JP2016084394A - シールド掘進機用テールシール組成物およびシールド工法 - Google Patents
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Description
一方、シールド掘進機の後端で、未だ裏込剤が充填されていないトンネル内の空隙へは、地下水等が浸みだしており、この地下水のシールド掘進機内への浸入を防ぐため、シールド掘進機の末端にはシールド掘進機内のセグメントの外周とシールド掘進機の内周の間を止水するブラシシールが複数列、シールド掘進機の内周に設けられている。そして、その止水性を維持するために、これらのブラシシールの間にテールシール組成物が充填されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、裏込剤は充填当初は流動性が高く、その後固化するため、流動性の高い裏込剤がシールドマシン後端のブラシシール部に浸入し、ブラシシールとセグメントが固着して、シールドマシンの前進が困難となったり、セグメントの強度によっては、セグメントが破壊されるという問題があった。このため、裏込剤がブラシシール部に浸入してきても、ブラシシールとセグメントが固着しない方法が求められていた。
(1)[A] 炭化水素からなる潤滑油基油40〜60質量%、[B] 無機粉体30〜50質量%、[C] 繊維質2〜10質量%、[D] 単糖類0.2〜5質量%および、[E] 鎖状カルボン
酸と鎖状アルコールとのエステル0.2〜5質量%を含有するシールド掘進機用テールシ
ール組成物。
(2)単糖類がブドウ糖であり、鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステルが炭素数8〜40の脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステルである上記(1)に記載のシールド掘進機用テールシール組成物。
(3)潤滑油基油が、テールシール組成物基準で鉱油系潤滑油基油30〜50質量%、ポリブテン5〜15質量%からなる上記(1)に記載のシールド掘進機用テールシール組成物。
(4)上記(1)に記載のシールド掘進機用テールシール組成物により止水したシールド掘進機により開孔を掘進し、その後、開孔とシールド掘進機の間に裏込剤を充填するシールド工法。
本発明の潤滑油基油は、通常の潤滑油に用いられる炭化水素からなる潤滑油基油であれば、鉱油系、合成油系あるいはこれらの混合物のいずれも用いることができる。
この潤滑油基油の物性としては、40℃における動粘度が500〜2000mm2/sのものが好ましい。さらに、流動点は0℃以下が好ましく、安全性の観点から、引火点は150℃以上が好ましい。
この潤滑油基油の含有量は組成物全量基準で40〜60質量%であるが、好ましくは、45〜55質量%である。
この鉱油系潤滑油基油は、取り扱いの安全上の観点から芳香族分が20%以下のものが好ましい。
・α‐オレフィン共重合体、ポリブテンやポリイソブテンなどの高分子ポリマー、アルキルナフタレンなどを単独であるいは組み合わせて基油として用いることができる。
本発明においては、テールシール組成物の止水性を向上させ、圧送性を良好に保持するために、無機粉体を用いる。
無機粉体としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の粉体を用いることができ、さらにこれらの混合物、及び、天然に産するこれらの化合物を主成分とする鉱石の粉体等も用いることができる。具体的には、タルクの粉体が好適である。
これらの無機粉体は、平均粒径が5〜50μmのものが好ましい。
この無機粉体の含有量は、テールシール組成物全量基準で、30〜50質量%であるが、35〜45質量%が好ましい。
この増ちょう剤としては、金属石けん系、ウレア系、有機ポリマー系の増ちょう剤を挙げることができる。
金属石けん系増ちょう剤は、カルボン酸がステアリン酸、アゼライン酸などの脂肪族カルボン酸でも、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸でもよく、特には1価または2価の脂肪族カルボン酸で、炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸のものが好ましい。また、金属は、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムのような両性金属でもよいが、アルカリ金属、特にはリチウムが好ましい。このようなカルボン酸金属塩は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。
なお、上記金属石けん系、ウレア系、有機ポリマー系等の増ちょう剤は、単独でも、2種類以上を併用しても良い。
これらの増ちょう剤の含有量は、テールシール組成物全量基準で、0.5〜5質量%が
好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
繊維質は、シールド掘進機のテールシール部にある金属網や金属線を束ねたブラシに絡みつき、潤滑油基油、無機粉体とともに止水性のある濾布層を形成するために用いられる。
この繊維質としては、天然由来または有機合成された有機繊維質のいずれをも用いることができ、例えば、天然由来の天然繊維としては、セルロース、綿繊維が、合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエステル等が好適である。
この繊維質は、長さが、平均で1〜10mmのものが好ましく、その直径は、平均で10〜100μmが好ましい。また、この繊維質の含有量は、テールシール組成物全量基準で、2〜10質量%であるが、3〜8質量%が好ましい。
単糖類は、テールシール組成物に浸入した裏込剤の凝結時間を遅延させるために用いる。単糖類としては、アルドースおよびケトースのいずれも用いることができ、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどが挙げられ、特にはグルコース(ブドウ糖)が好ましい。これらの単糖類は、単独で用いても、二種類以上を混合して用いても良い。
この単糖類の含有量は、テールシール組成物全量基準で、0.2〜5質量%であるが、
0.5〜3質量%が好ましい。
本発明のエステルは、鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステルからなるもので、テールシール組成物に裏込剤が浸入した場合に、浸入部分を軟化させて硬化を遅らせることができる。
エステルを構成する鎖状カルボン酸は、炭素数8〜40の一価カルボン酸(脂肪酸)が好ましい。この鎖状カルボン酸は飽和でも不飽和でもよく、直鎖でも分岐でもよい。その炭素数は10〜35がより好ましい。また、単一の化合物でも複数の化合物の混合物でもよい。鎖状カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸を含んでいてもよい。
エステルを構成する鎖状アルコール(脂肪族アルコール)は、炭素数4〜10のものが好ましく、二価以上がより好ましく、四価のものがさらに好ましい。また、この鎖状アルコールは飽和でも不飽でもよく、直鎖でも分岐でもよいし、単一の化合物でも複数の化合物の混合物でもよい。なお、ペンタエリスリトールがより好ましい。
エステルは、全ての水酸基がエステル結合を形成するフルエステルでも、一部の水酸基がエステル結合を形成していない部分エステルでもよいが、フルエステルが好ましい。
このエステルの含有量は、テールシール組成物全量基準で、0.2〜5質量%であるが
、0.5〜2質量%が好ましい。
本発明のテールシール組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースなどに用いられている、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤などを適宜添加することができる。
これにより、裏込剤がブラシシール部に浸入してきても、ブラシシールとセグメントが固着することはなく、スムーズに掘進作業を進めることができる。
〔テールシール組成物の成分〕
A.潤滑油基油
基油A1:鉱油系潤滑油基油(JX日鉱日石エネルギー社製、溶剤精製重質油、15℃の密度;0.90g/cm3)
基油A2:ポリブテン、平均分子量;15,000
なお、上記基油A1とA2との混合物の40℃における動粘度(mm2/s)を表1に示した。
B.無機粉体
無機粉体B1:タルク、平均粒径;20μm
繊維質C1:セルロース繊維、平均長さ;5mm、平均直径;20μm
繊維質C2:ポリエチレンテレフタレート繊維、平均長さ;5mm、平均直径;80μm
D.単糖類
単糖類D1:ブドウ糖(日本食品化工株式会社製)
E.エステル
エステルE1:ラノリン由来の脂肪酸とペンタエリスリトールから得られるエステル
エステルE2:ソルビタンモノオレイルエステル
次に示す条件で耐水圧試験を行い、流出水の有無を測定した。
底部中央部に、中心間隔5mmで縦横に4列、合計16個の開口(直径3mm)開口を有する内径52mmのステンレス製の圧力容器を用いた。開口上にステンレス製のメッシュ(50番、厚み0.85mm)を載せ、上記で調製したテールシール組成物50gを導
入した。テールシール組成物上に水(10g)を置き、空気で35kgf/cm2の圧力で5分間加圧し、その際の底部開口からの水の流出有無により止水性の評価を行った。この結果を表1に示した。
この結果、繊維質を含まない比較例5は、止水性がないことが分かる。
上記で調製したテールシール組成物100gと、裏込剤の主成分である速乾セメント〔トーヨーマテラン製、商品名インスタントセメント(30分速乾性)〕、水15gを手で混合し、混合直後のちょう度と、30分後のちょう度の差を測定することで、凝固抑制性を評価した。この結果を表1に示した。凝固が進むとちょう度は低下することから、この数値が低いことは、凝固が抑制されていることを示す。
この結果、単糖類と鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステルを含有する実施例1〜2の組成物は、これらの一方しか含有しない比較例1〜3に比べて、優れた凝固抑制効果を有することが分かる。また、鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステルでないE2のソルビタンモノオレイルエステルを用いた比較例4は、凝固抑制効果が少なかった。
上記で調製したテールシール組成物100gと、裏込剤の主成分である速乾セメント〔トーヨーマテラン製、商品名インスタントセメント(30分速乾性)〕、水15gを手で混合し、混合前のテールシール組成物のちょう度と、混合直後のちょう度の差を測定することで、混合初期軟化性を評価した。この結果を表1に示した。テールシール組成物と速乾セメントおよび水との混合により、混合前のテールシール組成物よりも軟化し、ちょう度が増加するが、この差が大きいと硬化までに時間がかかり、凝固しにくいことを示す。
この結果、単糖類と特定のエステルとを含有する実施例1〜2の組成物は、比較例1〜4に比べて、凝固しにくいことが分かる。
また、本発明のシールド工法は、ブラシシールとセグメントとの固着を防止し、掘削を効率よく進めることができるため、シールド掘進機による掘削に有用である。
Claims (4)
- [A] 炭化水素からなる潤滑油基油40〜60質量%、
[B] 無機粉体30〜50質量%、
[C] 繊維質2〜10質量%、
[D] 単糖類0.2〜5質量%、および、
[E] 鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステル0.2〜5質量%
を含有するシールド掘進機用テールシール組成物。 - 無機粉体がタルクであり、単糖類がブドウ糖であり、かつ、鎖状カルボン酸と鎖状アルコールとのエステルが炭素数8〜40の脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステルである請求項1に記載のシールド掘進機用テールシール組成物。
- 潤滑油基油が、テールシール組成物基準で鉱油系潤滑油基油30〜50質量%、ポリブテン5〜15質量%からなる請求項1に記載のシールド掘進機用テールシール組成物。
- 請求項1に記載のシールド掘進機用テールシール組成物により止水したシールド掘進機により開孔を掘進し、その後、開孔とシールド掘進機の間に裏込剤を充填するシールド工法。
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