JP2016084481A - フラット面用表面保護フィルムの巻回体、およびその製造方法 - Google Patents

フラット面用表面保護フィルムの巻回体、およびその製造方法 Download PDF

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豊嶋 克典
Katsunori Toyoshima
克典 豊嶋
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Abstract

【課題】本発明の目的は、どの部分から繰り出した表面保護フィルムであってもフラット面への粘着力が一定の範囲内にある、フラット面用表面保護フィルムの巻回体を提供することにある。
【解決手段】飽和脂肪酸ビスアミドおよびポリオレフィン系樹脂を含有する成形原料A、および
スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する成形原料B
を共押出する工程を含む製造方法によって製造され、かつ
(a)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる、厚さが1〜100nmである離型層、
(b)基材層としてのポリオレフィン系樹脂層、および
(c)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
をこの順で有するフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
【選択図】なし

Description

本発明は、フラット面用表面保護フィルムの巻回体、およびその製造方法に関する。
従来から、光学デバイス、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板等、様々の部材の表面を保護するために、フィルム状の基材の一方の主面上に粘着層が配置された表面保護フィルムが広く用いられている。当該粘着層には、ゴム系粘着剤が汎用されている。
一方、表面保護フィルムは、通常、円筒の形状に巻き取られた巻回体(これは、巻物と呼ばれる場合がある)として取り扱われる。ゴム系粘着剤を用いた表面保護フィルムは、一般的に、巻回体から繰り出すときに必要な力(すなわち、展開力)が大きく、更に、巻回体として長期間保管すると、この展開力が次第に上昇するといった問題もあった。
展開力の大きな表面保護フィルムは、表面保護フィルムが引っ張られた状態で巻回体から繰り出されるので、被着体に表面保護フィルムを貼り付けたときに表面保護フィルムが被着体との接着面から浮きあがる箇所(これは、「浮き」と呼ばれる場合がある)が発生するといった問題点があった。このため、展開力が小さい(このことは、「軽展開(である)」と呼ばれる場合がある)表面保護フィルムが求められていた。
このような要求に対して、特許文献1には、
(A)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる厚さ1〜100nmの離型層
(B)基材層としてのポリオレフィン系樹脂、および
(C)粘着層としてスチレン系エラストマー層
を積層することにより、展開力が小さく、かつ浮きが無いプリズムシート用表面保護フィルムが提案されている。
特許4565058号公報
表面保護フィルムの所定の被着体への粘着力は、ばらつきが無いことが望ましい。
しかし、巻回体の形態で保管した特許文献1に記載の表面保護フィルムをフラット面(平面)に適用した場合、当該巻回体の外側(特に、外周付近)から繰り出した表面保護フィルムの粘着力に比べて、内側(特に、軸付近(巻回体が巻芯を有する場合は巻芯付近))から繰り出した表面保護フィルムの粘着力が無視できない程度に大きかったので、これをフラット面用表面保護フィルムとして使用することはできなかった。
本発明の目的は、どの部分から繰り出した表面保護フィルムであってもフラット面への粘着力が一定の範囲内にある、フラット面用表面保護フィルムの巻回体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このようなフラット面用表面保護フィルムの巻回体の製造方法を提供することにある。
本発明は、次の態様を含む。
項1.
飽和脂肪酸ビスアミドおよびポリオレフィン系樹脂を含有する成形原料A、および
スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する成形原料B
を共押出する工程を含む製造方法によって製造され、かつ
(a)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる厚さ1〜100nmの離型層、
(b)基材層としてのポリオレフィン系樹脂層、および
(c)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
をこの順で有するフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
項2.
前記成形原料Aが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して飽和脂肪酸ビスアミドを1〜4重量部含有する前記項1に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
項3.
飽和脂肪酸ビスアミドが、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、またはヘキサメチレンビスステアリン酸アミドである、前記項1または2に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
項4.
飽和脂肪酸ビスアミドが、エチレンビスステアリン酸アミドである前記項1または2に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
項5.
前記基材層、および前記粘着層の間に、中間層を有する前記項1〜4のいずれか1項に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
項6.
前記中間層が、飽和脂肪酸ビスアミドを含有する、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーとの混合物である前記項5に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。項7.
(a)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる厚さ1〜100nmの離型層、
(b)基材層となるポリオレフィン系樹脂層、
(c)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
をこの順で有するフラット面用表面保護フィルムの巻回体の製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して飽和脂肪酸ビスアミドを1〜4重量部含有する成形原料A、およびスチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する成形原料Bを共押出する工程を含む、フラット面用表面保護フィルムの巻回体の製造方法。
本発明によれば、どの部分から繰り出した表面保護フィルムであっても、フラット面への粘着力が一定の範囲内にある、フラット面用表面保護フィルムの巻回体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、非常に薄い離型層が形成されたフラット面用表面保護フィルムの巻回体を製造する製造方法を提供することができる。
本明細書中、数値範囲を表す記号「〜」は、特に記載の無い限り、当該記号が表す数値範囲がその両端の数値を含むことを意図して用いられる。
<フラット面用表面保護フィルム>
本発明におけるフラット面用表面保護フィルムは、
(a)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる厚さ1〜100nmの離型層、
(b)基材層としてのポリオレフィン系樹脂層、および
(c)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
をこの順で有する。
本発明におけるフラット面用表面保護フィルムの厚さは特に制限されないが、その下限は、通常12μm、好ましくは20μmであり、その上限は、通常100μm、好ましくは60μm、より好ましくは50μm、更に好ましくは、45μmである。
(a)離型層
離型層は、飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる。ここで、「から主としてなる」とは、離型層がオレフィン系樹脂層からブリードアウトした飽和脂肪酸ビスアミドにより形成されていることを指す。より具体的には、「から主としてなる」とは、飽和脂肪酸ビスアミドの含有量が、離型層全体の90重量%以上であることを意味する。
飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、およびヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸脂肪族ビスアミド;ならびに
m−キシリレンビスステアリン酸アミド、およびN−N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の飽和脂肪酸芳香族ビスアミドが好ましい。飽和脂肪酸脂肪族ビスアミドのなかでは、エチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。また、飽和脂肪酸芳香族ビスアミドのなかでは、m−キシリレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。
これらの飽和脂肪酸ビスアミドは単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、飽和脂肪酸ビスアミドを、他の離型剤と併用してもよい。
離型層の厚さは、1〜100nmの範囲内である。
当該厚さの下限は、1nm、好ましくは5nm、より好ましく7nm、更に好ましくは9nmである。一方、当該厚さの上限は、100nm、好ましくは80nm、より好ましく60nm、更に好ましくは40nmである。
離型層がこのような厚さを有する場合、浮きなどの発生が高度に抑制され、かつフラット面への十分な粘着力が安定して得られる。
離型層の厚さは、次の方法で求められる。フラット面用表面保護フィルムを四酸化ルテニウムで染色し、離型層と基材層とは染色され易さの違いを利用して染め分ける。表面保護フィルムを封入した樹脂試料を、切片厚さを70nmに設定したウルトラミクロトーム(ライカ社、REICHERT ULTRACUT S)を用いて繰り返し薄く削り複数の薄膜片を作成する。複数の薄膜片の中から透過型電子顕微鏡を用いて離型層と基材層との断面を観察できる観察用薄膜片を選ぶ。透過型電子顕微鏡を用いて観察用薄膜片を観察し、離型層の厚さを3カ所測定した。測定値の平均値を離型層の厚さとする。
(b)基材層
基材層は、ポリオレフィン系樹脂からなる。
本発明におけるフラット面用表面保護フィルムの離型層は、基材層から離型剤がブリー
ドアウトすることにより形成される。基材層には、前記離型層を形成させるためにポリオレフィン系樹脂に添加された飽和脂肪酸ビスアミドが残存する。
当該ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体樹脂、およびポリプロピレン樹脂、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
かかる樹脂は、樹脂に通常添加される添加剤を、含有していてもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤等が挙げられる。当該添加剤の量は、樹脂全体に対して、通常、5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
基材層の厚さは、被着体の素材や形状に応じて適宜調整することができ、一般に4〜80μmの範囲内、好ましくは20〜50μmの範囲内に設定される。
(c)粘着層
粘着層は、スチレン系エラストマーを含有する。
粘着層は、スチレン系エラストマー100重量部、および粘着付与剤を23〜42重量部含む。スチレン系エラストマーは粘着層の主成分であり、粘着層におけるスチレン系エラストマーの含有量は、好ましくは、50重量%以上である。
本発明で用いられるスチレン系エラストマーは、後記重合体(i)、後記重合体(ii)またはこれらの混合物であることが好ましい。
「重合体(i)」は、後記重合体ブロックAおよび後記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物である。「n」が1〜3の整数を表すことから、明らかなように、「式[A−B]nで表される構造」としては、例えば、A−B、A−B−A−B、およびA−B−A−B−A−Bで表されるの構造が挙げられる。これらのブロック共重合体においては、AおよびBは、それぞれ繰り返しにおいて同一であってもよく、異なっていてもよい。
「重合体(ii)」は、後記重合体ブロックAおよび後記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式(A−B)x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)
で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物である。
スチレン系エラストマーとしては、前記重合体(i)と前記重合体(ii)の混合物であって、かつ前記重合体(i)と前記重合体(ii)に含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比が5:95〜25:75の範囲内である混合物が好ましい。
「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
「重合体ブロックB」は、共役ジエン化合物単位が連続し、共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
ここで、ある単位が連続するとは、ブロック中に連続する2以上(好ましくは10以上)の同じ単位からなる部分が存在することを意味する。
ここで、ある単位を主体とするとは、ブロック中のその単位のモル分率が50モル%(好ましくは、80モル%)を超えることを意味する。
「芳香族アルケニル化合物単位」とは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位である。「芳香族アルケニル化合物」としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンおよびビニルピリジン等を挙げることができる。
「共役ジエン化合物」としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセンおよびクロロプレン等を挙げることができる。
粘着層の厚さは特に制限されないが、2〜20μmの範囲内であり、好ましくは3〜15μmの範囲内である。
本発明で用いられる粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水素添加物などの、一般に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用することができる。粘着付与剤の軟化点が、90〜140℃のものを用いることがより好ましい。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、剥離性および耐候性などを高めるために、水素添加された樹脂を粘着付与剤として用いることがより好ましい。また、オレフィン樹脂との混合物として市販されている粘着付与剤を用いてもよい。
粘着付与剤は、共役ジエン化合物単位または水素添加された共役ジエン化合物単位を有する重合体ブロックBに対して相溶することが好ましい。
本発明で用いられる粘着付与剤の量の上限は、スチレン系エラストマー100重量部に対し、42重量部であり、好ましくは40重量部であり、より好ましくは35重量部である。本発明における粘着付与剤の量の下限は、スチレン系エラストマー100重量部に対し、23重量部であり、好ましくは25重量部である。本発明で用いられる粘着付与剤の量は、スチレン系エラストマー100重量部に対し、23〜42重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量部の範囲内である。本発明で用いられる粘着付与剤の好ましい量は、粘着付与剤の種類によって異なるが、例えば、軟化点が90〜140℃である粘着付与剤の場合、スチレン系エラストマー100重量部に対し、好ましくは25〜35重量部の範囲内である。
粘着付与剤の量がこの範囲内である場合、フラット面に貼付した場合でも、巻回体の外側の表面保護フィルムと内側の表面保護フィルムとの間での粘着力の差の発生が抑制される。
粘着付与剤の量が23重量部未満である場合は、粘着層の粘着力が低いので、表面保護
フィルムの巻回体中での位置によって、後記で説明する粘着層の粘着面への離型層の一部の転写が生じる場合と生じない場合とが発生する。
これは、次の理由によると推測される。
本発明のフラット面用表面保護フィルムの巻回体では、従来の離型層および粘着層を有する表面保護フィルムの巻回体と同様に、離型層は、粘着層の粘着面に接触している。この巻回体を展開するとき、離型層の一部は粘着面に転写される。
表面保護フィルムの巻回体の外側では表面保護フィルムにかかる圧力が小さいので、粘着層の粘着面への離型層の転写量が少なくなり、一方、表面保護フィルムの巻回体の内側では表面保護フィルムにかかる圧力が大きいので、当該転写量が多くなる。当該転写量が少ない場合には、被着体のフラット面への粘着力が高くなり、一方、当該転写量が多い場合には、被着体のフラット面への粘着力が低くなる。従って、表面保護フィルムの巻回体の外側の表面保護フィルムと内側の表面保護フィルムとの間に、被着体の面への粘着力の差が発生する。
粘着付与剤の量が23重量部以上である場合、表面保護フィルムの巻回体中での位置による離型層剤の転写量の差が小さくなり、外側の表面保護フィルムと内側の表面保護フィルムとの間の粘着力の差が発生が抑制される。
しかし、粘着付与剤が42重量部以上である場合は、表面保護フィルムの粘着力が高すぎるために、表面保護フィルムの剥離時に、被着体表面に粘着剤が残る可能性がある。
粘着層には、粘着力の制御等を目的として、必要に応じて、例えば、軟化剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤(例、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、高分子型フェノール系酸化防止剤)、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(荒川化学社、商品名「アラキード251」)、トール油変性アルキド樹脂(荒川化学社、商品名「アラキード6300」)などが挙げられる。
(d)中間層
本発明のフラット面用表面保護フィルムは、前記基材層、および前記粘着層の間に、中間層を更に含んでもよい。
離型層は、後記する「製造方法」において説明する通り、共押出直後に溶融した基材層の表面(粘着層の反対側)が冷却ロールに接触して固化する過程で当該表面にブリードアウトし、形成される。この際、基材層の離型層とは反対側の表面にも飽和脂肪酸ビスアミドがブリードアウトする。この飽和脂肪酸ビスアミドの層が粘着層に接触していると、基材層と粘着層の間の結合力が低下することがある。中間層は、この結合力の低下を防ぐ機
能を有する。
中間層は、基材層と粘着材層とに結合できる樹脂であればよいが、ポリオレフィン系樹脂からなる層が好ましい。
好ましくは、当該中間層におけるポリオレフィン系樹脂は、飽和脂肪酸ビスアミド、およびスチレン系エラストマーを含有する。このような中間層は、フラット面用表面保護フィルムの端材を用いて製造してもよい。
本発明におけるフラット面用表面保護フィルムは、飽和脂肪酸ビスアミドを含有するポリオレフィン系樹脂からなる成型原料A、およびスチレン系エラストマーを含有する成型原料Bを共押出することによって製造される。
なお、飽和脂肪酸ビスアミドは、通常、ジアミンと飽和脂肪酸との脱水縮合反応によって合成される。このため、飽和脂肪酸ビスアミドは、不純物としてジアミン、および飽和脂肪酸を含有する場合がある。本発明者らの検討によれば、ブリードアウトにより離型層を形成させるという本発明のフラット面用表面保護フィルムの製造方法の特徴に関連し、上述のジアミン、および飽和脂肪酸は、本発明のフラット面用表面保護フィルムの製造時に、製造装置を汚染することが判明した。従って、本発明に用いられる飽和脂肪酸ビスアミドは、ジアミン、および飽和脂肪酸の含有率が低いことが好ましい。
成型原料Aおよび成型原料Bは、それぞれ公知の方法により、各成分を混合することによって調製できる。例えば、成型原料Aの場合、具体的には、飽和脂肪酸アミドを含有するポリオレフィン系樹脂を二軸押出機にてペレット化することによって調製することができる。
成型原料Aが含有する飽和脂肪酸ビスアミドの量を調整することにより、基材層の表面に形成される離形層の厚さを調整することができる。成型原料Aが含有する飽和脂肪酸ビスアミドの量の下限は、ブリードアウトによって離型層を形成させるために、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは、1重量部、より好ましくは1.5重量部である。一方、成型原料Aが含有する飽和脂肪酸ビスアミドの量の上限は、適当な厚さの離型層の形成によって被着体との十分な粘着力を得る観点、および剥離した離型層が成形ロールに付着する事を抑制する観点から、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは4重量部、より好ましくは2〜3重量部である。
飽和脂肪酸ビスアミドを含有するポリオレフィン系樹脂からなる成型原料A、ならびにスチレン系エラストマーおよび粘着付与剤を含有する成型原料Bを、例えば、2台以上の多層押出機によりTダイ法で共押出する。その後、成型原料Aを押し出した樹脂の側を冷却ロールにて急冷する。これにより多層フィルムが得られる。
押出温度は、好ましくは、160〜230℃の範囲内である。
共押出によって、まず、基材層および粘着層が形成される。
次いで、共押出直後の基材層が前記冷却ロールに接触して、成型原料Aに含有される飽和肪族酸ビスアミドが、それ自身の性質により基材層表面にブリードアウトすることにより、離型層が形成される。
ポリオレフィン系樹脂に飽和脂肪酸ビスアミドを1〜4重量部含有させると、基材層表面に厚さ1〜100nmの離型層が形成される。
このようにして成形された表面保護フィルムは、通常、キャストロールによって冷却されながら巻き取られる。
このとき、キャストロールの温度は、20〜90℃の範囲内に設定される。
<表面保護フィルム>
上述のように、本発明のフラット面用表面保護フィルムの巻回体は、通常、フラット面用表面保護フィルムが巻芯に巻き付けられた円柱状の形態として保管される。この際、離型層は、粘着層の粘着面に接触する。この巻回体を展開して被着体と貼り付けるとき、離型層の一部は当該粘着面に転写される。
フラット面(平面)とは、表面保護フィルムを実質的に非貼付部分無しに貼り付けることができる面を意味する。従って、プリズムシートのプリズム面のように表面が凸凹形状になっている面は除外されるが、曲面であってもよく、また表面保護フィルムを実質的に非貼付部分無しに貼り付けることができる程度の粗面であってもよい。
通常、離型層の転写にむらがあると、巻回体の外側の表面保護フィルムと内側の表面保護フィルムの間に粘着力の差が発生するが、スチレン系エラストマー100重量部に対し、粘着付与剤の量が23〜42重量部である粘着層とすることにより、離型層の転写にむらが無くなり、外側の表面保護フィルムの粘着力と内側の表面保護フィルムの粘着力の差が小さい表面保護フィルムの巻回体が得られる。
<表面保護フィルムの巻回体>
本発明の表面保護フィルムの巻回体は、前記で説明した表面保護フィルムを円筒の形状に巻き取ったものである。
表面保護フィルムの巻回体の巻m数は、特に制限されないが、通常400m以上、好ましくは450m以上であり、通常6000m以下、好ましくは4000m以下である。
表面保護フィルムの巻回体の外径は、特に制限されないが、通常100mm以上、好ましくは200mm以上であり、通常1000mm以下、好ましくは600mm以下である。
表面保護フィルムの巻回体の内径は、特に制限されないが、通常3インチ(7.68mm)か6インチ(15.36mm)の芯に巻き取られる。
表面保護フィルムの巻回体の外径と内径との差は、特に制限されないが、通常80mm以上、好ましくは150mm以上であり、通常985mm以下、好ましくは585mm以下である。
本発明の表面保護フィルムの巻回体は、慣用の方法により表面保護フィルムを円筒の形状に巻き取ることにより製造される。この巻き取りにおいては、所望により適当な巻芯を用いてもよい。
巻芯の外径は、前記の表面保護フィルムの巻回体の内径に対応する。
(展開力)
本発明の表面保護フィルムの巻回体は、容易に巻き戻すことができる。本発明の表面保護フィルムの巻回体が50mm幅である場合、その20m/分の速度での展開力は、好ま
しくは3.5N以下、さらに好ましくは2N以下である。このような展開力とすることにより、例えば、巻回体の幅が1000mmを超える場合においても、展開時に生じる音を低減し、フラット面への貼り付け後の浮きの発生を防ぐことができる。
(初期粘着力)
本発明の表面保護フィルムの巻回体から繰り出される表面保護フィルムは、巻回体のどの部分から繰り出されたに関わらず、好ましくは、後記の条件で測定される23℃での貼付経時粘着力が、3〜7N/25mmの範囲内である。
また、本発明の表面保護フィルムの巻回体の外周付近から繰り出された表面保護フィルムの初期粘着力に対する、軸付近(巻芯を有する巻回体の場合、巻芯付近)から繰り出された表面保護フィルムの初期粘着力の比(%)は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
[条件]
表面保護フィルムを作成してから3日間以内に、50mm幅のアクリル板のフラット面(表面粗さRa:0.10nm以下)に25mm幅の表面保護フィルムを貼り付ける。室温23℃および相対湿度50%の環境下、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で表面保護フィルムを貼り付ける。室温23℃および相対湿度50%の環境下で2週間放置した後、JIS Z0237に準拠し、表面保護フィルムを300mm/分の速度で引き剥がして180度剥離強度を測定する。なお、本明細書中、表面粗さRaはJIS B 0601:2001に基づいて測定された算術平均粗さRaを示す。
以下に、本発明の表面保護フィルムを、実施例および比較例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
成形原料Aとして、ポリプロピレン「Y900GV(プライムポリマー社)」100重量部と飽和脂肪酸ビスアミドであるエチレンビスステアリン酸アミド「アルフローH50F(日油社)」1重量部からなる混合物と、成形原料Bとして、スチレン系エラストマー「ダイナロン1320P(JSR社)」100重量部、粘着付与剤「アルコンP100(荒川化学社)」25重量部からなる混合物を、後記の条件で、Tダイ法により共押出し、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムは基材層の厚さが34μm、粘着層の厚さが6μmであった。
表面保護フィルムの離型層の厚さは8nmであった。
(条件)
押し出し温度:200℃
キャストロール温度:25℃
(離型層の厚さの測定方法)
離型層の厚さは、後記の方法で求めた。
フラット面用表面保護フィルムを四酸化ルテニウムで染色し、離型層と基材層とは染色され易さの違いを利用して染め分けた。表面保護フィルムを封入した樹脂試料を、切片厚さを70nmに設定したウルトラミクロトーム(ライカ社、REICHERT ULTRACUT S)を用いて繰り返し薄く削り、複数の薄膜片を作成した。複数の薄膜片の中から透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM−2100)を用いて離型層と基材層との断
面を観察できる観察用薄膜片を選んだ。透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM−2100)を用いて観察用薄膜片を観察し、離型層の厚さを3カ所測定した。測定値の平均値を離型層の厚さとした。以下の実施例および比較例においても、同様に離型層の厚さを測定した。
<実施例2>
エチレンビスステアリン酸アミドの量を1.5重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムは基材層の厚さが34μm、粘着層の厚さが6μm、離型層の厚さは10nmであった。
<実施例3>
エチレンビスステアリン酸アミドの量を3重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムは基材層の厚さが34μm、粘着層の厚さが6μmであった。また、表面保護フィルムの離型層の厚さは75nmであった。
<実施例4>
本発明の表面保護フィルムの両端をトリミングした時に生じた端材を、二軸押出機を用いてペレットに成型した。
成形原料Aとして、ポリプロピレン「Y900GV(プライムポリマー社)」100重量部と飽和脂肪酸ビスアミドであるエチレンビスステアリン酸アミド「アルフローH50F(日油社)」3重量部からなる混合物と、中間層を形成する原料として、ポリプロピレン「Y900GV(プライムポリマー社)」70重量部と前記ペレット30重量部とからなる混合物と、成形原料Bとして、スチレン系エラストマー「ダイナロン1320P(JSR社)」100重量部、粘着付与剤「アルコンP100(荒川化学社)」40重量部からなる混合物とを、実施例1と同様の条件で、Tダイ法により共押出し、表面保護フィルムを作成した。
表面保護フィルムは基材層の厚さが28μm、中間層の厚さが6μm、粘着層の厚さが6μmであった。また、表面保護フィルムの離型層の厚さは60nmであった。
<実施例5>
粘着付与剤量を30重量部にしたこと以外は実施例4と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムは基材層の厚さが34μm、粘着層の厚さが6μmであった。また、表面保護フィルムの離型層の厚さは30nmであった。
<実施例6>
エチレンビスステアリン酸アミドの量を2.5重量部にしたこと以外は実施例5と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムは基材層の厚さが34μm、粘着層の厚さが6μmであった。また、表面保護フィルムの離型層の厚さは12nmであった。
<比較例1>
飽和脂肪酸ビスアミドを使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを作成した。離型層の厚さを測定しようとしたが、離型剤層を観察できなかった。表1中、離型剤層を観察できなかった場合を、0(nm)で示す。
<比較例2>
エチレンビスステアリン酸アミドの量を0.5重量部に変更したこと以外は実施例1と
同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。離型層の厚さを測定しようとしたが、離型剤層を観察できなかった。
<比較例3>
エチレンビスステアリン酸アミドの量を5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムの離型層の厚さは220nmであった。
<比較例4>
粘着付与剤量を20重量部にしたこと以外は実施例3と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルム作成した。表面保護フィルムの離型層の厚さは45nmであった。
<比較例5>
粘着付与剤量を45重量部にしたこと以外は実施例3と同様の方法で、表面保護フィルムを作成した。表面保護フィルムの離型層の厚さは50nmであった。
<評価>
得られた実施例1〜7および比較例1〜7の表面保護フィルムについて、以下の項目を評価した。
それらの結果を表1に示す。
(1)展開力
表面保護フィルムをそれぞれ内径3インチの紙製の巻芯に巻きつけて50mm幅の巻回体(外径:100mm)を作成した。JIS Z0237に準拠し、20m/分の巻戻し速度で巻回体から表面保護フィルムを巻き戻し、高速巻戻し力を測定した。得られた測定値が展開力である。
展開力が2N/50mm以下の場合を優(◎)、2N/50mmを超え、3.5N/50mm以下である場合を良(○)、展開力が3.5N/50mmを超える場合を不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
(展開力の経時安定性の評価)
また展開力が優または良の評価であった巻回体を40℃の恒温槽で1週間養生させた後、展開力を測定し、同様の基準で展開力を評価した。なお、比較例の表面保護フィルムは評価しなかった。結果を表1に示す。
(2)初期粘着力(外周付近、巻芯付近)
作成後23℃の恒温層で1週間養生させた表面保護フィルムの巻回体の外周付近および巻芯付近の表面保護フィルムをそれぞれ幅25mm、長さ150mmの大きさに切り取り、次の貼付条件で、アクリル板のフラット面(表面粗さRa:0.10nm以下)に貼り付けた。
[貼付条件]
室温23℃および相対湿度50%の環境下、2kg圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼付した。
貼付後、23℃環境下で1時間放置した後、JIS Z 0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
また、以下の式にて外周付近の表面保護フィルムの初期粘着力に対する巻芯付近の表面保護フィルムの初期粘着力の比(%)を求め、この比が70%以上の場合を良(○)、70%未満の場合を不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
比(%)=(初期粘着力 巻芯付近)/(初期粘着力 外周付近)×100
(3)粘着層表面の転写離型層むら評価(外周付近及び巻芯付近)
外周付近及び巻芯付近での粘着層表面の転写離型層のむらの有無は、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)によって後記の評価条件でエチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)を分析することにより、判定した。
(TOF−SIMSの評価条件)
一次イオン:209Bi3+
イオン電圧:25kV
イオン電流:1pA
質量範囲 :1〜500mass
分析エリア:5mm四方(イメージング)
チャージ防止:電子照射中和
ランダムラスタスキャン
当該分析により得られる282mass、310massがEBSA由来である。従って、粘着層表面の282mass、310massの正イオン像を確認することによって、転写離型層のむらの有無を評価した。
[結果]
Figure 2016084481

Claims (7)

  1. 飽和脂肪酸ビスアミドおよびポリオレフィン系樹脂を含有する成形原料A、および
    スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する成形原料B
    を共押出する工程を含む製造方法によって製造され、かつ
    (a)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる、厚さが1〜100nmである離型層、
    (b)基材層としてのポリオレフィン系樹脂層、および
    (c)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
    をこの順で有するフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  2. 前記成形原料Aが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して飽和脂肪酸ビスアミドを1〜4重量部含有する請求項1に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  3. 飽和脂肪酸ビスアミドが、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、またはヘキサメチレンビスステアリン酸アミドである、請求項1または2に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  4. 飽和脂肪酸ビスアミドが、エチレンビスステアリン酸アミドである請求項1または2に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  5. 前記基材層、および前記粘着層の間に、中間層を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  6. 前記中間層が、飽和脂肪酸ビスアミドを含有する、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーとの混合物である請求項5に記載のフラット面用表面保護フィルムの巻回体。
  7. (A)飽和脂肪酸ビスアミドから主としてなる厚さ1〜100nmの離型層、
    (B)基材層となるポリオレフィン系樹脂層、
    (C)スチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する粘着層
    をこの順で有するフラット面用表面保護フィルムの巻回体の製造方法であって、
    ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して飽和脂肪酸ビスアミドを1〜4重量部含有する成形原料A、およびスチレン系エラストマー100重量部および粘着付与剤23〜42重量部を含有する成形原料Bを共押出する工程を含む、フラット面用表面保護フィルムの巻回体の製造方法。
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