JP2016092927A - 回転電機制御装置 - Google Patents

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勇 嘉藤
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Abstract

【課題】インバータを駆動する回路への電源を喪失した場合であっても、インバータが短絡状態となることを抑制可能なフェールセーフ機能を回路規模の増大を抑制しつつ実現する。【解決手段】インバータ10と、インバータ制御装置3と、制御信号駆動回路7と、制御回路系電源PS2と、制御回路系電源PS2よりも高い電圧を有する駆動回路系電源PS1とを備え、制御信号駆動回路7は、インバータ制御装置3が生成したスイッチング制御信号を中継すると共に、制御信号駆動回路7又はインバータ10に異常が生じた際に保護動作を行うものであり、保護動作は、制御信号駆動回路7に印加される電源電圧が、制御回路系電源PS2の電源電圧よりも低い電圧域である保護動作可能電圧域内の電圧である場合に実行可能であり、制御回路系電源PS2と制御信号駆動回路7の電源入力部Vinとが整流素子Dbを介して接続されている。【選択図】図1

Description

本発明は、交流の回転電機を駆動制御する回転電機制御装置に関する。
送電線から電力の供給を受けない自動車などに搭載された交流の回転電機は、当該自動車に搭載された直流のバッテリから電力の供給を受けて動作する。車輪に駆動力を与える回転電機、オイルポンプやエアーコンディショナーのコンプレッサを駆動する回転電機には、例えば直流200〜400[V]の高圧バッテリからインバータを介して交流に変換された電力が供給される。このインバータには、パワーデバイスと称される耐用電力の大きい半導体スイッチング素子(パワースイッチング素子)が利用される。一方、パワースイッチング素子を駆動制御するためのスイッチング制御信号は、高圧バッテリよりも遙かに低電圧の12〜24[V]程度の低圧バッテリを電力源として生成された3.3〜12[V]程度の電源電圧で動作する制御回路によって生成される。このため、回転電機を駆動制御する回転電機制御装置は、一般的に高圧系回路と低圧系回路とに分かれて構成され、両者の間は適切に絶縁されている。特開2009−130967号公報(特許文献1)には、そのように高圧系回路(5)と低圧系回路(7)と絶縁回路(6)とを備えたモータの制御装置が開示されている(図1〜図3、第30〜51段落等)。
特許文献1にも例示されているように、低圧系回路に属する制御回路において生成されたスイッチング制御信号は、トランスやフォトカプラなどの絶縁素子により構成された絶縁回路を介してインバータが属する高圧系回路に伝達される。但し、インバータを構成するパワースイッチング素子の制御端子には、一般的に低圧系回路の電源電圧よりも高い12〜20[V]の振幅を有する駆動信号を与える必要がある。このため、スイッチング制御信号を生成する制御回路の電源電圧が12[V]未満の場合、パワースイッチング素子に対するスイッチング制御信号の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)を高めて中継する制御信号駆動回路が備えられる。この駆動回路の電源は、しばしば、低圧バッテリを電力源として、トランスによって生成される。
ところで、この駆動回路の電源に故障が生じると、駆動回路から出力されるスイッチング制御信号が不安定となる。その結果、インバータを構成するパワースイッチング素子の制御端子(例えばIGBTであればゲート端子)がフローティング状態となる。そして、制御端子がフローティング状態のパワースイッチング素子は、外部ノイズ等でオン状態となってしまう可能性がある。一般的にインバータにおいては、高圧バッテリの正極と負極との間に、相補的にスイッチングする2つのパワースイッチング素子が直列に接続されている。これら2つのパワースイッチング素子が同時にオン状態となると、高圧バッテリの正極と負極との間が短絡状態となり、大電流が流れてしまう。これを防止する方法として、駆動回路の電源に故障が生じた場合に、インバータが属する高圧系回路に電力を供給するコンタクタを開放し、電力供給を遮断することが考えられる。しかし、高圧バッテリには、同じコンタクタを介して他の装置も接続されている場合があり、電力供給の遮断によってこれら他の装置も停止しまう。このため、できる限り、コンタクタを開放することなく、インバータの短絡を抑制することが求められる。
特開2009−130967号公報
上記背景に鑑みて、インバータを駆動する回路への電源を喪失した場合であっても、スイッチング素子の誤動作によってインバータが短絡状態となることを抑制可能なフェールセーフ機能を、回路規模の増大を抑制しつつ実現することが望まれる。
上記に鑑みた、交流の回転電機を駆動制御する回転電機制御装置の特徴構成は、
高圧直流電源に接続される高電圧回路領域と、前記高圧直流電源よりも低電圧で前記高圧直流電源から絶縁された低圧直流電源に接続される低電圧回路領域と、を有し、
前記高圧直流電源と前記回転電機との間に介在され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータと、
前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御するインバータ制御装置と、
前記インバータ制御装置により生成されて各スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号を中継する制御信号駆動回路と、を前記高電圧回路領域に備え、
前記低圧直流電源を電力源とし、前記低電圧回路領域と前記高電圧回路領域とを絶縁状態で結合して前記インバータ制御装置に電力を供給する制御回路系電源と、
前記低圧直流電源を電力源とし、前記低電圧回路領域と前記高電圧回路領域とを絶縁状態で結合して前記制御信号駆動回路に電力を供給する電源であって、前記制御回路系電源よりも高い電圧を有する駆動回路系電源と、を備え、
前記制御信号駆動回路は、さらに、前記制御信号駆動回路又は前記インバータに異常が生じた際には、前記インバータに対して保護動作を行うものであり、
前記保護動作は、前記制御信号駆動回路に印加される電源電圧が、前記制御回路系電源の電源電圧よりも低い電圧域である保護動作可能電圧域内の電圧である場合に実行可能であり、
前記制御回路系電源の正極側と前記制御信号駆動回路の正極側の電源入力部とが、前記制御回路系電源から当該電源入力部へ向かう方向を順方向として接続された整流素子を介して接続されている点にある。
この構成によれば、駆動回路系電源から供給される電源電圧が低下した場合でも、制御回路系電源が機能していれば、保護動作が可能な電圧を電源入力部に印加することができる。例えば、保護動作には、少なくともインバータが短絡状態とならないようにインバータを構成するスイッチング素子を制御する機能が含まれる。従って、駆動回路系電源からの電力の供給が滞っても、インバータに保護動作が適用されて安全性が向上する。制御回路系電源は、インバータ制御装置に電力を供給するために備えられており、フェールセーフのための電源として新たに設けられるものではない。また、制御回路系電源と電源入力部との間には整流素子が設けられるだけである。従って、フェールセーフのために回路規模が増大することは抑制されている。即ち、この構成によれば、インバータを駆動する回路への電源を喪失した場合であっても、スイッチング素子の誤動作によってインバータが短絡状態となることを抑制可能なフェールセーフ機能を、回路規模の増大を抑制しつつ実現することができる。
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する本発明の実施形態についての以下の記載から明確となる。
モータ制御装置の構成例を模式的に示すブロック図 高圧バッテリに接続されるシステム構成の一例を模式的に示す図 異常が生じた際のフェールセーフ機能を模式的に示すフローチャート モータ制御装置の他の構成例を模式的に示すブロック図 高圧直流電源監視信号の生成回路及び電源端子周辺回路の等価回路図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、モータ制御装置1(回転電機制御装置)の構成例を模式的に示している。モータMは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車の動力用モータや、自動車の電動オイルポンプ(EOP)の駆動用モータである。本実施形態において、モータM(回転電機)は、3相交流モータであり、発電機としても機能する。モータMを駆動制御するモータ制御装置1は、駆動装置としてのスイッチング素子モジュール(IPM:intelligent power module)2と、インバータ制御装置3と、周辺回路(8,11,12,19,30等)とを有して構成されている。IPM2は、後述するように、インバータ10と制御信号駆動回路7とが一体化されたモジュールである。また、本実施形態において制御信号駆動回路7は、駆動回路4と異常診断回路(保護回路)6とを備えて構成されている。
モータ制御装置1は、相対的に高電圧の高電圧回路領域VHと、相対的に低電圧の低電圧回路領域VLとを有して構成されている。高電圧回路領域VHと低電圧回路領域VLとは、所定の絶縁距離だけ離間して配置されている。高電圧回路領域VHは、高圧側コンタクタSHを介して高圧バッテリ9H(高圧直流電源)に接続される回路領域である。低電圧回路領域VLは、高圧バッテリ9Hよりも低電圧で高圧バッテリ9Hから絶縁された低圧バッテリ9L(低圧直流電源)に低圧側コンタクタSLを介して接続される回路領域である。高圧バッテリ9Hの電源電圧(正極“P”−負極“N”間電圧)は、例えば200〜400[V]である。低圧バッテリ9Lの電源電圧(正極“B”−負極“G”間電圧)は、例えば12〜24[V]である。
ところで、本実施形態では、図2に示すように、モータMは、車両の補機AにロータRt2が駆動連結されて、当該補機Aを駆動する補機用モータM2である。補機Aとは、電動オイルポンプ、エアーコンディショナーのコンプレッサ、パワーステアリングの駆動装置などである。図2に示すように、ロータRt1が車両の車輪Wに駆動連結された動力用モータM1も、補機用モータM2と同様に、駆動装置2B及び高圧側コンタクタSHを介して高圧バッテリ9H(高圧直流電源)に接続されている。尚、本実施形態では、モータ“M1”が車両の動力用、モータ“M2”が補機用である場合を例示しているが、双方が補機用のモータであってもよい。例えば、モータ“M1”が電動オイルポンプの駆動用モータ、モータ“M2”がパワーステアリングの駆動モータであってもよい。また、本実施形態では、一方のモータを“M”として、2つのモータ“M1,M2”を備える形態を例示しているが、モータ“M”を含めて3つ以上のモータが高圧側コンタクタSHを介して高圧バッテリ9H(高圧直流電源)に接続されていてもよい。
モータ制御装置1の高電圧回路領域VHには、IPM2と、インバータ制御装置3とが備えられている。IPM2は、インバータ10と、駆動回路4と、異常診断回路6(保護回路)とを有して構成されている。異常診断回路6は、IPM2に生じる異常を診断し、診断結果(Fout)を出力すると共に、後述する保護動作を行う回路である。この保護動作は、駆動回路4と協働して実施される。本実施形態では、駆動回路4及び異常診断回路6は、広義の制御信号駆動回路7に対応し、駆動回路4は狭義の制御信号駆動回路7に対応する。換言すれば、制御信号駆動回路7は、インバータ制御装置3により生成されてインバータ10(各スイッチング素子9)を制御するスイッチング制御信号を中継する回路(駆動回路4)であると共に、さらに、IPM2(制御信号駆動回路7、インバータ10)に異常が生じた際にインバータ10に対する保護動作を行う回路(異常診断回路6(保護回路)である。
図1に示すように、高電圧回路領域VHには、IPM2とインバータ制御装置3とが備えられている。IPM2は、インバータ10と、駆動回路4と、異常診断回路6(保護回路)とを有して構成されている。異常診断回路6は、IPM2に生じる異常を診断し、診断結果(Fout)を出力すると共に、後述する保護動作を行う回路である。保護動作は、駆動回路4と協働して実施されるので、駆動回路4と保護回路(異常診断回路6)とを合わせて駆動・保護回路と称してもよい。本実施形態では、駆動回路4及び異常診断回路6は、広義の制御信号駆動回路7に対応し、駆動回路4は狭義の制御信号駆動回路7に対応する。換言すれば、制御信号駆動回路7は、インバータ制御装置3により生成されてインバータ10(各スイッチング素子9)を制御するスイッチング制御信号を中継する回路(駆動回路4)であると共に、さらに、IPM2(制御信号駆動回路7、インバータ10)に異常が生じた際にインバータ10に対する保護動作を行う回路(保護回路(異常診断回路6))である。
本実施形態において、インバータ制御装置3は、マイクロコンピュータやDSP(digital signal processor)などの論理演算プロセッサを中核部品として構成されている。インバータ制御装置3は、インバータ10を構成するスイッチング素子9をそれぞれスイッチング制御するスイッチング制御信号を生成して出力する。マイクロコンピュータやDSPの電源電圧は、一般的に3.3〜5[V]程度である。このため、多くの場合、インバータ制御装置3は、低電圧回路領域VLに備えられる。しかし、本実施形態では、モータ制御装置1の構成部品を集約して、小型化、低コスト化を実現するために、インバータ制御装置3が高電圧回路領域VHに設けられている。インバータ制御装置3が低電圧回路領域VLに備えられた場合には、インバータ制御装置3とIPM2との間の信号接続に、フォトカプラなどの絶縁素子が必要となる。インバータ制御装置3が高電圧回路領域VHに設けられるとフォトカプラなどを削減することができ、小型化、低コスト化が推進される。
インバータ10は、高圧バッテリ9HとモータMとの間に介在され、直流と交流との間で電力変換を行う。図1に示すように、インバータ10は、相補的にスイッチング制御される上段側スイッチング素子9aと下段側スイッチング素子9bと有して構成されたアームが複数相の交流に対応して備えられている。スイッチング素子9は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFET(Field Effect Transistor)、パワートランジスタ、SiCデバイス(SiC−MOSFET(Silicon Carbide- Metal Oxide Semiconductor FET)、SiC−SIT(SiC - Static Induction Transistor))などの電力型半導体スイッチング素子(パワースイッチング素子)である。IPM2の内部において、上段側スイッチング素子9aは高圧バッテリ9Hの正極“P”に接続され、下段側スイッチング素子9bは高圧バッテリ9Hの負極“N”に接続されている。図示は省略しているが、各スイッチング素子9には、負極“N”から正極“P”へ向かう方向を順方向として、並列にフリーホイールダイオードが備えられている。
インバータ制御装置3へは、低圧バッテリ9L(低圧直流電源)を電力源とする制御回路系電源PS2から電力が供給される。一方、上述したように、本実施形態において、インバータ制御装置3は、高電圧回路領域VHに配置されている。従って、制御回路系電源PS2は、例えばトランスTを用いて構成されており、低電圧回路領域VLと高電圧回路領域VHとを絶縁状態で結合してインバータ制御装置3に電力を供給する。本実施形態では、低電圧回路領域VLに設けられた一次側回路PSは、電源制御回路82によってスイッチング制御されるプッシュプル型の構成である。制御回路系電源PS2の出力電圧(正極“Vdd2”−負極“制御系グラウンド”間電圧)は、例えば6〜8[V]である。好ましくは、制御回路系電源PS2から不図示のレギュレータ回路等を介して、電源電圧3.3[V]や5[V]の電力がインバータ制御装置3へ供給される。当然ながら、制御回路系電源PS2の出力電圧を3.3[V]や5[V]として、レギュレータ回路等を介することなく電力をインバータ制御装置3へ供給する形態も採用することもできる。また、制御回路系電源PS2が、レギュレータ回路も含む構成であってもよい。
ところで、インバータ10を構成するパワースイッチング素子の制御端子(ゲート端子、ベース端子など)には、スイッチング制御信号として、一般的に15〜25[V]程度の振幅を有する駆動信号(ゲート駆動信号、ベース駆動信号など)を与える必要がある。一方、上述したように、スイッチング制御信号を生成するインバータ制御装置3の動作電圧は、5[V]未満(3.3〜5[V])である。このため、各スイッチング素子9に対するゲート駆動信号(スイッチング制御信号)の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継する駆動回路4(狭義の制御信号駆動回路7)が備えられている。本実施形態では、駆動回路4は、IPM2に内蔵されている。
駆動回路4(IPM2)にも、低圧バッテリ9L(低圧直流電源)を電力源とする駆動回路系電源PS1から電力が供給される。上述したように、本実施形態において、IPM2は、高電圧回路領域VHに配置されている。従って、制御回路系電源PS2と同様に、駆動回路系電源PS1は、例えばトランスTを用いて構成されており、低電圧回路領域VLと高電圧回路領域VHとを絶縁状態で結合してIPM2に電力を供給する。本実施形態では、低電圧回路領域VLに設けられた一次側回路PSは、電源制御回路82によってスイッチング制御されるプッシュプル型の構成である。駆動回路系電源PS1の出力電圧(正極“Vcc”−負極“制御系グラウンド”間電圧)は、15〜30[V]である。
尚、高圧バッテリ9Hの負極“N”(パワー系グラウンド)と、“制御系グラウンド”とは、パワー系グラウンドに含まれるノイズが制御系グラウンドに伝搬することを抑制するように配線基板上では別々の導電パターンで構成され、一点(CG)で電気的に接続されている(一点アース)。従って、電気的には、高圧バッテリ9Hの負極“N”(パワー系グラウンド)と、“制御系グラウンド”とは、同電位である。また、駆動回路系電源PS1及び制御回路系電源PS2の負極は共に“制御系グラウンド”である。このように、駆動回路系電源PS1から電力を供給される回路(駆動回路4及び異常診断回路6)、制御回路系電源PS2から電力を供給される回路(インバータ制御装置3)、高圧バッテリ9Hから電力を供給される回路(インバータ10)は、電気的に同一電位を基準(グラウンド)としており、それぞれフローティングの関係ではない。
ところで、下段側スイッチング素子9bに対しては、スイッチング制御信号のグラウンド側の基準となる負極“N”が共通であるために、共通の駆動回路4(下段側駆動回路42)が1つ設けられている。一方、上段側スイッチング素子9aは、導通状態となった際に、正極“P”側の端子(例えばIGBTの場合はコレクタ端子)、及び負極“N”側の端子(例えばIGBTの場合はエミッタ端子)の電位が共にほぼ正極“P”の電位となる。図1に示すように、一般的に、スイッチング素子9には上下段共にNチャネル型の素子が用いられる。Nチャネル型の上段側スイッチング素子9aをスイッチング制御するためには、制御端子(例えばIGBTの場合はゲート端子)と、負極“N”側の端子(例えばエミッタ端子)との電位差を15〜25[V]にする必要がある。導通状態となった上段側スイッチング素子9aの負極“N”側の端子(例えばエミッタ端子)の電位は、ほぼ正極“P”の電位となるので、制御端子(例えばゲート端子)には、“P+15[V]”〜“P+25[V]”の電位を与える必要がある。このため、上段側スイッチング素子9aに対する駆動回路4(上段側駆動回路41)には、ブートストラップ回路(レベルシフト回路)が備えられている。
また、モータMへの出力電圧は各相で個別に変動するから、上段側スイッチング素子9aは、グラウンド側の基準が定まらない。即ち、負極“N”側の端子(例えばエミッタ端子)の電位は一定の値には定まらない。従って、上段側駆動回路41は、各相個別に設けられている。簡略化のため、図1においては、それらを統合して上段側駆動回路41として図示している。尚、インバータ制御装置3により生成され、IPM2に入力されるスイッチング制御信号はハイアクティブの信号である。スイッチング制御信号が、意図的に有効状態(ハイ状態)となった際にのみ、スイッチング素子9がオン状態となるように、IPM2の内部(入力端子部)において各スイッチング素子9に対するスイッチング制御信号はそれぞれ抵抗器5を介してプルダウンされている。
インバータ制御装置3は、車両の運行を制御する車両ECU(electronic control unit)20などからCAN(controller area network)などの通信によって取得する指令に従って、モータMを制御する。車両ECU20は、インバータ制御装置3から見て上位制御装置に相当する。CANコントローラ30は、低電圧回路領域VLに備えられ、車両ECU20は、ネットワーク回線100を介してCANコントローラ30に接続されている。低電圧回路領域VLに属するCANコントローラ30と、高電圧回路領域VHに属するインバータ制御装置3とは絶縁されている。このため、CANコントローラ30とインバータ制御装置3とは、絶縁部品ISを介して信号を送受信する。絶縁部品ISは、例えば、フォトカプラ(PC3,PC4)である。尚、絶縁部品ISとして、信号伝送用の小型トランスを用いることも好適である。
IPM2は、IPM2に生じるいくつかの異常(インバータ10や駆動回路4などに生じるいくつかの異常)に応答する機能を有している。図1に示す異常診断回路6(保護回路)は、例えば、検出結果入力端子Tcへの入力信号に基づいてインバータ10の異常を判定した際に、複数相のアームの全てを遮断するように、スイッチング素子9を制御するシャットダウン制御を行う。本実施形態では、異常診断回路6は、下段側スイッチング素子9bのスイッチング制御信号を全て非有効状態(スイッチング素子9がオフとなるように制御する状態)に制御する。下段側スイッチング素子9bが全てオフ状態となることによって、インバータ10の全てのアームがオフ状態となり、モータMへの交流電力の供給が遮断される。
上述したように、異常診断回路6は、検出結果入力端子Tcへの入力信号に基づいて、インバータ10の異常を判定した際にシャットダウン制御を行う。検出結果入力端子Tcへは、インバータ10の異常を検出する異常検出回路の検出結果(Cin)が入力される。図1では、異常検出回路として過電流検出回路(シャント抵抗8)を例示している。インバータ10に生じた過電流は、シャント抵抗8を流れる際に電流の大きさに応じた電圧を生じさせる。検出結果入力端子Tcを介して受け取ったこの電圧を、例えば異常診断回路6に備えられた判定回路としてのコンパレータによって判定することによって、異常診断回路6は上述したシャットダウン制御(保護動作)を行う。
異常診断回路6は、さらに検出結果入力端子Tcへの入力に基づく判定結果(診断結果)を異常状態信号Foutとして、異常状態信号出力端子Tfを介して出力する。異常状態信号Foutは、ローアクティブの信号である。ここで、異常状態信号出力端子Tfは、オープンドレイン(オープンコレクタ)型で構成され、IPM2の外部にて抵抗器を介してプルアップされると好適である。オープンドレイン(オープンコレクタ)型とすることによって、異常状態信号Foutの接続先の仕様(例えば、インバータ制御装置3の電源電圧)に応じた信号レベルを任意に設定することができる。ローアクティブの信号で、グラウンドレベルが有効状態(異常有りを示す論理状態)を示す異常状態信号Foutは、その信号レベルがプルアップ先の電圧レベルであるときに非有効状態(異常無しを示す論理状態)を示す。
また、異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧低下を検出する機能(電圧監視機能)も有している。駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧が低下すると、駆動回路4は、必要な電圧振幅を有するゲート駆動信号を生成することができなくなる。その結果、各スイッチング素子のスイッチング状態が安定せず、同一相のアームの上段側スイッチング素子9aと下段側スイッチング素子9bとが共にオン状態となって短絡状態となる可能性がある。このような状態を防止するために、異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の低下を検出した場合には、電圧低下保護制御を実行する。電圧低下保護制御は、駆動回路4を介してスイッチング制御信号を遮断する制御である。スイッチング制御信号が遮断されるので、シャットダウン制御とほぼ等価である。尚、一時的な負荷の増加に応じて瞬間的に電圧が低下するような場合を考慮して、異常診断回路6には、数[μs]〜十数[μs]程度のフィルタが内蔵されていると好適である。
電圧監視機能は、各駆動回路4に対して設けられている。上述したように、上段側駆動回路41は各相に対して設けられている。従って、上段側駆動回路41に対応する電圧監視機能も、各相個別に設けられている。下段側駆動回路42は、各相に共通して1つであるから、電圧監視機能も1つ設けられている。各電圧監視機能は、対応する駆動回路4に対してドライブ電源電圧低下保護制御を実行する。ところで、上述したように、下段側には過電流検出に際して、異常状態信号出力端子Tfから異常状態信号Foutを出力する機能が付加されている。下段側駆動回路42に対する電圧監視機能によって電圧低下が検出された場合には、同様に異常状態信号出力端子Tfから異常状態信号Foutが出力される。
異常状態信号Foutは、インバータ制御装置3に伝達され、インバータ制御装置3は、IPM2における異常の発生を検出することができる。但し、インバータ制御装置3は、異常状態信号Foutが有効状態である場合に、IPM2において何らかの異常(この場合は、過電流(短絡)或いは駆動回路系電源PS1の電圧低下)が生じていることが判るが、異常状態信号Foutのみでは異常の種類までは判定することができない。従って、図1に示すように、シャント抵抗8の両端電圧から過電流の発生を判定する過電流判定回路12が設けられ、その判定結果(検出結果)がインバータ制御装置3に入力されると好適である。インバータ制御装置3は、異常状態信号Foutや過電流判定回路12の判定結果(OC)に基づいて、異常の種別や、IPM2の挙動(動作状態、具体的にはシャットダウン制御の有無)を知ることができる。
ところで、インバータ10のシャットダウン制御は、IPM2に異常が生じている場合に実行されるとは限らない。例えば、装置(補機Aなど)の不具合が検出されて、インバータ制御装置3よりも上位の制御装置(車両ECU20)によってシャットダウン指令(上位シャットダウン指令SDin)が発せられる場合もある。このような上位シャットダウン指令SDinは、一般的にはインバータ制御装置3に対して通知され、インバータ制御装置3がIPM2に対してシャットダウン指令SDを出力する。本実施形態では、車両ECU20から絶縁部品IS(フォトカプラPC2)を介してインバータ制御装置3に伝達された上位シャットダウン指令SDinに基づき、インバータ制御装置3がIPM2に対してシャットダウン指令SDを出力する。
本実施形態では、シャットダウン指令SDを検出結果入力端子Tcに入力することでIPM2の異常診断回路6の保護機能を利用して、シャットダウン制御を実行させている。但し、検出結果入力端子Tcには、既に異常検出回路(シャント抵抗8)の検出結果(Cin)が入力されている。そこで、図1に示すように、異常検出回路の検出結果(Cin)に加えて、シャットダウン指令SDを検出結果入力端子Tcに入力するため、ORゲート11により検出結果(Cin)とシャットダウン指令SDとの論理和が取られる。尚、ここでは、インバータ制御装置3が、上位シャットダウン指令SDinに基づいてシャットダウン指令SDを出力する例を示したが、インバータ制御装置3による別の判定によってシャットダウン指令SDが出力されてもよい。
また、本実施形態では、上位シャットダウン指令SDinの緊急性を担保するため、図1に示すように、ORゲート11に上位シャットダウン指令SDinも入力されている。即ち、インバータ制御装置3を経由することなく、上位シャットダウン指令SDinによってIPM2の異常診断回路6の保護機能を実行させることが可能なように構成されている。また、このように、上位シャットダウン指令SDinに伴うシャットダウン制御もIPM2の異常診断回路6に任せた場合であっても、インバータ制御装置3は、異常の種別や、IPM2の挙動(動作状態、例えばシャットダウン制御の有無)を知ることができる。
インバータ制御装置3は、異常状態信号Fout、過電流判定回路12の判定結果(OC)に基づいて認識したIPM2の挙動の情報を、絶縁部品IS(フォトカプラPC3)、CANコントローラ30を介して車両ECU20に送信する。車両ECU20は、IPM2の挙動の情報に基づいて、例えば、高圧側コンタクタSHを開放して、インバータ10への高圧バッテリ9Hからの電力供給を遮断することができる。本実施形態では、さらに、異常状態信号Foutが、インバータ制御装置3やCANコントローラ30を介することなく、絶縁部品IS(フォトカプラPC1)を介して車両ECU20に伝達可能に構成されている。これにより、IPM2に何らかの異常が生じていることをより迅速に伝達することができる。
ところで、上述したように、異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧低下を検出する機能(電圧監視機能)も有している。そして、異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の低下を検出した場合には、電圧低下保護制御を実行する。駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧低下は、例えば、駆動回路系電源PS1が故障した場合や、駆動回路系電源PS1からIPM2への配線に障害が生じた場合などに発生する。異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)が低下しても、電源端子Vin(電源入力部)に印加される電圧値が保護動作下限電圧以上であれば、電圧低下保護制御の実行が可能である。換言すれば、異常診断回路6は、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)よりも低い電圧域である保護動作可能電圧域内の電圧が与えられれば、保護動作が可能である。保護動作下限電圧は、保護動作可能電圧域の下限値であり、例えば、3〜4[V]である。駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の定格値が15[V]であったとすれば、保護動作可能電圧域は、3〜15[V]の範囲となる。
しかし、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)が、保護動作可能電圧域外となった場合、即ち、当該電源電圧(Vcc)が保護動作下限電圧を下回るほど低下した場合には、保護動作の実行も不可能となる。この場合には、各スイッチング素子のスイッチング状態が安定せず、同一相のアームの上段側スイッチング素子9aと下段側スイッチング素子9bとが共にオン状態となって短絡状態となる可能性がある。
本実施形態においては、保護動作下限電圧は、制御回路系電源PS2の出力電圧、又は、インバータ制御装置3の電源電圧よりも低い電圧に設定されている。そこで、図1に示すように、制御回路系電源PS2の正極側とIPM2(制御信号駆動回路)の正極側の電源端子Vin(電源入力部)とが、ダイオードDb(整流素子)を介して接続されている。このダイオードDbは、制御回路系電源PS2から電源端子Vinへ向かう方向を順方向として接続されている。つまり、ダイオードDbは、制御回路系電源PS2の側にアノード端子、電源端子Vinの側にカソード端子が接続される方向で接続されている。制御回路系電源PS2の出力電圧は、上述したように3.3[V]〜8[V]程度である。一方、駆動回路系電源PS1の定格値は、上述したように15[V]以上である。従って、駆動回路系電源PS1が正常に動作している際には、ダイオードDbは逆方向接続されていることとなり、制御回路系電源PS2とIPM2とは遮断されている。
一方、駆動回路系電源PS1の出力電圧が、制御回路系電源PS2の出力電圧を下回ると、ダイオードDbは順方向接続されていることとなる(ここでは、簡略化のため、ダイオードDbの順方向の0.6〜0.7[V]の電圧降下は無視して説明する。)。つまり、ダイオードDbに順方向電流が流れるようになり、制御回路系電源PS2の出力が、IPM2の電源端子Vinに入力される。従って、駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)が保護動作下限電圧を下回るほど低下しても、IPM2には、保護動作下限電圧(ここでは3〜4[V])以上の電圧が供給される。即ち、断線や駆動回路系電源PS1の故障により、駆動回路系電源PS1からIPM2への電力の供給が滞っても、制御回路系電源PS2からIPM2の電源端子Vin(電源入力部)に電力を供給することができる。
駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧低下を検出する機能(電圧監視機能)を有している制御信号駆動回路7(異常診断回路6)は、電源電圧(Vcc)が、動作電圧の定格値(例えば15[V]±10%)を下回っても、少なくとも電圧監視機能と電圧低下保護制御機能とを含む保護動作を実行可能に構成されている。例えば、制御信号駆動回路7は、電源電圧(Vcc)が、保護動作可能電圧域の範囲内であれば(或いは、保護動作下限電圧以上であれば)、当該保護動作(電圧監視機能及び電圧低下保護制御機能)を実行することができる。
尚、制御回路系電源PS2からIPM2に対して電源電圧(Vcc)として供給される電圧は、IPM2(制御信号駆動回路7(異常診断回路6))の動作電圧の定格値未満であるから、異常診断回路6は電源電圧(Vcc)の低下を検出して電圧低下保護制御を実行する。上述したように、電圧低下保護制御は、駆動回路4を介してスイッチング制御信号を遮断する(或いはローレベルに固定する)制御である。駆動回路4が完全に停止すると、スイッチング制御信号がフローティング状態となり、ノイズ等によってスイッチング素子9が誤動作する可能性がある。高圧バッテリ9Hの正極“P”と負極“N”との間に直列接続される2つのスイッチング素子9が同時に導通すると、正極“P”と負極“N”との間が短絡状態となって、大電流が流れてしまう。しかし、電圧低下保護制御によって、ノイズ等によるスイッチング素子9の誤動作が抑制されるので、そのような短絡を抑制することができる。
駆動回路系電源PS1の電源電圧(Vcc)の電圧低下により、車両ECU20が高圧側コンタクタSHを開放してしまった場合には、図2に示すようにモータM(補機用モータM2)にとどまらず、動力用モータM1への電源供給も遮断されてしまう。しかし、上述したように、IPM2に保護動作下限電圧以上の電圧が与えられれば、補機用モータM2に関する保護は、IPM2による保護動作に任せて、高圧バッテリ9Hから動力用モータM1及び補機用モータM2への電力供給を継続することができる。つまり、異常が生じていない動力用モータM1の動作に影響を与えることなく、異常が生じている補機用モータM2に対する保護を行うことができる。
図3は、そのような保護動作について示したフローチャートである。はじめに、駆動回路系電源PS1の電圧低下があるか否かが判定される(#1)。電圧低下がなく、他の異常も無い場合(例えば過電流検出がない場合)には(#2)、通常制御が実行される(#3)。尚、通常制御の実行中に、過電流検出回路(8)によって過電流が検出された場合には(#2)、上述したように、CANコントローラ30を介した通信、及び異常状態信号Foutの直接入力に基づく車両ECU20の判定によって、高圧側コンタクタSHが開放される(#7)。つまり、高圧バッテリ9Hから電力を供給される全てのシステム(動力用モータM1の駆動システム及び補機用モータM2の駆動システム)が停止される。
ステップ#1において駆動回路系電源PS1の電圧低下があると判定された場合には、電源端子Vinへの入力電圧が保護動作下限電圧以上であるか否かが判定される(#4)。例えば、上述したように、制御回路系電源PS2が正常であれば、その出力電圧は、保護動作下限電圧以上である。この場合、他の異常(例えば過電流検出)がなければ(#5)、モータM(補機用モータM2)を制御するIPM2の電圧低下保護制御(シャットダウン制御)が実行される(#6)。尚、電圧低下保護制御の実行中に過電流が検出された場合、或いは、駆動回路系電源PS1の電圧低下と共に過電流が検出された場合には(#5)、CANコントローラ30を介した通信、及び異常状態信号Foutの直接入力に基づく車両ECU20の判定によって、高圧側コンタクタSHが開放される(#7)。
ところで、図4に示すように、モータ制御装置1は、さらに高圧バッテリ9Hの電源電圧を監視する電圧監視回路19(高圧直流電源監視回路)も備えることができる。電圧監視回路19は、高電圧回路領域VHに設けられている。図4及び図5に示すように、電圧監視回路19は、高圧バッテリ9Hの正極“P”と負極“N”との間を分圧する複数の抵抗器(R1,R2・・・Rz)を有して構成されている。電圧監視回路19は、正極“P”−負極“N”間電圧(Vpn)を分圧して高圧直流電源監視信号Vx(高圧直流電源監視電圧)を生成する。高圧直流電源監視信号Vxの値は、下記式(1)によって求められる。式(1)の分数部分は、分圧比に相当する。
Figure 2016092927
高圧直流電源監視信号Vxは、インピーダンス変換器及びノイズフィルタとして機能する抵抗器を介してインバータ制御装置3に入力される。高圧直流電源監視信号Vxと“制御系グラウンド”との間には高圧直流電源監視信号Vxのノイズ除去及びリップル低減のために、コンデンサが接続されている。高圧直流電源監視信号Vxは、好適には、インバータ制御装置3が備えるA/Dコンバータのアナログ信号入力端子に入力される。上記式(1)に示す分圧比は、“Vpn”が最大の際に、インバータ制御装置3の電気的仕様により規定される入力電圧の最大値(好ましくは推奨動作範囲における最大値、少なくとも絶対最大定格の値)を“Vx”が越えることがないように設定されている。より好ましくは、インバータ制御装置3が備えるA/Dコンバータのダイナミックレンジの最大値を“Vx”が越えることがないように設定されているとよい。例えば、インバータ制御装置3の動作電圧の定格値(制御回路系電源PS2の定格値)が5[V]の場合、A/Dコンバータのダイナミックレンジは、1.5〜3.5[V]や、1〜4[V]、A/Dコンバータが低飽和型の場合で0.5〜4.5[V]である。本実施形態では、“Vpn”が標準値の場合に、高圧直流電源監視信号Vxが3.5〜4[V]程度となるように、分圧比が設定されている。インバータ制御装置3は、A/Dコンバータを用いて高圧直流電源監視信号Vx(高圧直流電源監視電圧)をデジタル変換し、上記式(1)に示された分圧比を利用して正極“P”−負極“N”間電圧(Vpn)を演算する。
本実施形態では、高圧直流電源監視信号Vxが、ダイオードDxを介してIPM2の駆動回路系電源PS1(Vcc)の電源端子Vin(電源入力部)にも入力されている。ダイオードDxは、電圧監視回路19の側にアノード端子、IPM2の電源端子Vinの側にカソード端子が接続される方向で接続されている。上述したように、本実施形態において、高圧直流電源監視信号Vxは、3.5〜4[V]程度である。一方、駆動回路系電源PS1の定格値は、上述したように15[V]以上である。従って、駆動回路系電源PS1が正常に動作している際には、ダイオードDxは逆方向接続されていることとなり、高圧直流電源監視信号VxとIPM2とは遮断されている。
断線やトランスTの故障により、駆動回路系電源PS1及び制御回路系電源PS2の出力電圧が低下しても、高圧直流電源監視信号Vxを介してIPM2の電源端子Vin(電源入力部)に電力を供給することができる。例えば、高圧直流電源監視信号Vxが4[V]の場合、駆動回路系電源PS1の出力電圧及び制御回路系電源PS2の出力電圧が4[V]以下となると、ダイオードDxを介して高圧直流電源監視信号VxがIPM2の電源端子Vin(電源入力部)に入力される(ここでは簡略化のためダイオードDxの順方向の電圧降下は無視して説明している。)。駆動回路系電源PS1の出力電圧及び制御回路系電源PS2の出力電圧がさらに低下しても、高圧バッテリ9Hと高電圧回路領域VHとの接続が維持されていれば、高圧直流電源監視信号Vxは出力電圧(ここでは4[V])を維持する。従って、IPM2には、保護動作下限電圧(ここでは3〜4[V])以上の電圧が供給される。
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の説明においては、インバータ10の異常を検出する異常検出回路として、過電流を検出する過電流検出回路(シャント抵抗8)を例示した。しかし、異常検出回路は過電流検出回路に限定されるものではなく、IPM2の温度を計測する温度センサを中核とした温度検出回路であってもよい。
(2)上記説明では、インバータ制御装置3に、高圧バッテリ9Hの電源電圧(Vpn)を分圧して生成された高圧直流電源監視信号Vxが入力され、当該高圧直流電源監視信号Vxが、さらに電源端子Vinに入力される形態を例示した。しかし、図5に示すように、電圧監視回路19(高圧直流電源監視回路)が複数の抵抗器を直列接続して構成されている場合には、高圧直流電源監視信号Vxが出力される第1ノードND1(ノードND:抵抗器と抵抗器との接続部)とは異なるノードNDから出力される信号(電圧)が電源端子Vinに入力されてもよい。例えば、高圧直流電源監視信号Vxが出力される第1ノードND1よりも、正極“P”側のノードND(例えば第2ノードND2)からは、高圧直流電源監視信号Vxよりも高い電圧の信号(第2高圧直流電源監視信号Vx2)が出力可能である。第2高圧直流電源監視信号Vx2を、電源端子Vinに入力することによって、より確実に電圧低下保護制御が実行可能とすることができる。
〔本発明の実施形態の概要〕
以下、上記において説明した、本発明の実施形態における回転電機制御装置(1)の概要について簡単に説明する。
交流の回転電機(M)を駆動制御する回転電機制御装置(1)の1つの特徴的な態様は、
高圧直流電源(9H)に接続される高電圧回路領域(VH)と、前記高圧直流電源(9H)よりも低電圧で前記高圧直流電源(9H)から絶縁された低圧直流電源(9L)に接続される低電圧回路領域(VL)と、を有し、
前記高圧直流電源(9H)と前記回転電機(M)との間に介在され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータ(10)と、
前記インバータ(10)のスイッチング素子(9)をスイッチング制御するインバータ制御装置(3)と、
前記インバータ制御装置(3)により生成されて各スイッチング素子(9)を制御するスイッチング制御信号を中継する制御信号駆動回路(7)と、を前記高電圧回路領域(VH)に備え、
前記低圧直流電源(9L)を電力源とし、前記低電圧回路領域(VL)と前記高電圧回路領域(VH)とを絶縁状態で結合して前記インバータ制御装置(3)に電力を供給する制御回路系電源(PS2)と、
前記低圧直流電源(9L)を電力源とし、前記低電圧回路領域(VL)と前記高電圧回路領域(VH)とを絶縁状態で結合して前記制御信号駆動回路(7)に電力を供給する電源であって、前記制御回路系電源(PS2)よりも高い電圧を有する駆動回路系電源(PS1)と、を備え、
前記制御信号駆動回路(7)は、さらに、前記制御信号駆動回路(7)又は前記インバータ(10)に異常が生じた際には、前記インバータ(10)に対して保護動作を行うものであり、
前記保護動作は、前記制御信号駆動回路(7)に印加される電源電圧が、前記制御回路系電源(PS2)の電源電圧よりも低い電圧域である保護動作可能電圧域内の電圧である場合に実行可能であり、
前記制御回路系電源(PS2)の正極側と前記制御信号駆動回路(7)の正極側の電源入力部(Vin)とが、前記制御回路系電源(PS2)から当該電源入力部(Vin)へ向かう方向を順方向として接続された整流素子(Db)を介して接続されている点にある。
この構成によれば、駆動回路系電源(PS1)から供給される電源電圧(Vcc)が低下した場合でも、制御回路系電源(PS2)が機能していれば、保護動作が可能な電圧を電源入力部(Vin)に印加することができる。例えば、保護動作には、少なくともインバータ(10)が短絡状態とならないようにインバータ(10)を構成するスイッチング素子(9)を制御する機能が含まれる。従って、駆動回路系電源(PS1)からの電力の供給が滞っても、インバータ(10)に保護動作が適用されて安全性が向上する。制御回路系電源(PS2)は、インバータ制御装置(3)に電力を供給するために備えられており、フェールセーフのための電源として新たに設けられるものではない。また、制御回路系電源(PS2)と電源入力部(Vin)との間には整流素子(Db)が設けられるだけである。従って、フェールセーフのために回路規模が増大することは抑制されている。即ち、この構成によれば、インバータ(10)を駆動する回路への電源を喪失した場合であっても、スイッチング素子(9)の誤動作によってインバータ(1)が短絡状態となることを抑制可能なフェールセーフ機能を、回路規模の増大を抑制しつつ実現することができる。
ここで、前記インバータ制御装置(3)には、前記高圧直流電源(9H)の電源電圧を分圧して生成された高圧直流電源監視信号(Vx)が入力され、前記高圧直流電源監視信号(Vx)が、さらに、前記電源入力部(Vin)へ向かう方向を順方向として接続された整流素子(Dx)を介して前記電源入力部(Vin)に入力されていると好適である。この構成によれば、制御回路系電源(PS2)及び駆動回路系電源(PS1)の双方から制御信号駆動回路(7)への電力供給が滞るような異常が生じた場合でも、高圧直流電源(9H)が正常であれば、保護動作が可能な電圧を電源入力部(Vin)に印加することができる。即ち、さらに、フェールセーフ機能を整えることが可能となる。高圧直流電源監視信号(Vx)は、分圧回路によって生成されるので、その回路規模は小さい。また、高圧直流電源(9H)電圧監視のために、分圧回路が既に設けられている場合には、当該分圧回路から電源入力部(Vin)への配線を追加するだけで本構成を実現することができる。従って、回路規模の増大を抑制しつつフェールセーフ機能を充実させることができる。
また、回転電機制御装置(1)は、1つの態様として、前記回転電機(M)が、車両に搭載された補機(A)を駆動する少なくとも1つの補機駆動用回転電機(M2)であり、前記高圧直流電源(9H)には、前記車両の車輪駆動用回転電機(M1)及び前記補機駆動用回転電機(M2)が、開閉装置(SH)を介して接続され、前記開閉装置(SH)は、開状態において電力の供給を遮断するものであり、前記電源入力部(Vin)の電圧が前記保護動作可能電圧域の下限値以上の場合には、前記開閉装置(SH)が閉状態に制御され、前記電源入力部(Vin)の電圧が前記保護動作可能電圧域の下限値未満の場合には、前記開閉装置(SH)が開状態に制御されると好適である。
高圧直流電源(9H)からの電力供給を遮断することは、回転電機(M)及びその周辺装置に対する安全対策としては有効な手段である。しかし、複数の回転電機(M1,M2)が、高圧直流電源(9H)から電力の供給を受けて動作する場合、問題の無い回転電機(例えば“M1”)は通常動作を継続できることが好ましい。即ち、異常が生じた回転電機(例えば“M2”)及びその周辺装置の安全性が、当該回転電機(M2)に対する保護動作によって確保されるのであれば、同じ高圧直流電源(9H)から電力供給を受ける他の回転電機(M1)の動作を継続させることが好ましい。上記構成によれば、電源入力部(Vin)の電圧が保護動作可能電圧域の下限値以上の場合には、保護動作が可能であるから、開閉装置(SH)が閉状態に維持される。その結果、高圧直流電源(9H)からの電力供給も継続され、異常が生じている回転電機(M2)及びその周辺装置いは保護動作によって安全性を確保されると共に、他の回転電機(M1)は通常動作を継続することができる。一方、電源入力部(Vin)の電圧が前記保護動作可能電圧域の下限値未満の場合には、保護動作もできなくなるから、開閉装置(SH)が開状態に制御され、安全性が確保される。
補機(A)を駆動する補機駆動用回転電機(M2)は、例えば電動オイルポンプや、パワーステアリング、エアーコンディショナーなどにおいて用いられる。電源入力部(Vin)の電圧が保護動作可能電圧域の下限値以上の場合には、補機駆動用回転電機(M2)が保護動作によって停止状態となっても、車輪駆動用回転電機(M1)は、通常動作を継続することができる。換言すれば、補機駆動用回転電機(M2)に関して制御回路系電源(PS2)が機能を維持していれば、駆動回路系電源(PS1)の機能を喪失しても、開閉装置(SH)が閉状態に制御されて、少なくとも車輪駆動用回転電機(M1)の動作を継続することができる。つまり、車両の走行を妨げることなく、走行安全性も確保することができる。一方、補機駆動用回転電機(M2)に関して、駆動回路系電源(PS1)及び制御回路系電源(PS2)の双方の機能を喪失した場合には、開閉装置(SH)が開状態に制御されて安全性が確保される。
本発明は、交流の回転電機を駆動制御する回転電機制御装置に利用することができる。
1 :モータ制御装置(回転電機制御装置)
3 :インバータ制御装置
4 :駆動回路(制御信号駆動回路)
6 :異常診断回路(制御信号駆動回路)
7 :制御信号駆動回路
9 :スイッチング素子
9H :高圧バッテリ(高圧直流電源)
9L :低圧バッテリ(低圧直流電源)
9a :上段側スイッチング素子(スイッチング素子)
9b :下段側スイッチング素子(スイッチング素子)
10 :インバータ
A :補機
Db :ダイオード(整流素子)
Dx :ダイオード(整流素子)
M :モータ(回転電機)
M1 :動力用モータ(車輪駆動用回転電機)
M2 :補機用モータ(補機駆動用回転電機)
PS1 :駆動回路系電源
PS2 :制御回路系電源
SH :高圧側コンタクタ(開閉装置)
VH :高電圧回路領域
VL :低電圧回路領域
Vin :電源端子(電源入力部)
Vx :高圧直流電源監視信号
W :車輪

Claims (3)

  1. 交流の回転電機を駆動制御する回転電機制御装置であって、
    高圧直流電源に接続される高電圧回路領域と、前記高圧直流電源よりも低電圧で前記高圧直流電源から絶縁された低圧直流電源に接続される低電圧回路領域と、を有し、
    前記高圧直流電源と前記回転電機との間に介在され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータと、
    前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御するインバータ制御装置と、
    前記インバータ制御装置により生成されて各スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号を中継する制御信号駆動回路と、を前記高電圧回路領域に備え、
    前記低圧直流電源を電力源とし、前記低電圧回路領域と前記高電圧回路領域とを絶縁状態で結合して前記インバータ制御装置に電力を供給する制御回路系電源と、
    前記低圧直流電源を電力源とし、前記低電圧回路領域と前記高電圧回路領域とを絶縁状態で結合して前記制御信号駆動回路に電力を供給する電源であって、前記制御回路系電源よりも高い電圧を有する駆動回路系電源と、を備え、
    前記制御信号駆動回路は、さらに、前記制御信号駆動回路又は前記インバータに異常が生じた際には、前記インバータに対して保護動作を行うものであり、
    前記保護動作は、前記制御信号駆動回路に印加される電源電圧が、前記制御回路系電源の電源電圧よりも低い電圧域である保護動作可能電圧域内の電圧である場合に実行可能であり、
    前記制御回路系電源の正極側と前記制御信号駆動回路の正極側の電源入力部とが、前記制御回路系電源から当該電源入力部へ向かう方向を順方向として接続された整流素子を介して接続されている回転電機制御装置。
  2. 前記インバータ制御装置には、前記高圧直流電源の電源電圧を分圧して生成された高圧直流電源監視信号が入力され、
    前記高圧直流電源監視信号は、さらに、前記電源入力部へ向かう方向を順方向として接続された整流素子を介して前記電源入力部に入力されている請求項1に記載の回転電機制御装置。
  3. 前記回転電機は、車両に搭載された補機を駆動する少なくとも1つの補機駆動用回転電機であり、
    前記高圧直流電源には、前記車両の車輪駆動用回転電機及び前記補機駆動用回転電機が、開閉装置を介して接続され、
    前記開閉装置は、開状態において電力の供給を遮断するものであり、
    前記電源入力部の電圧が前記保護動作可能電圧域の下限値以上の場合には、前記開閉装置が閉状態に制御され、
    前記電源入力部の電圧が前記保護動作可能電圧域の下限値未満の場合には、前記開閉装置が開状態に制御される請求項1又は2に記載の回転電機制御装置。
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