JP2016089339A - Pcまくらぎ劣化判定システム、pcまくらぎ劣化判定方法およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】PCまくらぎ劣化判定システムが、PCまくらぎへの加振により生じる音を取得するマイクと、前記マイクが取得した音に基づいて、前記PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出部と、前記固有振動数検出部が検出した前記たわみ3次モードの固有振動数が所定条件よりも低周波であると判定すると、前記PCまくらぎが劣化していると判定する劣化判定部と、を具備する。
【選択図】図2
Description
このような引張力によるひび割れに対する対策として、PC(Prestressed Concrete、プレストレストコンクリート)まくらぎが多く用いられている。PCまくらぎは、コンクリート中に鋼材(鋼線または鋼棒)が埋め込まれて構成されており、鋼材によってコンクリートに圧縮力が導入されている。
特に、バラスト軌道に敷設されたPCまくらぎの場合、列車通過時の動的な負荷によりPCまくらぎとバラスト粒子との間に相対運動が発生する。PCまくらぎに対するバラスト粒子のすべり、転がりおよび衝突作用により、PCまくらぎの底面が摩耗する。
なお、非特許文献1では、PCまくらぎの損傷状況の調査結果が示され、まくらぎの補修や機能向上についての検討が行われている。
さらに、バラストに埋まっていない上面のひび割れについても、粉塵による目詰まりや汚れ、また、荷重積載時にしかひび割れが開かないといった理由から、上面のひび割れを目視で確認することは容易でない。バラストをかき出した場合のPCまくらぎ底面の目視確認についても同様である。
図1は、本発明の一実施形態におけるPCまくらぎ劣化判定システムの外形の例を示す概略外形図である。同図において、PCまくらぎ劣化判定システム1は、本体装置10と、ストラップ11と、ハンマ210とを具備する。本体装置10は、収録診断器100と、マイク220とを具備する。ハンマ210と収録診断器100とは、BNC同軸ケーブルなどの信号線で接続されている。
ハンマ210として、200ヘルツ(Hz)以上を安定して励起可能な振動試験用インパルスハンマを用いることが好ましいが、これに限らず、PCまくらぎの3次モードの固有振動を励起可能な様々なハンマを用いることができる。例えば、ハンマ210として、コンクリート構造物用の点検ハンマを用いるようにしてもよい。なお、3次モードを用いる理由については後述する。
マイク220は、周囲音を取得する。特に、マイク220は、ハンマ210がPCまくらぎへ加振することにより生じる音を取得する。マイク220は、取得した音を音声データにて収録診断器100へ送信する。
なお、収録診断器100が、PCまくらぎの劣化の有無に代えて、あるいは加えて、PCまくらぎの劣化の程度を判定するようにしてもよい。
収録診断器100は、例えば携帯型のコンピュータを用いて構成される。収録診断器100が携帯可能に構成されることで、線路の保守点検作業員が、現場で収録診断器100を用いて容易にまくらぎの点検を行うことができる。
但し、マイク220の位置は、保守点検作業員の首から吊下げられた位置に限らず、例えばPCまくらぎから1メートル(m)以内など、ハンマ210がPCまくらぎへ加振することにより生じる音を取得可能な位置であればよい。例えば、マイク220を含む本体装置10が、保守点検作業員の腰の位置に、ベルトにて固定されていてもよい。
また、収録診断器100とマイク220とが一体化されていなくてもよい。例えば、収録診断器100と、ハンマ210と、マイク220とが、それぞれ別個の装置として構成され、ハンマ210、マイク220のそれぞれが、収録診断器100と無線通信を行うようにしてもよい。この場合、保守点検作業員が収録診断器100を身に着ける必要はない。例えば、汎用のノートパソコン(Laptop Computer)にプログラムをインストールして収録診断器100として機能させ、保守点検対象の線路の近くに置いておくようにしてもよい。
図2において図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には、同一の符号(1、10、100、210、220)を付して説明を省略する。
記憶部180は、収録診断器100の有する記憶デバイスを用いて構成され、各種データを記憶する。特に、記憶部180は、マイク220が送信する音声データや、劣化判定の基準となる閾値を記憶する。
固有振動数検出部191は、マイク220が取得する音を解析して、PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する。具体的には、固有振動数検出部191は、マイク220が取得する音のフーリエスペクトルを、ハンマ210の加速度センサが測定する加振力で除算したアクセレランス(Accelerance)を算出する。そして、固有振動数検出部191は、得られたアクセレランスからたわみ3次モードの固有振動数を検出する。
なお、固有振動数検出部191が、アクセレランスに変えて音のフーリエスペクトルからたわみ3次モードの固有振動数を検出するようにしてもよい。この場合、ハンマ210は加振力を測定する必要がなく、したがって、加速度センサを有していなくてもよい。
例えば、劣化判定部192は、複数のPCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数のうち、周波数が低い側から所定割合(例えば5パーセント(%))の固有振動数を閾値として判定を行う。劣化判定部192は、固有振動数検出部191が検出したたわみ3次モードの固有振動数が、当該閾値よりも低周波であると判定すると、判定対象のPCまくらぎが劣化していると判定する。
図3は、ハンマ210による加振位置を、PCまくらぎを上から見た図において示す説明図である。同図の例において、ハンマ210は、PCまくらぎの中央付近に打撃を加えて加振する。実験により、図3の例のようにPCまくらぎの中央付近に加振することで、PCまくらぎの3次モードの固有振動を励起し易いことが見出されたためである。
なお、ハンマ210による加振位置は、正確にPCまくらぎの中央である必要は無く、PCまくらぎの中央付近であればよい。
なお、加振位置によっては、3次モードの固有振動数の検出精度が低下する場合がある。この場合、例えば、加振ごとにPCまくらぎの劣化の有無を判定し、多数決によって、PCまくらぎの劣化の有無の最終的な判定結果を決定するようにしてもよい。
図5は、PCまくらぎの劣化による固有振動数の変化の例を示すグラフである。同図の横軸は曲げ剛性を示し、縦軸は固有振動数を示す。図5では、剛体としての上下、剛体としての回転、たわみ1次モード〜たわみ5次モードの各固有振動数の変動率が、曲げ剛性が1(基準値)の場合の固有振動数を1として示されている。
なお、弾性係数(ヤング率)をEとし、断面2次モーメントをIとして、曲げ剛性はEIで示される。
同図において、線L11は、たわみ3次モード固有振動の波形の例を示す説明図である。線L11にて示されるように、PCまくらぎのレール部(レールが敷設される位置)付近や中央付近は、たわみ3次モード固有振動における腹の位置となる。
領域A11は、レール部底面の領域であり、領域A12は、中央上面の領域である。レール上を鉄道車両が通過することで、レール部に負荷がかかる。これにより、領域A11が上向き(下に凸)にたわみ、正曲げ(下に凸の曲げ)によるひび割れが発生する可能性がある。
振動波形の腹付近にひび割れ等の変形が生じることで、当該振動の周波数が変化することが考えられる。この点において、3次モード固有振動数は、レールを鉄道車両が通過することによるPCまくらぎの劣化の検出に適していると考えられる。
また、領域A21は、バラスト道床および路盤によるPCまくらぎに対する支持力として通常想定される範囲を示す。
図9は、PCまくらぎ劣化判定システム1が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。図9の処理において、ハンマ210がPCまくらぎを加振し、マイク220が加振にて生じる音を取得する(ステップS101)。具体的には、ユーザ(例えば、線路保守点検作業員)が、ハンマ210を用いてPCまくらぎを叩き、PCまくらぎを叩くタイミングを含む所定時間の音を、マイク220が取得する。
マイク220は、取得した音を音声データにて収録診断器100へ送信する。また、ハンマ210は加振力を収録診断器100へ送信する。収録診断器100において記憶部180は、マイク220からの音声データとハンマ210からの加振力データとを記憶する。
図10は、固有振動数検出部191がたわみ3次モード固有振動数を検出する処理手順の例を示すフローチャートである。固有振動数検出部191は、図9のステップS102において、図10の処理を行う。
以下では、ハンマ210が測定した加振力を単に「加振力」と称する。
さらに、固有振動数検出部191は、得られたアクセレランスのうち、PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数が励起される周波数帯域を切り出す(ステップS204)。具体的には、固有振動数検出部191は、アクセレランスのうち600ヘルツから1000ヘルツまでの範囲のデータを切り出す。
そして、固有振動数検出部191は、アクセレランスが1(最大値)となる振動数(周波数)をたわみ3次モードの固有振動数として検出する(ステップS206)。
その後、図10の処理を終了して図9に戻る。
ステップS101およびS102の処理の所定回数繰り返しが完了していないと判定した場合(ステップS103:NO)、ステップS101へ戻って繰り返しを実行する。
そして、劣化判定部192は、得られた固有振動数に基づいてPCまくらぎの劣化判定を行う(ステップS105)。
図11の処理において、劣化判定部192は、固有振動数検出部191が算出した平均値が所定の閾値より小さいか否かを判定する(ステップS301)。
一方、平均値が閾値より小さいと判定した場合(ステップS301:YES)、表示部110は、重要監視アラームを表示する(ステップS302)。ここでいう重要監視アラームは、対象となるPCまくらぎが劣化している可能性があり監視が必要であることを示すアラームである。
ステップS302の後、図11の処理を終了し、図9の処理も終了する。
路線を対象とする場合、地盤や通過トン数や降雨などの環境的要因の影響を把握する。また、製造パッチを対象とする場合、製造時のコンクリートの材質の影響を把握する。そして、同様のPCまくらぎを重要監視対象とする。
これは、過去に異常が確認されたPCまくらぎと同様の箇所で同様の異常が発生する可能性が比較的高いとの経験則に基づく。
なお、PCまくらぎの劣化診断データベースは、複数のPCまくらぎ劣化判定システムに共用で設けられていてもよいし、PCまくらぎ劣化判定システム毎に設けられていてもよい。
図12の処理において、劣化判定部192は、固有振動数検出部191が算出した平均値が所定の第1閾値より小さいか否かを判定する(ステップS401)。第1閾値は、例えば健全なPCまくらぎの固有振動数の85パーセントに設定する。
重大な劣化発生のアラームは、例えばひび割れが鉄筋に達する可能性があるなど、重大な劣化が発生している可能性を示すアラームである。
ステップS404の後、図12の処理を終了し、図9の処理も終了する。
一方、ステップS403において平均値が第2閾値以上であると判定した場合(ステップS403:NO)、図12の処理を終了し、図9の処理も終了する。
なお、軌道の定期徒歩巡回点検終了時に、当該巡回点検で記録した全てのPCまくらぎの固有振動数の平均値を降順にソートし、劣化状態のランキングとしてアウトプットするようにしてもよい。
これにより、PCまくらぎ劣化判定システム1では、目視点検に頼らずにPCまくらぎの劣化判定を行うことができ、この点において、PCまくらぎの劣化状況をより容易に把握することができる。
また、PCまくらぎ劣化判定システム1では、マイク220が音を取得するという非接触のデータ取得を行うので、PCまくらぎにセンサを接触させて設置するといった準備が不要である。この点において、ユーザの負担を軽減することができ、また、短時間で判定を行うことができる。また、診断終了後も、PCまくらぎからセンサを取り外すといった処理が不要である。この点においても、ユーザの負担を軽減することができ、また、作業時間を短縮することができる。
これにより、PCまくらぎ劣化判定システム1では、劣化しているPCまくらぎの割合に応じた閾値を用いて劣化判定を行うなど、PCまくらぎの保守点検における実績に応じた閾値を用いることができる。これにより、より正確にPCまくらぎの劣化判定を行うことができる。
これにより、PCまくらぎ劣化判定システム1では、ユーザは、健全なPCまくらぎを基準として比較的容易に閾値を設定することができる。
PCまくらぎの点検を行うユーザは、このストラップを用いてマイク220を吊下げた状態でPCまくらぎ劣化判定システム1を使用することで、マイク220をPCまくらぎの近くに位置させることができる。この点において、ユーザは、容易にPCまくらぎ劣化判定システム1を使用することができる。また、マイク220がPCまくらぎの近くに位置することで、PCまくらぎ劣化判定システム1の判定精度を高めることができる。
図13は、音の解析によるプレテンションPCまくらぎのたわみ3次モード固有振動数の検出例を示すグラフである。同図において、まくらぎ1、まくらぎ2は、いずれも、レール部下面にひび割れのあるPCまくらぎである。ここでいうレール部とは、レールを設置される部分である。
一方、まくらぎ3〜5は、いずれも、健全なまくらぎである。ここでいう健全なまくらぎとは、ひび割れなどの劣化が進んでいないまくらぎである。
図14は、載荷試験における荷重位置を示す説明図である。同図において、線CLは、PCまくらぎの中心位置を示している。
図14に示すように、PCまくらぎの上面のレール部にパッド901を載せ、パッド901の上に載荷板902を載せ、載荷板902の上に荷重受け903を載せている。また、PCまくらぎ下面では、荷重位置(パッド901が載せられた位置)PCまくらぎの端側、中央側それぞれ350ミリメートル(mm)離れた位置にてPCまくらぎを支持している。
なお、試験は、JIS E 1201、および、JIS E 1202に準じて行った。
150キロニュートン(kN)以上では、レール部の断面に大きなひび割れが見受けられており、3次モード固有振動数も、載荷荷重の増加にともなって低下している。3次モード固有振動数は、最大で50ヘルツ程度低下しており、図13に示すデータと整合している。
図16は、加速度センサを有するPCまくらぎ劣化判定システムの外形の例を示す概略外形図である。
同図において、PCまくらぎ劣化判定システム2のハンマ210と、本体装置300と、加速度センサ320とが示されている。加速度センサ320をPCまくらぎに設置した状態で、ハンマ210がPCまくらぎに加振すると、本体装置300は、加速度センサ320が検出する加速度の周波数スペクトルから、PCまくらぎの3次モード固有振動数を求める。
加速度センサ320の設置は、例えば、加速度センサ320とPCまくらぎとの間に接着剤を塗って行ってもよいし、シリコングリスを塗って行ってもよい。
それぞれの加振位置について、得られる3次モード固有振動数のばらつき度合いを調べるため、加振位置毎に、得られた3次モード固有振動数の平均値を求めた。平均値±50ヘルツ以内を成功、平均値±50ヘルツよりもばらつきが大きい場合を失敗とし、成功率を算出した。
加振位置2および3では、加速度センサを用いた場合、マイクを用いた場合共に高い成功率を得られており、特に、加振位置3では100パーセントの成功率を得られている。この試験結果から、PCまくらぎの中央付近を加振する(ハンマ210で叩く)ことで、得られる3次モード固有振動数のばらつきを低減させられると考えられる。
同図に示すように、いずれの測定でも、加速度センサを用いた場合とマイクを用いた場合とで同様の結果を得られた。このように、本実施形態におけるマイクを用いた方法にて、加速度センサを用いた場合と同様に、高い精度で3次モード固有振動数を得られた。3次モード固有振動数を高精度に得られることで、本実施形態におけるマイクを用いた方法にて、PCまくらぎの劣化の有無を高精度に判定し得る。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
100 収録診断器
110 表示部
180 記憶部
190 制御部
191 固有振動数検出部
192 劣化判定部
210 ハンマ
220 マイク
Claims (6)
- PCまくらぎへの加振により生じる音を取得するマイクと、
前記マイクが取得した音に基づいて、前記PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出部と、
前記固有振動数検出部が検出した前記たわみ3次モードの固有振動数が所定条件よりも低周波であると判定すると、前記PCまくらぎが劣化していると判定する劣化判定部と、
を具備するPCまくらぎ劣化判定システム。 - 前記劣化判定部は、複数のPCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数のうち、周波数が低い側から所定割合の固有振動数を閾値として、前記固有振動数検出部が検出した前記たわみ3次モードの固有振動数が、当該閾値よりも低周波であると判定すると、判定対象の前記PCまくらぎが劣化していると判定する、請求項1に記載のPCまくらぎ劣化判定システム。
- 前記劣化判定部は、健全なPCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数に基づいて設定された閾値よりも、前記固有振動数検出部が検出した前記たわみ3次モードの固有振動数が低周波であると判定すると、判定対象の前記PCまくらぎが劣化していると判定する、請求項1に記載のPCまくらぎ劣化判定システム。
- 前記PCまくらぎ劣化判定システムは、前記マイクを人から吊下げ可能なストラップを具備する、請求項1から3のいずれか1項に記載のPCまくらぎ劣化判定システム。
- PCまくらぎへの加振により生じる音を取得する集音ステップと、
前記集音ステップにて取得した音に基づいて、前記PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出ステップと、
前記固有振動数検出ステップにて検出された前記たわみ3次モードの固有振動数が所定条件よりも低周波であると判定すると、前記PCまくらぎが劣化していると判定する劣化判定ステップと、
を有するPCまくらぎ劣化判定方法。 - PCまくらぎの劣化を判定するコンピュータに、
前記PCまくらぎへの加振により生じる音に基づいて、前記PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出ステップと、
前記固有振動数検出ステップにて検出された前記たわみ3次モードの固有振動数が所定条件よりも低周波であると判定すると、前記PCまくらぎが劣化していると判定する劣化判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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