れた殺菌活性を発揮することが知られており、農園芸用乳剤に好適に用いられている。
<農園芸用乳剤の組成>
以下、本実施例2に係る農園芸用乳剤の調製例に関して、実施例3〜6ならびに比較例1および2を示す。すべての実施例および比較例は、有効成分としてメトコナゾール、界面活性剤として、非イオン性界面活性であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットを用いたメトコナゾール20重量%乳剤である。なお実施例3〜6ならびに比較例1および2の組成については以下の表5にまとめた。
以下、本実施例2に係る農園芸用乳剤の調製例に関して、実施例3〜6ならびに比較例1および2を示す。すべての実施例および比較例は、有効成分としてメトコナゾール、界面活性剤として、非イオン性界面活性であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットを用いたメトコナゾール20重量%乳剤である。なお実施例3〜6ならびに比較例1および2の組成については以下の表5にまとめた。
<農園芸用乳剤の調製方法>
すべての実施例および比較例は、以下の方法によって調製した。
すべての実施例および比較例は、以下の方法によって調製した。
まず、すべての成分を200mLのガラス容器に秤量した。次に、テフロン(登録商標)コーティングの攪拌子をガラス容器中に投入し、マグネティックスターラーで、約500rpmの速度で混合攪拌した。界面活性剤の溶解が遅い場合は50℃以下の温度で加温し、溶解させた。溶解液をグラスフィルターろ紙を用いて吸引濾過し、メトコナゾール20重量%乳剤を得た。メトコナゾール20重量%乳剤を得た。得られた各乳剤はガラス製のサンプル管に入れて密栓し、以下の試験例3における、希釈試験による評価を行うまで室温で保存した。
〔実施例3〕
有効成分としてメトコナゾール:20.5重量部、界面活性剤として、非イオン性界面活性であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット:15.0重量部および溶剤として、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部を、上述の調製方法によって均一に混合融解し、農園芸用乳剤を調製した。得られた製剤は、淡黄色かつ透明の、弱い粘性を有する液体であった。色および粘性の特徴について以下の実施例4〜6ならびに比較例1および2についても同様の特徴を有していた。なお、単位「重量%」は、農園芸用乳剤の全量に対する濃度を示している。以降の記載についても同様である。
有効成分としてメトコナゾール:20.5重量部、界面活性剤として、非イオン性界面活性であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット:15.0重量部および溶剤として、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部を、上述の調製方法によって均一に混合融解し、農園芸用乳剤を調製した。得られた製剤は、淡黄色かつ透明の、弱い粘性を有する液体であった。色および粘性の特徴について以下の実施例4〜6ならびに比較例1および2についても同様の特徴を有していた。なお、単位「重量%」は、農園芸用乳剤の全量に対する濃度を示している。以降の記載についても同様である。
〔実施例4〕
溶剤のうち、Vegisol CM:29.5重量部の代わりにHicol K140N(主成分:流動パラフィン、カネダ(株):50重量部を用いた以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例1〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにNMP:64.5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例2〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAgnique AMD8−10:64.5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例3〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:59.05重量部およびVegisol CM:5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例4〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:58.05重量部およびVegisol CM:6.45重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例5〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:19.35重量部およびVegisol CM:45.15重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製を試みた。しかし、比較例3では、溶剤にメトコナゾールが溶解せず、最終的に農園芸用乳剤を調製することができなかった。このことは、本比較例の組成から上述の計算式によって推測される溶解度からも予測した通りである。
溶剤のうち、Vegisol CM:29.5重量部の代わりにHicol K140N(主成分:流動パラフィン、カネダ(株):50重量部を用いた以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例1〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにNMP:64.5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例2〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAgnique AMD8−10:64.5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例3〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:59.05重量部およびVegisol CM:5重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例4〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:58.05重量部およびVegisol CM:6.45重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製した。
〔比較例5〕
溶剤のうち、Agnique AMD8−10:35重量部およびVegisol CM:29.5重量部の代わりにAMD8−10:19.35重量部およびVegisol CM:45.15重量部とする以外は実施例3と同様の組成の農園芸用乳剤を、実施例3と同様の調製方法を用いて調製を試みた。しかし、比較例3では、溶剤にメトコナゾールが溶解せず、最終的に農園芸用乳剤を調製することができなかった。このことは、本比較例の組成から上述の計算式によって推測される溶解度からも予測した通りである。
実施例3〜4および比較例1〜5における農園芸用乳剤の組成は、以下の表5の通りである。
〔試験例3〕
(混合溶剤を含む農園芸用乳剤の希釈試験)
乳剤を調製できなかった比較例5以外の、実施例3、4および比較例1〜4で得られた農園芸用乳剤について、得られた乳剤を水で希釈する希釈試験を行った。この希釈試験は、農園芸分野の現場で散布される際の、散布液の調製を想定したものである。
(混合溶剤を含む農園芸用乳剤の希釈試験)
乳剤を調製できなかった比較例5以外の、実施例3、4および比較例1〜4で得られた農園芸用乳剤について、得られた乳剤を水で希釈する希釈試験を行った。この希釈試験は、農園芸分野の現場で散布される際の、散布液の調製を想定したものである。
<試験方法>
試験は全て20℃±4℃の温度の室内で実施した。まず、6本のガラス製の栓付きシリンダーに硬度3°の水をそれぞれ100mLずつ加えた。次に、各シリンダーに実施例1、2および比較例1〜4で得られた農園芸用乳剤のいずれか1種類をそれぞれ0.1mLずつ加えた。つまり、各乳剤を希釈倍率を1000倍として希釈した。直ちにシリンダーに栓をし、1分間に30回シリンダーを倒立させることを繰り返し、乳剤と水とを混合させた。シリンダーを水平な机上に静置して、混合直後、60分後、120分後、一晩後にシリンダー内の液体の様子を目視で観察した。さらに、一晩後、シリンダー内の液体を46μmの目開きを有する篩(東京スクリーン(株))に透過させて、篩上の残渣として得られた沈殿物を目視で観察した。
試験は全て20℃±4℃の温度の室内で実施した。まず、6本のガラス製の栓付きシリンダーに硬度3°の水をそれぞれ100mLずつ加えた。次に、各シリンダーに実施例1、2および比較例1〜4で得られた農園芸用乳剤のいずれか1種類をそれぞれ0.1mLずつ加えた。つまり、各乳剤を希釈倍率を1000倍として希釈した。直ちにシリンダーに栓をし、1分間に30回シリンダーを倒立させることを繰り返し、乳剤と水とを混合させた。シリンダーを水平な机上に静置して、混合直後、60分後、120分後、一晩後にシリンダー内の液体の様子を目視で観察した。さらに、一晩後、シリンダー内の液体を46μmの目開きを有する篩(東京スクリーン(株))に透過させて、篩上の残渣として得られた沈殿物を目視で観察した。
(結果)
得られた結果を以下の表6に示す。
得られた結果を以下の表6に示す。
なお、表6における痕跡量とは、実用として無視できる程度の沈殿量を意味している。
比較例3および4では、Vegisol CMの添加により乳化状態が向上し、さらに希釈液の静置120分後の結晶の沈降量が減った。この現象は水との親和性の低下によって説明される。一方上述の試験例1によって予想されるように、比較例3および4に用いた程度のVegisol CMの添加量では、得られる混合溶剤は、水と一定の親和性を有するため、表6における120分後の結晶析出の結果を生じたと考えられる。
比較例1の農園芸用乳剤は、混合した直後であっても乳化状態とはならなかった。1時間後には沈殿物がシリンダーの底に溜っているのが観察された。1晩経過後に内容物を目開き46μmの篩に通過させたところ、結晶状の沈殿が通過せずに残った。このことから、希釈液中で有効成分の結晶析出が起こったことが分かった。NMPはメトコナゾールに対して高い溶解力を持つにもかかわらず、希釈時にNMPが水に溶けだすことによってメトコナゾールの溶解力を失ったと考えられる。本乳剤の溶剤としてNMPを使用することは適当でないことが分かった。
比較例2の農園芸用乳剤は、希釈時に液がほぼ均一に白濁した状態となった。しかし1時間後には沈殿物がシリンダーの底に溜っているのが観察された。1晩経過後に内容物を目開き46μmの篩に通過させたところ沈殿が残留した。ただし、この沈殿は軽い水洗によって容易に篩を通過したため、篩の目開きである46μmよりも小さな粒子のみによって構成されていることが分かった。
以上のことから、Agnique AMD 8−10は、NMPよりはメトコナゾール乳剤に含有される溶剤としての適性が高いものと考えられるが、一定の水との親和性を有しているために、乳剤の希釈時には、乳剤に含まれる溶剤のうちの一部は、水へ溶解される。そのため、農園芸用薬剤有効成分の結晶析出などの問題が生じるものと考えられた。
このように、NMPとAgnique AMD 8−10の挙動の違いはそれぞれの化合物の親水性の程度の違いに起因すると考えられた。したがって、実施例1に記載の水との相溶性の試験は溶剤の乳剤用の材料としての適性の評価に有用と考えられる。
本発明の混合溶剤の調製方法は、農園芸用乳剤に含まれる溶剤の調製に好適に用いられる。
Claims (8)
- 互いに相溶性を有する複数の溶剤を組み合わせた混合溶剤の調製方法であって、
2以上の溶剤を準備し、各溶剤の水との相溶性を試験する工程と、
相溶性の試験の結果および上記各溶剤における被溶解化合物の溶解度に基づき、混合溶剤に使用する複数の溶剤を決定する工程と、
を包含する、混合溶剤の調製方法。 - 上記各溶剤における被溶解化合物の溶解度と、上記混合溶剤における各溶剤の混合割合とに基づき、上記混合溶剤における上記被溶解化合物の溶解度を推定する工程をさらに包含し、上記混合溶剤において所望の溶解度を満たすように、混合溶剤に使用する複数の溶剤を決定する、請求項1に記載の混合溶剤の調製方法。
- 得られた上記混合溶剤と水との相溶性を試験する工程をさらに包含する、請求項1または2に記載の混合溶剤の調製方法。
- 上記混合溶剤は、2種の溶剤(a)および溶剤(b)を組み合わせた混合溶剤であり、
溶剤を決定する上記工程では、上記溶剤(a)として、上記溶剤(b)よりも上記被溶解化合物の溶解度が高い溶剤を選択し、上記溶剤(b)として、上記溶剤(a)よりも水との相溶性が低い溶剤を選択する、請求項1〜3の何れか一項に記載の混合溶剤の調製方法。 - 上記溶剤(b)は、10重量%で水を含む上記溶剤(b)と水との混合液において、水と相溶せずに分離する溶剤である、請求項4に記載の混合溶剤の調製方法。
- 上記溶剤(a)は、40重量%で水を含む上記溶剤(a)と水との混合液において、水と相溶せずに分離する溶剤である、請求項4または5に記載の混合溶剤の調製方法。
- 請求項1〜6に記載の混合溶剤の調製方法において決定された上記混合溶剤における組成に基づき、互いに相溶性を有する複数の溶剤を組み合わせた混合溶剤を製造する、混合溶剤の製造方法。
- 請求項7に記載の混合溶剤の製造方法によって得られる混合溶剤と、
上記被溶解化合物である有効成分と、
界面活性剤とを含む、農園芸用乳剤。
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