JP2016091907A - 非水電解液及びこれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】通常電圧下はもとより、高電圧下での使用においても、寿命特性、負荷特性等の電池特性の劣化が生じ難いリチウムイオン二次電池に用いられる電解液及びリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水電解液は、下記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物と、
(NC)a−R1−SO2−O−R2−(CN)b (1)
(一般式(1)中、R1、R12は同一又は異なって、1価以上の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、a、bは0又は1であって、a+bは1又は2である。)
不飽和結合を有する環状カーボネートを含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、スルホニル基を有するニトリル化合物と不飽和結合を有する環状カーボネートを含有する非水電解液、及びこれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度を有するため、近年、移動体通信機器用電源、携帯用情報端末用電源等として使用されている。また、これらの端末の普及とともにその市場が急速に拡大しており、安全性の確保、サイクル特性の向上、高温保存特性などの改善を目的とした様々な研究がなされている。
本出願人は、従来から、リチウムイオン二次電池の性能向上を図ってきた。例えば、特許文献1では、不飽和結合を有する環状カーボネートを電解液に添加すると、放電容量の劣化および内部抵抗の上昇が抑えられることを見出し、サイクル特性が向上した電池を提供することに成功している。しかしながら、その後も検討を続けた結果、不飽和結合を有する環状カーボネートを用いると、初期容量が低くなってしまうという問題が明らかになってきた。
特開2013−125696号公報
リチウムイオン二次電池の特性改善を目的とする技術は、特許文献1以外にも提案されているが、リチウムイオン二次電池の携帯型電子機器の電源や、自動車用電源、家庭用、産業用蓄電装置への適用が一層進む今日では、更なる特性の改善が求められている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、通常電圧下はもとより、高電圧下での使用においても、寿命特性、負荷特性等の電池特性の劣化が生じ難いリチウムイオン二次電池に用いられる電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の非水電解液とは、下記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物と、
(NC)a−R1−SO2−O−R2−(CN)b (1)
(一般式(1)中、R1、R2は同一又は異なって、1価以上の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、a、bは0又は1であって、a+bは1又は2である。)
不飽和結合を有する環状カーボネートを含むところに要旨を有する。
上記非水電解液は、少なくとも1種の電解質塩を含むことが好ましく、電解質塩として、下記一般式(2)で表されるリチウム(フルオロスルホニル)イミドを含むことが好ましい。

(式(2)中、Mはリチウムイオン、Xはフッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す。)
上記電解質塩は、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物および六フッ化砒酸リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦2) (4)
LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦2) (5)
上記環状カーボネートは、ビニレンカーボネートであることが好ましい。
本発明には、上記非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池も包含される。
上記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物と不飽和結合を有する環状カーボネートとを含む本発明の電解液によれば、これを備えたリチウムイオン二次電池の、特に、寿命特性や負荷特性が改善され、通常電圧下での性能向上はもとより、高電圧下での使用による電池性能の劣化を抑制できる。
本発明の特徴は、電解液が、上記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物と、不飽和結合を有する環状カーボネートとを含むところにある。
電解液に上記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物(以下「スルホニル基含有ニトリル化合物(1)」と称する場合がある)が含まれている場合に、リチウムイオン二次電池の電池特性の劣化が抑制される明確な理由は判明していないが、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)には、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)が電極表面に吸着することにより、不可逆容量の原因となる電極上の活性サイトを失活させる効果;リチウムイオン二次電池稼働時のスルホニル基含有ニトリル化合物(1)の反応により、電極表面に被膜を形成することで、電解質と被膜界面および電極との親和性を高める効果;リチウムイオン配位能に優れるスルホニル基含有ニトリル化合物(1)が電極表面上に存在することにより、リチウムイオン二次電池の電極や電解液の分解等を抑制する効果;等があると考えられ、本発明者等は、これらの相乗効果により、電池特性の経時的な劣化が抑制されるものと考えている。また、本発明に係るスルホニル基含有ニトリル化合物はスルホニル基を有するため、4.3V以上の高電圧下での使用においても電池特性の劣化が抑制できるものと考えられる。なお、本発明に係るスルホニル基含有ニトリル化合物(1)に由来する効果は、上記例示の効果に限られるものではない。
また、不飽和結合を有する環状カーボネートは、サイクル特性を向上させる効果を有するため、この効果と上記スルホニル基含有ニトリル化合物(1)に由来する効果が相俟って、電池特性の経時的な劣化が一層抑制されたものと考えられる。
まず、本発明に係るスルホニル基含有ニトリル化合物(1)について説明する。
1.スルホニル基含有ニトリル化合物(1)
本発明に係るスルホニル基含有ニトリル化合物(1)は、上記一般式(1)により表される化合物であり、すなわち、その分子構造中に−SO2−O−を1個と、炭化水素基R1及び/又はR2に結合したシアノ基を1又は2個有する。
脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、また、これらを構成する炭素に結合する一部又は全ての水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)で置換されていてもよい。置換基としてはカルボキシ基、シアノ基、N置換アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノアルキル基、シアノアルコキシ基、シアノアルキルスルホニル基、アルキルスルホニル基等が挙げられる。より好ましくはR1、R2は炭素数1〜10の飽和炭化水素基又はハロゲン化飽和炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又はハロゲン化芳香族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1価の脂肪族炭化水素基又はフルオロ化脂肪族炭化水素基、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の2価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、(2−トリフルオロメチル)フェニル基、(3−トリフルオロメチル)フェニル基、(4−トリフルオロメチル)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基又はフルオロ化芳香族炭化水素基、フェニレン基、(トリフルオロメチル)フェニレン基、ジ(トリフルオロメチル)フェニレン基、フルオロフェニレン、ジフルオロフェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基又はフルオロ化芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。下記一般式(3)で表される化合物は、一般式(1)においてaが0であり、R2がフェニレン基である場合に相当する。
一般式(3)中、R20は、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を表し、dは1以上の整数であり、c+dは5以下の整数である。
上記R20としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロクロロメチル基、フルオロジクロロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、フルオロクロロエチル基、クロロエチル基、フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、フルオロクロロプロピル基、パーフルオロブチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基等のアリール基;フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、パークロロフェニル基等のハロゲン化アリール基が挙げられる。
一般式(3)において、酸化分解電位が適切な値となり、電解液中で適度に分解して電極上に被膜を形成するためには、スルホニル基含有ニトリル化合物中には芳香環が1つ含まれる構造が好ましく、R20はアルキル基又はハロゲン化アルキル基であることが好ましい。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基がより好ましい。特に、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
フェニレン基に置換する置換基Xは、ハロゲン原子又は炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を表し、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xで表される炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロクロロメチル基、フルオロジクロロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、フルオロクロロエチル基、クロロエチル基、フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、フルオロクロロプロピル基等が挙げられる。置換基Xには、フッ素原子が含まれることが好ましい。従って、置換基Xとしては、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましい。より好ましくはフッ素原子である。cはフェニレン基に結合する置換基Xの個数であり、0又は1又は4であるのが好ましい。電解液中で適度に分解して電極上に皮膜形成する最適な酸化分解電位を取るという観点からは、cは0又は1であることが好ましく、より好ましくは0である。dはフェニレン基に結合したシアノ基の個数を示し、1であることが好ましい。
上記一般式(3)で表される化合物においては、フェニレン基に結合したシアノ基は、スルホニルオキシ基に対して、結合位置はo−、m−、p−位のいずれの位置であってもよいが、p−位に結合しているものが好ましい。電解液や電極としての性能の点からは、一般式(3)中のR20が、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、cが0、dが1である化合物群である。
具体的なスルホニル基含有ニトリル化合物(1)としては、下記式(1−14)〜(1−17)、(1−36)〜(1−80)で表される化合物が挙げられる。なお、本発明に係るスルホニル基含有ニトリル化合物(1)はこれらに限定されるわけではない。
上記例示の化合物の中でも、(1−14)、(1−17)、(1−38)、(1−45)、(1−52)、(1−61)が好ましく、(1−17)、(1−45)、(1−52)が特に好ましい。リチウムイオン二次電池のサイクル特性をより向上させるための被膜形成の観点からは、分子内に1つの芳香環と1つのCN基を有する化合物は、酸化電位が下がり、正極での適度な酸化分解が引き起こされ被膜を形成できるため、より一層、電池性能を向上させることが期待できることから、スルホニルオキシ基、あるいはスルホニルオキシ基と芳香族炭化水素基を有する化合物がスルホニル基含有ニトリル化合物(1)として好適である。なお、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
リチウムイオン二次電池の安全性を確保する観点からは、沸点の高いスルホニル基含有ニトリル化合物(1)を用いることが推奨される。例えば、沸点が120℃以上のスルホニル基含有ニトリル化合物を用いるのが好ましく、より好ましくは沸点が150℃以上の化合物であり、さらに好ましくは沸点が200℃以上の化合物である。沸点の上限は特に限定されないが300℃程度であるのが好ましい。
また、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)としては、分子量が140以上のものを使用するのが好ましい。スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の分子量は150〜500であるのがより好ましく、さらに好ましくは170〜400である。分子量が大きすぎると、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)を含む電解液の粘度が高くなり、所期の伝導度が得られ難くなる虞や、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の粘性によりリチウムイオン二次電池の製造が困難になる虞がある。一方、分子量が低すぎると臭気の問題が生じる虞があり、さらにリチウムイオン二次電池の安全性を確保する観点からも好ましくない。なお、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の分子量は質量分析計等により測定できるが、製造業者の公称値を参照してもよい。
スルホニル基含有ニトリル化合物(1)は市販のものを使用してもよく、又は公知の方法で合成したものを用いてもよい。スルホニル基にOが直接結合した構造(スルホニルオキシ基)を有するスルホニル基含有ニトリル化合物(1)を得たい場合には、スルホン酸やスルホニルクロライドなどのスルホン酸誘導体とシアノ基を有するアルコールとを反応させればよい。
スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の配合量は、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)と不飽和結合を有する環状カーボネートを配合する前の電解液100質量部(電解質、媒体(不飽和結合を有する環状カーボネートを除く)および必要に応じて添加される添加剤の合計)に対して0.01質量部以上、5質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは0.02質量部以上、3質量部以下であり、さらに好ましくは0.05質量部以上、2質量部以下である。スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の配合量が少なすぎると電極の劣化や電解液の分解を抑制する効果が得られ難くなる虞があり、一方、多量に使用しても使用量に比例する効果は得られ難く、また、電解液の粘度が上昇し、所期の伝導度が得られ難くなる虞がある。
2.不飽和結合を有する環状カーボネート
本発明の電解液には、不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある)が含まれる。サイクル特性の向上に寄与するためである。また、不飽和環状カーボネートは溶媒としても機能する。不飽和環状カーボネートとしては、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビニレンカーボネート類、カテコールカーボネート類、芳香環または炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換された環状カーボネート類、フッ素原子を有するビニレンカーボネートなどのフッ素原子を有する不飽和環状カーボネート類などが挙げられる。また、これらの不飽和環状カーボネートは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、本発明では、芳香環を有する環状カーボネートも不飽和環状カーボネートに包含される。
上記ビニレンカーボネート類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネートなどが挙げられる。
上記芳香環または炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換された環状カーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネートなどが挙げられる。
上記フッ素原子を有する不飽和環状カーボネート類の具体例としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネートなどが挙げられる。
中でも、安定な界面保護被膜を形成できる点から、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
上記不飽和環状カーボネートの分子量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、50以上が好ましく、80以上がより好ましく、250以下が好ましく、150以下がより好ましい。この範囲であれば、非水電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性が確保されやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
上記不飽和環状カーボネートの配合量は特に制限されないが、スルホニル基含有化合物(1)と不飽和環状カーボネートを配合する前の非水電解液100質量部(電解質、溶媒(不飽和結合を有する環状カーボネートを除く)、必要に応じて添加される添加剤の合計)に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この範囲であれば、高温保存特性が低下することなく、良好なサイクル特性を有する電池が得られやすい。
3.リチウム(フルオロスルホニル)イミド
本発明の非水電解液には、下記一般式(2)で示されるリチウム(フルオロスルホニル)イミドが電解質塩として含まれることが好ましい。

(式(2)中、Mはリチウムイオン、Xはフッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す。)
Xはフッ素又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基である。Xがフッ素であれば、上記式(2)はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを示し、Xがフルオロアルキル基であれば、リチウム[N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド]となる(以下、両方合わせてLiFSIと称する場合がある)。また、「フルオロアルキル」とは、炭素数1〜6のアルキル基において、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものを意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が含まれる。これらの中でも、Xとしては、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
本発明では、LiFSIは電解質としての機能と、後述する電解質塩と併用する場合はこれらの電解質塩の分解抑制剤としての機能を発揮させるために用いる。
4.電解質塩
本発明の電解液は、LiFSIに代えて、あるいはLiFSIに加えて、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物及び六フッ化砒酸リチウム(LiAsF6)よりなる群から選択される少なくとも1種の電解質塩を含むものであってもよい。これらのリチウム塩は、正極集電体の腐食を抑制する作用に優れている。
LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦2) (4)
LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦2) (5)
一般式(4)で表される化合物(以下、電解質塩(4)と称する場合がある)としては、LiPF6、LiPF3(CF33、LiPF3(C253、LiPF3(C373、LiPF3(C493等が好ましいものとして挙げられる。より好ましくはLiPF6、LiPF3(C253であり、さらに好ましくはLiPF6である。
一般式(5)で表される化合物(以下、電解質塩(5)と称する場合がある)としては、LiBF4、LiBF(CF33、LiBF(C253、LiBF(C373等が好ましいものとして挙げられ、LiBF4、LiBF(CF33がより好ましく、LiBF4がさらに好ましい。
電解質塩(4)、電解質塩(5)及び/又はLiAsF6は、上記例示の化合物を1種単独で、又は2種以上を、上記LiFSIと組み合わせて使用することが好ましく、好ましい電解質塩としては、LiPF6、LiPF3(C253、LiBF(CF33であり、より好ましくはLiPF6、LiPF3(C253であり、さらに好ましくは、LiPF6である。特に、イオン電導度の点からはLiPF6が好ましい。
電解液中の電解質(LiFSI及び/又は上記電解質塩)の合計濃度(電解質塩を用いない場合も含む)は、0.5mol/L以上、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは0.7mol/L以上、2.0mol/L以下であり、さらに好ましくは0.9mol/L以上、1.8mol/L以下である。電解質の量が少なすぎると所望の伝導度が得られ難い場合があり、一方、多すぎると、イオンの移動が阻害される虞がある。また、LiFSIと上記電解質塩を併用する場合、LiFSIが多すぎると、正極集電体の腐食が生じる虞があり、上記電解質塩が多すぎると、粘度の上昇によってイオン伝導度が減少する虞がある。従って、LiFSIと上記電解質塩を併用する場合のLiFSIと上記電解質塩の比率は、1:100〜5:1(LiFSI:上記電解質塩の合計、モル比)となる範囲内で使用するのが好ましい。より好ましくは1:10〜3:1であり、さらに好ましくは1:2〜2:1である。
5.本発明の電解液
本発明の電解液は、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)と、不飽和環状カーボネートと、必要に応じて用いられるLiFSI及び/又は上記電解質塩を含む。
スルホニル基含有ニトリル化合物(1)及び不飽和環状カーボネートを電解質や溶媒など他の電解液構成成分と混合することで、又は、予め調製された電解液にスルホニル基含有ニトリル化合物及び不飽和環状カーボネートを添加することで、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)及び不飽和環状カーボネートを含有する本発明の電解液が得られる。
6.溶媒
溶媒としては、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)、LiFSI、電解質塩を溶解できるものであれば特に限定されず、非水系溶媒、ポリマー、ポリマーゲル等、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスに用いられる従来公知の溶媒はいずれも使用できる。
非水系溶媒としては、誘電率が大きく、スルホニル基含有ニトリル化合物(1)の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒である。このような有機溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン等の環状炭酸エステル類;フルオロエチレンカーボネート、trans−ジフルオロエチレンカーボネート、cis−ジフルオロエチレンカーボネート等のフッ素化環状炭酸エステル;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;リン酸トリフルオロエチルジメチル、リン酸ビス(トリフルオロエチル)メチル、リン酸トリス(トリフルオロエチル)、リン酸ペンタフルオロプロピルジメチル、リン酸トリフルオロエチルメチルエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルエチル、リン酸トリフルオロエチルメチルプロピル等のハロゲン化リン酸エステル類;モノホスファゼン、環状ホスファゼン、鎖状ホスファゼン等のホスファゼン化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
これらの中でも、鎖状炭酸エステル類、環状炭酸エステル類(不飽和環状カーボネートを除く)、脂肪族カルボン酸エステル類、ラクトン類、エーテル類が好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等がより好ましい。上記非水系溶媒は1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリマーゲルを溶媒として用いる場合は次の方法を採用すればよい。すなわち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、上述の非水系溶媒に電解質やスルホニル基含有ニトリル化合物(1)等を溶解させた溶液を滴下して、電解質等並びに非水系溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマー、電解質及びスルホニル基含有ニトリル化合物(1)等を溶融、混合した後、成膜し、ここに非水系溶媒を含浸させる方法;予め電解質及びスルホニル基含有ニトリル化合物(1)等を非水系溶媒に溶解させた電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法(以上、ゲル電解質);ポリマーの融点以上の温度でポリマー、電解質及びスルホニル基含有ニトリル化合物(1)等を溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質);等が挙げられる。
ゲル電解質に用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及び、これらの共重合体等が挙げられる。
7.添加剤
本発明に係る電解液は、リチウムイオン二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩などのリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物等が挙げられる。
上記添加剤は、本発明の電解液中の濃度が0.1質量%〜10質量%となる範囲で用いるのが好ましい(より好ましくは0.2質量%〜8質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%)。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、電解液の粘度が高くなり伝導率が低下する虞がある。
8.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池とは、正極と、負極と、電解液とを有するものであり、より詳細には、上記正極と負極との間にセパレータが設けられており、且つ、電解液は、上記セパレータに含浸された状態で、正極、負極等と共に外装ケースに収容されている。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、リチウムイオン二次電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
8−1.正極
正極は、正極活物質、導電助剤、結着剤及び分散用溶媒等を含む正極活物質組成物が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
正極の製造方法としては、例えば、正極集電体に正極活物質組成物をドクターブレード法等で塗工したり、浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
8−1−1.正極集電体
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS(ステンレス鋼)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、アルミニウムは、薄膜に加工し易く、安価であるため好ましい。
8−1−2.正極活物質
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出可能であればよく、リチウム二次電池で使用される従来公知の正極活物質が用いられる。
具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiNi1-x-yCoxMny2やLiNi1-x-yCoxAly2(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、LiAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi2MnO3と、電気化学的に活性な層状のLiMO[M=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、又は、複数を組み合わせて使用してもよい。
8−1−3.導電助剤
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられる。
8−1−4.結着剤
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられる。結着剤は1種を単独で使用してもよく、複数種を混合して使用してもよい。また、結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
導電助剤及び結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視等)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
正極の製造に際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
8−2.負極
負極は、負極活物質、分散用溶媒、結着剤及び必要に応じて用いられる導電助剤等を含む負極活物質組成物が負極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
8−2−1.負極集電体
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。なお、薄膜への加工が容易である観点からは、銅が好ましい。
8−2−2.負極活物質
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、リチウムイオンを吸蔵、放出可能なものであればよい。具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭・石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金、チタン酸リチウムなどのチタン系化合物などを用いることができる。
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
8−3.セパレータ
セパレータは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。セパレータには、特に制限がなく、本発明では、従来公知のセパレータはいずれも使用することができる。具体的なセパレータとしては、例えば、非水電解液を吸収及び保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータやセルロース系セパレータ等)、不織布セパレータ、多孔質金属体等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を有するため好適である。
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体等が挙げられる。
上記不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、非水電解液層に要求される機械強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、又は、混合して用いることができる。
8−4.電池外装材
正極、負極、セパレータ及び電解液等を備えた電池素子は、リチウムイオン二次電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。本発明では、電池外装材の素材は特に限定されず従来公知の外装材はいずれも使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例A
1.スルホニル基含有ニトリル化合物の合成
合成例1 スルホニル基含有ニトリル化合物(1−52)の合成
乾燥空気下で、攪拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に4−ヒドロキシベンゾニトリル(30mmol、3.57g)と塩化メチレン(50mL)を加えた後、さらにトリエチルアミン(31.5mmol、4.4mL)を加え撹拌した。混合溶液を0℃まで冷却した後、エタンスルホニルクロリド(31.5mmol、3.0mL)を滴下して加え、滴下終了後、混合溶液を室温まで昇温させた。
室温にて8時間撹拌した後、水(30mL)を加えて反応を終了させ、水層を分液抽出した。その後トルエンによる再結晶により精製を行い、目的物を得た(白色固体、収量5.366g、収率85%)。
1H−NMR(CDCl3) δ:7.73(d,J=8.4Hz,2H)、7.41(d,J=8.4Hz,2H)、3.35(q,J=7.2Hz,2H)、1.56(t,J=7.2Hz,3H)
合成例2 スルホニル基含有ニトリル化合物(1−38)の合成
乾燥空気下で、丸底フラスコに4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾニトリル(15mmol、2.87g)と塩化メチレン(25mL)を加えた後、さらにトリエチルアミン(31.5mmol、4.4mL)を加え撹拌した。混合溶液を0℃に冷却した後、メタンスルホニルクロリド(31.5mmol、2.4mL)を滴下して加え、滴下終了後、反応溶液を室温まで昇温させた。
室温にて8時間撹拌した後、水(30mL)を加えて反応を終了させ、水層を分液抽出した。その後カラムクロマトグラフィーにより精製を行い(シリカゲルカラム、展開溶媒[体積比]n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、目的物を得た(黄色透明液体、収量2.08g、収率52%)。
1H−NMR(CDCl3) δ:3.44(s,3H)
19F−NMR(CDCl3) δ:−131.68(m,2F)、−148.83(m,2F)
2.非水電解液の調製
電解質として、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、キシダ化学株式会社製、LBGグレード)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(日本触媒社製、以下LiFSI−2とする)を、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)(いずれもキシダ化学株式会社製、LBGグレード)を3/7(EC/EMC)の体積比で混合した溶媒中に、それぞれの濃度が0.6M/L(mol/Lの意味、以下同じ)となるように溶解させて非水電解液No.1を調製した。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し、ビニレンカーボネート(VC、キシダ化学社製、LBGグレード)が1質量部となるように添加し、非水電解液No.2を得た。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し、上記式(1−52)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、スルホニル基含有ニトリル化合物を添加し、非水電解液No.3を得た。
また、非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し上記式(1−52)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、そしてVCも1質量部となるように添加し、非水電解液No.4を得た。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し、上記式(1−45)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、スルホニル基含有ニトリル化合物を添加し、非水電解液No.5を得た。
また、非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し上記式(1−45)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、そしてVCも1質量部となるように添加し、非水電解液No.6を得た。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し、上記式(1−38)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、スルホニル基含有ニトリル化合物を添加し、非水電解液No.7を得た。
また、非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し上記式(1−38)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、そしてVCも1質量部となるように添加し、非水電解液No.8を得た。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し、上記式(1−14)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、スルホニル基含有ニトリル化合物を添加し、非水電解液No.9を得た。
また、非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し上記式(1−14)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、そしてVCも1質量部となるように添加し、非水電解液No.10を得た。
非水電解液No.1から一部を取り出し、非水電解液No.1の100質量部に対し上記式(1−17)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物が1質量部となるように、そしてVCも1質量部となるように添加し、非水電解液No.11を得た。上記式(1−61)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物を用いた以外はNo.11と同様にして、非水電解液No.12を得た。
なお、上記式(1−45)、上記式(1−14)、上記式(1−17)、上記式(1−61)で表される各スルホニル基含有ニトリル化合物は、本明細書に記載の方法で合成した。
3.コイン型リチウムイオン二次電池の作製
正極として、活物質層の面積がφ12mmである正極電極シート(活物質:コバルト酸リチウム、2.8mAh/cm2)と、負極として、面積がφ14mmである黒鉛負極シート(活物質:人造黒鉛、3.0mAh/cm2)を用いた。
宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品を用いて、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極、ポリエチレン製セパレータをこの順で重ねた後、70μLの非水電解液No.1〜No.12をセパレータに含浸させた。
次いで、正極活物質層面が負極活物質層面と対向するように正極を設置し、さらにその上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコイン型リチウムイオン二次電池No.1〜No.12を作製した。
上記コイン型リチウムイオン二次電池No.1〜No.12について、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、2.75〜4.4Vの条件にて5回充放電を行って、コイン型リチウムイオン二次電池No.1〜No.12を完成させた。
上記コイン型ラミネート型リチウムイオン二次電池No.1〜12について、充電速度1.0Cでの4.4V定電流定電圧充電を電流量が0.02Cまで行い、放電速度1Cで電圧が2.75Vになるまで放電を行うことで得られた値を放電容量(A)とした。その後、各コイン型リチウムイオン二次電池について、前述と同条件の充放電を繰り返し行い、300サイクル経過時の放電容量を放電容量(B)とした。得られた放電容量(A)、放電容量(B)の値に基づいて、以下の式により容量維持率を算出した。
容量維持率=100×放電容量(B)/放電容量(A)
その結果を表1に示す。スルホニル基含有ニトリル化合物を表す式の番号も併記した。
表1から、電解液にスルホニル基含有ニトリル化合物とビニレンカーボネート(VC)の両方が配合されている電池No.4,6,8,10は、両方とも配合されていない電池No.1やVCのみが配合された電池No.2に比べて、優れた300サイクル特性を示すことがわかる。また、同じスルホニル基含有ニトリル化合物を配合した場合、VCを配合してない電池No.3,5,7,9に比べると、電池No.4,6,8,10の300サイクル特性は有意に優れており、VCの添加効果が確認できた。
実験例B
上記で作製したコイン型リチウムイオン二次電池No.1,2,4,6,8,10,11,12について、上記充放電試験装置を用いて、3.0〜4.2Vの条件にて5回充放電を行って、コイン型リチウムイオン二次電池を完成させた。
1.負荷特性
コイン型リチウムイオン二次電池No.1,2,4,6,8,10,11,12について、上記充放電試験装置を用いて、25℃にて充電速度0.5Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量が0.02Cになるまで行い、放電速度0.2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行うことで得られた値を放電容量(C)とした。次に、充電速度0.2Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行い、放電速度2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行うことで得られた値を放電容量(D)とした。得られた放電容量(C)、放電容量(D)の値に基づいて、以下の式により容量維持率を算出した。
容量維持率=100×放電容量(D)/放電容量(C)
その結果を表2に示す。
2.寿命特性
負荷特性を測定した後のコイン型リチウムイオン二次電池No.1,2,4,6,8,11について、放電速度0.2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行い、残存容量を掃き出した。その後、25℃にて、充電速度0.5Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行い、放電速度0.5Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行うことで得られた値を放電容量(E)とした。その後、各コイン型リチウムイオン二次電池について、前述と同条件の充放電を繰り返し行い、100サイクル経過時の放電容量を放電容量(F)とした。得られた放電容量(E)、放電容量(F)の値に基づいて以下の式により容量維持率を算出した。その結果を表2に示す。
容量維持率=100×放電容量(F)/放電容量(E)
以上の通り、上記一般式(1)で表されるスルホニル基含有ニトリル化合物と、不飽和結合を有する環状カーボネートを非水電解液に使用することにより、特性低下の生じ難いリチウムイオン二次電池を提供できた。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表されるスルホニル基を有するニトリル化合物と、
    (NC)a−R1−SO2−O−R2−(CN)b (1)
    (一般式(1)中、R1、R2は同一又は異なって、1価以上の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、a、bは0又は1であって、a+bは1又は2である。)
    不飽和結合を有する環状カーボネートを含むことを特徴とする非水電解液。
  2. 上記非水電解液が、少なくとも1種の電解質塩を含む請求項1に記載の非水電解液。
  3. 上記電解質塩が、下記一般式(2)で表されるリチウム(フルオロスルホニル)イミドを含む請求項2に記載の非水電解液。

    (式(2)中、Mはリチウムイオン、Xはフッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を表す。)
  4. 上記電解質塩が、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物および六フッ化砒酸リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2又は3に記載の非水電解液。
    LiPFl(Cm2m+16-l(0≦l≦6、1≦m≦2) (4)
    LiBFn(Co2o+14-n(0≦n≦4、1≦o≦2) (5)
  5. 上記環状カーボネートが、ビニレンカーボネートである請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解液。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池。
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