JP2016079325A - バイオピッチの製造方法 - Google Patents

バイオピッチの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016079325A
JP2016079325A JP2014213786A JP2014213786A JP2016079325A JP 2016079325 A JP2016079325 A JP 2016079325A JP 2014213786 A JP2014213786 A JP 2014213786A JP 2014213786 A JP2014213786 A JP 2014213786A JP 2016079325 A JP2016079325 A JP 2016079325A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solvent
reaction
liquefaction
pitch
stage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014213786A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6445832B2 (ja
Inventor
興哲 松永
Kotetsu Matsunaga
興哲 松永
都世 矢野
Toyo Yano
都世 矢野
阪井 敦
Atsushi Sakai
敦 阪井
東 隆行
Takayuki Azuma
隆行 東
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai Research Institute KRI Inc
Original Assignee
Kansai Research Institute KRI Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai Research Institute KRI Inc filed Critical Kansai Research Institute KRI Inc
Priority to JP2014213786A priority Critical patent/JP6445832B2/ja
Publication of JP2016079325A publication Critical patent/JP2016079325A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6445832B2 publication Critical patent/JP6445832B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract


【課題】 本発明の課題は、リグノセルロース系バイオマスから炭素材料用基本原料を製造するプロセスにおいて、液化残渣の生成を抑制しつつ、高収率、低コストで熱安定性に優れたバイオピッチを効率よく製造する方法を提供することにある。
【解決手段】 リグノセルロース系バイオバスと廃プラスチックとの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解し、得られた生成物から生成ガス及び液化残渣を分離した後、液状部分を蒸留して沸点差で水、バイオオイル、溶媒および残部の重質成分に分離する。前記液化、熱分解は、好ましくは、一段目の液化反応と二段目の熱分解反応から構成された二段反応であり、途中で生成ガスを除去することが望ましい。前記一段目の反応温度は望ましくは350℃〜380℃であり、前記二段目の反応温度は望ましくは380℃以上、400℃未満である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭素材料用基本原料としてのバイオピッチ(バイオマス由来液化生成物又はバイオマスを主成分とする液化生成物を濃縮したものを「バイオピッチ」と定義)の製造技術に関するものである。
世界規模の環境とエネルギー技術の進歩につれて、炭素材料の需要が大きく増大することが予想される。一方、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制による化石燃料の使用制限に加えて、在来型天然ガスと非在来型天然ガス(タイトガス、コールベッドメタン、シェールガスなど)の需給の急増に伴って、現代文明を支える炭素材料の基本原料であるコールタールやピッチ(石油系重質油を含む)が今後量的に不足する懸念があり、それに代わる炭素材料用基本原料の開発が求められている。
近年、コールタールやピッチの代替品として、バイオマスを液化して得られた液化生成物からピッチを調製し、炭素繊維を製造することが試みられている。例えば、木質系原料又は木質原料の糖化プロセスで大量に副生する糖化残渣を種々の方法で分解、液化してタール状にし、このタール状物質からピッチや炭素繊維を製造する方法が開示されている(特許文献1〜8、非特許文献1〜7など)。
特許文献1では、木質系資源を高圧飽和水蒸気で処理した後、有機溶媒または希アルカリで抽出されうるリグニン、およびアルコールなど有機溶媒にて高温で処理することによって可溶化するリグニンを、水素添加分解し、次いで窒素など不活性ガスの気流下で熱処理した後、熱溶融法により紡糸し、さらに炭素化することによって炭素繊維を製造している。しかしこの水素添加分解法は、高価な水素と高い設備投資に加えてエネルギー消費も大きいため、これまで実用化には至っていない。
特許文献2では、木質原料をフェノール類と水との混合物からなる有機溶媒を蒸解液として用いて加熱することにより、パルプと、ヘミセルロースが分解して単糖類として溶解している水層、及びリグニンが溶解している有機層の三成分に分離した後、該有機層を減圧濃縮して得られるリグニンを溶融紡糸してリグニン繊維を製造している。しかしこの方法は、パルプの分離・精製操作が煩雑であり、水層部分の廃液処理が難しいので、パルプ製造法としてもリグニン繊維製造法としても実用化されていない。
特許文献3では、木質材料からの脱リグニン処理で溶出したリグニンをフェノール化して得たフェノール化リグニン、または木質材料をフェノール類で蒸解して得たフェノール化リグニンを原料として、非酸化雰囲気下、加熱重質化することで炭素繊維紡糸用リグニンを調製している。しかしこの方法は、フェノールの融点が41℃と室温で固まる性質を有する故に、原料投入や初期撹拌などの際のハンドリングが面倒で、且つ配管などの閉塞を防ぐための保温措置も必要なため、製造工程が煩雑になり、また溶媒としてのフェノールが高価である上に、炭素繊維の収率も低く、コスト的に採算が取れない。
特許文献4では、木質原料を水蒸気又は水蒸気とフェノール化合物の存在下で、温度200〜250℃、圧力20〜40kg/cmで爆砕前処理し、物理的、化学的に溶媒可溶性を高めた上で、この処理物とフェノール化合物とを加熱下に溶解、反応させることで可溶化物を製造している。しかしこの方法では、爆砕処理装置が膨大、高価であり、可溶化生成物中の残渣(固形分)量が多いため、濾過にかかる負荷が非常に高く、可溶化及びピッチ化収率が低い等の問題がある。
特許文献5では、リグノセルロースをポリエチレングリコール、エチレングリコールなどを溶媒とし、濃硫酸を触媒として加溶媒分解を行ない、反応生成物を、ジオキサン溶媒希釈→濾過→濾液中のジオキサンと水分除去→合成反応→水洗(大過剰蒸留水中滴下による水溶性物質の溶解)→濾過→不溶分の回収・乾燥→溶融紡糸などの工程を経て、炭素繊維や活性炭素繊維を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、上述のように無機酸の使用や煩雑な処理工程に加えて、ピッチ収率が約33質量%で、コストを含め課題が多いと考えられる。
木質系原料の液化生成物は、上述の炭素繊維の他、活性炭、カーボンブラック、バインダーピッチ、含浸ピッチ、その他各種機能性炭素材料の製造原料としてもその利用が期待される。いずれの場合においても、木質系原料を高収率で且つ低残渣(固形分)率で安価に可溶化することが重要である。固形分が残存すると、送液配管やバルブの目詰まりの原因となって工程トラブルが生じ、炭素繊維にする場合には紡糸工程でトラブルが発生する恐れがある。上述の従来法では、高温・高圧・高エネルギー消費を必要とする水素添加分解法(特許文献1)を除くと、いずれも生成物(可溶化物またはピッチ)の熱安定性が低い欠点がある。特にピッチについては、熱安定性がその利用において重要であるが、熱安定性の低いピッチでは、例えば、溶融紡糸時にピッチの粘度上昇(軟化点上昇)により所望の繊維径を得られなくなるか、あるいは、ノズルの閉塞により紡糸そのものができなくなる。また、該ピッチを炭素材成形バインダーとして用いた場合には、骨材との混練、または含浸過程でピッチの粘度が増大することで、所望の成形や含浸処理を妨げることが大きな問題となっている。
上述のような問題を解決するために、以下のような検討もなされている(特許文献6〜8、非特許文献1〜6)。特許文献6、非特許文献1及び2では、糖化残渣など固形木質系原料を、フェノール類及び水素供与性溶剤(テトラリンなど)の存在下で加圧加熱することで可溶化処理を行ない、この可溶化処理物から低沸点成分を除去することで木質系ピッチを得、さらに溶融紡糸によって炭素繊維を得ている。なお、特許文献7では、糖化残渣など固形木質系原料を、フェノール類及び熱分解重質油(エチレンボトム油、デカント油、コールタールなど)の存在下で加圧加熱することで可溶化処理を行ない、この可溶化処理物から低沸点成分を除去することで木質系ピッチを得、さらに溶融紡糸によって炭素繊維を得ている。上記2つの方法で得られた可溶化物中の残渣(固形分)はいずれも約1〜3質量%の範囲内と、フェノール単味の場合の約6〜12質量%を大きく下回っている。熱安定性は、軟化点を185〜198℃範囲に調整したピッチを、炭素繊維の紡糸(280℃真空脱気、265℃溶融紡糸)前後の軟化点の変化(△T)で評価しているが、その△T値は、上記2つの方法とも5℃未満と、フェノール単味の場合の20〜40℃に比べて向上している。しかしながら、前者の方法は可溶化溶媒となるフェノールと水素供与性溶剤が高価であるところが大きな課題である。特に水素供与性溶剤の場合は反応後回収して水素化再生処理をする必要があるため、工程が複雑になり、コストがかかる。また、後者の方法は、フェノールのコスト問題以外に、ピッチを高温(紡糸温度)で長時間加熱した場合の熱安定性に課題が残っている。
一方、リグノセルロース系バイオマスは、通常約20〜35質量%程度のリグニンを含んでおり、残りの65〜80質量%の成分はセルロースとヘミセルロースから構成されていることから、本発明者らはリグニンのみならずセルロースとヘミセルロースの有効利用にも着眼して、木質系バイオマスを安価なエチレングリコールなどの有機溶媒で抽出した後、この抽出処理物を固液分離して、リグニンを含む液体成分とセルロースを含む固体成分とにする方法(特許文献8、非特許文献3〜5)や水とエチレングリコールなど少量の有機溶媒で上記同様にリグニンを含む液体成分とセルロースを含む固体成分とにする方法(非特許文献6)を提案している。これらの方法はいずれもセルロース及びヘミセルロースの有効利用率(特に糖への変換効率)が著しく向上する長所がある。しかしながら、分離後のリグニンは200℃未満の処理温度では良好な熱安定性を保持するものの、200℃以上になると次第に架橋反応が進行して熱可塑性を失うなどの問題点があるため、バイオピッチの原料にはなりうるが、ピッチそのものにするには更なる処理が必要である。
最近、木質原料を水素化重質溶剤で400℃にて3時間処理し、その反応生成物を減圧蒸留してピッチ状瀝青物(BTP)を製造する方法(非特許文献7)が開示されている。このBTPは投入木質原料に対する収率が42質量%であるが、灰分を含み、そのままでは紡糸できないため、THF(テトラヒドロフラン)によって不溶分(9.8質量%)を分離除去したTHF可溶分を炭素繊維の紡糸原料としている。得られたBTP−THF可溶分は軟化点が低く(157℃)、不融化できないため、減圧蒸留を行ない、軟化点が195℃〜253℃のピッチ(THF可溶分の82質量%〜67質量%)を調製している。以上のデータから、木質原料ベースの最終的な収率は、残渣(THF不溶分)4.1質量%、軟化点195℃に調整時のピッチ収率が31.1質量%、軟化点253℃に調整時のピッチ収率が25.4質量%となる。この方法における水素化重質溶剤は前記特許文献6に示す水素供与性溶剤と同じ類のもので、前記同様に反応後回収して水素化再生処理をする必要があるため、プロセス的には工程が複雑になり、コストがかかる。
上述のように、従来の技術には一長一短があり、未だに実用化されたものはない。共通の課題としては、可溶化過程での残渣(灰分、コーク等に由来する固形分)の低減、ピッチ収率の向上による製造コストの低減、ピッチの熱安定性の向上などが挙げられる。
特開昭62−110922号公報 特開平01−239114号公報 特開平01−306618号公報 特開平04−126725号公報 特開2013−147768号公報 特開2012−116884号公報 特開2012−255223号公報 特開2013−192519号公報
第6回バイオマス科学会議発表論文集、112−113(2011) 第38回炭素材料学会年会要旨集、114(2011) 第20回日本エネルギー学会大会講演要旨集、170−171(2011) 第7回バイオマス科学会議発表論文集、200−201(2012) 第57回リグニン討論会講演集、(2012) KRIニュースレター、Vol.46,29(2014) 第23回日本エネルギー学会大会講演要旨集、112−113(2014)
本発明の課題は、リグノセルロース系バイオマスから炭素材料用基本原料を製造するプロセスにおいて、液化残渣(コーク等固形分)の生成を抑制しつつ、高収率、低コストで熱安定性に優れたバイオピッチを効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解することにより高収率で熱安定性に優れたバイオピッチを製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 リグノセルロース系バイオマスと、廃プラスチックとの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解し、得られた生成物から生成ガス及び液化残渣を分離した後、液状部分を蒸留して沸点差で水、バイオオイル、溶媒および残部の重質成分に分離することを特徴とするバイオピッチの製造方法。
〔2〕 前記廃プラスチックが熱可塑性プラスチックであることを特徴とする前記〔1〕に記載のバイオピッチの製造方法。
〔3〕 前記溶媒がリグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックのいずれか又は両方とも親和性を有する溶媒群から選択される少なくとも1種を含む高沸点溶媒であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のバイオピッチの製造方法。
〔4〕 前記液化、熱分解が一段目の液化反応と二段目の熱分解反応から構成された二段反応であり、途中で生成ガスを除去することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のバイオピッチの製造方法。
〔5〕 前記蒸留工程で分離した溶媒成分を回収し、再びリグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックの液化、熱分解に用いることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のバイオピッチの製造方法。
本発明によれば、リグノセルロース系バイオマスに廃プラスチックを添加して、液化、熱分解することで、従来の方法に比べて残渣(コークなど固形分)の発生量が顕著に少なくなり、高収率で熱安定性に優れたバイオピッチを製造できる。
例えば、前記廃プラスチックとしてPETを用いた場合、残渣の発生量が0.5質量%未満と僅少で、ピッチ収率は36〜70質量%と非常に高いことが実証され、また当該バイオピッチは300℃を超えるピッチ化処理においても良好な流動性と熱安定性が確認された。このような高収率による低コスト化および熱安定性向上による高性能化は、新規炭素材料用バイオピッチの実用化に大きく寄与することができ、未利用資源の有効利用と二酸化炭素排出抑制にも寄与できる。
本発明のバイオマスと廃プラスチックからのバイオピッチ製造方法の一例を示すプロセスフロー図である。 本発明の実施例1及び2におけるバイオピッチの軟化点と収率との関係を示す図である。 本発明の実施例2により軟化点を240℃に調整して得られたピッチの写真である。 本発明の実施例2におけるピッチの調製過程で300℃において1時間の真空加熱を行なった直後、試験管を電気炉から取り出し、横に傾けて流動性を観察した写真である。
本発明は、リグノセルロース系バイオマスと、廃プラスチックとの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解して、残渣の発生量が極めて少なく、高収率で熱安定性に優れたピッチが得られるところが、従来技術と大きく異なっている。
すなわち、本発明は、リグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解し、得られた生成物から生成ガス及び液化残渣を分離した後、液状部分を蒸留して沸点差で水、バイオオイル、溶媒および残部の重質成分に分離することを特徴とするバイオピッチの製造方法に関わる。
前記リグノセルロース系バイオマス原料は、セルロース、ヘミセルロースとリグニンを含む固形原料である限り特に限定されず、植物由来の原料であればいずれも使用可能である。大きく分類すると、木質系、草本系、資源植物などがあるが、その資源量及び有効利用の観点から、木質系バイオマスでは、例えば針葉樹と広葉樹とを網羅した間伐材、林地残材、製材残材、建築廃材、剪定枝葉、輸入チップ、パーム残渣(PKS,EFB,OPT等)などが望ましく、草本系バイオマスとしては、例えば稲わら、麦わら、ススキ、葦など、また資源植物としては、例えば砂糖キビ、トウモロコシ、ソルガム、キャッサバなどの副産品(例えばバガス、茎など未利用の部分)などが望ましい。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。
すなわち、前記リグノセルロース系バイオマスは、木質系、草本系、資源植物系のいずれかに由来する原料でも良く、これらの原料の糖化プロセスで得られる糖化残渣でも良い。
廃プラスチックとしては、熱可塑性プラスチック(樹脂を含む)、熱硬化性プラスチック(樹脂を含む)を問わず、いずれも本プロセスの原料として使用できる。但し、原料入手の難易度等の面から、望ましくは熱可塑性プラスチックである。代表的な熱可塑性プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。なお、代表的な熱硬化性プラスチックとしては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
本プロセスではこれらの単一成分のみならず、これらの混合物、各種誘導体、複合体を含めて、いわゆる「廃プラスチック」の原料とすることができる。選定の基準としては目的とするピッチ及び炭素材料の物性、加工性等を考慮して決めることができる。
プラスチックはいろいろな分野で様々な用途に応じて広く応用されている。例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)は弱電機器の部品やキャビネット、ハウジング類、自動車内外装部品、玩具雑貨、ポリ塩化ビニルの補強材などとして広く使われており、PETはボトルや家電部品などで大量に使われている。又ポリスチレンは各種共重合熱可塑性樹脂以外に断熱材、包装や流通分野の緩衝剤などとしても幅広く使われており、ポリエチレン、プロピレン、塩化ビニルは我々の日常生活の中で各種容器、自動車・家電部品、各種シート、パイプなどとして大量に使われている。これらの原料は廃プラスチックの分別・回収ルートから入手することができる。
前記熱可塑性プラスチックの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)を前記廃プラスチックの原料とするのが最も好ましい。
廃プラスチックとしてPETを用いた場合、加溶媒分解により、巨大なリグニンの三次元構造を低分子のリグニンモノマーに近いレベルまで分解させると共に、PETも低分子レベルまで分解させ、「−リグニン低分子−PET低分子−」のような基本構造を有する共重合体を形成することによって、リグニンの架橋密度を減らし、その結果、残渣量の著しい低下とピッチ収率の大幅な向上並びに優れた熱安定性を実現することができる。
本発明に用いる溶媒としては、リグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックのいずれか又は両方とも親和性を有する溶媒群から選択することができる。
溶媒は、一種類の溶媒を単独で使用しても良く、二種類以上の溶媒を混合して使用しても良い。また、水やバイオオイルなど軽質成分との分離等を考慮して、溶媒の沸点は高いほうが望ましく、180℃以上、好ましくは190℃以上である。上限は特に設けないが、蒸留(ピッチ化)過程で目的のピッチ中に溶媒が残留しない沸点範囲で良い。
前記溶媒は、リグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックのいずれか又は両方とも親和性を有する溶媒群から選択された市販の標準溶媒を用いても良く、コールタールや木タール由来の分解油、又は廃プラスチック油化プラントで製造される分解油等を使用しても良い。また、後記の蒸留工程で回収した溶媒をリサイクルして使用しても良い。
例えば、廃プラスチックとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合には、リグノセルロース系バイオマスとPETの両方とも親和性を有するエチレングリコールが好適である。
以下、図示例を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1は本発明のプロセスの一例を示す概略図である。本図示例のプロセスは、大きく区分すると、原料前処理工程、液化・熱分解工程、濾過工程、蒸留工程、溶媒供給・リサイクル工程から構成されている。この5つの工程の詳細は、以下の通りである。
(1)原料前処理工程
本プロセスに供給するバイオマス原料としては粉砕品の形態が望ましい。粉砕手段は特に限定されず、カッターミル、振動ミル、ハンマーミルなど慣用の粗粉砕機械を用いて行なうことができる。粉砕処理物はできれば篩を通して好ましい粒度以下にしたほうがよい。好ましい粒度は、例えば、4mmの篩下である。つまり、通常のオガクズのサイズで十分で、粒度の下限値は特に設けなくてもよい。
本プロセスに供給するバイオマス原料としては、前記木質系、草本系、資源植物からの糖化プロセス(例えば従来の製糖プロセス、又は最近のバイオエタノールプロセス等)で大量に副生する糖化残渣も含まれている。糖化残渣の場合は、バイオマスの糖化の前処理過程で細かく粉砕され、糖化反応を経てさらに細かくなるので、粉砕する必要がない。また、糖化過程で有効成分であるセルロースやヘミセルロース分は糖に変換されており、リグニン成分の割合が大幅に増え、リグニンリッチになるので、糖化残渣を原料にすれば、本発明の液化、熱分解、ピッチ化(濃縮)過程で生成する炭素前駆体の割合が増加することにより、目的とするバイオピッチの収率の向上並びにコスト低下に繋がるので、極めて好適である。
バイオマス原料はあらかじめ適度に水分を除去したほうが望ましい。乾燥法は特に限定しないが、省エネなどの面から考えると、例えば、自然乾燥、排熱による乾燥などが望ましい。なお、糖化残渣の場合は、前記乾燥に先立って、遠心分離或いは圧搾濾過等による糖化残渣中の水分分離を行なってもよい。
廃プラスチックを本プロセスの原料とする場合は、破砕や切断によって細かくしたり、熱可塑性を利用してペレットにしたりして原料にすることができる。また、必要に応じて廃プラスチックの溶解または熱分解特性を利用して、事前に溶媒による溶解処理または熱分解処理などにより液状に加工して本プロセスに供給してもよい。
(2)液化・熱分解工程
前記工程で前処理された原料は、前記溶媒を加えて液化・熱分解工程で液化・熱分解される。
液化・熱分解工程における液化、熱分解の温度は、350℃以上、400℃未満が望ましい。
本発明における「液化・熱分解」とは、リグノセルロース系バイオマス中の三次元構造(高分子量のセルロース、ヘミセルロース、リグニン成分の物理的、化学的な絡み合い)及び廃プラスチックの高分子構造を熱エネルギーで切断し、低分子化、液状化にする反応である。この中の「熱分解」は、液化という意味もあるが、ここでは主に液化生成物中の各種含酸素、窒素など複素官能基の分解反応、例えば脱炭酸反応や脱水反応などを意味する。
リグノセルロース系バイオマスの液化は、通常セルロースの分解温度(約270℃)以上の300℃近くから可能であるが、低温域(本発明では350℃未満の温度域を「低温域」と定義する)では高分子量のリグニンの分解が不完全で、ピッチ化過程でリグニン分子同士が再結合又は架橋して三次元網目構造を形成することにより、熱可塑性を喪失し、容易に不溶不融の状態になる。本発明では巨大なリグニン分子を構造単位レベルまで低分子化した上で、さらに低分子化された廃プラスチックの分子(例えばモノマー)と共重合すれば、「−低分子化されたリグニン−低分子化された廃プラスチック−」の基本単位を持つ直鎖状等の新規高分子を形成することができ、リグニン特有の三次元架橋構造の再形成を抑制しつつ、良好な可塑性を創出することが可能となる。そのための液化反応の温度は350℃以上が望ましい。
これに対して、高温域(本発明では400℃以上の温度域を「高温域」と定義する)では、過分解に伴うリグニン等の分子同士の脱水素環化重合反応等が急激に進行するため、反応のコントロールが難しく、コーク前駆体となるプレアスファルテン(重質油化学ではベンゼン不溶−ピリジン可溶分を指すが、高温で容易にTHFに不溶のコークになる)の生成量が急増する恐れがある。従って、バイオマス原料の液化・熱分解プロセスは400℃未満が望ましい。
前記液化、熱分解は一段反応で実施しても良いが、一段目の液化反応と二段目の熱分解反応から構成された二段反応で実施し、途中で生成ガスを除去することが望ましい。
そして、前記一段目の液化反応の温度が350℃〜380℃であり、二段目の熱分解反応の温度が380℃以上、400℃未満であることが望ましい。
一方、バイオマス原料には通常約40〜50質量%の酸素が含まれており、液化反応後の生成物にも酸素が多く残留する。残留酸素量が多すぎると、減圧蒸留による高沸点溶媒の留去過程やピッチ化過程で、脱水縮合反応等による架橋が進行し、粘度上昇、可塑性喪失などが生じ、高軟化点で、且つ高温で熱安定性を有するピッチ(例えば炭素繊維紡糸用ピッチ等)は調整できない。従って、液化・熱分解工程では脱酸素(例えば脱水、脱炭酸等)反応をも同時に考慮する必要がある。この脱酸素反応は液化反応と同じ温度、つまり一段反応で行なっても良いが、できれば第一段の液化反応と第二段の熱分解反応に分けた二段反応で行なったほうがより効率的である。一段目の液化反応温度を二段目より低くすることによって、より温和な条件で分解反応の副反応であるコーク生成反応を抑制しつつ、リグニンを所望の構造単位レベルまで低分子化することができる。一段目の反応を十分行なった上で、温度を上げて二段目の反応を行なうことにより、より低分子レベルのリグニンと廃プラスチック由来低分子との共重合が可能となり、架橋反応並びに過分解に起因するコーク生成反応を抑制しながら脱酸素反応を促進させることができる。この場合、第一段の液化反応温度は望ましくは350〜380℃であり、第二段の熱分解反応温度は望ましくは380℃以上、400℃未満である。また、化学平衡の面から、反応過程で生成ガスを絶えず反応系から取り除き、脱酸素反応等を促進させることも重要である。生成ガスの除去は、一段と二段のそれぞれの反応が終了後、反応系を冷却してから行なってもよく、反応系に背圧弁を設けて系内が一定圧力以上になると反応で生成したガスが自動的に系外に排気できるようにしてもよい。その場合、随伴する高沸点溶媒類は沸点差を利用して回収することができる。もし反応系内の溶媒が不足する場合には留出した溶媒量に相当する量を溶媒供給ラインから供給してもよい。
(3)濾過工程
濾過工程は、高品質のバイオピッチを製造する上で重要な工程である。濾過対象となる成分としては、出発原料のバイオマスと廃プラスチック中に含まれている灰分や夾雑物など、未反応の原料、及び過分解によるコークなどである。これらは液化・熱分解処理後、溶媒及び液化生成物に不溶の固形分として存在する。もし取り除かないと、ピッチ製品の品質低下を招く恐れがある。例えば、炭素繊維の場合、ノズルの閉塞等を引き起こし正常な紡糸を妨げたり、繊維に欠陥を与え、繊維強度の低下を引き起こしたりする恐れがある。
液化・熱分解処理後の処理物は、濾過工程により前記不溶の固形分と溶媒及び液化生成物に分離する。
濾過工程における濾過操作方式は特に限定しないが、例えばフィルターによる濾過の場合には、常圧濾過、加圧濾過、減圧濾過のどちらでも良い。フィルターの目開きは、例えば20μm以下、望ましくは10μm以下、さらに望ましくは5μm以下である。濾過は液化生成物をそのまま濾過してもよく、溶媒に希釈して濾過しても良い。濾過に用いる希釈、洗浄用溶媒は、液化・熱分解に用いる溶媒でも良く、他の補助溶媒、例えばTHF(テトラヒドロフラン)のような低沸点溶媒を用いても良い。濾過温度は室温でも良く、反応後の予熱と圧力を利用した加圧加熱濾過でも良い。また、状況によっては沈降分離、遠心分離、圧搾濾過またはこれらの組み合わせで行なっても良い。また、フィルター法は目詰まりが起こると濾過効率が悪くなるので、それに先立って沈降分離、遠心分離を行なっても良く、珪藻土等濾過助剤を併用しても良い。
(4)蒸留工程
蒸留工程では、前記ろ過工程で得られた液状物質を分別蒸留することにより、沸点差を利用して水を含む軽質成分(高沸点溶媒より沸点が低い成分)と高沸点溶媒(高沸点溶媒の沸点に近い成分も含む)を留去し、比較的に重質な成分をピッチにする。
本発明では、蒸留は常圧下又は減圧下で行なうことができ、好ましくは常圧から徐々に圧力を下げて減圧状態にしても良い。
ここで、本蒸留工程の初期の留分は、水を主成分とする留分で、沸点差で他の軽質成分と簡単に分離することができる。次の留分は、水の沸点以上、高沸点有機溶媒の沸点以下の成分で、水と分離した後、バイオオイルとして回収し、カーボンブラックなどの原料にすることができる。これらの蒸留は、常圧蒸留と減圧蒸留のどちらでもよい。
その次の留分は高沸点溶媒で、蒸留により回収後、再び液化・熱分解工程の溶媒としてリサイクルすることができる。蒸留条件としては、減圧蒸留のほうが常圧蒸留に比べてより効率的である。
高沸点有機溶媒を留去した後の重質成分が本発明のバイオピッチである。
前記バイオピッチは、用途に応じて軟化点の異なる各種バイオピッチとして利用できる。前記バイオピッチを更に分留することにより、例えば、軟化点40〜90℃のものは含浸ピッチと、軟化点80〜120℃のものはバインダーピッチと、軟化点180〜280℃のものは炭素繊維用ピッチとすることができる。その他、特殊な用途に応じて、軟化点を任意に調整することができる。
(5)溶媒供給・リサイクル工程
図1の溶媒リサイクル工程は、上記蒸留工程によって沸点の順に水、バイオオイルを除去した後、高沸点溶媒を再利用するようにしている。初期留分である水の中には木酢の成分も含まれており、適当な用途(例えば、園芸用、農業用)に再利用できる。バイオオイルは、本プロセスの洗浄溶媒として用いても良く、カーボンブラックの原料にすることもできる。水とバイオオイルを分離した後の溶媒の中には軟化点調整過程で回収した高沸点留分を含んでもよい。
このように溶媒だけでなく、木酢成分、バイオオイル、高沸点留分をも含む溶媒を有効に利用するようにすれば、本プロセスはゼロエミッションに近づくことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、下記実施例において、実験に用いたバイオマス原料と廃プラスチック原料の調製、ピッチの調製、および液化・熱分解における生成ガス生成量、液化残渣(固形分)量、液化生成物収率、ピッチの収率、軟化点、熱安定性などの測定は、次の実験方法に従って行なった。
(1)バイオマス原料の調製方法
国産杉のオガクズを2mm篩下に分級したものを、120℃で一晩乾燥して出発原料とした。
(2)廃プラスチック原料の調製方法
5種類の廃棄飲料水用PETボトルを回収してそれぞれのボトルボディ部分から同量の試料を採取し、5mm角程度に切断して均一に混合したものを出発原料とした。
(3)生成ガス収率の測定
液化、熱分解処理後、反応装置(オートクレーブ)を室温まで冷却し、テドラーバッグを用いて生成ガスを回収、秤量し、次式を用いて収率を求めた。
生成ガス収率(質量%)=生成ガス重量/(木粉重量+PET重量)×100 (式1)
(4)液化残渣(THF不溶分)収率の測定
前記のように生成ガスを分離した後の液化生成物をテトラヒドロフラン(THF)溶剤で全量を回収、希釈し、それをフィルターで濾過し、さらにTHFで3回洗浄した後、乾燥、秤量し、次式を用いて液化残渣(THF不溶分)の収率を求めた。
液化残渣収率(質量%)=残渣重量/(木粉重量+PET重量)×100 (式2)
(5)液化生成物(THF可溶分)収率の測定
液化生成物の収率は、前記の分析結果をもとに、次式を用いて算出した。
液化生成物収率(質量%)=[(木粉重量+PET重量)−(生成ガス重量+残渣重量)]/(木粉重量+PET重量)×100 (式3)
(6)ピッチの調製方法
前記ステンレスフィルターで残渣(THF不溶分)を取り除いて得られた濾液(THF可溶分)全量を500mlのナスフラスコに入れ、エバポレーターにより減圧(200〜25Torr)条件下で突沸しないように段階的に昇温し、220℃に到達後1時間保持した。この一次蒸留により、洗浄溶剤のTHFおよび液化処理物中の軽質成分(反応溶媒のエチレングリコール、液化反応で生成した水、低沸点バイオオイル等)を留去して、まず、軟化点50〜90℃程度の濃縮物(「P」と記す)を得た。次いで、この濃縮物Pから所定量の試料を測り取り、回転式管状軟化点調整装置(直径30mm×300mm試験管)に入れ、真空圧2Torrで220〜320℃の温度範囲で所定時間蒸留(二次蒸留)をして軟化点の異なるピッチ(「P」と記す)を調製し、それぞれのピッチ収率及び軟化点の測定に供した。
(7)ピッチ収率の測定
前記一次蒸留によって調製された濃縮物(P)の出発固形原料(木粉重量+PET重量)基準の収率は、次式を用いて求めた。
の収率(質量%)=Pの回収量/(木粉重量+PET重量)×100 (式4)
なお、前記二次蒸留によって調製された濃縮物(P)の出発固形原料(木粉重量+PET重量)基準の収率は、次式を用いて求めた。
収率(質量%)=P収率×(P回収量/二次蒸留に供した試料量) (式5)
(8)軟化点の測定および熱安定性の評価
軟化点の測定:JIS K2425:2006に準拠した。
熱安定性の評価:ピッチの熱安定性は、主に軟化点240℃程度のピッチから炭素繊維を紡糸する場合を想定して、その上限紡糸温度付近における軟化点の変化程度により評価した。詳しくは、前記蒸留で得られたピッチ(濃縮物)の軟化点[T]と、それを窒素雰囲気下280℃−3時間熱処理した後の軟化点[T]を測り、次式により求めた△Tをもって熱安定性の評価指標とした。
△T(℃)=T− T (式6)
なお、△T<5℃時に◎(非常に良い)、△T=5〜10℃時に○(良い)、△T=10〜20℃時に△(あまり良くない)、△T>20℃時に×(悪い)で熱安定性の程度を判定した。また、熱安定性の評価には、△T値の評価以外に、減圧蒸留時の流動性や気泡発生についての肉眼観察も併用した。
〔実施例1〕
前記(1)の通り調製して得た木質原料40.5g、前記(2)の通り調製して得たPET原料4.5g、およびエチレングリコール135gをオートクレーブに投入し、窒素ガスで置換した後、撹拌速度800rpm、昇温速度5℃/分で380℃まで昇温し、この温度で5分間反応(以下「液化」又は「液化反応」と言う)した。その後急冷し、テドラーバッグで生成ガスを回収した。投入した固形原料が反応器の壁などに付着していないことを確認後、再び前記同様に窒素置換、撹拌および昇温を行ない、380℃で20分間反応(以下「熱分解」又は「熱分解反応」と言う)した。次いで、前記同様に急冷と生成ガスの回収を行ない、THFで液化処理物を回収した。前記(4)及び(5)に記載した通り、この液化処理物を濾過し、残渣及び液化生成物の収率をそれぞれ測定した。また、濾液部分は前記(6)の通り、蒸留及び軟化点調整を行ない、軟化点の異なった種々のピッチを調製し、さらに、前記(7)と(8)の通りそれぞれのピッチ収率、軟化点および熱安定性を調べた。
〔実施例2〕
「液化反応」の条件を380℃−7分、「熱分解反応」条件を390℃−7分に変更した以外は、前記実施例1と同様である。
上記実施例1と2の主な処理条件を表1に、その結果を表2及び図2〜4に示す。
まず、表2に実施例1と2の液化及び熱分解処理後の気(生成ガス)、液(液化生成物)、固(残渣)3成分の投入固形原料(杉粉+PET)に対する収率を示す。2つの実施例とも生成ガスが約1割、液化生成物が約9割を占めており、残渣分はいずれも0.5質量%未満と僅かであった。この残渣分の値は、前記特許文献及び非特許文献に公表された全ての値を大きく下回っている。この結果は、本発明の液化、熱分解技術により、液化過程で併発するリグニン等成分の三次元架橋反応や脱水素環化重合反応などに起因するコーク化が有効に抑制されたことによるものと思料される。
図2に、実施例1及び2におけるバイオピッチの軟化点と収率との関係を示す。液化生成物(THF可溶分)を蒸留すると、軽質成分が除去されてピッチの収率が低くなる一方、濃縮物(ピッチ)中の重質成分の割合が増え、分子間力が増大するので、その結果、ピッチの軟化点が高くなる。実施例1及び2ではいずれも軟化点の上昇と共にピッチ収率が低くなっているものの、炭素繊維の紡糸に適した軟化点範囲内でのピッチ収率は36.2質量%(軟化点240℃)〜43.5質量%(軟化点210℃)と非常に高い。
一方、含浸ピッチやバインダーピッチ等に適した低軟化点領域(120℃以下)でのピッチ収率は50質量%を超え、最大70質量%に近い値を示している。なお、実施例1と実施例2を比較すると、対応する温度域(軟化点80℃〜240℃)におけるピッチ収率は後者が前者に比べて約2〜5質量%程度低くなっている。これは後者の場合の熱分解温度が390℃と前者の380℃に比べて高いところに起因すると考えられる。この推察は、表2の生成ガスとTHF不溶分の値(熱分解温度が高くなると、液化生成物の低分子化と共に生成ガス量とTHF不溶分が増加すること)からも裏付けられている。
要するに、熱分解温度が高くなり過ぎると、例えば400℃以上の場合には、過分解による脱水素環化重合が進行して、生成ガスとコーク前駆体(THF不溶分)の量が増え、液化生成物(THF可溶分)の量が減少し、平均分子量が小さくなって軽質化されるため、その結果としてピッチ収率が減少する。通常、このような過分解は380℃付近から約10℃単位で大きな変化を見せるが、本発明の温度(350℃以上、400℃未満)条件下では廃プラスチックの添加効果により、過分解によるコーク前駆体の生成が抑制され、高い液化生成物収率並びに高いピッチ収率が得られるものと考えられる。
図3に、実施例2の一次蒸留で得られたピッチを用いて、2Torrの減圧条件下、250℃、280℃、300℃の順に1時間ずつ処理後、最後に320℃で2時間処理して、軟化点を240℃に調整したピッチについて観察した結果を示した。得られたピッチは、気泡が少なく、良好な光沢を呈している。上記300℃−1時間の減圧(2Torr)蒸留を行なった直後、そのままの減圧下で試験管を電気炉から取り出し、横に傾けて流動性を観察した結果を図4に示す。このピッチの軟化点は210℃であるが、非常に良好な流動性を示した。
また、前記実施例1および実施例2により軟化点を240℃に調整したピッチを、前記実験方法(8)に従って、窒素雰囲気下280℃−3時間熱処理した前後の軟化点の変化(△T)を調べたところ、両方とも△Tは0(ゼロ)に近く(つまり熱安定性◎と判定)、非常に優れた熱安定性を示した。
本発明により、リグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックから高性能な炭素材料用基本原料となり得るバイオピッチを、高収率で、且つ低コストで製造できる方法が提供された。本発明は、地球温暖化対策としての未利用バイオマス並びに廃プラスチックの有効利用と将来のコールタール原料の量的不足の懸念に対処する両面から非常に重要な意義がある。本発明のバイオピッチプロセスの確立は、炭素繊維、活性炭素繊維、活性炭、バインダーピッチ、含浸ピッチ、各種特殊ピッチ及び燃料電池・リチウムイオン電池・キャパシタ用炭素材料、その他新規機能性炭素材料への大きな展開に繋がる。

Claims (5)

  1. リグノセルロース系バイオマスと、廃プラスチックとの混合原料を、溶媒の存在下で液化、熱分解し、得られた生成物から生成ガス及び液化残渣を分離した後、液状部分を蒸留して沸点差で水、バイオオイル、溶媒及び残部の重質成分に分離することを特徴とするバイオピッチの製造方法。
  2. 前記廃プラスチックが熱可塑性プラスチックであることを特徴とする請求項1に記載のバイオピッチの製造方法。
  3. 前記溶媒がリグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックのいずれか又は両方とも親和性を有する溶媒群から選択される少なくとも1種を含む高沸点溶媒であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のバイオピッチの製造方法。
  4. 前記液化、熱分解が一段目の液化反応と二段目の熱分解反応から構成された二段反応であり、途中で生成ガスを除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイオピッチの製造方法。
  5. 前記蒸留工程で分離した溶媒成分を回収し、再びリグノセルロース系バイオマスと廃プラスチックの液化、熱分解に用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバイオピッチの製造方法。
JP2014213786A 2014-10-20 2014-10-20 バイオピッチの製造方法 Active JP6445832B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014213786A JP6445832B2 (ja) 2014-10-20 2014-10-20 バイオピッチの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014213786A JP6445832B2 (ja) 2014-10-20 2014-10-20 バイオピッチの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016079325A true JP2016079325A (ja) 2016-05-16
JP6445832B2 JP6445832B2 (ja) 2018-12-26

Family

ID=55955822

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014213786A Active JP6445832B2 (ja) 2014-10-20 2014-10-20 バイオピッチの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6445832B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018088032A1 (ja) * 2016-11-11 2018-05-17 株式会社神戸製鋼所 バイオマス抽出物の製造方法及びバイオマス抽出物の製造装置
KR20190132524A (ko) * 2017-04-11 2019-11-27 테라파워, 엘엘씨 적응형 열분해 시스템 및 방법
KR20200008559A (ko) * 2017-05-18 2020-01-28 테크니프 프랑스 에스.아.에스. 잔류정유가스에서 c2+ 탄화수소 스트림의 회수방법과 관련 설비
JP2021055026A (ja) * 2019-10-02 2021-04-08 エムラボ株式会社 有機物の油化装置及び油化方法
WO2022220246A1 (ja) 2021-04-14 2022-10-20 株式会社レボインターナショナル 有機原料の分解方法、それを利用した液体燃料、固体燃料、又は活性炭の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013170224A (ja) * 2012-02-21 2013-09-02 Nihon Univ 石油代替液体燃料の製造方法
JP2013535539A (ja) * 2010-07-26 2013-09-12 アー.ヨット. ヴィーザー−リンハート エミール バイオマス/プラスチック混合物から燃料を作成するためのプラント及び方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013535539A (ja) * 2010-07-26 2013-09-12 アー.ヨット. ヴィーザー−リンハート エミール バイオマス/プラスチック混合物から燃料を作成するためのプラント及び方法
JP2013170224A (ja) * 2012-02-21 2013-09-02 Nihon Univ 石油代替液体燃料の製造方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018088032A1 (ja) * 2016-11-11 2018-05-17 株式会社神戸製鋼所 バイオマス抽出物の製造方法及びバイオマス抽出物の製造装置
JP2018075546A (ja) * 2016-11-11 2018-05-17 株式会社神戸製鋼所 バイオマス抽出物の製造方法及びバイオマス抽出物の製造装置
KR20190132524A (ko) * 2017-04-11 2019-11-27 테라파워, 엘엘씨 적응형 열분해 시스템 및 방법
KR102555083B1 (ko) * 2017-04-11 2023-07-12 테라파워, 엘엘씨 적응형 열분해 시스템 및 방법
KR20200008559A (ko) * 2017-05-18 2020-01-28 테크니프 프랑스 에스.아.에스. 잔류정유가스에서 c2+ 탄화수소 스트림의 회수방법과 관련 설비
KR102587173B1 (ko) 2017-05-18 2023-10-11 테크니프 에너지스 프랑스 에스에이에스 잔류정유가스에서 c2+ 탄화수소 스트림의 회수방법과 관련 설비
JP2021055026A (ja) * 2019-10-02 2021-04-08 エムラボ株式会社 有機物の油化装置及び油化方法
WO2022220246A1 (ja) 2021-04-14 2022-10-20 株式会社レボインターナショナル 有機原料の分解方法、それを利用した液体燃料、固体燃料、又は活性炭の製造方法
KR20230170005A (ko) 2021-04-14 2023-12-18 가부시키가이샤 레보 인터내셔널 유기 원료의 분해 방법, 그것을 이용한 액체 연료, 고체 연료, 또는 활성탄의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP6445832B2 (ja) 2018-12-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6445832B2 (ja) バイオピッチの製造方法
Wikberg et al. Structural and morphological changes in kraft lignin during hydrothermal carbonization
Cotana et al. Lignin as co-product of second generation bioethanol production from ligno-cellulosic biomass
Mohammed et al. Effects of pretreatments of napier grass with deionized water, sulfuric acid and sodium hydroxide on pyrolysis oil characteristics
Zhu et al. Microwave assisted chemical pretreatment of Miscanthus under different temperature regimes
Li et al. Towards the development of a novel “bamboo-refinery” concept: selective bamboo fractionation by means of a microwave-assisted, acid-catalysed, organosolv process
Das et al. Value added liquid products from waste biomass pyrolysis using pretreatments
WO2017219151A1 (en) Hydrothermal liquefaction of lignocellulosic biomass to bio-oils with controlled molecular weights
AU2007264440A1 (en) Method for production of polysaccharide and/or monosaccharide by hydrolysis of other polysaccharide
WO2013089894A1 (en) Methods and apparatuses for forming low-metal biomass-derived pyrolysis oil
WO2012091899A1 (en) Acetic acid production from biomass pyrolysis
CN103275754B (zh) 从煤直接液化残渣中分离液化重质油和沥青类物质的方法
CN103242881A (zh) 从煤直接液化残渣中分离沥青类物质的方法
Xie et al. Physicochemical characterization of lignin recovered from microwave‐assisted delignified lignocellulosic biomass for use in biobased materials
JP2017080662A (ja) バイオマスと廃プラスチック混合物の処理方法
Shabbirahmed et al. Sugarcane bagasse into value-added products: a review
KUMAGAI et al. Impacts of pyrolytic interactions during the co-pyrolysis of biomass/plastic: synergies in lignocellulose-polyethylene system
Mahmood et al. Comparative effect of ionic liquids pretreatment on thermogravimetric kinetics of crude oil palm biomass for possible sustainable exploitation
Yu et al. Boosting levoglucosan and furfural production from corn stalks pyrolysis via electro-assisted seawater pretreatment
CN103756703A (zh) 改性沥青、利用煤直接液化残渣常压连续化制备改性沥青的方法及其应用
JIAN et al. Interaction between low-rank coal and biomass during degradative solvent extraction
CN103254933B (zh) 从煤直接液化残渣中分离液化重质油和沥青类物质的方法
Poy et al. Optimization of rice straw pretreatment with 1-ethyl-3-methylimidazolium acetate by the response surface method
Zhong et al. Microwave-assisted catalytic pyrolysis of commercial residual lignin with in-situ catalysts to produce homogenous bio-oil and high-yield biochar with enriched pores
EP1137738B1 (en) Process for the recovery of low molecular weight phenols, furfural, furfuryl alcohol and/or cellulose or cellulose-rich residues

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170807

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180828

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181017

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181120

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181130

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6445832

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150