JP2016089078A - 電線被覆向け複合材料用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エポキシ樹脂をプラスチック材料として用いて、耐熱性や強靭性を備えた繊維強化プラスチックを提供すること。
【解決手段】成分(A):25℃で液状のエポキシ樹脂、成分(B):軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂、及び、成分(C):硬化剤を含む、繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合材料の一つである繊維強化プラスチックを製造するのに適したエポキシ樹脂組成物に関する。
繊維強化複合材料の1つである繊維強化プラスチックは、加工のし易さに加え、軽量で、高強度、高剛性であることから、スポーツ・レジャー用途から、自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。
近年の用途の一つとして、長距離送電用の電線被覆向けに使用されようとしている。電線を支える鉄塔間の距離は長い方が建設コストを抑えることができるが、電線を金属のみで製造した場合、重くなるため、鉄塔間の距離を長くできない。特許文献1および特許文献2には、電線の被覆の一部に繊維強化グリシジルアミン型エポキシを使用する例が記されている。しかしながら、これらの技術においては、被覆する金属の一部を繊維強化プラスチックに変更することで、電線が重くなるという前記問題は解決できるが、靱性がないため硬化後の繊維強化プラスチックが自重に耐え切れず、鉄塔間の距離はそれほど長くはできなかった。さらには、これらの電線被覆は送電時に発生する熱に耐え切れなかったり、含有塩素量が高いため、金属を腐食させたりして、長期使用は難しいものであった。
特許文献1:米国特許7179522号明細書
特許文献2:米国特許7211319号明細書
そこで、本発明の目的は、エポキシ樹脂をプラスチック材料として用いて、耐熱性や強靭性を備えた繊維強化プラスチックを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、室温付近において固液の状態の異なる2種類以上のエポキシ樹脂を併用したエポキシ樹脂組成物を用いることで、成形時の加工性を維持しつつ、耐熱性や強靭性を確保し、過酷な自然環境下においても長期使用が可能な繊維強化プラスチックが得られることを見出した。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]下記成分(A)、(B)及び(C)を含む、繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
成分(A):25℃で液状のエポキシ樹脂
成分(B):軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂
成分(C):硬化剤
[2]成分(A)が、
成分(A−1):25℃での粘度が30000mPa・s未満のエポキシ樹脂、及び
成分(A−2):25℃での粘度が30000mPa・s以上のエポキシ樹脂
を含む、[1]記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
[3]成分(B)が、一般式(1)で表される構造を含むエポキシ樹脂を含む、[1]または[2]記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
Figure 2016089078

(式中、R1とR2は、単結合又は二価の連結基を表す。)
[4]成分(C)が、酸無水物を含む、[1]〜[3]いずれか記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
[5]成分(A)+成分(B)の合計に対し、成分(A)が99〜55質量%、成分(B)が1〜45質量%である、[1]〜[4]いずれか記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
[6][1]〜[5]いずれか記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び、繊維材料を含む繊維強化プラスチックであって、
前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維またはそれらの混合物を含む、繊維強化プラスチック。
[7]電線被覆用である、[1]〜[6]いずれか記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
[成分(A):25℃で液状のエポキシ樹脂]
本発明において、エポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基を2個以上含む高分子化合物及びそのエポキシ基の開環反応によって生成する合成樹脂をいう。
成分(A)のエポキシ樹脂は25℃で液状であれば特に限定されず、各種公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
(A)エポキシ樹脂における「25℃で液状」とは、120℃以上で2時間加熱した後、25℃まで冷却し、その後25℃に保った場合において、25℃になってから2時間以内にE型粘度計で測定したときの粘度(25℃での粘度)が30000Pa・s以下であることをいう。
本実施形態においては、成分(A)が、(A−1)25℃での粘度が30000mPa・s未満のエポキシ樹脂と、(A−2)25℃での粘度が30000mPa・s以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。これら2種以上のエポキシ樹脂を使用することで、繊維になじみ、ピックアップ量が稼げるため、生産性が向上する。
(A−1)エポキシ樹脂は各種公知のものを適宜選択して用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
(A−2)エポキシ樹脂も各種公知のものを適宜選択して用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
成分(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し99〜55質量部であることが好ましい。成分(A)の量が55質量部以上であれば、ボイドの無い成形品を容易に得ることができる。成分(A)の量が99質量部以下であれば、架橋が高密度にならず、破壊靱性値の改善につながる。
成分(A)の含有量の下限値は、好ましくは60質量部であり、さらに好ましくは65質量部である。また、成分(A)の含有量の上限値は、好ましくは90質量部であり、さらに好ましくは85質量部である。
更に成分(A−1)の含有量は、成分(A)および成分(B)の合計量100質量部に対して、80〜20質量部であることが好ましい。20質量部以上であれば、含浸性が向上するし、80質量部以下であれば、含浸作業時の液だれを防止できる点で好ましい。
成分(A−1)の含有量の下限値は、好ましくは25質量部であり、さらに好ましくは35質量部である。また、成分(A−1)の含有量の上限値は、好ましくは78質量部であり、さらに好ましくは75質量部である。
更に成分(A−2)の含有量は、成分(A)および成分(B)の合計量100質量部に対して、79〜1質量部であることが好ましい。1質量部以上であれば、圧縮強度が向上するし、79質量部以下であれば、靱性が向上する。
成分(A−2)の含有量の下限値は、好ましくは2質量部であり、さらに好ましくは4質量部である。また、成分(A−2)の含有量の上限値は、好ましくは60質量部であり、さらに好ましくは40質量部である。
〔成分(B):エポキシ樹脂〕
成分(B)は軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂である。軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂を使用すると、繊維含浸後のBステージ化(半硬化)する前に液だれも起こりにくくなるため、品質のブレが少なくなる。
成分(B)が一般式(1)で表される構造を少なくとも1つ含むエポキシ樹脂であれば、成形後の耐熱性や強靭化といった物性が特に向上する。更に、絶縁抵抗値変化等の電気特性の向上が見込めるため、電線被覆としての長期使用が可能となる。
Figure 2016089078

(式中、R1とR2は、単結合又は二価の連結基を表す。)
一般式(1)中のR1は、単結合又は2価の連結基であり、2価の連結基としては以下に限定されないが、例えば、ビフェニル類、ビスフェノールA類、ビスフェノールF類、ビスフェノールAF類、ビスフェノールAC類、ビスフェノールS類、フェノールノボラック類及びクレゾールノボラック類からなる群より選択される1種以上の骨格を含んでいてもよく、これらの骨格は置換基を有していてもよい。
一般式(1)中のR2は、単結合又は2価の連結基であり、2価の連結基としては、以下に限定されないが、例えば、置換されていてもよいアルキレン基又は置換されていてもよいアリーレン基等が挙げられる。
ここで「アルキレン基」とは、「アルキル基」から任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味し、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、トリメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
また「アリーレン基」とは、「アリール基」から、任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される2価の基を意味する。
2で示される置換されていてもよいアルキレン基及びアリーレン基は、置換可能な位置において、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。
本実施形態において、上記R2は、イソホロン、ベンゼン、トルエン、ジフェニルメタン及びナフタレンのいずれか1つに由来する2価の連結基、ヘキサメチレン基並びに−(CH2−C64n−(ポリメチレンポリフェニレンポリフェニル骨格を有する基)(ただし、nは2〜6の整数であって、一分子中に複数ある場合は各々同一であっても異なっていてもよい)からなる群より選択されることが好ましい。これらの基をもつことで、熱に対する安定性がより向上する傾向にある。
成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し1〜45質量部であることが好ましい。成分(B)の量が1質量部以上であれば、前記成分(B)を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物の、耐熱性および機械物性が高くなるため好ましい。一方、破壊靱性が高くボイドの無い成形品を容易に得るために、45質量部以下であることが好ましい。成分(B)の含有量は、3〜45質量部であることがより好ましく、4〜30質量部であることが特に好ましい。
[成分(C):硬化剤]
(C)硬化剤は、本実施形態において使用するエポキシ樹脂(成分(A)及び成分(B))を硬化し得るものであれば、特に構造等は限定されない。(C)硬化剤の具体例としては、以下に限定されないが、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。脂肪族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アリルアクリルフェノール樹脂等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
潜在性硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、イミダゾール系潜在性硬化剤やアミンアダクトをカプセル化したもの等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えば、「PN23」、「PN40」、「PN−H」といったアミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)や「HX−3088」、「HX−3941」、「HX−3742」といったノバキュアシリーズ(旭化成イーマテリアルズ社製)が挙げられる。
上述した(C)硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、一部が「硬化剤」として働き、残部が「硬化促進剤」として働く場合もある。ここでいう硬化剤とは、熱や光によりエポキシ樹脂と反応し、架橋していく機能を有するものをいい、硬化促進剤とは、主には、それ自身はエポキシ樹脂と反応しないが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を起こりやすくする機能を有するものをいう。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の(C)硬化剤は、酸無水物(酸無水物系硬化剤)であることが粘度の観点から好ましい。更に、酸無水物系硬化剤は高温での反応が早いため、製造時間の短縮も可能となる。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の(C)硬化剤の含有量は、特に限定されないが、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100質量部としたときに、好ましくは2〜60質量部であり、より好ましくは3〜55質量部であり、更に好ましくは4〜50質量部である。(C)硬化剤の含有量を上記範囲内とする場合、エポキシ樹脂組成物の反応性、機械的特性、耐熱性等がより向上する傾向にある。
[その他添加剤]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物には、さらに、任意の成分として、トリブロック共重合体や、それ以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の添加剤(以下「任意の添加剤」と称す)を含有していてもよい。この任意の添加剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率およびチキソトロープ性を適正化する役割があるだけでなく、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性を向上させる。
任意の添加剤として用いられる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーは、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。また前記任意の添加剤は、エポキシ樹脂成分中に溶解していてもよいし、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプなどの形状でエポキシ樹脂組成物中に含まれていても良い。前記任意の添加剤が、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプなどの形状で含まれていると、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を繊維材料に含浸させたプリプレグを積層して繊維強化プラスチックを作製する場合に、層間剥離を抑制することができるので好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた少なくとも1つの結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。より具体的には、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが特に好ましく使用される。また、これらの熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂との反応性官能基を有することは、本発明の樹脂組成物の硬化物の破壊靭性向上および耐環境性維持の観点から好ましい。エポキシ樹脂との好ましい反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、アミノ基および水酸基などが挙げられる。
[繊維強化プラスチック]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、繊維材料と組み合わせて、繊維強化プラスチックを構成することができる。
本実施形態に用いられる繊維材料の形態に限定はなく、例えば、トウ、クロス、チョップドファイバー、連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態、また、強化繊維を不織布とした形態などが挙げられる。中でも連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、また複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態が好ましい。硬化物の強度発現の観点からは、連続繊維を一方向に引き揃えた形態がさらに好ましい。
前記繊維材料を構成する材料には制限が無く、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、有機繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを使用することができる。なかでも、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維またはそれらの混合物が強度や軽量化への寄与が高いので好ましく、炭素繊維は、比弾性率が良好のためより好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化プラスチックを製造する方法にも制限はなく、以下に限定されないが、例えば、オートクレーブ法、真空バッグ法、フィラメントワインディング法、プルトリュージョン法、レジントランスファーモールディング(RTM)法等の公知の成形方法を採用することができる。
[電線被覆用繊維強化ブラスチック材料]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて電線被覆用繊維強化プラスチックを製造する場合には、プルトリュージョン法を採用することが好ましい。プルトリュージョン法によれば、電線と繊維材料を同時にエポキシ樹脂組成物に含浸し硬化させるため、生産性高く製造できる。また、プルトリュージョン法の場合、繊維材料にエポキシ樹脂組成物を含浸させて一旦プリプレグ化したものを電線に巻きつける手法に比べ、電線の結束力が高くなる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、表1における成分(A)〜(D)の含有量は、いずれも質量部である。
なお、実施例においては、各種特性は以下の方法により測定した。
(1)ボイド発生数
繊維強化プラスチックを、補強繊維(炭素繊維)の繊維方向に直交する面で切断し、マイクロスコープにて150倍でボイドの有無を観察した。
ボイドが発生していないものを○、ボイドが発生したものを×とした。
(2)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)(℃)は、動的粘弾性測定装置DDV−25FP(オリエンテック(株)製)を用い、長さ20mm×幅4mm×厚さ2mmの試験片を、2℃/分で昇温させ、tanδが最大となる温度として求めた。
(3)破壊靭性(K1C)
エポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性(K1C)(MPa/m0.5)は、弾塑性破壊靭性試験方法(JSME S 001−1981)に準拠し測定した。具体的には、試験片中央に約2.5mmのクラックを入れた長さ20mm×幅4mm×厚さ2mmの試験片を、圧子移動速度0.5mm/分、支点間距離17.6mmでの3点曲げ試験にて測定した。
(4)圧縮強度
繊維強化プラスチックについて、SACMA−SRM−2R−94に準拠し、オートグラフAGS−H(株式会社島津製作所製)を用いて圧縮強度(MPa)を測定した。
(5)絶縁抵抗値の変化(HHBT試験)
L/S=30μm/30μmの櫛形電極間にエポキシ樹脂組成物を塗布し、180℃で2時間加熱し硬化させた。その後、高温恒湿機の中にいれ、85℃、85RH%の条件下のもと、印加電圧を100Vかけて、1000時間、絶縁抵抗値の変化(Ω)をみた。
抵抗値の変化が1000時間全くなかったものを◎、750時間〜1000時間で変化があったものを○、500時間〜750時間で変化があったものを△、500時間以下で変化があったものを×とした。
(6)25℃での粘度
エポキシ樹脂の25℃での粘度(Pa・s)は、エポキシ樹脂をいったん120℃で2時間加熱した後、25℃まで冷却し、25℃になってから15分後にE型粘度計(TVE−35H、東機産業株式会社社製)で測定した。
(7)軟化点
加熱して溶融したエポキシ樹脂を所定のリングに流しこみ固化した後、DP90(メトラートレド社製)を用いて、軟化点(℃)を測定した。
[合成実施例1(成分(B)(B−1)の合成)]
反応器内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:AER260、旭化成イーマテリアルズ(株)製、エポキシ当量189g/eq)6.0kgを投入して加熱撹拌し、40℃でテトラブチルアンモニウムブロマイド(商品名:臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、和光純薬工業(株)製)0.004kgを投入し、10分撹拌して混合物を得た。その後、得られた混合物をさらに加熱昇温し、反応器内の温度(内温)が150℃に到達した後、前記混合物に、トリレンジイソシアネート(商品名:コスモネート T−80(商標)、三井化学(株)製)0.97kgを150分かけて投入した。その後、得られた反応液を昇温し、170℃とし、反応温度を170℃に保ち、反応液を5時間撹拌し、熟成(後反応)させることにより、一般式(1)で表される構造を含むエポキシ樹脂1(R1:ビスフェノールAタイプ、R2:トルエンタイプ)を7.09kg得た。得られたエポキシ樹脂1のエポキシ当量は343g/eqであり、軟化点は80℃だった。
成分(A):
(A−1−1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:AER260、旭化成イーマテリアルズ(株)製) 25℃での粘度 12Pa・s
(A−1−2):ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:エピクロン830、DIC(株)製) 25℃での粘度 3Pa・s
(A−2):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EPN1182、旭化成イーマテリアルズ(株)製)25℃での粘度 50 Pa・s
成分(B):
(B−1):一般式(1)で表される構造を含むエポキシ樹脂1(合成実施例1で得られたもの) 軟化点80℃
(B−2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:AER6061、旭化成イーマテリアルズ(株)製) 軟化点71℃
成分(C):
(C−1):無水メチルハイミック酸(商品名:MHAC−P、日立化成(株)製)
(C−2):シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸―1,2−無水物(商品名:H−TMAn。三菱瓦斯化学(株)製)
成分(D)(硬化促進剤):
(D−1)ジアザビシクロウンデセン(商品名:DBU、サンアプロ(株)製)
(D−2) 2メチルイミダゾール(商品名:キュアゾール2MZ、四国化成工業(株)製)
<実施例1〜8、比較例1、2>
表1に記載のエポキシ樹脂組成物100質量部を180℃で2時間硬化させて、エポキシ樹脂硬化物を作成し、硬化物評価((2)、(3)、(5))を行った。
また、エポキシ樹脂組成物を繊維基材(東レ株式会社製の炭素繊維織物「トレカクロスCO−6363」(商標)(目付198g/m2))に含浸塗布し、170℃で乾燥させて、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを20cm×20cmに切断し、熱板プレスにて圧力0.4MPa、温度180℃にて2時間熱硬化させ、繊維強化プラスチックを得た。この繊維強化プラスチックを切り出し、ボイド発生の有無((1))と圧縮強度((4))を測定した。
得られた結果を以下に示す。
Figure 2016089078
本発明のエポキシ樹脂組成物は、良好な作業性と、繊維強化プラスチックとしたときのボイド発生の抑制を両立できる。そのうえ、このエポキシ樹脂組成物を用いれば、優れた機械物性、とりわけ優れた破壊靭性、耐熱性及び圧縮強度、をもった繊維強化プラスチックを得ることができ、長期使用に耐えられる。したがって、本発明のエポキシ樹脂組成物は、自動車、電気・電子機器、建築用の部材等の各種用途のための繊維強化プラスチックの製造に好適に使用することができる。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は長期絶縁性を有するので、電線の被覆材料として好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 下記成分(A)、(B)及び(C)を含む、繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
    成分(A):25℃で液状のエポキシ樹脂
    成分(B):軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂
    成分(C):硬化剤
  2. 成分(A)が、
    成分(A−1):25℃での粘度が30000mPa・s未満のエポキシ樹脂、及び
    成分(A−2):25℃での粘度が30000mPa・s以上のエポキシ樹脂
    を含む、請求項1記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
  3. 成分(B)が、一般式(1)で表される構造を含むエポキシ樹脂を含む、請求項1または2記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2016089078

    (式中、R1とR2は、単結合又は二価の連結基を表す。)
  4. 成分(C)が、酸無水物を含む、請求項1〜3いずれか1項記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
  5. 成分(A)+成分(B)の合計に対し、成分(A)が99〜55質量%、成分(B)が1〜45質量%である、請求項1〜4いずれか1項記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか1項記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び、繊維材料を含む繊維強化プラスチックであって、
    前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維またはそれらの混合物を含む、繊維強化プラスチック。
  7. 電線被覆用である、請求項1〜6いずれか1項記載の繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
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