JP2016085901A - レドックスフロー電池用電極及びそれを用いたレドックスフロー電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】レドックスフロー電池における電池性能を向上させることができ、低コストでの運用を可能とする新規なレドックスフロー電池用電極及びそれを用いたレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】レドックスフロー電池1は、レドックスフロー電池用電極としての正極電極4及び負極電極5をそれぞれ含む正極セル室31及び負極セル室32と、正極セル室31及び負極セル室32を分離する隔膜2と、正極活物質を含む正極電解液を正極セル室31に循環供給させる正極循環機構6と、負極活物質を含む負極電解液を負極セル室32に循環供給させる負極循環機構7とを備え、上記レドックスフロー電池用電極は、炭素粒子と、構造単位にアミド結合を有する樹脂とを含む。
【選択図】図1
【解決手段】レドックスフロー電池1は、レドックスフロー電池用電極としての正極電極4及び負極電極5をそれぞれ含む正極セル室31及び負極セル室32と、正極セル室31及び負極セル室32を分離する隔膜2と、正極活物質を含む正極電解液を正極セル室31に循環供給させる正極循環機構6と、負極活物質を含む負極電解液を負極セル室32に循環供給させる負極循環機構7とを備え、上記レドックスフロー電池用電極は、炭素粒子と、構造単位にアミド結合を有する樹脂とを含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、レドックスフロー電池に用いられる電極及び当該電極を用いたレドックスフロー電池に関する。
太陽光発電、風力発電等による再生可能エネルギーの導入が推進されている。これらの発電電力量は、天候等の影響を受けるため、再生可能エネルギーの大量導入は、電力の供給量を安定させ難いという問題を生じさせる。この問題の対策として、大容量の蓄電池を設置して、余剰電力の貯蓄、負荷平準化等を図る必要がある。
近年、大容量の蓄電池として、レドックスフロー電池が期待されている。レドックスフロー電池は、正極電極を含む正極セル室と、負極電極を含む負極セル室と、正極セル室及び負極セル室の間に位置する隔膜と、正極セル室及び負極セル室のそれぞれに、正極活物質を含む電解液及び負極活物質を含む電解液のそれぞれを供給する循環機構とを備える。
かかるレドックスフロー電池においては、正極セル室及び負極セル室のそれぞれに電解液を循環させ、正極セル室の正極電極及び負極セル室の負極電極のそれぞれにおいて正極活物質及び負極活物質の酸化還元反応が起こり、その結果、充放電がなされる。
正極電極及び負極電極は、電解液中の活物質の酸化還元反応を生じさせる場であり、効率的に活物質の酸化還元反応を生じさせることが要求されるため、電解液の通液性に優れた多孔質体により構成されるのが一般的である。従来、レドックスフロー電池用電極としては、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられている。
上述したように、レドックスフロー電池における正極電極及び負極電極は、電解液中の活物質の酸化還元反応を生じさせる場である。そのため、レドックスフロー電池における電池性能を向上させるために、正極電極及び負極電極の特性として、電解液の接触可能な面積が大きく、かつ電解液に対する親和性(親水性)が高いことが要求される。レドックスフロー電池における電池性能が向上すれば、レドックスフロー電池を低コストで運用することができる。
しかしながら、従来の正極電極及び負極電極として用いられているカーボンフェルトにおいては、その表面積を大きくし、かつ電解液に対する親和性を向上させることには限界がある。また、カーボンフェルトが2〜5mmの厚みを有するため、正極セル室及び負極セル室の設計上の出力密度が低くなってしまう。さらに、カーボンフェルト自体が高価な材料である。そのため、レドックスフロー電池の電池性能を向上させることができ、より低コストでの運用を可能とする新たな電極材料の提案が望まれている。
上記課題に鑑みて、本発明は、レドックスフロー電池における電池性能を向上させることができ、低コストでの運用を可能とする新規なレドックスフロー電池用電極及びそれを用いたレドックスフロー電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、炭素粒子と、構造単位にアミド結合を有する樹脂とを含むことを特徴とするレドックスフロー電池用電極を提供する(発明1)。
上記発明(発明1)によれば、構造単位にアミド結合を有する樹脂を含むことで、酸化還元反応の生じる反応場としての炭素粒子の表面に対するレドックスフロー電池の電解液の親和性を向上させることができるため、レドックスフロー電池の電池性能を向上させることができる。
上記発明(発明1)においては、前記構造単位にアミド結合を有する樹脂を結着材として含むのが好ましく(発明2)、前記構造単位にアミド結合を有する樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド前駆体、並びにポリイミド及びポリイミド前駆体の樹脂混合物からなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましく(発明3)、前記レドックスフロー電池用電極がシート状に構成されてなるのが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1〜4)においては、前記炭素粒子が、表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有し、三次元網目構造をなす多孔質炭素であるのが好ましく(発明5)、かかる発明(発明5)においては、前記多孔質炭素は、炭素前駆体と鋳型粒子との混合物に加熱処理を施して当該炭素前駆体を炭化した後、前記鋳型粒子を除去することにより製造されるものであり、前記鋳型粒子が、アルカリ土類金属の酸化物であるのが好ましい(発明6)。
上記発明(発明1〜6)においては、前記炭素粒子を支持する基材をさらに含み、前記基材の少なくとも一方面上に、前記炭素粒子が支持されているのが好ましく(発明7)、前記基材が、ポリマー繊維を含む基布であるのが好ましい(発明8。
また、本発明は、上記発明(発明1〜8)に係るレドックスフロー電池用電極からなる正極電極及び負極電極をそれぞれ含む正極セル室及び負極セル室と、前記正極セル室及び前記負極セル室を分離する隔膜と、正極活物質を含む正極電解液を前記正極セル室に循環供給させる正極循環機構と、負極活物質を含む負極電解液を前記負極セル室に循環供給させる負極循環機構とを備えることを特徴とするレドックスフロー電池を提供する(発明9)。
本発明によれば、レドックスフロー電池における電池性能を向上させることができ、低コストでの運用を可能とする新規なレドックスフロー電池用電極及びそれを用いたレドックスフロー電池を提供することができる。
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るレドックスフロー電池を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態に係るレドックスフロー電池の単セル構成を示す分解斜視図である。
図1は、本実施形態に係るレドックスフロー電池を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態に係るレドックスフロー電池の単セル構成を示す分解斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るレドックスフロー電池1は、隔膜2により分離された正極セル室31及び負極セル室32を含むセル室3と、正極セル室31に正極電解液を循環供給させる正極循環機構6と、負極セル室32に負極電解液を循環供給させる負極循環機構7とを備える。正極セル室31には正極電極4が含まれ、負極セル室32には負極電極5が含まれる。
かかるレドックスフロー電池1の正極電解液としては、例えば、正極活物質としての金属イオン(例えば、バナジウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン等)を含む酸性水溶液(例えば、硫酸塩水溶液等)が挙げられる。また、負極電解液としては、例えば、負極活物質としての金属イオン(例えば、バナジウムイオン、クロムイオン、チタンイオン等)を含む酸性水溶液(例えば、硫酸塩水溶液等)が挙げられる。特に、正極活物質及び負極活物質としてのバナジウムイオンを含む酸性水溶液(pH=1〜2程度)を、正極電解液及び負極電解液として用いるのが望ましい。
正極電解液及び負極電解液としてバナジウムイオンを含む水溶液を用いるレドックスフロー電池1においては、正極セル室31及び負極セル室32のそれぞれで、下記式に示す電池反応(酸化還元反応)が生じる。
正極反応
充電時:VO2+ + H2O → VO2 + + 2H+ + e- …(1)
放電時:VO2 + + 2H+ + e- → VO2+ + H2O …(2)
負極反応
充電時:V3+ + e- → V2+ …(3)
放電時:V2+ → V3+ + e- …(4)
充電時:VO2+ + H2O → VO2 + + 2H+ + e- …(1)
放電時:VO2 + + 2H+ + e- → VO2+ + H2O …(2)
負極反応
充電時:V3+ + e- → V2+ …(3)
放電時:V2+ → V3+ + e- …(4)
充電時には、式(1)及び(3)に示すように、正極にて4価のバナジウムイオンが5価に酸化されて電子を放出し、負極にて3価のバナジウムイオンが2価に還元される。一方、放電時には、式(2)及び(4)に示すように、負極にて2価のバナジウムイオンが3価に酸化されて電子を放出し、正極にて5価のバナジウムイオンが4価に還元される。
セル室3を正極セル室31及び負極セル室32に分離する隔膜2としては、例えば、塩化ビニル;フッ素樹脂;ポリスルホン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の樹脂であってイオン交換基を有するイオン交換樹脂からなるイオン交換膜等を用いることができる。イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ピリジニウム塩基、第四級アンモニウム塩基、第三級アミン基、ホスホニウム基等が挙げられる。
本実施形態における正極電極4及び負極電極5は、炭素粒子と、結着材とを含み、当該結着材は、構造単位にアミド結合を有する樹脂組成物を含む。このような樹脂組成物としては、好ましくは、前記結着材が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、並びにポリイミド及びポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の樹脂混合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。構造単位にアミド結合を有する樹脂組成物は、正極電解液及び負極電解液に対する親和性が高い。そのため、当該樹脂組成物、好ましくはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、並びにポリイミド及びポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の樹脂混合物からなる群より選択される少なくとも1種が上記結着材として含まれていることで、レドックスフロー電池1において活物質の酸化還元反応の生じる反応場である炭素粒子表面に対する正極電解液及び負極電解液の親和性を向上させることができ、電池利用率を向上させることができる。その結果として、レドックスフロー電池1における電池性能を向上させることができる。
なお、電池利用率とは、レドックスフロー電池1における理論容量(バナジウム濃度、電解液量及び電流値から放電時間に換算した値)に対する実際の放電時間の比率(%)を意味する。放電時間とは、上限電圧Vmaxから下限電圧Vminまでの範囲において、電解液の循環供給量を一定流量とし、一定電流で連続的に放電した場合に要する時間を意味する。
本実施形態に係るレドックスフロー電池1において、上記結着材は、pH1〜2程度の酸性水溶液である正極電解液及び負極電解液中で電圧(0.5〜2V程度)が印加されても分解され難いものであるのが好ましい。上記結着材として含まれる、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、pH1〜2程度の酸性水溶液中で電圧(0.5〜2V程度)が印加されても分解され難い。
正極電極4及び負極電極5における結着材の含有量は、例えば、炭素粒子と結着材との合計質量に対して10〜85質量%程度であるのが好ましい。結着材の含有量が10質量%未満であると、正極電極4及び負極電極5における結着力が不足して炭素粒子の含有量が少なくなることで酸化還元反応を生じる反応場が少なくなってしまい、電池利用率が低下するおそれがある。一方、結着材の含有量が85質量%を超えると、正極電極4及び負極電極5に含まれる炭素粒子の露出表面積(正極電解液及び負極電解液の接触可能面積)が小さくなることで酸化還元反応を生じる反応場が少なくなってしまうとともに、正極電極4及び負極電極5の電気抵抗が増大してしまい、電池利用率が低下するおそれがある。
上記結着材としてポリイミド及びポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の樹脂混合物を用いる場合、上記結着材中のポリイミドとポリイミド前駆体(ポリアミック酸)との含有比は、炭素粒子表面に対する正極電解液及び負極電解液の親和性を低下させない範囲内にて適宜設定され得る。
上記結着材としてポリイミド及びポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の樹脂混合物を用いる場合、上記結着材中のポリイミドとポリイミド前駆体(ポリアミック酸)との含有比は、炭素粒子表面に対する正極電解液及び負極電解液の親和性を低下させない範囲内にて適宜設定され得る。
上記結着材中におけるポリイミドとポリイミド前駆体(ポリアミック酸)との含有比は、正極電極4及び負極電極5の作製工程において調整可能である。本実施形態における正極電極4及び負極電極5は、炭素粒子と結着材とを含む電極形成用スラリーを調製し、当該電極形成用スラリーを後述する多孔質シート基材等に塗布し、乾燥することにより作製され得る。この作製工程において、例えば、電極形成用スラリーを多孔質シート基材上に塗布し、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)のイミド化を促進させ得る加熱条件(加熱温度、加熱時間等)で加熱し、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化させつつ、溶媒を除去して炭素粒子を多孔質シート基材上に結着させることにより、上記含有比を調整することができる。また、所望とする含有比のポリイミド及びポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の樹脂混合物を含む電極形成用スラリーを調製し、当該スラリーを多孔質シート基材上に塗布し、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化させることのない加熱条件(加熱温度、加熱時間等)で加熱し、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化させることなく、溶媒を除去して炭素粒子を多孔質シート基材上に結着させることにより、上記含有比を調整することができる。
正極電極4及び負極電極5に含まれる炭素粒子としては、特に制限はなく、例えば、コークス類、球状黒鉛、繊維状黒鉛、カーボンファイバー、黒鉛類、活性炭粉末、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられるが、多孔質炭素を用いるのが好ましい。特に、表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有し、三次元網目構造をなす多孔質炭素を上記炭素粒子として用いるのが好ましい。正極電極4及び負極電極5が、かかる構造を有する多孔質炭素を含むことで、後述する実施例から明らかなように、レドックスフロー電池1における電池利用率をより向上させることができる。正極電極4及び負極電極5が上記多孔質炭素を含むことによりレドックスフロー電池1における電池利用率がより向上する理由は定かではないが、上記多孔質炭素が、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の他の炭素粒子に比して親水性が高く、電解液が多孔質炭素の開気孔を通じて内部に浸入しやすいことで、上記多孔質炭素を含む正極電極4及び負極電極5において、活物質の酸化還元反応を生じさせる反応場が増えるためであると推認される。
上記多孔質炭素は、例えば、ポリアニリン樹脂、ポリイミド、石油系タールピッチ、アクリル樹脂等の炭素前駆体(炭素原料)と、アルカリ土類金属(Ca等)の酸化物等の鋳型粒子との混合物に、非酸化雰囲気(窒素雰囲気等等)で600〜2500℃で加熱処理を施して当該炭素前駆体(炭素原料)を炭化した後、鋳型粒子を数mol/L(例えば1mol/L)の硫酸水溶液に溶解させて除去することにより製造され得る。上記のようにして製造される多孔質炭素は、上記構造(表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有する三次元網目構造)をなすものと推認される。
上記炭素粒子のBET比表面積は、600〜1800m2/gであるのが好ましい。炭素粒子のBET比表面積が上記範囲内であることで、当該炭素粒子を含む正極電極4及び負極電極5を備えるレドックスフロー電池1における電池利用率をより向上させることができる。
炭素粒子の平均粒子径(算術平均粒子径)は、例えば、200〜400μm程度に設定され得る。なお、平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、HORIBA社製,製品名:LA−920等)を用いて測定され得る。
正極電極4及び負極電極5は、例えば、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリマー繊維等を含む織布、不織布等の基布や、多孔質樹脂シート等のような、上記炭素粒子を支持する多孔質シート基材を有しているのが好ましい。上記炭素粒子は、多孔質シート基材の一方の面に支持されていてもよいし、両面に支持されていてもよい。
かかる多孔質シート基材としては、上記ポリマー繊維を含む基布(織布又は不織布)を用いるのがより好ましい。多孔質シート基材として上記基布を用いることで、十分な電気化学的性能と強度を保ちながら、正極電極4及び負極電極5の厚みを従来のカーボンフェルトに比して薄くすることができる。
上記多孔質シート基材の通気度は、例えば、20〜150cm3/sec/cm2程度、好ましくは30〜130cm3/sec/cm2程度に設定され得る。また、上記多孔質シート基材としての基布(織布、不織布)の目付量は、例えば、15〜150g/m2程度、好ましくは15〜85g/m2程度に設定され得る。多孔質シート基材の通気度や基布の目付量が上記範囲内であることで、例えば、多孔質シート基材の一方の面に多孔質炭素を支持させたときには、多孔質シート基材の他方の面側から電解液が浸透しやすく、多孔質炭素と電解液(活物質)とを効果的に接触させることができる。また、例えば、多孔質シート基材の両面に多孔質炭素を支持させたときには、一方面側の多孔質炭素と他方面側の多孔質炭素とが連続するため、正極電極4及び負極電極5のそれぞれの厚さ方向における電気的導通を図ることができる。なお、多孔質シート基材の厚さは20〜200μm程度に設定され得る。多孔質シート基材(特に、基布(織布、不織布))の通気度は、例えば、JIS L 1096「織物及び編み物の生地試験方法」に準じて測定され得る。
正極電極4及び負極電極5の厚さは、特に制限されないが、当該厚さが薄いと、正極セル室31及び負極セル室32の厚さを薄くすることができ、レドックスフロー電池1の単位体積当たりの出力を大きくすることが可能となる。当該厚さは、例えば、100〜500μm程度に設定され得る。
正極循環機構6及び負極循環機構7は、正極電解液及び負極電解液のそれぞれを貯留する電解液タンク61,71と、電解液タンク61,71と正極セル室31及び負極セル室32のそれぞれの間に連通する給液管63,73及び排液管64,74と、給液管63,73の途中に設けられているポンプ62,72とを有する。
本実施形態に係るレドックスフロー電池1は、上記正極セル室31、隔膜2及び負極セル室32を含む単セルを複数積層させてなるセルスタックと称される形態として利用され得る。具体的には、レドックスフロー電池1は、図2に示すように、双極板11A、開口を有するフレーム12A、隔膜2、開口を有するフレーム12B、双極板11Bの順で繰り返し積層された積層体を積層方向両端からエンドプレートで挟まれた構成を有し、各フレーム12A,12Bの開口に正極電極4及び負極電極5が設けられている。双極板11A,11Bと、フレーム12A,12Bと、隔膜2とにより、正極セル室31及び負極セル室32のそれぞれが構成される。正極セル室31及び負極セル室32のそれぞれには、正極電解液及び負極電解液のそれぞれを給液し、排液するための給液口及び排液口(図示を省略)が設けられている。正極セル室31及び負極セル室32の双極板11A,11Bは、例えば、グラファイト、ガラス状カーボン、プラスチックカーボン(ブラスチックにカーボンを練り込んだもの)等により構成され、フレーム12A,12Bは、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、テフロン(登録商標)等により構成され得る。
上述したような構成を有する、本実施形態に係るレドックスフロー電池1によれば、レドックスフロー電池用電極としての正極電極4及び負極電極5が、炭素粒子と、結着材として構造単位にアミド結合を有する樹脂とを含むため、正極電解液及び負極電解液に対する親和性を向上させることができ、十分な電池利用率が発揮され得る。また、レドックスフロー電池用電極としての正極電極4及び負極電極5を、従来のカーボンフェルトに比して安価に作製することができることもあり、レドックスフロー電池1を低コストで運用することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態においては、結着材を介して炭素粒子を多孔質シート基材上に支持させてなる例を挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、多孔質シート基材を有さず、炭素粒子と結着材とを含む電極形成用スラリーを乾燥させることで、シート状に形成してなるものであってもよい。
上記実施形態においては、構造単位にアミド結合を有する樹脂を結着材として用いる態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、レドックスフロー電池用電極(正極電極4及び負極電極5)が構造単位にアミド結合を有する樹脂を含むものであればよい。例えば、構造単位にアミド結合を有する樹脂の少なくとも1種と、その他の樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等、構造単位にアミド結合を有する樹脂よりも電解液に対する親和性が低い樹脂)との樹脂混合物を結着材として含んでいてもよい。
また、上記PVDF、SBR等のような、構造単位にアミド結合を有しない樹脂を結着材として用いてもよい。この場合においては、構造単位にアミド結合を有する樹脂を、炭素粒子に対する表面処理剤として用いる。例えば、構造単位にアミド結合を有する樹脂の溶液と炭素粒子とを混合して、炭素粒子の表面の一部に当該樹脂を付着させ、当該樹脂を付着させた炭素粒子を用いてレドックスフロー電池用電極を作製してもよい。また、炭素粒子と、結着材としての構造単位にアミド結合を有しない樹脂とを含むレドックスフロー電池用電極を作製し、当該電極表面(炭素粒子表面)に、構造単位にアミド結合を有する樹脂の溶液を塗布又は噴霧して、構造単位にアミド結合を有する樹脂を炭素粒子表面に付着させてもよい。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
炭素粒子としてのアセチレンブラックと、結着材としてのポリアミドイミドと、N−メチルピロリドン(NMP)とを混合し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製作所社製)を用いて6000rpmの回転数で3分間攪拌することにより、電極形成用スラリーを調製した(炭素粒子(アセチレンブラック)と結着材(ポリアミドイミド)との質量比=1:1)。
炭素粒子としてのアセチレンブラックと、結着材としてのポリアミドイミドと、N−メチルピロリドン(NMP)とを混合し、エクセルオートホモジナイザー(日本精機製作所社製)を用いて6000rpmの回転数で3分間攪拌することにより、電極形成用スラリーを調製した(炭素粒子(アセチレンブラック)と結着材(ポリアミドイミド)との質量比=1:1)。
予め500℃で焼成処理を施したカーボンペーパー(GDL10AA,SGL社製)の両面に、アプリケーター(テスター産業社製)を用いて上記電極形成用スラリーを塗布し、120℃で30分間乾燥することにより、レドックスフロー電池用電極(厚さ400μm)を作製した。
<充放電評価試験>
上記のようにして作製したレドックスフロー電池用電極を正極電極4及び負極電極5として用い、図2に示す構成を有する評価用単セル(正極セル室の厚み:0.3μm,負極セル室の厚み:0.3μm)を作製し、充放電評価試験を行った。正極電解液としては、硫酸バナジウム水溶液(バナジウム濃度2M,硫酸根濃度4M)を用い、負極電解液としては、硫酸バナジウム水溶液(バナジウム濃度2M,硫酸根濃度4M)を用いた。隔膜2としては、陽イオン交換膜(デュポン社製,Nafion(登録商標)NRE−212)を用いた。
上記のようにして作製したレドックスフロー電池用電極を正極電極4及び負極電極5として用い、図2に示す構成を有する評価用単セル(正極セル室の厚み:0.3μm,負極セル室の厚み:0.3μm)を作製し、充放電評価試験を行った。正極電解液としては、硫酸バナジウム水溶液(バナジウム濃度2M,硫酸根濃度4M)を用い、負極電解液としては、硫酸バナジウム水溶液(バナジウム濃度2M,硫酸根濃度4M)を用いた。隔膜2としては、陽イオン交換膜(デュポン社製,Nafion(登録商標)NRE−212)を用いた。
そして、上記評価用単セルの正極セル室31及び負極セル室32のそれぞれに、正極電解液及び負極電解液を62mL/minで循環供給しながら、電流密度80mA/cm2の条件で充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は55%であった。
〔実施例2〕
<多孔質炭素の作製>
炭素原料としてのポリアニリン樹脂と、鋳型粒子としての酸化カルシウム粒子(平均粒径5μm)とを、1:1の質量比で混合した。次に、得られた混合物に、窒素雰囲気下、1000℃で1時間の加熱処理を施し、ポリアニリン樹脂を熱分解させることにより炭素化させた。最後に、得られた炭素化物を硫酸溶液で洗浄して、鋳型粒子としてのCaOを溶出させることにより、多孔質炭素を作製した。かかる多孔質炭素のBET比表面積を測定したところ、1500m2/gであった。
<多孔質炭素の作製>
炭素原料としてのポリアニリン樹脂と、鋳型粒子としての酸化カルシウム粒子(平均粒径5μm)とを、1:1の質量比で混合した。次に、得られた混合物に、窒素雰囲気下、1000℃で1時間の加熱処理を施し、ポリアニリン樹脂を熱分解させることにより炭素化させた。最後に、得られた炭素化物を硫酸溶液で洗浄して、鋳型粒子としてのCaOを溶出させることにより、多孔質炭素を作製した。かかる多孔質炭素のBET比表面積を測定したところ、1500m2/gであった。
上記のようにして作製した多孔質炭素を、SEM(日本電子社製,JSM−6700F)及びTEM(日立ハイテクノロジーズ社製,H−7650)を用いて撮像したところ、図3及び図4に示すように、当該多孔質炭素が、その表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有し、三次元網目構造をなしていることが確認された。
<電極の作製>
炭素粒子として上記多孔質炭素を用い、結着材としてポリイミド前駆体(宇部興産社製,U−ワニス)を用いた以外は、実施例1と同様にして電極形成用スラリーを調製した(多孔質炭素と結着材(ポリイミド前駆体)との質量比=1:1)。
炭素粒子として上記多孔質炭素を用い、結着材としてポリイミド前駆体(宇部興産社製,U−ワニス)を用いた以外は、実施例1と同様にして電極形成用スラリーを調製した(多孔質炭素と結着材(ポリイミド前駆体)との質量比=1:1)。
予め500℃で焼成処理を施したカーボンペーパー(GDL10AA,SGL社製)の両面に、アプリケーター(テスター産業社製)を用いて上記電極形成用スラリーを塗布し、120℃で30分間乾燥することにより、レドックスフロー電池用電極(厚さ400μm)を作製した。
<充放電評価試験>
上記レドックスフロー電池用電極を用いた評価用単セルを、実施例1と同様にして作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は83%であった。
上記レドックスフロー電池用電極を用いた評価用単セルを、実施例1と同様にして作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は83%であった。
〔実施例3〕
炭素粒子として実施例2の多孔質炭素を用いた以外は、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極及びそれを用いた評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は85%であった。
炭素粒子として実施例2の多孔質炭素を用いた以外は、実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極及びそれを用いた評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は85%であった。
〔実施例4〕
カーボンペーパーに代えてポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布(東レ社製,トルコンペーパー)を用いた以外は実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極(厚み:200μm)及びそれを用いた評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は55%であった。
カーボンペーパーに代えてポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布(東レ社製,トルコンペーパー)を用いた以外は実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極(厚み:200μm)及びそれを用いた評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は55%であった。
なお、実施例4のレドックスフロー電池用電極及び上記不織布の厚み方向における抵抗値(Ω)を、テスター(CUSTOM社製,CDM−03D)を用いて測定したところ、実施例4のレドックスフロー電池用電極の抵抗値は5Ωであり、上記不織布は抵抗値が大きく測定不可であった。このことから、実施例4のレドックスフロー電池用電極においては、その厚さ方向に電気的導通が図れていることが確認された。これは、上記不織布の両面に電極形成用スラリーを塗布して作製されたレドックスフロー電池用電極において、不織布内部に炭素粒子(電極形成用スラリー)が入り込み、両面の炭素粒子同士が連続することで、レドックスフロー電池用電極の厚さ方向に電気的導通が図れたものと考えられる。
〔比較例1〕
結着材としてのポリアミドイミドに代えてPVDF−HFP(ポリフッカビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンの共重合体)を用いた以外は実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極を作製した。得られた電極を正極電極及び負極電極として用い、実施例1と同様にして評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は10%であった。
結着材としてのポリアミドイミドに代えてPVDF−HFP(ポリフッカビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンの共重合体)を用いた以外は実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用電極を作製した。得られた電極を正極電極及び負極電極として用い、実施例1と同様にして評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は10%であった。
〔比較例2〕
レドックスフロー電池用電極(正極電極及び負極電極)として、500℃で焼成処理を施したカーボンペーパー(GDL10AA,SGL社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は52%であった。
レドックスフロー電池用電極(正極電極及び負極電極)として、500℃で焼成処理を施したカーボンペーパー(GDL10AA,SGL社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして評価用単セルを作製し、充放電評価試験を行った。その結果、電池利用率は52%であった。
実施例1、比較例1及び比較例2の結果から、実施例1の炭素粒子と結着材としてのポリアミドイミドとを含むレドックスフロー電池用電極を用いることで、電解液に対する親和性の低いPVDF−HFPを結着材として含む電極や、従来のカーボンフェルトからなる電極を用いたレドックスフロー電池に比して電池利用率を向上させ得ることが確認された。
また、実施例2及び3の結果から、炭素粒子として上記多孔質炭素を用いることで、電池利用率をさらに向上させ得ることが確認された。実施例2及び3のレドックスフロー電池用電極を用いたレドックスフロー電池において電池利用率が向上した理由は、表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質炭素が、電解液に対する親和性が高く、電解液が多孔質炭素の開気孔を通じて内部に浸入しやすいことで、電解液中のかつ物質の酸化還元反応を生じさせる反応場が増えたためであると推認される。そのため、実施例2及び3の多孔質炭素を含むレドックスフロー電池用電極を用いることで、レドックスフロー電池の充放電特性、すなわち電池性能をさらに向上させ得ると考えられる。
さらに、実施例4の結果から、炭素粒子を支持するための多孔質シート基材としてポリマー繊維からなる不織布を使用することで、電池利用率を低下させることなくレドックスフロー電池用電極の厚みを低減させ得ることが確認された。このことから、炭素粒子を支持するための多孔質シート基材としてポリマー繊維からなる不織布を使用することで、レドックスフロー電池の単位体積当たりの電池容量を増大させ得ると考えられとともに、従来のカーボンフェルトに比して安価にレドックスフロー電池用電極を作製することができる。
本発明のレドックスフロー電池用電極は、再生可能エネルギーの大量導入に伴う余剰電力の貯蓄、負荷平準化等を図るための大容量の蓄電池用電極として利用可能である。
1…レドックスフロー電池
2…隔膜
31…正極セル室
32…負極セル室
4…正極電極(レドックスフロー電池用電極)
5…負極電極(レドックスフロー電池用電極)
6…正極循環機構
7…負極循環機構
2…隔膜
31…正極セル室
32…負極セル室
4…正極電極(レドックスフロー電池用電極)
5…負極電極(レドックスフロー電池用電極)
6…正極循環機構
7…負極循環機構
Claims (9)
- 炭素粒子と、構造単位にアミド結合を有する樹脂とを含むことを特徴とするレドックスフロー電池用電極。
- 前記構造単位にアミド結合を有する樹脂を結着材として含むことを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記構造単位にアミド結合を有する樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド前駆体、並びにポリイミド及びポリイミド前駆体の樹脂混合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記レドックスフロー電池用電極がシート状に構成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記炭素粒子が、表面の少なくとも2ヶ所に開口する開気孔を有し、三次元網目構造をなす多孔質炭素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記多孔質炭素は、炭素前駆体と鋳型粒子との混合物に加熱処理を施して当該炭素前駆体を炭化した後、前記鋳型粒子を除去することにより製造されるものであり、
前記鋳型粒子が、アルカリ土類金属の酸化物であることを特徴とする請求項5に記載のレドックスフロー電池用電極。 - 前記炭素粒子を支持する基材をさらに含み、
前記基材の少なくとも一方面上に、前記炭素粒子が支持されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。 - 前記基材が、ポリマー繊維を含む基布であることを特徴とする請求項7に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極からなる正極電極及び負極電極をそれぞれ含む正極セル室及び負極セル室と、
前記正極セル室及び前記負極セル室を分離する隔膜と、
正極活物質を含む正極電解液を前記正極セル室に循環供給させる正極循環機構と、
負極活物質を含む負極電解液を前記負極セル室に循環供給させる負極循環機構と
を備えることを特徴とするレドックスフロー電池。
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JP2014218970A JP2016085901A (ja) | 2014-10-28 | 2014-10-28 | レドックスフロー電池用電極及びそれを用いたレドックスフロー電池 |
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---|---|---|---|---|
JP2017139222A (ja) * | 2016-02-01 | 2017-08-10 | 台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司Taiwan Carbon Nano Technology Corporation | 窒素含有炭素電極の製造方法及びレドックスフロー電池 |
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2014
- 2014-10-28 JP JP2014218970A patent/JP2016085901A/ja active Pending
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