以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る計器診断装置および計器診断装置が適用される設備の一例を示す概略構成図である。また、図2は、本実施形態に係る計器診断装置を用いたシステムの模式図である。
図1では、プラント設備の配管100を例示している。このような設備では、稼働中の状態を把握するため、計器(例えば、圧力検出器、流量検出器、水位検出器)50として伝送器が設置される。計器50による検出結果は、監視装置60に入力されることで稼働中の状態が監視される。
計器50は、カプセル部51と、アンプ部52とを有する。カプセル部51は、配管100から分岐接続されたプロセス検出配管53に接続され、配管100に流通される流体の圧力や流量や水位を検出する。具体的に、カプセル部51は、ダイヤフラムを有し、プロセス検出配管53から伝達された圧力を電気信号へ変換するため、例えば、力平衡式、静電容量式、または半導体式などの機構を備える。アンプ部52は、カプセル部51に伝達された圧力を電気信号に変換して出力する。アンプ部52は、検出の基準となるゼロ点調整、および検出の上限値と下限値の範囲となるスパン調整ができるように構成されている。アンプ部52から出力された信号は、監視装置60に入力される。
図1に示す計器(例えば圧力検出器)50に対し、本実施形態の計器診断装置1は、計測部2が接続される。計測部2は、プロセス検出配管53の下流で開閉弁55を介して接続された加圧装置56から、計器50のカプセル部51の入力側に接続されるように、着脱可能に設けられている。また、計測部2は、アンプ部52から出力された信号が入力可能に設けられている。例えば、計測部2は、プロセス検出配管53の下流に開閉弁55を介して接続された加圧装置56から入力された圧力が、計器50のカプセル部51の入力側に伝達されて、そのときにアンプ部52から出力された信号を入力する。よって、計測部2は、計器50の入出力特性や静圧特性などの計測情報を取得する。また、計測部2は、計器50の近傍に配置されるため、計器50の周囲温度である計測情報を取得することができる。この計測部2は、計器50の診断に際してプロセス検出配管53に接続される。この診断の際、計器50を設備側から隔離するため、プロセス検出配管53は、計測部2が接続される部位よりも設備側であって上流側に開閉弁54が設けられている。
図2に示すように、本実施形態の計器診断装置1が用いられるプラント設備においては、区域Aと区域Bとに区別される。区域Aでは、当該区域A内への持ち込み物および区域Bへの持ち出し物が厳重に管理されており、区域Aへの持ち込み物が少ないことが望ましい。
図2に示す計器診断装置1は、区域Aに持ち込み可能な、例えば、タブレット型コンピュータと呼ばれるペン入力可能な携帯端末である。この計器診断装置1は、タッチパネル表示装置30と、入力装置32と、メモリスロット33とを含んでいる。タッチパネル表示装置30は、液晶パネルなどで情報を表示可能である。さらに、タッチパネル表示装置30は、ペン型入力装置30aと近接または接触すると、液晶パネル上でのペン型入力装置30aの位置情報およびペン型入力装置30aの入力指示情報を表示しつつ、計器診断装置1の構成に対して伝達できる。なお、ペン型入力装置30aを使用せず、人間の指を用いて指の位置情報および入力指示情報を表示しつつ、計器診断装置1の構成に対して伝達してもよい。
入力装置32は、キーボード34およびポインタ35を含んでいる。キーボード34は、作業者による入力により文字情報などを計器診断装置1の構成に対して伝達できる。ポインタ35は、液晶パネル上でのポインタ35の位置情報およびポインタ35の入力指示情報を計器診断装置1の構成に対して伝達できる。なお、計器診断装置1は、タッチパネル表示装置30を有していれば、入力装置32を省略した構成とすることもできる。
メモリスロット33は、メモリカード36を内在可能である。メモリカード36は、記憶媒体である。計器診断装置1は、メモリスロット33内にメモリカード36を内在させた状態で、情報を読み書きできる。メモリカード36は、フラッシュメモリが小型で好ましいが、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、MO、DVD−Rなどのコンピュータで読み書き可能な情報記憶媒体であれば限定されるものではない。
計器診断装置1は、計測部2および情報入力装置3と接続可能である。計測部2はアンプ部52の出力信号を計測するデジタルマルチメータなどとカプセル部51に変位を与える入力装置などであり、信号線isを介して計器診断装置1の構成に対して計測情報を伝達可能である。情報入力装置3は、デジタルカメラやマイクなどを有する音声認識装置、ICタグなどの個体識別装置などの機器である。情報入力装置3は、信号線ipを介して画像情報、動画情報、音声情報などを計器診断装置1の構成に対して入力可能である。
この計器診断装置1は、無線通信装置37または有線通信回線38により、区域Bのサーバシステム40と通信可能である。区域Bのサーバシステム40は、メモリスロット41を有している。メモリスロット41は、メモリスロット33と同じ構成である。サーバシステム40は、表示装置42と、入力装置43と、に接続される。また、サーバシステム40は、無線通信装置44または有線通信回線38により、区域Aの計器診断装置1と通信可能である。ここで、無線通信装置37と無線通信装置44とは、PHS(Personal Handy-phone System)などの無線通信回線45を介して通信可能である。このように、サーバシステム40は、区域Bにおいて区域Aの計器診断装置1と通信することで、計器診断装置1から各情報を取得することができる。
図1に戻り、本実施形態の計器診断装置1は、表示部4と、入力部5と、記憶部6と、制御部7と、を有する。表示部4は、図2に示す上述したタッチパネル表示装置30である。入力部5は、図2に示す上述した入力装置32,43やメモリスロット33である。記憶部6は、RAM(Random Access Memory)を含んでおり、計器診断装置1に入力された各情報を記憶したり、本実施形態の計器診断プログラムを記憶したりするものである。制御部7は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)であり、計器診断装置1を統括的に制御するものである。
以下、計器診断装置1の制御部7が実行する計器診断制御である計器診断方法、およびこの方法を実行するための計器診断プログラムについて説明する。図3は、本実施形態に係る計器診断方法全体のフローチャートである。図4、図5、図7〜図8は、本実施形態に係る計器診断方法における診断前情報入力の一例を示す図表である。図6は、図5における供用区間を説明する図である。図9は、本実施形態に係る計器診断方法の変化要因除去についての要因区分を示す図表である。図10は、本実施形態に係る計器診断方法における変化要因除去のフローチャートである。図11は、本実施形態に係る計器診断方法における入出力特性診断のフローチャートである。図12は、本実施形態に係る計器診断方法における静圧特性診断のフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態の計器診断方法は、診断前情報入力(ステップS1)、変化要因除去(ステップS2)、診断(ステップS3)の工程を行う。
ステップS1の診断前情報入力は、計器診断装置1の入力部5(入力装置32,43)により入力されるもので、使用される計器50に関する事項であり、図4に示す計器50の機種、図5に示す計器50の供用期間、図7に示す計器50の使用環境、シールセンサの考慮、図8に示す計器50の計器特性データ(計器50の個体情報)、がある。この入力された情報は、記憶部6に記憶される。
計器50の種類は、図4に示すように、例えば、上述した力平衡式、静電容量式、または半導体式の種類がある。計器診断装置1の制御部7は、この計器50の種類の入力に関連し、単体精度が設定される。単体精度とは、計測部2から入力する計器50の特性データの誤差に対する計器50の種類ごとの判定の目安として用いられる。
計器50の供用期間は、図5および図6に示すように、例えば、A期間、B期間、C期間に分類される。計器診断装置1の制御部7は、この計器50の供用期間の入力に関連し、診断の目安となる判定点が設定される。本実施形態では、図5において、例えば、A期間の場合は、供用期間の初期であるから初期故障とし、B期間は、供用期間の中期であるから偶発故障とし、C期間の場合は、供用期間の後期であるから劣化故障としている。なお、図6に示すように、故障率は、バスタブ形状となったA期間の初期やC期間の後期が比較的高く、B期間の中期は安定使用されるため比較的低い傾向にある。
計器50の使用環境は、計器50の部品が劣化する可能性の高い環境に注目するため、図7に示すように、例えば、計器50に振動・衝撃が加わっているか、計器50に掛かるプロセス圧力が高圧であるか、計器50の周囲温度が高温であるか、放射線(プラント設備が原子力設備の場合)を考慮する必要があるかである。計器診断装置1の制御部7は、この計器50の使用環境に関連し、計器50の部品がストレスを受けてゼロ点・スパンの変化を注意点としている。振動・衝撃、高圧、高温、放射線のレベルは計器50が影響を受ける範囲か事前に評価して設定されるものである。
シールセンサの考慮は、計器50のシール部にシールセンサが設けられている場合がある。計器診断装置1の制御部7は、シールセンサ付きの計器50である旨の入力に関連し、シールセンサによる誤差を考慮して上記単体精度にシールセンサの誤差を加えて設定される。
計器50の計器特性データは、工場出荷時における計器50の特性データであり、図8に示すように、例えば、入出力特性、温度特性、静圧特性に分類される。
ステップS2の変化要因除去は、計器50が故障となり取替が必要を診断する計器診断において外乱となる要素を除去することである。図9に示すように、計器50の故障ではない点検作業における不適合で誤差を発生する要因、設置環境で誤差を発生する要因を除外するため各要因区分と、各要因区分の各項目と、各項目について特性データが不適合となる不適合内容と、不適合内容を起因とする計器50の挙動と、不適合の場合の対応策と、その処置と、を含む。計器診断装置1の制御部7は、これらに従って計器診断に影響を及ぼす変化要因を除去する。なお、本実施形態の計器診断方法においては、設備の点検時に行うものである。そして、計器50の挙動は、前の点検時の挙動と比較することでその変化が分かる。
具体的に、変化要因として除去したい項目は、図9に示す要因区分の点検作業、設置環境である。
図9に示される要因区分のうちの点検作業において、ラインアップ、周囲温度、計測器類、点検作業の項目がある。
点検作業のそれぞれの項目(ラインアップ、計測器類、点検作業)の不適合内容からゼロ点変化、およびスパン変化が発生する。この変化は計器50の異常ではない。これらの計器の挙動が認められた場合には図9対応策に示す前点検データとの比較、管理項目の確認などを行うことで変化要因の除去ができる。また、周囲温度は、その不適合内容に、点検時の周囲温度があり、この周囲温度の違いにより計器50の挙動は、ゼロ点・スパンが変化するようになる。従って、対応策としては、前点検時との周囲温度差を監視することで点検時の周囲温度差があったことを確認することができる。そして、処置として計器50の周囲温度を管理することで変化要因を除去できる。
次に、要因区分のうちの設置環境において、周囲温度、振動・衝撃、放射線、プロセス圧の項目がある。
周囲温度は、その不適合内容に、計器50が高温にさらされた場合に温度ストレスにより計器50の挙動は、ゼロ点・スパンが変化するようになる。従って、対応策としては、設置環境温度を監視することで計器50が高温にさらされたかどうか確認することができる。そして、処置として計器50の周囲温度を改善することで変化要因を除去できる。
振動・衝撃は、その不適合要因に、計器50の調整部の調整位置の移動があり、この場合の計器50の挙動は、ゼロ点・スパンが変化するようになる。従って、対応策としては、運転時の振動調査や、衝撃に対して防護柵を設置することである。そして、処置として、振動・衝撃対策を行うことで変化要因を除去できる。
放射線は、その不適合要因に、計器50のアンプ部52における電子部品の劣化があり、この場合の計器50の挙動は、計器50の入出力特性が異常変化するようになる。従って、対応策としては、耐放射線カバーを設置することの提案ができる。そして、処置として、放射線に強い計器50の選定や定期取り替えを実施することで外的要因を除去できる。
プロセス圧は、計器50が高圧のプロセスに設置された場合に高圧によりカプセル部51がストレスを受けゼロ点・スパンが変化するようになる。従って、対応策としては、設置プロセスの圧力を監視することで計器50が高圧にさらされたかどうか確認することができる。そして、処置としてさらに高圧に強い計器50の選定や定期取替を実施することで変化要因を除去できる。
ステップS2の変化要因除去では、図1および図10に示すように、計器診断装置1の制御部7は、計測部2から入出力特性を取得する(ステップS11)。そして、制御部7は、計器50の周囲温度を取得し、当該周囲温度を考慮する(ステップS12)。具体的に、ステップS12では、例えば、標準温度を20℃±5℃とし、計器50の周囲温度が標準温度の範囲を逸脱する場合、先の診断前情報入力で入力された工場出荷時の温度特性データに基づいて、周囲温度による特性値の変化量を算出して差し引くことで、外部要因である周囲温度による影響を除去する。
次に、取得した入出力特性において、ゼロ点およびスパン変化を判定する(ステップS13)。ステップS13において、制御部7は、先の診断前情報入力で入力された計器50の種類による単体精度に基づいて、当該単体精度に対する誤差を判定する。そして、誤差が大きい場合(ステップS13:誤差大)、制御部7は、ゼロ点およびスパン変化要因を確認する(ステップS14)。一方、誤差が小さい場合(ステップS13:誤差小)、制御部7は、取得した入出力特性に外的誤差要因が無い正しいものと判定して本制御を終了する。
ステップS14において、制御部7は、ゼロ点およびスパン変化要因を確認する。ゼロ点およびスパン変化要因は、図9に示される点検作業(ラインアップ、周囲温度、計測器類、点検作業)および設置環境(周囲温度、振動衝撃、プロセス圧)があり、これらが要因となるゼロ点およびスパン変化があるかを確認する。そして、ゼロ点およびスパン変化の要因が有る場合(ステップS14:要因有)、制御部7は、全ての変化要因の除去を作業員に促して除去された後(ステップS15)、ステップS11に戻って入出力特性を再度取得する。また、ゼロ点変化の要因が無い場合(ステップS14:要因無)、制御部7は、取得した入出力特性に外的誤差要因が無い正しいものと判定して本制御を終了する。
なお、図10には明示していないが、計器50のシール部にシールセンサが設けられている場合、ステップS12と並行し、シールセンサによる誤差を考慮して単体精度に誤差(例えば、±0.5%)を加える。また、ステップ14において制御部7は、シールセンサに起因するゼロ点およびスパン変化要因(例えば、周囲温度によるゼロ点変化など)を確認し、ステップS15においてゼロ点変化要因の除去を作業員に促して除去させる。
ステップS3の診断では、ステップS2の変化要因除去において、変化要因除去が除去された特性データについて、図11に示す入出力特性の診断と、図12に示す静圧特性の診断とを行う。
図3に示すステップS3の診断において、入出力特性の診断では、図11に示すように、計器診断装置1の制御部7は、上述した変化要因除去の手順において正しいと判定された入出力特性を取得する(ステップS21)。そして、制御部7は、入出力特性カーブについて判定する(ステップS22)。具体的に、ステップS22では、例えば、図6で示すレンジアビリティの分類を考慮した判定値とし、この判定値が範囲内であれば(ステップS22:範囲内)、制御部7は、適した入出力特性と診断し、本制御を終了する。一方、判定値が範囲を超過している場合(ステップS22:範囲超過)、制御部7は、今回の診断と過去の診断とを含めた範囲超過回数が初回であるか(ステップS23:初回)、2回以上であるか(ステップS23:2回以上)を確認する。
ステップS23において、範囲超過回数が初回である場合(ステップS23:初回)、制御部7は、診断対象の計器50について供用期間が2年以内か否かを確認する(ステップS24)。一方、ステップS23において、範囲超過回数が2回以上である場合(ステップS23:2回以上)、制御部7は、後述するゼロ点・スパン評価(ステップS30)および直線性・ヒステリシス評価B(ステップS37)に進む。
ステップ24において、計器50の供用期間が2年以内であれば(ステップS24:Yes)、直線性・ヒステリシス評価A(ステップS25)に進む。一方、ステップS24において、計器50の供用期間が2年を超えている場合(ステップS24:No)、後述するゼロ点・スパン評価(ステップS30)および直線性・ヒステリシス評価B(ステップS37)に進む。
ステップ25において、直線性・ヒステリシス評価Aは、今回診断において取得した入出力特性の直線性・ヒステリシスを、工場出荷時の入出力特性の直線性・ヒステリシスと比較する。そして、制御部7は、ステップS25の評価に基づき、特性変化判定Aを実行する(ステップS26)。具体的に、ステップS26では、例えば、ステップS25において比較した入出力特性の直線性・ヒステリシスが、メーカが保証する保証精度の範囲において工場出荷時を基準として1/2を判定値とする。そして、ステップS26において、1/2未満であって判定値を超過している場合(ステップS26:判定値超過)、計器50が初期不良であると診断して計器50の取り替えを推奨し(ステップS27)、本制御を終了する。一方、ステップS26において、1/2以上であって判定値内である場合(ステップS26:判定値内)、制御部7は、計器50が初期不良ではないと診断して計器50のゼロ点・スパンの調整(ステップS28)、および調整量の記録を促し(ステップS29)、調整量の記録が行われた場合、本制御を終了する。
また、ステップS30のゼロ点・スパン評価は、ゼロ点・スパンのドリフト量を評価する。そして、制御部7は、ステップS30の評価に基づき、前診断から逆シフトであるかの判定を実行する(ステップS31)。そして、ステップS31において、前診断から逆シフトである場合(ステップS31:Yes)、制御部7は、計器50のゼロ点・スパンの調整(ステップS28)、および調整量の記録を促し(ステップS29)、調整量の記録が行われた場合、本制御を終了する。ただし、ステップS31において、前診断から逆シフトである場合(ステップS31:Yes)、前診断でのゼロ点・スパンの変化が変化要因による可能性があるため、図には明示しないが、ステップS28に進む前に、上述した変化要因除去の手順のステップS13(図10に示す)に進み、変化要因を除去することが好ましい。そして、変化要因を除去した入出力特性についてステップS22に進んで再度診断する。
一方、ステップS31において、前診断から逆シフトでない場合(ステップS31:No)、制御部7は、ゼロ点・スパン変化のドリフト量が年間当たりで判定値(例えば1%)を超える変化か否かの判定を実行する(ステップS32)。ステップS32において、判定値(1%)を超える場合(ステップS32:判定値超過)、制御部7は、ゼロ点・スパンの変化傾向の判定を実行する(ステップS33)。そして、ステップS33において、ゼロ点・スパンの変化が漸増傾向である場合(ステップS33:漸増傾向)、制御部7は、計器50の取り替えを推奨し(ステップS34)、本制御を終了する。なお、ゼロ点・スパンの変化が漸増傾向であるとは、増加および減少のいずれであってもこれが漸次継続されれば漸増傾向として評価する。なお、ステップS32において、ゼロ点・スパン変化のドリフト量が年間当たりで判定値(1%)以下である場合(ステップS32:判定値以下)、後述するアンド判定(ステップS40)に進む。
一方、ステップS33において、ゼロ点・スパンの変化が不安定である場合(ステップS33:不安定)、制御部7は、診断対象の計器50について供用期間が10年超えるか否かを確認する(ステップS35)。なお、ステップS33の判定において、ゼロ点やスパンの変化が診断ごとに±で交互に変化している場合はドリフトとは評価できないため不安定とする。そして、ステップS35において、計器50の供用期間が10年超えていれば(ステップS35:Yes)、制御部7は、計器50の取り替えを推奨し(ステップS34)、本制御を終了する。一方、ステップS35において、計器50の供用期間が10年未満であれば(ステップS35:No)、制御部7は、エンジニアリング判断を推奨する(ステップS36)。このステップS36のエンジニアリング判断は、計器50の設置環境(プロセスの影響など)を考慮して計器50の特性変化が診断ごとにどのように変化しているかを作業員が評価し、計器50を継続使用するか否かを作業員が判断することになる。そして、継続使用するとの判断の入力があった場合、制御部7は、計器50のゼロ点・スパンの調整(ステップS28)、および調整量の記録を促し(ステップS29)、調整量の記録が行われた場合、本制御を終了する。一方、診断ごとに誤差が増加する傾向であって継続使用をしないとの判断の入力があった場合、制御部7は、計器50の取り替えを推奨し(ステップS34)、本制御を終了する。
また、ステップS37の直線性・ヒステリシス評価Bでは、制御部7は、今回診断において取得した入出力特性の直線性・ヒステリシスを、全ての前診断における入出力特性の直線性・ヒステリシスの平均と比較する。なお、直線性は、凹型や凸型の変化を評価し、ヒステリシスは、その増減を評価する。そして、制御部7は、ステップS37の評価に基づき、特性変化判定Bを実行する(ステップS38)。具体的に、ステップS38では、例えば、ステップS37において比較した入出力特性の直線性・ヒステリシスが、メーカが保証する保証精度の範囲において全ての前診断における平均を基準として1/2を判定値とする。そして、ステップS38において、直線性・ヒステリシスが1/2未満であって判定値を超過している場合(ステップS38:判定値超過)、制御部7は、直線性・ヒステリシスの変化傾向の判定を実行する(ステップS39)。一方、ステップS38において、直線性・ヒステリシスが1/2以上であって判定値内である場合(ステップS38:判定値内)、アンド判定(ステップS40)に進む。
ステップS39において、直線性・ヒステリシスの変化が漸増傾向である場合(ステップS39:漸増傾向)、制御部7は、計器50の取り替えを推奨し(ステップS34)、本制御を終了する。なお、直線性・ヒステリシスの変化が漸増傾向であるとは、増加および減少のいずれであってもこれが漸次継続されれば漸増傾向として評価する。一方、ステップS39において、直線性・ヒステリシスの変化が不安定である場合(ステップS39:不安定)、制御部7は、診断対象の計器50について供用期間が10年超えるか否かを確認する(ステップS35)。なお、ステップS39の判定において、直線性・ヒステリシスの変化が診断ごとに±で交互に変化している場合はドリフトとは評価できないため不安定とする。
ステップS40のアンド判定では、ステップS32において、ゼロ点・スパン変化のドリフト量が年間当たりで判定値(1%)以下である場合(ステップS32:判定値以下)と、ステップS38において、直線性・ヒステリシス評価が判定値内である場合(ステップS38:判定値内)とが、共に判定されれば(ステップS40:Yes)、制御部7は、計器50のゼロ点・スパンの調整(ステップS28)、および調整量の記録を促し(ステップS29)、調整量の記録が行われた場合、本制御を終了する。一方、ステップS40のアンド判定は、ステップS32において、ゼロ点・スパン変化のドリフト量が年間当たりで所定範囲(1%)以下である場合(ステップS32:判定値以下)と、ステップS38において、直線性・ヒステリシス評価が判定値内である場合(ステップS38:判定値内)とが、共に判定されなければ(ステップS40:No)、制御部7は、計器50の取り替えを推奨し(ステップS34)、本制御を終了する。
図3に示すステップS3の診断において、静圧特性の診断では、図12に示すように、計器診断装置1の制御部7は、計測部2から静圧特性を取得する(ステップS51)。そして、制御部7は、静圧特性についてシフト量を判定する(ステップS52)。
ステップ52において、伝送器の機種別に決めた基準精度を基準にした判定とし、シフト量を判定する。そして、判定値が範囲内であれば(ステップS52:判定値内)、制御部7は、適した静圧特性と診断し、本制御を終了する。一方、判定値が範囲を超過している場合(ステップS52:超過)、制御部7は、工場出荷時の静圧特性データと比較する(ステップ53)。
ステップ53において、工場出荷時の静圧特性データと比較した後、制御部7は、特性変化を判定する(ステップS54)。そして、特性変化が判定値内であれば(ステップS54:判定値内)、制御部7は、計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。
一方、ステップS54において、判定値が範囲を超過している場合(ステップS54:超過)、制御部7は、例えば図5で示す供用期間ごとに分類(初期、偶発、劣化)する(ステップS61)。
ステップS61において、供用期間が初期故障期間内と確認された場合(ステップS61:初期故障期間内)、制御部7は、診断対象の計器50について、工場出荷時の特性データと比較する(ステップS62)。
ステップ62で比較した変化量に基づき、診断対象の計器50を使用するにあたって許容される最大変化量を判定値として判定する(ステップS63)。そして、ステップS63において、判定値が範囲内であれば(ステップS63:判定値内)、エンジニアリング判断(ステップ64)にて継続使用の可否を決める。エンジニアリング判断において、継続使用可能と判断されれば、計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。また、エンジニアリング判断において、使用不可と判断されれば、次回点検時の計器取替を推奨(ステップS65)して、当該点検作業時は計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。
一方、ステップS61において供用期間が初期故障期間外と確認された場合(ステップS61:初期故障期間外)、制御部7は、診断対象の計器50について、経年劣化、例えば、静圧特性の変化傾向を評価する(ステップS71)。
ステップS71で評価した静圧特性の変化傾向に基づき、静圧特性の変化傾向を確認する(ステップS72)。そして、ステップS72において、安定傾向であれば(ステップS72:安定)、制御部7は、計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。また、ステップS72において、変化傾向が漸増傾向であれば(ステップS72:漸増傾向)、診断対象の計器50を使用するにあたって許容される最大変化量を判定値として判定する(ステップS73)。
ステップS73において、判定値内であれば(ステップS73:判定値内)、エンジニアリング判断(ステップ64)にて継続使用の可否を決める。エンジニアリング判断において、継続使用可能と判断されれば、計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。また、エンジニアリング判断において、使用不可と判断されれば、次回点検時の計器取替を推奨(ステップS65)して、当該点検作業時は計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。
一方、ステップS73において、判定値を超過していれば(ステップS73:超過)、制御部7は、次回点検時の計器取替を推奨(ステップS65)して、当該点検作業時は計器50のゼロ点の調整(ステップS55)、および調整量の記録を促し(ステップS56)、本制御を終了する。
このように、本実施形態の計器診断方法は、図10に示すように、計器50の特性を取得する取得工程(ステップS11)と、取得工程における作業状況を確認する確認工程(ステップS14)と、作業状況を加味し取得した特性が正しいか否かを判定する判定工程(ステップS13)と、を含む。
従って、取得した計器50の特性が正しいか否かを判定するにあたり、特性を取得する際の特性を変化させる変化要因を除去して正しい特性を得ることができ、この正しい特性により計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断方法では、計器50の使用環境を把握する把握工程(ステップS12,ステップS14)をさらに含み、判定工程において使用環境を加味して取得した特性が正しいか否かを判定することが好ましい。
従って、取得した計器50の特性が正しいか否かを判定するにあたり、計器50の使用環境、例えば、ステップS12の計器50の周囲温度や、ステップS14のゼロ点およびスパン変化におけるプロセスの影響(振動など)の有無および衝撃が与えられる工事の有無、を加味することで、この使用環境において特性を変化させる変化要因を確認することができる。この結果、特性を変化させる変化要因を除去して正しい特性を得ることができ、この正しい特性により計器50の正確な診断を行うことができる。プロセスとは、計測対象物に内包される媒体を意味する。
また、本実施形態の計器診断方法では、図3に示すように、計器50の個体情報を記録する記録工程(ステップS1)と、前記判定工程において特性が正しいと判定された場合、当該特性について個体情報に基づき診断を行う診断工程(ステップS3)と、をさらに含むことが好ましい。
従って、取得した計器50の特性を診断する場合、計器50の個体情報であって、工場出荷時データ(例えば、入出力特性、温度特性、静圧特性)を記録し、この工場出荷時データを加味することで、工場出荷時データを基準とした計器50の特性の診断を行うことができる。この結果、計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断方法では、前記診断工程は、以前の診断における調整後に取得した特性と、前記判定工程において正しいと判定された特性とを比較することが好ましい。
従って、取得した計器50の特性を診断する場合、以前の診断における調整後に取得した特性と、判定工程において正しいと判定された特性とを比較することで、計器50の特性の変化傾向を知り、計器50の特性の変化傾向に応じて計器50の特性の診断を行うことができる。この結果、計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断プログラムは、計器50の特性を取得する取得手順と、取得手順における作業状況を確認する確認手順と、作業状況を加味して取得した特性が正しいか否かを判定する判定手順と、を実行させる。
また、本実施形態の計器診断プログラムでは、計器50の使用環境を把握する把握手順をさらに含み、判定手順において使用環境を加味して取得した特性が正しいか否かを判定することが好ましい。
また、本実施形態の計器診断プログラムでは、計器50の個体情報を記録する記録手順と、判定手順において取得した特性が正しいと判定された場合、当該特性について個体情報に基づき診断を行う診断手順と、をさらに実行させることが好ましい。
また、本実施形態の計器診断プログラムでは、前記診断手順は、以前の診断における調整後に取得した特性と、前記判定手順において正しいと判定された特性とを比較することが好ましい。
このような計器診断プログラムによれば、上述した計器診断方法を実施することができる。
また、本実施形態の記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能に設けられており、上述した計器診断プログラムが記憶されている。
このような計器診断プログラムによれば、上述した計器診断方法をコンピュータにより実施することができる。
また、本実施形態の計器診断装置1は、図1に示すように、計器50の特性を取得する際の作業状況が記憶される記憶部6と、前記作業状況を加味して取得した特性が正しいか否かを判定する制御部7と、を含む。
この計器診断装置1によれば、取得した計器50の特性が正しいか否かを判定するにあたり、特性を取得する際の作業状況、例えば、特性を変化させる変化要因を除去して正しい特性を得ることができ、この正しい特性により計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断装置1では、記憶部6は、計器50の使用環境が記憶され、制御部7は、使用環境を加味して取得した特性が正しいか否かを判定する。
この計器診断装置1によれば、取得した計器50の特性が正しいか否かを判定するにあたり、計器50の使用環境、例えば、計器50の周囲温度や、プロセスの影響(振動など)の有無および衝撃が与えられる工事の有無、を加味することで、この使用環境において特性を変化させる変化要因を確認することができる。この結果、特性を変化させる変化要因を除去して正しい特性を得ることができ、この正しい特性により計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断装置1では、記憶部6は、計器50の個体情報が記憶され、制御部7は、取得した特性が正しいと判定した場合、当該特性について個体情報に基づき診断を行う。
この計器診断装置1によれば、取得した計器50の特性を診断する場合、計器50の個体情報であって、工場出荷時データ(例えば、入出力特性、温度特性、静圧特性)を記録し、この工場出荷時データを加味することで、工場出荷時データを基準とした計器50の特性の診断を行うことができる。この結果、計器50の正確な診断を行うことができる。
また、本実施形態の計器診断装置1では、記憶部6は、以前の診断における調整後に取得した特性が記憶され、制御部7は、取得した特性が正しいと判定した場合、当該特性と以前の前記特性とを比較する。
この計器診断装置1によれば、取得した計器50の特性を診断する場合、以前の診断における調整後に取得した特性と、判定工程において正しいと判定された特性とを比較することで、計器50の特性の変化傾向を知り、計器50の特性の変化傾向に応じて計器50の特性の診断を行うことができる。この結果、計器50の正確な診断を行うことができる。